(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20220107BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220107BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20220107BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220107BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220107BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220107BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220107BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
H01M50/105
C09J175/04
C09J175/06
B65D65/40 D
B32B27/00 D
B32B15/08 F
H01G11/78
H01M50/121
H01M50/129
(21)【出願番号】P 2019230641
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2020-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 努
(72)【発明者】
【氏名】小清水 渉
(72)【発明者】
【氏名】花木 寛
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117080(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/117082(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01G 11/00-11/86
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた蓄電デバイス用包装材であって、
前記外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を含む主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を構成するポリイソシアネートが、トリレンジイソシアネート、又はトリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体を含み、
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度が、0.10mmol/g以上、
0.40mmol/g以下である蓄電デバイス用包装材。
【請求項2】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、50,000~250,000である、請求項1に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項3】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の水酸基価が、0.5~35mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項4】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)は、重量平均分子量が10,000~30,000のポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物である、請求項1~3いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層(1)が凸面を構成し、ヒートシール層(5)が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の蓄電デバイス用容器を形成するための蓄電デバイス用包装材に関し、外観が良好であり、且つ優れた接着強度と成型性とを有する蓄電デバイス用包装材、該包装材を用いてなる蓄電デバイス用容器、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型パソコン等の電子機器の急速な成長により、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ等の蓄電デバイスの需要が増大してきた。これらの中でも、エネルギー密度の高さや軽量さから、小型のリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池の外装体としては、従来、金属製缶が用いられてきたが、軽量化や生産性の観点よりプラスチックフィルムや金属箔などを積層した包装材が主流となりつつある。
【0003】
例えば特許文献1には、耐熱性延伸樹脂層、接着剤層、アルミニウム層及び熱可塑性無延伸樹脂層が順次積層された構造を有し、接着剤層が、-20~45℃のガラス転移温度を示すポリエステル樹脂と、ポリエステル樹脂100質量部に対し10~70質量部のトルエンジイソシアネート系硬化剤とを含有する接着剤組成物の硬化処理物から構成されていることを特徴とする電池ケース用包材が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されてなり、前記外層側接着剤層が、特定のガラス転移温度を有する2種のポリエステルポリオールとポリイソシアネートとシランカップリング剤とを含む接着剤により形成されてなることを特徴とする電池用包装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-149562号公報
【文献】特開2014-091770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、車載や家庭蓄電など用途が拡大すると共に、二次電池の大容量化が求められており、成型性の良さが蓄電デバイス用包装材には求められるようになっている。また、車載用途では軽量化がさらに求められており、接着剤を薄膜にしても包装材の各プラスチックフィルムや金属箔等の層間の接着強度が成型加工、長期耐久試験後においても維持され、さらに外観に異常が無いことが求められている。
しかしながら、特許文献1、2に記載された包装材は、接着剤層にイソシアネート成分が過剰に配合されたウレタン系接着剤を用いているため、過剰のイソシアネート基と水との反応によりウレア結合を有する樹脂が生成し、該ウレア結合含有樹脂はウレタン系接着剤との相溶性が劣るため、包装材とした際に外観不良や深い成型が困難であるという課題がある。
したがって本発明の課題は、薄膜でも高温高湿・長期耐久性試験後においても層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス用包装材、該包装材を用いてなる蓄電デバイス用容器、及び信頼性に優れた蓄電デバイスを提供することをすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の実施形態は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた蓄電デバイス用包装材であって、
前記外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を含む主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度が、0.10mmol/g以上、0.90mmol/g以下である蓄電デバイス用包装材に関する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、50,000~250,000である、上記記載の蓄電デバイス用包装材に関する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)は、重量平均分子量が10,000~30,000のポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物である、上記記載の蓄電デバイス用包装材に関する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、上記記載の蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層(1)が凸面を構成し、ヒートシール層(5)が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器に関する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、上記記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、薄膜でも高温高湿・長期耐久性試験後においても層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス用包装材、該包装材を用いてなる蓄電デバイス用容器、及び信頼性に優れた蓄電デバイスを提供することをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の蓄電デバイス用包装材の断面図(模式)である。
【
図2】本発明の蓄電デバイス用容器の一態様(トレイ状)の斜視図(模式)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<蓄電デバイス用包装材>
以下、本発明の好ましい形態について説明する。
本発明の蓄電デバイス用包装材は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備え、前記外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を含む主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度が、0.10mmol/g以上、0.90mmol/g以下であることを特徴とする。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0016】
<外層側接着剤層(2)>
本発明における外層側接着剤層(2)は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を含む主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成される。
まず主剤に関して説明する。主剤は後述の水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)と各種の添加剤とからなる。
【0017】
<水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)>
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)は、ウレタン結合濃度が0.10mmol/g以上、0.90mmol/g以下であることを特徴とし、例えば、後述のポリオール中の水酸基と、ポリイソシアネートのイソシアネート基とを水酸基当量が過剰な条件でウレタン化反応させることで得ることができる。
ポリウレタン接着剤の主剤は、上記水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を含んでいればよく、さらに別の樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
本発明においては、外層側接着剤層を構成する成分である水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度を制御することが重要であり、ウレタン結合濃度が所定範囲内であることで、硬化剤に含まれるポリイソシアネート成分(B)との相溶性を向上させることができ、架橋密度が高く、耐久性と外観とに優れる接着剤層を形成することができる。
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度は、0.10~0.90mmol/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15~0.60mmol/g、さらに好ましくは0.20~0.40mmol/gである。0.10mmol/g以上であると、優れた相溶性向上効果を得ることができ外観や接着性が向上する。0.90mmol/g以下であるとウレタン結合濃度が過度になりすぎず適正な粘度となるため、塗工性や外観に優れる。
【0019】
ウレタン結合濃度は、下記式1を用いて算出することができる。
式1:
ウレタン結合濃度(mmol/g)=[(ポリイソシアネートのNCO含有量(質量%))×(ウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートとの合計に対するポリイソシアネートの配合量(質量%))÷42×1000]+[(ポリイソシアネート内部のウレタン結合数÷ポリイソシアネート分子量)×(ウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートとの合計に対するポリイソシアネートの配合量(質量%))×1000]
【0020】
例えば、合成例(a)-1に示した水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度は、トリレンジイソシアネートのNCO含有量が48.2質量%、ポリオールとポリイソシアネートとの合計に対するポリイソシアネートの配合量は1質量%、内部のウレタン結合数はゼロであることから、ウレタン結合濃度=0.482×0.01/42×1000=0.11mmol/gとなる。
【0021】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは20,000~300,000、より好ましくは50,000~250,000、さらに好ましくは70,000~150,000である。
重量平均分子量が20,000以上であると、樹脂の伸長性が高まり加工性が向上する。重量平均分子量が300,000以下であると、接着剤溶液の粘度が過度に高くなりすぎず外観不良が発生し難い。より好ましくは重量平均分子量を70,000~150,000に制御することで、樹脂の伸長性と粘度の両立がしやすく、好適に使用することができる。
【0022】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは0.5~35mgKOH/g、より好ましくは1~15mgKOH/gである。水酸基は後述するポリイソシアネート成分(B)との架橋反応に用いられ、架橋反応が進行することで、接着剤が高分子量化し、包装材としての耐熱性を高めることができる。上記水酸基価は、例えばJIS K 1557-1に準拠した方法で求めることができる。
【0023】
[ポリオール]
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を構成するポリオールとしては、特に制限されず、従来公知のポリオールから選択することができ、単独又は2種以上を併用してもよい。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールが挙げられ、中でも、基材との接着性の観点からポリエステルポリオールが好適に用いられる。
【0024】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシル基成分ともいう)と、
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)と、
を反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;等が挙げられる。
上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0025】
ポリオールの重量平均分子量は、好ましくは10,000~30,000である。重量平均分子量が10,000以上であると、基材との接着性が向上し加工性に優れる。重量平均分子量が30,000以下であると、ポリエステルポリオール末端の水酸基濃度が過度に低くならず、ポリイソシアネートと反応させて水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を得る際に、反応に時間がかかりすぎることがない。
【0026】
[ポリイソシアネート]
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を構成するポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、3官能以上のポリイソシアネートの単量体、前記ジイソシアネートから誘導される各種誘導体が挙げられる。
【0027】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-プチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。
【0028】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0029】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω、ω’-ジイソシアネート-1,4- ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物が挙げられる。
【0031】
3官能以上のポリイソシアネート単量体としては、例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネ-ト等のテトライソシアネート等が挙げられる。
【0032】
前記ジイソシアネートから誘導される各種誘導体としては、前記ジイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロ-ル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール若しくはひまし油等との付加体(アダクト体);前記ジイソシアネートの三量体(トリマー、ヌレート体ともいう);ビウレット体;アロファネート体;の他、炭酸ガスと前記ジイソシアネートとから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;等を用いることができる。
【0033】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を構成するポリイソシアネートとしては、中でも、芳香族のイソシアネートを用いることが好ましく、トリレンジイソシアネート、又はトリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体が、包装材の成型性や高温高湿試験後の接着性の観点からより好ましい。
【0034】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を得る際の、ポリオールとポリイソシアネートとの反応温度は、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは80~150℃の温度範囲である。ウレタン化反応におけるポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)は、0.1~0.9で反応させることが好ましく、より好ましくは0.3~0.8である。
【0035】
<ポリイソシアネート成分(B)>
本発明における硬化剤は、ポリイソシアネート成分(B)を含む。ポリイソシアネート成分(B)は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)中の水酸基と架橋反応し、接着剤層の分子量を向上させ、エネルギー弾性を発現する内部凝集力を向上させる役割を担う。また、イソシアネート基は水と反応し凝集力の高いウレア結合を形成可能であることから、養生中に自己架橋反応させることで接着剤層の凝集力を高めることができる。しかしその一方で、架橋反応により生成するウレタン結合やウレア結合は水素結合もあり極性が高いため、樹脂との相溶性が悪く、外観悪化や加工の変形の際に欠陥となる場合があるが、所定濃度のウレタン結合と水酸基とを有するポリウレタン樹脂(A)を組み合わせて用いることで、相溶性に優れ、良好な外観且つ強靭な接着剤層を得ることができ、蓄電デバイス用包装材として良好な物性を得ることができる。
【0036】
また、ポリイソシアネート成分(B)は、後述する基材表面との相互作用を向上させる働きがあり、コロナ放電処理等の物理処理や酸改質等の化学処理がなされた基材と、ポリイソシアネート(B)中の反応性官能基とを化学反応させることで、外層側接着剤層と基材との間に強固な相互作用を発現させることも可能である。
このように、ポリイソシアネート成分(B)を用いることにより、強固な外層側接着剤層を形成することが可能となり、急激な環境変化に伴う基材の伸縮運動を接着剤層が抑制し、接着強度を高レベルで維持することが可能となる。
【0037】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、上述の水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を構成するポリイソシアネートの項で挙げたものを用いることができ、これらを単独で、あるいは2種以上で使用できる。
中でも、好ましくは、ジイソシアネートのヌレート体、ジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体であり、電子デバイス用途において優れた耐熱性、高い凝集力と加工性を両立可能である点から、より好ましくは芳香族イソシアネート、又はその誘導体である。
また、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を構成するポリイソシアネートと、ポリイソシアネート成分(B)の種類を同一にすることでより相溶性が高まるため好ましい。
【0038】
ポリイソシアネート成分(B)の配合量は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10~40質量部、より好ましくは20~30質量部である。ポリイソシアネート成分(B)が10質量部以上であると、接着剤層の分子量を効率的に向上でき、内部凝集力が向上することにより、高い接着強度が得られる。40質量部以下であると、架橋反応により生成する極性の高いウレタン結合やウレア結合の量を適切に制御でき、外観悪化や加工による変形時の欠陥の発生を抑えることができる。
【0039】
ポリウレタン接着剤は、ポリウレタン接着剤を基材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程において基材への影響がない範囲内で溶剤が含まれてもよい。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。これら溶剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
ポリウレタン接着剤は、さらに、その他成分を含有してもよい。その他成分は、主剤又は硬化剤のいずれに配合してもよいし、主剤と硬化剤とを配合する際に添加してもよい。
【0041】
(反応促進剤)
ポリウレタン接着剤は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0042】
(シランカップリング剤)
ポリウレタン接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、さらにシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の固形分100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。上記範囲のシランカップリング剤を添加することによって金属箔に対する接着強度を向上できる。
【0043】
(リンの酸素酸又はその誘導体)
ポリウレタン接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、上記のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リン酸又はその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リン酸又はその誘導体の添加量は、接着剤の固形分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部である。
【0044】
ポリウレタン接着剤は、包装材の外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0045】
ポリウレタン接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等が挙げられる。
【0046】
<蓄電デバイス用包装材の製造>
本発明の蓄電デバイス用包装材の製造方法は特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、外層側樹脂フィルム層(1)と金属箔層(3)とを、上述の外層側接着剤層(2)を形成するポリウレタン接着剤を用いて積層して、外層側樹脂フィルム層(1)/外層側接着剤層(2)/金属箔層(3)の構成を備える中間積層体を得た後、内層側接着剤を用いて中間積層体の金属箔層(3)面にヒートシール層(5)を積層して製造することができる(以下、製造方法1)。
あるいは、内層側接着剤を用いて金属箔層(3)とヒートシール層(5)とを積層して、金属箔層(3)/内層側接着剤層(4)/ヒートシール層(5)の構成を備える中間積層体を得た後、上述のポリウレタン接着剤を用いて、中間積層体の金属箔層(3)と外層側樹脂フィルム層(1)とを積層して製造することができる(以下、製造方法2)。
【0047】
製造方法1の場合、上述のポリウレタン接着剤を、外層側樹脂フィルム層(1)又は金属箔層(3)のいずれか一方の基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、未硬化の外層側接着剤層に他方の基材を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温~100℃未満でエージングし、外層側接着剤層を硬化するのが好ましい。エージング温度が100℃未満であると、外層側樹脂フィルム層(1)の熱収縮が起こらないため、成型に影響を及ぼす破断伸度や破断応力の低下や、フィルムカールによる成型生産性の低下が起こらない。
外層側接着剤の乾燥後塗布量は1~15g/m2程度であることが好ましい。
【0048】
製造方法2の場合も同様に、上述のポリウレタン接着剤は、外層側樹脂フィルム層(1)若しくは中間積層体の金属箔層(3)面のいずれかに塗布すればよい。
【0049】
外層側接着剤層の形成方法としては、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等を用いる方法が挙げられる。
【0050】
<外層側樹脂フィルム層(1)>
外層側樹脂フィルム層(1)は特に制限されず、ポリアミド又はポリエステルからなる延伸フィルムを用いるのが好ましい。また、カーボンブラックや酸化チタン等の顔料により着色されていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層(1)の非ラミネート面は、傷つき防止や耐電解液性を目的としてコート剤やスリップ剤がコーティングされていてもよく、意匠性を目的として印刷インキがコーティングされていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層(1)は、2層以上のフィルムがあらかじめ積層されていてもよい。外層側樹脂フィルム層(1)の厚みは特に制限されないが、好ましくは12~100μmである。
【0051】
<金属箔層(3)>
金属箔層(3)は特に制限されないが、好ましくはアルミニウム箔層である。金属箔層(3)の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~80μmである。また、金属箔層(3)表面は、リン酸クロメート処理、クロム酸クロメート処理、3 価クロム処理、リン酸亜鉛処理、リン酸ジルコニウム処理、酸価ジルコニウム処理、リン酸チタン処理、フッ酸処理、セリウム処理、ハイドロタルサイト処理等による公知の防腐処理が施されていることが好ましい。防腐処理されていることによって、電池の電解液による金属箔表面の腐食劣化を抑制することができる。更に防腐処理表面上に、フェノール樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カップリング剤等の公知の有機プライマーを200℃ほどの高温で金属に焼付けて処理していることが好ましい。有機プライマー処理を施すことによって、金属箔と接着剤をより強固に接着させ、金属箔と接着剤間の浮きを更に抑制することができる。
【0052】
<ヒートシール層(5)>
ヒートシール層(5)は特に制限されず、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変成物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムである。ヒートシール層の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~150μmである。
【0053】
<内層側接着剤層(4)>
内層側接着剤層(4)を形成する接着剤は特に制限されないが、蓄電デバイスの電解液によって金属箔層(3)とヒートシール層(5)との接着強度が低下しないものが好ましく、公知の接着剤を使用することができる。
内層側接着剤層(4)は、例えば、ポリオレフィン樹脂とポリイソシアネートの組み合わせた接着剤や、ポリオールとポリイソシアネートとを組み合わせた接着剤を、グラビアコーター等を用いて金属箔層(3)に塗布して溶剤を乾燥させ、接着剤層にヒートシール層(5)を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温若しくは加温下でエージングすることで、形成することができる。
あるいは、酸変性ポリプロピレン等の接着剤をTダイ押出し機で金属箔層(3)上に溶融押出しして接着剤層を形成し、前記接着剤層上にヒートシール層(5)を重ね、金属箔層(3)とヒートシール層(5)とを貼り合せることで内層側接着剤層(4)を形成することができる。
外層側接着剤層(2)及び内層側接着剤層(4)の両方がエージングを必要とする場合には、外層側樹脂フィルム層(1)、未硬化の外層側接着剤層、金属箔層(3)、未硬化の内層側接着剤層及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた積層体を得た後に、まとめてエージングを行ってもよい。
【0054】
<蓄電デバイス用容器>
本発明の蓄電デバイス用容器は、本発明の蓄電デバイス用包装材を用い、外層側樹脂フィルム層(1)が凸面を構成し、ヒートシール層(5)が凹面を構成するように成型して得ることができる。なお、本発明でいう「凹面」とは、平たい状態の蓄電デバイス用包装材を成型加工して
図2に示すようなトレイ状とした場合に、電解液を内部に収容し得る窪みを有する面という意であり、本発明でいう「凸面」とは、前記窪みを有する面の自背面の意である。
【0055】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイス用容器を使用してなるものであり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが空挙げられる。
一般的な蓄電デバイスは、電極を含む電池要素と該電極から延在するリードと収容する容器とを備え、本発明の蓄電デバイスでは、前記蓄電デバイス用容器が前記収納する容器に用いられる。前記収納する容器は、蓄電デバイス用包装材から、ヒートシール層(5)が内側となるように形成され、2つの包装材のヒートシール層(5)同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた包装材の周縁部を熱融着して得られてもよいし、1つの包装材を折り返して重ね合わせ、同様に包装材の周縁部を熱融着してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0057】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価(mgKOH/g)を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0058】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオールや水酸基含有ウレタン樹脂等)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により水酸基価(mgKOH/g)を求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0059】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量は、ショウデックス(昭和電工(株)製)、カラム:KF-805L、KF-803L、及びKF-802(昭和電工(株)製)、を用いて、カラムの温度を40℃、溶離液としてTHF、流速を0.2ml/min、検出をRI、試料濃度を0.02質量%、として測定した標準ポリスチレン換算の値を用いた。
【0060】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)により測定した。具体的には、測定対象化合物を約2mg、アルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、この時のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0061】
<ポリエステルポリオールの合成>
(ポリエステル1)
イソフタル酸100.0部、テレフタル酸150.1部、セバシン酸304.5部、エチレングリコール64.5部、ネオペンチルグリコール108.2部、1,6-ヘキサンジオール163.6部を仕込み、170~230℃で6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量(Mn)12,000、重量平均分子量(Mw)28,000、分子量分布(Mw/Mn)2.33、水酸基価12.2mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、樹脂Tgが-10℃のポリエステルポリオールであるポリエステル1を得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、カルボキシル基成分と水酸基成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル1の組成は、表1に示すように、イソフタル酸:テレフタル酸:セバシン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:1,6-ヘキサンジオール=20:30:50:30:30:40(mol%)となる。
【0062】
(ポリエステル2~8)
得られるポリエステルポリオールの、カルボキシル基成分と水酸基成分との合計を200mol%とした場合の各成分のmol%が表1に示すような組成になるように、ポリエステル1と同様にしてカルボキシル基成分と水酸基成分とを反応させ、ポリエステル2~8を得た。表1中の成分の数値は、合計200mol%とした場合のmol%を表す。
【0063】
【0064】
表1中の略号は以下の通りである。
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
AdA:アジピン酸
SeA:セバシン酸
AzA:アゼライン酸
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール
BEPG:ブチルエチルプロパンジオール
【0065】
<水酸基含有ポリウレタン樹脂の合成>
(ウレタン(a)-1)
得られたポリエステル1を100部とトルエン100部とを1リットル4口フラスコに仕込み、100℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを1部、ジブチル錫ジラウレート0.15部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、メチルエチルケトン50部を添加し、ウレタン結合濃度0.11mmol/g、Mw36,000、Tg-11℃、水酸基価5.7mgKOH/g、不揮発分40%の水酸基を有するポリウレタン樹脂であるウレタン(a)-1溶液を得た。
【0066】
(ウレタン(a)-2~(a)-22)
表2に示す配合量に変更した以外は、ウレタン(a)-1と同様にして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、水酸基を有するポリウレタン樹脂であるウレタン(a)-2~(a)-22を得た。
【0067】
【0068】
表2中の略号は以下の通りである。
1,4-BD:1,4-ブタンジオール
NPG:ネオペンチルグリコール
PPG400:数平均分子量400のポリオキシプロピレングリコール(サンニックスPP-400 三洋化成工業株式会社)
PPG1000:数平均分子量1,000のポリオキシプロピレングリコール(サンニックスPP-1000 三洋化成工業株式会社)
PPG2000:数平均分子量2,000のポリオキシプロピレングリコール(サンニックスPP-2000 三洋化成工業株式会社)
PC3000:数平均分子量3,000の液状ポリカーボネートジオール(ETERNACOLL PH-300 宇部興産株式会社製)
TDI:トリレンジイソシアネート(コロネートT-80 東ソー株式会社製、NCO含有量48.2%)
TDI-TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(コロネートL 東ソー株式会社製、固形分濃度75%、NCO含有量13.2%)
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT 東ソー株式会社製、NCO含有量33.6%)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)H コベストロ社製、NCO含有量49.9%)
HDIヌレート:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体(スミジュールN-3300 住化バイエル社製、 NCO含有量21.8%)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI コベストロ社製、NCO含有量37.8%)
【0069】
<蓄電デバイス用包装材の製造>
[実施例1]
ウレタン(a)-1溶液を250部(固形換算で100部)、添加剤としてグリシドプロピルトリメトキシシラン1.0部を仕込み、30分撹拌した後に、コロネートL(東ソー株式会社製、固形分濃度75%、NCO含有量13.2%)を40部(固形換算で30部)仕込み、メチルエチルケトンで希釈して、固形分濃度30%の接着剤溶液を調製した。
ドライラミネーターを用いて、厚み40μmのアルミニウム箔の一方の面に、外層側接着剤層(2)用として上記接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚み30μmの延伸ポリアミドフィルムを積層し中間積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は2g/m2及び4g/m2とした。
次いで、ドライラミネーターを用いて、得られた中間積層体のアルミニウム箔の他方の面に、後述の内層側接着剤層用接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は4g/m2とした。
次いで、60℃30%RH及び60℃90%RHの条件で7日間のエージングを行い、外層側及び内層側の接着剤層を硬化させて、外層側樹脂フィルム層(1)/外層側接着剤層(2)/金属箔層(3)/内層側接着剤層(4)/ヒートシール層(5)の構成を備える電池用包装材を得た。
【0070】
(内層側接着剤層用接着剤)
主剤としてAD-502(東洋モートン(株)製 ポリエステルポリオール)、硬化剤としてCAT-10L (東洋モートン(株)製 イソシアネート系硬化剤)を用いて、主剤/硬化剤=100/10(質量比)となるように配合し酢酸エチルで固形分濃度30%に調整したものを、内層側接着剤層用接着剤として用いた。
【0071】
[実施例2~26、比較例1~8]
表3及び4の配合量(部)に変更した以外は実施例1と同様の所作を行い、電池用包装材を得た。
【0072】
<蓄電デバイス用包装材の評価>
得られた蓄電デバイス用包装材について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0073】
[包装材の外観評価]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が4g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間及び60℃90%RH7日間の電池用包装材について、各々外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:白化や発泡が見られない(良好)
B:若干の白化はあるが、発泡は見られない(使用可能)
C:白化又は発泡が見られる(使用不可)
【0074】
[ラミネート強度(湿熱試験前)]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2及び4g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を、各々200mm×15mmの大きさに切断し、引張り試験機を用いてT型剥離試験を行い、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度(N/15mm巾)を測定した。測定は、20℃65%RHの環境下にて、荷重速度300mm/分で行い、5個の試験片の平均値により、以下の基準で評価した。
S:剥離強度の平均値が7N以上(非常に良好)
A:剥離強度の平均値が4N以上、7N未満(良好)
B:剥離強度の平均値が2N以上、4N未満(使用可能)
C:剥離強度の平均値が2N未満(使用不可)
【0075】
[ラミネート強度(湿熱試験後)]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2及び4g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を、各々85℃85%RH雰囲気の恒温恒湿槽に入れ168時間静置した後、恒温恒湿槽から取り出し、20℃65%RHの環境下にて2時間静置した後、湿熱試験前と同様の所作を行い、同基準でラミネート強度を評価した。
【0076】
[成型性評価]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を80×80mmの大きさに切断し、ブランクとした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて張り出し1段成型を行い、アルミニウム箔の破断や各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さにより、以下の基準で成型性を評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーRが2mm、ポンチ肩Rが1mmであり、使用した金型のダイス孔形状は、一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーRが2mm、ダイス孔肩Rが1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側2mmであり、前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。
S:最大の成型高さが6mm以上である(非常に良好)
A:最大の成型高さが4mm以上、6mm未満である(良好)
B:最大の成型高さが2mm以上、4mm未満である(使用可能)
C:最大の成型高さが2mm未満である(使用不可)
【0077】
[成型物の耐湿熱性]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を80×80mmの大きさに切断し、ブランクとした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ3mmにて張り出し1段成型を行い、成型物を得た。
次いで、成型物を85℃85%RH雰囲気下の恒温恒湿槽に入れ168時間静置した後、恒温恒湿槽から取り出し、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーRが2mm、ポンチ肩Rが1mmであり、使用した金型のダイス孔形状は、一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーRが2mm、ダイス孔肩Rが1mmである。
A:浮きの発生なし(良好)
B:4辺のうち1辺で浮きが発生(使用可能)
C:4辺のうち2辺以上で浮きが発生(使用不可)
【0078】
[成型物の耐熱性]
静置の条件を、85℃85%RHで168時間から120℃168時間に変更した以外は、成型物の耐湿熱性評価と同様にして、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
A:浮きの発生なし(良好)
B:4辺のうち1辺で浮きが発生(使用可能)
C:4辺のうち2辺以上で浮きが発生(使用不可)
【0079】
【0080】
表3中の略号は以下の通りである。
SC-1:グリシドプロピルトリメトキシシラン
SC-2:グリシドプロピルトリエトキシシラン
DBTDL:ジラウリン酸ジブチルすず
NCO-1:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(コロネートL 東ソー株式会社製、不揮発分濃度75%、NCO含有量13.2%)
NCO-2:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(タエネートD-160N 三井化学株式会社製 NCO含有率12.6%、不揮発分75%)
NCO-3:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体(VESTANAT(R) T 1890/100 エボニック社製 NCO含有量17.3%)
【0081】
表3の結果から、外層側接着剤層を形成する主剤として、所定量のウレタン結合濃度を有する水酸基含有ポリウレタン樹脂を主剤に用いた包装材は、硬化剤であるポリイソシアネートとの相溶性が良好であり、60℃90%RHといった高湿度条件で養生した場合でも、発泡や白濁等の外観不良が発生しない。また、主剤と硬化剤との相溶性に優れるため外層側接着層の凝集力が向上し、外層側接着剤層の塗布量が2g/m2といった薄膜であっても、包装材のラミネート強度及び成型性に優れる。
特に、実施例10は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度、重量平均分子量が適切であるため、硬化剤との相溶性が高い、高凝集力の接着層が得られており、高いラミネート強度が得られ、加工性に優れる。
【0082】
一方、比較例1、2はウレタン結合濃度が高く、接着剤が高粘度粘度となり薄膜で塗布するのが困難であるだけでなく、ラミネート強度が低下した。そのため、成型時の変形に追従できず、浮きが発生した。比較例3、4は、ウレタン結合濃度が低く、60℃90%RHといった高湿度条件で養生した場合に外観不良や発泡が発生した。またラミネート強度が低く、薄膜での加工は困難である。
比較例5、6は、主剤に水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を含んでいないため、外観不良が発生した。比較例6では樹脂の芳香環の量を増やし、芳香族イソシアネートとの溶解性を高める所作を行っているが、薄膜でのラミネート強度の確保が難しく、成型時の変形に追従できず、浮きが発生した。比較例7はウレタン結合濃度の高い樹脂をポリエステル樹脂と混合し、接着性の向上を目指した例だが、ポリエステルとの相溶性が悪く外観不良が発生し、さらに成型時に欠陥の起点となり、剥れが発生した。
比較例8は、特開2014-091770号の実施例を引用したものだが、比較例5、6と同様に主剤にウレタン結合を含まないため、高湿度条件での養生では塗膜の外観が発生しやすく、薄膜時に接着強度が低下した。また、比較例5、6と同様に、成型時の変形に追従できず、浮きが発生した。
【符号の説明】
【0083】
(1):外層側樹脂フィルム層
(2):外層側接着剤層
(3):金属箔層
(4):内層側接着剤層
(5):ヒートシール層