(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20220107BHJP
B66C 13/20 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B66C15/00 A
B66C13/20
(21)【出願番号】P 2019043308
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(72)【発明者】
【氏名】笹井 慎太郎
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062412(JP,A)
【文献】特開2011-202478(JP,A)
【文献】特開平10-037247(JP,A)
【文献】特開平05-195554(JP,A)
【文献】実開昭63-126462(JP,U)
【文献】特開2005-042744(JP,A)
【文献】特開平08-217379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0240449(US,A1)
【文献】特開2018-053700(JP,A)
【文献】特開2017-005416(JP,A)
【文献】特開平08-061935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00─15/06
E02F 9/20
G05G 1/00─25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部基体と、
前記下部基体の上部に、前記下部基体に対し旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体から延びて形成され、吊荷を吊り下げる吊りロープを支持するブームと、
制御信号に従った速度で前記旋回体を回転駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータの動作を指示するために操作される操作レバーと、
前記操作レバーの予め定められた中立位置からの変位量に応じた操作信号を出力する操作検出装置と、
前記操作信号のレベルに対応するレベルの前記制御信号を出力する出力制御装置と、
前記中立位置から離れる方向へ変位する前記操作レバーに対し、前記中立位置へ戻す方向の反力を付与する反力装置と、
前記操作レバーが前記中立位置から離れる方向へ変位するときの前記操作信号のレベルの変化速度が予め定められた設定範囲を越える監視開始時点から前記設定範囲内に戻る監視終了時点までの監視期間において、前記変化速度が予め定められた許容変化量を越えてさらに変化する状態を前記反力装置の異常状態として検出し、前記異常状態が検出されたときに、前記反力装置の異常を表す異常通知を出力する異常検出装置と、を備え
、
前記異常検出装置は、前記操作レバーが前記中立位置へ戻る方向へ変位するときには、前記操作信号のレベルの変化速度に応じた前記異常通知の出力を行わない、クレーン。
【請求項2】
下部基体と、
前記下部基体の上部に、前記下部基体に対し旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体から延びて形成され、吊荷を吊り下げる吊りロープを支持するブームと、
制御信号に従った速度で前記旋回体を回転駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータの動作を指示するために操作される操作レバーと、
前記操作レバーの予め定められた中立位置からの変位量に応じた操作信号を出力する操作検出装置と、
前記操作信号のレベルに対応するレベルの前記制御信号を出力する出力制御装置と、
前記中立位置から離れる方向へ変位する前記操作レバーに対し、前記中立位置へ戻す方向の反力を付与する反力装置と、
前記操作レバーが前記中立位置から離れる方向へ変位するときの前記操作信号のレベルの変化速度が予め定められた設定範囲を越える監視開始時点から前記設定範囲内に戻る監視終了時点までの監視期間において、前記変化速度が予め定められた許容変化量を越えてさらに変化する状態を前記反力装置の異常状態として検出し、前記異常状態が検出されたときに、前記反力装置の異常を表す異常通知を出力する異常検出装置と、を備え、
前記異常検出装置は、前記監視期間において前記変化速度の導出に用いる前記操作信号を、前記監視期間以外において前記操作信号を参照する場合よりも短いサンプリング間隔でサンプリングする、クレーン。
【請求項3】
前記出力制御装置は、前記反力装置の前記異常状態が検出されてから前記旋回体が停止するまでの間に、前記制御信号のレベルを、前記異常状態が検出されたときの前記制御信号のレベルを超えない範囲に制限する、請求項1
または請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記出力制御装置は、前記反力装置の前記異常状態が検出されてから前記旋回体が停止するまでの間に、前記異常状態が検出されたときの前記制御信号のレベルから前記中立位置に対応する基準レベルまで徐々に変化する上限レベルを設定し、前記制御信号のレベルを、前記上限レベルを超えない範囲に制限する、請求項1
または請求項2に記載のクレーン。
【請求項5】
前記異常検出装置は、前記監視期間において前記変化速度の導出に用いる前記操作信号を、前記監視期間以外において前記操作信号を参照する場合よりも短いサンプリング間隔でサンプリングする、請求項1
、請求項3および請求項4のいずれか1項に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回体を回転駆動する油圧アクチュエータに動作を指示するための操作レバーに対して反力を付与する反力装置の異常を検出可能なクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンは、吊荷をロープにより吊り下げるブームと、前記ブームを支持する旋回体とを備える。さらに、前記クレーンは、前記旋回体を回転駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに対応する操作レバーである旋回レバーとを備える。前記旋回レバーは、前記油圧アクチュエータの動作を指示するために操縦者によって操作される。
【0003】
前記クレーンにおいて、電気式操作装置が、前記旋回レバーの変位量を表す操作信号を制御装置へ出力する装置として採用される場合がある。この場合、前記制御装置が、前記操作信号のレベルに応じて、前記油圧アクチュエータへの作動油の供給を調節するバルブへ制御信号を出力する。
【0004】
また、前記電気式操作装置が、前記旋回レバーに反力を付与する装置を備えることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下の説明において、前記旋回レバーに反力を付与する装置のことを反力装置と称する。前記反力装置は、電磁気力を発生させることにより、中立位置から離れる方向へ変位する前記旋回レバーに対し、前記中立位置へ戻す方向の反力を付与する。
【0006】
前記反力装置の作用により、前記操縦者は、前記旋回レバーの変位量を機械的に前記バルブへ伝達する機械式操作装置が採用される場合と同様の操作感覚で前記旋回レバーを操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記操縦者が前記旋回レバーを操作しているときに前記反力装置の異常が発生し、これにより前記旋回レバーに作用していた前記反力が瞬時に消失する場合がある。この場合、前記操縦者が前記反力に抗して前記旋回レバーに加えていた力により、前記旋回レバーが過剰に変位してしまうおそれがある。
【0009】
前記旋回レバーの過剰な変位は、前記吊荷が目的の位置を越えてオーバーラーンする、または、前記吊荷の大きな揺れが発生する、などの危険を招くおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、旋回レバーが操作されているときに発生し得る反力装置の異常を早期に検出して操縦者に通知できるクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の局面に係るクレーンは、下部基体と、旋回体と、ブームと、油圧アクチュエータと、操作レバーと、操作検出装置と、出力制御装置と、反力装置と、異常検出装置と、を備える。前記旋回体は、前記下部基体の上部に、前記下部基体に対し旋回可能に設けられている。前記ブームは、前記旋回体から延びて形成され、吊荷を吊り下げる吊りロープを支持する。前記油圧アクチュエータは、入力される制御信号に従った速度で前記旋回体を回転駆動する。前記操作レバーは、前記油圧アクチュエータの動作を指示するために操作される。前記操作検出装置は、前記操作レバーの予め定められた中立位置からの変位量に応じた操作信号を出力する。前記出力制御装置は、前記操作信号のレベルに対応するレベルの前記制御信号を出力する。前記反力装置は、前記中立位置から離れる方向へ変位する前記操作レバーに対し、前記中立位置へ戻す方向の反力を付与する。前記異常検出装置は、前記操作レバーが前記中立位置から離れる方向へ変位するときの前記操作信号のレベルの変化速度が予め定められた設定範囲を越える監視開始時点から前記設定範囲内に戻る監視終了時点までの監視期間において、前記変化速度が予め定められた許容変化量を越えてさらに変化する状態を前記反力装置の異常状態として検出し、前記異常状態が検出されたときに、前記反力装置の異常を表す異常通知を出力する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、旋回レバーが操作されているときに発生し得る反力装置の異常を早期に検出して操縦者に通知できるクレーンを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るクレーンの構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るクレーンにおける制御関連機器の構成を表すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るクレーンにおける制御装置の構成を表すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るクレーンにおける中立状態のレバー操作装置の断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るクレーンにおける変位状態のレバー操作装置の断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るクレーンが旋回動作をするときの操作信号、旋回制御信号および操作信号の変化速度のトレンドグラフおよび吊荷の動きの第1例を表す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るクレーンが旋回動作をするときの操作信号、旋回制御信号および操作信号の変化速度のトレンドグラフおよび吊荷の動きの第2例を表す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るクレーンにおける反力装置監視処理の手順の一例を表すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るクレーンにおいて反力装置の異常が検出されるときの操作信号、旋回制御信号および操作信号の変化速度のトレンドグラフの一例を表す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るクレーンにおいて反力装置の異常が検出されるときの操作信号、旋回制御信号および操作信号の変化速度のトレンドグラフの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
[クレーン10の概略構成]
本発明の第1実施形態に係るクレーン10は、吊荷9を吊り上げつつ移動させる作業機械である。以下、クレーン10が移動式クレーンである場合の例について説明する。
【0016】
図1に示されるように、クレーン10は、下部走行体11、上部旋回体12、キャブ13、ガントリ15、ウインチ装置16、カウンターウェイト17、ブーム21、ブームポイントアイドラーシーブ22、ガントリシーブ23、フック30、起伏ロープ31および吊りロープ32などを備える。ウインチ装置16は、第1ウインチ装置161および第2ウインチ装置162を含む。
【0017】
上部旋回体12は、キャブ13、ガントリ15およびウインチ装置16と一体に構成されている。ガントリ15は、上部旋回体12から起立する状態で上部旋回体12に固定されている。さらに、上部旋回体12は、ウインチ装置16、カウンターウェイト17およびブーム21を支持している。
【0018】
下部走行体11は、上部旋回体12を旋回可能に支持する台座部分である。下部走行体11は、下部走行体11の上部に、下部走行体11に対し旋回可能に設けられている。上部旋回体12は、下部走行体11に設けられた旋回モーター441によって旋回駆動される(
図2参照)。なお、下部走行体11は、上部旋回体12を旋回可能に支持する下部基体の一例である。
【0019】
上部旋回体12が旋回する場合、キャブ13、ガントリ15およびウインチ装置16も、上部旋回体12とともに旋回する。
【0020】
図1に示されるクレーン10は移動式クレーンである。そのため、クレーン10は、走行装置14をさらに備える。走行装置14は、下部走行体11を支持し、走行可能である。
図1は、走行装置14がクローラー式の装置である例を示す。
【0021】
キャブ13は、操縦室である。ブーム21は、その根元部が上部旋回体12に連結されている。ブーム21は、上部旋回体12から延びて形成され、吊荷9を吊り下げる吊りロープ32を支持する。ブーム21は、上部旋回体12と連結された前記根元部を中心にして起伏可能である。
【0022】
起伏ロープ31は、ブーム21の先端部に設けられたブームポイントアイドラーシーブ22に掛けられている。吊りロープ32は、ガントリ15の先端部に設けられたガントリシーブ23に掛けられている。
【0023】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31を介してブーム21を支える。また、第2ウインチ装置162は、吊りロープ32を介してフック30を支える。
【0024】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31の巻き取り、または、繰り出しを行うことにより、ブーム21の仰角を変更する。即ち、ブーム21は、第1ウインチ装置161および起伏ロープ31によって仰角を変更可能に駆動される。
【0025】
第2ウインチ装置162は、吊りロープ32の巻き取り、または、繰り出しを行うことにより、フック30を昇降させる。
【0026】
吊荷9は、フック30に吊される。カウンターウェイト17は、上部旋回体12に装着されており、ブーム21、フック30および吊荷9の荷重とのバランスをとる。
【0027】
図2に示されるように、クレーン10は、エンジン41、油圧ポンプ42、油圧制御弁43および油圧アクチュエータ44などの駆動系の機器と、操作装置5と、制御装置6と、表示装置7とを備える。
【0028】
さらに、操作装置5および表示装置7などのヒューマンインターフェースのための装置は、キャブ13内に設けられている。さらに、クレーン10は、クレーン10が備える各種の機器の状態を検出する状態検出装置45も備える。
【0029】
操作装置5は、操縦者の操作を受け付ける装置である。表示装置7は情報を表示する装置であり、例えば液晶表示ユニットなどのパネル表示装置である。操作装置5は、レバー操作装置51、操作ボタン52および入力装置53などを含む。
【0030】
入力装置53は、前記操縦者による情報入力を受け付ける。例えば、入力装置53は、表示装置7と一体に構成されたタッチパネルなどである。また、入力装置53が、前記操縦者の音声操作による情報入力を受け付ける装置であってもよい。
【0031】
状態検出装置45は、荷重計451、起伏角度検出装置452、旋回角度検出装置453および旋回圧力センサー454などを含む。
【0032】
荷重計451は、吊荷9の重さを検出する。起伏角度検出装置452は、ブーム21の起伏角度、即ち、ブーム21の仰角を検出する。旋回角度検出装置453は、上部旋回体12が下部走行体11の基準方向から旋回した角度を検出する。上部旋回体12の旋回方向および向きは、旋回角度検出装置453の検出結果により特定される。
【0033】
旋回圧力センサー454は、旋回モーター441に供給される作動油の圧力である旋回圧力を検出する。各種の状態検出装置45の検出結果は、制御装置6へ入力される。
【0034】
エンジン41は、油圧ポンプ42を駆動するディーゼルエンジンである。油圧制御弁43が、制御装置6から出力される制御信号に従って油圧アクチュエータ44へ圧縮油を供給する。
【0035】
油圧アクチュエータ44は、上部旋回体12を回転駆動する旋回モーター441を含む。旋回モーター441は、油圧モーターである。さらに、油圧アクチュエータ44は、ウインチ装置16を駆動する他の油圧モーターも含む。
【0036】
制御装置6は、操作装置5に対する操作または各種の状態検出装置45の検出結果に応じて、油圧制御弁43などの制御対象へ制御信号を出力する。さらに、制御装置6は、操作装置5に対して始動操作が行われることによりエンジン41を始動させる。また、制御装置6は、表示装置7を制御する。
【0037】
図3に示されるように、制御装置6は、MPU(Miro Processing Unit)601、RAM(Random Access Memory)602、不揮発性メモリー603および信号インターフェイス604などを備える。なお、RAM602および不揮発性メモリー603は、コンピューター読み取り可能な記憶装置である。
【0038】
MPU601は、予め不揮発性メモリー603に記憶されたプログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行するプロセッサーの一例である。
【0039】
RAM602は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が導出もしくは参照するデータを一時記憶する揮発性のメモリーである。
【0040】
不揮発性メモリー603は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が参照するデータを予め記憶する。例えば、不揮発性メモリー603がEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)またはフラッシュメモリーなどであることが考えられる。
【0041】
信号インターフェイス604は、状態検出装置45の検出信号をデジタルデータへ変換してMPU601へ伝送する。さらに、信号インターフェイス604は、MPU601が出力する制御指令を電流信号または電圧信号などの制御信号へ変換し、制御対象の機器へ出力する。
【0042】
レバー操作装置51は、旋回レバー511を備える電気式操作装置である(
図4,5参照)。レバー操作装置51は、旋回レバー511の中立位置P0からの変位量を表す操作信号Sx1を制御装置6へ出力する。中立位置P0は、旋回レバー511が変位可能な範囲における予め定められた位置である。操作信号Sx1は、電流信号または電圧信号である。
【0043】
旋回レバー511は、上部旋回体12を回転駆動する油圧モーター411に対応する操作レバーである。旋回レバー511は、油圧モーター411の動作を指示するために前記操縦者によって操作される。
【0044】
レバー操作装置51は、旋回レバー511と、反力装置510と、操作検出センサー5100とを備える。反力装置510は、ロータ512、ステータ513、励磁コイル514および給電回路515を備える。
【0045】
ロータ512およびステータ513は、透磁率の高い材料で構成されている。例えば、ロータ512およびステータ513が、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)を主成分とする材料で構成されていることが考えられる。
【0046】
反力装置510は、電磁気力を発生させることにより、中立位置P0から離れる方向へ変位する旋回レバー511に対し、中立位置P0へ戻す方向の反力F0を付与する(
図5参照)。
【0047】
ロータ512は、旋回レバー511に連結された中空の部材である。ロータ512は、円筒部5121と、円筒部5121に連結された軸部5122と、円筒部5121から内側へ突出した複数の磁極部5123とを有する。複数の磁極部5123は、円筒部5121の内面において周方向に並んで形成されている。
【0048】
軸部5122は、不図示の軸受部によって回転可能に支持されており、ロータ512は、軸部5122を中心に回転可能である。従って、旋回レバー511が、前記操縦者による操作によって中立位置P0から第1回転方向またはその反対の第2回転方向へ変位するときに、ロータ512は、旋回レバー511に連動して前記第1回転方向または前記第2回転方向へ回転する。
【0049】
ステータ513は、円筒部5121の中空部に配置され、固定されている。ステータ513は、胴部5131および一対のフランジ部5132を有する。胴部5131は、軸部5122が貫通する円筒状の部分である。
【0050】
一対のフランジ部5132は、胴部5131における軸部5122に沿う方向の両端から胴部5131の径方向の外側へ張り出して形成されている。
図4,5において、一対のフランジ部5132は、紙面に向かって胴部5131の奥側の端部および手前側の端部に形成されている。
【0051】
一対のフランジ部5132各々は、胴部5131の径方向の外側へ突出した複数の突出部5132aを有する。旋回レバー511が中立位置P0に存在する状態において、一対のフランジ部5132各々における複数の突出部5132aは、それぞれ複数の磁極部5123に対向している。
【0052】
励磁コイル514は、ステータ513の胴部5131の外周に沿って巻かれた導線である。給電回路515は、励磁コイル514へ励磁電流を供給する。前記励磁電流が励磁コイル514に流れることにより、一対のフランジ部5132の突出部5132aおよびロータ512の複数の磁極部5123を通る磁気回路が形成される。
【0053】
そして、旋回レバー511が中立位置P0から変位することによりロータ512が回転すると、前記磁気回路の電磁気力が、旋回レバー511を中立位置P0へ戻す方向の反力F0として、ロータ512へ作用する。前記磁気回路は、前記励磁電流の大きさに比例した前記電磁気力を発生させる。
【0054】
前記磁気回路が発生させる前記電磁気力は、中立位置P0から離れる方向へ変位する旋回レバー511に対し、中立位置P0へ戻す方向の反力F0として作用する。
【0055】
制御装置6は、旋回圧力センサー454により検出される前記旋回圧力に比例した前記励磁電流が励磁コイル514に供給されるように、給電回路515を制御する。これにより、反力装置510は、前記旋回圧力に比例した反力F0を旋回レバー511に付与する。
【0056】
なお、クレーン10が、旋回レバー511の中立位置P0からの変位量を検出する変位センサーを備えることも考えられる。例えば、前記変位センサーは、旋回レバー511の中立位置P0からの回転角度を検出するセンサーなどである。この場合、制御装置6が、前記変位センサーにより検出される旋回レバー511の変位量に比例した前記励磁電流が励磁コイル514に供給されるように、給電回路515を制御してもよい。
【0057】
操作検出センサー5100は、旋回レバー511の変位量を検出する。具体的には、操作検出センサー5100は、ロータ512の中立位置P0からの回転角度を前記操作量として検出する。
【0058】
例えば、ロータリーエンコーダが操作検出センサー5100として採用される。操作検出センサー5100は、ロータ512の回転角度を表す操作信号Sx1を制御装置6へ出力する(
図2参照)。操作検出センサー5100は、旋回レバー511の中立位置P0からの変位量に応じた操作信号Sx1を出力する操作検出装置の一例である。
【0059】
制御装置6のMPU601が予め定められた制御プログラムを実行することにより、制御装置6は、出力制御装置61として動作する。出力制御装置61は、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルの旋回制御信号Sx2を出力する。具体的には、出力制御装置61は、操作信号Sx1のレベルに比例するレベルの旋回制御信号Sx2を出力する。
【0060】
旋回モーター441は、旋回制御信号Sx2に従った速度で上部旋回体12を回転駆動する。具体的には、出力制御装置61は、旋回制御信号Sx2を旋回モーター441に対応する油圧制御弁43へ出力する。この油圧制御弁43は、旋回制御信号Sx2のレベルに応じた量の作動油を旋回モーター441に供給する。これにより、上部旋回体12は、旋回制御信号Sx2のレベルに応じた速度で回転駆動される。
【0061】
ところで、前記操縦者が旋回レバー511を操作しているときに反力装置510の異常が発生し、これにより旋回レバー511に作用していた反力F0が瞬時に消失する場合がある。この場合、前記操縦者が反力F0に抗して旋回レバー511に加えていた力により、旋回レバー511が過剰に変位してしまうおそれがある。
【0062】
旋回レバー511の過剰な変位は、吊荷9が目的の位置を越えてオーバーラーンする、または、吊荷9の大きな揺れが発生する、などの危険を招くおそれがある。
【0063】
クレーン10において、制御装置6は、後述する反力装置監視処理を実行する。これにより、クレーン10は、旋回レバー511が操作されているときに発生し得る反力装置510の異常を早期に検出して前記操縦者に通知することができる。
【0064】
前記反力装置監視処理の手順の例については後述する。ここで、
図6,7を参照しつつ、クレーン10が旋回動作をするときの操作信号Sx1、旋回制御信号Sx2および操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1について説明する。
図6,7において、基準レベルV00は、旋回レバー511が中立位置P0に存在するときの操作信号Sx1のレベルである。
【0065】
クレーン10が一般的な操縦者によって操縦される場合、クレーン10が旋回動作をするときの操作信号Sx1、旋回制御信号Sx2および操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1は、例えば
図6に示されるような変化を示す。
【0066】
また、操縦者によっては、クレーン10が旋回動作をするときの操作信号Sx1、旋回制御信号Sx2および操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が、
図7に示されるような変化を示す場合もある。
図6および
図7の違いは、前記操縦者の個人差による違いを示す。
【0067】
図6,7に示されるように、ブーム21が吊荷9を吊り上げた位置から目的位置まで旋回移動するまでの期間は第1期間T01から第6期間T06までの6つの期間に分類される。
【0068】
なお、ブーム21の旋回移動は、上部旋回体12の旋回によるブーム21の移動である。また、以下に示されるブーム21の減速または加速は、上部旋回体12の旋回速度の減速または加速によるブーム21の移動速度の変化である。
【0069】
第1期間T01は、ブーム21が停止状態から吊荷9よりも先行して目標位置へ向けて移動する期間である。第1期間T01に続く第2期間T02は、ブーム21が吊荷9に先行する状態で、ブーム21および吊荷9が概ね等速で安定的に移動する期間である。
【0070】
第2期間T02に続く第3期間T03は、ブーム21が一時的に減速し、ブーム21の先端部が概ね吊荷9の直上へ移動する期間である。第3期間T03に続く第4期間T04は、ブーム21の先端部が概ね吊荷9の直上に位置する状態で、ブーム21および吊荷9が概ね等速で安定的に移動する期間である。
【0071】
第4期間T04に続く第5期間T05は、ブーム21が一時的に減速し、吊荷9がブーム21の先端部よりも先行して移動する期間である。これにより、吊荷9は、ブーム21の先端部を中心とする振り子運動における最も高い位置で停止する。吊荷9の停止位置は、振り子運動をする吊荷9の位置エネルギーが最大になる位置である。
【0072】
第5期間T05に続く第6期間T06は、ブーム21が一時的に加速し、ブーム21の先端部が吊荷9の前記停止位置の直上へ移動する期間である。第6期間T06が終了したときに、ブーム21および吊荷9が前記目的位置へ到達する。
【0073】
便宜上、
図6,7において、操作信号Sx1のレベルと旋回制御信号Sx2のレベルとが一致している。実際の操作信号Sx1のレベルおよび旋回制御信号Sx2のレベルは同じであるとは限らない。
【0074】
反力装置510が正常である場合、出力制御装置61は、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルの旋回制御信号Sx2を出力する。
【0075】
図6,7において、操作信号Sx1のレベルと旋回制御信号Sx2のレベルとが一致していることは、旋回制御信号Sx2のレベルが、出力制御装置61によって操作信号Sx1のレベルに対応したレベルに設定されていることを示す。
【0076】
図6,7に示される変化速度Sv1の設定範囲R0、許容変化量ΔV0および監視期間T1については後述する。
【0077】
[反力装置監視処理]
制御装置6のMPU601が予め定められた制御プログラムを実行することにより、制御装置6は、異常検出装置62として動作する。本実施形態において、異常検出装置62および出力制御装置61が、前記反力装置監視処理を実行する。
【0078】
以下、
図8に示されるフローチャートを参照しつつ、前記反力装置監視処理の手順の一例について説明する。異常検出装置62は、起動したときに前記反力装置監視処理を開始する。
【0079】
以下の説明において、S1,S2,…は、前記反力装置監視処理における複数の工程の識別符号を表す。
【0080】
<工程S1>
前記反力装置監視処理において、まず、異常検出装置62は、予め定められた監視条件が成立するか否かを判定する。
【0081】
前記監視条件は、旋回レバー511が中立位置P0から離れる方向へ変位するときの操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が予め定められた設定範囲R0を越えるという条件である。
【0082】
以下の説明において、旋回レバー511が中立位置P0から離れる方向へ変位するときの操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が設定範囲R0を越える時点のことを監視開始時点T1aと称する(
図6,7参照)。
【0083】
また、監視開始時点T1aの後において、操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が設定範囲R0内に戻る時点のことを監視終了時点T1bと称する(
図6,7参照)。さらに、監視開始時点T1aから監視終了時点T1bまでの期間のことを監視期間T1と称する(
図6,7参照)。工程S1の処理は、監視期間T1の始期を判定する処理である。
【0084】
異常検出装置62は、前記監視条件の判定において、操作検出センサー5100の検出値およびその検出値の変化に基づいて、旋回レバー511が中立位置P0から離れる方向へ変位しているか否かを判定する。また、異常検出装置62は、前記監視条件の判定において、変化速度Sv1の導出に用いる操作信号Sx1を、予め定められた標準周期でサンプリングする。
【0085】
即ち、前記標準周期は、前記監視条件が成立するまでに操作信号Sx1を参照する場合における操作信号Sx1のサンプリング周期である。
【0086】
そして、異常検出装置62は、前記監視条件が成立すると判定する場合に処理を工程S2へ移行させ、そうでない場合に工程S1の処理を繰り返す。異常検出装置62は、前記監視条件が成立するまで、前記標準周期で工程S1の処理を繰り返す。
【0087】
<工程S2>
工程S2において、異常検出装置62は、前記監視条件の成立後に操作信号Sx1を参照する場合における操作信号Sx1のサンプリング周期を予め定められた短周期に設定する。その後、異常検出装置62は、処理を工程S3へ移行させる。前記短周期は、前記標準周期よりも短い周期である。
【0088】
<工程S3>
工程S3において、異常検出装置62は、操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が、予め定められた許容変化量ΔV0を越えてさらに変化するか否かを判定する。
【0089】
異常検出装置62は、新たにサンプリングされる操作信号Sx1(0)のレベルから前回サンプリングされた操作信号Sx1(-1)のレベルを減算することにより、変化速度Sv1を導出する。工程S3の判定処理は、新たに導出される変化速度Sv1(0)と前回導出された変化速度Sv1(-1)との差である速度変化量ΔSv1が、許容変化量ΔV0を越えているか否かを判定する処理である(
図9参照)。
【0090】
また、異常検出装置62は、監視期間T1において変化速度Sv1の導出に用いる操作信号Sx1を前記短サンプリング周期でサンプリングする。即ち、異常検出装置62は、監視期間T1において変化速度Sv1の導出に用いる操作信号Sx1を、監視期間T1以外において操作信号Sx1を参照する場合よりも短いサンプリング間隔でサンプリングする。
【0091】
図6,7に示されるように、操縦者は、通常、旋回レバー511を中立位置P0から離れる方向へ変位させた後、さらに同じ方向へより速い速度で変位させる操作は行わない。そのような操作は、吊荷9の大きな揺れなどの危険を招くおそれがあるからである。
【0092】
一方、前記操縦者が旋回レバー511を操作しているときに、反力装置510の異常によって旋回レバー511に作用していた反力F0が瞬時に消失する場合がある。この場合、前記操縦者が反力F0に抗して旋回レバー511に加えていた力により、旋回レバー511がそれまでの変位方向と同じ方向へより速い速度で変位する。
【0093】
そこで、異常検出装置62は、工程S3において、操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が許容変化量ΔV0を越えてさらに変化する状態を反力装置510の異常状態として検出する。
図9は、第1期間T01において前記異常状態が検出される例を示すが、前記異常状態は、第3期間T02、第5期間T05または第6期間T06においても検出される可能性がある(
図6,7参照)。
【0094】
以下の説明において、監視期間T1において操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が許容変化量ΔV0を越えてさらに変化した時点のことを異常検出時点T2aと称する(
図9参照)。
【0095】
図9において、異常検出時点T2a以降における太い破線のグラフは、操縦者によって以下に示される不測の操作が行われた状態を表す。前記不測の操作は、操縦者が、反力F0が瞬時に消失することによって旋回レバー511をそれまでの変位方向と同じ方向へより速い速度で変位させてしまった後、慌てて旋回レバー511を中立位置P0へ戻そうとする操作である。
【0096】
なお、
図6,7と同様に、
図9において、操作信号Sx1のレベルと旋回制御信号Sx2のレベルとが一致していることは、旋回制御信号Sx2のレベルが、出力制御装置61によって操作信号Sx1のレベルに対応したレベルに設定されていることを示す。
【0097】
そして、変化速度Sv1が許容変化量ΔV0を越えてさらに変化したと判定された場合に、出力制御装置61による工程S6および工程S7の処理と異常検出装置62による工程S8の処理とが実行される。一方、変化速度Sv1が許容変化量ΔV0を越えてさらに変化したと判定されない場合に、異常検出装置62による工程S4の処理が実行される。
【0098】
<工程S4>
工程S4において、異常検出装置62は、予め定められた解除条件が成立するか否かを判定する。
【0099】
前記解除条件は、操作信号Sx1のレベルの変化速度Sv1が設定範囲R0内に戻るという条件である。即ち、前記解除条件は、監視終了時点T1bが到来したか否かを判定する条件であり、工程S4の処理は、監視期間T1の終期を判定する処理である。
【0100】
前記解除条件が成立すると判定された場合に、異常検出装置62による工程S5の処理が実行される。一方、前記解除条件が成立すると判定されない場合に、異常検出装置62による工程S3からの処理が繰り返される。異常検出装置62は、反力装置510の前記異常状態が検出されるか、或いは前記解除条件が成立するまで、工程S3および工程S4の処理を前記短周期で繰り返す。
【0101】
なお、工程S1において前記監視条件が成立すると判定されてから、工程S3において反力装置510の前記異常状態が検出されずに、工程S4において前記解除条件が成立すると判定されるまでの期間が、監視期間T1である。
【0102】
<工程S5>
工程S5において、異常検出装置62は、操作信号Sx1のサンプリング周期を前記通常周期に戻す。その後、異常検出装置62は、工程S1からの処理を繰り返す。
【0103】
<工程S6>
工程S6において、出力制御装置61が、旋回制御信号Sx2のレベルの上限値である上限レベルMx0を設定する(
図9参照)。本実施形態において、上限レベルMx0は、反力装置510の前記異常状態が検出されたときの旋回制御信号Sx2のレベルである。
【0104】
以下の説明において、反力装置510の前記異常状態が検出されたときの旋回制御信号Sx2のレベルのことを、異常検出時レベルSx20と称する(
図9参照)。なお、異常検出時レベルSx20は、反力装置510の前記異常状態が検出されたときの操作信号Sx1のレベルに対応する旋回制御信号Sx2のレベルである。
【0105】
<工程S7>
さらに、工程S7において、出力制御装置61は、制御信号制限を開始する。前記制御信号制限は、旋回制御信号Sx2のレベルを、上限レベルMx0を越えないレベルに制限することである。
【0106】
即ち、出力制御装置61は、前記制御信号制限の開始後において、操作信号Sx1のレベルに対応する旋回制御信号Sx2のレベルが上限レベルMx0を越える場合に、旋回制御信号Sx2のレベルを上限レベルMx0に設定する。一方、出力制御装置61は、操作信号Sx1のレベルに対応する旋回制御信号Sx2のレベルが上限レベルMx0を越えない場合に、旋回制御信号Sx2のレベルを操作信号Sx1のレベルに対応するレベルに設定する。
【0107】
図9において、異常検出時点T2a以降の制限期間T21は、旋回制御信号Sx2のレベルが、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルよりも小さい上限レベルMx0に制限されている期間である。即ち、制限期間T21は、上限レベルMx0が操作信号Sx1のレベルに対応するレベルよりも優先される期間である。
【0108】
図9において、制限期間T21に続く非制限期間T22は、旋回制御信号Sx2のレベルが、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルに設定されている期間である。非制限期間T22において、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルは、上限レベルMx0よりも小さい。即ち、制限期間T21は、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルが上限レベルMx0よりも優先される期間である。
【0109】
前記制御信号制限が実行されることにより、反力装置510の異常が発生したときに、旋回レバー511が一時的に過剰に操作され、上部旋回体12が意図せず過剰に旋回すること、および過剰な旋回により吊荷9が不安定に揺れること、などの危険な事態が回避される。
【0110】
<工程S8>
さらに、工程S8において、異常検出装置62が、反力装置510の異常を表す異常通知を出力する。前記異常通知を出力する処理は、例えば、不図示のブザーに警報音を出力させる処理、および、表示装置7に予め定められた異常メッセージを表示させる処理である。
【0111】
操縦者は、前記異常通知によって反力装置510の異常が発生したことを速やかに認知し、適切な対応をとることができる。
【0112】
<工程S9>
異常検出装置62は、工程S6~工程S8の処理が実行された後、工程S9の処理を実行する。工程S9において、異常検出装置62は、旋回角度検出装置453の検出結果に基づいて、上部旋回体12が停止したか否かを判定する。
【0113】
異常検出装置62は、上部旋回体12が停止するまで工程S9の処理を繰り返す。また、出力制御装置61は、上部旋回体12が停止するまで、前記制御信号制限を継続する。異常検出装置62は、上部旋回体12が停止したと判定すると、処理を工程S10へ移行させる。
【0114】
<工程S10>
工程S10において、出力制御装置61が、前記制御信号制限を終了する。その後、異常検出装置62が、工程S5からの処理を繰り返す。
【0115】
以上に示されるように、クレーン10は、旋回レバー511が操作されているときに発生し得る反力装置510の異常を早期に検出して操縦者に通知することができる。これにより、前記操縦者は、速やかに適切な対応をとることができる。
【0116】
また、本実施形態において、出力制御装置61は、反力装置510の前記異常状態が検出されてから上部旋回体12が停止するまでの間に、旋回制御信号Sx2のレベルを、反力装置510の前記異常状態が検出されたときの旋回制御信号Sx2のレベルを超えない範囲に制限する。
【0117】
従って、上部旋回体12が意図せず過剰に旋回すること、および過剰な旋回により吊荷9が不安定に揺れること、などの危険な事態が回避される。
【0118】
[第2実施形態]
次に、
図10を参照しつつ、第2実施形態に係るクレーンについて説明する。
図10において、
図6,7,9に示される符号と同じ符号は、同じ参照符号が付されている。
【0119】
第2実施形態に係るクレーンは、第1実施形態に係るクレーン10と同じ構成を備える。以下、第2実施形態に係るクレーンにおける第1実施形態に係るクレーン10と異なる点について説明する。
【0120】
本実施形態において、出力制御装置61は、反力装置510の前記異常状態が検出されてから上部旋回体12が停止するまでの間に、異常検出時レベルSx20から中立位置P0に対応する基準レベルV00まで徐々に変化する上限レベルMx0を設定する。上限レベルMx0の変化パターンは予め定められている。
【0121】
図10に示される例において、出力制御装置61は、予め定められた非線形関数が表す曲線に沿って異常検出時レベルSx20から基準レベルV00へ向けて徐々に変化し、基準レベルV00に至る前に予め定められた一定の傾きで基準レベルV00まで線形変化する上限レベルMx0を設定する。
【0122】
また、出力制御装置61が、異常検出時レベルSx20から基準レベルV00まで予め定められた一定の傾きで線形変化する上限レベルMx0を設定することも考えられる。
【0123】
そして、出力制御装置61は、旋回制御信号Sx2のレベルを、上限レベルMx0を超えない範囲に制限する。
【0124】
図10において、異常検出時点T2a以降の制限期間T21は、旋回制御信号Sx2のレベルが、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルよりも小さい上限レベルMx0に制限されている期間である。
【0125】
同様に、
図10において、制限期間T21に続く非制限期間T22は、旋回制御信号Sx2のレベルが、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルに設定されている期間である。非制限期間T22において、操作信号Sx1のレベルに対応するレベルは、上限レベルMx0よりも小さい。
【0126】
本実施形態が採用されることにより、反力装置510の前記異常状態が検出された後に、ブーム21の旋回速度が徐々に減速するよう自動的に制御される。これにより、操縦者が旋回レバー511を中立位置P0へ戻す操作が遅れた場合でも、ブーム21が異常検出時レベルSx20に対応する速度で旋回し続けることが回避される。
【符号の説明】
【0127】
5 :操作装置
6 :制御装置
7 :表示装置
9 :吊荷
10 :クレーン
11 :下部走行体
12 :上部旋回体
13 :キャブ
14 :走行装置
15 :ガントリ
16 :ウインチ装置
17 :カウンターウェイト
21 :ブーム
22 :ブームポイントアイドラーシーブ
23 :ガントリシーブ
30 :フック
31 :起伏ロープ
32 :吊りロープ
41 :エンジン
42 :油圧ポンプ
43 :油圧制御弁
44 :油圧アクチュエータ
45 :状態検出装置
51 :レバー操作装置
52 :操作ボタン
53 :入力装置
61 :出力制御装置
62 :異常検出装置
161 :第1ウインチ装置
162 :第2ウインチ装置
411 :油圧モーター
441 :旋回モーター
451 :荷重計
452 :起伏角度検出装置
453 :旋回角度検出装置
454 :旋回圧力センサー
510 :反力装置
511 :旋回レバー
512 :ロータ
513 :ステータ
514 :励磁コイル
515 :給電回路
601 :MPU
602 :RAM
603 :不揮発性メモリー
604 :信号インターフェイス
5100 :操作検出センサー
5121 :円筒部
5122 :軸部
5123 :磁極部
5131 :胴部
5132 :フランジ部
5132a :突出部
F0 :反力
Mx0 :上限レベル
P0 :中立位置
R0 :設定範囲
Sv1 :変化速度
Sx1 :操作信号
Sx2 :旋回制御信号
Sx20 :異常検出時レベル
T01 :第1期間
T02 :第2期間
T03 :第3期間
T04 :第4期間
T05 :第5期間
T06 :第6期間
T1 :監視期間
T1a :監視開始時点
T1b :監視終了時点
T21 :制限期間
T22 :非制限期間
T2a :異常検出時点
V00 :基準レベル
ΔV0 :許容変化量