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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】車両用ステアリングコラム遮蔽構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B62D1/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018202706
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020069818
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 真
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-57004(JP,A)
【文献】特開2010-173409(JP,A)
【文献】実開平3-55375(JP,U)
【文献】実開昭60-87865(JP,U)
【文献】特開2009-35077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60R 13/08
B62D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングコラムと、
上記ステアリングコラムの上方に配置されるメーターパネルと、
上記ステアリングコラムと上記メーターパネルとの間の隙間を覆うブラインド部材と、
を備え、
上記ブラインド部材は、車幅方向に沿って筒軸が延びる筒状部を有し、上記筒状部は、下側筒壁において上記ステアリングコラムに直接的または間接的に固定され、上側筒壁において上記メーターパネルに直接的または間接的に固定され、上記下側筒壁と上記上側筒壁との間に位置する露出筒壁が車室に臨むように構成されている、車両用ステアリングコラム遮蔽構造。
【請求項2】
上記ステアリングコラムは、上記メーターパネルに対して複数の設定位置に動くことができる可動式であり、上記ステアリングコラムが上記複数の設定位置のうち基準設定位置よりも前後スライド方向の後方設定位置にあるとき、上記ブラインド部材は、上記筒状部の上記下側筒壁における第1固定領域が上記上側筒壁における第2固定領域よりも前後スライド方向の後方側に配置されるように構成されている、請求項1に記載の車両用ステアリングコラム遮蔽構造。
【請求項3】
上記ブラインド部材は、上記筒状部の上記下側筒壁から車両後方へ延出した取付シート部を備え、上記取付シート部は、ステアリングコラム側部材に前後方向について視たときに上に凸の湾曲形状をなすように設けられた下部プレート部に固定される、請求項1または2に記載の車両用ステアリングコラム遮蔽構造。
【請求項4】
上記ブラインド部材は、上記筒状部の上記下側筒壁に上記取付シート部を接合してなる、請求項3に記載の車両用ステアリングコラム遮蔽構造。
【請求項5】
上記ブラインド部材は、上記筒状部と上記取付シート部が同一の素材からなるように構成されている、請求項4に記載の車両用ステアリングコラム遮蔽構造。
【請求項6】
上記ブラインド部材は、メーターパネル側部材に設けられた上部プレート部に上記筒状部の上記上側筒壁が固定され、
上記メーターパネル側部材の上記上部プレート部と、上記ステアリングコラム側部材の上記下部プレート部は、車幅方向の側面視で互いに平行となるように或いは互いの間隔が車両後方に向かうにつれて大きくなるように配置されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の車両用ステアリングコラム遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるステアリングコラムの遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、この種の遮蔽装置が開示されている。この遮蔽装置は、ブラインド部材と、ブラインド部材の一端をインストルメントパネルのメーターパネルに取付けるための上部保持部材と、ブラインド部材の他端をステアリングコラムに取付けるための下部保持部材と、を備えている。ブラインド部材は、可撓性部材である布によって形成されており、メーターパネルとステアリングコラムとの間の隙間を覆う機能を果たす。この遮蔽装置によれば、メーターパネルとステアリングコラムとの間の隙間をブラインド部材で覆うことによって、車室側からインストルメントパネルの内部の部品を見えなくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-235707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の遮蔽装置は、ブラインド部材がインストルメントパネルの内部に収容されている部品に干渉することによって、ブラインド部材にしわが生じ易くなり見栄えが悪いという問題を抱えている。とりわけ、ステアリングコラムをメーターパネルに対して動かすことができる可動式である場合には、ステアリングコラムが動くときにブラインド部材とインストルメントパネルの内部に収容されている部品との相対位置が変化してブラインド部材にしわや弛みが不規則に発生することがある。
そこで、この種の遮蔽装置の設計に際しては、ブラインド部材の見栄えの低下を防ぐための構造が求められている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、メーターパネルとステアリングコラムとの間に設けるブラインド部材の見栄えを良くすることができる車両用ステアリングコラム遮蔽構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両のステアリングコラムと、
上記ステアリングコラムの上方に配置されるメーターパネルと、
上記ステアリングコラムと上記メーターパネルとの間の隙間を覆うブラインド部材と、
を備え、
上記ブラインド部材は、車幅方向に沿って筒軸が延びる筒状部を有し、上記筒状部は、下側筒壁において上記ステアリングコラムに直接的または間接的に固定され、上側筒壁において上記メーターパネルに直接的または間接的に固定され、上記下側筒壁と上記上側筒壁との間に位置する露出筒壁が車室に臨むように構成されている、車両用ステアリングコラム遮蔽構造、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上記の遮蔽構造によれば、ブラインド部材の筒状部は、下側筒壁においてステアリングコラムに直接的または間接的に固定され、上側筒壁においてメーターパネルに直接的または間接的に固定される。このとき、ブラインド部材の筒状部の露出筒壁が車室に臨むようになっている。
【0008】
これにより、メーターパネルの下方に収容されている部品が筒状部のうち露出筒壁以外の部位に干渉してしわが生じても、このしわが生じている部位を露出筒壁によって車室側から覆うことで、ブラインド部材の見栄えが低下するのを防ぐことができる。
【0009】
ブラインド部材が筒状部を有するため、筒状部の露出筒壁が車室に向かう凸形状を形成し易い。これにより、筒状部の露出筒壁が凹んだりして見栄えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0010】
また、ステアリングコラムがメーターパネルに対して動くことができる可動式の場合、ブラインド部材の筒状部がステアリングコラムの動きに追従して変形しても、露出筒壁が車室に向けて突出した状態を維持することができる。このため、ステアリングコラムの動きにかかわらず車室からのブラインド部材の見栄えが良い状態を維持できる。
【0011】
以上のごとく、上記の態様によれば、メーターパネルとステアリングコラムとの間に設けるブラインド部材の見栄えを良くすることができる車両用ステアリングコラム遮蔽構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の車両用ステアリングコラム遮蔽構造の分解斜視図。
図2図1の車両用ステアリングコラム遮蔽構造の組付け時の断面図。
図3図2においてステアリングコラムが基準設定位置とは別の第1設定位置に設定された状態を示す断面図。
図4図2においてステアリングコラムが基準設定位置とは別の第2設定位置に設定された状態を示す断面図。
図5図2においてステアリングコラムが基準設定位置とは別の第3設定位置に設定された状態を示す断面図。
図6図2においてステアリングコラムが基準設定位置とは別の第4設定位置に設定された状態を示す断面図。
図7図2においてブライド部材の変更例を示す断面図。
図8】実施形態2の車両用ステアリングコラム遮蔽構造の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上記の車両用ステアリングコラム遮蔽構造において、上記ステアリングコラムは、上記メーターパネルに対して複数の設定位置に動くことができる可動式であり、上記ステアリングコラムが上記複数の設定位置のうち基準設定位置よりも前後スライド方向の後方設定位置にあるとき、上記ブラインド部材は、上記筒状部の上記下側筒壁における第1固定領域が上記上側筒壁における第2固定領域よりも前後スライド方向の後方側に配置されるように構成されているのが好ましい。
【0015】
この遮蔽構造によれば、ステアリングコラムの後方設定位置では第1固定領域が第2固定領域よりも前後スライド方向の後方側にあるため、ブラインド部材の筒状部に後方への引っ張り荷重が作用する。このため、ステアリングコラムが後方設定位置から上下回動方向に動くときに、ブラインド部材の筒状部のうち露出筒壁よりも前方側の部位が弛んでメーターパネルの下方に収容されている部品に干渉するのを防ぐことができる。
【0016】
上記の車両用ステアリングコラム遮蔽構造において、上記ブラインド部材は、上記筒状部の上記下側筒壁から車両後方へ延出した取付シート部を備え、上記取付シート部は、ステアリングコラム側部材に前後方向について視たときに上に凸の湾曲形状をなすように設けられた下部プレート部に固定されるのが好ましい。
【0017】
この遮蔽構造によれば、ブラインド部材の筒状部と、ステアリングコラム側部材の下部プレート部との間に、取付シート部を介在させることができる。ここで、取付シート部は、筒状部に比べて取付シート部の湾曲形状に倣い易い。このため、湾曲形状をなす下部プレート部にブラインド部材の筒状部を直に固定する場合に比べて、取付け作業が簡単になる。
【0018】
上記の車両用ステアリングコラム遮蔽構造において、上記ブラインド部材は、上記筒状部の上記下側筒壁に上記取付シート部を接合してなるのが好ましい。
【0019】
この遮蔽構造によれば、筒状部及び取付シート部を互いに接合する構造を採用することによってブラインド部材の構成を簡素化できる。
【0020】
上記の車両用ステアリングコラム遮蔽構造において、上記ブラインド部材は、上記筒状部と上記取付シート部が同一の素材からなるように構成されているのが好ましい。
【0021】
この遮蔽構造によれば、ブラインド部材の筒状部及び取付シート部に同一の素材を使用することによって、このブラインド部材に要するコストを低く抑えることができる。
【0022】
上記の車両用ステアリングコラム遮蔽構造において、上記ブラインド部材は、メーターパネル側部材に設けられた上部プレート部に上記筒状部の上記上側筒壁が固定され、
上記メーターパネル側部材の上記上部プレート部と、上記ステアリングコラム側部材の上記下部プレート部は、車幅方向の側面視で互いに平行となるように或いは互いの間隔が車両後方に向かうにつれて大きくなるように配置されているのが好ましい。
【0023】
この遮蔽構造によれば、上部プレート部と下部プレート部を互いの間隔が車両後方に向かうにつれて小さくなるように配置する場合に比べて、ブラインド部材の筒状部のうち露出筒壁にしわや弛みが生じるのを抑えることができる。
【0024】
(実施形態1)
以下、車両用ステアリングコラム遮蔽構造の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
この実施形態の説明のための図面において、特に断りのない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両右方を矢印RHで示すものとする。また、ステアリングコラムの前後スライド方向を矢印D1で示し、ステアリングコラムの上下回動方向を矢印D2で示すものとする。
【0026】
図1に示されるように、実施形態1の車両用ステアリングコラム遮蔽構造(以下、単に「遮蔽構造」ともいう。)1は、車両のステアリングコラム10と、ステアリングコラム10の上方に配置されるメーターパネル20と、ブラインド部材30と、を備えている。
【0027】
ステアリングコラム10及びメーターパネル20はいずれも、樹脂材料からなる1または複数の樹脂成形体によって構成されている。
【0028】
ステアリングコラム10は、上部カバー11と、上部カバー11の下方に配置される下部カバー12と、下部カバー12に取付けられる補助パネル13と、を備えている。上部カバー11と下部カバー12との間に、ステアリングホイール(図示省略)に連結されるステアリングシャフトSが挿通される開口10aが形成されている。
【0029】
補助パネル13は、ステアリングコラム10に対して固定されるステアリングコラム側部材である。この補助パネル13は、前後方向について視たときに上に凸の湾曲形状をなす下部プレート部13aと、下部プレート部13aの下面から下方にそれぞれが突出した複数の係止爪13bと、を有する。
【0030】
補助パネル13は、下部カバー12に設けられている複数の係止穴12aに下部プレート部13aの複数の係止爪13bが嵌め込まれることによって、ステアリングコラム10の下部カバー12に固定されるように構成されている。また、この補助パネル13の下部プレート部13aの上面にブラインド部材30の後述の取付シート部32が固定されるように構成されている。
【0031】
ステアリングコラム10は、アクチュエータの駆動力によって或いは手動操作によって、メーターパネル20に対して後述の設定位置P0,P1,P2,P3,P4を含む複数の設定位置に動くことができるように構成された可動式である。即ち、このステアリングコラム10は、メーターパネル20に対する前後スライド方向(図2中の前後スライド方向D1)の位置調整によるステアリングホイールのテレスコピック動作と、上下回動方向(図2中の上下回動方向D2)の位置調整によるステアリングホイールのチルト動作と、の両方が可能になっている。
【0032】
メーターパネル20は、車両のインストルメントパネルの一部を構成しており、車速などを表示するメーターを覆う透明のメーターカバー21と、メーターカバー21の下方に配置されるメータークラスタ22と、を備えている。
【0033】
ブラインド部材30は、ステアリングコラム10とメーターパネル20との間の開口部である隙間Gを覆うためのものであり、車幅方向に沿って筒軸Lが延びる筒状部31と、筒状部31に固定される取付シート部32と、を有する。
【0034】
筒状部31は、可撓性を有する柔軟なシート材を筒状に丸めて、両端部を接着または縫合によって接合することによって形成される。筒状部31の車幅方向の寸法は、隙間Gの同方向の寸法と同じか或いは隙間Gの同方向の寸法を上回るように設定されている。
【0035】
この筒状部31は、環状断面をなしており、筒壁によって囲まれる筒内空間を有する。このため、ステアリングコラム10の内部で生じた音が隙間Gから車室2に伝播するのをこの筒内空間によって抑えることができる遮音機能を有する。
【0036】
この筒状部31は、上側筒壁31bに接合されるプレート部材23を介してメーターパネル20のメータークラスタ22に固定される。この場合、ブラインド部材30の筒状部31とメーターパネル20のメータークラスタ22との間に、プレート部材23が介装されるようになっている。
【0037】
なお、筒状部31の筒軸Lは、車幅方向に沿っていればよく、筒軸Lが車幅方向に延びている形態や、筒軸Lが車幅方向に対して所定の角度で傾斜して延びている形態などが包含される。また、筒状部31の筒軸Lは、直線であっても曲線であってもよい。
【0038】
プレート部材23は、メーターパネル20に対して固定されるメーターパネル側部材である。このプレート部材23は、前後方向について視たときに上に凸の湾曲形状をなす上部プレート部23aと、上部プレート部23aの上面から上方にそれぞれが突出した複数の係止爪23bと、を有する。
【0039】
プレート部材23は、メータークラスタ22に設けられている複数の係止穴(図示省略)に上部プレート部23aの複数の係止爪23bが嵌め込まれることによって、メータークラスタ22に固定されるように構成されている。また、この上部プレート部23aの下面にブラインド部材30の筒状部31の上側筒壁31bが固定されるように構成されている。
【0040】
取付シート部32は、筒状部31と同一のシート材(可撓性を有する柔軟なシート材)からなり、筒状部31の下側筒壁31aから車両後方へ延出するように構成されている。この取付シート部32の一端部32aの上面が筒状部31の下側筒壁31aに接合されることによって、ブラインド部材30が形成される。即ち、ブラインド部材30は、2つのシート材による分割構造になっている。
【0041】
ブラインド部材30の筒状部31及び取付シート部32を構成するシート材として、典型的にはポリウレタン、ポリ塩化ビニル、オレフィン系エラストマーなどの樹脂材料からなるシート材を用いるのが好ましい。また、このシート材として、シート厚みが0.6~0.8mm程度のものを使用するのが好ましい。
【0042】
取付シート部32は、筒状部31とは反対側の下面が補助パネル13に設けられている下部プレート部13aに固定され、この補助パネル13を介してステアリングコラム10に固定される。この場合、ブラインド部材30の筒状部31とステアリングコラム10の補助パネル13との間に取付シート部32が介装される。
【0043】
上記の遮蔽構造1の組付けについては、ブラインド部材30がプレート部材23を介してメーターパネル20に取付けられ且つ補助パネル13に取付けられてなるモジュール品を予め製作するのが好ましい。このとき、ブラインド部材30が筒状部31を有するため、この筒状部31の筒壁の全周をステアリングコラム側部材及びメーターパネル側部材のそれぞれに対する固定部として使用できる。このため、ブラインド部材30を固定するときの取付作業性に優れている。その後、製作したモジュール品の補助パネル13をステアリングコラム10の下部カバー12に取付けることによって、遮蔽構造1の組付けが完了する。
【0044】
図2に示されるように、ブラインド部材30の筒状部31は、下側筒壁31aにおいてステアリングコラム10に間接的に固定され、上側筒壁31bにおいてメーターパネル20に間接的に固定されるように構成されている。
【0045】
ここで、ステアリングコラム10について「間接的」とは、ブラインド部材30の筒状部31の下側筒壁31aとステアリングコラム10との間に別部材が介在する形態をいう。この形態によれば、ブラインド部材30の筒状部31は、別部材を介してステアリングコラム10に固定される。この別部材は、ステアリングコラム10の一部を構成するステアリングコラム10側の要素であってもよいし、或いはブラインド部材30の一部を構成するブラインド部材30側の要素であってもよい。
【0046】
同様に、メーターパネル20について「間接的」とは、ブラインド部材30の筒状部31の上側筒壁31bとメーターパネル20との間に別部材が介在する形態をいう。この形態によれば、ブラインド部材30の筒状部31は、別部材を介してメーターパネル20に固定される。この別部材は、メーターパネル20の一部を構成するメーターパネル20側の要素であってもよいし、或いはブラインド部材30の一部を構成するブラインド部材30側の要素であってもよい。
【0047】
ブラインド部材30において、筒状部31の下側筒壁31aにおける第1固定領域33は、取付シート部32との間で縫合によって接合される領域である。また、筒状部31の上側筒壁31bにおける第2固定領域34は、プレート部材23の上部プレート部23aとの間で接着によって接合される領域である。
【0048】
ステアリングコラム10が初期位置である基準設定位置P0にあるとき、第1固定領域33及び第2固定領域34は、前後スライド方向D1の位置が概ね同一であり、前後スライド方向D1と直交する方向について互いに重なるように配置される。
【0049】
ブラインド部材30の筒状部31は、筒壁の周方向について、下側筒壁31aと、上側筒壁31bと、露出筒壁31cと、前方筒壁31dの4つの部位に区分可能である。これら4つの部位はいずれも、展開された展開状態で略矩形をなす。
なお、必要に応じては、前方筒壁31dを下側筒壁31a及び上側筒壁31bの少なくとも一方に含めることもできる。
【0050】
露出筒壁31cは、ブラインド部材30の筒状部31のうち、下側筒壁31aと上側筒壁31bとの間に位置する部位である。この露出筒壁31cは、車室2に臨むように構成されており、車室2に向けて突出するような凸形状をなす。この露出筒壁31cは、所定の曲率半径の円弧に沿って延在している。この露出筒壁31cは、筒状部31の一部によって構成されており、ステアリングコラム10が基準設定位置P0にあるときのみならず、ステアリングコラム10の可動範囲内で車室2に向けて突出した状態を維持できるようになっている。
【0051】
前方筒壁31dは、ブラインド部材30の筒状部31のうち、下側筒壁31aと上側筒壁31bとの間で露出筒壁31cよりも前方側に位置する部位である。この前方筒壁31dは、前方に向けて凸形状をなし、露出筒壁31cと同様にステアリングコラム10の可動範囲内で前方に向けて突出した状態を維持するように構成されている。
【0052】
このため、筒状部31の前方筒壁31d及び下側筒壁31aに、メーターパネル20の下方に収容されている部品40との干渉によってしわが生じても、これらの前方筒壁31d及び下側筒壁31aが露出筒壁31cによって覆われており、乗員は車室2からしわの発生を視認することができない。
【0053】
なお、上述の遮蔽構造1において、プレート部材23の上部プレート部23aと補助パネル13の下部プレート部13aは、車幅方向の側面視で互いに平行となるように、或いは互いの間隔が車両後方に向かうにつれて大きくなるように配置されるのが好ましい。
【0054】
上部プレート部23a及び下部プレート部13aをこのように配置することによって、上部プレート部23aと下部プレート部13aを互いの間隔が車両後方に向かうにつれて小さくなるように配置する場合に比べて、ブラインド部材30の筒状部31のうち露出筒壁31cに弛みやしわが生じるのを抑えることができる。
【0055】
また、上述の遮蔽構造1において、補助パネル13の下部プレート部13aは前後スライド方向D1に対して傾斜するように配置されるのが好ましい。これにより、下部プレート部13aのうちブラインド部材30側の先端部によって筒状部31が潰れるのを防ぐことができる。
【0056】
次に、図3図6を参照しながら、固定側であるメーターパネル20に対して可動側であるステアリングコラム10が動くときの状態について説明する。
【0057】
図3に示されるように、ステアリングコラム10は、基準設定位置P0からチルト動作によって上下回動方向D2について上方へと動くことによって第1設定位置P1に設定される。
【0058】
ステアリングコラム10が第1設定位置P1にあるとき、プレート部材23の上部プレート部23aと補助パネル13の下部プレート部13aとの間の間隔Aが基準設定位置P0のときよりも狭くなる。この第1設定位置P1では、ブラインド部材30の筒状部31の上下回動方向D2の厚みが基準設定位置P0のときよりも小さくなる。
【0059】
また、ステアリングコラム10が第1設定位置P1にあるとき、ブラインド部材30の第1固定領域33及び第2固定領域34は、前後スライド方向D1の位置が概ね同一であり、前後スライド方向D1と直交する方向について互いに重なるように配置される。
【0060】
この第1設定位置P1において、ブラインド部材30の筒状部31の露出筒壁31cの全部或いは一部を定める曲率半径は基準設定位置P0のときよりも小さくなるが、露出筒壁31cが車室2に向けて突出した状態は維持される。
【0061】
図4に示されるように、ステアリングコラム10は、基準設定位置P0からテレスコピック動作によって前後スライド方向D1について前方へと動くことによって第2設定位置P2に設定される。
【0062】
ステアリングコラム10が第2設定位置P2にあるとき、ステアリングコラム10とメータークラスタ22との間の間隔Bが基準設定位置P0のときよりも狭くなる。この第2設定位置P2では、ブラインド部材30の筒状部31の上下回動方向D2の厚みは基準設定位置P0のときから殆ど変化しない。
【0063】
また、ステアリングコラム10が第2設定位置P2にあるとき、ブラインド部材30の第1固定領域33が第2固定領域34よりも前後スライド方向D1の前方側に配置される。
【0064】
この第2設定位置P2において、ブラインド部材30の筒状部31の露出筒壁31cの全部或いは一部を定める曲率半径は基準設定位置P0のときと同様であり、露出筒壁31cが車室2に向けて突出した状態が維持される。
【0065】
図5に示されるように、ステアリングコラム10が第3設定位置P3に設定されることによって、上記の間隔A及び間隔Bがいずれも最小となる。この第3設定位置P3では、ブラインド部材30の筒状部31が上斜め前方へ押し潰される。このとき、筒状部31の上下回動方向D2の厚みと前後スライド方向D1の長さはいずれも最小になる。
【0066】
また、ステアリングコラム10が第3設定位置P3にあるとき、ブラインド部材30の第1固定領域33が第2固定領域34よりも前後スライド方向D1の前方側に配置される。
【0067】
この第3設定位置P3において、ブラインド部材30の筒状部31の露出筒壁31cの全部或いは一部を定める曲率半径は基準設定位置P0のときよりも小さくなるが、露出筒壁31cが車室2に向けて突出した状態は維持される。
【0068】
図6に示されるように、ステアリングコラム10が第4設定位置P4に設定されることによって、上記の間隔A及び間隔Bがいずれも最大となる。この第4設定位置P4では、ブラインド部材30の筒状部31が下斜め後方へ引っ張られる。このとき、筒状部31の上下回動方向D2の厚みと前後スライド方向D1の長さはいずれも最大になる。
【0069】
また、ステアリングコラム10が基準設定位置P0から前後スライド方向D1の後方へ動いた後方設定位置である第4設定位置P4にあるとき、第1固定領域33が第2固定領域34よりも前後スライド方向D1の後方側に配置される。即ち、この第4設定位置P4では、第1固定領域33と第2固定領域34との相対位置の関係が、他の設定位置P1,P2,P3に対して前後で逆転している。
【0070】
この第4設定位置P4において、ブラインド部材30の筒状部31の露出筒壁31cの全部或いは一部を定める曲率半径は基準設定位置P0のときよりも大きくなるが、露出筒壁31cが車室2に向けて突出した状態は維持される。
【0071】
なお、ブラインド部材30は、環境温度などの影響によって塑性変形して硬化することがあるが、ステアリングコラム側部材とメーターパネル側部材の両方に固定されているため、ステアリングコラム10が複数の設定位置の間で動くときに両方から圧縮荷重や引っ張り荷重を受けて変形する。このため、ステアリングコラム10が動くときのブラインド部材30の所望の追従性能を確保できる。
【0072】
以下に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0073】
上記の遮蔽構造1によれば、ブラインド部材30の筒状部31は、下側筒壁31aにおいてステアリングコラム10に間接的に固定され、上側筒壁31bにおいてメーターパネル20に間接的に固定される。このとき、ブラインド部材30の筒状部31の露出筒壁31cが車室2に臨むようになっている。
【0074】
これにより、メーターパネル20の下方に収容されている部品40が筒状部31のうち露出筒壁31c以外の部位に干渉してしわが生じても、このしわが生じている部位を露出筒壁31cによって車室2側から覆うことで、ブラインド部材30の見栄えが低下するのを防ぐことができる。
【0075】
ブラインド部材30が筒状部31を有するため、筒状部31の露出筒壁31cが車室2に向かう凸形状を形成し易い。これにより、筒状部31の露出筒壁31cが凹んだりして見栄えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0076】
また、ブラインド部材30の筒状部31がステアリングコラム10の動きに追従して変形しても、露出筒壁31cが車室2に向けて突出した状態を維持することができる。このため、ステアリングコラム10の動きにかかわらず、即ちステアリングコラム10がメーターパネル20に対して複数の設定位置P0,P1,P2,P3,P4のいずれに動いたときでも、車室2からのブラインド部材30の見栄えが良い状態を維持できる。
【0077】
従って、メーターパネル20とステアリングコラム10との間に設けるブラインド部材30の見栄えを良くすることができる遮蔽構造1を提供することができる。
【0078】
上記の遮蔽構造1によれば、ステアリングコラム10の後方設定位置である第4位置P4では第1固定領域33が第2固定領域34よりも前後スライド方向D1の後方側にあるため、ブラインド部材30の筒状部31に後方への引っ張り荷重が作用する。このため、ステアリングコラム10が第4位置P4から上下回動方向D2に動くときに、ブラインド部材30の筒状部31のうち露出筒壁31cよりも前方側の部位が弛んでメーターパネル20の下方に収容されている部品40に干渉するのを防ぐことができる。
【0079】
上記の遮蔽構造1によれば、ブラインド部材30の筒状部31と、補助パネル13の下部プレート部13aとの間に、取付シート部32を介在させることができる。ここで、取付シート部32は、筒状部31に比べて下部プレート部13aの湾曲形状に倣い易い。このため、湾曲形状をなす下部プレート部13aにブラインド部材30の筒状部31を直に固定する場合に比べて、取付け作業が簡単になる。
【0080】
上記の遮蔽構造1によれば、筒状部31及び取付シート部32を互いに接合する構造を採用することによってブラインド部材30の構成を簡素化できる。
【0081】
上記の遮蔽構造1によれば、ブラインド部材30の筒状部31及び取付シート部32に同一の素材を使用することによって、このブラインド部材30に要するコストを低く抑えることができる。
【0082】
上記の遮蔽構造1によれば、ブラインド部材30の筒状部31を構成するシート材の寸法を車種に応じて適宜に変更することによって、汎用性の高いブラインド部材30を提供できる。
【0083】
なお、上記の遮蔽構造1に特に関連する変更例として、ブラインド部材30の分割構造(シート材の数や分割箇所)を適宜に変更した実施形態を採用することもできる。
【0084】
図7に示される変更例では、ブラインド部材30は、筒状部31の下側筒壁31a、上側筒壁31b及び前方筒壁31dと、取付シート部32を構成する1つのシート材と、筒状部31の下側筒壁31a、上側筒壁31b及び露出筒壁31cを構成する1つのシート材と、が互いに縫合されることによって構成されている。即ち、この変更例では、シート材の数については図2の場合と同様である一方で、ブラインド部材30におけるシート材の分割箇所が図2の場合とは相違している。この変更例において、各シート材を必要に応じて複数に分割することもできる。
【0085】
次に、実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0086】
(実施形態2)
図8に示されるように、実施形態2の遮蔽構造101は、ブラインド部材130の構造についてのみ、実施形態1の遮蔽構造1のものを相違している。この遮蔽構造101において、可撓性を有する柔軟なシート材を筒状に丸めて一端部を下側筒壁31aに接合することによって、筒状部31及び取付シート部32を有するブラインド部材130が形成される。即ち、実施形態1のブラインド部材30が2つのシート材で構成されているのに対して、このブラインド部材130は1つのシート材によって構成されている。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0087】
実施形態2によれば、実施形態1の遮蔽構造1に比べて遮蔽構造101の部品点数を少なく抑えることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0088】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0089】
上述の実施形態では、ブラインド部材30,130の筒状部31を、下側筒壁31aにおいてステアリングコラム10に間接的に固定し、上側筒壁31bにおいてメーターパネル20に間接的に固定する場合について例示したが、これに代えて、ブラインド部材30,130の筒状部31を下側筒壁31aにおいてステアリングコラム10に直接的に固定する構造や、ブラインド部材30,130の筒状部31を上側筒壁31bにおいてメーターパネル20に直接的に固定する構造を採用することもできる。
【0090】
なお、ブラインド部材30,130の筒状部31を下側筒壁31aにおいてステアリングコラム10に直接的に固定する構造を採用する場合には、取付シート部32を省略することができ、或いは取付シート部32に相当する部位をステアリングコラム10またはステアリングコラム側部材に設けることができる。
【0091】
上述の実施形態では、ブラインド部材30,130の筒状部31と取付シート部32を同一の素材によって構成する場合について例示したが、これに代えて、筒状部31と取付シート部32を異なる素材によって構成することもできる。例えば、筒状部31を、リウレタン、ポリ塩化ビニル、オレフィン系エラストマーなどの樹脂材料からなる可撓性シートによって構成し、この可撓性シートよりも可撓性が低いシートによって取付シート部32を構成することができる。
【0092】
上述の実施形態では、可動式のステアリングコラム10に適用される遮蔽構造1,101について例示したが、この遮蔽構造1,101をメーターパネル20に対して動かない固定式のステアリングコラムに適用することもできる。
【符号の説明】
【0093】
1,101 車両用ステアリングコラム遮蔽構造
2 車室
10 ステアリングコラム
13 補助パネル(ステアリングコラム側部材)
13a 下部プレート部
20 メーターパネル
23 プレート部材(メーターパネル側部材)
23a 上部プレート部
30,130 ブラインド部材
31 筒状部
31a 下側筒壁
31b 上側筒壁
31c 露出筒壁
32 取付シート部
33 第1固定領域
34 第2固定領域
D1 前後スライド方向
L 筒軸
G 隙間
P0 基準設定位置
P4 後方設定位置
P0,P1,P2,P4 設定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8