(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】作物栽培支援装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20220107BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2019539050
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2018027072
(87)【国際公開番号】W WO2019044244
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017168585
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 誌乃
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-310463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を栽培する複数の栽培領域別に作物に関する所定の栽培情報を出力する栽培情報出力部と、
前記栽培情報を含む
2つのパラメータの相関に基づく所定の標準範囲と前記栽培情報とを前記栽培領域毎に比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて前記栽培情報が前記標準範囲内か否かを前記栽培領域別に表示する表示部と、
を
備え、
前記栽培情報は、前記栽培領域内の作物の生育状態を示す生育指標から成り、
前記生育指標は、可視画像と赤外画像とから算出されるNDVI、RVI、DVI、TVI、IPVIのいずれかの指標と、植被率と、前記栽培領域の熱画像の温度値と、前記作物の草丈と、のうちのいずれかであり、
前記2つのパラメータは、2種類の前記栽培情報から成り、
前記比較部は前記2つのパラメータの関係を近似する近似曲線を導出し、前記近似曲線から所定の偏位量の範囲を前記標準範囲とする、作物栽培支援装置。
【請求項2】
前記表示部は前記2つのパラメータを座標軸とする散布図を形成し、前記栽培情報が前記標準範囲内の前記栽培領域と前記標準範囲外の前記栽培領域とを異なるマーキングにより表示する、請求項1に記載の作物栽培支援装置。
【請求項3】
前記表示部は複数の前記栽培領域のマップを形成し、前記栽培情報が前記標準範囲外の前記栽培領域上に所定のマーキングを表示する、請求項1または2に記載の作物栽培支援装置。
【請求項4】
作物を栽培する複数の栽培領域別に作物に関する所定の栽培情報を出力する栽培情報出力部と、
前記栽培情報を含む2つのパラメータの相関に基づく所定の標準範囲と前記栽培情報とを前記栽培領域毎に比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて前記栽培情報が前記標準範囲内か否かを前記栽培領域別に表示する表示部と、
記憶部と、を備え、
前記2つのパラメータは、2種類の前記栽培情報から成り、
前記栽培情報出力部は、比較する2年間の作物の収量の差を示す収量差、及び比較する2年間の施肥量の差を示す施肥量差の入力操作を受け付けて出力する操作部を有し、2種類の前記栽培情報が、前記収量差及び前記施肥量差から成り、
前記記憶部は、前記収量差と前記施肥量差との関係を近似する近似曲線を予め記憶し、
前記操作部を介して前記収量差及び前記施肥量差が入力されたときに、
前記比較部は、前記記憶部から前記近似曲線を読み出し、前記近似曲線から所定の偏位量の範囲を標準範囲と決定する、作物栽培支援装置。
【請求項5】
前記表示部は前記2つのパラメータを座標軸とする散布図を形成し、前記栽培情報が前記標準範囲内の前記栽培領域と前記標準範囲外の前記栽培領域とを異なるマーキングにより表示する、請求項4に記載の作物栽培支援装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記収量差及び前記施肥量差が前記標準範囲内か否かを前記栽培領域別に表示する、請求項4または5に記載の作物栽培支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の栽培を支援する作物栽培支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作物栽培支援装置は特許文献1に開示されている。この作物栽培支援装置は、データベース、生長曲線生成部、キータイム抽出部、高次元分析モデル生成部、トレンド予測部及び表示部を有する。データベースは、作物の植生生長の複数サイクルの時系列の衛星画像による衛星データと、時系列の温度を含む気象データとを記憶する。生長曲線生成部は、データベースから読み出した衛星データ及び気象データに基づき、圃場毎及び時期毎の植物の植生指標及び予め定めた基準時期からの有効積算温度を算出し、植生指標対有効積算温度を表す植生生長曲線を圃場毎の過去の複数サイクルの対象作物について複数作成する。
【0003】
キータイム抽出部は、作成した植生生長曲線に対して、植生特有の生長重要時期を表す予め定められたキータイムに対する植生指標(NDVI)を抽出する。高次元分析モデル生成部は、複数のキータイムの植生指標を各軸とした高次元植生分析座標に植生生長曲線毎の各キータイムの植生指標をプロットした高次元分析モデルを圃場毎の過去の複数サイクルの対象作物について複数生成する。
【0004】
トレンド予測部は、予測対象となる圃場の作物についての複数の高次元分析モデルに基づき、予測年・予測サイクルの植生生長曲線における取得済みのキータイムの植生指標に従い未取得のキータイムの予測植生指標を求める。これにより、トレンド予測部は対象作物の取得済み以後の植生生長曲線を予測する。これにより、作物栽培支援装置は所定の圃場の作物の生長状況及び収量予測を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、作物の栽培方法の多様化のため、同一品種の作物であっても作物の生育状況は圃場、農家、地域等によって異なることがある。例えば、通常量よりも低い量の肥料で米を栽培する圃場の米は、通常量の肥料を用いて米を栽培する圃場の米よりも生育が遅い。このため、上記従来の作物栽培支援装置を用いて、栽培方法の異なる圃場間で作物の植生生長曲線を比較しても、各圃場での作物の生長状況を予測することはできても圃場の状況の可否(異常箇所の有無)を判断することは困難である。すなわち、圃場の状況について絶対的な判断が困難である。したがって、使用者は圃場の状況を正確に判断することができず、作物栽培支援装置の使用性が低下する問題があった。
【0007】
本発明は使用性を向上できる作物栽培支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る作物栽培支援装置は、作物を栽培する複数の栽培領域別に作物に関する所定の栽培情報を出力する栽培情報出力部と、前記栽培情報を含む複数のパラメータの相関に基づく所定の標準範囲と前記栽培情報とを前記栽培領域毎に比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づいて前記栽培情報が前記標準範囲内か否かを前記栽培領域別に表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、作物栽培支援装置は、作物を栽培する複数の栽培領域別に作物に関する所定の栽培情報を出力する栽培情報出力部と、栽培情報を含む複数のパラメータの相関に基づく所定の標準範囲と栽培情報とを栽培領域毎に比較する比較部と、比較部の比較結果に基づいて栽培情報が標準範囲内か否かを栽培領域別に表示する表示部と、を備える。これにより、圃場の状況について絶対的な判断をせずに相対的な判断を行って、使用者は状況の悪い栽培領域(異常箇所を有する栽培領域)を容易に認識することができる。したがって、作物栽培支援装置の使用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の合成画像の生成工程を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の撮像工程を示す平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の撮像工程を示す側面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の不具合検出工程を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の画像合成工程を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の表示工程の一例を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の作物栽培支援装置の表示部のデータ表示画面の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の作物栽培支援装置の表示工程の一例を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の作物栽培支援装置の表示部のデータ表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は第1実施形態の作物栽培支援装置の概略構成を示す図である。作物栽培支援装置1は撮像部2及び情報端末3を備え、圃場FD(栽培領域)での作物PLの栽培を支援する。なお、圃場FDとは例えば平面視略矩形形状で四辺に畦畔が設けられ、畦畔で囲まれた水田または畑を示す。
【0012】
撮像部2は例えばマルチスペクトルカメラにより構成され、飛行体4に取り付けられる。撮像部2は可視撮像部20(
図2参照)及び近赤外撮像部21(
図2参照)を有する。可視撮像部20と近赤外撮像部21とは圃場FDに平行な面内で所定間隔をあけて配置される。
【0013】
可視撮像部20は可視光の画像(可視画像)を形成する。可視撮像部20は、第1バンドパスフィルタ、第1結像光学系、第1イメージセンサ(光学センサ)及び第1デジタルシグナルプロセッサ等を有する(いずれも不図示)。第1バンドパスフィルタは例えば波長650nmを中心波長とする比較的狭帯域で光を透過させる。第1結像光学系は、第1バンドパスフィルタを透過した測定対象の可視光の光学像を所定の第1結像面上に結像する。第1イメージセンサは第1結像面に受光面を一致させて配置され、圃場FDで反射する太陽光に含まれる波長650nmを中心波長とする比較的狭帯域の光を検知し、測定対象の可視光の光学像を電気的な信号に変換する。第1デジタルシグナルプロセッサは第1イメージセンサの出力に対して画像処理を施し、可視画像を形成する。
【0014】
近赤外撮像部21は近赤外光の画像(近赤外画像)を形成する。近赤外撮像部20は、第2バンドパスフィルタ、第2結像光学系、第2イメージセンサ(光学センサ)及び第2デジタルシグナルプロセッサを有する(いずれも不図示)。第2バンドパスフィルタは750nm以上の所定波長(例えば波長800nm)を中心波長とする比較的狭帯域で光を透過させる。第2結像光学系は、第2バンドパスフィルタを透過した測定対象の近赤外光の光学像を所定の第2結像面上に結像する。第2イメージセンサは第2結像面に受光面を一致させて配置され、圃場FDで反射する太陽光に含まれる波長800nmを中心波長とする比較的狭帯域の光を検知し、測定対象の近赤外光の光学像を電気的な信号に変換する。第2デジタルシグナルプロセッサは第2イメージセンサの出力に対して画像処理を施し、近赤外画像を形成する。なお、第1イメージセンサ及び第2イメージセンサとして例えばVGAタイプ(640画素×480画素)のイメージセンサを用いることができる。
【0015】
なお、撮像部2は近赤外撮像部21を省き、可視撮像部20により構成されてもよい。この場合、可視撮像部20は、第1結像光学系と、第1イメージセンサと、第1イメージセンサ上に配置されたR/G/B/IrまたはW/Y/R/Irとを備えて構成される(例えば特許第5168353号公報参照)。上記「R」、「G」、「B」はそれぞれ主に赤色光、緑色光、青色光を透過させるフィルタである。上記「Ir」は主に近赤外光を透過させるフィルタである。上記「W」は主に白色光を透過させるフィルタであり、上記「Y」は主に黄色光を透過させるフィルタである。
【0016】
飛行体4は自律飛行可能な無人航空機(ドローン)により構成され、圃場FDの上空を飛行する。飛行体4は複数(例えば8個)の水平回転翼42を設けたハウジング41を有する。撮像部2はハウジング41の下面に取り付けられた筐体25内に配置される。移動機構(不図示)により筐体25は開口部(不図示)を有する下面が鉛直下方に向く方向と正面を向く方向とに移動可能に構成される。これにより、可視撮像部20及び近赤外撮像部21は開口部を介して鉛直下方を向く方向と正面を向く方向とを移動可能になっている。また、ハウジング41の下面から下方に向かって複数の脚部46が突設される。飛行体4の着陸の際に脚部46が地面に接触する。
【0017】
飛行体4に対して事前のプログラミングによって飛行経路及び飛行高度等を設定すると、使用者が無線コントローラ(不図示)等を用いて操縦しなくても飛行体4は水平回転翼42を回転させて自律飛行することができる。飛行体4が飛行する際には可視撮像部20及び近赤外撮像部21は鉛直下方を向く。これにより、可視撮像部20及び近赤外撮像部21は圃場FDの上空を移動して圃場FDを撮像することができる。飛行体4が着陸する際には可視撮像部20及び近赤外撮像部21は正面方向を向く。これにより、可視撮像部20及び近赤外撮像部21のレンズ(不図示)等の地面への衝突による破損を防止することができる。なお、飛行体4は使用者による無線操縦飛行(誘導飛行)可能に構成されてもよい。
【0018】
また、飛行体4は例えば気球、飛行船、飛行機、ヘリコプター等であってもよい。また、飛行体4に替えて、地上から筐体25を吊り上げるクレーン等の吊上げ装置(不図示)を用いてもよい。この時、吊り下げた筐体25を水平方向に移動させる。
【0019】
情報端末3は例えばパーソナルコンピュータにより構成される。情報端末3は接続部35、45(
図2参照)を介して飛行体4及び撮像部2と通信可能に構成され、表示部31及び操作部32を有する。表示部31は例えば液晶パネル等から成り、操作メニュー、飛行体4との通信状況、後述の合成画像CI、後述の散布
図100、後述のマップ200、210等を表示する。操作部32はキーボード32a及びマウス32bを有し、各種データの入力操作を受け付けて出力する。なお、情報端末3はスマートフォン等の携帯電話機またはタブレットPCにより構成されてもよい。
【0020】
図2は作物栽培支援装置1の構成を示すブロック図である。情報端末3及び飛行体4はそれぞれの各部を制御するCPUから成る制御部39、49をそれぞれ有する。制御部39と制御部49とは接続部35、45を介して無線接続される。制御部39には表示部31、操作部32、記憶部33、合成部34、接続部35、不具合検出部36、生育指標導出部37及び比較部38が接続される。
【0021】
記憶部33は各種プログラム及び各種データを記憶する。各種プログラムには情報端末3の全体動作を制御するプログラム等が含まれる。各種データには可視画像、近赤外画像、撮像画像FI、地点画像PI及び合成画像CI等が含まれる。撮像画像FIは本実施形態では可視画像及び近赤外画像の両方、または近赤外画像に基づいて形成された画像である。地点画像PIは撮像画像FI上の地点の画像である。なお、地点画像PIは一または複数画素から成り、一の地点画像PIの大きさは一の撮像画像FIの大きさよりも小さくなっている。合成画像CIは複数の地点画像PIを合成して形成される画像であり、本実施形態では例えば一の圃場FDの全体の画像である。また、本実施形態では撮像画像FI、地点画像PI及び合成画像CIは後述のNDVI画像及び植被率画像により形成される。
【0022】
合成部34は地点画像PIを複数(本実施形態では6枚)の撮像画像FIに基づいて形成する。また、合成部34は複数の地点画像PIを合成する。これにより、合成部34は合成画像CIを形成する。
【0023】
接続部35、45にはアンテナ(不図示)が設けられる。接続部35、45はアンテナを介して無線電波により通信データの送受信を行う。通信データには可視撮像部20及び近赤外撮像部21がそれぞれ撮像した可視画像及び近赤外画像が含まれる。
【0024】
不具合検出部36は、撮像画像FI上の後述の不具合を有した不具合領域DR(
図6参照)を検出する。合成部34は後述のように不具合領域DRを除いて地点画像PIを形成する。
【0025】
生育指標導出部37は、可視撮像部20で撮像した可視画像及び近赤外撮像部21で撮像した近赤外画像に基づいて、圃場FD内の作物PLの生育状態を示す生育指標を導出する。本実施形態では生育指標として、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index、正規化差植生指数)を用いている。NDVIで表示した画像であるNDVI画像は可視画像及び近赤外画像に基づいて形成される。可視画像の画素値をRvとし、近赤外画像の画素値をRiとすると、可視画像及び近赤外画像の画素値に対応するNDVI画像の画素値がNDVIに相当し、NDVI=(Ri-Rv)/(Ri+Rv)と表される。NDVIが大きいほど植生が濃いことを表す。
【0026】
例えばNDVI画像の画素位置(10,15)における画素値は、可視画像の画素位置(10,15)における画素値及び近赤外画像の画素位置(10,15)における画素値から導出される。なお、可視撮像部20と近赤外撮像部21との視差が考慮され、可視画像の画素位置及び近赤外画像の画素位置のうちの少なくとも一方の画素位置が視差を修正するようにシフトされた上で、NDVIが導出されてもよい。また、可視撮像部20の第1結像光学系と近赤外撮像部21の第2結像光学系は画角及び歪曲収差等の光学特性が互いに同等である。
【0027】
なお、生育指標として、RVI(Ratio Vegetation Index、比植生指数、RVI=Ri/Rv)、DVI(Difference Vegetation Index、差植生指数、DVI=Ri-Rv)、TVI(Transformed Vegetation Index、TVI=NDVI+0.5)0.5)、またはIPVI(Infrared Percentage Vegetation Index、IPVI=Ri/(Ri+Rv)=(NDVI+1)/2)等を用いてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、生育指標としてNDVIに加えて、圃場FDの地表面を作物PLが覆っている割合を示す植被率を用いている。例えば、近赤外撮像部21で撮像した圃場FDの近赤外画像に基づいて生育指標導出部37は二値化処理を行い、白色と黒色の二値化画像を形成する。この時、白色部分が作物PLに相当し、黒色部分が土壌に相当する。そして、生育指標導出部37は二値化画像において白色部分が占める割合を示す植被率を導出する。本実施形態において、植被率で表した画像を植被率画像と呼ぶ。
【0029】
撮像部2及び生育指標導出部37により、作物PLに関する所定の栽培情報を出力する栽培情報出力部が構成される。
【0030】
比較部38は、NDVI(栽培情報、パラメータ)と植被率(栽培情報、パラメータ)との相関に基づく後述の標準範囲NR(
図9参照)と、NDVI及び植被率とを各圃場FD毎に比較する。また、比較部38は、NDVIと植被率との関係を近似する近似曲線AC(
図9参照)を導出し、所定の偏位量の範囲を標準範囲NRとする。
【0031】
飛行体4の制御部49には記憶部43、接続部45、水平回転翼42、方位測定部47及び位置検出部48が接続される。また、制御部49には可視撮像部20及び近赤外撮像部21が接続される。記憶部43には飛行体4の制御プログラム(自律飛行プログラムを含む)、撮像部2の制御プログラム及び各種データが記憶される。記憶部43が記憶する各種データには飛行体4の飛行経路及び高度等の飛行データ等が含まれる。
【0032】
位置検出部48は例えばGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)を備える。なお、GPSはDGPS(Differential GPS)等の誤差を補正する補正機能を有するGPSであってもよい。位置検出部48により撮像部2(可視撮像部20及び近赤外撮像部21)の位置(緯度X、経度Y、高度Z)が検出される。方位測定部47は例えば3軸方位計(3軸地磁気センサ)により構成され、撮像部2の地球上における方位を測定する。また、制御部39は、撮像部2の位置、画角及び画素数から地点画像PIの位置を導出する。
【0033】
図3は合成画像CIを形成する工程を示す図である。合成画像CIを形成する工程は撮影工程、生育指標画像形成工程、不具合検出工程、地点画像形成工程及び画像合成工程を有する。本実施形態では、合成画像CIは一の圃場FDの画像を例として説明する。なお、植被率画像の合成画像CIも同様に形成されるため、ここではNDVI画像の合成画像CIの形成を例として説明する。
【0034】
図4は撮像工程を示す平面図である。上記構成の作物栽培支援装置1において、水平回転翼42の回転により飛行体4が自律飛行し、圃場FDの上空に到達する。飛行体4は圃場FDの上空を設定高度H(本実施形態では30m)及び設定速度(本実施形態では15km/h)で、矢印FCで示すように平面視で九十九折りに飛行する。具体的には、飛行体4は圃場FDの長手方向に沿って長手方向の一方端部から他方端部に向かって飛行し、他方端部に到達すると圃場FDの短手方向に沿って所定距離飛行した後に長手方向に沿って長手方向の一方端部に向かって飛行することを繰り返す。飛行体4が圃場FDの上空を飛行している間に可視撮像部20及び近赤外撮像部21は圃場FDを撮像する。
【0035】
図5は撮像工程の側面図を示している。なお、
図5では飛行体4の図示を省略し、矢印FCは飛行体4の飛行方向(撮像部2の移動方向)を示している。撮像工程において、可視撮像部20及び近赤外撮像部21の画角αを45°とすると、撮像範囲Dは約24.85m×約33.13mの領域となる。そして、撮像部2が1秒間に可視画像及び近赤外画像をそれぞれ1枚撮像する場合、圃場FD上の同一地点SPがそれぞれ6回撮像される。可視画像及び近赤外画像は接続部45、35を介して制御部39に送信され、記憶部33に記憶される。この時、各可視画像及び各近赤外画像は撮像部2の位置と関連付けて記憶部33に記憶される。撮像工程の後に、生育指標画像形成工程に移行する。
【0036】
生育指標画像形成工程では、生育指標導出部37により可視画像の画素及び近赤外画像の画素からNDVIが導出される。これにより、NDVI画像である撮像画像FIが形成される。NDVI画像ではNDVIに応じてR、G、Bで色分けされる。例えば、NDVI画像において、R、G、Bの順にNDVIが低くなる。生育指標画像形成工程の後に不具合検出工程に移行する。
【0037】
植被率で表した植被率画像を形成する場合には、生育指標画像形成工程において、生育指標導出部37により植被率が導出される。これにより、植被率画像である撮像画像FIが形成される。植被率画像では植被率に応じてR、G、Bで色分けされる。例えば、植被率画像において、R、G、Bの順に植被率が低くなる。
【0038】
図6は不具合検出工程において、同一地点SPが撮像された複数(本実施形態では6枚)の撮像画像FIを示す図である。「A」~「F」の撮像画像FIには同一地点SPが撮像される。「A」~「F」の撮像画像FIの撮像タイミングはそれぞれ異なり、「A」~「F」の順で時系列に並んでいる。例えば圃場FDが水田の場合には、撮影工程時に水面に映った太陽が可視画像及び近赤外画像に写り込む場合がある。このため、撮像画像FI上に太陽の写り込みに起因する不具合を有した不具合領域DRが生じる場合がある。
【0039】
また、撮像工程において、例えば撮像部2を収納した筐体25の向きが移動機構の誤作動等によって正面方向(圃場FD以外の方向)に一時的に変更される場合がある。この場合、撮像画像FI上で撮像部2の向きが変更された時の領域が不具合領域DRとなる。
【0040】
また、撮像工程において、例えば風等により作物PLが倒伏した様子が可視画像及び近赤外画像に写り込む場合がある。この場合、撮像画像FI上で作物PLが倒伏した領域が不具合領域DRとなる。
【0041】
また、撮像画像FIの周辺部PhのNDVI(特性値)が中心部CPのNDVIよりも低下するシェーディング誤差が発生する場合がある。この場合、撮像画像FIの周辺部Phの領域が不具合領域DRとなる。
【0042】
また、前述のように可視撮像部20と近赤外撮像部21とは所定距離離れて配置されている。このため、可視撮像部20と近赤外撮像部21との視差に起因する可視画素と近赤外画素とのズレによる誤差が発生する場合がある。この場合、ズレ量が所定値よりも大きい領域が不具合領域DRとなる。
【0043】
上記例の不具合領域DRのNDVIは不具合のない他の領域(不具合領域DRではない領域)のNDVIよりも低い値を示す。このため、不具合領域DRのNDVIを用いて複数の地点画像PIを合成すると、合成画像CIの品質が低下する。そこで、不具合検出部36は、撮像画像FI上の不具合領域DRを検出し、合成部34は不具合検出部36により検出した不具合領域DRを除いて地点画像PIを形成する。本実施形態では、不具合検出部36は一の撮像画像FI内を区分した複数の領域のNDVIを相対比較して不具合領域DRを検出する。
【0044】
例えば、
図6に示す同一地点SPを撮像した「A」~「F」の撮像画像FIにおいて、圃場FDの水面に映った太陽が写り込んだ場合、不具合検出部36は太陽が写り込んだ領域を不具合領域DRとして検出する。この時、「C」の撮像画像FI上の同一地点SPを含む所定領域の領域画像Prは不具合領域DRと重なっている。なお、領域画像Prの大きさ(範囲)は撮像画像FIの大きさ(範囲)よりも小さい。
【0045】
次に、合成部34は、同一地点SPを含む6枚の領域画像Prについて、「C」の領域画像Prを使用せずに、残り5枚の領域画像Prを用いて同一地点SPを含む領域画像Pr内の各画素のNDVIの平均値を導出する。これにより、不具合領域DRが除去された同一地点SPの地点画像PI(
図7参照)が形成される。その他の同一地点SPの領域画像Prについても同様に不具合領域DRが除去された地点画像PIが形成される。以上により、不具合領域DRが除去された複数の地点画像PI
N(
図7参照)が形成される。なお、「N」は複数の地点画像PIのそれぞれに割り当てられたシリアル番号であり、複数の地点画像PIの総数がKである場合に1からKまでの整数である。
【0046】
なお、本実施形態において同一地点SPを含む6枚の領域画像Prについて、不具合領域DRが検出されない場合には合成部34は6枚全ての領域画像Prを用いて同一地点SPを含む領域画像Pr内の各画素のNDVIの平均値を導出する。なお、領域画像Prの画像補正により、不具合領域DRのNDVIを補正できる場合には補正後の領域画像Prを用いてもよい。
【0047】
次に、複数の地点画像PIを合成して合成画像CIを形成する画像合成工程について説明する。合成部34は、不具合領域DRが除去された複数の地点画像PINの各々における緯度XN、経度YN、高度ZN及び方位θNに基づいて、アフィン変換を行う画像変換行列を導出する。複数の地点画像PINの各々は、地点画像PINを形成する際に用いられた可視画像および近赤外画像の各々の撮像時における可視撮像部20及び近赤外撮像部21の緯度XN、経度YN、高度ZN及び方位θNを備える。合成部34は、複数の地点画像PINの各々について、地点画像PINの画素位置を地点画像PINの備える緯度XN、経度YN、高度ZN及び方位θNに基づくアフィン変換を行う。これにより、地点画像PIの画素位置を合成画像CIにおける画素位置へ変換する。
【0048】
図7は画像合成工程を説明するための図を示している。
図7の上段は複数の地点画像PI
Nを示し、
図7の下段は合成画像CIの座標系を示す。アフィン変換は、公知のように線形変換と平行移動(並進)とを組み合わせた変換であり、数式1により表される(例えば、「アフィン変換とは」、[online]、[2017年5月15日検索]、インターネット(URL:http//d.hatena.ne.jp/Zellij/20120523/p1))。
【0049】
【0050】
数式1における右辺の列ベクトル(x,y)は
図7の上段に示すように地点画像PIでの画素位置であり(N番目の地点画像PI
Nではx=x
N、y=y
N)、列ベクトル(x´,y´)は
図7の下段に示すように合成画像CIの座標系での画素位置を示す。数式1の右辺第1項における1行1列、1行2列、2行1列及び2行2列の各成分a、b、c、dから成る2行2列の行列は回転の変換行列R(θ)を表し、数式1の右辺第2項の列ベクトル(t
x,t
y)は並進(平行移動)の変換行列を表す。
【0051】
回転の変換行列R(θ)における各成分a、b、c、dは、方位測定部47の値θから、数式2によって与えられる(N番目の地点画像PI
Nではθ=θ
N)。なお、撮像工程時の撮像部2の実際の高度が基準高度(設定高度H、
図5参照)と異なる場合には、回転行列R(θ)に撮像工程時の撮像部2の実際の高度が基準高度と同等になるように撮像工程時の実際の高度に応じたスケーリング係数が乗算される。例えば、成分aはcosθにスケーリング係数を乗算した値である。
【0052】
【0053】
そして、並進(平行移動)の変換行列における各成分tx、tyは数式3及び数式4で与えられる。数式3及び数式4では、合成画像CIの座標系における原点(0,0)からの距離d[m]と、水平方向(x軸)との角度φ[rad]を緯度X及び経度Yから導出して画素数に変換する。
【0054】
【0055】
【0056】
数式3及び数式4の係数kはメートルを画素数に変換する係数である。例えば、第1イメージセンサ及び第2イメージセンサの画素数が480画素の場合には係数k=24.85[m]/480[画素]≒0.052[m/画素]となる。また、距離d[m]及び角度φ[rad]の算出方法は公知であり、数式5及び数式6によって与えられる(例えば「2地点間の距離と方位角」、[online]、[2017年5月22日検索]、インターネット(URL:http//keisan.casio.jp/exec/system/1257670779))。
【0057】
なお、数式5及び数式6のX1及びY1はそれぞれA地点の緯度及び経度であり、数式5及び数式6のX2及びY2はそれぞれB地点の緯度及び経度である。数式5のrは地球を球体とみなした際の赤道半径(=6378.137km)である。ここでは、A地点またはB地点が合成画像CIの座標系における原点(0,0)となる。
【0058】
【0059】
【0060】
また、数式1の回転行列と並進(平行移動)の変換行列とを単一の行列M(3行3列の行列)にまとめて数式7のように表現することができる。
【0061】
【0062】
なお、変換後の位置(x´,y´)における画素のNDVIを実際に求める際には、まず行列Mの逆行列であるM-1を導出し、変換後の(x´,y´)の対応位置(x、y)を数式8により導出する。
【0063】
【0064】
そして、数式8により得られる変換前の位置(x,y)における画素のNDVIまたは当該位置近傍に存在する複数の画素のNDVIによって補間(線形補間等)されるNDVIを変換後の位置(x´,y´)における画素のNDVIとして決定する。
【0065】
以上の合成画像CIの形成工程により、一の圃場FDの全体画像を得ることができる。なお、他の圃場FDについても同様に全体画像を得ることができる。
【0066】
次に、NDVI(栽培情報)及び植被率(栽培情報)が標準範囲NR内か否かを圃場FD(栽培領域)別に表示部31に表示する表示工程について説明する。
図8は表示工程を示す図である。
図9は表示工程の完了時に表示部31に表示されるデータ表示画面DSの一例を示す図である。表示工程は、読込工程、近似曲線導出工程、標準範囲決定工程、散布図形成工程及びマップ形成工程を有する。
【0067】
読込工程では比較部38は記憶部33から複数の圃場FD(本実施形態では、#1~#12の圃場FD)の合成画像CIの全画素に対応するNDVI及び植被率を読み込む。なお、#1~#12の圃場FDでは同一品種の作物PL(例えば、こしひかり米)を栽培しており、栽培方法は同じになっている。近似曲線導出工程では、比較部38は各圃場FDについてNDVI及び植被率の平均値をそれぞれ導出する。そして、複数の圃場FDに関して、各圃場FDのNDVIの平均値及び植被率の平均値に基づいて例えば最小二乗法を用いて近似曲線AC(近似直線を含む)を導出する。すなわち、比較部38は2個のパラメータ(NDVI、植被率)の関係を近似する近似曲線ACを導出する。なお、本実施形態では、2個のパラメータ(NDVI、植被率)の関係を近似する近似曲線ACは近似直線となっている。
【0068】
標準範囲決定工程では比較部38は近似曲線ACから所定の偏位量の範囲を標準範囲NR(
図9において破線で囲まれた領域)として決定する。偏位量は例えば近似曲線ACからの距離になる。すなわち、標準範囲NRはNDVI(パラメータ)と植被率(パラメータ)との相関に基づいている。なお、パラメータの種類によっては近似曲線ACは一次関数ではなく二次関数等で表現される場合がある。この場合には、当該パラメータの二乗値を「パラメータ」とする。
【0069】
散布図形成工程では、表示部31はNDVI及び植被率を座標軸とする散布
図100を形成する。散布
図100はNDVI及び植被率をそれぞれ横軸及び縦軸とする二次元直交座標で表されている。この時、表示部31はNDVI及び植被率が標準範囲NR内の#2、#4の圃場FDを三角印(マーキング)により表示し、NDVI及び植被率が標準範囲NR内の#3、#10の圃場FDを四角印(マーキング)により表示し、NDVI及び植被率が標準範囲NR内の#5、#6、#9の圃場FDを丸印(マーキング)により表示している。すなわち、表示部31は標準範囲NR内でNDVI及び植被率が低い圃場FD、中程度の圃場FD及び高い圃場FDをそれぞれ三角印、四角印及び丸印により表示する。これにより、使用者は標準範囲NR内の圃場FDでの作物PLの生育の速さの違いを容易に認識することができる。なお、散布
図100において標準範囲NR内の圃場FDのNDVI及び植被率は肥料量等の増減により近似曲線ACに沿って移動する可能性が高くなっており、標準範囲NR内の圃場FDでは異常箇所(例えば土壌流失や水門の故障等)のある可能性は低くなっている。
【0070】
なお、表示部31は標準範囲NR内の圃場FDをすべて同じ印により表示してもよい。
【0071】
また、表示部31はNDVI及び植被率が標準範囲NR外の#1、#7、#8の圃場FDを菱形印(マーキング)により表示し、NDVI及び植被率が標準範囲NR外の#11、#12の圃場FDを星形印(マーキング)により表示する。すなわち、表示部31はNDVI及び植被率が標準範囲NR内の圃場FDと標準範囲NR外の圃場FDとを異なるマーキングにより表示する。
【0072】
マップ形成工程では、表示部31は、記憶部33に記憶されている#1~#12の圃場FDの合成画像CI(NDVI画像及び植被率画像)に基づいて、NDVI及び植被率で表した#1~#12の圃場FDのマップ200、210(
図9参照)をそれぞれ形成する。マップ200において等高線A1、A2、A3の順にNDVIが高くなり、マップ210において等高線B1、B2、B3の順に植被率が高くなっている。なお、マップ200、210はアフィン変換等を用いて形成される。散布
図100及びマップ200、210のデータは記憶部33に記憶される。
【0073】
また、表示部31は、マップ200、210において、NDVI及び植被率が標準範囲NR外の圃場FD上にマーキングを表示する。本実施形態では散布
図100と同様にマップ200、210の#1、#7、#8の圃場FD上に菱形印を表示し、マップ200、210の#11、#12の圃場FD上に星形印を表示している。
【0074】
散布
図100及びマップ200、210により使用者は#1、#7、#8、#11、#12の圃場FDのNDVI及び植被率が標準範囲NRから逸脱していることを容易に認識することができる。すなわち、#1、#7、#8、#11、#12の圃場FDでは作物の生育状態が#1~#12の圃場FDで予測される作物PLの生育状態から外れており、使用者は圃場FDの状況が悪い(圃場FDに異常箇所等がある)ことを容易に認識することができる。そして、使用者は#1、#7、#8、#11、#12の圃場FDについて対策を講じることができる。対策としては例えば肥料の散布時期の変更、圃場FDの土壌の確認、圃場FDに水を供給する用水路や水門の点検等である。
【0075】
また、表示部31は、標準範囲NR外の圃場FDについて、
図9において近似曲線ACよりも上側の#1、#7、#8の圃場FDと、近似曲線ACよりも下側の#11、#12の圃場FDとを異なるマーキングにより表示している。これにより、#1、#7、#8の圃場FDに対して講ずべき対策と、#11、#12の圃場FDに対して講ずべき対策とが異なることを使用者は容易に認識することができる。
【0076】
具体的には、#11、#12の圃場FDではNDVIの高さに対して植被率が低く、使用者は例えば苗の植え付け後の気温低下等で根づきが悪いと予想でき、標準範囲NR内の圃場FDの肥料量(標準量)と同じ量の肥料を標準範囲NR内の圃場FDよりも遅い時期に散布するという対策を講ずることができる。一方、#1、#7、#8の圃場FDでは植被率の高さに対してNDVIが低く、使用者は例えば茎数は多いが葉の葉緑素濃度が低いと予想でき、標準範囲NR内の圃場FDの肥料量(標準量)と同じ量の肥料を標準範囲NR内の圃場FDよりも早い時期に散布するという対策を講ずることができる。なお、「肥料量」とは1m2当たりの肥料量を示す。
【0077】
また、本実施形態では、散布
図100及びマップ200、210が表示部31に同時に一覧表示される。これにより、使用者は各圃場FDの状況及び異常箇所を有する圃場FDの位置を容易に把握することができる。
【0078】
なお、本実施形態ではパラメータとしてNDVI及び植被率を用いているが、一のパラメータがNDVIまたは植被率の生育指標から成り、他のパラメータが月または年等の時間から成ってもよい。
【0079】
また、本実施形態では散布
図100は二次元直交座標により表現されているが、これに替えて、圃場FD単位、農家単位、地域単位のNDVI等の生育指標の平均値を用いた1次元座標により表わされてもよい。
【0080】
また、撮像部2を遠赤外カメラ等により構成し、圃場FDの熱画像を撮像してもよい。熱画像の温度値(生育指標、パラメータ)が高いほど作物PLの葉の蒸散が大きいことを表し、熱画像の温度値と作物PLの病気や根の張り具合(栄養素の吸収率)との間には正の相関関係が成立する。
【0081】
また、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)技術を用いた3次元計測器(例えばスキャン型レーザー距離計)を使用し、作物PLの草丈(高さ情報)を生育指標、パラメータとしてもよい。
【0082】
本実施形態によると、作物PLを栽培する複数の圃場FD(栽培領域)別に作物PLに関するNDVI(栽培情報、パラメータ)及び植被率(栽培情報、パラメータ)を出力する撮像部2(栽培情報出力部)及び生育指標導出部37(栽培情報出力部)と、NDVIと植被率との相関に基づく標準範囲NRとNDVI及び植被率とを圃場FD毎に比較する比較部38と、比較部38の比較結果に基づいてNDVI及び植被率が標準範囲NR内か否かを圃場FD別に表示する表示部31と、を備えている。これにより、使用者はNDVI及び植被率が標準範囲NRから逸脱している圃場FDを容易に認識することができる。したがって、使用者は各圃場FDの状況の可否を容易に判断することができ、状況の悪い(異常箇所等を有する)圃場FDについて対策を講じることができる。その結果、作物栽培支援装置1の使用性を向上させることができる。
【0083】
なお、本実施形態において、表示部31は圃場FD別に表示しているが、農家別や地域別に表示してもよい。
【0084】
また、栽培情報出力部が、圃場FDで反射する太陽光に含まれる所定波長の光を検知する第1、第2イメージセンサ(光学センサ)と、第1、第2イメージセンサの検知結果に基づいて圃場FD内の作物PLの生育状態を示すNDVI(生育指標)及び植被率(生育指標)を導出する生育指標導出部37とを有し、作物に関する栽培情報がNDVI及び植被率から成る。これにより、生育指標を用いることで使用者は圃場FDの状況をより正確に把握することができる。
【0085】
また、表示部31はNDVI(パラメータ)及び植被率(パラメータ)を座標軸とする散布
図100を形成する。表示部31はNDVI及び植被率が標準範囲NR内の圃場FDと標準範囲NR外の圃場FDとを異なるマーキングにより表示する。これにより、使用者は状況の悪い圃場FDをより容易に認識することができる。
【0086】
なお、表示部31はNDVI及び植被率が標準範囲NR内の圃場FDと標準範囲NR外の圃場FDとを異なる色のマーキングにより表示してもよい。例えば、標準範囲NR内の圃場FDを黒色のマーキングにより表示し、標準範囲NR外の圃場FDを赤色のマーキングにより表示してもよい。
【0087】
また、表示部31は複数の圃場FDのマップ200、210を形成する。表示部31はNDVI及び植被率が標準範囲NR外の圃場FD上にマーキングを表示する。これにより、使用者は状況の悪い圃場FDの位置を容易に把握することができる。また、状況の悪い圃場FDの異常箇所等がその圃場FDの位置に起因するか否かを使用者は予測することができる。
【0088】
また、比較部38がNDVI(パラメータ)と植被率(パラメータ)との関係を近似する近似曲線ACを導出し、近似曲線ACから所定の偏位量の範囲を標準範囲NRとする。これにより、標準範囲NRを容易に決定することができる。
【0089】
また、NDVI(パラメータ)及び植被率(パラメータ)は作物PLに関する栽培情報から成る。これにより、作物PLに関するパラメータの相関に基づく標準範囲NRを決定することができ、使用者は圃場FDの状況の可否をより正確に判断することができる。
【0090】
なお、一のパラメータが栽培情報から成り、他のパラメータが月または年等の時間から成ってもよい。これにより、使用者は時系列で圃場FDの状況の可否をより正確に判断することができる。
【0091】
また、作物PLを栽培する圃場FD(栽培領域)の上空を移動して圃場FDを撮像する可視撮像部20(撮像部)及び近赤外撮像部21(撮像部)と、可視撮像部20及び近赤外撮像部21の位置を検出する位置検出部48と、圃場FDの同一地点SPの地点画像PIを可視撮像部20及び近赤外撮像部21で撮像した複数の撮像画像FIに基づいて形成するとともに複数の地点画像PIを合成する合成部34とを備える。また、撮像画像FI上の不具合を有した不具合領域DRを検出する不具合検出部36を設け、合成部34が不具合検出部36により検出した不具合領域DRを除いて地点画像PIを形成する。
【0092】
これにより、不具合領域DRが除かれた地点画像PIを形成し、複数の地点画像PIを合成する。したがって、圃場FD全体の合成画像の品質が向上し、作物PLの生育状態の判断に有用な画像を提供することができる。
【0093】
また、不具合検出部36が一の撮像画像FI内を区分した複数の領域のNDVI(特性値)を相対比較して不具合領域DRを検出する。これにより、不具合検出部36は不具合領域DRを容易に検出することができる。
【0094】
なお、不具合検出部36が複数の撮像画像FIの同一地点SPに対する複数の領域のNDVI(特性値)を相対比較して不具合領域DRを検出してもよい。この場合でも、不具合検出部36は不具合領域DRを容易に検出することができる。
【0095】
また、不具合検出部36が一の撮像画像FI内を区分した複数の領域の特性値と所定の閾値とを比較して不具合領域DRを検出してもよい。この場合でも、不具合検出部36は不具合領域DRを容易に検出することができる。
【0096】
また、不具合検出部36が各撮像画像FIの周部Phを不具合領域DRと判定してもよい。これにより、撮像画像FIの周辺部PhのNDVIが中心部CPのNDVIよりも低下するシェーディング誤差による合成画像CIの品質低下を容易に防止することができる。
【0097】
また、可視画像を撮像する可視撮像部20と、近赤外画像を撮像する近赤外撮像部21とを有し、不具合検出部36は、可視画像の画素と近赤外画像の画素とのずれ量が所定量よりも大きい領域を不具合領域DRと判定してもよい。これにより、可視撮像部20と近赤外撮像部21との視差による可視画素と近赤外画素とのズレによる誤差に起因する合成画像CIの品質低下を容易に防止することができる。
【0098】
また、制御部39は可視撮像部20及び近赤外撮像部21の位置、画角及び画素数に基づいて地点画像PIの位置を導出する。これにより、地点画像PIの位置を容易に導出することができる。
【0099】
なお、情報端末3がインターネット等の所定のネットワークに接続され、撮像画像FI、地点画像PI及び合成画像CIを記憶する記憶部がネットワーク上に設けられてもよい。これにより、記憶部33の容量を小さくすることができる。
【0100】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は第2実施形態の作物栽培支援装置1の表示工程を示す図である。
図11は第2実施形態の表示部31のデータ表示画面DSの一例を示す図である。説明の便宜上、
図1~
図9に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態では、表示部31に表示される散布
図100の座標軸が第1実施形態とは異なっている。また、第1実施形態では表示部31にマップ200、210の両方を表示したが、本実施形態ではこのうちマップ200のみを表示している。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0101】
本実施形態の表示工程は、栽培情報入力工程、近似曲線読出工程、標準範囲決定工程、散布図形成工程及びマップ形成工程を有する。栽培情報入力工程では操作部32を介して#1~#12の圃場FDの収量差(栽培情報、パラメータ)及び施肥量差(栽培情報、パラメータ)が入力される。すなわち、操作部32は収量差及び施肥量差の入力操作を受け付けて出力する。これにより、栽培情報出力部は操作部32を有する。収量差は比較する直近2年間の作物PLの収量の差(単位:kg/圃場)を示し、施肥量差は比較する直近2年間の施肥量(散布した肥料の量)の差(単位:kg/m2)を示している。
【0102】
本実施形態において、収量差と施肥量差との相関関係は公知であり、収量差と施肥量差との関係を近似する近似曲線ACは記憶部33に予め記憶されている。近似曲線読出工程では、比較部38が記憶部33から収量差と施肥量差との関係を近似する近似曲線ACを読み出す。標準範囲決定工程では、第1実施形態と同様に、比較部38は該近似曲線ACから所定の偏位量の範囲を標準範囲NRと決定する。
【0103】
散布図形成工程では、表示部31は収量差及び施肥量差を座標軸とする散布
図100を形成する。散布
図100は施肥量差及び収量差をそれぞれ横軸及び縦軸とする二次元直交座標により表される。この時、表示部31は収量差及び施肥量差が標準範囲NR内の#2~#6、#9、#10の圃場FDを白丸印(マーキング)により表示する。また、表示部31は標準範囲NR外の#1、#7、#8、#11、#12の圃場FDを黒丸印(マーキング)により表示する。すなわち、表示部31は収量差及び施肥量差が標準範囲NR内の圃場FDと標準範囲NR外の圃場FDとを異なるマーキングにより表示する。
【0104】
マップ形成工程では、表示部31は現状のマップ200を作成する。そして、第1実施形態と同様に、表示部31はNDVIが標準範囲NR外の#1、#7、#8、#11、#12の圃場FD上に黒丸印を表示する。
【0105】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、栽培情報出力部が、収量差(栽培情報)及び施肥量差(栽培情報)の入力操作を受け付けて出力する操作部32を有する。これにより、使用者は所望の栽培情報を入力し、表示部31は栽培情報が標準範囲NR内か否かを圃場FD別に表示することができる。
【0106】
また、収量差(パラメータ)と施肥量差(パラメータ)との関係を近似する近似曲線ACが予め記憶部33に記憶され、比較部38が近似曲線ACから所定の偏位量の範囲を標準範囲NRとする。これにより、複数のパラメータの公知の相関関係を利用し、第1実施形態の近似曲線導出工程を省くことができる。
【0107】
なお、第2実施形態において、表示部31はマップ200、210の両方を表示してもよく、マップ200に替えてマップ210を表示してもよい。
【0108】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、表示部31は散布
図100、マップ200を同時に一覧表示しているが、散布
図100のみを表示してもよくマップ200のみを表示してもよい。表示部31が散布
図100及びマップ200を同時に一覧表示すると、使用者は圃場FDの状況及び異常箇所を有する圃場FDの位置を容易に把握できるためより望ましい。
【0109】
<その他>
以上で説明した各実施形態の作物栽培支援装置は、以下のように表現されてもよい。
【0110】
すなわち、以上で説明した作物栽培支援装置は、作物を栽培する複数の栽培領域別に作物に関する所定の栽培情報を出力する栽培情報出力部と、前記栽培情報を含む複数のパラメータの相関に基づく所定の標準範囲と前記栽培情報とを前記栽培領域毎に比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づいて前記栽培情報が前記標準範囲内か否かを前記栽培領域別に表示する表示部と、を備える。
【0111】
上記構成の作物栽培支援装置において、前記栽培情報出力部が、前記栽培領域で反射する太陽光に含まれる所定波長の光を検知する光学センサと、前記光学センサの検知結果に基づいて前記栽培領域内の作物の生育状態を示す生育指標を導出する生育指標導出部とを有し、前記栽培情報が前記生育指標から成ることが好ましい。
【0112】
上記構成の作物栽培支援装置において、前記栽培情報出力部が、前記栽培情報の入力操作を受け付けて出力する操作部を有することが好ましい。
【0113】
上記構成の作物栽培支援装置において、前記表示部は複数の前記パラメータを座標軸とする散布図を形成し、前記栽培情報が前記標準範囲内の前記栽培領域と前記標準範囲外の前記栽培領域とを異なるマーキングにより表示することが好ましい。
【0114】
上記構成の作物栽培支援装置において、前記表示部は複数の前記栽培領域のマップを形成し、前記栽培情報が前記標準範囲外の前記栽培領域上に所定のマーキングを表示することが好ましい。
【0115】
上記構成の作物栽培支援装置において、前記比較部が複数の前記パラメータの関係を近似する近似曲線を導出し、前記近似曲線から所定の偏位量の範囲を前記標準範囲とすることが好ましい。
【0116】
上記構成の作物栽培支援装置において、複数の前記パラメータの関係を近似する近似曲線が予め記憶され、前記比較部が前記近似曲線から所定の偏位量の範囲を前記標準範囲とすることが好ましい。
【0117】
上記構成の作物栽培支援装置において、複数の前記パラメータがそれぞれ前記栽培情報から成ることが好ましい。
【0118】
上記構成の作物栽培支援装置において、一の前記パラメータが前記栽培情報から成り、他の前記パラメータが時間から成ることが好ましい。
【0119】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、作物の栽培を支援する作物栽培支援装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 作物栽培支援装置
2 撮像部
3 情報端末
4 飛行体
20 可視撮像部
21 近赤外撮像部
31 表示部
32 操作部
33 記憶部
34 合成部
35 接続部
36 不具合検出部
37 生育指標導出部
38 比較部
43 記憶部
45 接続部
48 位置検出部
100 散布図
200、210 マップ
DR 不具合領域
FD 圃場
FI 撮像画像
PI 地点画像
PL 作物
SP 同一地点