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特許6996415画像処理装置、過積載検出装置、過積載検出システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】画像処理装置、過積載検出装置、過積載検出システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/03 20060101AFI20220128BHJP
   G01G 9/00 20060101ALI20220128BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20220128BHJP
   B60C 23/06 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
G01G19/03
G01G9/00
G01B11/16 H
B60C23/06 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018091065
(22)【出願日】2018-05-10
(65)【公開番号】P2019196982
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船渡 美沙紀
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-272907(JP,A)
【文献】特開2005-210365(JP,A)
【文献】特開2017-130146(JP,A)
【文献】特開2018-059896(JP,A)
【文献】特開2014-002056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-9/00
G01G 19/00-19/64
G01G 21/00-23/48
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基準を超過する積載重量の車両を判定するための画像処理装置であって、
時系列に沿って撮影された走行する同一の車両の複数の撮影画像を取得する取得部と、
取得された前記複数の撮影画像の中から、当該車両の荷重に応じたタイヤの変形量に基づく過積載の判定に用いられる撮影画像として、撮影装置の撮影部の撮影面に対する前記タイヤの正対の度合が所定の基準を満たす撮影画像を選択する選択部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記正対の度合に係る第1の指標に基づいて撮影画像を選択することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記選択部は、各撮影画像について、タイヤの回転軸位置を特定し、前記タイヤの外縁上の点のうち接地していない複数の点と前記回転軸位置との距離をそれぞれ取得し、取得された複数の距離のばらつきの度合を前記第1の指標として前記正対の度合を特定することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の指標としては、正規化された分散又は標準偏差が用いられることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記第1の指標が所定の基準を満たす撮影画像が複数ある場合には、当該複数の撮影画像のうち、前記タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標に基づいて撮影画像を選択することを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記第2の指標として、水平方向についての見かけ上のタイヤ幅を用いることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記選択部は、前記第2の指標として、タイヤの見かけ上の表面積を用いることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表面積は、前記撮影画像における前記タイヤの外縁内の画素数により求められることを特徴とする請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記選択部は、前記第2の指標として、前記タイヤの接地部分の見かけ上の長さを用いることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記選択部は、前記第2の指標として、前記タイヤのホイール部分における所定の位置間の見かけ上の長さを用いることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記選択部は、前記撮影画像に含まれる前輪のタイヤと後輪のタイヤについて、各々別個に正対している画像を選択することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
選択された撮影画像から前記タイヤの変形量を特定する特定部と、
特定された前記タイヤの変形量に基づいて前記車両の過積載を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする過積載検出装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
選択された撮影画像から前記タイヤの変形量を特定する特定部と、
特定された前記タイヤの変形量に基づいて前記車両の過積載を判定する判定部と、
を含むことを特徴とする過積載検出システム。
【請求項14】
前記車両の撮影を行う撮影装置を含むことを特徴とする請求項13記載の過積載検出システム。
【請求項15】
所定の基準を超過する積載重量の車両を判定するための画像処理装置として用いられるコンピューターで実行されるプログラムであって、
前記コンピューターに、
時系列に沿って撮影された走行する同一の車両の複数の撮影画像を取得する取得ステップと、
取得された前記複数の撮影画像の中から、当該車両の荷重に応じたタイヤの変形量に基づく過積載の判定に用いられる撮影画像として、撮影装置の撮影部の撮影面に対する前記タイヤの正対の度合が所定の基準を満たす撮影画像を選択する選択ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置、過積載検出装置、過積載検出システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックなどの貨物車両による過積載を検出するシステムがある。車両に規定された積載重量を超過した過積載車両の走行は、安全や道路の保全などにとって好ましくなく、各所で監視が行われている。
【0003】
従来の監視システムとしては、道路に重量計を埋め込んで車両の重量を直接計測する技術が知られている。しかしながら、この監視システムでは、車両に一時停止を強いることから通行の流れを阻害し、手間がかかる。また、車両が通行する路面に設けられるので、重量計測に係る構成のメンテナンス時には通行止めにする必要があるなどの問題がある。これに対し、特許文献1では、通行車両のタイヤを撮影し、その変形量を算出することで過積載を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-272907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両が撮影装置による撮影範囲を横切る間に、車両が進路や車線の変更や調整などを行っていると、タイヤの向きが多様となり、正面にタイヤがあっても、必ずしも十分に精度よく正しいタイヤの変形量を画像から求めることができないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、タイヤの変形量を精度よく求めることのできる画像を適切に選択可能な画像処理装置、過積載検出装置、過積載検出システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
所定の基準を超過する積載重量の車両を判定するための画像処理装置であって、
時系列に沿って撮影された走行する同一の車両の複数の撮影画像を取得する取得部と、
取得された前記複数の撮影画像の中から、当該車両の荷重に応じたタイヤの変形量に基づく過積載の判定に用いられる撮影画像として、撮影装置の撮影部の撮影面に対する前記タイヤの正対の度合が所定の基準を満たす撮影画像を選択する選択部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記正対の度合に係る第1の指標に基づいて撮影画像を選択することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像処理装置において、
前記選択部は、各撮影画像について、タイヤの回転軸位置を特定し、前記タイヤの外縁上の点のうち接地していない複数の点と前記回転軸位置との距離をそれぞれ取得し、取得された複数の距離のばらつきの度合を前記第1の指標として前記正対の度合を特定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の画像処理装置において、
前記第1の指標としては、正規化された分散又は標準偏差が用いられる
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項2~4のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記第1の指標が所定の基準を満たす撮影画像が複数ある場合には、当該複数の撮影画像のうち、前記タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標に基づいて撮影画像を選択することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記第2の指標として、水平方向についての見かけ上のタイヤ幅を用いることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、請求項5記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記第2の指標として、タイヤの見かけ上の表面積を用いることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の画像処理装置において、
前記表面積は、前記撮影画像における前記タイヤの外縁内の画素数により求められることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9記載の発明は、請求項5記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記第2の指標として、前記タイヤの接地部分の見かけ上の長さを用いることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10記載の発明は、請求項5記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記第2の指標として、前記タイヤのホイール部分における所定の位置間の見かけ上の長さを用いることを特徴とする。
【0017】
また、請求項11記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記選択部は、前記撮影画像に含まれる前輪のタイヤと後輪のタイヤについて、各々別個に正対している画像を選択することを特徴とする。
【0018】
また、請求項12記載の発明は、
請求項1~11のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
選択された撮影画像から前記タイヤの変形量を特定する特定部と、
特定された前記タイヤの変形量に基づいて前記車両の過積載を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする過積載検出装置である。
【0019】
また、請求項13記載の発明は、
請求項1~11のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
選択された撮影画像から前記タイヤの変形量を特定する特定部と、
特定された前記タイヤの変形量に基づいて前記車両の過積載を判定する判定部と、
を含むことを特徴とする過積載検出システムである。
【0020】
また、請求項14記載の発明は、請求項13記載の過積載検出システムにおいて、
前記車両の撮影を行う撮影装置を含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項15記載の発明は、
所定の基準を超過する積載重量の車両を判定するための画像処理装置として用いられるコンピューターで実行されるプログラムであって、
前記コンピューターに、
時系列に沿って撮影された走行する同一の車両の複数の撮影画像を取得する取得ステップと、
取得された前記複数の撮影画像の中から、当該車両の荷重に応じたタイヤの変形量に基づく過積載の判定に用いられる撮影画像として、撮影装置の撮影部の撮影面に対する前記タイヤの正対の度合が所定の基準を満たす撮影画像を選択する選択ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うと、タイヤの変形量を精度よく求めることができる画像を適切に選択することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】過積載検出システムを示す全体図である。
図2】過積載検出システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】タイヤの変形量に係る計測値について説明する図である。
図4】走行路における車両の前輪(タイヤ)の向きの履歴を示す図である。
図5】タイヤの撮影画像の例を示す図である。
図6】過積載判定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図7】画像選択処理の制御手順の例を示すフローチャートである。
図8】画像選択処理の変形例を示すフローチャートである。
図9】精度向上処理の変形例を示すフローチャートである。
図10】精度向上処理の変形例を示すフローチャートである。
図11】過積載判定処理の変形例1を示すフローチャートである。
図12】過積載判定処理の変形例2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の過積載検出システム1を示す全体図である。
過積載検出システム1は、撮影装置10と、処理装置20(画像処理装置、過積載検出装置、コンピューター)とを含む。
【0026】
撮影装置10は、走行路RWを走行する車両を撮影して撮影データを出力する。処理装置20は、撮影装置10から撮影データを取得して画像処理し、タイヤの変形量に基づく車両の過積載の判定を行う。この撮影装置10は、特には限られないが、例えば、高速道路などの自動車専用道路の進入/退出レーンの脇に固定された位置及び向きで設けられて、当該自動車専用道路へ乗り入れる車両の撮影を継続的に行う。撮影装置10としては、動画撮影を行うビデオ撮影装置であってもよいし、所定の時間間隔で連続的に静止画を撮影する撮像装置であってもよい。動画のフレームレートや所定の時間間隔は、画角内を横切る各車両がそれぞれ少なくとも複数枚(例えば、3~6枚など)得られる程度であればよく、撮影装置10の設置位置(当該画角内で想定されるの車両の走行速度)に応じて変更可能であってもよい。
【0027】
図2は、過積載検出システム1の機能構成を示すブロック図である。
撮影装置10は、撮影部11(カメラ)と、制御部12と、記憶部13と、通信部14などを備える。
撮影部11は、外部から入力された可視光を各画素位置に導く光学装置と、各画素位置でRGB各色の入射光量を検出する検出部などを備える。検出部は、ここでは、各画素位置の画素値(例えば、RGB各色の光量(輝度値))が取得可能に面上に撮像素子が二次元配列されて、二次元撮影画像データを取得する。撮影部11の動作により得られた画像データは、記憶部13に出力される。制御部12は、記憶部13に一時記憶された画像データを適切なタイミングで通信部14を介して処理装置20に出力する。
【0028】
処理装置20は、演算処理を行うコンピューターであり、制御部21(取得部、選択部、特定部、判定部)と、記憶部22と、通信部23と、報知動作部24などを備える。
【0029】
制御部21は、処理装置20の動作を統括制御するプロセッサーである。制御部21は、各種演算処理を行うCPU211(Central Processing Unit)と、CPU211に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶するRAM212(Random Access Memory)などを備える。
【0030】
記憶部22は、各種プログラム、設定データ、記録画像データやその解析結果などを記憶する。記憶部22としては、読み書き更新可能なフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリー、及びHDD(Hard Disk Drive)などが用いられ得る。また、プログラム221や初期設定データなどは、マスクROM(Read Only Memory)などに記憶されていてもよい。
【0031】
プログラム221には、過積載の判定処理プログラムが含まれる。制御部21のCPU211は、記憶部22からプログラム221や設定データを読み出してRAM212に記憶させ、当該プログラム221を実行する。設定データには、諸元データベース222と、判定基準データ223と、画像記録部224などが含まれる。
【0032】
諸元データベース222は、処理装置20により画像データから抽出されたタイヤ及び車両のサイズや種別に係る諸元、すなわち、初期状態における設定データ(初期設定データ)を記憶する。設定データには、当初の通常状態でのタイヤの硬さに応じた値、車両の軸数、タイヤ数、初期重量などが含まれる。また、設定データには、算出されたタイヤの変形量(荷重変形量)に係るパラメーターを積載重量に換算するためのテーブルデータが含まれる。この諸元データベース222は、画像データから抽出されたタイヤや車両の種別の特定に用いられ、また、特定された車両の過積載に係る判定基準の補正に用いられてもよい。
【0033】
判定基準データ223は、過積載の有無の判定に用いられる各種データを上記車両及びタイヤの種別ごとに、すなわち、諸元に応じて定めたデータである。
【0034】
画像記録部224は、撮影装置10により撮影された画像データを記録(記憶)する。画像データは、所定の容量内で古いデータから順番に上書き更新させていくことが可能であってもよい。あるいは、所定の時間が経過したデータを画像記録部224から定期的に消去して、空いた領域に新たな画像データを記録(記憶)していってもよい。所定の容量は、撮影動画データの各フレームの処理時間に対して十分に長い時間の画像データが保持可能な容量であり、また、古いデータが消去されても、動画のエンコード方式に応じて後ろのフレームデータのデコードに問題を生じさせない。また、過積載の判定に用いられたフレームの画像などは、別途さらに長い時間記憶保持することとしてもよい。過積載であると判定されたフレームの画像データは、別途通信部23などを介して外部から取得されるまで保持されてもよい。
【0035】
通信部23は、外部機器と通信を行うための制御を行う。通信部23は、例えば、ネットワークカードであり、撮影装置10から画像データを受信し、制御部21による画像データの解析結果に応じた信号を外部機器に出力する。出力先の外部機器としては、例えば、過積載の車両の運転手に対して報知動作を行う報知装置、過積載の車両の通行を遮断する遮断機の動作制御装置や、過積載の車両の監視員による監視装置などが挙げられる。
【0036】
報知動作部24は、制御部21の制御に基づいて処理装置20のユーザーや監視員に対して所定の報知動作を行う。報知動作部24が実行する報知動作としては、例えば、所定の表示画面に対する表示動作や、ビープ音の発生動作など、及びこれら複数の組み合わせが挙げられる。
【0037】
次に、本実施形態の処理装置20による過積載の判定動作について説明する。
処理装置20では、撮影装置10から受信した画像データからタイヤを検出し、その接地に係る変形値を算出する。この変形値を用いて過積載の判定が行われる。
【0038】
図3は、タイヤの変形量に係る計測値について説明する図である。
図3(a)に示すように、タイヤTは、車輪のホイールのリムRに取り付けられている。タイヤTは、正確には、表面に凹部構造などを有するが、ここでは、当該タイヤTの正面画像(回転軸方向から見た画像)からこれら凹部などの構造を無視したタイヤの外縁Ts(側面外縁)が検出、特定されるものとして説明する。また、ここでは、水平方向をx軸方向、垂直方向をy軸方向とし、路面(タイヤの接地面)は略水平である、すなわち、x軸方向に沿って延びている。なお、特には限られないが、以降では、解析対象とされる画像は、矩形状の領域(撮影範囲)を有し、縦方向及び横方向がそれぞれy軸方向及びx軸方向に沿っているものとして説明する。各軸の原点位置は、例えば、画像の左下端部や画像の中心位置など、任意に定められてよい。
【0039】
本来(変形していない)タイヤ径L2t(タイヤ半径Lt)のタイヤTは、外縁Tsが、車両の重みなどによって圧縮幅dLyだけ垂直方向に圧縮され、当該外縁Tsのうち接地部分が路面に沿って面状に平らに(正面画像では直線状の接地線が)延びる形で変形する。接地線の両端点間の接地幅Lcxは、タイヤの空気圧や材質、構造が一定であれば、車両の重量(積載重量)が大きくなるほど長くなる。これに伴って、タイヤの変形がない場合の本来の中心位置であり、回転軸の位置である軸位置OR(回転軸位置)から接地面までの接地距離Lcyや、タイヤの縦幅L2cyも短くなる。すなわち、タイヤ形状は、底面が接地幅Lcxにわたって直線状になる接地線と、接地せずに変形が生じない円弧部分との組み合わせになる。したがって、接地部分を示すパラメーター(変形値)と円弧部分を示すパラメーター(タイヤ基準値)とが得られれば、タイヤ形状が特定される。
【0040】
ここでは、過積載の有無を判定するには、変形値(変形量を示す値)とタイヤ基準値との比、例えば、接地幅Lcxをタイヤ径L2tで除した値などを変形判定量として用いる。所定のタイヤ基準値に対し、車両の重量(荷重)が大きくなるほど変形判定量が大きくなる。この変形判定量が車両の積載制限重量に対応する判定基準値を超過しているか否かが判別されることで、過積載の有無が判定される。選択される変形値とタイヤ基準値とは、上述のうちいずれが組み合わされてもよい。
【0041】
しかしながら、タイヤの回転面(正面)が撮影装置10の撮影部11による撮影面(撮影方向、すなわち撮影部11の光軸方向に垂直な当該撮影部11の受光面)に対して平行(撮影部11の光軸方向に垂直)ではない(完全には正対していない)場合には、タイヤの撮影画像は、見かけ上撮影面に平行な面に投影された形状となり、すなわち、図3(b)に示すように、x方向についての長さは、短縮されたタイヤ半径Lthや短縮された接地幅Lcxvとして撮影、計測される。y方向についての長さは、タイヤ半径Ltvなどのように撮影画面上で変化が生じないので、縦長のほぼ楕円形状となる。このような見かけ上の変形により、変形値や変形判定量の特定精度が低下する。
【0042】
図4は、走行路RWを走行する車両の前輪(タイヤ)の向きの履歴Trを示す図である。
この図4内において、車両は、右から左へ地点PA、PB、PCを経て通過していく。この場合のように、車両の走行方向が変化するような範囲では、車両がしばしば細かく進行方向(すなわち前輪の向き)を調整(走路変更、走行方向の調整や切り返し)しながら撮影装置10の撮影範囲を通過していく。特に、走行路RWにおける車両の進行方向側に料金の収受に係るゲートなどがある場合には、顕著にこのような調整がなされ得る。撮影は、料金ゲートなどに対応する進入/退出レーンに進入後、ゲートを通過する前の範囲で行われ、この範囲(距離)は、しばしば短い。したがって、タイヤが撮影装置10の正面にあるタイミングで最も良い精度のタイヤの画像が得られるとは限らず、最適な精度の画像が得られるタイミングも車両によって異なる。また、上述のように、撮影の間隔によっては、タイヤが真正面に来たタイミングで撮影がなされるとも限らない。
【0043】
図5は、図4における地点PA、PB、PCを通過するタイヤの撮影画像を拡大して示した図である。ここでは、拡大率は同一であるものとして示す。
【0044】
上述のように、撮影装置10(撮影部11)は、固定された位置及び向きで画角全体の画像を所定の時間間隔で撮影しており、ここでは、「×」印が設けられた5点で撮影画像が得られている。各地点の撮影画像は、上述のように、動画から当該画像が切り出されても、継続して撮影された静止画像であってもよい。処理装置20では、それぞれの画像の一部に写った車両をオブジェクトとして抽出し、同一車両のさらに一部であるそれぞれのタイヤ(ここでは、車両の前輪)を抽出する。
【0045】
地点PAで撮影された画像では、図5(a)に示すように、タイヤは、撮影装置10の撮影部11による撮影面に対して正対している(平行である)。これにより、タイヤは、略円形状(上述のように、接地面は直線状となる。以下同様)に撮影されている。地点PBは、撮影部11による撮影範囲(画角)の略中央に当たる。この地点PBでは、タイヤは、撮影面に対して大きく傾いており、図5(b)に示すように、タイヤの画像は、長軸(y方向の長さ)と短軸(x方向の長さ)の差が大きい略楕円形状となっている。地点PBは、地点PAよりも撮影面に近いので、長軸の長さが図5(a)に示した図よりも大きい。地点PCでは、タイヤは、撮影面に対して最も近いので、長軸の長さが図5(a)、(b)よりも長い。しかし、タイヤがやはり撮影面に対して傾いており、図5(c)に示すように、タイヤの画像は、短軸が長軸よりも短い略楕円形状として写っている。
【0046】
処理装置20では、同一の車両のタイヤについて連続して得られた複数フレーム(複数枚)の画像の中から、高精度で変形判定量が特定可能な画像、すなわち、撮影面に対して適切に正対している撮影画像を選択して、当該画像に基づいてタイヤの変形量(変形値、変形判定量)を求め、過積載の判定、検出を行う。正対の度合は、定量的な評価に基づいて選択されればよい。ここでは、画像から抽出された車輪において、タイヤの外縁上(接地していない円弧部分)の各点とタイヤの回転軸位置との距離を複数求め(取得し)、当該複数の距離のばらつきの度合によって正対の度合を評価する。すなわち、タイヤが撮影面に正対しているほど、タイヤの外縁が撮影画像において見かけ上円形に近くなり、距離が均一となってばらつきが小さくなる。反対に、タイヤが撮影面に対して大きく傾くほど、楕円形の離心率が大きくなり、距離が不均一となってばらつきが大きくなる。
【0047】
ここでは、各画像について、同一車両の前輪のタイヤ及び後輪のタイヤについて各々別個に最も正対している画像が選択され、変形判定量が求められる(特定される)。過積載の判定では、前輪の変形判定量と後輪の変形判定量の平均値が用いられたり、変形判定量の大きい方が選択されたりといった種々の処理がなされてもよい。あるいは、前輪と後輪を区別せずに共通で最も正対している画像を選択し、過積載の判定に用いることとしてもよい。また、前輪のみ又は後輪のみについて変形判定量が求められて、過積載の判定に用いられてもよい。また、一枚の撮影画像に前輪のタイヤ及び後輪のタイヤのいずれも含まれている場合には、より正対しているほうを選択することとしてもよい。また、前輪の正対の度合と後輪の正対の度合とが総合的に好ましい一の画像が選択されて、当該一の画像から(すなわち同一タイミングの)前輪のタイヤの変形判定量と後輪のタイヤの変形判定量とがそれぞれ求められてもよい。
【0048】
図6は、処理装置20で実行される過積載判定処理の制御部21による制御手順を示すフローチャートである。この過積載判定処理は、例えば、撮影された車両の過積載の有無が判定されて前回の過積載判定処理が終了した後、最初に撮影装置10からの画像データの入力があったタイミングで起動される。
【0049】
過積載判定処理が開始されると、制御部21(CPU211)は、入力された画像データを取得して、画像の前処理を行う(ステップS101)。前処理としては、露出やコントラストの調整などが含まれていてよい。また、この前処理には、固定的に撮影される背景部分をマスクする処理などが含まれていてもよい。
【0050】
制御部21は、画像からエッジ(境界線)を検出する。制御部21は、このエッジから車両(タイヤ)の輪郭線を特定し、車両を特定する(ステップS102)。また、制御部21は、タイヤの輪郭部分から当該タイヤの回転軸位置を特定する。制御部21は、画像中のエッジを検出して、エッジの中から車両の輪郭に特徴的な形状(構造)部分をオブジェクトとして抽出し、車体及びタイヤの特定を行う。エッジ検出としては、特には限られないが、例えば、キャニー法などが用いられる。また、エッジ検出は、より単純に、元画像の空間微分を行った微分画像を用いたり、及び/又は二次微分値などを用いたりして行われてもよい。また、制御部21は、エッジとして特定された部分以外をノイズとして、当該ノイズを低減させる処理を行ってもよい。タイヤの円形状の特定、抽出には、ハフ変換などが用いられてよい。制御部21は、抽出された車体形状、サイズ、車体面の模様や標識と、諸元データベース222の内容とに基づいてパターンマッチングなどにより車種やタイヤの種別、配置を特定する。
【0051】
制御部21は、ステップS102の処理で特定されている走行中の車両(同一の車両)のタイヤの所定位置、例えば、右側(後端側)端部が所定の境界位置を通過したか否かを判別する(ステップS103)。この境界位置は、車両の進行方向側における撮影範囲の境界又はその少し手前の位置(上述の原点位置を基準とした所定のx座標(境界基準値)の位置)に定められる。タイヤの所定位置が境界位置を通過していない(x座標の大きい側から小さい側に車両が走行している場合には、所定位置のx座標が境界基準値以上である)と判別された場合には(ステップS103で“NO”)、制御部21は、特定されている車両のタイヤ画像の一群にこの画像を追加設定する。それから、制御部21の処理は、ステップS101に戻り、次の画像データの入力を待ち受ける。
【0052】
タイヤの所定位置が境界位置を通過したと判別された(上記の場合で、所定位置のx座標が境界基準値未満である)場合には(ステップS103で“YES”)、制御部21は、画像選択処理を呼び出して実行する(ステップS104)。制御部21は、この処理により、タイヤが含まれる複数の画像のうち最も正対した一枚を選択する。
【0053】
制御部21は、当該選択された一枚を用い、タイヤ基準値及び変形値を得るために必要な輪郭上の点(タイヤの外周やタイヤの回転軸位置など)を特定し、タイヤ基準値と変形値とを算出する(ステップS105)。制御部21は、例えば、タイヤの水平方向について両端の点を特定してタイヤ径L2t(見かけ上のタイヤ半径Lthの2倍。必要に応じて、撮影面に対する残りの微小な傾き分を補正(正面画像への座標変換)してもよい)を算出する。あるいは、制御部21は、タイヤの上端点を特定して、見かけ上のタイヤ半径Ltvの2倍をタイヤ径L2tとして求めてもよい。また、制御部21は、タイヤの接地両端点を特定して接地幅Lcx(接地部分の見かけ上の接地幅Lcxvを必要に応じて撮影面に対する残りの微小な傾き分だけ補正(正面画像への座標変換)してもよい)を算出する。なお、後述の第5の例で既に見かけ上の接地幅Lcxvが求められている場合には、改めて算出せずに求められている値を用いればよい。制御部21は、タイヤ基準値及び変形値から変形判定量を算出する(ステップS106)。
【0054】
制御部21は、タイヤ種別に応じた(必要に応じて車種にも応じて)判定基準値を判定基準データ223から選択して読み出して設定する(ステップS107)。制御部21は、変形判定量が判定基準値より大きいか否かを判別する(ステップS108)。変形判定量が判定基準値より大きいと判別された場合には(ステップS108で“YES”)、制御部21は、違反報知動作に係る制御を行う(ステップS109)。制御部21は、通信部23により上述の報知動作を行う外部機器への制御信号を出力させる。
【0055】
変形判定量が判定基準値より大きくない(以下である)と判別された場合には(ステップS108で“NO”)、すなわち、積載重量は正常範囲内であり、制御部21は、過積載判定処理を終了する。
上記のうち、ステップS105、S106の処理が制御部21の特定部としての動作である。ステップS107、S108の処理が制御部21の判定部としての動作である。
【0056】
図7は、ステップS104で呼び出される画像選択処理の制御手順の例を示すフローチャートである。画像選択処理が呼び出されると、制御部21は、取得された複数の各画像について、検出、特定されているタイヤ外縁上で接地していない複数点とタイヤの回転軸位置との距離をそれぞれ求める(ステップS121)。制御部21は、各画像について、複数の距離のばらつきの度合、例えば、分散値又は標準偏差(第1の指標)を算出する(ステップS122)。このとき、制御部21は、距離の平均値などでばらつきの度合を正規化することで、タイヤ画像のサイズの違いの影響を除外する。制御部21は、ばらつきの度合が最小の画像を選択する(ステップS123)。それから、制御部21の処理は、過積載判定処理に戻る。
【0057】
上記の処理により、最も正対した画像が取得される一方、撮影面とタイヤの回転面(正面)との間の距離が大きくなる(すなわち遠くなる)ほど、撮影されるタイヤの見かけ上の(画像上の)面積が小さくなる。変形値や変形判定量に係る長さの特定精度は、これらの長さが大きく撮影されるほど向上する。また、撮影装置10の光学系も、撮影範囲の中心付近のほうが周縁部よりも変形値や変形判定量の精度が高い場合がある。よって、タイヤの正面が撮影面に平行(光軸に垂直)に近く、撮影面からの距離が近く、かつタイヤが撮影面の光軸位置に近い画像であるほど、より精度の高い結果が得られやすい。上述のように、運転手が頻繁に車両の切り返しなどを行っている場合には、複数の異なる位置で撮影面に対して正対した状態が生じ得る。処理装置20では、適切な範囲で(正対の度合が所定の基準を満たす範囲で)正対している画像が複数ある場合において、当該複数の画像からさらにタイヤの位置などに応じて最も精度の高い変形値や変形判定量が得られる画像を選択することができる。
【0058】
図8(a)は、画像選択処理の制御手順の変形例を示すフローチャートである。この画像選択処理は、図7に示した画像選択処理のステップS123の処理がステップS123aの処理に変更され、また、ステップS124の処理が追加されている。ステップS121、S122の処理は同一であり、同一の符号を用いることとして説明を省略する。
【0059】
この画像選択処理が呼び出され、ステップS121、S122の処理が実行された後、制御部21は、ばらつきが所定の基準以上の画像を除外する(ステップS123a)。制御部21は、精度向上処理を呼び出して実行する(ステップS124)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0060】
図8(b)は、図8(a)で示した画像選択処理で呼び出される精度向上処理の制御部21による制御手順を示すフローチャートである。精度向上処理(第1の例)が呼び出されると、制御部21は、除外されていない各画像について、それぞれ、検出、特定されているタイヤ外縁上における所定の複数点、例えば、タイヤ回転軸位置から所定の角度方向の点と、回転軸位置との距離の平均を求める(ステップS131)。制御部21は、求められた距離の平均が最大の画像を選択する(ステップS132)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
なお、除外されなかった画像が1つしかない場合には、ステップS131の処理を省略して当該画像をそのまま選択してよい。また、ステップS131の処理は、ステップS122の処理が実行される際に併せてなされてもよい。
【0061】
図9及び図10は、ステップS124で呼び出される精度向上処理の制御手順の他の複数の例を示すフローチャートである。ここでは、図9(a)~図9(c)及び図10(a)~図10(c)の6種類(第2の例~第7の例)の精度向上処理の例が示されている。プログラム221に図8(a)で示した画像選択処理が記憶されている場合、当該画像選択処理で呼び出される精度向上処理として、これら6種類及び図8(b)に示したもののうちいずれか一つが含まれていればよい。複数の精度向上処理が記憶されている場合には、設定などに応じていずれの精度向上処理が呼び出されるかが定められる。あるいは、車種や天気状況などの各種条件に応じて適切な一つが選択されてもよい。
【0062】
図9(a)に示した第2の例の精度向上処理が呼び出されると、制御部21は、除外されていない画像でそれぞれ検出された輪郭におけるタイヤの外縁の左右両端点の位置を特定し、当該両端点の位置間の画像上での距離(水平方向についての見かけ上のタイヤ幅。この例での第2の指標)を各々取得する(ステップS141)。制御部21は、取得した距離(結果)を画像と対応付けてRAMに212に一時記憶させる。制御部21は、それぞれ取得された距離のうち最大のものを含む画像を選択する(ステップS142)。選択されなかった画像に係る距離(結果)は、RAM212から消去されてよい。除外されていない画像が1つしかない場合には、第2の指標を取得する処理(ここでは、ステップS141)が省略されて、単純にその画像が選択されればよい。以下の第3の例~第7の例についても同様である。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0063】
また、図9(b)に示した第3の例の精度向上処理が呼び出されると、制御部21は、除外されていない画像でそれぞれ検出された輪郭におけるタイヤの外縁内部に含まれる画素数(すなわち、見かけ上のタイヤ正面の表面積。この例での第2の指標)を計数する(ステップS151)。制御部21は、タイヤ外縁内部の画素数が最大の画像を選択する(ステップS152)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0064】
また、図9(c)に示した第4の例の精度向上処理が呼び出されると、制御部21は、除外されていない画像でそれぞれ検出された輪郭におけるタイヤのホイール部分の左右両端点の位置を特定し、当該両端点の位置間の画像上での距離(所定の位置間の見かけ上の長さ。この例での第2の指標)を各々取得する(ステップS161)。制御部21は、それぞれ取得された距離のうち最大のものを含む画像を選択する(ステップS162)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0065】
また、図10(a)に示した第5の例の精度向上処理が呼び出されると、制御部21は、除外されていない画像でそれぞれ検出された輪郭におけるタイヤの接地部分の両端点の位置を特定し、当該両端点の位置間の長さ(接地幅Lcxv。接地部分の見かけ上の長さ。この例での第2の指標)を取得する(ステップS171)。制御部21は、それぞれ取得された接地幅Lcxvのうち最大のものを含む画像を選択する(ステップS172)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0066】
また、図10(b)に示した第6の例の精度向上処理が呼び出されると、制御部21は、除外されていない画像でそれぞれ検出された輪郭におけるタイヤの外縁の左右両端点の位置とその中間位置(すなわち、タイヤの回転軸位置)を特定し、また、両端点の位置間の画像上での距離(この例での1つ目の第2の指標)を各々取得する(ステップS181)。制御部21は、距離が所定の基準未満の画像を除外する(ステップS182)。制御部21は、除外されていない残りの画像のうちで、タイヤの回転軸位置(この例での2つ目の第2の指標)が画像範囲の横方向について最も中央に近いものを選択する(ステップS183)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0067】
また、図10(c)に示した第7の例の精度向上処理が呼び出されると、制御部21は、除外されていない画像でそれぞれ検出された輪郭におけるタイヤの外縁内部に含まれる画素数(この例での1つ目の第2の指標)を計数し、また、当該タイヤの外縁の左右両端点の位置を特定して、両端点の位置間の画像上での距離(この例での2つ目の第2の指標)を各々取得する(ステップS191)。制御部21は、距離が所定の基準未満の画像を除外する(ステップS192)。制御部21は、除外されていない残りの画像のうちで、タイヤの外縁内の画素数が最大の画像を選択する(ステップS193)。それから、制御部21の処理は、画像選択処理に戻る。
【0068】
すなわち、適切に正対している画像が複数ある場合には、図9の3種類及び図10(a)の例のように、それらのうち、単一の条件に係る指標が最良の画像を選択することで精度を向上させてもよいし、図10(b)、(c)の2種類の例のように、複数(ここでは2つ)の条件を組み合わせて適切な画像を選択することで精度を向上させてもよい。なお、条件が単一の場合であっても、複数の画像から一度所定の基準未満の画像を除外した後、残りの画像の中から指標が最良の画像を選択することとしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態の処理装置20は、制御部21を備え、制御部21は、取得部として、時系列に沿って撮影された走行する同一の車両の複数の撮影画像を取得し、選択部として、取得された複数の撮影画像の中から、当該車両の荷重に応じたタイヤの変形量に基づく過積載の判定に用いられる撮影画像として、撮影面に対するタイヤの正対の度合が所定の条件を満たす撮影画像を選択する。これにより、処理装置20では、歪んだ撮影画像を排除し、精度よくタイヤ変形量(変形値、変形判定量)を取得することが可能な画像を適切に選択することができる。特に、分岐した走行路RWへの進入地点など、運転手による車両の走行位置や方向の変更制御(ハンドル操作)に応じてタイヤの向きが頻繁かつ不規則に変化し、当該変化のタイミングが車両(運転手)ごとに異なるような場合であっても、処理装置20によって安定して適切に正対した画像が選択される。
【0070】
また、制御部21は、正対の度合に係る所定の指標、例えば、図8に示したように見かけ上のタイヤの半径(回転軸位置からタイヤ外縁までの距離)のばらつきの度合に基づいて撮影画像を選択する。このように、単純な処理で精度よくタイヤ変形量を取得可能な画像が選択されるので、処理時間や負荷を大きく増加させない。
【0071】
また、制御部21は、選択部として、各撮影画像について、タイヤの回転軸位置を特定し、タイヤの外縁上の点のうち接地していない複数の点と回転軸位置との距離をそれぞれ求めて取得する。そして、制御部21は、取得された複数の距離のばらつきの度合に基づいて正対の度合を特定する。
このように、タイヤ外縁上の複数点とタイヤ回転軸位置との距離のばらつきを求めることで、統計的にどの程度タイヤが正対位置から外れているかを判断することができるので、確実にタイヤが正対している撮影画像、すなわち、精度よく変形判定量を求めることが可能な撮影画像を選択することができる。
【0072】
また、ばらつきの度合を示す指標としては、上記タイヤ回転軸位置と外縁上の複数点との間の複数の距離の正規化された分散又は標準偏差が用いられる。撮影画像における変形の性質上、ばらつき度合の分布が特異なものにはならないので、処理装置20では、このような標準的なばらつき指標を用いることで容易かつ適正に、タイヤが正対している撮影画像を選択することが可能である。
【0073】
また、制御部21は、正対の度合に係る回転軸位置とタイヤ外周との距離のばらつきの度合が所定の基準を満たす撮影画像が複数ある場合には、選択部として、タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標に基づいて、例えば、図8(b)に示したように、当該複数の撮影画像のうち、上記距離の平均値が最良(ここでは、最大)の撮影画像を選択する。このように、適切に正対している画像が複数ある場合には、他の指標をさらに用いることで、処理装置20では、処理を複雑化せずにタイヤ変形量の特定精度を向上させることが可能となる。
【0074】
また、選択部としての制御部21は、タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標として、図9(a)に示したように、水平方向についての見かけ上のタイヤ幅(タイヤ半径Lthの2倍)、すなわち、両端点間の距離を用いる。撮影面(受光面)が地面に対して垂直であれば、タイヤは基本的に鉛直方向軸についての回転に伴って、水平方向に収縮した画像が得られる。また、画像上の接地幅Lcxvもこれに応じて収縮する。したがって、単純に水平方向についての直線距離を測るだけで、接地幅の精度がよく示されるので、処理装置20では、容易に精度よいタイヤ変形量の特定が可能となる画像が選択される。
【0075】
また、制御部21は、タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標として、図9(b)に示したように、タイヤの見かけ上の表面積を用いる。すなわち、タイヤが相対的に大きく撮影されているほど、特定される距離の精度も向上する。したがって、処理装置20では、精度よくタイヤ変形量を求めることが可能な画像が選択可能となる。
【0076】
また、表面積は、撮影画像におけるタイヤの外縁内の画素数により求められる。デジタル画像の処理では、閉曲線内の面積は、画素数と対応するので、処理装置20では、直接面積を算出することなく容易に適切に正対している画像を選択することが可能となる。
【0077】
また、選択部としての制御部21は、タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標として、図10(a)に示したように、タイヤの接地部分の見かけ上の長さ(見かけ上の接地幅Lcxv)を用いる。上述のように接地部分は水平方向に伸びているので、接地幅をタイヤの水平方向についての幅と同様に用いてより精度の高い画像を容易かつ適切に選択することができる。
【0078】
また、選択部としての制御部21は、タイヤの変形量の特定精度に係る第2の指標として、図9(c)に示したように、タイヤのホイール部分における所定の位置間、例えば、水平方向についての両端点間の見かけ上の長さ(距離)を用いる。ホイールは、タイヤの外縁と略同一面内にあり、撮影面(受光面)に対して同様に傾きを生じるから、ホイールによっても同じようにタイヤの画像上の大きさを判断することができる。特に、ホイールは、変形の計測対象であるタイヤ外縁とは異なり、変形せず、また、路面と接触もしないので、精度よく2点を特定しやすい。したがって、処理装置20では、適切により精度の高い画像を選択することができる。
【0079】
また、制御部21は、選択部として、撮影画像に含まれる前輪のタイヤと後輪のタイヤについて、各々別個に正対している画像を選択する。一般的には、前輪と後輪を共通に取り扱うことで、タイヤの画像数を増大させて、より正対の度合が適正な画像を選択することもできる。一方で、このように、前輪と後輪とを別個に取り扱うことで、前輪タイヤと後輪タイヤとでタイヤの空気圧が異なったり、タイヤのサイズが異なったりする場合にも、各々適切に過積載の評価が可能となる。したがって、処理装置20では、より確実な過積載の判定に適した撮影画像を選択することができる。
【0080】
また、過積載検出装置としての処理装置20の制御部21は、上述の画像処理装置としての処理に加えて、特定部として、選択された撮影画像からタイヤの変形判定量を特定し、判定部として、特定されたタイヤの変形判定量に基づいて車両の過積載を判定する。
このように、処理装置20は、正対しているタイヤを選択するだけではなく、タイヤの変形量の特定及び特定された変形判定量に基づく過積載の判定も行うことができる。これにより、処理装置20では、選択された適切な画像に基づいて精度よく過積載の有無についての判定を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態の過積載検出システム1は、処理装置20を含み、正対した画像の選択に加えて特定部及び判定部としての処理を行う。これにより過積載検出システム1では、選択された適切な正対画像に基づいて精度よく過積載の有無についての判定を行うことができる。
【0082】
また、過積載検出システム1は、上述の処理装置20と、車両の撮影を行う撮影装置10と、を含む。撮影装置10で連続的に得られる複数の撮影画像から、精度よくタイヤの変形判定量が特定可能にタイヤが撮影面に正対した撮影画像を適切に選択し、当該選択した撮影画像を用いて精度よく過積載の有無に係る判定を行うので、過積載検出システム1では、判定の過誤を低減させて精度のよい判定を行うことが可能となる。
【0083】
また、本実施形態のプログラム221は、コンピューター(処理装置20)に、時系列に沿って撮影された走行する同一の車両の複数の撮影画像を取得する取得ステップと、取得された複数の撮影画像の中から、当該車両の荷重に応じたタイヤの変形判定量に基づく過積載の判定に用いられる撮影画像として、撮影装置10の撮影部11の撮影面に対するタイヤの正対の度合が所定の基準を満たす撮影画像を選択する選択ステップと、を実行させる。このようなプログラム221をインストールしてCPU211(制御部21)によりソフトウェア的に処理させるだけで、容易に正対した適切な撮影画像を選択することができる。
【0084】
図11は、過積載判定処理の変形例1を示すフローチャートである。
この過積載判定処理は、図6に示した過積載判定処理のステップS104の代わりにステップS111~S113の処理が含まれている。その他の同一の処理内容については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0085】
ステップS103の処理で“NO”に分岐した場合、制御部21は、取得された画像におけるタイヤ外縁上の複数の位置とタイヤの回転軸位置とを特定し、当該回転軸位置と外縁上の位置との間の距離を各々取得する(ステップS111)。制御部21は、この画像で求められた複数の距離のばらつき(例えば、分散や標準偏差)を算出する(ステップS112)。それから、制御部21の処理は、ステップS101に戻る。
【0086】
ステップS103の処理で“YES”に分岐した場合、制御部21は、これまでに取得された複数の画像について各々取得されているばらつきが最小の画像を選択する(ステップS113)。それから、制御部21の処理は、ステップS105に移行する。
【0087】
すなわち、この変形例1では、取得された複数の画像についてまとめてタイヤ半径のばらつきを求めるのではなく、各画像が取得されるごとにそれぞればらつきが求められ、比較対象の画像がそろったのちには、最小のばらつきの画像を選択する処理のみが行われる。
【0088】
ここでは、図7に示した画像選択処理に係る処理内容を過積載判定処理に含めた場合の例を示したが、図8(b)、図9図10に示した精度向上処理のうちいずれかを実行する図8(a)に示した画像選択処理に係る処理内容が、過積載判定処理に含められてもよい。
【0089】
図12は、過積載判定処理の変形例2を示すフローチャートである。
この過積載判定処理は、変形例1の過積載判定処理におけるステップS112の処理の終了後、そのまま過積載判定処理を終了する点と、ステップS110の処理が追加された点とを除き、変形例1の過積載判定処理と同一である。この過積載判定処理は、画像データが一枚取得されるごとに毎回起動されて処理が行われ、終了する。
【0090】
ステップS108で“NO”に分岐した場合、又はステップS109の処理の後、制御部21は、保持していた距離データを消去する(ステップS110)。それから、制御部21は、過積載判定処理を終了する。
【0091】
すなわち、制御部21は、得られた画像におけるある車両のタイヤがステップS103の条件を満たすまで、毎回ばらつきの大きさを取得して保持し、過積載判定処理を終了する。ステップS103の条件が満たされた場合には、ばらつきが最小の画像を選択して、過積載の判定に係る各処理を行い、判定の終了後に保持していた距離データを消去する。
【0092】
この変形例2の過積載判定処理についても、図7に示した画像選択処理に係る処理内容が含まれたものに限られず、図8(b)、図9図10に示した精度向上処理のうちいずれかを実行する図8(a)に示した画像選択処理に係る処理内容が、過積載判定処理に含められてもよい。
【0093】
以上のように、変形例1又は変形例2の処理装置20でも、より確実に精度よくタイヤの変形判定量を特定することが可能な画像を選択することができる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、撮影装置10の撮影面(受光面)が走行路RWの延在方向に平行であるものとして説明したが、これに限られない。また、撮影装置10の配置も適宜定められてよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、撮影画像の範囲において車両のタイヤが所定の位置を通過した場合に当該車両に係る撮影画像の選択を行うこととしたが、これに限られない。例えば、別途赤外線センサーなどを設けて、撮影範囲への車両の進入及び撮影範囲からの退出を検出し、これらの検出タイミング間の撮影画像から選択を行うこととしてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態では、正対の度合に係る指標として、タイヤの軸位置ORとタイヤの外縁Ts上の各点との間の距離のばらつき、具体的には標準偏差や分散を用いることとして説明したが、x方向について縮小されたタイヤ半径Lthと、y方向について縮小されていないタイヤ半径Ltvとの比や、これらの差分(Ltv-Lth)とタイヤ半径Ltvとの比などを用いてもよい。あるいは、これらのタイヤ半径Lth、Ltvから楕円形状の外縁Tsの離心率を求めて正対の度合に係る指標として用いてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態では、タイヤ外縁やホイールの水平方向について両端の2点間の距離を用いてタイヤの変形量の特定精度に係る指標としたが、水平方向についての幅の成分が含まれていれば、水平方向に対して傾いた2点間の距離であってもよい。ただし、複数の撮影画像間で傾きの角度は統一される必要がある。
【0098】
また、タイヤ外縁内部の面積は、タイヤの回転軸位置からの長軸長(すなわちタイヤ外縁の上端までの距離)および短軸長(すなわちタイヤ外縁の左側端部又は右側端部までの距離)に基づいて直接算出されてもよい。また、長軸長と短軸長の差をばらつきの度合を示す指標として用いてもよい。
【0099】
また、ホイールの2点は、当該ホイール外縁上の点である場合に限られない。また、正対の度合を直接示す値として、タイヤやリムの横幅を用い、これと撮影画像におけるタイヤのサイズとを組み合わせて評価する場合には、タイヤ外縁内の画素数の代わりにホイール外縁の上下両端点間の距離(縦幅)をサイズに係る指標として用いてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では、処理装置20が撮影画像の選択、タイヤの変形判定量の算出、及び過積載の有無に係る判定を全て行うこととしたが、過積載検出システム1において、これらの処理の一部又は全部は、各々別個の制御部(別個の制御部を有するコンピューター)によって行われ、当該複数の制御部(コンピューター)が過積載検出システムに含まれてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、これらの処理は全てCPU211を有する制御部21が実行することとしたが、制御部21が特定の処理専用のハードウェア回路などを備え、当該ハードウェア回路により撮影画像の選択などの一部又は全部の処理がなされてもよい。
【0102】
また、以上の説明では、本発明に係る制御部21の処理動作に係るプログラム221のコンピューター読み取り可能な媒体として不揮発性メモリーからなる記憶部22を例に挙げて説明したが、これに限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、HDD(Hard Disk Drive)や、CD-ROMやDVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、動作の内容や手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 過積載検出システム
10 撮影装置
11 撮影部
12 制御部
13 記憶部
14 通信部
20 処理装置
21 制御部
211 CPU
212 RAM
22 記憶部
221 プログラム
222 諸元データベース
223 判定基準データ
224 画像記録部
23 通信部
24 報知動作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12