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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】内燃機関のプリクリーナ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/022 20060101AFI20220107BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F02M35/022
F02M35/10 101N
F02M35/10 301L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018082267
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019138294
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018024076
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 知世
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍介
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211646(JP,A)
【文献】特開2006-090250(JP,A)
【文献】特開2014-005823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145968(US,A1)
【文献】特開2007-321600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0150384(US,A1)
【文献】特開平11-343939(JP,A)
【文献】特開2000-282981(JP,A)
【文献】特開2018-035698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/022
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路におけるエアクリーナの濾過部よりも上流側に設けられるプリクリーナにおいて、
筒状の側壁を有するケーシングと、
前記ケーシングの軸線を中心に吸気を旋回させる旋回発生翼と、を備え、
前記側壁の内周面には前記旋回発生翼が接合される環状凹部が設けられており、
前記側壁のうち前記旋回発生翼の上流側に隣り合う部分と前記環状凹部とを少なくとも含む部分が通気性の繊維成形体からなり、
前記繊維成形体は、前記環状凹部を含む高圧縮部と、前記旋回発生翼の上流側に隣り合う部分を含む低圧縮部と、を含んでおり、
前記低圧縮部は、前記高圧縮部よりも低圧縮率にて成形されている
内燃機関のプリクリーナ。
【請求項2】
前記側壁のうち前記旋回発生翼の下流側に隣り合う部分が通気性の繊維成形体からなる、
請求項1に記載の内燃機関のプリクリーナ。
【請求項3】
前記側壁のうち前記旋回発生翼の上流側及び下流側の双方に隣り合う部分が一体成形されている、
請求項2に記載の内燃機関のプリクリーナ。
【請求項4】
前記側壁は、半割筒状をなす一対の半割体を有しており、
前記旋回発生翼は、筒部と、前記筒部の内側において前記ケーシングの軸線に対して傾斜して配置された複数枚の羽根よりなる羽根群と、を有しており、
前記筒部の外周面が前記半割体の各々の内周面に接合されてなる、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関のプリクリーナ。
【請求項5】
前記筒部の外周面及び前記半割体の内周面には、互いに係止されることで前記側壁の軸線を中心とする周方向における前記ケーシングに対する前記旋回発生翼の位置決めを行う位置決め部が設けられている、
請求項4に記載の内燃機関のプリクリーナ。
【請求項6】
前記一対の半割体の各々は、該半割体の周方向の両端に設けられるとともに外周側に向けて突出する接合部を有しており、
前記高圧縮部はさらに前記接合部を含む、
請求項4に記載の内燃機関のプリクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路におけるエアクリーナの濾過部よりも上流側に設けられるプリクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気通路には、吸気に含まれる異物を捕集するエアクリーナが設けられている。また、吸気通路におけるエアクリーナの濾過部よりも上流側の部分には、吸気に含まれる比較的大きな異物を取り除くためのプリクリーナが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
プリクリーナは、吸気通路を構成する筒状のケーシングと、ケーシングの内部に設けられ、吸気が通過することによって同吸気の旋回流を発生させる旋回発生翼と、ケーシングにおける上記旋回発生翼よりも下流側の部分に設けられ、吸気の旋回流により同吸気から遠心分離された異物を外部に排出する排塵部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-192951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたプリクリーナにおいて、吸気の旋回流の強さは、旋回発生翼を構成する各羽根の吸気通路の軸線に対する傾斜角度に依存する。すなわち、軸線に対する各羽根の傾斜角度が大きくなるほど旋回流が強くなる。
【0006】
ところが、旋回流が強くなるほど、遠心分離による異物の分離性能を向上させることができる一方、旋回発生翼を通過する際に発生する吸気音が増大し、吸気騒音が増大するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、吸気騒音を低減することのできる内燃機関のプリクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための内燃機関のプリクリーナは、内燃機関の吸気通路におけるエアクリーナの濾過部よりも上流側に設けられるものであり、筒状の側壁を有するケーシングと、前記ケーシングの軸線を中心に吸気を旋回させる旋回発生翼と、を備え、前記側壁のうち前記旋回発生翼の上流側に隣り合う部分が通気性の繊維成形体からなる。
【0009】
旋回発生翼を吸気が通過する際に発生する吸気音は、吸気通路の吸入口を通じて外部に伝播される。
上記構成によれば、旋回発生翼を吸気が通過する際に発生した吸気音のうち、旋回発生翼の上流側に向かう音波がケーシングの側壁のうち旋回発生翼の上流側に隣り合う部分を通過する際に吸収される。すなわち、吸気音の音波の圧力が側壁を構成する繊維成形体の通気により熱エネルギとして放射される。これにより、吸入口を通じて外部に伝播される吸気音が減音される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸気騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】内燃機関のプリクリーナの一実施形態について、プリクリーナが設けられたエアクリーナを示す略図。
図2】同実施形態のプリクリーナ全体を示す斜視図。
図3】同実施形態のプリクリーナについて、ケーシングを構成する各半割体及び旋回発生翼を互いに離間して示す分解斜視図。
図4】同実施形態のプリクリーナを中心としたエアクリーナの断面図。
図5図4の5-5線に沿った断面図。
図6】変形例のプリクリーナについて、図5に対応する断面図。
図7】他の変形例のプリクリーナについて、図5に対応する断面図。
図8】他の変形例のプリクリーナについて、図5に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図5を参照して、内燃機関のプリクリーナ(以下、プリクリーナ10)の一実施形態について説明する。なお、以降において、内燃機関の吸気通路における吸気流れ方向の上流側及び下流側をそれぞれ単に上流側及び下流側と称する。
【0013】
図1及び図4に示すように、内燃機関の吸気通路には、プリクリーナ10を備えたエアクリーナ30が設けられている。
エアクリーナ30は、インレット32を有する第1ハウジング31aと、アウトレット34を有する第2ハウジング31bとを備えている。第1ハウジング31aと第2ハウジング31bとの間には、吸気を濾過するための濾過部33が設けられている。
【0014】
図4に示すように、第1ハウジング31aの側壁には、インレット32と二重管をなす外筒部35が突設されている。
図2及び図3に示すように、プリクリーナ10は、円筒状の側壁11aを有するケーシング11を備えている。
【0015】
ケーシング11は、上流側端部に内燃機関の空気の入口となる導入部12と、下流側端部に導出部13とを有している。
導入部12は、ファンネル形状をなしており、上流側ほど径が大きくされている。また、側壁11aの内周面における軸線方向の中央部には、環状凹部11bが設けられている。
【0016】
図4に示すように、ケーシング11の下流側端部である導出部13は、第1ハウジング31aの外筒部35に接続されている。
図2及び図3に示すように、ケーシング11の側壁11aは、半割筒状の第1半割体10aと、第1半割体10aの下方に位置する半割筒状の第2半割体10bとからなる。
【0017】
第1半割体10aの周方向の両端には、外周側に向けて突出する接合部14aがケーシング11の軸線方向の全体にわたって設けられている。
第2半割体10bの周方向の両端には、外周側に向けて突出する接合部14bがケーシング11の軸線方向の全体にわたって設けられている。
【0018】
第1半割体10aの接合部14aと、第2半割体10bの接合部14bとが互いに付き合わされて接合されることにより、筒状の側壁11aが形成されている。
図2図4に示すように、ケーシング11の軸線方向における中央部には、旋回発生翼20が設けられている。旋回発生翼20は、円筒状の筒部21と、筒部21の中心部に位置するノーズコーン22と、筒部21の内周面とノーズコーン22の外周面との間に配置された複数枚の羽根よりなる羽根群23とを備えている。羽根群23は、周方向において等間隔に設けられており、ケーシング11の軸線Cに対して所定の角度で傾斜している。
【0019】
図5に示すように、筒部21の外周面には、位置決め凸部25が設けられている。
また、半割体10aの内周面には、位置決め凸部25に対応する位置決め凹部15が設けられている。位置決め凸部25と位置決め凹部15とが、本発明に係る位置決め部に相当する。
【0020】
旋回発生翼20の位置決め凸部25と半割体10aの位置決め凹部15とが互いに係止され、かつ、筒部21の外周面が各半割体10a,10bの環状凹部11bの内周面に接合されることによって、旋回発生翼20は、ケーシング11の軸線Cを中心とする周方向において位置決めされる。
【0021】
図4に示すように、第1ハウジング31aの外筒部35の下部には、インレット32と外筒部35との間のダストを排出する排出口41が突設されている。
排出口41には、車両振動などにより開閉するダストカップ42が組み付けられている。排出口41及びダストカップ42によって排塵部40が構成されている。
【0022】
また、本実施形態では、各半割体10a,10bが圧縮成形された繊維成形体の一体成形品からなる。
次に、各半割体10a,10bを構成する繊維成形体について説明する。
【0023】
側壁11aは、プリクリーナ10の内周面を構成する内層と、内層の外周面に固定され、プリクリーナ10の外周面をなす外層とを備えている(いずれも図示略)。
各層を構成する各繊維成形体は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)からなる芯部と同PET繊維よりも融点の低い変性PETからなる鞘部(いずれも図示略)とを有する周知の芯鞘型の複合繊維からなる不織布と、PET繊維からなる不織布とにより構成されている。なお、上記複合繊維の鞘部をなす変性PETが繊維同士を結合するバインダとして機能する。
【0024】
変性PETの配合割合は30~70%であることが好ましい。本実施形態では、変性PETの配合割合が50%とされている。
なお、こうした複合繊維としては他に、PETよりも融点の低いPP(ポリプロピレン)を有するものであってもよい。
【0025】
各層を構成する各繊維成形体の目付け量は共に、250g/m~750g/mであることが好ましい。本実施形態では、各層を構成する各繊維成形体の目付け量が共に400g/mとされている。
【0026】
各半割体10a,10bは、所定の厚さ(例えば30~100mm)の上記不織布シートを熱圧縮(熱プレス)することにより成形されている。
次に、ケーシング11(各半割体10a,10b)の各部の構成について詳細に説明する。
【0027】
ケーシング11の導出部13、各接合部14a,14b、環状凹部11b、及び位置決め凹部15は、いずれも高圧縮部である。また、ケーシング11におけるそれ以外の部位は、上記高圧縮部よりも低い圧縮率にて熱圧縮成形された通気性の低圧縮部である。すなわち、旋回発生翼20の上流側及び下流側に隣り合う側壁11aは、通気性の繊維成形体により形成されている。
【0028】
高圧縮部の通気度(JISL1096,A法(フラジール形法))は、略0cm/cm・sとされている。また、高圧縮部の板厚としては、0.5~1.5mmであることが好ましい。本実施形態では、高圧縮部の板厚が0.7mmとされている。
【0029】
低圧縮部の通気度は、3cm/cm・sとされている。また、低圧縮部の板厚としては、0.8~3.0mmであることが好ましい。本実施形態では、低圧縮部の板厚が1.0mmとされている。
【0030】
本実施形態の作用効果について説明する。
(1)ケーシング11の側壁11aのうち旋回発生翼20の上流側に隣り合う部分が通気性の繊維成形体からなる。
【0031】
旋回発生翼20を吸気が通過する際に発生する吸気音は、導入部12を通じて外部に伝播される。
上記構成によれば、旋回発生翼20を吸気が通過する際に発生した吸気音のうち、旋回発生翼20の上流側に向かう音波がケーシング11の側壁11aのうち旋回発生翼20の上流側に隣り合う部分を通過する際に吸収される。すなわち、吸気音の音波の圧力が側壁を構成する繊維成形体の通気により熱エネルギとして放射される。これにより、導入部12を通じて外部に伝播される吸気音が減音される。
【0032】
したがって、吸気騒音を低減することができる。
(2)側壁11aのうち旋回発生翼20の下流側に隣り合う部分が通気性の繊維成形体からなる。
【0033】
こうした構成によれば、旋回発生翼20を吸気が通過する際に発生する吸気音のうち、旋回発生翼20から下流側に向かう音波が、ケーシング11の側壁11aのうち旋回発生翼20の下流側に隣り合う部分を通過する際に吸収される。これにより、吸気通路の導入部12を通じて外部に伝播される吸気音を低減することができる。
【0034】
(3)側壁11aのうち旋回発生翼20の上流側及び下流側の双方に隣り合う部分が一体成形されている。
こうした構成によれば、側壁11aのうち旋回発生翼20の上流側に隣り合う部分及び下流側に隣り合う部分が一体成形されるため、部品点数を低減できる。これにより、側壁11aの構成を簡単にすることができる。
【0035】
ところで、ケーシング11の側壁11aを通気性の繊維成形体で一体成形した場合、剛性が不足しやすいために、吸気負圧によってケーシング11が変形して閉塞するおそれがある。その点、上記構成によれば、旋回発生翼20によって側壁11aが内周側から支持されるため、ケーシング11の剛性を高めることができる。
【0036】
(4)側壁11aは、半割筒状をなす一対の半割体10a,10bを有している。旋回発生翼20は、筒部21と、筒部21の内側においてケーシング11の軸線Cに対して傾斜して配置された複数枚の羽根よりなる羽根群23とを有している。筒部21の外周面が各半割体10a,10bの環状凹部11bの内周面に接合されてなる。
【0037】
こうした構成によれば、側壁11aの内部に旋回発生翼20を容易に接合して組み付けることができる。
(5)筒部21の外周面及び半割体10aの内周面には、互いに係止されることで側壁11aの軸線Cを中心とする周方向におけるケーシング11に対する旋回発生翼20の位置決めを行う位置決め凸部25及び位置決め凹部15が設けられている。
【0038】
こうした構成によれば、ケーシング11に対する旋回発生翼20の周方向における位置決めを容易に行うことができる。
<変形例>
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0039】
図6図8に示すように、位置決め凸部は、筒部の外周面から軸線Cに対して垂直方向に延びる突片であってもよい。
例えば、図6に示すように、筒部121の外周面から延びる突片125が挿入される位置決め凹部115を、ケーシング111の内周面に設けるようにすることもできる。
【0040】
また、図7に示すように、筒部221の外周面から延びる一対の突片225を、ケーシング211の各半割体の両接合部14a,14bでそれぞれ挟み込み、接合するようにしてもよい。
【0041】
さらに、図8に示すように、筒部321の外周面から延びる一対の突片325を、ケーシング311に設けた貫通孔315に差し込み、突片325のうち貫通孔315から突出した端部326を、貫通孔315の周方向の直径よりも大きくなるよう熱かしめすることにより、抜け止め構造をなすようにしてもよい。
【0042】
・側壁11aのうち旋回発生翼20の上流側に隣り合う部分と、下流側に隣り合う部分とを別体にて構成することもできる。
・側壁11aのうち旋回発生翼20の上流側に隣り合う部分のみを通気性の繊維成形体により構成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
10…プリクリーナ、11,111,211,311…ケーシング、11a…側壁、11b…環状凹部、12…導入部、13…導出部、14a,14b…接合部、15,115…位置決め凹部(位置決め部)、20…旋回発生翼、21,121,221,321…筒部、22…ノーズコーン、23…羽根群、25…位置決め凸部(位置決め部)、30…エアクリーナ、31a…第1ハウジング、31b…第2ハウジング、32…インレット、33…濾過部、34…アウトレット、35…外筒部、40…排塵部、41…排出口、42…ダストカップ、125,225,325…突片、315…貫通孔、326…端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8