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特許69964434-ボロノフェニルアラニン前駆体、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】4-ボロノフェニルアラニン前駆体、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20220128BHJP
   C07B 59/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07F5/02 D CSP
C07F5/02 C
C07B59/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018135799
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020011928
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 裕行
(72)【発明者】
【氏名】辻 厚至
(72)【発明者】
【氏名】大崎 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】水川 陽介
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061508(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/093469(WO,A1)
【文献】特表2017-513930(JP,A)
【文献】特表2017-529312(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129374(WO,A1)
【文献】特開2016-204314(JP,A)
【文献】Neumann, Constanze N.; Hooker, Jacob M.; Ritter, Tobias,Concerted nucleophilic aromatic substitution with 19F- and 18F-,Nature (London, United Kingdom) ,2016年,534(7607),369-373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
C07B 59/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化1】
(一般式(1)中、Rは、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基、下記一般式(2)で表されるボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、または下記一般式(3)で表される環状トリオールボレート基であり、
【化2】
【化3】
は、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールオキシカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)。
【請求項2】
上記一般式(1)で表される化合物中、ヨードニウムイリド基はスピロ環を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の4-ボロノフェニルアラニン前駆体。
【請求項3】
下記一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化4】
(一般式(1)中、Rは、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基、下記一般式(2)で表されるボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、または下記一般式(3)で表される環状トリオールボレート基であり、
【化5】
【化6】
は、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールオキシカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)を、18Fフッ化物イオンを用いて位置選択的に18F標識して、下記式(4)で表される2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化7】
(一般式(4)中、R、R、R、Rおよびnは、一般式(1)中のR、R、R、Rおよびnと同一である)を製造することを特徴とする2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法。
【請求項4】
上記一般式(1)で表される化合物中、ヨードニウムイリド基はスピロ環を有するものであることを特徴とする請求項に記載の2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(4)で表される2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化8】
(一般式(4)中、Rは、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基下記一般式(2)で表されるボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、または下記一般式(3)で表される環状トリオールボレート基であり、
【化9】
【化10】
およびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールオキシカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)を、酸で加水分解することを特徴とする2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-ボロノフェニルアラニン前駆体、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)は、がん細胞に集積した特定のホウ素化合物に中性子を照射し、核分裂によって生じるα線とリチウム粒子とによってがん細胞を破壊する方法である。
【0003】
BNCTの効果を上げるには、がん細胞に集積する特定のホウ素化合物の集積量を正確に確認する必要がある。このため、陽電子断層撮影法(Positron Emission Tomography:PET)を用いて特定のホウ素化合物ががん細胞に集積する集積量を確認する。
【0004】
ところで、BNCTおよびPETで用いる特定のホウ素化合物として、4-ボロノフェニルアラニン(「BPA」ともいう)を18Fで標識したフルオロボロノフェニルアラニン(「18F-FBPA」ともいう)を用いることが一般的である。
【0005】
18F-FBPAの合成方法としては、例えば、BPAを18ガスと反応させて18F-FBPAを得る方法が記載されている(例えば、非特許文献1参照)。また、18Fフッ化物イオンを用いた芳香環へのフッ素化反応として、ベンズアルデヒド体から18F-DOPA(3,4-Dihydroxy-6-[18F]Fluoro-L-Phenyl alanine)を標識合成するルートが報告されている(非特許文献2)。
【0006】
さらに、BPA誘導体を18Fのフッ化物イオンで求核置換反応させて18F-FBPAを得る方法や(例えば、特許文献1参照)、2-[18F]フルオロ-4-ブロモフェニルアラニン誘導体をビスピナコールジボラン等によりホウ素化して18F-FBPAを合成する方法(例えば、特許文献2~4参照)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/061508号
【文献】国際公開第2015/093469号
【文献】国際公開第2015/129374号
【文献】特開2016-204314号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Appl.Radiat.Isot.1991;42,325-328.
【文献】Appl Radiat Isot.1993;44:737-744.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の方法では、18F-FBPAの大量合成が困難であり、1回の合成で数名分の量しか合成できないという問題がある。また、特許文献1の方法は、18Fフッ化物イオンがホウ素と反応するため、目的の18F標識前駆体を合成することができないおそれがある。
【0010】
また、特許文献2および3の方法では、18F標識反応後に、ホウ素化反応等を実施するため、1工程多くなり、合成時間も長くなる。また、18F標識反応後に、パラジウム触媒を使用するため、この触媒の除去や品質検定に手間がかかり、放射線量の減衰が大きくなるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの大量合成を可能とする、4-ボロノフェニルアラニン前駆体、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らの鋭意研究の結果、4-ボロノフェニルアラニン前駆体のボロン酸基について、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうる保護基を使用することにより、18Fフッ化物イオンでフッ素化する際に、ボロン酸基のsp空軌道と反応することなく位置選択的に18F標識が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明にかかる4-ボロノフェニルアラニン前駆体は、下記一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体である。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、加水分解でボロン酸基となり、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基であり、Rは、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)。
【0014】
また、本発明にかかる4-ボロノフェニルアラニン前駆体は、上記発明において、上記一般式(1)で表される化合物中、Rは、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基、トリフルオロボレート基、下記一般式(2)で表されるボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、
【化2】
または下記一般式(3)で表される環状トリオールボレート基
【化3】
であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる4-ボロノフェニルアラニン前駆体は、上記発明において、上記一般式(1)で表される化合物中、ヨードニウムイリド基はスピロ環を有するものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法は、下記一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化4】
(一般式(1)中、Rは、加水分解でボロン酸基となり、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基であり、Rは、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)を、18Fフッ化物イオンを用いて位置選択的に18F標識して、下記式(4)で表される2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化5】
(一般式(4)中、R、R、R、Rおよびnは、一般式(1)中のR、R、R、Rおよびnと同一である)を製造することを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法は、上記発明において、上記一般式(1)で表される化合物において、Rは、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基、トリフルオロボレート基、下記一般式(2)で表されるボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、
【化6】
または下記一般式(3)で表される環状トリオールボレート基
【化7】
であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法は、上記発明において、上記一般式(1)で表される化合物中、ヨードニウムイリド基はスピロ環を有するものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法は、下記一般式(4)で表される2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化8】
(一般式(4)中、Rは、加水分解でボロン酸基となり、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)を、酸で加水分解することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの大量合成を可能とする、4-ボロノフェニルアラニン前駆体、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の4-ボロノフェニルアラニン前駆体、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンの製造方法について詳細に説明する。
【0022】
本明細書において、「C~C」(pおよびqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C~C12アルキル基」という表現は、炭素原子数1~12のアルキル基を示し、「C~C10アリール基」という表現は、炭素原子数6~10のアリール基を示す。
【0023】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」という表現は、無置換、若しくは置換基を1~5個(好ましくは1、2若しくは3個)有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。許容される置換基としては、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-6アルキル基)、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-NH(C1-6アルキル基)、-CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-C(O)H、-NO等が挙げられる。
【0024】
[4-ボロノフェニルアラニン前駆体]
4-ボロノフェニルアラニン前駆体は、下記一般式(1)の化合物である。
【化9】
一般式(1)中、Rは、加水分解でボロン酸基となり、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基であり、Rは、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない。
【0025】
は、加水分解によりボロン酸基となり、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基である。Rとして、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基を選択することにより、4-ボロノフェニルアラニン前駆体を18Fフッ化物イオンでフッ素化する際に、Rのボロン酸基のsp空軌道と反応することなく、位置選択的に18F標識が可能となる。
【0026】
として、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基、トリフルオロボレート基、下記一般式(2)で表されるボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、
【化10】
または下記一般式(3)で表される環状トリオールボレート基
【化11】
を好ましく使用することができる。
【0027】
は、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基である。Rとして、ヒドロキシル基、またはヨードニウムイリド基を選択することにより、金属触媒を使用することなく、18Fフッ化物イオンで大量に18F標識が可能となる。
【0028】
ヨードニウムイリド基は、スピロ環を有するものであることが好ましく、下記式(5)~(9)で表されるヨードニウムイリド基等を使用することができる。
【化12】
中でも、上記式(9)で表されるヨードニウムイリド基が好適である。
【0029】
およびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基である。
【0030】
置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基は、置換基を有していてもよい炭素原子数2~7のアルキルカルボニル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数2~5のアルキルカルボニル基がより好ましい。置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、カプロイル基等が挙げられる。
【0031】
置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基は、置換基を有していてもよい炭素原子数7~9のアリールカルボニル基が好ましい。置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
【0032】
およびRは、ともに水素ではなく、Rおよび/またはRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基である。
【0033】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。
【0034】
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~6のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、tert-ブチル基が好ましい。
【0035】
置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~8のアリール基が好ましい。アリール基は、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、p-ニトロベンジル基などが挙げられる。
【0036】
一般式(1)の化合物の具体例としては、例えば、tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-((7,9-ジオキソ-6,10-ジオキサスピロ[4.5]デカン-8-イリデン)-3-ヨーダニル)-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル))プロパノエート、tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-ヒドロキシ-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)プロパノエート等が挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
一般式(1)の化合物は、ラセミ体であっても、またはS体(DL表示法ではL体)若しくはR体(DL表示法ではD体)であってもよいが、下記一般式(1’)の化合物のようにS体であることが好ましい。
【化13】
一般式(1’)中のR、R、R、R、Rおよびnは、一般式(1)中のものと同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0038】
[2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法]
以下、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法について説明する。
本発明の製造方法における各工程において、反応終了後、各工程の目的化合物は、常法にしたがって反応混合物から単離され得る。目的化合物は、例えば、(i)必要に応じて触媒等の不要物を濾去し、(ii)反応混合物に水、および水と混和しない溶媒(例えば、酢酸エチル、クロロホルム等)を加えて目的化合物を抽出し、(iii)有機層を水洗して、必要に応じて無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥させ、(iv)溶媒を留去することによって得られる。得られた目的化合物は、必要に応じて公知の方法(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)により、さらに精製することができる。また、各工程の目的化合物は、精製することなく次の反応に提供することも可能である。
【0039】
本発明は、一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化14】
(一般式(1)中、Rは、加水分解でボロン酸基となり、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基であり、Rは、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素原子数2~11のアルキルカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数7~11のアリールカルボニル基であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリール基である。ただし、RおよびRは、ともに水素ではない)を、18Fフッ化物イオンを用いて位置選択的に18F標識して、下記式(4)で表される2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体
【化15】
(一般式(4)中、R、R、R、Rおよびnは、一般式(1)中のR、R、R、Rおよびnと同一である)を製造する。
【0040】
本発明の2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法では、一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体のRとして、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基を有するボロン酸誘導体基を選択するため、18Fフッ化物イオンでフッ素化する際に、ホウ素と反応することなく、位置選択的に18F標識が可能となる。
【0041】
サイクロトロンより生成した[18F]フッ化物イオンをイオン交換樹脂カラムに吸着させ、炭酸カリウム等を含む溶離液で溶出させてK18Fとし、これを求核剤として使用し、一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体を18F標識することができる。または、[18F]フッ化物イオンを吸着したイオン交換樹脂カラムを、一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体を含む溶離液で溶離し、所定条件で反応させることにより、4-ボロノフェニルアラニン前駆体を18F標識してもよい。
【0042】
本発明では、一般式(1)で表される4-ボロノフェニルアラニン前駆体のRとして、ヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基を選択するため、高収率で4-ボロノフェニルアラニン前駆体を18F標識することができる。
【0043】
ヒドロキシル基の18Fフッ化物イオンによるフッ素化は、下記一般式(80)で示す脱酸素的フッ素化剤等を介して行う。
【化16】
【0044】
なお、上記の18Fフッ化物イオンによるフッ素化は、4-ボロノフェニルアラニン前駆体に限定されるものではなく、例えば、ボロン酸基を有する芳香族化合物、または複素環化合物においても、ボロン酸基が、加水分解によりボロン酸基となるホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるボロン酸の保護基により保護されたボロン酸誘導体基として存在し、18F標識をする位置にヒドロキシル基、ボロン酸エステル基またはヨードニウムイリド基を有している場合には、位置選択的に18F標識が可能となる。
【0045】
例えば、下記スキーム中の化合物(77)を18Fフッ化物イオンによるフッ素化を行う場合にも、ヒドロキシル基を位置選択的に18F標識することができる。
【化17】
【0046】
化合物(77)は、2-ピラジンカルボニルクロリド(化合物(70))と4-アセチルオキシフェニルアラニン(化合物(71))から合成した3-(4-アセチルオキシフェニル)-2-((2-ピラジンカルボニル)アミノ)プロパン酸(72)と、1-アミノ-3-メチルブチルボロン酸(化合物(73))と、1,8-ジアミノナフタレン(74)から合成した2-(1-アミノ-3-メチルブチル)-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン(化合物(75))により、化合物(76)を合成し、アセチルオキシ基を還元することにより得ることができる。
【0047】
化合物(77)を一般式(80)で示す脱酸素的フッ素化剤等によりフッ素化することにより、化合物(78)が得られ、加水分解により化合物(79)を得ることができる。
【0048】
また、同様にして、アスタチン(At)の放射性同位体を基質に付加することも可能となる。
【0049】
さらに、本発明において、一般式(4)の化合物を脱保護することにより、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンを得ることができる。この工程を行うことにより、3~5個の保護基を一度で効率的に脱離することが可能となる。
【0050】
脱保護は、一般式(4)のR、R、R、Rの種類に応じた公知の種々の方法により行うことができ、特に限定されないが、一般式(4)の化合物を酸または塩基により処理することが好ましく、酸により処理することがより好ましい。
【0051】
脱保護に用いる酸としては、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、スルホン酸、クロム酸等が挙げられ、ハロゲン化水素が好ましい。ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられ、臭化水素が好ましい。ハロゲン化水素酸としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸が挙げられ、臭化水素酸が好ましい。
【0052】
溶媒を使用する場合、使用する溶媒としては、水、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」ともいう)、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0053】
反応温度は、100~250℃が好ましく、120~230℃がより好ましく、130~200℃がさらに好ましい。
反応時間は、1~60分が好ましく、5~30分がより好ましく、10~20分がさらに好ましい。
【0054】
一般式(1)の化合物は、ラセミ体であっても、またはS体(DL表示法ではL体)若しくはR体(DL表示法ではD体)であってもよいが、一般式(1’)の化合物のようにS体であることが好ましい。一般式(1’)の化合物は、例えばキラル触媒等を用いて一般式(1’)の化合物を選択的に合成することができる。あるいは、一般式(1’)の化合物は、公知の精製法を用いてラセミ体から精製されてもよい。
【0055】
2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法の好適な一実施形態として、下記の合成スキームが例示される。
【化18】
一般式(14)中、Phはフェニル基を表す。
【0056】
a-9工程は、放射性化合物を含むので例えば、JFEエンジニアリング(株)製のAM-HB01等の自動合成装置を用いて行うことが好ましい。
【0057】
<a-1工程>
a-1工程は、一般式(11)の化合物をボラン酸の保護基と反応させ、一般式(12)の化合物を得る工程である。a-1工程で用いるホウ酸の保護基としては、ホウ素のsp空軌道に非共有電子対を供与しうるものが好ましく、Rとしては、2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de]-1,3,2-ジアザボリニル基、トリフルオロボレート基、ボロン酸-N-メチルイミノジアセテート基、環状トリオールボレート基が例示される。
【0058】
溶媒は、特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」ともいう)、ジメチルスルホキシド(「DMSO」ともいう)、テトラヒドロフラン(「THF」ともいう)、トルエン、キシレン、またはこれらの混合溶媒を使用することができる。
【0059】
反応温度は、-20℃~120℃が好ましく、室温~70℃がより好ましい。反応時間は、1~24時間が好ましく、5~18時間がより好ましい。
【0060】
トリフルオロボレート基とする場合は、例えば、4-ホルミル-3-フルオロフェニルホウ酸のアセトニトリル懸濁駅液に、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物塩の水溶液を加え、さらにL-酒石酸のTFH溶液等を加え、沈殿物をろ取し、ろ液を減圧濃縮すればよい。反応温度は、0℃~40℃が好ましい。
【0061】
一般式(11)の化合物は、市販品を用いてもよく、公知の合成方法を用いて合成してもよい。
【0062】
<a-2工程>
a-2工程は、一般式(12)の化合物をハロゲン化試薬と反応させて、一般式(13)の化合物を得る工程である。a-2工程のXは、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素であり、入手性の観点から臭素が好ましい。
【0063】
a-2工程で使用するハロゲン化試薬は、N-ブロモスクシンイミド(「NBS」ともいう)、N-ヨードスクシンイミド、ジブロモイソシアヌル酸、1,3-ジヨード-5,5’-ジメチルヒダントイン等が例示される。触媒としては、過酸化物等が例示される。
【0064】
溶媒は、特に限定されないが、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0065】
反応温度は、室温~120℃が好ましく、80~100℃がより好ましい。反応時間は、1~24時間が好ましく、6~12時間がより好ましい。
【0066】
<a-3工程>
a-3工程は、一般式(13)の化合物を修飾アミノ酸と反応させ、一般式(14)の化合物を得る工程である。
【0067】
修飾アミノ酸は、特に限定されないが、例えば、N-ジフェニルメチレングリシンメチルエステル、N-ジフェニルメチレングリシンエチルエステル、N-ジフェニルメチレングリシンtert-ブチルエステル、4-クロロベンジリデングリシンtert-ブチルエステル、N-ジフェニルメチレングリシンベンジルエステルエステル等が挙げられ、N-ジフェニルメチレングリシン-tert-ブチルエステルが好ましい。
【0068】
a-3工程は、塩基の存在下で行うことが好ましい。塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン等が挙げられ、反応速度の観点から水酸化カリウムが好ましい。
【0069】
溶媒は、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられ、トルエンが好ましい。
反応温度は、-20~100℃が好ましく、-10~50℃がより好ましく、-5~10℃がさらに好ましい。反応時間は、1~60分が好ましく、5~45分がより好ましく、10~30分がさらに好ましい。
【0070】
<a-4工程>
a-4工程は、一般式(14)の化合物から、酸性水溶液中にてアミノ酸保護基を脱離させ、一般式(15)の化合物を得る工程である。
【0071】
溶媒は、特に限定されないが、クエン酸、またはシュウ酸水溶液とアセトン、アセトニトリル、DMF、DMSO、THFとの混合溶媒を例示することができる。クエン酸が好ましい。
【0072】
反応温度は、室温~100℃が好ましく、室温~70℃がより好ましい。反応時間は、1~24時間が好ましく、1~5時間がより好ましい。
【0073】
<a-5工程>
a-5工程は、一般式(15)の化合物のアミノ基に、塩基性条件下で保護基を付加させ、一般式(16)の化合物を得る工程である。使用される保護基は、ジ-tert-ブチルジカルボネート(「BocO」ともいう)、ベンジルクロロホルメート等が例示される。
【0074】
使用される塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が例示される。炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが
好ましい。
【0075】
溶媒は、特に限定されないが、アセトン、アセトニトリル、DMF、DMSO、THFを例示することができる。アセトン、アセトニトリル、THFが好ましい。
【0076】
反応温度は、-20~100℃が好ましく、0℃~50℃がより好ましい。反応時間は、1~24時間が好ましく、5~18時間がより好ましい。
【0077】
<a-6工程>
a-6工程は、一般式(16)の化合物を、水素還元して一般式(17)の化合物を得る工程である。使用する触媒としては、パラジウム炭素、水酸化パラジウム等が例示される。
【0078】
溶媒は、特に限定されないが、アセトン、アセトニトリル、THF、メタノール、エタノール等を例示することができる。メタノール、エタノールが好ましい。
【0079】
反応温度は、-20~100℃が好ましく、室温~70℃がより好ましい。反応時間は、1~48時間が好ましく、5~36時間がより好ましい。
【0080】
<a-7工程>
a-7工程は、一般式(17)の化合物を、ジアゾニウムを経てヨウ素化して一般式(18)の化合物を得る工程である。ジアゾニウム反応試薬としては、亜硝酸ナトリム、亜硝酸カリウム、亜硝酸イソブチル等が例示される。ヨウ素化試薬としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が例示される。
【0081】
溶媒は、特に限定されないが、水、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、THF、またはこれらの混合溶媒を例示することができる。
【0082】
反応温度は、-20℃~室温が好ましく、-10~10℃がより好ましい。反応時間は、30分~3時間が好ましく、30分~2時間がより好ましい。
【0083】
<a-8工程>
a-8工程は、一般式(18)の化合物を、過酸化物等の酸化剤の存在下、ヨウ素を超原子価ヨードニウムイリドとして一般式(19)の化合物を得る工程である。酸化剤としては、3-クロロ過安息香酸、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン-ビス(テトラフルオロボラート)等が例示される。
【0084】
溶媒は、クロロホルム等を使用することができる。
反応温度は、0~40℃が好ましく、10~40℃がより好ましい。反応時間は、2時間~12時間が好ましく、2分~8時間がより好ましい。
【0085】
<a-9工程>
a-9工程は、一般式(19)の化合物を、[18F]フッ化物イオンでフッ素化して一般式(20)の化合物を得る工程である。
【0086】
溶媒は、特に限定されないが、DMF、DMSO、THFを使用することができる。
反応温度は、40℃~150℃が好ましく、60~140℃がより好ましい。反応時間は、1分~1時間が好ましく、5分~30分がより好ましい。
【0087】
なお、一般式(18)の化合物を、アミンとハロゲン原子とのクロスカップリング反応を抑制するためtert-ブトキシカルボニル化試薬(Boc化試薬)等で保護した後に、パラジウム触媒を使用し、ピナコールホウ酸誘導体とした後、銅触媒の存在下、フッ素化試薬と反応させることもできる(国際公開第2015/093469号等参照)。
【0088】
また、2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン前駆体の製造方法の好適な他の一実施形態として、下記の合成スキームが例示される。
【化19】
一般式(34)中、Phはフェニル基を表す。
【0089】
b-8工程は、放射性化合物を含むので例えば、JFEエンジニアリング(株)製のAM-HB01等の自動合成装置を用いて行うことが好ましい。
【0090】
<b-1工程>
b-1工程は、一般式(30)の化合物をボラン酸の保護基と反応させ、一般式(31)の化合物を得る工程である。b-1工程で用いるホウ酸の保護基、溶媒、反応時間、反応温度は、a-1工程と同様である。
【0091】
一般式(30)の化合物は、市販品を用いてもよく、公知の合成方法を用いて合成してもよい。
【0092】
<b-2工程>
b-2工程は、一般式(31)の化合物の水酸基に、保護基を付加させ一般式(32)の化合物を得る工程である。保護基Rとしては、炭素数6~12のアリール基が好ましい。
【0093】
溶媒は、特に限定されないが、DMF等を使用することができる。
反応温度は、0℃~60℃が好ましく、10~40℃がより好ましい。反応時間は、1~24時間が好ましく、3~8時間がより好ましい。
【0094】
<b-3工程>
b-3工程は、一般式(32)の化合物をハロゲン化試薬と反応させて、一般式(33)の化合物を得る工程である。b-3工程のXは、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素であり、入手性の観点から臭素が好ましい。b-3工程で用いるハロゲン化試薬、溶媒、反応時間、反応温度は、a-2工程と同様である。
【0095】
<b-4工程>
b-4工程は、一般式(33)の化合物を修飾アミノ酸と反応させ、一般式(34)の化合物を得る工程である。b-4工程で使用する修飾アミノ酸、塩基、溶媒、反応時間、反応温度は、a-3工程と同様である。
【0096】
<b-5工程>
b-5工程は、一般式(34)の化合物から、酸性水溶液中にてアミノ酸保護基を脱離させ、一般式(35)の化合物を得る工程である。b-5工程で使用する溶媒、反応時間、反応温度は、a-4工程と同様である。
【0097】
<b-6工程>
b-6工程は、一般式(35)の化合物のアミノ基に、塩基性条件下で保護基を付加させ、一般式(36)の化合物を得る工程である。b-6工程で使用する保護基、塩基、溶媒、反応時間、反応温度は、a-5工程と同様である。
【0098】
<b-7工程>
b-7工程は、一般式(36)の化合物を、水素還元して一般式(37)の化合物を得る工程である。b-7工程で使用する溶媒、反応時間、反応温度は、a-6工程と同様である。
【0099】
<b-8工程>
b-8工程は、一般式(37)の化合物を、[18F]フッ化物イオンでフッ素化して一般式(38)の化合物を得る工程である。
【0100】
一般式(37)の化合物の[18F]フッ化物イオンでのフッ素化は、まず、クロロホルム等の溶媒を使用し、炭酸銀とともに一般式(80)等の脱酸素的フッ素化剤とヒドロキシル基とを反応させた後、[18F]フッ化物イオンで協奏的に置換反応させる。
【実施例
【0101】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
実施例1は、以下の合成スキームで合成を行った。
【化20】
Phはフェニル基を表す。
【0103】
<合成例1>
2-(4-メチル-3-ニトロフェニル)-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン(化合物(41))の合成
アルゴン雰囲気下、(4-メチル-3-ニトロフェニル)ボロン酸(3.62g、20mmol)、1,8-ジアミノナフタレン(4.8g、15mmol)と4Åモレキュラーシーブス500mgをジメチルスルホキシド、トルエンの混合溶液55mL(1:10(v/v))に溶解させ、12時間Dean-Stark装置中で還流した。反応の終了を薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography、「TLC」ともいう)で確認したのち、反応溶液を室温付近まで冷却した。反応溶液に30mLの水を加え、30mLの酢酸エチルで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウム(「MgSO」ともいう)で乾燥させ、溶媒を留去した。残渣をn-ヘキサン/酢酸エチル=1/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物(41)を得る(5.55g、91.5%)。
【0104】
(化合物(41)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):8.21(s,1H),8.09(d,1H),7.53(d,2H),7.42(d,1H),7.40(t,2H),6.96(d,2H),2.54(s,3H)
LC-MS(ESI)m/z:383[M+H]+.
【0105】
<合成例2>
2-(4-(ブロモメチル)-3-ニトロフェニル)-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン(化合物(42))の合成
化合物(41)(2.8g、9.2mmol)の四塩化炭素溶液(30mL)に、0.05等量のアザビスイソブチルニトリル、1.1等量のN-ブロモスクシンイミド(「NBS」ともいう)を加え、90℃で一晩加熱還流した。溶媒を留去したのち、n-ヘキサン/酢酸エチル=7/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物(42)を得た(3.1g、87%)。
【0106】
(化合物(42)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):8.29(s,1H),8.17(d,1H),7.54(d,1H),7.53(d,2H),7.40(d,2H),6.96(d,2H),4.56(s,2H)
LC-MS(ESI)m/z:304[M+H]+.
【0107】
<合成例3>
tert-ブチル-3-(4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)-2-ニトロフェニル)-2-((ジフェニルメチレン)アミノ)プロパノエート(化合物(43))の合成
化合物(42)(3.1g、8mmol)、N-(ジフェニルメチレン)グリシン-tert-ブチルエステル(2.6g、1.1等量)、0.05等量の(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1’,2’-e]アゼピニウムブロミドをトルエン30mL、9M水酸化カリウム水溶液(「KOH水溶液」ともいう)30mLに溶解させ、0℃で12時間攪拌した。KOH水溶液を除去したのち、トルエン層を30mLのブラインで3回洗浄し、有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧留去することで化合物(43)の粗精製物を得る。化合物(43)の粗精製物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(3.87g、81%)。
【0108】
(化合物(43)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):8.26(s,1H),8.14(d,1H),7.95(d,2H),7.60-7.35(m,13H,Ar),6.96(d,2H),4.35(s,1H),3.38(dd,1H,CH-α),3.13(dd,1H,CH-β),1.42(s,9H)
LC-MS(ESI)m/z:597[M+H]+.
【0109】
<合成例4>
tert-ブチル-3-(4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)-2-ニトロフェニル)-2-アミノプロパノエート(化合物(44))の合成
化合物(43)(3.5g、5.9mmol)を20mLのテトラヒドロフラン(「THF」ともいう)と20mLの20%クエン酸水溶液の混液に溶解させ、2時間室温で攪拌させる。THFを減圧留去したのち、20mLのジエチルエーテルに再溶解させ、20mLのブラインで3回洗浄、MgSO4で乾燥、溶媒を留去することで化合物(44)の粗精製物を得る(2.52g)。
【0110】
(化合物(44)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):8.26(s,1H),8.14(d,1H),7.53-7.40(m,5H,Ar(Arは芳香族を表す)),6.96(d,2H),4.14(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,9H)
LC-MS(ESI)m/z:433[M+H]+.
【0111】
<合成例5>
tert-ブチル-3-(4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)-2-ニトロフェニル)-2-((tert-ブロキシカルボニル)アミノ)プロパノエート(化合物(45))の合成
化合物(44)(2.52g)の粗精製物を20mLのアセトンに溶解し、10mLの炭酸カリウム水溶液(「KCO水溶液」ともいう)を加える。1.2等量のジ-tert-ブチルジカルボネートを反応溶液に加え室温で17時間撹拌する。反応終了をTLCで確認後、アセトンを減圧留去し、酢酸エチルに再溶解し、有機層をブラインで洗浄する。有機層をMgSO4で乾燥させたのち、n-ヘキサン/酢酸エチル=7/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(45)(2.61g、83%、2steps)を得る。
【0112】
(化合物(45)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):8.26(s,1H),8.14(d,1H),7.53-7.40(m,5H,Ar),6.96(d,2H),4.14(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,18H)
LC-MS(ESI)m/z:533[M+H]+.
【0113】
<合成例6>
tert-ブチル-3-(2-アミノ-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパノエート(化合物(46))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(45)(2.5g、4.7mmol)の15mLエタノール溶液を氷冷し、ゆっくりとパラジウム炭素(100mg、21μmol)を加えた。アルゴンを水素に置換後、室温にて30時間攪拌した。アルゴン置換、セライトろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。残渣をn-ヘキサン/酢酸エチル=4/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりオイル状の化合物(46)(1.98g、84%)を得た。
【0114】
(化合物(46)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.53(d,2H),7.40(t,2H),7.21(d,1H),7.05(d,1H),6.96(d,2H),6.73(s,1H),4.68(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,18H)
LC-MS(ESI)m/z:503[M+H]+.
【0115】
<合成例7>
tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-ヨード-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)プロパノエート(化合物(47))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(46)(1.8g、3.6mmol)の2-プロパノール溶液(5mL)を0℃で撹拌し、3.6Mのテトラフルオロホウ酸水溶液を1.33mL(4.8mmol)加える。反応溶液を0℃で30分撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム(3.04g、44mmol)をゆっくりと加え、さらに30分撹拌した。生成した結晶をろ過し、冷メタノールで洗浄後、減圧下乾燥した。結晶をアセトニトリルに再溶解させ、ヨウ化カリウムの水溶液を加え、0℃で30分、続いて室温で30分撹拌した。アセトニトリルを減圧留去後、20mLの酢酸エチルに再溶解させ、有機層を10mLのチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後、20mLのブラインでさらに2回洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させたのち、ろ液を減圧濃縮した。残渣をn-ヘキサン/酢酸エチル=10/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりオイル状の化合物(47)(674mg、31%)を得た。
【0116】
(化合物(47)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.74(d,1H),7.71(s,1H),7.53(d,2H),7.40(t,2H),6.97(d,1H),6.96(d,2H),4.68(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,18H)
LC-MS(ESI)m/z:614[M+H]+.
【0117】
<合成例8>
tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-((7,9-ジオキソ-6,10-ジオキサスピロ[4.5]デカン-8-イリデン)-3-ヨーダニル)-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル))プロパノエート(化合物(48))の合成
化合物(47)(613mg、1mmol)のクロロホルム溶液にメタクロロ過安息香酸(「mCPBA」ともいう)を加え、室温で3時間撹拌した。化合物(47)が全て反応したことをTLCにより確認したのち、6,10-ジオキサスピロ[4.5]デカン-7,9-ジオンの10%炭酸ナトリウム溶液(「NaCO溶液」ともいう)(w/v、2mL,0.33M溶液)を反応溶液に加える。反応溶液をさらに4時間撹拌し、反応の完結をTLCで確認する。反応溶液に水を加え、クロロホルムで3回抽出した。有機層を集め、MgSOで乾燥、溶媒を留去した。残渣にヘキサンと酢酸エチルを適量加え、冷蔵庫中で再結晶させた。結晶を集めることで化合物(48)(266mg、34%)を得た。
【0118】
(化合物(48)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.74(d,1H),7.71(s,1H),7.53(d,2H),7.40(t,H),6.97(d,1H),6.96(d,2H),4.68(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),2.16(m,4H),1.80(m,4H),1.42(s,18H)
LC-MS(ESI)m/z:782[M+H]+.
【0119】
<合成例9>
tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-[18F]フルオロ-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)プロパノエート(化合物(49))の合成
サイクロトロンより生成した[18F]フッ化物イオンをSep-Pak Light Accell Plus QMA Carbonate(46mg)に通しトラップする。トラップした[18F]フッ化物イオンをクリプトフィックス222(3.77mg、10μmol)、KCO(691μg、5μmol)のアセトニトリル(960μL)、水(40μL)混液を用いて溶出し、反応バイアルに移送する。この反応バイアルを140℃、3分加熱し乾固した。さらに少量のアセトニトリルを加え3回共沸を行なった。
続いて化合物(48)(10mg、15.5μmol)のDMF(400μL)溶液で溶解し、反応バイアルに加え、80℃で5分反応を行う。
冷却後、反応バイアルに緩衝液2mL、蒸留水16mLを加え希釈し、Sep-Pak C18を通し、未反応の[18F]フッ化物イオンを除去する。さらに蒸留水2mLで洗浄し、エタノール1mLで溶離し、化合物(49)を得た。
【0120】
<合成例10>
2-[18F]フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン(化合物(50))の合成
化合物(49)の反応溶液に臭化水素(1mL)を加え、150℃で15分加熱した。反応溶液を水で希釈し、フィルターろ過し、HPLCおよびラジオTLCを用いて目的物の生成を確認した。
【0121】
[実施例2]
実施例2は、以下の合成スキームで合成を行った。
【化21】
【0122】
<合成例11>
2-メチル-5-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェノ-ル(化合物(61))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(60)(3.04g、20mmol)、1,8-ジアミノナフタレン(3.84g、24mmol)と4Åモレキュラーシーブス500mgをDMSO、トルエンの混合溶液44mL(1:10(v/v))に溶解させ、12時間Dean-Stark装置中で還流した。反応の終了をTLCで確認したのち、反応溶液を室温付近まで冷却した。反応溶液に30mLの水を加え、30mLの酢酸エチルで3回抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を留去した。残渣をn-ヘキサン/酢酸エチル=1/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物(61)を得る(4.99g、91%)。
【0123】
(化合物(61)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):9.68(s,1H),7.53(d,2H),7.40(t,2H),7.26(d,1H),6.99(d,1H),6.96(d,2H),6.75(s,1H),2.15(s,3H)
LC-MS(ESI)m/z:275[M+H]+.
【0124】
<合成例12>
2-(3-(ベンジルオキシ)-4-メチルフェニル)-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン(化合物(62))の合成
化合物(61)(4.66g、17mmol)をDMF(50mL)に溶解し、ベンジルブロミド(3.55mL、19mmol)と水素化ナトリウム(456mg、19mmol)を加え、反応溶液を室温で6時間撹拌した。TLCを用いて反応の進行を確認したのち、20mLの炭酸カリウムとメタノール溶液を加え、30分撹拌したのち、有機溶媒を減圧留去後、残渣を50mLのクロロホルムに溶解した。有機層を40mLのブラインで3回洗浄し、有機層をMgSOで乾燥した。ろ液を減圧留去することで化合物(62)を得た(5.94g、96%)。
【0125】
(化合物(62)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.53-7.32(m,10H),7.16(d,1H),6.96(d,2H),6.90(s,1H),5.16(s,2H),2.15(s,3H)
LC-MS(ESI)m/z:365[M+H]+.
【0126】
<合成例13>
2-(3-(ベンジルオキシ)-4-(ブロモメチル)フェニル)-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン(化合物(63))の合成
化合物(62)(5.83g、16mmol)の四塩化炭素溶液(40mL)に、0.05等量のアゾビスイソブチロニトリル、1.1等量のNBSを加え、100℃で一晩加熱還流した。溶媒を留去したのち、n-ヘキサン/酢酸エチル=6/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物(63)を得る(5.81g、82%)。
【0127】
(化合物(63)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.53-7.28(m,11H),6.98(s,1H),6.96(d,2H),5.16(s,2H),4.56(s,2H)
LC-MS(ESI)m/z:444[M+H]+.
【0128】
<合成例14>
tert-ブチル-3-(2-(ベンジルオキシ)-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)-2-((ジフェニルメチレン)アミノ)プロパノエート(化合物(64))の合成
4.43gの化合物(63)(10mmol)、3.25gのN-(ジフェニルメチレン)グリシン-tert-ブチルエステル、0.05等量の(R)-4,4-ジブチル-2,6-ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-3H-ジナフト[2,1-c:1’,2’-e]アゼピニウムブロミドをトルエン30mL、9MのKOH水溶液30mLに溶解させ、0℃で12時間攪拌する。KOH層を除去したのち、トルエン層を30mLのブラインで3回洗浄し、有機層をMgSOで乾燥させたのち、溶媒を減圧留去することで化合物(64)の粗精製物を得る。化合物(64)の粗精製物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(5.33g、81%)。
【0129】
(化合物(64)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.95(d,2H),7.63-7.32(m,18H,Ar),7.20(d,1H),6.96(d,2H),6.95(s,1H),5.16(s,2H),4.35(s,1H),3.38(dd,1H,CH-α),3.13(dd,1H,CH-β),1.42(s,9H)
LC-MS(ESI)m/z:659[M+H]+.
【0130】
<合成例15>
tert-ブチル-2-アミノ-3-(2-(ベンジルオキシ)-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)プロパノエート(化合物(65))の合成
化合物(64)(5.0g、7.6mmol)を50mLのTHFと50mLの20%クエン酸水溶液の混液に溶解させ、2時間室温で攪拌させる。THFを減圧留去したのち、50mLのジエチルエーテルに再溶解させ、50mLのブラインで3回洗浄、MgSOで乾燥、溶媒を留去することで化合物(65)の粗精製物を得る(3.66g)。
【0131】
(化合物(65)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.53-7.32(m,10H,Ar),7.20(d,1H),6.96(d,2H),6.95(s,1H),5.16(s,2H),4.14(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,9H)
LC-MS(ESI)m/z:494[M+H]+.
【0132】
<合成例16>
tert-ブチル-3-(2-(ベンジルオキシ)-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパノエート(化合物(66))の合成
化合物(65)(3.66g)の粗精製物を30mLのアセトンに溶解し、10mLのKCO水溶液を加える。1.2等量のBocOを反応溶液に加え室温で17時間撹拌する。反応終了をTLCで確認後、アセトンを減圧留去し、酢酸エチルに再溶解し、有機層をブラインで洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させたのち、n-ヘキサン/酢酸エチル=7/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(66)(3.74g、83%,2steps)を得る。
【0133】
(化合物(66)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):7.53-7.32(m,10H,Ar),7.20(d,1H),6.96(d,2H),6.95(s,1H),5.16(s,2H),4.68(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,18H)
LC-MS(ESI)m/z:595[M+H]+.
【0134】
<合成例17>
tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-ヒドロキシ-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)プロパノエート(化合物(67))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(66)(3.5g、5.9mmol)の15mLエタノール溶液を氷冷し、ゆっくりとパラジウム炭素(100mg、21μmol)を加えた。アルゴンを水素に置換後、室温にて30時間攪拌した。アルゴン置換、セライトろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。残渣をn-ヘキサン/酢酸エチル=7/1を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりオイル状の化合物(67)(2.49g、84%)を得た。
【0135】
(化合物(67)のH-NMR、LC-MS)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):9.68(s,1H),7.53(d,2H),7.40(t,2H),7.31(d,1H),7.03(d,1H),6.96(d,2H),6.80(s,1H),4.68(s,1H),3.54(dd,1H,CH-α),3.29(dd,1H,CH-β),1.42(s,18H)
LC-MS(ESI)m/z:504[M+H]+.
【0136】
<合成例18>
脱酸素的フッ素化剤(化合物(80))を使用した化合物(68)の合成
クロロイミダゾリウムクロライド(化合物(80))(500mg、1.07mmol、1.00equiv)と炭酸銀(「AgCO」ともいう)(147mg、0.530mmol、0.500equiv)が混合され、脱酸素的フッ素化剤(PhenoFluor、化22の化合物(81))は褐色バイアルに保存された。
脱酸素的フッ素化剤(化合物(81))(1.00equiv)と化合物(67)(1.00equiv)、クロロホルム(2mL/mmol)をバイアルに入れ、縣濁液を60℃、4時間攪拌した。沈殿物をろ過により除去し、ろ液は濃縮され、化合物(68)が得られた。脱酸素的フッ素化剤(化合物(81))は下記スキームで製造される。
【0137】
【化22】
【0138】
<合成例19>
脱酸素的フッ素化剤(化合物(80))を使用した化合物(68)の合成
化合物(68)は、下記スキームのように、脱酸素的フッ素化剤(化合物(80))から直接合成してもよい。クロロイミダゾリウムクロライド(化合物(80))(500mg、1.07mmol、1.00equiv)、AgCO(147mg、0.530mmol、0.500equiv、0.50equiv)、および化合物(67)(1.00equiv)、クロロホルム(2mL/mmol)をバイアルに入れ、縣濁液を60℃、4時間攪拌した。沈殿物をろ過により除去し、ろ液は濃縮され、化合物(68)が得られる。
【0139】
【化23】
【0140】
<合成例20>
tert-ブチル-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-[18F]フルオロ-4-(1H-ナフト[1,8-de][1,3,2]ジアザボリニン-2(3H)-イル)フェニル)プロパノエート(化合物(69))の合成
サイクロトロンより生成した[18F]フッ化物イオンをChromafix 30-PS-HCO に通しトラップする。2-ブタノン:エタノール=10:1(1mL)により洗浄する。トラップした[18F]フッ化物イオンを化合物(68)(8.0mg)の2-ブタノン:エタノール:NBu(10:1:0.1)溶液1.0mLを用いて溶離する。溶離液を130℃、15分攪拌し、化合物(69)を得る。化合物(69)(化合物(49)と同一)を、実施例1、合成例10と同様の工程により加水分解することにより、化合物(50)を得ることができる。