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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】磁気センサ及び位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/16 20060101AFI20220128BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
G01D5/16 M
G01D5/245 110B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018215361
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020085480
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】蔡 永福
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/084434(WO,A1)
【文献】特開2009-300150(JP,A)
【文献】特開2017-181068(JP,A)
【文献】特開2014-38671(JP,A)
【文献】特開2018-4459(JP,A)
【文献】特開2018-159692(JP,A)
【文献】特開2016-170166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137804(US,A1)
【文献】特開2002-26426(JP,A)
【文献】特開2017-191626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01R 33/00-33/18
G01B 7/00-7/34
H05K 9/00
G11B 5/33-5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子と、
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する第1磁性体と、
前記第1磁性体の前記第1面上であって、前記第1面側から見たときにおいて前記第1磁性体の短手方向略中央に位置する第2磁性体と
を備え、
前記第1面に平行であって、前記第1磁性体の短手方向と平行な方向を第1方向とし、前記第1面に平行であって、前記第1方向に対して直交する方向を第2方向とし、前記第1面に直交する方向を第3方向とした場合、前記第1方向、前記第2方向及び前記第3方向の各方向に沿って見たときに、前記第1磁性体及び前記第2磁性体は、いずれも略矩形状を有し、
前記磁気検出素子は、前記第1磁性体を間に挟んで前記第2磁性体と対向するようにして設けられ、平面視にて前記第1磁性体の短手方向における略中央に位置しており、
前記磁気検出素子の感磁方向は、前記第1方向と略平行な方向であり、
前記第1磁性体の短手方向の幅W1は、前記第2磁性体の短手方向の幅W2よりも大きく、
前記第3方向に沿って見たときに、前記磁気検出素子は、前記第2磁性体の幅W2の範囲内に位置することを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
磁気検出素子と、
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する第1磁性体と、
前記第1磁性体の前記第1面上であって、前記第1面側から見たときにおいて前記第1磁性体の短手方向略中央に位置する第2磁性体と
を備え、
前記第1面に平行であって、前記第1磁性体の短手方向と平行な方向を第1方向とし、前記第1面に平行であって、前記第1方向に対して直交する方向を第2方向とし、前記第1面に直交する方向を第3方向とした場合、前記第1方向及び前記第3方向の各方向に沿って見たときに、前記第1磁性体及び前記第2磁性体は、いずれも略矩形状を有し、前記第3方向に沿った断面を前記第2方向に沿って見たときに、前記第2磁性体の切断面の形状は略台形状又は略逆台形状を有し、
前記磁気検出素子は、前記第1磁性体を間に挟んで前記第2磁性体と対向するようにして設けられ、平面視にて前記第1磁性体の短手方向における略中央に位置しており、
前記磁気検出素子の感磁方向は、前記第1方向と略平行な方向であり、
前記第1磁性体の短手方向の幅W1は、前記第2磁性体の短手方向の幅W2よりも大きく、
前記第3方向に沿って見たときに、前記磁気検出素子は、前記第2磁性体の幅W2の範囲内に位置することを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】
磁気検出素子と、
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、平面視略長方形状の第1磁性体と、
前記第1磁性体の前記第1面上であって、平面視において前記第1磁性体の短手方向略中央に位置する平面視略長方形状の第2磁性体と
を備え、
前記磁気検出素子は、前記第1磁性体を間に挟んで前記第2磁性体と対向するようにして設けられ、平面視にて前記第1磁性体の短手方向における略中央に位置しており、
前記磁気検出素子の感磁方向は、前記第1磁性体及び前記第2磁性体の短手方向と略平行な方向であり、
前記第1磁性体の短手方向の幅W1は、前記第2磁性体の短手方向の幅W2よりも大きく、
前記第2磁性体が、前記第1磁性体の前記第1面との間に所定の間隔をあけて設けられていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項4】
前記第2磁性体が、前記第1磁性体の前記第1面との間に所定の間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第2磁性体は、前記第1磁性体の前記第1面上に接面して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1磁性体の短手方向の幅W1及び前記第2磁性体の短手方向の幅W2の関係は、前記磁気検出素子の感磁方向に直交する方向であって、前記第1磁性体及び前記第2磁性体の厚み方向に平行な方向の外部磁場を前記感磁方向の磁場に実質的に変換させない関係であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第1磁性体の短手方向の幅W1に対する前記第2磁性体の短手方向の幅W2の比W2/W1が、0.2~0.8であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記第1磁性体の厚みT1が、前記第2磁性体の厚みT2よりも小さいことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記第1磁性体の厚みT1に対する前記第2磁性体の厚みT2の比T2/T1が、2~20であることを特徴とする請求項に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記第2磁性体の短手方向の幅W2が、15μm以上30μm未満であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記第2磁性体の厚みT2が、3~20μmであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項12】
複数の前記磁気検出素子が、前記第1磁性体の長手方向に沿って所定の間隔で並設され、電気的に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項13】
複数の前記磁気検出素子が、前記第1磁性体の短手方向に沿って所定の間隔で並設され、電気的に直列に接続されてなり、
平面視において、前記第1磁性体の短手方向に沿って並設されてなる前記複数の磁気検出素子からなる群が前記第1磁性体の略中央に位置することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項14】
複数の前記磁気検出素子が、前記第1磁性体の長手方向及び短手方向に沿って所定の間隔で行列状に並設され、電気的に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項15】
複数の前記第1磁性体が、前記第1磁性体の短手方向に沿って所定の間隔をあけて並設されており、
前記各第1磁性体の前記第1面上に前記第2磁性体が位置しており、
前記磁気検出素子は、前記各第1磁性体を間に挟んで前記各第2磁性体と対向するようにして位置することを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項16】
移動体の移動に伴う外部磁場の変化に基づき検出信号を出力する磁気検出部と、
前記磁気検出部から出力された前記検出信号に基づき、前記移動体の位置を検出する位置検出部と
を備え、
前記磁気検出部は、請求項1~15のいずれかに記載の磁気センサを有することを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ及び位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途において、物理量(例えば、移動体の回転移動や直線的移動による位置や移動量(変化量)等)を検出するための物理量検出装置(位置検出装置)が用いられている。この物理量検出装置としては、外部磁場の変化を検出可能な磁気センサを備えるものが知られており、外部磁場の変化に応じた信号が磁気センサから出力される。
【0003】
磁気センサは、被検出磁界を検出する磁気センサ素子を有しており、かかる磁気センサ素子としては、外部磁場の変化に応じて抵抗が変化する磁気抵抗効果素子(AMR素子、GMR素子、TMR素子等)や、いわゆるホール効果を利用したホール素子等が知られている。
【0004】
このような磁気センサ素子は、所定の使用磁場範囲を有するため、磁気センサ素子に印加される磁界の磁場強度が、当該使用磁場範囲外である場合、当該磁界の磁場強度を使用磁場範囲内に調整する必要がある。従来、磁気センサ素子に印加される磁界の磁場強度を調整するために、当該磁場強度を減衰させるための磁気シールドを有する磁気センサが知られている(特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-535845号公報
【文献】特表2017-502298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記磁気センサにおいては、検出すべき磁界(被検出磁界)の磁場方向と磁気センサ素子の感磁方向とを互いに一致させることで、被検出磁界の変化に応じた信号が出力される。当該磁気センサを有する位置検出装置は、被検出磁界を発生可能な磁界発生部(例えば磁石等)を有する。しかし、当該磁界発生部からは、被検出磁界のみならず、それと異なる磁場方向の磁場(外乱磁場)も発生する。この外乱磁場は、その磁場方向を変化させて、被検出磁界に重畳されて磁気センサ素子に印加されることがある。これにより、被検出磁界の変化に応じた信号にノイズが発生し、計測誤差の要因となってしまう。特に、位置検出装置の小型化の要請により、磁気センサ(磁気センサパッケージ)のさらなる小型化が要求されることで、磁気センサ素子と磁界発生部との距離が小さくなり、その結果として外乱磁場によるノイズが大きくなってしまうおそれがある。
【0007】
上記磁気センサにおいては、磁気センサ素子に印加される磁界の磁場強度が磁気センサ素子の使用磁場範囲内に調整され得るものの、真に検出すべき磁界のみの磁場強度が調整され得るものではないため、外乱磁場による耐ノイズ性に問題がある。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、外乱磁場によるノイズを小さくすることができ、被検出磁界の変化に応じて高精度な信号を出力可能な磁気センサ及び位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、磁気検出素子と、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する第1磁性体と、前記第1磁性体の前記第1面上であって、前記第1面側から見たときにおいて前記第1磁性体の短手方向略中央に位置する第2磁性体とを備え、前記第1面に平行であって、前記第1磁性体の短手方向と平行な方向を第1方向とし、前記第1面に平行であって、前記第1方向に対して直交する方向を第2方向とし、前記第1面に直交する方向を第3方向とした場合、前記第1方向、前記第2方向及び前記第3方向の各方向に沿って見たときに、前記第1磁性体及び前記第2磁性体は、いずれも略矩形状を有し、前記磁気検出素子は、前記第1磁性体を間に挟んで前記第2磁性体と対向するようにして設けられ、平面視にて前記第1磁性体の短手方向における略中央に位置しており、前記磁気検出素子の感磁方向は、前記第1方向と略平行な方向であり、前記第1磁性体の短手方向の幅W1は、前記第2磁性体の短手方向の幅W2よりも大きく、前記第3方向に沿って見たときに、前記磁気検出素子は、前記第2磁性体の幅W2の範囲内に位置することを特徴とする磁気センサを提供する。
本発明は、磁気検出素子と、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する第1磁性体と、前記第1磁性体の前記第1面上であって、前記第1面側から見たときにおいて前記第1磁性体の短手方向略中央に位置する第2磁性体とを備え、前記第1面に平行であって、前記第1磁性体の短手方向と平行な方向を第1方向とし、前記第1面に平行であって、前記第1方向に対して直交する方向を第2方向とし、前記第1面に直交する方向を第3方向とした場合、前記第1方向及び前記第3方向の各方向に沿って見たときに、前記第1磁性体及び前記第2磁性体は、いずれも略矩形状を有し、前記第3方向に沿った断面を前記第2方向に沿って見たときに、前記第2磁性体の切断面の形状は略台形状又は略逆台形状を有し、前記磁気検出素子は、前記第1磁性体を間に挟んで前記第2磁性体と対向するようにして設けられ、平面視にて前記第1磁性体の短手方向における略中央に位置しており、前記磁気検出素子の感磁方向は、前記第1方向と略平行な方向であり、前記第1磁性体の短手方向の幅W1は、前記第2磁性体の短手方向の幅W2よりも大きく、前記第3方向に沿って見たときに、前記磁気検出素子は、前記第2磁性体の幅W2の範囲内に位置することを特徴とする磁気センサを提供する。
【0010】
前記磁気センサにおいて、前記第2磁性体が、前記第1磁性体の前記第1面との間に所定の間隔をあけて設けられていればよく、前記第1磁性体の短手方向の幅W1及び前記第2磁性体の短手方向の幅W2の関係は、前記磁気検出素子の感磁方向に直交する方向であって、前記第1磁性体及び前記第2磁性体の厚み方向に平行な方向の外部磁場を前記感磁方向の磁場に実質的に変換させない関係であればよい。
また本発明は、磁気検出素子と、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、平面視略長方形状の第1磁性体と、前記第1磁性体の前記第1面上であって、平面視において前記第1磁性体の短手方向略中央に位置する平面視略長方形状の第2磁性体とを備え、前記磁気検出素子は、前記第1磁性体を間に挟んで前記第2磁性体と対向するようにして設けられ、平面視にて前記第1磁性体の短手方向における略中央に位置しており、前記磁気検出素子の感磁方向は、前記第1磁性体及び前記第2磁性体の短手方向と略平行な方向であり、前記第1磁性体の短手方向の幅W1は、前記第2磁性体の短手方向の幅W2よりも大きく、前記第2磁性体が、前記第1磁性体の前記第1面との間に所定の間隔をあけて設けられていることを特徴とする磁気センサを提供する。
【0011】
前記磁気センサにおいて、前記第1磁性体の短手方向の幅W1に対する前記第2磁性体の短手方向の幅W2の比W2/W1が、0.2~0.8であればよく、前記第1磁性体の厚みT1が、前記第2磁性体の厚みT2よりも小さければよく、前記第1磁性体の厚みT1に対する前記第2磁性体の厚みT2の比T2/T1が、2~20であればよい。
【0012】
記磁気センサにおいて、前記第2磁性体の短手方向の幅W2が、15μm以上30μm未満であればよく、前記第2磁性体の厚みT2が、3~20μmであればよい。
【0013】
前記磁気センサにおいて、前記第2磁性体は、前記第1磁性体の前記第1面上に接面して設けられていてもよいし、前記第1磁性体の前記第1面との間に所定の間隔をあけて設けられていてもよい。
【0014】
前記磁気センサにおいて、複数の前記磁気検出素子が、前記第1磁性体の長手方向に沿って所定の間隔で並設され、電気的に直列に接続されていてもよいし、前記第1磁性体の短手方向に沿って所定の間隔で並設され、電気的に直列に接続されていてもよく、後者の場合に、平面視において、前記第1磁性体の短手方向に沿って並設されてなる前記複数の磁気検出素子からなる群が前記第1磁性体の略中央に位置していればよい。また、前記磁気センサにおいて、複数の前記磁気検出素子が、前記第1磁性体の長手方向及び短手方向に沿って所定の間隔で行列状に並設され、電気的に直列に接続されていてもよい。
【0015】
前記磁気センサにおいて、複数の前記第1磁性体が、前記第1磁性体の短手方向に沿って所定の間隔をあけて並設されており、前記各第1磁性体の前記第1面上に前記第2磁性体が位置しており、前記磁気検出素子は、前記各第1磁性体を間に挟んで前記各第2磁性体と対向するようにして位置することができる。
【0016】
また、本発明は、移動体の移動に伴う外部磁場の変化に基づき検出信号を出力する磁気検出部と、前記磁気検出部から出力された前記検出信号に基づき、前記移動体の位置を検出する位置検出部とを備え、前記磁気検出部は、上記磁気センサを有することを特徴とする位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外乱磁場によるノイズを小さくすることができ、被検出磁界の変化に応じて高精度な信号を出力可能な磁気センサ及び位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態における磁気検出素子部の概略構成を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態における磁気検出素子の概略構成を示す断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る磁気センサの概略構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る磁気センサが有する回路構成の一態様の概略構成を示す回路図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る磁気センサが有する回路構成の他の態様の概略構成を示す回路図である。
図9図9は、本発明の他の実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図10図10は、本発明の他の実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図11図11は、図10に示す磁気センサにおける磁気検出素子部の概略構成を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の一実施形態における位置検出装置の概略構成を示す側面図である。
図13図13は、試験例1におけるシミュレーション結果を示すグラフである。
図14図14は、試験例2におけるシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図であり、図2は、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す斜視図であり、図3は、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す側面図であり、図4は、本実施形態における磁気検出素子部の概略構成を示す斜視図であり、図5は、本実施形態における磁気検出素子の概略構成を示す断面図であり、図6は、本実施形態に係る磁気センサの概略構成を示すブロック図であり、図7は、本実施形態に係る磁気センサが有する回路構成の一態様の概略構成を示す回路図であり、図8は、本実施形態に係る磁気センサが有する回路構成の他の態様の概略構成を示す回路図である。
【0020】
なお、本実施形態に係る磁気センサにおいて、必要に応じ、いくつかの図面中、「X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向」を規定している。ここで、X軸方向及びY軸方向は、磁気センサ部の面内における互いに直交する方向であり、Z軸方向は、磁気センサ部の厚さ方向である。
【0021】
本実施形態に係る磁気センサ1は、外部磁場の変化に基づいてセンサ信号Sを出力する少なくとも一つの磁気検出素子部2と、磁気検出素子部2のZ軸方向における上方に設けられてなる磁気シールド3と、センサ信号Sに基づいて物理量を算出する演算部4とを備える。
【0022】
磁気シールド3は、第1面31A及び第1面31Aに対向する第2面31Bを有し、平面視略長方形状の第1磁気シールド31と、第1磁気シールド31の第1面31A上であって、第1磁気シールド31の短手方向における略中央に位置する第2磁気シールド32とを含む。第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32は、一体化されているものであってもよいし、別体のものであってもよい。
【0023】
磁気シールド3(第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32)は、相対的に高い透磁率(例えば、2×10-5~8×10-4(H/m)程度の透磁率)を有する軟磁性材料により構成されるのが好ましく、例えば、MnZnフェライト、NiZnフェライト、CuZnフェライト等のスピネルフェライト;バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の六方晶フェライト;YIG(イットリウム・鉄・ガーネット)等のガーネットフェライト;γ-Fe23(マグヘマイト);パーマロイ(NiFe);CoFe;CoFeSiB;CoZrNb等が挙げられる。
【0024】
磁気シールド3において、第1磁気シールド31の短手方向の幅W1は、第2磁気シールド32の短手方向の幅W2よりも大きければよく、それらの幅W1,W2の関係が、外部磁場のうちのZ軸方向の磁場(外乱磁場)をX軸方向(磁気センサ素子の感磁方向)の磁場に実質的に変換させないような関係であればよい。なお、「Z軸方向の磁場をX軸方向の磁場に実質的に変換させない」とは、Z軸方向の磁場のX軸方向の磁場への変換率が1.1%以下であることを意味し、当該変換率が0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのが特に好ましい。なお、「Z軸方向の磁場のX軸方向の磁場への変換率」は、磁気センサ1に対して所定の磁場強度のZ軸方向の磁場を印加させたときにおける、感磁方向がX軸方向の磁気検出素子20を有する磁気検出素子部2により感知されたX軸方向の磁場強度の、Z軸方向の印加磁場の磁場強度に対する百分率として求められる値である。
【0025】
第1磁気シールド31の短手方向の幅W1に対する第2磁気シールド32の短手方向の幅W2の比(W2/W1)は、0.2~0.8であるのが好ましく、0.2~0.7であるのがより好ましい。当該比(W2/W1)が0.2~0.8であれば、Z軸方向の磁場のX軸方向の磁場への変換率を0.8%以下にすることができ、磁気センサ1にて検出すべきX軸方向の磁場(被検出磁界)の変化に応じて高精度な信号が磁気検出素子部2から出力され得る。一方で、上記比(W2/W1)が0.8を超えると、Z軸方向の磁場のX軸方向の磁場への変換率が大きくなる傾向にあり、磁気検出素子部2から出力される信号にノイズが含まれてしまうおそれがある。
【0026】
第2磁気シールド32の短手方向の幅W2は、15μm以上30μm未満であるのが好ましく、22~26μmであるのがより好ましい。第2磁気シールド32の短手方向の幅W2が15μm未満であると、磁気シールド3と磁気検出素子部2(磁気検出素子20)とのX軸方向における位置ずれ(製造時におけるバラつきにより生じ得る位置ずれ)等により磁気センサ1の特性が大きく変動してしまうおそれがあり、30μm以上であると、磁気シールド3が飽和してしまうおそれがある。
【0027】
第1磁気シールド31の厚みT1は、第2磁気シールド32の厚みT2よりも小さいのが好ましく、厚みT1に対する厚みT2の比(T2/T1)が2~20であるのがより好ましく、2~16.7であるのが特に好ましい。厚みT1が厚みT2よりも小さく、上記比(T2/T1)が2~20であれば、Z軸方向の磁場をX軸方向の磁場に実質的に変換させないようにすることができ、磁気センサ1にて検出すべきX軸方向の磁場(被検出磁界)の変化に応じて高精度な信号が磁気検出素子部2から出力され得る。一方、上記比(T2/T1)が2未満又は20を超えると、Z軸方向の磁場のX軸方向の磁場への変換率が大きくなりやすく、磁気検出素子部2から出力される信号にノイズが含まれてしまうおそれがある。
【0028】
第2磁気シールド32の厚みT2は、3~20μmであるのが好ましく、6~15μmであるのがより好ましい。第2磁気シールド32の厚みT2が3μm未満であると第2磁気シールド32がX軸方向の磁場により飽和され、第2磁気シールド32におけるX軸方向の磁場に対するシールドとしての機能が低減するおそれがあり、20μmを超えると半導体製造における一般的なウェハプロセスを利用した第2磁気シールド32の作製が困難になるおそれがある。
【0029】
磁気シールド3(第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32)の長手方向の長さは特に限定されるものではなく、例えば、30~300μm程度であればよい。なお、本実施形態において、第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32は、互いに同一の長手方向の長さを有するが(図2参照)、この態様に限定されるものではなく、本実施形態における磁気シールド3の効果が発揮され得る限りにおいて、第1磁気シールド31の長手方向の長さが第2磁気シールド32の長手方向の長さよりも長くてもよい。
【0030】
第2磁気シールド32の短手側の側面を見たときに、第2磁気シールド32の両側面(長手側の両側面)と底面(第1磁気シールド31の第1面31A)とのなす角度θは、80~100°程度であればよく、85~95°程度であるのが好ましい。
【0031】
本実施形態において、磁気検出素子部2は、第1磁気シールド31を間に挟んで第2磁気シールド32と対向するように、かつ第1磁気シールド31との間に所定の間隔G1をあけて設けられ、平面視にて第1磁気シールド31の短手方向(X軸方向)における略中央に位置している。なお、間隔G1は、第1磁気シールド31の第2面31Bと磁気検出素子部2(磁気検出素子20)との間のZ軸方向における長さである。
【0032】
磁気検出素子部2は、磁気シールド3の長手方向(Y軸方向)に沿って並設された複数の磁気検出素子20(図示例においては第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子の3個)が上部電極62及び下部電極61を介して電気的に直列に接続されて構成される(図2参照)。
【0033】
磁気検出素子部2を構成する各磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子部22及び第3磁気検出素子23)として、TMR素子、GMR素子、AMR素子等のMR素子を用いることができ、特にTMR素子を用いるのが好ましい。TMR素子、GMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化固定層及び自由層の間に配置される非磁性層とを有する。
【0034】
各磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23)としてのMR素子は、基板(図示せず)上に設けられている下部電極61の上面における長手方向の両端近傍に一つずつ設けられている。各磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23)としてのMR素子は、下部電極61側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54を含む。自由層51は、下部電極61に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層53の磁化の方向を固定する役割を果たす。複数の上部電極62は、複数のMR素子(磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23))上に設けられている。なお、MR素子(磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23))は、上部電極62側から順に自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54が積層されてなる構成を有していてもよい。
【0035】
TMR素子においては、非磁性層52はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層52は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層51の磁化の方向が磁化固定層53の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0036】
本実施形態に係る磁気センサ1が有する回路構成としては、例えば、直列に接続された一対の磁気センサ素子部を含むホイートストンブリッジ回路C10(図7参照)が挙げられる。ホイートストンブリッジ回路C10は、電源ポートV10と、グランドポートG10と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の一対の磁気センサ素子部R11,R12と、直列に接続された第2の一対の磁気センサ素子部R13,R14とを含む。磁気センサ素子部R11,R13の各一端は、電源ポートV10に接続される。磁気センサ素子部R11の他端は、磁気センサ素子部R12の一端と出力ポートE11とに接続される。磁気センサ素子部R13の他端は、磁気センサ素子部R14の一端と出力ポートE12とに接続される。磁気センサ素子部R12,R14の各他端は、グランドポートG10に接続される。電源ポートV10には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG10はグランドに接続される。各磁気センサ素子部R11~R14は、磁気検出素子部2(複数の磁気検出素子20)により構成される。なお、磁気センサ1が有する回路構成は、第1の一対の磁気センサ素子部R11,R12のみを含み、第2の一対の磁気センサ素子部R13,R14を含まないハーフブリッジ回路C10’であってもよい(図8参照)。
【0037】
磁気センサ素子部R11~R14を構成する各磁気検出素子20がTMR素子又はGMR素子である場合、その磁化固定層53の磁化の方向を塗りつぶした矢印で表す。磁気センサ素子部R11~R14の磁化固定層53の磁化の方向は第1方向D1(図7参照)に平行であって、磁気センサ素子部R11,R14の磁化固定層53の磁化の方向と、磁気センサ素子部R12,R13の磁化固定層53の磁化の方向とは、互いに反平行方向である。
【0038】
ホイートストンブリッジ回路C10において、外部磁場の変化に応じて、出力ポートE11,E12から磁界強度を表す信号としてのセンサ信号Sが出力される。差分検出器DDは、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号をセンサ信号Sとして演算部4に出力する。
【0039】
なお、磁気センサ素子部R11~R14を構成する各磁気検出素子20の感度軸(感磁方向)は、平面視において第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32の短手方向(X軸方向)と略平行な方向である。後述するように、本実施形態においては、磁気シールド3(第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32)により、外部磁場のうちのZ軸方向の磁場(外乱磁場)がX軸方向の磁場に実質的に変換されるのを防止することができる。その結果、磁気センサ1にて検出すべきX軸方向の磁場(被検出磁界)の強度に基づいた抵抗値変化が磁気センサ素子部R11~R14において生じるため、被検出磁界の変化に応じて高精度な信号が磁気センサ1から出力され得る。
【0040】
第1磁気シールド31の第2面31Bと磁気検出素子部2との間の距離(ギャップ)G1は、0.5~5μm程度であればよく、0.5~3μm程度であるのが好ましい。当該ギャップG1が0.5μm未満であると、第1磁気シールド31を透過する磁場が磁気検出素子部2の特性に影響を及ぼすおそれがあり、5μmを超えると磁気シールド3(第1磁気シールド31)のシールドとしての効果が低減するおそれがある。
【0041】
第2磁気シールド32は、第1磁気シールド31の第1面31A上に接面して設けられていてもよいが(図1参照)、第1磁気シールド31の第1面31Aとの間に絶縁層を介在させて所定の間隔G2をあけるようにして設けられていてもよい(図9参照)。この場合において、第1磁気シールド31の第1面31Aと第2磁気シールド32との間の間隔G2は、例えば、0.05~4μm程度であればよい。当該間隔G2が4μmを超えると、第2磁気シールド32によるシールドとしての効果が低減するおそれがある。また、当該間隔G2が0.05μm未満である磁気シールド3を製造するのは、非常に困難である。
【0042】
本実施形態において、磁気センサ1が備える磁気検出素子部2は、第1磁気シールド31の短手方向に沿って並設されてなる複数の磁気検出素子部2A,2Bを有していてもよい。例えば、図10及び図11に示すように、磁気検出素子部2は、複数の磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23)を電気的に直列に接続してなる第1磁気検出素子部2Aと、複数の磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23)を電気的に直列に接続してなる第2磁気検出素子部2Bとを有し、第1磁気検出素子部2A及び第2磁気検出素子部2Bが、第1磁気シールド31の短手方向に沿って並設されていてもよい。すなわち、複数の磁気検出素子20が行列状に並設されていてもよい。この態様において、第1磁気検出素子部2A及び第2磁気検出素子部2Bは、電気的に直列に接続されていてもよいし、電気的に並列に接続されていてもよい。この場合、磁気シールド3の短手側の側面を見たときに、第1磁気検出素子部2A及び第2磁気検出素子部2Bからなる群の中心位置(磁気シールド3の短手方向における中心位置)と第1磁気シールド31の短手方向の中心とが略一致しているのが好ましい。当該中心が互いに略一致し、かつ第1磁気検出素子部2A及び第2磁気検出素子部2Bが電気的に直列に接続されていることで、第1磁気検出素子部2Aに印加されるZ軸方向の磁場(X軸方向に変換されて印加される磁場)の磁場強度の符号と、第2磁気検出素子部2Bに印加されるZ軸方向の磁場(X軸方向に変換されて印加される磁場)の磁場強度の符号とが逆になるため、磁気検出素子部2から出力される信号においてZ軸方向の磁場の磁場強度の影響をキャンセルすることができる。
【0043】
演算部4は、磁気検出素子部2から出力されるアナログ信号(センサ信号S)をデジタル信号に変換するA/D(アナログ/デジタル)変換部41と、A/D変換部41によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理し、物理量を算出する演算処理部42とを含む。
【0044】
A/D変換部41は、磁気検出素子部2から出力されるセンサ信号S(物理量に関するアナログ信号)をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号が演算処理部42に入力される。
【0045】
演算処理部42は、A/D変換部41によりアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行い、物理量を算出する。この演算処理部42は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成される。
【0046】
上述した構成を有する磁気センサ1は、位置検出装置の一構成要素として用いられ得る。図12は、本実施形態に係る磁気センサを用いた位置検出装置の概略構成を示す側面図である。
【0047】
本実施形態における位置検出装置10は、本実施形態に係る磁気センサ1と、磁気センサ1(磁気シールド3)に対向して設けられている、X軸方向に着磁されている磁石70とを備える。磁石70が移動体(図示省略)に設けられていることで、移動体の移動による磁場の変化に伴い、磁気センサ1から所定の信号が出力される。本実施形態における位置検出装置10としては、例えば、カメラ等の撮像装置におけるレンズ駆動機構(光学式手振れ補正機構)等に用いられ得る。
【0048】
磁気センサ1における演算処理部42(図6参照)は、A/D変換部41(図6参照)によってアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行い、移動体の相対移動量を物理量として算出する。
【0049】
上述した構成を有する本実施形態における位置検出装置10において、移動体(磁石70)が磁気センサ1に対して相対的に移動するのに伴い外部磁場が変化すると、その外部磁場の変化に応じ、ホイートストンブリッジ回路C10の磁気センサ素子部R11~R14の抵抗値が変化し、出力ポートE11,E12の電位差に応じてセンサ信号Sが出力される。
【0050】
演算処理部42により算出された相対移動量は、本実施形態における位置検出装置10が設置されるアプリケーション(例えば、デジタルカメラ等)の電子制御ユニット(Electronic Control Unit,ECU)に出力される。電子制御ユニットにおいては、上記相対移動量に基づいて、当該アプリケーションの動作(例えば、光学式手振れ補正機構等)が制御される。
【0051】
本実施形態における位置検出装置10において、磁気センサ1の磁気シールド3によりZ軸方向の磁場(外乱磁場)がX軸方向の磁場に実質的に変換されるのを防止することができるため、ホイートストンブリッジ回路C10から出力されるセンサ信号Sが、Z軸方向の磁場による影響を受けることなく、検出すべきX軸方向の磁場に対応したものとなる。そのため、移動体(磁石70)の相対移動量が精確に算出され得る。
【0052】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0053】
上記実施形態において、磁気検出素子部2を構成する複数の磁気検出素子20(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23)が磁気シールド3の長手方向(Y軸方向)に沿って並設されてなる態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、複数の磁気検出素子20は、磁気シールド3の短手方向(X軸方向)に沿って並設されていてもよい。この場合において、磁気シールド3の短手側の側面を見たときに、複数の磁気検出素子20を有する磁気検出素子部2の中心位置(磁気シールド3の短手方向における中心位置)と第1磁気シールド31の短手方向の中心とが略一致しているのが好ましい。これにより、磁気検出素子部2の中心位置から-X側に位置する磁気検出素子20に印加されるZ軸方向の磁場(X軸方向に変換されて印加される磁場)の磁場強度の符号と、磁気検出素子部2の中心位置から+X側に位置する磁気検出素子20に印加されるZ軸方向の磁場(X軸方向に変換されて印加される磁場)の磁場強度の符号とが逆になるため、磁気検出素子部2から出力される信号においてZ軸方向の磁場の磁場強度の影響をキャンセルすることができる。
【0054】
上記実施形態において、磁気センサ1が一つの磁気検出素子部2と一つの磁気シールド3とを備える態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではなく、例えば、複数の磁気検出素子部2と、複数の磁気検出素子部2のそれぞれのZ軸方向における上方に設けられてなる複数の磁気シールド3(第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32)とを備えていてもよい。この場合において、例えば、磁気センサ1が4つの磁気検出素子部2及び4つの磁気シールド3を備え、磁気センサ1が有する回路構成としてのホイートストンブリッジ回路C10(図7参照)における磁気センサ素子部R11~R14のそれぞれが、4つの磁気検出素子部2のそれぞれにより構成されていてもよい。また、磁気センサ素子部R11~R14のそれぞれが、電気的に直列又は並列に接続されてなる複数の磁気検出素子部2により構成されていてもよい。
【実施例
【0055】
以下、試験例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0056】
〔試験例1〕
図1に示す磁気検出素子部2(第1磁気検出素子21、第2磁気検出素子22及び第3磁気検出素子23)と磁気シールド3(第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32)とを備える磁気センサ1において、Z軸方向の磁場Bz(Bz=100mT)を印加したときの当該磁場BzのX軸方向の磁場Bxへの変換率CRZ-X(%)をシミュレーションにより求めた。かかるシミュレーションにおいて、第2磁気シールド32の短手方向の幅W2を23μmとし、第1磁気シールド31の短手方向の幅W1を23~115μmとした(幅比W2/W1=0.2~1.0)。また、第2磁気シールド32の厚みT2を10μmとし、第1磁気シールド31の厚みT1を0.5~5μmとした(厚み比T2/T1=0.5~5)。さらに、第1磁気シールド31の第2面31Bと磁気検出素子部2との間の距離(ギャップ)G1を1μmとした。結果を図13及び表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
〔試験例2〕
Z軸方向の磁場Bz(Bz=100mT)に代えてX軸方向の磁場Bx(Bx=350mT)を印加した以外は試験例1と同様の条件として、X軸方向の磁場Bxの透過率TRX(%)をシミュレーションにより求めた。結果を図14及び表2に示す。なお、透過率TRX(%)は、所定の磁場強度のX軸方向の磁場Bxを印加させたときにおける、磁気検出素子部2から出力される信号を用いて算出される磁場強度(磁気検出素子部2に実際に印加されている実磁場の磁場強度)の印加磁場Bxの磁場強度に対する百分率として求められる値である。
【0059】
【表2】
【0060】
〔試験例3〕
第1磁気シールド31及び第2磁気シールド32の短手方向の幅W2をともに40μmとした以外は、試験例1及び試験例2と同様にしてZ軸方向の磁場BzのX軸方向の磁場Bxへの変換率CRZ-X(%)及びX軸方向の磁場Bxの透過率TRX(%)をシミュレーションにより求めた。その結果、変換率CRZ-X(%)が0.6%であり、透過率TRX(%)が60%であった。
【0061】
図1及び表1に示すように、第1磁気シールド31の短手方向の幅W1に対する第2磁気シールド32の短手方向の幅W2の比W2/W1が1.0、すなわち第1磁気シールド31の幅W1と第2磁気シールド32の幅W2とが同一であり、磁気シールド3が全体として直方体状であると、Z軸方向の磁場BzのX軸方向の磁場Bxへの変換率が相対的に高くなってしまい、磁気センサ1から出力される信号に含まれるノイズが大きくなってしまうと推察される。
【0062】
しかし、上記比W2/W1が1.0未満(0.2~0.9)であり、第1磁気シールド31の幅W1が第2磁気シールド32の幅W2よりも大きいことで、上記変換率を低減可能であることが明らかとなった。また、上記比W2/W1が0.2~0.8であることで、上記変換率を0.8%以下にすることができることが明らかとなった。さらに、上記比W2/W1を0.2~0.7とし、かつ第1磁気シールド31の厚みT1に対する第2磁気シールド32の厚みT2の比T2/T1を2.0~16.7とすることで、上記変換率を0.5%以下にすることができることが明らかとなった。
【0063】
図1及び表2に示すように、第1磁気シールド31の厚みT1に対する第2磁気シールド32の厚みT2の比T2/T1にかかわらず、X軸方向の磁場Bxの透過率は略一定であることが明らかとなった。また、試験例3の透過率のシミュレーション結果と対比すると、試験例2においては透過率が低く抑えられていることが確認された。一般に、磁気シールド3が飽和すると上記透過率が上昇するが、試験例2においては、上記透過率が試験例3に比して低い値で略一定であることで、上記比T2/T1にかかわらず磁気シールド3の飽和が抑制され得ることが明らかとなった。一方で、試験例3の結果から、直方体状の磁気シールドにおいて、その厚みを相対的に厚くすることで上記変換率を低減可能であるものの、磁気シールド3が飽和してしまうものと推察される。
【符号の説明】
【0064】
1…磁気センサ
2…磁気検出素子部
20…磁気検出素子
21…第1磁気検出素子
22…第2磁気検出素子
23…第3磁気検出素子
3…磁気シールド
31…第1磁気シールド
32…第2磁気シールド
10…位置検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14