(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、治療システム、および医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220107BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 M
A61B6/00 370
(21)【出願番号】P 2018053470
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 智也
(72)【発明者】
【氏名】田口 安則
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196410(JP,A)
【文献】特開2017-131623(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086154(WO,A1)
【文献】特開2016-165442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の一部の領域を関心領域として取得する関心領域取得部と、
前記患者に対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する治療計画取得部と、
前記患者に照射する放射線が前記患者の体内の治療する対象の部位に到達するまでの飛程までの間で前記関心領域に対して及ぼす影響を表す影響度を計算する影響度計算部と、
現在の前記患者の透視画像に、前記影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる表示制御部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記影響度計算部は、
照射する前記放射線の通過経路と前記関心領域との重なり度合いに基づいて前記影響度を計算する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記影響度計算部は、
照射する前記放射線の通過経路が前記関心領域に重なる体積と、前記関心領域の体積との比に基づいて前記影響度を計算する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記影響度計算部は、
照射する前記放射線の通過経路と、前記関心領域との間の最短距離に基づいて前記影響度を計算する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記関心領域取得部は、
前記計画段階で撮影した計画画像に写された前記患者の領域と前記透視画像に写された前記患者の領域とのずれが予め定めた閾値よりも大きい箇所を前記関心領域として取得する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記関心領域取得部は、
前記領域のずれが前記閾値よりも大きい箇所のうち、前記放射線の照射経路の範囲内の箇所を前記関心領域として取得する、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記関心領域取得部は、
前記放射線の前記照射経路の範囲の周囲にもたせた予め定めた範囲を含んだ箇所を前記関心領域として取得する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、
前記透視画像の画素のうち、前記放射線の照射経路の範囲内の前記関心領域に対応する画素を、前記影響度の情報に応じて強調させた前記表示画像を生成する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、
強調させる前記画素の色を変えた前記表示画像を生成する、
請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、
前記計画段階で撮影した計画画像から仮想的に再構成した前記透視画像と同じ範囲の再構成画像を、前記透視画像に合成した後に、強調させる前記画素を前記影響度の情報に応じて強調させた前記表示画像を生成する、
請求項9に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、
前記透視画像の画素のうち、前記放射線の前記照射経路の範囲の周囲にもたせた予め定めた範囲内の画素を、強調させる前記画素と異なる方法で強調させた前記表示画像を生成する、
請求項9または請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記患者を撮影した3次元画像を取得する3次元画像取得部と、
3次元空間内に平面を設定し、設定した前記平面を前記3次元画像から切り出した断面像を取得する断面取得部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、
前記断面像の表示画像をさらに生成して表示させる、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記断面取得部は、
前記放射線の通過経路と平行なプライマリーベクトルと、前記プライマリーベクトルに垂直な他のベクトルとによって平面を設定する、
請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記他のベクトルは、
前記患者に前記放射線を照射する環境において予め定義した3次元の座標系におけるいずれかの軸方向ベクトルである、
請求項13に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記表示制御部は、
前記プライマリーベクトルの方向を表す情報を重畳した前記断面像の表示画像を生成する、
請求項13または請求項14に記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
治療する対象の部位に前記放射線を照射する照射部と、前記透視画像を撮影する撮像装置とを具備した治療装置と、
前記表示画像を表示する表示装置と、
を備える治療システム。
【請求項17】
コンピュータを、
患者の体内の一部の領域を関心領域として取得する関心領域取得部と、
前記患者に対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する治療計画取得部と、
前記患者に照射する放射線が前記患者の体内の治療する対象の部位に到達するまでの飛程までの間で前記関心領域に対して及ぼす影響を表す影響度を計算する影響度計算部と、
現在の前記患者の透視画像に、前記影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる表示制御部と、
を備える医用画像処理装置として機能させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、治療システム、および医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、放射線を患者の体内にある病巣に対して照射することによって、その病巣を破壊する治療方法である。このとき、放射線は、病巣の位置に正確に照射される必要がある。これは、患者の体内の正常な組織に放射線を照射してしまうと、その正常な組織にまで影響を与える場合があるからである。そのため、放射線治療を行う際には、まず、治療計画の段階において、予めコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)が行われ、患者の体内にある病巣の位置が3次元的に把握される。そして、把握した病巣の位置に基づいて、正常な組織への照射を少なくするように、放射線を照射する方向や照射する放射線の強度が計画される。その後、治療の段階において、患者の位置を治療計画の段階の患者の位置に合わせて、治療計画の段階で計画した照射方向や照射強度に従って放射線が病巣に照射される。
【0003】
治療段階における患者の位置合わせでは、治療を開始する直前に患者を寝台に寝かせた状態で撮影した患者の体内の透視画像と、治療計画のときに撮影した3次元のCT画像から仮想的に透視画像を再構成したデジタル再構成X線写真(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)画像との画像照合が行われ、それぞれの画像の間での患者の位置のずれが求められる。そして、求めた患者の位置のずれに基づいて寝台が移動させられる。これにより、患者の体内の病巣や骨などの位置が、治療計画のときと合わせられる。
【0004】
患者の位置のずれは、透視画像と最も類似するDRR画像が再構成されるように、CT画像中の位置を探索することによって求められる。患者の位置の探索をコンピュータによって自動化する方法は多数提案されている。しかし、最終的には、自動で探索した結果を利用者(医師など)が透視画像とDRR画像とを見比べることによって確認する。そして、利用者(医師など)による確認が取れ次第、放射線の照射を行う。放射線治療では、このような患者位置決めの作業が、治療を開始する前段階において毎回行われる。
【0005】
なお、患者位置決めの作業を含めて、放射線治療を行っている間は、患者の体位に変化があってはならない。このため、患者は、放射線治療を行っている間、身動きすることができないように、固定具などで固定される。ところで、患者位置決めの作業は、利用者(医師など)の技量によって所要時間に大きな差がでる作業である。しかしながら、治療計画の段階と治療段階とで患者の状態に変化があることなどから、患者位置決めの作業は容易な作業ではない。患者位置決めの作業に要する時間が長くなると、患者の負担の増加や行った患者位置決めの精度の劣化などが懸念される。
【0006】
このため、患者位置決めの作業を容易にするための技術として、例えば、特許文献1に開示されているような技術が提案されている。特許文献1に開示されている技術では、治療計画の段階で撮影したCT画像に写された患者と、治療段階において撮影した透視画像に写された患者とのずれ量を示すことによって、現在の患者の位置を利用者(医師など)が容易に確認することができるようにしている。より具体的には、特許文献1に開示されている技術では、治療計画の段階で撮影したCT画像に含まれるそれぞれの画素の輝度勾配と、治療段階において撮影した透視画像に含まれるそれぞれの画素の輝度勾配とをそれぞれ算出する。これにより、特許文献1に開示されている技術では、それぞれの画像に写された被写体である患者の境界部分(特に、骨の部分)を判定することができる。そして、特許文献1に開示されている技術では、それぞれの画像から算出した輝度勾配に基づいて、被写体の境界部分のずれ(ずれ量)を算出し、算出したずれを表す画像を透視画像に重畳して表示する。つまり、特許文献1に開示されている技術では、患者の骨の部分のずれを求め、骨の部分のずれを強調した画像を透視画像に重畳して表示することによって、治療計画の段階に対する治療段階(現在)の患者の位置のずれを利用者(医師など)に提示している。
【0007】
しかしながら、患者の骨の部分は、治療計画の段階と治療段階とで必ずしも同じ状態であるとは限らない。例えば、放射線治療を行う部位の付近に関節などがある場合は、患者の姿勢によっては、患者の骨の部分が治療計画の段階と治療段階とで必ず一致するとは限らない。しかも、患者の体内において、放射線を照射する対象の病巣の位置は、必ずしも骨の付近であるとは限らない。このため、特許文献1に開示されている技術のような患者の骨の部分のずれに基づいた患者位置決めでは、患者位置決めの作業が容易にならない場合もあり得る。
【0008】
また、放射線治療では、治療計画の段階で計画した線量の放射線が病巣に照射されることが重要であるが、病巣に照射される放射線の線量分布は、放射線が通過する患者の体内の組織の組成によって変わってくる。例えば、放射線が通過する経路上に、治療計画の段階では存在していなかった腸ガスなどの空気の領域が存在することも考えられる。この空気の領域は、病巣に照射される放射線の線量に影響を及ぼしてしまう可能性がある。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、照射する放射線が患者の体内を通過する経路に関しての考慮がされていない。
【0009】
このため、特許文献1に開示されている技術を用いても、利用者(医師など)が患者位置決めの作業の結果を目視で確認することは、依然として必要である。なお、放射線治療において放射線を照射する方向は、例えば、水平方向や垂直方向などといった常に一定の方向に限られないため、利用者(医師など)が患者位置決めの作業の結果を目視で確認する際には、放射線を照射する方向に対する考慮も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、放射線治療を開始する前に行う患者の位置合わせの作業において患者の位置の確認を容易にすることができる医用画像処理装置、治療システム、および医用画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の医用画像処理装置は、関心領域取得部と、治療計画取得部と、影響度計算部と、表示制御部とを持つ。関心領域取得部は、患者の体内の一部の領域を関心領域として取得する。治療計画取得部は、前記患者に対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する。影響度計算部は、前記患者に照射する放射線が前記患者の体内の治療する対象の部位に到達するまでの飛程までの間で前記関心領域に対して及ぼす影響を表す影響度を計算する。表示制御部は、現在の前記患者の透視画像に、前記影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射線治療を開始する前に行う患者の位置合わせの作業において患者の位置の確認を容易にすることができる医用画像処理装置、治療システム、および医用画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態の医用画像処理装置の動作の流れを示すフローチャート。
【
図4】第1の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムにおける放射線の出射と放射線の照射対象との関係の一例を説明する図。
【
図5】第1の実施形態の医用画像処理装置に備えた表示制御部が生成する表示画像の一例を示す図。
【
図6】第1の実施形態の医用画像処理装置に備えた表示制御部が生成する表示画像の別の一例を示す図。
【
図7】第2の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図8】第2の実施形態の医用画像処理装置の動作の流れを示すフローチャート。
【
図9】第2の実施形態の医用画像処理装置の別の動作の流れを示すフローチャート。
【
図10】第2の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムにおける放射線の出射と放射線の照射対象との関係の一例を説明する図。
【
図11】第2の実施形態の医用画像処理装置に備えた表示制御部が生成する表示画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の医用画像処理装置、治療システム、および医用画像処理プログラムを、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図である。
図1に示した治療システム1は、医用画像処理装置100と、治療装置10とを備える。
【0017】
まず、治療システム1を構成する治療装置10について説明する。治療装置10は、治療台11と、2つの放射線源12(放射線源12-1および放射線源12-2)と、2つの放射線検出器13(放射線検出器13-1および放射線検出器13-2)と、治療ビーム照射門14とを備える。
【0018】
なお、
図1に示したそれぞれの符号に続いて付与した「-」とそれに続く数字は、対応関係を識別するためのものである。例えば、治療装置10における放射線源12と放射線検出器13との対応関係では、放射線源12-1と放射線検出器13-1とが対応して1つの組となっていることを示し、放射線源12-2と放射線検出器13-2とが対応してもう1つの組となっていることを示している。つまり、以下の説明においては、それぞれの符号に続いて付与した「-」とそれに続く数字が同じもの同士が対応していることを表している。なお、以下の説明において複数ある同じ構成要素を区別せずに表す場合には、「-」とそれに続く数字を示さずに表す。
【0019】
治療台11は、放射線による治療を受ける被検体(患者)Pを固定する寝台である。
【0020】
放射線源12-1は、患者Pの体内を透視するための放射線r-1を予め定めた角度から照射する。放射線源12-2は、患者Pの体内を透視するための放射線r-2を、放射線源12-1と異なる予め定めた角度から照射する。放射線r-1および放射線r-2は、例えば、X線である。
図1においては、治療台11上に固定された患者Pに対して、2方向からX線撮影を行う場合を示している。なお、
図1においては、放射線源12による放射線rの照射を制御する制御部の図示は省略している。
【0021】
放射線検出器13-1は、放射線源12-1から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線r-1を検出し、検出した放射線r-1のエネルギーの大きさに応じた患者Pの体内の透視画像を生成する。放射線検出器13-2は、放射線源12-2から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線r-2を検出し、検出した放射線r-2のエネルギーの大きさに応じた患者Pの体内の透視画像を生成する。放射線検出器13は、2次元のアレイ状に検出器が配置され、それぞれの検出器に到達した放射線rのエネルギーの大きさをデジタル値で表したデジタル画像を、透視画像として生成する。放射線検出器13は、例えば、フラット・パネル・ディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)や、イメージインテンシファイアや、カラーイメージインテンシファイアである。放射線検出器13は、生成した透視画像を医用画像処理装置100に出力する。なお、
図1においては、放射線検出器13による透視画像の生成を制御する制御部の図示は省略している。
【0022】
治療装置10では、放射線源12と放射線検出器13との組によって治療システム1における撮像装置を構成している。
【0023】
なお、
図1においては、2組の放射線源12と放射線検出器13、つまり、2つの撮像装置を備える治療装置10の構成を示した。しかし、治療装置10に備える撮像装置の数は、
図1に示したように2つの撮像装置を備えた構成、つまり、放射線源12と放射線検出器13との組を2組備えた構成に限定されるのではない。例えば、治療装置10は、3つ以上の撮像装置(3組以上の放射線源12と放射線検出器13との組)を備える構成であってもよい。また、治療装置10は、1つの撮像装置(1組の放射線源12と放射線検出器13との組)を備える構成であってもよい。
【0024】
治療ビーム照射門14は、患者Pの体内の治療する対象の部位である病巣を破壊するための放射線を治療ビームBとして照射する。治療ビームBは、例えば、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線などである。なお、
図1においては、治療ビーム照射門14による治療ビームBの照射を制御する制御部の図示は省略している。
【0025】
なお、
図1においては、固定された1つの治療ビーム照射門14を備える治療装置10構成を示した。しかし、治療装置10は、治療ビーム照射門14を1つのみ備える構成に限定されるのではなく、複数の治療ビーム照射門を備えてもよい。例えば、
図1では、患者Pに垂直方向から治療ビームBを照射する治療ビーム照射門14を備えている治療装置10の構成を示したが、治療システム1は、患者Pに水平方向から治療ビームを照射する治療ビーム照射門をさらに備えてもよい。また、例えば、
図1では、治療ビーム照射門14が、患者Pに垂直方向から治療ビームBを照射する位置に固定されている治療装置10の構成を示したが、治療システム1に備える治療ビーム照射門14は、患者Pの周囲を回転するように移動することによって、様々な方向(角度)から患者Pに治療ビームを照射する構成の治療ビーム照射門を備えてもよい。
【0026】
医用画像処理装置100は、放射線検出器13-1および放射線検出器13-2から出力された透視画像に基づいて、放射線治療において治療を行う患者Pの体内の病巣に対する治療ビームBの照射を制御する。このとき、医用画像処理装置100は、肺や肝臓など、患者Pの呼吸や心拍の動きによって移動する器官を追跡し、適切なタイミングで治療ビーム照射門14に、患者Pの体内の病巣に対して治療ビームBを照射させる。なお、医用画像処理装置100における病巣の追跡は、治療計画の段階など、放射線治療を行う前に撮影した患者Pの画像(3次元のコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)画像や透視画像)と、現在の患者Pの透視画像とに基づいて行われる。
【0027】
また、医用画像処理装置100は、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が治療を開始する前に行う患者位置決めの作業において確認する、患者Pの位置の情報を提示する。このとき、医用画像処理装置100は、治療計画の段階において撮影した患者Pの画像(CT画像や透視画像)と、現在の患者Pの透視画像とに基づいて、治療台11に寝かせた状態の現在の患者Pの位置と治療計画のときの患者Pの位置とのずれを逐次検出する。そして、医用画像処理装置100は、検出した患者Pの位置のずれを表す情報を、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)に逐次提示する。
【0028】
なお、医用画像処理装置100と治療装置10に備えた放射線検出器13とは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)によって接続されてもよい。
【0029】
ここで、放射線治療を行う前に行われる治療計画について説明する。治療計画では、治療に先立って、患者Pに照射する治療ビームB(放射線)のエネルギー、照射方向、照射範囲の形状、複数回に分けて治療ビームBを照射する場合における線量の配分などを定める治療の計画を立案する。より具体的には、まず、治療計画の立案者(医師など)が、治療計画の段階において撮影したCT画像に対して、腫瘍(病巣)の領域と正常な組織の領域との境界、腫瘍とその周辺にある重要な臓器との境界などを指定する。そして、治療計画では、指定された腫瘍に関する情報から計算した、患者Pの体表面から腫瘍の位置までの深さや、腫瘍の大きさに基づいて、照射する治療ビームBの方向(経路)や強度などを決定する。
【0030】
上述した腫瘍の領域と正常な組織の領域との境界の指定は、腫瘍の位置および体積を指定することに相当する。この腫瘍の体積は、肉眼的腫瘍体積(Gross Tumor Volume:GTV)、臨床的標的体積(Clinical Target Volume:CTV)、内的標的体積(Internal Target Volume:ITV)、計画標的体積(Planning Target Volume:PTV)などと呼ばれている。GTVは、画像から肉眼で確認することができる腫瘍の体積であり、放射線治療においては、十分な線量の治療ビームBを照射する必要がある体積である。CTVは、GTVと治療すべき潜在性の腫瘍とを含む体積である。ITVは、予測される生理的な患者Pの動きなどによってCTVが移動することを考慮し、CTVに予め定めた余裕(マージン)を付加した体積である。PTVは、治療を行う際に行う患者Pの位置合わせにおける誤差を考慮して、ITVにマージンを付加した体積である。これらの体積には、下式(1)の関係が成り立っている。
【0031】
GTV ∈ CTV ∈ ITV ∈ PTV ・・・(1)
【0032】
このため、治療計画の段階においては、実際の治療において生じる可能性がある誤差を考慮したマージンを加えて、患者Pに治療ビームBを照射する位置および範囲(領域)を決定する。このとき考慮する実際の治療において生じる可能性がある誤差とは、例えば、患者Pの体内の病巣や骨などの位置を、治療計画のときの位置と合わせるために行う患者位置決めの作業において生じる可能性がある患者Pの位置のずれなどである。
【0033】
このため、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、医用画像処理装置100から逐次提示される患者Pの位置のずれの情報を目視で確認しながら、実際の治療において生じる可能性がある誤差が少なくなるように、患者位置決めの作業を行う。
【0034】
続いて、治療システム1を構成する医用画像処理装置100の構成について説明する。
図2は、第1の実施形態の医用画像処理装置100の概略構成を示すブロック図である。なお、
図2には、患者位置決めの作業を行う際に治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が確認する患者Pの位置のずれを表す情報を提示する機能に関わる構成のみを示している。
図2に示した医用画像処理装置100は、患者Pの位置のずれを表す情報を提示する機能を実現する構成要素として、治療計画取得部101と、関心領域取得部102と、影響度計算部103と、画像取得部104と、表示制御部105とを備える。
【0035】
治療計画取得部101は、治療計画の段階において立案した治療計画の情報(以下、「治療計画情報」という)を取得する。ここで、治療計画情報は、治療において照射する治療ビームBの方向(経路)や強度、治療ビームBを照射する範囲(領域)、いわゆる、照射野、患者Pの体内の腫瘍(病巣)の位置(つまり、治療ビームBを照射する位置)や腫瘍(病巣)の大きさなどを含んでいる情報である。治療計画取得部101は、取得した治療計画情報を、関心領域取得部102と影響度計算部103とのそれぞれに出力する。また、治療計画取得部101は、治療計画において用いたCT画像を取得する。治療計画取得部101は、取得したCT画像を、関心領域取得部102と、影響度計算部103と、表示制御部105とのそれぞれに出力する。
【0036】
関心領域取得部102は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、患者Pに対して放射線治療を行う際の関心領域(Region Of Interest:ROI)を取得(抽出)する。ここで、関心領域ROIは、治療計画取得部101から出力されたCT画像に写されている患者Pの体内の腫瘍(病巣)に対して行う放射線治療の効果に影響を及ぼす可能性がある、患者Pの体内の一部の領域である。従って、関心領域ROIは、放射線治療を開始する前に患者Pの位置を治療計画の段階の位置に合わせる必要がある領域、つまり、放射線治療において治療ビームBを病巣に照射するために重要な領域である。関心領域取得部102は、取得(抽出)したそれぞれの関心領域ROIを示す情報(以下、「ROI情報」という)を、影響度計算部103に出力する。
【0037】
影響度計算部103は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、患者Pの体内の病巣に照射される治療ビームBが、関心領域取得部102から出力されたROI情報に示されたそれぞれの関心領域ROIに対して及ぼす影響の高さを表す影響度を計算する。このとき、影響度計算部103は、治療ビームB(放射線)の照射経路と、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置との位置関係に基づいて、影響度を計算する。ここで影響度計算部103が計算する影響度は、その値が高いほど、治療計画の段階の患者Pの位置と現在の患者Pの位置とのずれが放射線治療の効果に影響を及ぼす可能性が高いことを表すものである。なお、影響度計算部103は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置に対する治療ビームBの影響度を、治療ビームBの到達距離である飛程まで計算する。これは、治療ビームBは、病巣に照射されることによってそのエネルギーが失われるため、病巣を通過する治療ビームBに対する影響度は計算する必要がないからである。影響度計算部103は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置に対して計算したそれぞれの影響度の情報を、表示制御部105に出力する。
【0038】
画像取得部104は、患者位置決めの作業中に撮影された患者Pの透視画像を取得する。ここで、透視画像は、患者位置決めの作業において、患者Pを治療台11に寝かせた状態で予め定めた時間間隔ごとに撮影した、患者Pの体内の画像である。つまり、透視画像は、患者位置決めの作業のときに放射線源12から照射されて患者Pの体内を通過した放射線rを放射線検出器13が検出して生成した透視画像である。なお、画像取得部104は、治療装置10に備えた放射線検出器13と接続するためのインターフェースを含んでもよい。画像取得部104は、取得した透視画像を表示制御部105に出力する。
【0039】
なお、画像取得部104は、治療計画取得部101の代わりに、治療計画において用いたCT画像を取得してもよい。この場合、画像取得部104は、治療計画取得部101の代わりに、取得したCT画像を、関心領域取得部102と、影響度計算部103と、表示制御部105とのそれぞれに出力する。
【0040】
表示制御部105は、画像取得部104から出力された透視画像に、影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した表示画像を生成する。ここで、表示制御部105が生成する表示画像は、治療計画取得部101から出力されたCT画像に写された患者Pの位置と、画像取得部104から出力された透視画像に写された患者Pの位置とがずれている箇所の画素を、対応する影響度の情報に応じて強調した(目立たせた)画像である。例えば、表示制御部105は、患者Pの位置がずれている箇所の画素の色を、影響度の大きさに応じて色分けすることによって強調する部分を目立たせた表示画像を生成する。表示制御部105は、生成した表示画像を、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの不図示の表示装置に出力して表示させる。
【0041】
なお、不図示の表示装置は、医用画像処理装置100に備えた構成であってもよいし、医用画像処理装置100の外部に備えた構成であっいてもよい。また、不図示の表示装置は、治療装置10に備える構成であってもよい。
【0042】
このような構成によって、医用画像処理装置100は、治療を開始する前に行う患者位置決めの作業において重要な治療ビームBの照射経路に着目して、患者Pの位置のずれを逐次検出する。そして、医用画像処理装置100は、逐次検出した患者Pの位置のずれの情報を視覚的に表した表示画像を不図示の表示装置に表示させて、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)に逐次提示する。これにより、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、医用画像処理装置100から逐次提示された患者Pの位置のずれの情報を目視で確認しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。
【0043】
なお、上述した医用画像処理装置100に備えた機能部のうち一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部であってもよい。ここで、記憶装置は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどによって実現されてもよい。なお、CPUやGPUなどのプロセッサが実行するプログラムは、予め医用画像処理装置100の記憶装置に格納されていてもよいし、他のコンピュータ装置からネットワークを介してダウンロードされてもよい。また、可搬型記憶装置に格納されたプログラムが医用画像処理装置100にインストールされてもよい。また、上述した医用画像処理装置100に備えた機能部のうち一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やLSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによるハードウェア機能部であってもよい。
【0044】
ここで、治療システム1を構成する医用画像処理装置100の動作の概略について説明する。なお、以下の説明においては、医用画像処理装置100が、患者位置決めの作業を行う治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)に患者Pの位置のずれの情報を提示する動作の概略について説明する。
図3は、第1の実施形態の医用画像処理装置100における患者Pの位置のずれの情報を提示する動作の流れを示すフローチャートの一例である。
【0045】
治療を開始する前に行う患者位置決めの作業において医用画像処理装置100が動作を開始すると、治療計画取得部101は、まず、治療計画情報を取得する(ステップS100)。続いて、関心領域取得部102は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、関心領域ROIを取得する(ステップS101)。続いて、影響度計算部103は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、関心領域取得部102から出力されたROI情報に示されたそれぞれの関心領域ROIに対して影響度を計算する(ステップS102)。続いて、表示制御部105は、画像取得部104から出力された透視画像に、影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した表示画像を生成する(ステップS103)。
【0046】
次に、治療システム1を構成する医用画像処理装置100に備えたそれぞれの構成要素の動作の詳細について説明する。まず、医用画像処理装置100を構成する関心領域取得部102における関心領域ROIの取得方法について説明する。
【0047】
関心領域取得部102は、上述したように、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて関心領域ROIを取得(抽出)する。このとき、関心領域取得部102は、患者Pの体内の病巣に照射する治療ビームB(放射線)の照射経路の周囲の領域内に含まれる関心領域ROIを取得(抽出)する。例えば、放射線治療において照射する治療ビームBの照射経路が1本である場合、関心領域取得部102は、1本の治療ビームBの照射経路が少なくとも含まれている関心領域ROIを取得(抽出)する。また、例えば、放射線治療において治療ビームBを病巣の全体の領域を走査(スキャン)するように照射する、いわゆる、スキャニング照射を行う場合、関心領域取得部102は、スキャニング照射を行う複数本分の治療ビームBの照射経路を合わせた範囲(幅)の領域が少なくとも含まれている関心領域ROIを取得(抽出)する。また、関心領域取得部102は、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)の周囲にさらに予め定めた範囲(幅)をもたせた領域が少なくとも含まれている関心領域ROIを取得(抽出)してもよい。この治療ビームBの照射経路の範囲(幅)の周囲にさらにもたせる範囲(幅)は、治療計画の立案者や放射線治療の実施者(医師など)が設定してもよい。この場合、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、患者位置決めの作業において、より広い範囲を対象とした患者Pの位置合わせを行うことが必要になるため、より厳密に患者Pの位置を合わせる、言い換えれば、患者位置決めの作業を行った結果に余裕(マージン)をもたせることができる。
【0048】
なお、関心領域取得部102における関心領域ROIの取得方法としては、複数の方法が考えられる。
【0049】
1つ目の関心領域ROIの取得方法は、治療計画の段階で撮影したCT画像から仮想的に透視画像を再構成したデジタル再構成X線写真(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)画像や透視画像と、現在の患者Pの透視画像との差を計算して、画像の差が大きい、つまり、患者Pのずれが大きい箇所を関心領域ROIとして取得する方法である。なお、この方法の場合、関心領域取得部102は、画像取得部104が取得した現在の患者Pの透視画像も関心領域ROIの取得に用いる。このため、関心領域取得部102は、画像取得部104から現在の患者Pの透視画像を取得する。
【0050】
1つ目の関心領域ROIの取得方法において、関心領域取得部102は、画像取得部104から出力された透視画像に写された患者Pの方向(向き)と同じ方向(向き)のDRR画像を、治療計画取得部101から出力されたCT画像から再構成する。そして、関心領域取得部102は、画像取得部104から出力された透視画像に写されている患者Pの位置と、再構成したDRR画像に写されている患者Pの位置とを照合し、現在の患者Pの位置と治療計画のときの患者Pの位置とのずれを検出する。そして、関心領域取得部102は、検出した患者Pの位置のずれが大きい箇所を、関心領域ROIとして取得する。より具体的には、関心領域取得部102は、透視画像に含まれるそれぞれの画素の輝度勾配と、DRR画像に含まれるそれぞれの画素の輝度勾配との差を計算し、計算した輝度勾配の差が予め定めた差の閾値よりも大きい画素を、関心領域ROIとして取得する。これにより、関心領域取得部102は、例えば、患者Pの体内の病巣や骨などの輪郭部分のずれが大きい箇所を関心領域ROIとして取得することができる。なお、関心領域取得部102は、透視画像とDRR画像とのそれぞれの領域を、予め定めた大きさの領域に区切り、区切ったそれぞれの領域の単位で輝度勾配の差を計算し、計算した輝度勾配の差が予め定めた差の閾値よりも大きい領域を、関心領域ROIとして取得してもよい。
【0051】
なお、透視画像とDRR画像とでは、同じ箇所の画素の値(画素値)であっても、例えば、画像全体の明るさの差などによって、元々の画素値が大きく異なることが考えられる。このため、関心領域取得部102は、例えば、正規化相互相関などを用いて、それぞれの画素の画素値の類似度を同様にした状態で、それぞれの画素における輝度勾配の差を計算してもよい。
【0052】
また、2つ目の関心領域ROIの取得方法は、治療計画の立案者や放射線治療の実施者(医師など)が、治療計画の段階で撮影したCT画像や、DRR画像、透視画像に対して関心領域ROIを設定する方法である。この場合、治療計画の立案者や放射線治療の実施者(医師など)は、関心領域ROIを設定する画像を確認し、ずれが大きい箇所や重要な臓器が存在する箇所、またはそれらの輪郭部分の領域を、患者位置決めの作業において患者Pの位置を治療計画の段階の位置に合わせる必要がある箇所や領域として入力(設定)する。なお、患者Pの位置を治療計画の段階の位置に合わせる必要がある箇所や領域の入力(設定)は、放射線治療の実施者(医師など)が、患者位置決めの作業を行っている途中で変更や追加を行ってもよい。関心領域取得部102は、治療計画の立案者や放射線治療の実施者(医師など)によって設定された箇所を、関心領域ROIとして取得する。
【0053】
なお、治療計画の立案者や放射線治療の実施者(医師など)は、CT画像に対してずれが大きい箇所や重要な臓器が存在する箇所、またはそれらの輪郭部分の領域を入力(設定)する場合もあれば、DRR画像、透視画像に対してずれが大きい箇所や重要な臓器が存在する箇所、またはそれらの輪郭部分の領域を入力(設定)する場合もある。このため、関心領域取得部102は、CT画像に含まれるそれぞれの画素の位置を表す3次元空間の座標で、取得した関心領域ROIを表してもよいし、DRR画像や透視画像、またはそれぞれの箇所や領域が入力(設定)された後に再構成したDRR画像に含まれるそれぞれの画素の位置を表す2次元空間の座標で、取得した関心領域ROIを表してもよい。なお、
図1示したように、治療システム1を構成する治療装置10では、2つの撮像装置によって2方向から患者Pの透視画像を撮影する。従って、CT画像から再構成するDRR画像も、2つの撮像装置のそれぞれに対応する2方向のDRR画像によって構成される。このため、関心領域取得部102は、2方向のDRR画像や透視画像に対して三角測量の原理を利用して、CT画像と同様に3次元空間の座標で、取得した関心領域ROIを表してもよい。
【0054】
また、3つ目の関心領域ROIの取得方法は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、関心領域ROIを取得する方法である。この方法の場合、関心領域取得部102は、例えば、治療計画情報に含まれる患者Pの体内の病巣の位置および病巣の大きさの情報に基づいて、病巣の全体の領域を関心領域ROIとして取得する。また、関心領域取得部102は、例えば、治療計画情報に含まれる照射する治療ビームBの方向(経路)、治療ビームBを照射する範囲(領域)(照射野)、患者Pの体内の病巣の位置、病巣の大きさの情報に基づいて、治療ビームBの照射経路の全体の領域を関心領域ROIとして取得する。
【0055】
このようにして、関心領域取得部102は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて関心領域ROIを取得(抽出)する。なお、上述した関心領域取得部102における関心領域ROIの3つの取得方法は、排他的に行われるのではなく、複数の取得方法で取得したそれぞれの関心領域ROIを合わせて最終的な関心領域ROIとしてもよい。また、上述した関心領域取得部102における関心領域ROIの3つの取得方法は、一例であり、同様に患者Pの体内の一部の領域を関心領域ROIとして取得することができれば、いかなる取得方法を用いて、関心領域ROIを取得してもよい。
【0056】
次に、医用画像処理装置100を構成する影響度計算部103における影響度の計算方法について説明する。
【0057】
影響度計算部103は、上述したように、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、治療ビームBによるそれぞれの関心領域ROIへの影響度を、治療ビームBの飛程まで計算する。このとき、関心領域ROIがCT画像に含まれるそれぞれの画素の位置を表す3次元空間の座標で表されている場合、影響度計算部103は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置ごとに影響度を計算する。なお、この場合、影響度計算部103は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置を予め定めた間隔ごとにサンプリングして影響度を計算してもよい。また、関心領域ROIがDRR画像や透視画像に含まれるそれぞれの画素の位置を表す2次元空間の座標で表されている場合、影響度計算部103は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置ごとに影響度を計算する。なお、影響度計算部103は、関心領域ROIを予め定めた大きさの領域に区切り、区切ったそれぞれの領域の単位ごとに、影響度を計算してもよい。
【0058】
ここで、治療システム1において治療ビーム照射門14から照射する治療ビームBについて説明する。
図4は、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1における放射線(治療ビームB)の出射と放射線(治療ビームB)の照射対象(患者Pの体内に存在する病巣)との関係の一例を説明する図である。
図4には、治療ビーム照射門14から照射した治療ビームBが照射対象の病巣に到達するまでに通過する領域の一例を示している。なお、
図4には、3次元空間に治療ビーム照射門14およびCT画像CTIを仮想的に配置し、治療ビーム照射門14が1本の治療ビームBをスキャニング照射することによって、CT画像CTIに写された患者Pの体内に存在する病巣Fの全体の領域を照射する場合に、治療ビームBが通過する通過領域Pa-Bの一例を示している。
【0059】
通過領域Pa-Bは、治療ビーム照射門14から出射されてスキャニング照射されるそれぞれの治療ビームBが病巣Fに到達するまでの3次元の領域である。このため、通過領域Pa-Bは、
図4に示したように、治療ビーム照射門14を頂点とした錐体と見なすことができる。また、通過領域Pa-Bは、治療ビームBの経路を軸にした場合、円柱と見なしてもよい。また、通過領域Pa-Bは、
図4に示した3次元空間を2次元空間、すなわち、DRR画像などの画像に射影した領域として見なしてもよい。
【0060】
影響度計算部103は、上述したように見なした通過領域Pa-Bの領域内の治療ビームBの照射経路と、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置との位置関係に基づいて、影響度を計算する。
【0061】
ここで、影響度計算部103における影響度の計算方法について説明する。なお、影響度計算部103における影響度の計算方法としては、複数の方法が考えられる。
【0062】
1つ目の影響度の計算方法は、それぞれの関心領域ROIごとに影響度を計算する方法である。この場合、影響度計算部103は、通過領域Pa-Bのような治療ビームBの通過領域と、関心領域ROIとの重なり度合いに基づいて、関心領域ROIごとに1つ定まる影響度を計算する。より具体的には、影響度計算部103は、治療ビームBの通過領域と影響度を計算する対象の関心領域ROIとが重なる領域の体積と、この関心領域ROIの体積との比を、影響度とする。または、影響度計算部103は、関心領域ROIと治療ビームBの通過領域との間の最短距離を、影響度とする。そして、影響度計算部103は、それぞれの関心領域ROIに対して計算した1つの影響度を、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置に対する影響度とする。
【0063】
また、2つ目の影響度の計算方法は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置ごとに影響度を計算する方法である。この場合、影響度計算部103は、関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置と治療ビームBの通過領域との間の最短距離を、影響度とする。
【0064】
このようにして、影響度計算部103は、治療ビームBによる関心領域ROIに対する影響度を計算する。なお、上述した影響度計算部103における影響度の2つの計算方法は、一例であり、同様に関心領域ROIに対する影響度を計算することができれば、いかなる計算方法を用いて、影響度を計算してもよい。
【0065】
次に、医用画像処理装置100を構成する表示制御部105における表示画像の生成方法について説明する。
【0066】
表示制御部105は、上述したように、画像取得部104から出力された透視画像に、影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳することによって、CT画像に写された患者Pの位置と透視画像に写された患者Pの位置とがずれている箇所の画素(または、同じ区切りの領域)を強調した(目立たせた)表示画像を生成する。表示制御部105が生成する表示画像は、画像取得部104から出力された透視画像に含まれるそれぞれの画素に対する影響度の大きさに応じて色分けした画像である。より具体的には、影響度計算部103から出力された影響度が、2次元空間の座標で表された関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置に対して計算された影響度である場合、つまり、影響度を求めた画素の位置が2次元空間である場合、表示制御部105は、それぞれの画素の位置に対応する画素を色づけする。また、影響度計算部103から出力された影響度が、3次元空間の座標で表された関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置に対して計算された影響度である場合、つまり、影響度を求めた画素の位置が3次元空間である場合、表示制御部105は、それぞれの画素の位置を透視画像に射影した位置に対応する画素を色づけする。このとき、表示制御部105は、同じ画素の位置に対して複数の影響度がある場合には、それぞれの影響度の大きさの平均や最大値を用いてそれぞれの画素を色づけする。なお、表示制御部105は、それぞれの画素における影響度の大きさによって、それぞれの画素に色づけする色を変える。このとき、表示制御部105は、例えば、ヒートマップを用いて、それぞれの画素に色づけする色を変える。
【0067】
なお、上述したように、影響度計算部103から出力された影響度が、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)の周囲にさらに予め定めた範囲(幅)をもたせた領域が含まれている関心領域ROIに対して計算された影響度である場合もある。この場合、表示制御部105は、スキャニング照射を行う複数本分の治療ビームBの照射経路の範囲(幅)の領域に含まれる画素の色と、治療ビームBの照射経路の周囲にさらにもたせた範囲(幅)の領域に含まれる画素の色とを、異なる色や異なる色の濃さによって区別することができる表示画像を生成してもよい。
【0068】
なお、表示制御部105が生成する表示画像は、画像取得部104から出力された透視画像に、影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した画像に限定されるものではない。例えば、表示制御部105は、影響度計算部103から出力された影響度が、3次元空間の座標で表された関心領域ROIに含まれるそれぞれの画素の位置に対して計算された影響度である場合、CT画像から再構成したDRR画像に影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した表示画像を生成してもよい。この場合、表示制御部105は、治療計画取得部101から出力されたCT画像から関心領域取得部102と同様にDRR画像を再構成して表示画像を生成してもよい。また、関心領域取得部102を、再構成したDRR画像を表示制御部105に出力する構成とし、表示制御部105は、関心領域取得部102から出力されたDRR画像に影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した表示画像を生成してもよい。このとき、表示制御部105は、例えば、透視画像にDRR画像を合成し、その後、影響度の情報を重畳して、表示画像を生成してもよい。ここで、透視画像とDRR画像との合成は、例えば、アルファブレンドなどの既存の画像合成の技術によって行うことが考えられる。
【0069】
ここで、表示制御部105が生成する表示画像の一例について説明する。
図5は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた表示制御部105が生成する表示画像の一例を示す図である。
図5には、透視画像とDRR画像との合成した後に影響度の情報を重畳した表示画像の一例を示している。
【0070】
図5では、表示画面110の左側に、治療装置10に備える放射線源12-1と放射線検出器13-1との組によって構成される撮像装置によって撮影された透視画像PI-1に、影響度の情報を重畳した表示画像111を示している。表示画像111には、透視画像PI-1に対応するDRR画像DRR-1を合成している。表示画像111では、スキャニング照射によって病巣Fに治療ビームBを照射する照射経路の範囲(幅)W-1内で、DRR画像DRR-1に写された患者Pの位置と透視画像PI-1に写された患者Pの位置とがずれている箇所(患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所)の画素を、対応する影響度の情報に応じて色づけすることによって強調している(目立たせている)。なお、照射経路の範囲(幅)W-1は、DRR画像DRR-1および透視画像PI-1に写された病巣Fの幅である。また、表示画像111には、スキャニング照射する治療ビームBの一例として、病巣Fの中心に照射する治療ビームBを示している。
【0071】
また、
図5では、表示画面110の右側に、治療装置10に備える放射線源12-2と放射線検出器13-2との組によって構成される撮像装置によって撮影された透視画像PI-2に、影響度の情報を重畳した表示画像112を示している。表示画像112にも、表示画像111と同様に、透視画像PI-2に対応するDRR画像DRR-2を合成している。表示画像112でも、表示画像111と同様に、スキャニング照射によって病巣Fに治療ビームBを照射する照射経路の範囲(幅)W-2内で、DRR画像DRR-2に写された患者Pの位置と透視画像PI-2に写された患者Pの位置とがずれている箇所(患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所)の画素を、対応する影響度の情報に応じて色づけすることによって強調している(目立たせている)。なお、照射経路の範囲(幅)W-2は、DRR画像DRR-2および透視画像PI-2に写された病巣Fの幅である。従って、照射経路の範囲(幅)W-2は、表示画像111における照射経路の範囲(幅)W-1と同じ幅であるとは限らない。また、表示画像112にも、表示画像111と同様に、スキャニング照射する治療ビームBの一例として、病巣Fの中心に照射する治療ビームBを示している。
【0072】
治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、表示画面110に示された表示画像111および表示画像112によって、現在の患者Pの位置と治療計画の段階の患者Pの位置とのずれを容易に確認することができる。そして、放射線治療の実施者(医師など)は、表示画像111と表示画像112とのそれぞれによって、現在の患者Pの位置のずれを目視で確認しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。なお、上述したように、医用画像処理装置100では、患者Pの位置とのずれを逐次検出して、患者Pの位置のずれの情報を放射線治療の実施者(医師など)に逐次提示する。このため、表示制御部105が生成した表示画像111および表示画像112において強調させた(目立たせた)画素は、患者位置決めの作業において患者Pの位置のずれが解消してくるのに従って、つまり、現在の患者Pの位置が治療計画の段階の患者Pの位置に合ってくるのに従って、次第にその数が少なくなっていく。そして、最終的に、現在の患者Pの位置が治療計画の段階の患者Pの位置に合った状態になると、表示画像111および表示画像112において強調させた(目立たせた)画素はなくなる。これにより、患者位置決めの作業を行っている放射線治療の実施者(医師など)は、患者位置決めの作業の終了を容易に確認することができる。
【0073】
なお、
図5に示した表示画像の一例では、患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所の画素を対応する影響度の情報に応じて色づけすることによって強調させている(目立たせている)場合の一例を示した。しかし、上述したように、関心領域ROIには、骨の輪郭部分のみではなく、例えば、患者Pの体内の病巣Fの全体の領域またはその輪郭部分や、重要な臓器が存在する箇所またはその輪郭部分が含まれている場合もある。この場合、
図5に示した表示画像の一例では、患者Pの体内の病巣Fの輪郭部分がずれている箇所の画素も強調する(目立たせる)ために、対応する影響度の情報に応じて色づけされる。
【0074】
なお、上述したように、影響度計算部103から出力された影響度が、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)の周囲にさらに予め定めた範囲(幅)をもたせた領域が含まれている関心領域ROIに対して計算された影響度である場合もある。この場合、表示制御部105は、上述したように、スキャニング照射によって病巣Fに治療ビームBを照射する照射経路の範囲(幅)内の画素に色づけする色と、治療ビームBの照射経路の周囲にさらにもたせた範囲(幅)内の画素に色づけする色とを異なる色にすることによって、それぞれの範囲(幅)を区別させることもできる。
【0075】
ここで、表示制御部105が生成する表示画像の別の一例について説明する。
図6は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた表示制御部105が生成する表示画像の別の一例を示す図である。
図6には、
図5に示した表示画像の一例と同様に、透視画像とDRR画像との合成した後に影響度の情報を重畳した表示画像の一例を示している。
【0076】
図6でも、
図5に示した表示画像111の一例と同様に、表示画面110の左側に、透視画像PI-1と対応するDRR画像DRR-1とを合成し、影響度の情報を重畳した表示画像111を示している。
図6に示した表示画像111でも、
図5に示した表示画像111の一例と同様に、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W-1内で、DRR画像DRR-1に写された患者Pの位置と透視画像PI-1に写された患者Pの位置とがずれている箇所(患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所)の画素を、対応する影響度の情報に応じて色づけすることによって強調させている(目立たせている)。
図6に示した表示画像111でも、
図5に示した表示画像111の一例と同様に、スキャニング照射する治療ビームBの一例として、病巣Fの中心に照射する治療ビームBを示している。さらに、
図6に示した表示画像111では、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W-1の周囲にもたせた範囲(幅)We-1内で、DRR画像DRR-1に写された患者Pの位置と透視画像PI-1に写された患者Pの位置とがずれている箇所(患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所)の画素を、照射経路の範囲(幅)W-1内の画素に色づけした色とは異なる色に色づけしている。これにより、表示画像111では、範囲(幅)We-1まで含めた範囲(幅)内の画素を強調する(目立たせる)と共に、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W-1と範囲(幅)We-1とを区別している。なお、範囲(幅)We-1内の領域は、放射線治療において治療ビームBを病巣Fに照射するための重要度が、照射経路の範囲(幅)W-1内の領域よりも低い。このため、範囲(幅)We-1内の画素に色づけする色としては、例えば、照射経路の範囲(幅)W-1内の画素に色づけする色よりも薄い色にすることが考えられる。
【0077】
また、
図6でも、
図5に示した表示画像112の一例と同様に、表示画面110の右側に、透視画像PI-2と対応するDRR画像DRR-2とを合成し、影響度の情報を重畳した表示画像112を示している。
図6に示した表示画像112でも、
図5に示した表示画像112の一例と同様に、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W-2内で、DRR画像DRR-2に写された患者Pの位置と透視画像PI-2に写された患者Pの位置とがずれている箇所(患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所)の画素を、対応する影響度の情報に応じて色づけすることによって強調させている(目立たせている)。
図6に示した表示画像112でも、
図5に示した表示画像112の一例と同様に、スキャニング照射する治療ビームBの一例として、病巣Fの中心に照射する治療ビームBを示している。さらに、
図6に示した表示画像112でも、
図6に示した表示画像111と同様に、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W-2の周囲にもたせた範囲(幅)We-2内で、DRR画像DRR-2に写された患者Pの位置と透視画像PI-2に写された患者Pの位置とがずれている箇所(患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所)の画素を、照射経路の範囲(幅)W-2内の画素に色づけした色とは異なる色に色づけしている。これにより、
図6に示した表示画像112でも、
図6に示した表示画像111と同様に、範囲(幅)We-2まで含めた範囲(幅)内の画素を強調する(目立たせる)と共に、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W-2と範囲(幅)We-2とを区別している。なお、範囲(幅)We-2内の領域も、
図6に示した表示画像111における範囲(幅)We-1内の領域と同様に、放射線治療において治療ビームBを病巣Fに照射するための重要度が、照射経路の範囲(幅)W-2内の領域よりも低い。このため、範囲(幅)We-2内の画素に色づけする色としても、
図6に示した表示画像111における範囲(幅)We-1内の領域と同様に、照射経路の範囲(幅)W-2内の画素に色づけする色よりも薄い色にすることが考えられる。
【0078】
治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、
図6に示した表示画面110に示された表示画像111および表示画像112によっても、現在の患者Pの位置と治療計画の段階の患者Pの位置とのずれを容易に確認することができ、現在の患者Pの位置のずれを目視で確認しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。なお、
図6に示した表示画面110に示された表示画像111および表示画像112によって患者位置決めの作業を行う場合も、
図5に示した表示画面110に示された表示画像111および表示画像112によって患者位置決めの作業を行う場合と同様に、患者Pの位置のずれが解消してくるのに従って、強調させた(目立たせた)画素の数が次第に少なくなっていく。
図6に示した表示画面110に示された表示画像111および表示画像112によって患者位置決めの作業を行う場合でも、患者位置決めの作業を行っている放射線治療の実施者(医師など)は、患者位置決めの作業の終了を容易に確認することができる。しかも、
図6に示した表示画面110に示された表示画像111および表示画像112によって患者位置決めの作業を行う場合には、より広い範囲を対象として患者Pの位置合わせを行うことになるため、現在の患者Pの位置を、治療計画の段階の患者Pの位置により厳密に合わせることができる。
【0079】
なお、
図6に示した表示画像の一例でも、
図5に示した表示画像の一例と同様に、患者Pの骨の輪郭部分がずれている箇所の画素を対応する影響度の情報に応じて色づけすることによって強調させている(目立たせている)場合の一例を示した。しかし、上述したように、関心領域ROIには、骨の輪郭部分のみではなく、例えば、患者Pの体内の病巣Fの全体の領域またはその輪郭部分や、重要な臓器が存在する箇所またはその輪郭部分が含まれている場合もある。この場合、
図6に示した表示画像の一例でも、
図5に示した表示画像の一例と同様に、患者Pの体内の病巣Fの輪郭部分がずれている箇所の画素も強調する(目立たせる)ために、対応する影響度の情報に応じて色づけされる。
【0080】
表示制御部105は、このような表示画像を生成して治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)に提示する。なお、
図5および
図6に示した表示画像は、一例であり、現在の患者Pの位置と治療計画の段階の患者Pの位置とのずれを表す情報を提示することができれば、表示制御部105は、いかなる表示方法も用いた表示画像を生成してもよい。例えば、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)内で位置がずれている箇所の画素を色づけする際に、患者Pの手前側と奥側とで異なる色にしてもよい。これにより、患者位置決めの作業を行っている放射線治療の実施者(医師など)は、ずれている患者Pの位置を、容易に3次元的に確認することができる。この場合、放射線治療の実施者(医師など)は、患者位置決めの作業を行う際に、患者Pの手前側を先に合わせてから奥側を合わせるなど、同じ治療ビームBの照射経路の範囲(幅)内で位置がずれている箇所であっても、その中でさらに優先順位をつけて効率的に患者位置決めの作業を行うことができる。また、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)内で位置がずれている箇所を強調する(目立たせる)方法は、画素に色づけする方法に限定されるものではなく、例えば、位置がずれている領域を模様(市松模様など)で示してもよい。
【0081】
上述したように、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、治療計画取得部101が、治療計画の段階において立案した治療計画情報を取得する。そして、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、関心領域取得部102が、治療計画情報に基づいて、患者Pの体内の病巣に照射する治療ビームBの照射経路の周囲の領域内において位置のずれが大きい箇所を関心領域ROIとして取得(抽出)する。これにより、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、放射線検出器13が、治療計画情報に基づいて、患者Pの体内の病巣に治療ビームBを照射する照射経路内で、位置のずれが大きい箇所(関心領域ROI)に治療ビームBが照射された際に及ぼす影響度を飛程まで計算する。その後、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、表示制御部105が、画像取得部104が取得した現在の患者Pの透視画像に、患者位置決めの作業において着目する重要な治療ビームBの照射経路内の位置のずれが大きい箇所を、影響度の情報に応じて強調させた(目立たせた)表示画像を生成する。これにより、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が、不図示の表示装置に表示された表示画像から、現在の患者Pの位置と治療計画の段階の患者Pの位置とのずれを目視で容易に確認しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。このことにより、第1の実施形態の医用画像処理装置100では、患者位置決めの作業の結果を適切に判断することができる。
【0082】
上記説明したように、医用画像処理装置100は、患者Pの体内の一部の領域を関心領域ROIとして取得する関心領域取得部102と、患者Pに対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する治療計画取得部101と、患者Pに照射する放射線(治療ビームB)が患者Pの体内の治療する対象の部位(病巣)に到達するまでの飛程までの間で関心領域ROIに対して及ぼす影響を表す影響度を計算する影響度計算部103と、現在の患者Pの透視画像に、影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる表示制御部105と、を備える。
【0083】
また、上記説明したように、影響度計算部103は、照射する治療ビームBの通過経路と関心領域ROIとの重なり度合いに基づいて影響度を計算してもよい。
【0084】
また、上記説明したように、影響度計算部103は、照射する治療ビームBの通過経路が関心領域ROIに重なる体積と、関心領域ROIの体積との比に基づいて影響度を計算してもよい。
【0085】
また、上記説明したように、影響度計算部103は、照射する治療ビームBの通過経路と、関心領域ROIとの間の最短距離に基づいて影響度を計算してもよい。
【0086】
また、上記説明したように、関心領域取得部102は、計画段階で撮影した計画画像(例えば、CT画像)に写された患者Pの領域と透視画像に写された患者Pの領域とのずれが予め定めた閾値よりも大きい箇所を関心領域ROIとして取得してもよい。
【0087】
また、上記説明したように、関心領域取得部102は、領域のずれが閾値よりも大きい箇所のうち、治療ビームBの照射経路の範囲内の箇所を関心領域ROIとして取得してもよい。
【0088】
また、上記説明したように、関心領域取得部102は、治療ビームBの照射経路の範囲の周囲にもたせた予め定めた範囲を含んだ箇所を関心領域ROIとして取得してもよい。
【0089】
また、上記説明したように、表示制御部105は、透視画像の画素のうち、治療ビームBの照射経路の範囲内の関心領域ROIに対応する画素を、影響度の情報に応じて強調させた表示画像を生成してもよい。
【0090】
また、上記説明したように、表示制御部105は、強調させる(目立たせる)画素の色を変えた表示画像を生成してもよい。
【0091】
また、上記説明したように、表示制御部105は、計画段階で撮影した計画画像(例えば、CT画像)から仮想的に再構成した透視画像と同じ範囲の再構成画像(例えば、DRR画像)を、透視画像に合成した後に、強調させる(目立たせる)画素を影響度の情報に応じて強調させた(目立たせた)表示画像を生成してもよい。
【0092】
また、上記説明したように、表示制御部105は、透視画像の画素のうち、治療ビームBの照射経路の範囲の周囲にもたせた予め定めた範囲内の画素を、強調させる(目立たせる)画素と異なる方法で強調させた(目立たせた)表示画像を生成してもよい。
【0093】
また、上記説明したように、治療システム1は、医用画像処理装置100と、治療する対象の部位(病巣)に放射線(治療ビームB)を照射する照射部(治療ビーム照射門14)と、透視画像を撮影する撮像装置(放射線源12と放射線検出器13との組)とを具備した治療装置10と、表示画像を表示する不図示の表示装置と、を備えてもよい。
【0094】
また、医用画像処理装置100は、CPUやGPUなどのプロセッサと、ROMやRAM、HDD、フラッシュメモリなどの記憶装置とを備え、記憶装置には、プロセッサを、患者Pの体内の一部の領域を関心領域ROIとして取得する関心領域取得部102と、患者Pに対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する治療計画取得部101と、患者Pに照射する治療ビームBが患者Pの体内の治療する対象の部位(病巣)に到達するまでの飛程までの間で関心領域ROIに対して及ぼす影響を表す影響度を計算する影響度計算部103と、現在の患者Pの透視画像に、影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる表示制御部105として機能させるためのプログラムが記憶された装置であってもよい。
【0095】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの構成は、
図1に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成において、医用画像処理装置100が第2の実施形態の医用画像処理装置(以下、「医用画像処理装置200」という)に代わった構成である。以下の説明においては、医用画像処理装置200を備えた治療システムを、「治療システム2」という。
【0096】
なお、以下の説明においては、医用画像処理装置200を備えた治療システム2の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。そして、以下の説明においては、第1の実施形態の医用画像処理装置100と異なる構成要素である医用画像処理装置200の構成、動作、および処理についてのみを説明する。
【0097】
治療システム2では、治療装置10に備えた治療ビーム照射門14が、患者Pの周囲を回転するように移動することによって、様々な方向(角度)から患者Pに治療ビームを照射する構成である。
【0098】
医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、放射線検出器13-1および放射線検出器13-2から出力された透視画像に基づいて、放射線治療において治療を行う患者Pの体内の病巣に対する治療ビームBの照射を制御する。これにより、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、肺や肝臓など、患者Pの呼吸や心拍の動きによって移動する器官を追跡し、適切なタイミングで治療ビーム照射門14に、患者Pの体内の病巣に対して治療ビームBを照射させる。なお、医用画像処理装置200における病巣の追跡も、第1の実施形態の医用画像処理装置100における病巣の追跡と同様に、治療計画の段階など、放射線治療を行う前に撮影した患者PのCT画像や透視画像と、現在の患者Pの透視画像とに基づいて行われる。
【0099】
また、医用画像処理装置200も、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)が治療を開始する前に行う患者位置決めの作業において確認する、患者Pの位置の情報を提示する。このとき、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、治療計画の段階において撮影した患者PのCT画像や透視画像と、現在の患者Pの透視画像とに基づいて、治療台11に寝かせた状態の現在の患者Pの位置と治療計画のときの患者Pの位置とのずれを逐次検出する。そして、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、検出した患者Pの位置のずれを表す情報を、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)に逐次提示する。また、治療システム2では、上述したように、治療ビーム照射門14が患者Pの周囲を回転するように移動する構成である。このため、医用画像処理装置200では、治療ビーム照射門14が治療ビームBを照射する方向(角度)を表す情報も、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)に提示する。
【0100】
以下、治療システム2を構成する医用画像処理装置200の構成について説明する。
図7は、第2の実施形態の医用画像処理装置200の概略構成を示すブロック図である。なお、
図7には、患者位置決めの作業を行う際に治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)が確認する患者Pの位置のずれを表す情報を提示する機能に関わる構成のみを示している。
図7に示した医用画像処理装置200は、患者Pの位置のずれを表す情報を提示する機能を実現する構成要素として、治療計画取得部101と、関心領域取得部102と、影響度計算部103と、画像取得部104と、3次元画像取得部206と、断面取得部207と、表示制御部205とを備える。
【0101】
医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に3次元画像取得部206と断面取得部207とが追加された構成である。これに伴って、医用画像処理装置200では、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた表示制御部105が表示制御部205に代わっている。なお、医用画像処理装置200に備えたその他の構成要素は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた構成要素と同じ構成要素である。従って、以下の説明においては、医用画像処理装置200の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。そして、以下の説明においては、第1の実施形態の医用画像処理装置100と異なる構成要素についてのみを説明する。
【0102】
治療計画取得部101は、治療計画情報を取得し、取得した治療計画情報を、関心領域取得部102と、影響度計算部103と、断面取得部207とのそれぞれに出力する。なお、医用画像処理装置200において治療計画取得部101が取得する治療計画情報には、治療ビーム照射門14が患者Pの周囲を回転して移動する位置、すなわち、治療において治療ビームBを照射する方向(角度)の情報も含まれている。
【0103】
3次元画像取得部206は、3次元の画像(以下、「3次元画像」という)を取得する。ここで、3次元画像取得部206が取得する3次元画像は、治療計画において用いたCT画像などの3次元の画像、および以前の放射線治療において撮影したCT画像などの3次元の画像のいずれか一方または両方の画像である。なお、3次元画像は、患者Pの体内の構造を3次元的に把握することができる画像であれば、いかなる画像であってもよい。例えば、3次元画像は、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)撮影を行うMRI撮像装置によって撮影された3次元の画像(MRI画像)であってもよい。3次元画像取得部206は、取得した3次元画像を断面取得部207に出力する。
【0104】
断面取得部207は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報と、3次元画像取得部206から出力された3次元画像、および、表示制御部205から出力された制御信号を取得する。断面取得部207は、取得した治療計画情報や制御信号に基づいて、3次元空間内の1つないしは複数の平面を切り出した3次元画像の断面像を取得(生成)する。より具体的には、断面取得部207は、治療計画情報に含まれる患者Pの体内の腫瘍(病巣)の位置と、治療において治療ビームBを照射する方向(角度)の情報とに基づいて、治療ビームBの照射方向の平面を3次元空間から切り出した断面像を取得(生成)する。また、断面取得部207は、治療計画情報に含まれる治療ビーム照射門14の位置、つまり、治療ビームBの照射位置と、制御信号が表す患者Pの体内の特定の位置とに基づいて、治療ビームBの照射方向の平面を3次元空間から切り出した断面像を取得(生成)する。断面取得部207は、取得(生成)した3次元画像の断面像を、表示制御部205に出力する。
【0105】
表示制御部205は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた表示制御部105と同様に、画像取得部104から出力された透視画像に、影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した表示画像を生成する。また、表示制御部205は、断面取得部207から出力された3次元画像の断面像も表示画像として生成する。表示制御部205は、生成したそれぞれの表示画像を、不図示の表示装置に出力して表示させる。また、表示制御部205は、放射線治療の実施者(医師など)によって、例えば、断面像内の特定の位置が指示された場合、指示された位置を表す制御信号を、断面取得部207に出力する。これにより、断面取得部207は、制御信号に応じた新たな3次元画像の断面像を生成し、表示制御部205が、断面取得部207から出力された新たな3次元画像の断面像を表示画像として生成して、不図示の表示装置に出力して表示させる。
【0106】
このような構成によって、医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、治療を開始する前に行う患者位置決めの作業において重要な治療ビームBの照射経路に着目して、患者Pの位置のずれている箇所の画素を、対応する影響度の情報に応じて強調させた(目立たせた)表示画像を、不図示の表示装置に表示させて、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)に逐次提示する。また、医用画像処理装置200は、治療ビーム照射門14が治療ビームBを照射する方向を表す情報(断面像)も、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)に提示する。これにより、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、医用画像処理装置200から逐次提示された患者Pの位置のずれの情報と、治療ビーム照射門14が治療ビームBを照射する方向(断面像)を表す情報とを目視で対比(確認)しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。
【0107】
ここで、治療システム2を構成する医用画像処理装置200の動作の概略について説明する。なお、以下の説明においては、医用画像処理装置200が、患者位置決めの作業を行う治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)に治療ビーム照射門14が治療ビームBを照射する方向を表す情報(断面像)を提示する動作の概略について説明する。
図8および
図9は、第2の実施形態の医用画像処理装置200の動作の流れを示すフローチャートの一例である。
図8には、治療システム2が起動したとき、つまり、医用画像処理装置200が起動したときの動作の流れの一例を示している。また、
図9には、表示している断面像に対して放射線治療の実施者(医師など)が特定の位置を指示したときの医用画像処理装置200の動作の流れの一例を示している。
【0108】
まず、
図8を用いて、医用画像処理装置200が起動したときの動作について説明する。医用画像処理装置200が起動すると、3次元画像取得部206は、まず、3次元画像を取得する(ステップS200)。続いて、治療計画取得部101は、治療計画情報を取得する(ステップS201)。続いて、断面取得部207は、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて、3次元空間内の平面を設定する(ステップS202)。続いて、断面取得部207は、設定した3次元空間内の平面を切り出した3次元画像の断面像を取得(生成)する(ステップS203)。続いて、表示制御部205は、断面取得部207から出力された3次元画像の断面像の表示画像を生成する(ステップS204)。
【0109】
続いて、
図9を用いて、表示している断面像に対して放射線治療の実施者(医師など)が特定の位置を指示したときの医用画像処理装置200の動作について説明する。3次元画像の断面像の表示画像を不図示の表示装置に表示しているときに、表示している断面像内の特定の位置を放射線治療の実施者(医師など)が指示(入力)すると、表示制御部205は、指示(入力)された特定の位置を取得する(ステップS205)。なお、ここで、放射線治療の実施者(医師など)によって断面像上の特定の位置が指示(入力)されたものとする。表示制御部205は、指示(入力)された特定の位置を表す制御信号を断面取得部207に出力する。続いて、断面取得部207は、表示制御部205から出力された制御信号と治療計画取得部101から出力された治療計画情報とに基づいて、放射線治療の実施者(医師など)によって指示された特定の位置の3次元空間内の平面を設定する(ステップS206)。続いて、断面取得部207は、設定した3次元空間内の平面(指示された特定の位置の平面)を切り出した3次元画像の断面像を取得(生成)する(ステップS207)。なお、断面取得部207におけるステップS207の処理は、断面像を取得(生成)する対象の平面が異なる以外は、
図8に示した医用画像処理装置200が起動したときのステップS203の処理と同様である。続いて、表示制御部205は、断面取得部207から出力された3次元画像の断面像(指示された特定の位置の平面の断面像)の表示画像を生成する(ステップS208)。なお、表示制御部205におけるステップS208の処理は、表示画像を生成する断面像が異なる以外は、
図8に示した医用画像処理装置200が起動したときのステップS204の処理と同様である。
【0110】
次に、治療システム2を構成する医用画像処理装置200の動作の詳細について説明する。ここでは、医用画像処理装置200を構成する断面取得部207における平面の設定および断面像の切り出しの方法について説明する。なお、断面取得部207が断面像を切り出す場合、上述したように、治療計画情報のみに基づいて設定した平面を3次元空間から切り出す方法と、治療計画情報および制御信号に基づいて設定した平面を3次元空間から切り出す方法とがある。
【0111】
まず、断面取得部207が治療計画情報のみに基づいて平面を設定し、設定した平面を3次元空間から切り出す方法について説明する。
図10は、第2の実施形態の医用画像処理装置200を備えた治療システム2における放射線(治療ビームB)の出射と放射線(治療ビームB)の照射対象(患者Pの体内に存在する病巣)との関係の一例を説明する図である。
図10には、治療ビーム照射門14が照射する治療ビームBの方向(角度)と、断面取得部207が設定して切り出す平面の関係の一例を示している。
【0112】
断面取得部207が断面像を切り出すために設定する平面は、3次元空間内における平行ではない、つまり、垂直な3次元ベクトルのうち、2つのベクトルを定めることによって設定することができる。3次元ベクトルの2つのベクトルのうち、1つのベクトルは、治療ビームBの照射方向を表すベクトルとする。ここで、照射された治療ビームBが通過する経路と平行なベクトルを「プライマリーベクトル」と呼ぶ。なお、プライマリーベクトルは、治療ビームBを出射する治療ビーム照射門14の位置から、患者Pの体内の任意の位置(例えば、患者Pの体内の病巣Fの位置)を結ぶ直線の方向ベクトルとしてもよい。また、3次元ベクトルの2つのベクトルのうち、もう1つのベクトルは、任意の方向を表すベクトルを定めてよい。例えば、患者Pの位置や治療ビーム照射門14の位置を包括的に取り扱うことができる3次元座標における軸方向ベクトルの1つを採用してもよい。ここで、患者Pの位置や治療ビーム照射門14の位置を包括的に取り扱うことができる3次元座標とは、例えば、治療システム2が設置された治療室において予め設定された基準位置を基準として定義した3次元の座標系である。従って、3次元ベクトルの2つのベクトルのうち、もう1つのベクトルは、治療システム2が設置された治療室において定義した3次元の座標系におけるいずれかの軸方向ベクトルである。
図10には、この場合の一例を示している。
図10では、ある3次元座標系3DC内に患者Pの3次元画像3DIを配置し、患者Pの体内の病巣Fに照射される治療ビームBの方向を示している。断面取得部207は、治療ビームBの照射方向が表すプライマリーベクトルと、3次元座標系3DCのある軸Va-1とを規定する3次元ベクトルとによって、平面FSを設定する。
図10には、治療ビームBの照射方向と軸Va-1とを規定する3次元ベクトルとによって断面取得部207が設定した平面FSの一例を示している。
【0113】
なお、スキャニング照射のように治療ビームBの照射方向を表すプライマリーベクトルが複数ある場合、断面取得部207は、それぞれのプライマリーベクトル、つまり、それぞれの照射方向の治療ビームBに対応する複数の平面FSを設定する。
【0114】
断面取得部207は、
図10に示したように設定した平面FSを3次元画像3DIから切り出すことによって、断面像を取得(生成)する。この断面像は、設定した平面FS上に位置する3次元画像3DIのボクセルデータの値が、それぞれの画素における輝度の値(輝度値)となった画像である。なお、断面取得部207は、断面像に、治療計画情報に含まれる情報を付与してもよい。断面取得部207が断面像に付与する治療計画情報としては、例えば、治療ビームBが通過する経路の領域や、病巣Fの位置や輪郭部分の領域、重要な臓器の位置や輪郭部分の領域などの情報が考えられる。なお、断面取得部207が情報を付与する方法としては、例えば、それぞれの情報(領域)を表す画像を断面像に重畳する方法などが考えられる。
【0115】
続いて、断面取得部207が治療計画情報および制御信号に基づいて平面を設定し、設定した平面を3次元空間から切り出す方法について説明する。つまり、断面取得部207が、放射線治療の実施者(医師など)によって指示(入力)された特定の位置の断面像を切り出す方法について説明する。
【0116】
放射線治療の実施者(医師など)は、3次元画像の断面像の表示画像を不図示の表示装置に表示しているときに、例えば、情報を入力するユーザーインターフェースなどの外部入力手段によって、表示している断面像内の特定の位置を指示(入力)する。表示制御部205は、指示(入力)された特定の位置を表す制御信号を断面取得部207に出力する。断面取得部207は、表示制御部205から出力された制御信号が表す特定の位置(1点の位置)と、治療計画情報に含まれる治療ビームBを出射する治療ビーム照射門14の位置とを結ぶ直線の方向ベクトルを、プライマリーベクトルとする。そして、断面取得部207は、上述した治療計画情報のみに基づいて平面を設定して3次元空間から断面像を切り出す方法と同様に、平面FSを再設定する。つまり、断面取得部207は、
図10に示した病巣Fの位置を、放射線治療の実施者(医師など)によって指示(入力)された特定の位置として、
図10に示したような平面FSを再設定する。
【0117】
そして、断面取得部207は、上述した治療計画情報のみに基づいて平面を設定して3次元空間から断面像を切り出す方法と同様に、再設定した平面FSを3次元画像3DIから切り出すことによって、断面像を取得(生成)する。
【0118】
なお、放射線治療の実施者(医師など)が、表示している断面像内の特定の位置を複数指示(入力)した場合には、表示制御部205は、指示(入力)されたそれぞれの特定の位置を表す制御信号を断面取得部207に出力する。この場合、断面取得部207は、表示制御部205から出力された制御信号が表す複数の特定の位置のそれぞれに対応するプライマリーベクトルから複数の平面FSを再設定し、再設定したそれぞれの平面FSを3次元画像3DIから切り出した複数の断面像を取得(生成)する。
【0119】
このようにして、断面取得部207は、治療計画情報のみ、または治療計画情報および制御信号(放射線治療の実施者(医師など)によって指示(入力)された特定の位置)に基づいて平面FSを設定し、設定した平面FSを3次元画像3DIから切り出した断面像を取得(生成)する。なお、上述した断面取得部207における平面FSの設定および断面像の切り出しの方法は、一例であり、患者Pの体内の一部の平面の領域を切り出した断面像を取得(生成)することができれば、いかなる方法を用いて断面像を取得(生成)してもよい。
【0120】
そして、表示制御部205は、画像取得部104から出力された透視画像に影響度計算部103から出力された影響度の情報を重畳した表示画像と共に、断面取得部207から出力された3次元画像の断面像も表示画像として生成し、不図示の表示装置に出力して表示させる。
【0121】
ここで、表示制御部205が生成する表示画像の一例について説明する。
図11は、第2の実施形態の医用画像処理装置200に備えた表示制御部205が生成する表示画像の一例を示す図である。
図11には、影響度の情報を重畳した透視画像とDRR画像との合成画像と共に、断面像を表示する表示画像の一例を示している。
【0122】
図11では、表示画面210の上段に、治療装置10に備える放射線源12と放射線検出器13とのそれぞれの組によって構成される撮像装置によって撮影された透視画像PIに、影響度の情報を重畳した表示画像を示している。また、
図11では、表示画面210の下段に、断面取得部207から出力された3次元画像の断面像の表示画像213を示している。表示画像213には、断面取得部207が設定した平面FSを切り出した断面像SI、すなわち、プライマリーベクトルに平行な断面像SIに、平面FS内に存在する病巣Fを示している。また、表示画像213には、病巣Fにスキャニング照射する治療ビームBの一例として、病巣Fの中心に照射する治療ビームBを示している。また、表示画像213には、断面像SIとして表示画像213を射影したときのプライマリーベクトルの方向を表す情報も示している。表示画像213では、プライマリーベクトルの方向を表す情報の一例として、プライマリーベクトルの方向を示した矢印を示している。なお、表示画像213は、3次元画像の断面像SIの代わりに、患者Pの透視画像を用いて、病巣Fの位置や、病巣Fに照射する治療ビームB、プライマリーベクトルの方向などの情報を重畳した画像であってもよい。また、表示画面210の下段に表示する断面像は、表示画像213に示したようなプライマリーベクトルに平行な断面像SIのみに限定されるものではない。例えば、表示画像213に示した断面像SIに直交する平面、すなわち、プライマリーベクトルに垂直な断面像に、病巣Fの位置や、病巣Fに照射する治療ビームB、プライマリーベクトルの方向などの情報を重畳した表示画像を、表示画像213と共に、あるいは表示画像213の代わりに示してもよい。
【0123】
なお、表示画面210の上段に示した表示画像111と表示画像112とは、第1の実施形態の医用画像処理装置100における表示画面110(
図5参照)と同様の表示画像である。ただし、表示画像111と表示画像112とのそれぞれには、表示画面210に示された治療ビームBの照射方向が考慮されている。このため、表示画面210の上段に示した表示画像111と表示画像112とのそれぞれは、
図5に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における表示画面110の表示画像111や表示画像112とは異なる箇所が存在する。
【0124】
より具体的には、表示画面210の下段に示した表示画像213には、治療ビームBが、右側から左側に向かって照射される状態が示されている。この治療ビームBの照射方向を考慮すると、
図5に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における表示画面110の表示画像111と表示画像112とにおいて、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)Wにおいて強調した(目立たせた)画素の内、治療ビームBが照射されてくる最も外側の輪郭部分で強調した(目立たせた)画素以外の画素(より具体的には、鼻の輪郭部分の画素)に対応する影響度は、低くなると考えられる。このため、表示画面210の上段に示した表示画像111と表示画像112とのそれぞれでは、治療ビームBの照射経路の範囲(幅)W内の治療ビームBが照射されてくる最も外側の輪郭部分以外の画素を強調する(目立たせる)ために色づけした色が、最も外側の輪郭部分の画素を強調する(目立たせる)ために色づけした色と異なる色となっている。なお、
図5に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における表示画面110の表示画像111および表示画像112と、表示画面210の上段に示した表示画像111および表示画像112とにおける強調する(目立たせる)画素の色の違いは、影響度計算部103が計算する影響度によるものである。ここで、影響度計算部103は、第1の実施形態の医用画像処理装置100においても、治療計画取得部101から出力された治療計画情報に基づいて影響度を計算する。そして、治療計画取得部101から出力される治療計画情報には、第1の実施形態の医用画像処理装置100においても、治療ビームBの照射方向の情報が含まれている。従って、
図5に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における表示画面110の表示画像111および表示画像112と、表示画面210の上段に示した表示画像111および表示画像112とにおける強調する(目立たせる)画素の色の違いは、医用画像処理装置200の構成による違いではなく、第1の実施形態の医用画像処理装置100においても同様となることが考えられる。
【0125】
治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、表示画面210に示された表示画像111および表示画像112に加えて、表示画面210に示された表示画像213を対比(確認)しながら、患者位置決めの作業を行う。これにより、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)は、治療ビームBが病巣Fに到達する飛程までの経路上に、気泡や骨のずれなど、放射線治療の効果に影響を及ぼす可能性がある箇所が存在するか否かを容易に確認しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。このとき、放射線治療の実施者(医師など)は、表示画像111および表示画像112を確認して患者Pの位置がずれている箇所(特定の位置)を、表示画面210に示された表示画像213内の断面像SI上に指示(入力)することができる。これにより、断面取得部207は、放射線治療の実施者(医師など)によって指示(入力)された箇所に平面FSを再設定して新たな断面像SIを切り出し、表示制御部205が、新たな断面像SIの表示画像213を不図示の表示装置に表示させる。これにより、放射線治療の実施者(医師など)は、指示(入力)した箇所を通過する治療ビームBの経路を新たな表示画像213から容易に確認することができる。その結果、放射線治療の実施者(医師など)は、患者位置決めの作業において、患者Pの体内の病巣Fに治療ビームBが適切に照射されるか、または患者Pの現在のずれの状態で放射線治療を実施することができるかなどの判断を行うことができる。つまり、患者位置決めの作業を行っている放射線治療の実施者(医師など)は、患者位置決めの作業を終了するか否かを判断することができる。
【0126】
なお、
図11に示した表示画像の一例では、断面像SIの表示画像213に、スキャニング照射する治療ビームBの一例として、病巣Fの中心に照射する治療ビームBを示した。しかし、
図11に示した表示画像の一例の上段に示したように、スキャニング照射によって病巣Fに治療ビームBを照射する照射経路の範囲(幅)Wは、治療計画情報から得ることができる。このため、医用画像処理装置200では、断面取得部207が、治療計画情報から得ることができる照射経路の範囲(幅)Wの情報を断面像SIに付与して表示制御部205に出力し、表示制御部205が、照射経路の範囲(幅)Wを示した表示画像213を生成する構成にしてもよい。また、上述したように、断面取得部207は、治療ビームBをスキャニング照射する場合、それぞれの照射方向の治療ビームBに対応する複数の平面FSを設定する。従って、断面取得部207は、それぞれの平面FSに対応した複数の断面像SIを取得(生成)する。このため、医用画像処理装置200では、表示制御部205が、例えば、断面取得部207から出力された複数の断面像SIのそれぞれに対応した表示画像213を、放射線治療の実施者(医師など)の指示に応じて切り替えるようにしてもよい。また、医用画像処理装置200では、表示制御部205が、例えば、断面取得部207から出力された複数の断面像SIを合成することによって、スキャニング照射によって病巣Fに照射する全ての治療ビームBを示すようにしてもよい。
【0127】
上述したように、第2の実施形態の医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、治療計画取得部101が、治療計画の段階において立案した治療計画情報を取得し、関心領域取得部102が、治療計画情報に基づいて、患者Pの体内の病巣に照射する治療ビームBの照射経路の周囲の領域内において位置のずれが大きい箇所を関心領域ROIとして取得(抽出)する。これにより、第2の実施形態の医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、影響度計算部103が、患者Pの体内の病巣に治療ビームBを照射する照射経路内で、位置のずれが大きい箇所(関心領域ROI)に治療ビームBが照射された際に及ぼす影響度を飛程まで計算する。そして、第2の実施形態の医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、表示制御部205が、画像取得部104が取得した現在の患者Pの透視画像に、患者位置決めの作業において着目する重要な治療ビームBの照射経路内の位置のずれが大きい箇所を、影響度の情報に応じて強調させた(目立たせた)表示画像を生成する。これにより、第2の実施形態の医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)が、不図示の表示装置に表示された表示画像から、現在の患者Pの位置と治療計画の段階の患者Pの位置とのずれを目視で容易に確認しながら、患者位置決めの作業を行うことができる。
【0128】
また、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、3次元画像取得部206が、治療計画の段階において撮影した3次元画像を取得する。そして、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、断面取得部207が、患者Pの体内の病巣や治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)によって指定された特定の位置に治療ビームBを照射する際の治療ビームBの方向(角度)に沿った平面を設定し、設定した平面を3次元空間から切り出した断面像を取得(生成)する。そして、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、表示制御部205が、断面像の表示画像を生成する。これにより、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、治療システム2を利用する放射線治療の実施者(医師など)が、不図示の表示装置に表示された、位置のずれが大きい箇所を強調させた(目立たせた)表示画像に加えて、断面像の表示画像も目視で容易に対比(確認)しながら、断面像の表示画像に表された治療ビームBの照射方向を考慮して、患者位置決めの作業を行うことができる。このことにより、第2の実施形態の医用画像処理装置200では、患者位置決めの作業の結果を、より適切に判断することができる。
【0129】
上記説明したように、医用画像処理装置200は、患者Pを撮影した3次元画像3DIを取得する3次元画像取得部206と、3次元空間内に平面を設定し、設定した平面を3次元画像3DIから切り出した断面像を取得する断面取得部207と、をさらに備え、表示制御部205は、断面像の表示画像をさらに生成して表示させる。
【0130】
また、上記説明したように、断面取得部207は、放射線(治療ビームB)の通過経路と平行なプライマリーベクトルと、プライマリーベクトルに垂直な他のベクトルとによって平面を設定してもよい。
【0131】
また、上記説明したように、他のベクトルは、患者Pに治療ビームBを照射する環境(治療室)において予め定義した3次元の座標系(3次元座標系3DC)におけるいずれかの軸方向ベクトル(例えば、軸Va-1を規定する3次元ベクトル)であってもよい。
【0132】
また、上記説明したように、表示制御部205は、プライマリーベクトルの方向を表す情報を重畳した断面像の表示画像を生成してもよい。
【0133】
上記に述べたとおり、各実施形態の医用画像処理装置では、患者位置決めの作業において確認する、治療計画の段階のときの患者の位置と現在の患者の位置とのずれを逐次検出する。そして、各実施形態の医用画像処理装置では、検出した患者の位置のずれを表す情報を、治療システムを利用する放射線治療の実施者(医師など)に逐次提示する。これにより、各実施形態の医用画像処理装置では、患者位置決めの作業を行う放射線治療の実施者(医師など)が、治療計画の段階の患者の位置と現在の患者の位置とのずれを目視で容易に確認しながら、実際の治療において生じる可能性がある誤差が少なくなるように、患者位置決めの作業を行うことができる。このことにより、各実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムでは、患者位置決めの精度を向上させることができる。また、各実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムでは、患者位置決めの作業に要する時間を短縮し、放射線治療を受ける負担を軽減することができる。
【0134】
なお、各実施形態では、医用画像処理装置と治療装置10とのそれぞれが別体の装置である構成を説明した。しかし、医用画像処理装置と治療装置10とは、別体の装置である構成に限定されるものではなく、医用画像処理装置と治療装置10とが一体になった構成であってもよい。
【0135】
上記実施形態で説明した治療システムにおいて用いられる医用画像処理プログラムは、コンピュータを、患者の体内の一部の領域を関心領域として取得する関心領域取得部と、患者に対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する治療計画取得部と、患者に照射する放射線が患者の体内の治療する対象の部位に到達するまでの飛程までの間で関心領域に対して及ぼす影響を表す影響度を計算する影響度計算部と、現在の患者の透視画像に、影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる表示制御部と、を備える医用画像処理装置として機能させるための医用画像処理プログラムである。
【0136】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、患者の体内の一部の領域を関心領域(関心領域ROI)として取得する関心領域取得部(102)と、患者に対して行う放射線治療の計画段階で決定した治療計画情報を取得する治療計画取得部(101)と、患者に照射する放射線(治療ビームB)が患者の体内の治療する対象の部位(病巣)に到達するまでの飛程までの間で関心領域(関心領域ROI)に対して及ぼす影響を表す影響度を計算する影響度計算部(103)と、現在の患者の透視画像に、影響度の情報を重畳した表示画像を生成して表示部に表示させる表示制御部(105)とを持つことにより、放射線治療を開始する前に行う患者の位置合わせの作業において患者の位置の確認を容易にすることができる。
【0137】
なお、例えば、
図2において示した治療計画取得部101、関心領域取得部102、影響度計算部103、画像取得部104、表示制御部105など、医用画像処理装置を構成する各構成要素による機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の治療システムに係る上述した種々の機能を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0138】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0140】
1,2・・・治療システム、10・・・治療装置、11・・・治療台、12,12-1,12-2・・・放射線源、13,13-1,13-2・・・放射線検出器、14・・・治療ビーム照射門、100,200・・・医用画像処理装置、101・・・治療計画取得部、102・・・関心領域取得部、103・・・影響度計算部、104・・・画像取得部、105,205・・・表示制御部、206・・・3次元画像取得部、207・・・断面取得部