(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】液体中の混入物分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 17/038 20060101AFI20220128BHJP
B01D 17/025 20060101ALI20220128BHJP
B01D 21/26 20060101ALI20220128BHJP
B01D 21/00 20060101ALI20220128BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20220128BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B01D17/038
B01D17/025
B01D21/26
B01D21/00 Z
B03B5/28 A
B03B5/28 Z
B65D90/00 H
(21)【出願番号】P 2018160740
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517271935
【氏名又は名称】前田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 和幸
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-094431(JP,A)
【文献】特開2014-018742(JP,A)
【文献】特開2004-016843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
B01D 17/00-17/12
B01D 45/00-45/18
B03B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に混入した、原液体と密度差のある油などの液体や金属・鉱物・汚泥などの固体を、原液体と分離するための、混入物を含む液体が貯蔵される液体貯蔵タンク(1)と、この液体貯蔵タンク(1)に接続された循環ポンプ(2)に至る配管(6a)と、この配管(6a)の末端に設置された循環ポンプ(2)と、循環ポンプ(2)の吐出側に接続され分離容器(4)に至る配管(6b)と、この配管(6b)の途中から分岐して循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6c)と、この配管(6c)の途中に設置された分離容器入口圧力調整弁(3)と、配管(6b)の末端に設置された分離容器(4)と、分離容器(4)から循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6d)と、この配管(6d)の途中に設置された分離容器出口圧力調整弁(5)から構成される装置において、分離容器(4)は、流入口、最上部及び最下部に設置された流出口、循環用分岐口及び内部に曲面を有し、分離容器(4)において混入物を含む液体を容器内に流入させる際に、流入口で流路を絞り速度を増加させて、容器内に噴射することができるように、分離容器入口圧力調整弁(3)を用いて配管(6b)の圧力を高圧に保つとともに、分離容器(4)の循環用分岐口から循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6d)の圧力を、分離容器出口圧力調整弁(5)により設定された圧力に保つという構造と機能を有する、液体中の混入物分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に混入した汚泥や油等の原液体と密度差のある液体や金属・鉱物・粉塵等の固体を源液体と分離・除去する装置に係わり、遠心力、慣性力、重力などの物理的手法のみを用いて源液体中に含まれる混入物を分離・除去できるとともに、構造が簡単で保守・整備が容易という特性を持つ装置の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上においては液体(気体及び液体)中に様々な混入物が混在している状態が多く存在する。しかし、科学技術分野においては、大気中の粉塵除去、汚水中の汚泥除去、油分に含まれる水分の除去など、源液体に含まれる混入物を除去して、出来るだけ原液体の純度を高める技術が求められている。そこで、近年では、遠心力を利用した遠心分離機による分離方法、慣性力を利用した分離方法、沈殿作用を利用した分離方法及びこれらの組み合わせによる方法が使用されている。
【0003】
これらの方法のうち、例えば、特許文献1、2に記載されている方法では分離を促進させるために薬剤を用いるため、複雑かつ高コストな工程(薬剤投入量の制御を含む複雑な装置と消費薬剤のコスト)を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-248404
【文献】特開2017-205713
【0005】
これに対し、例えば特許文献3、4に記載されているように、薬剤を用いずに遠心力、慣性力、重力、圧力差などの物理的手法のみを用いて混入物を分離・除去できるとの報告もあるが、
源液体中に含まれる混入物を効果的に分離・除去する装置を実用化するためには、構造が簡単(加工が容易でかつ耐久性に優れている)で、保守・整備が容易(メインテナンスフリーに近い)という特性を必要とする。
【0006】
【文献】特開平07-000957
【文献】特開2006-258413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、遠心力、慣性力、重力、圧力差などの物理的手法のみを用いて源液体中に含まれる混入物を分離・除去できる装置に、構造が簡単で保守・整備が容易という特性をもたせると、分離能力が低下するとともに、装置が大型化する可能性がある。
【0008】
そこで本発明は、液体中に含まれる混入物が、装置に流入する際に、液体に速度を与えることにより、流れが曲面に沿って流れていく間に遠心力、慣性力という物理的作用が効果的に作用して分離しやすい構造とするとともに、分離した混入物が重力という物理的作用により混入物溜りに集積されるような構造とした。さらに、これらの作用を繰り返すことによって効果的な分離・除去を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、混入物を含む液体が貯蔵される液体貯蔵タンク(1)と、この液体貯蔵タンク(1)に接続された循環ポンプ(2)に至る配管(6a)と、この配管(6a)の末端に設置された循環ポンプ(2)と、循環ポンプ(2)の吐出側に接続され分離容器(4)に至る配管(6b)と、この配管(6b)の途中から分岐して循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6c)と、この配管(6c)の途中に設置された分離容器入口圧力調整弁(3)と、配管(6b)の末端に設置された分離容器(4)と、分離容器(4)から循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6d)と、この配管(6d)の途中に設置された分離容器出口圧力調整弁(5)から構成されることを特徴とする液体中の混入物分離装置で、
液体貯蔵タンクを出た混入物を含む液体は、循環ポンプを経て分離容器に入り、分離容器から配管(6d)を経て再び循環ポンプの吸入側に至るという循環を繰り返すことにより、効果的に、繰り返し遠心力、慣性力、重力の作用を受けるという構造と機能を持つとともに、
循環ポンプ出口から分離容器に至る配管(6b)及び分離容器内に流入する液体の圧力を、分離容器圧力調整弁により高圧に保つことにより、分離容器内に流入する混入物を含む液体が分離容器内を移動する際に高速を与えることができるという構造と機能を持ち、さらに、分離容器出口から循環ポンプの吸入側に至る配管(6d)の圧力を、分離容器出口圧力調整弁により設定された圧力に保つことにより、分離容器から流出する混入物を除去された液体が自然流出するとともに、混入物溜りに集積した液体が自然流出するという構造と機能を持っている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、分離容器内において液体中に混入した油等の原液体と密度差のある液体や金属・鉱物・汚泥等の固体を源液体と分離・除去するために、分離容器は中空で流入口と流出口及び循環用分岐口を持った容器と、それに連結される管及び循環ポンプから構成され、まず、流入口から流入した原液中に含まれる混入物の大部分は、容器内で遠心力、慣性力、重力の作用により原液体から分離されて混入物集合部に集められ、下部流出口から分離容器の外に流出する。次に、この一連の動作では分離されなかった混入物は、循環ポンプにより吸入されて循環用分岐口から流出して循環ポンプを経て、流入口に至る管と合流して再び容器内に入り、容器内で遠心力、慣性力、重力の作用により原液体から分離されて混入物集合部に集められるという動作を繰り返す。さらに、これらの循環経路を循環する液体や固体よりも密度・質量が小さな混入物は原液体とともに容器内を上昇して上部流出口から分離容器の外に流出する。この一連の動作を繰り返すことにより、液体中に含まれる混入物を効率よく分離・除去することができるという構造と機能を持っている。
【0011】
液体中に含まれる混入物が分離容器に流入する際に、流路を狭くして速度を増加させることにより、流れが分離容器の曲面に沿って常に方向を変化させながら流れていく間に遠心力、慣性力という物理的作用が効果的に作用して分離しやすくするとともに、分離した混入物が重力という物理的作用が働きやすくするための構造と機能を持っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、液体中に混入している源液体と密度差のある液体や固体を、遠心力、慣性力、重力などの物理的な作用のみを用いて効果的に分離・除去できるとともに、構造が簡単(加工が容易でかつ耐久性に優れている)で、保守・整備が容易(メインテナンスフリーに近い)な液体中の混入物除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る液体に含まれる
混入物の分離・除去装置の工程の一例を示したフローチャートである。
【
図2】本発明の実施の形態に係る液体に含まれる
混入物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る液体に含まれる
混入物の分離・除去装置の主要部である分離容器の一例を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液体に含まれる
混入物の分離・除去装置の工程の一例を示したフローチャートである。
タンク内に貯蔵された
混入物を含む液体は、ポンプにより吸引されるとともに加圧されて分離容器に流入する。
ポンプによって加圧された
液体の圧力は圧力調整弁により高圧を保持され、分離容器入口部において流路が絞られることにより高速で容器内に流入する。
容器内に高速で流入した
液体は、曲面を移動しながら遠心力、慣性力を受けることにより密度差のある混入物が効果的に分離される。
また、容器内の空間を移動する際に重力の作用により、密度差のある
混入物は容器の下部に滞留する。
分離容器内の圧力は、圧力調整弁により大気圧以上に設定されているため、
液体から分離され容器の下部に滞留した比較的密度の大きな
混入物は、自然流出できる。
また、液体から分離された比較的密度の小さな
混入物は、容器の上部に移動し、自然流出できる。
容器内の中間位置から循環ポンプに吸引された液体は、再び高速で分離容器に流入し、遠心力、慣性力、重力の作用による分離作用を受ける。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係る
液体に含まれる
混入物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図である。液体の
混入物除去装置は、
混入物を含む
液体が貯蔵される液体貯蔵タンク(1)と、この液体貯蔵タンク(1)に接続された循環ポンプ(2)に至る配管(6a)と、この配管(6a)の末端に設置された循環ポンプ(2)と、循環ポンプ(2)の吐出側に接続され分離容器(4)に至る配管(6b)と、この配管(6b)の途中から分岐して循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6c)と、この配管(6c)の途中に設置された分離容器入口圧力調整弁(3)と、配管(6b)の末端に設置された分離容器(4)と、分離容器(4)から循環ポンプ(2)の吸入側に至る配管(6d)と、この配管(6d)の途中に設置された分離容器出口圧力調整弁(5)から構成されている。
【0016】
図3は、本発明の実施の形態に係る
液体に含まれる
混入物の分離・除去装置の主要部である分離容器の一例を示した概念図である。循環ポンプと圧力調整弁により高圧となった
液体は、分離容器入口部分で流路を絞られて速度を増した状態で分離容器に流入する(分離容器内に噴射される)。
【0017】
分離容器に流入した液体は容器内の曲面に添って移動し、その際に遠心力、慣性力を受けることにより比較的密度が大きな液体(混入物)は内壁に沿って移動し、容器下部に設けられた混入物溜まりに滞留する。
【0018】
分離容器内に流入した比較的密度の小さい液体(混入物)は、比較的密度の大きな液体(混入物)よりも内壁から遠い位置(中心に近い位置)に移動することにより、容器内の曲面に添って液体(混入物)の密度差による層を生成する。
【0019】
その結果、比較的密度差の大きな液体(混入物)は分離容器の下部に滞留し続けることになるが、最下部に設置された流出口2を開放することにより、容器外へ流出する。
【0020】
比較的密度差の小さな液体(混入物)は分離容器の上部に滞留するが、循環ポンプにより吸入されることにより容器外へ流出する。
【0021】
さらに密度差の小さな液体(混入物)は、分離容器の最上部に設置された流出口から容器外へ流出する。
【0022】
これらの作用を繰り返し行うことにより、密度の異なる混入物を含む液体は、容器内において密度差により分離されるとともに、分離容器の異なる位置に設置された流出口から容器外へ流出する(液体への混入物が分離される)
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、液体中に含まれる混入物を効果的に分離・除去する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
(1)液体貯蔵タンク
(2)循環ポンプ
(3)分離容器入口圧力調整弁
(4)分離容器
(5)分離容器内圧力調整弁
(6a)液体貯蔵タンクから循環ポンプに至る配管
(6b)循環ポンプから分離容器に至る配管
(6c)配管(6b)と配管(6a)を接続する配管
(6d)配管(6d)と配管(6a)を接続する配管