(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】棒状部材の固定具およびそれを用いた固定構造
(51)【国際特許分類】
E04G 5/14 20060101AFI20220127BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20220127BHJP
E04G 7/22 20060101ALI20220127BHJP
E04F 11/18 20060101ALI20220127BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220127BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20220127BHJP
F16B 2/20 20060101ALI20220127BHJP
E01F 15/04 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
E04G5/14 302A
E04G3/24 302H
E04G7/22 B
E04F11/18
E01D22/00 Z
F16B5/06 J
F16B2/20 B
E01F15/04 Z
(21)【出願番号】P 2020091137
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】501415682
【氏名又は名称】株式会社横井製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】395001161
【氏名又は名称】日の丸合成樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】別當 欣謙
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】戸賀瀬 竜一
(72)【発明者】
【氏名】横井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】横井 洋治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昇
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】勝間 博
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-303648(JP,A)
【文献】特開2006-257756(JP,A)
【文献】特開2010-168780(JP,A)
【文献】特開2002-322782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/14
E04G 3/24
E04G 7/22
E04G 21/32
E04F 11/18
E01D 22/00
F16B 5/06
F16B 2/20
E01F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向の1箇所で切断された環状部と、前記環状部の外周から径方向外側へ延びる取付部と、前記環状部の切断部分の両側から径方向外側へ延びる一対の締付部と、前記両締付部が互いに隙間をおいて対向し、互いに近接する方向に付勢された固定準備状態を保持する保持片とを備え、
前記取付部を外部の固定部材に取り付けるとともに、前記固定準備状態で前記環状部に外部の棒状部材を通したうえで前記保持片を取り除くことにより、前記両締付部が互いに近接して環状部が縮径し、前記棒状部材を環状部で締め付けて前記固定部材に固定するようにした棒状部材の固定具。
【請求項2】
前記固定準備状態で前記取付部が前記固定部材に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の棒状部材の固定具。
【請求項3】
前記保持片は、前記両締付部から切り離し可能な状態で両締付部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の棒状部材の固定具。
【請求項4】
少なくとも前記両締付部および保持片が樹脂製であることを特徴とする請求項3に記載の棒状部材の固定具。
【請求項5】
前記固定部材が歩廊に立設された支柱であり、前記棒状部材が手摺であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状部材の固定具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の棒状部材の固定具を用いて、前記棒状部材を固定部材に固定した棒状部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩廊の手摺等の棒状部材を固定するための固定具とそれを用いた固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や鉄道の橋梁には、一般に、定期的な点検や破損部分の修理を行うための検査路が付設されている。この検査路を構成する歩廊は、主桁の長手方向の複数個所に支柱を立設し、この支柱に手摺を取り付けたものが多い。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている歩廊は、床版と一体に形成された主桁と、主桁の長手方向の複数個所で主桁の両側に立設される支柱と、主桁の長手方向に延びる状態で支柱に取り付けられる複数の手摺とからなる簡単な構造とすることにより、施工しやすいものとしている。
【0004】
この歩廊では、支柱として2つの帯状部からなる断面L字状の部材を用い、手摺には丸パイプ状の部材を用いている。そして、各支柱の一方の帯状部の下端部をボルトとナットで主桁の側面部に締結し、各支柱の他方の帯状部に手摺を貫通させた状態で、各手摺の支柱貫通位置のうちの要所の前後を固定具で支柱に固定している。
【0005】
上記のような歩廊の手摺用の固定具としては、周方向の1箇所で切断された環状部と、環状部の外周から径方向外側へ延びる取付部と、環状部の切断部分の両側から径方向外側へ延びる一対の締付部とを備え、その環状部を支柱の手摺用貫通孔の周縁に合わせて取付部を支柱に取り付け、環状部および支柱に手摺を通した状態で、両締付部を互いに近接するようにボルトとナットで締め付けることにより環状部を縮径させ、その環状部で手摺を締め付けて支柱に固定するものが知られている(例えば、特許文献1の
図2参照)。
【0006】
このような構成の固定具は、上記のように歩廊の支柱に手摺を固定する場合に限らず、棒状部材を固定部材に固定する場合に広く用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した固定具は、一般にある程度剛性の高い金属で形成されているため、環状部が棒状部材を確実に締め付けるようになるまで環状部を縮径させるのに多少手間がかかり、この点で改良の余地があった。特に、歩廊の施工現場での手摺の支柱への固定等で固定箇所が多くなる場合、その固定作業の手間を減らすことが求められていた。
【0009】
そこで、本発明は、棒状部材が通される環状部を有する固定具を用いて棒状部材を固定部材に固定する際の作業効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の棒状部材の固定具は、周方向の1箇所で切断された環状部と、前記環状部の外周から径方向外側へ延びる取付部と、前記環状部の切断部分の両側から径方向外側へ延びる一対の締付部と、前記両締付部が互いに隙間をおいて対向し、互いに近接する方向に付勢された固定準備状態を保持する保持片とを備え、前記取付部を外部の固定部材に取り付けるとともに、前記固定準備状態で前記環状部に外部の棒状部材を通したうえで前記保持片を取り除くことにより、前記両締付部が互いに近接して環状部が縮径し、前記棒状部材を環状部で締め付けて前記固定部材に固定する構成とした。
【0011】
上記構成の固定具を用いれば、固定準備状態で環状部に棒状部材を通して保持片を取り除くだけで、自動的に環状部が縮径して棒状部材を締め付けるようになるので、従来の一対の締付部をボルトとナットで締め付けて環状部を縮径させる固定具を用いる場合に比べて、棒状部材の固定作業を効率よく行えるようになる。
【0012】
そして、この固定具は、前記固定準備状態で前記取付部が前記固定部材に取り付けられる構成とするとよい。
【0013】
ここで、前記保持片は、前記両締付部から切り離し可能な状態で両締付部と一体に形成されているものとすることができる。その場合、少なくとも前記両締付部および保持片は樹脂製であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の固定具は、前記固定部材が歩廊に立設された支柱であり、前記棒状部材が手摺である場合に特に有効に適用でき、歩廊の施工性の向上に寄与することができる。歩廊の手摺を支柱に固定する場合は、通常、その固定箇所が多くなるからである。
【0015】
そして、本発明の棒状部材の固定構造は、上述した構成の棒状部材の固定具を用いて、棒状部材を固定部材に固定したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上述したように、棒状部材を固定部材に固定する際に、固定具の取付部を固定部材に取り付けるとともに、固定準備状態にある固定具の環状部に棒状部材を通して保持片を取り除くだけで、自動的に固定具の環状部が縮径し、その環状部で棒状部材を締め付けて固定することができるので、従来のボルトとナットで環状部を縮径させる固定具を使用する場合よりも作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】(a)は
図1の歩廊に用いられている固定具の外観斜視図、(b)は(a)の正面図、(c)は(a)の側面図
【
図4】
図1の歩廊における実施形態の固定構造の分解斜視図
【
図5】(a)、(b)は、それぞれ
図3(b)に対応して固定具の作用を説明する正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1および
図2は実施形態の棒状部材の固定構造を適用した歩廊を示す。この歩廊は、床版と一体に形成された主桁1と、主桁1の長手方向の複数個所で主桁1の両側に立設される固定部材としての支柱2と、主桁1の長手方向に延びる状態で支柱2に取り付けられる複数の棒状部材としての手摺3とからなるもので、その主桁1、各支柱2および各手摺3がそれぞれ繊維強化樹脂(FRP)で形成されている。
【0019】
前記主桁1は、表面部11と裏面部12と左右両側の側面部13とからなる中空の板状をなし、その内部の幅方向の複数箇所に表面部11と裏面部12との間で長手方向に延びるリブ14を有する一体成形品であり、その両側面部13に支柱2が固定されている。
【0020】
前記各支柱2は、2つの帯状部21、22からなる断面L字状の部材であり、その一方の帯状部21の外側面の下端部が主桁1の側面部13に当接する状態で、ボルトとナットを含む締結部材4によって主桁1に締結されている。なお、主桁1の裏面部12には、主桁1の側面部13と各支柱2との締結部分の近傍にそれぞれ開口(図示省略)が設けられ、この開口を利用して支柱2の主桁1への締結が行えるようになっている。
【0021】
前記各手摺3は、丸パイプ状の部材であり、主桁1の長手方向に並ぶ複数の支柱2の他方の(主桁1の側面と直交する方の)帯状部22を貫通する状態で、鉛直方向に3段(上段、中段、下段)配置されている。そのうち、上段の手摺3は、剛性確保のために、中段および下段の手摺3よりも大径のものが用いられている。そして、各段の手摺3は、各支柱2貫通位置の前後をそれぞれ固定具5で支柱2に固定されている。
【0022】
図3(a)~(c)は、この歩廊に用いられている実施形態の固定具5の使用前の状態を示す。この固定具5は、周方向の1箇所で切断された円筒形の環状部51と、その環状部51の軸方向一端の外周から径方向外側へ延びる取付部52と、環状部51の切断部分の両側から径方向外側へ延びる一対の締付部53と、両締付部53が互いに隙間をおいて対向し、互いに近接する方向に付勢された固定準備状態を保持する保持片54とからなり、全体がFRPにより固定準備状態で一体形成されたものである。
【0023】
前記環状部51は、その内径が固定対象となる手摺3の外径よりも僅かに大きく形成され、後述する手摺3の固定作業の際に手摺3を容易に通せるようになっている。
【0024】
前記取付部52は、環状部51の軸方向と直交するように形成された矩形平板状の部位であり、その中央部に支柱2への取付孔52aがあけられている。
【0025】
前記一対の締付部53は、それぞれ環状部51の軸方向と平行に広がる矩形平板状の部位であり、その中央部には手摺3固定後のガタつき防止用の締結部材6(
図1および
図2参照)を装着するための取付孔53aがあけられている。
【0026】
前記保持片54は、各締付部53の先端にそれぞれ接続される2つの爪部54aを含む略コの字状の部材である。その爪部54aは、側面視で締付部53との接続端に向かって薄くなる楔状に形成されている。これにより、保持片54に僅かな厚み方向の力を加えるだけで、爪部54aの締付部53との接続部分が破断して、保持片54が締付部53から切り離され、固定具5の固定準備状態を解除できるようになっている。
【0027】
次に、
図4および
図5に基づいて、上記構成の固定具5を用いて手摺3を支柱2に固定する手順について説明する。手摺3の固定作業では、まず、
図4に示すように、歩廊の主桁1に立設された支柱2の他方の帯状部22に対し、その前後両面の手摺用貫通孔22aの周縁にそれぞれ固定準備状態にある(保持片54を切り離していない)固定具5の環状部51を合わせるとともに、手摺用貫通孔22aの上方にあけられた固定具用貫通孔22bと前後の固定具5の取付部52の取付孔52aとを合わせた状態で、その固定具用貫通孔22bおよび両固定具5の取付孔52aに通されるボルト71とこれにねじ結合するナット72と複数のワッシャ類とからなる締結部材7により、各固定具5の取付部52を支柱2に取り付ける(
図1および
図2参照)。
【0028】
続いて、手摺3を支柱2の手摺用貫通孔22aと前後の固定具5の環状部51に通した後、各固定具5の一対の締付部53から保持片54を切り離して固定準備状態を解除する。このとき、固定具5は、保持片54の切り離し前の固定準備状態では、
図5(a)に示すように、環状部51の内周面と手摺3の外周面との間に隙間があり、両締付部53が保持片54によって互いに近接する方向に付勢された状態で保持されているが、保持片54を切り離して固定準備状態を解除すると、
図5(b)に示すように、両締付部53が互いに近接して環状部51が縮径し、手摺3を環状部51で締め付けるようになる。
【0029】
なお、保持片54を切り離した後に手摺3の位置調整をする場合には、保持片54の2つの爪部54aを環状部51の軸方向に並ぶ姿勢で両締付部53の間に差し込み、環状部51を拡径させて、手摺3の締め付けを緩めるようにすればよい。
【0030】
最後に、
図4に示すように、各固定具5の両締付部53の取付孔53aに締結部材6のボルト61を通し、そのボルト61にねじ結合するナット62と複数のワッシャ類とで、両締付部53が近接する状態(環状部51が手摺3を締め付ける状態)を保持して、手摺3が外力によってガタつかないようにしておく。
【0031】
この固定構造では、上述したように、固定準備状態にある固定具5の取付部52を支柱2に取り付けて環状部51に手摺3を通した後、その固定具5の保持片54を取り除くだけで、自動的に固定具5の環状部51が縮径して手摺3を締め付け、手摺3を支柱2に固定することができる。そして、その後の固定具5の両締付部53に対する締結部材6の装着は、両締付部53が互いに離れないようにできればよく、従来のように装着時に環状部を縮径させる必要はないので、手摺3の固定作業を従来よりも効率よく行うことができ、ひいては歩廊の施工性の向上に寄与することができる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
例えば、固定具は、保持片を取り除くことにより一対の締付部が互いに近接し、環状部が縮径して棒状部材を締め付けるようになっていればよく、実施形態のように固定具全体を一体形成して使用時に保持片を切り離すもののほか、保持片をその他の部位と別体に形成して両締付部と係合させておき、使用時にその係合を解除するものを採用することもできる。
【0034】
そして、使用時に保持片を切り離すものの場合は、その切り離しが容易に行えるようにするために、実施形態のように固定具全体を樹脂(FRPを含む)で一体形成する等、少なくとも両締付部および保持片を樹脂製とすることが望ましいが、全体を金属等、樹脂以外の材料で形成することもできる。
【0035】
また、実施形態では、固定具を固定準備状態で(保持片を切り離す前に)支柱に取り付けるようにしたが、固定作業の前に固定具から保持片を切り離しておき、固定作業の際には、固定具を支柱に取り付けた後、保持片を両締付部に係合させて固定準備状態とするようにしてもよい。
【0036】
また、本発明は、実施形態のような歩廊の手摺を支柱に固定する固定具および固定構造に限らず、棒状部材を固定部材に固定する固定具および固定構造、例えば、遮蔽用材料(隣接する道路、建物との隔離用)の組立現場で用いられるもの等に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 主桁
2 支柱
3 手摺
4、6、7 締結部材
5 固定具
21、22 帯状部
51 環状部
52 取付部
53 締付部
54 保持片