(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】弾性クローラ用芯金、及び弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B62D55/253 B
B62D55/253 D
(21)【出願番号】P 2017225846
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000239127
【氏名又は名称】福山ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】乗藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】石岡 卓也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 菜緒
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2008/149916(JP,A1)
【文献】特開2014-223912(JP,A)
【文献】特開2012-224161(JP,A)
【文献】特開平09-002346(JP,A)
【文献】実開平04-067585(JP,U)
【文献】特開2011-105091(JP,A)
【文献】特開2011-105090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラ本体にクローラ周方向に一定間隔で配置され、クローラ幅方向に延びる一対の翼部と、該一対の翼部を連結し、クローラ走行装置の駆動輪と係合する係合部とを具えた芯金本体、及びクローラを走行装置から外れないようにガイドするために係合部両脇の翼部内周面側から突出させた一対の着脱自在なガイド突起を有する弾性クローラ用芯金であり、
前記芯金本体は弾性クローラ内においてクローラ周方向で隣り合う前記芯金本体同士が、少なくとも一組の連結部によって連結され、
前記一組の連結部が、前記芯金本体同士の一方において、芯金本体からクローラ周方向に向けて突出するアーム部と、前記アーム部のクローラ周方向端部がクローラ幅方向に膨出した膨出部を有する第一連結部と、
前記芯金本体同士の他方において、前記第一連結部と対応する位置に、前記膨出部を収納する収納部、
クローラ内周面側に開き、前記一方の芯金本体の膨出部を前記収納部に対して挿入するときに嵌め込む開口である嵌込部、及び前記嵌込部に連続し、前記膨出部を収納部に収容した状態で前記一方の芯金本体のアーム部がクローラ内周面側と接地面側の間で揺動可能に開口された開放部を有する第二連結部で構成され、
装着された状態の前記ガイド突起
は前記開口である嵌込部の上に被さ
り、前記収容部内の前記膨出部が前記嵌込部から脱出不能になることを特徴とする弾性クローラ用芯金。
【請求項2】
クローラが接地面側に逆反りした場合に第一連結部と第二連結部の連結が外れることを防止する外れ防止突起が、前記着脱自在なガイド突起から前記嵌込部内に突出することを特徴とする、請求項1記載の弾性クローラ用芯金。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾性クローラ用芯金が、芯金本体同士の一方の第一連結部を他方の第二連結部に嵌め込む連結工程、その後に各々の芯金本体にガイド突起を取り付けるガイド突起取り付け工程によって組み立てられる弾性クローラ用芯金の組立方法。
【請求項4】
請求項3の組立方法によって組み立てられた請求項1または2に記載の弾性クローラ用芯金が、ゴム弾性体などにより形成される無端状帯体形状の弾性クローラ本体内に、クローラ周方向の一定間隔置きに埋設されていることを特徴とする弾性クローラ。
【請求項5】
前記膨出部外表面は凸曲面であり、前記収納部内表面は平面帯を挟んで凹曲面となっていることを特徴とする請求項1記載の弾性クローラ用芯金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラ用芯金及び弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性クローラの中には、芯金間の張力を保持するために、隣り合う芯金同士を芯金と一体に成形された連結部で連結させているものがある(例えば、特許文献1~3)。
特許文献1には、芯金に形成されたフック状の張力負担部同士が連結し、駆動輪等とクローラの間に土砂等が詰まってクローラ接地面方向に異常な応力が掛かった場合に連結が外れることを防止する外れ防止突起が形成された弾性クローラ用芯金が開示されている。
特許文献2には、芯金に形成されたピン状の係合軸部とフック状の係合部が連結して、隣り合う芯金同士を連結したゴムクローラが開示されている。
特許文献3には、翼部を上下に分割して翼部内に形成された開放部に、膨出部を具えた連結ピンが嵌まり込んで連結し、隣り合う芯金同士を連結した弾性クローラ用芯金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5592091号公報
【文献】特許第5701862号公報
【文献】特開2007-62555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のようなフック式の連結構造では、弾性クローラが岩石や縁石等へ乗り上げた際の接地面側からの異常な応力を受けた場合などに係合が外れる問題があり、特許文献2のようにフックとピンを連結させた構造ではフック部に大きな応力がかかるため、フック部を肉厚にしたり補強したりする必要があり、重量増加やコストアップの問題があった。
また、特許文献3のように翼部を上下に分割する構造では芯金同士の連結に手間が掛かり、また翼部の強度が著しく低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上述の問題に鑑み、芯金が連結することでクローラ周方向の張力を負担し、芯金同士の連結が外れ難く、連結が容易で、且つ軽量化及びコストダウンを実現した弾性クローラ用芯金、及び弾性クローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の実施形態に係る弾性クローラ用芯金は、弾性クローラ本体にクローラ周方向に一定間隔で配置され、クローラ幅方向に延びる一対の翼部と、該一対の翼部を連結し、クローラ走行装置の駆動輪と係合する係合部とを具えた芯金本体、及びクローラを走行装置から外れないようにガイドするために係合部両脇の翼部内周面側から突出させた一対の着脱自在なガイド突起を有する弾性クローラ用芯金であり、
前記芯金本体は弾性クローラ内においてクローラ周方向で隣り合う前記芯金本体同士が、少なくとも一組の連結部によって連結され、
前記一組の連結部が、前記芯金本体同士の一方において、芯金本体からクローラ周方向に向けて突出するアーム部と、前記アーム部のクローラ周方向端部がクローラ幅方向に膨出した膨出部を有する第一連結部と、
前記芯金本体同士の他方において、前記第一連結部と対応する位置に、前記膨出部を収納する収納部、クローラ内周面側に開き、前記一方の芯金本体の膨出部を前記収納部に対して挿入するときに嵌め込む開口である嵌込部、及び前記嵌込部に連続し、前記膨出部を収納部に収容した状態で前記一方の芯金本体のアーム部がクローラ内周面側と接地面側の間で揺動可能に開口された開放部を有する第二連結部で構成され、
装着された状態の前記ガイド突起は前記開口である嵌込部の上に被さり、前記収容部内の前記膨出部が前記嵌込部から脱出不能になることを特徴とする弾性クローラ用芯金である。
【0007】
上記弾性クローラ用芯金によれば、手間を掛けずに容易に連結でき、クローラ周方向の高い張力を芯金本体同士の連結により支えることができる。
【0008】
本発明の第二の実施形態に係る弾性クローラは、クローラが接地面側に逆反りした場合に第一連結部と第二連結部の連結が外れることを防止する外れ防止突起が、前記着脱自在なガイド突起からクローラ接地面側方向に突出することを特徴とする、第一の実施形態に係る弾性クローラ用芯金である。
【0009】
上記弾性クローラによれば、クローラが接地面側に逆反りした場合に、第二連結部の破損による第一連結部と第二連結部の連結外れを防止することができる。
【0010】
そして、本発明の第一または第二の実施形態に記載の弾性クローラ用芯金の組立方法は、芯金本体同士の一方の第一連結部を他方の第二連結部に嵌め込む連結工程、その後に各々の芯金本体にガイド突起を取り付けるガイド突起取り付け工程を有することを特徴とする。
【0011】
上記組立方法によれば、簡便に芯金本体同士を連結でき、且つクローラの接地面側への逆反りで連結が外れることを防止することができる。
【0012】
そして、本発明の弾性クローラは、上記組立方法によって組み立てられた第一または第二の実施形態に記載の弾性クローラ用芯金が、ゴム弾性体などにより形成される無端状帯体形状の弾性クローラ本体内に、クローラ周方向の一定間隔置きに埋設されていることを特徴とする弾性クローラである。
【0013】
上記弾性クローラによれば、芯金がクローラ周方向の張力を負担するため、張力によるスチールコード切断等のトラブルが無く、簡便に組み立てられ、軽量化、コストダウンを実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、芯金同士が連結することでクローラ周方向の張力を負担し、芯金同士の連結が外れ難く、連結が容易で、且つ軽量化及びコストダウンを実現した弾性クローラ用芯金、及び弾性クローラを提供することができる。
また、ガイド突起は転輪転動部に走行装置の重量が乗り芯金本体に押し付けられるものであり、このガイド突起が、開口である嵌込部からの膨出部の脱出を防止するので、収納部を塞ぐための部材を新たに設ける必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは本発明の第一実施形態に係る弾性クローラ用芯金本体と装着前のガイド突起の斜視図、
図1Bはクローラ内周面側から見た平面図、
図1Cはクローラ周方向から見た側面図、
図1Dはクローラ幅方向から見た側面図である。
【
図2】
図2Aは本発明の第一実施形態に係るガイド突起装着後の弾性クローラ用芯金の斜視図、
図2Bはクローラ内周面側から見た平面図である。
【
図3】
図3Aは本発明の第一実施形態に係る弾性クローラ用芯金本体の第一連結部の斜視図、
図3Bはクローラ内周面側から見た平面図、
図3Cはクローラ周方向から見た側面図、
図3Dはクローラ幅方向から見た側面図である。
【
図4】
図4Aは本発明の第一実施形態に係る弾性クローラ用芯金本体の第二連結部の斜視図、
図4Bはクローラ内周面側から見た平面図、
図4Cはクローラ周方向から見た側面図、
図4Dは
図4BのX-X断面をクローラ幅方向から見た側面図である。
【
図5】
図5は第一連結部をクローラ幅方向から見た側面拡大図である。
【
図6】
図6は第二連結部を
図4BのX-X断面をクローラ幅方向から見た側面拡大図である。
【
図7】
図7は第一連結部の膨出部と第二連結部の収納部が連結している状態を示すクローラ幅方向から見た模式図である。
【
図8】
図8は第一連結部の膨出部と第二連結部の収納部が連結し、クローラ接地面側に屈曲角が制限されている状態を示すクローラ幅方向から見た模式図である。
【
図9】
図9は第一連結部の膨出部と第二連結部の収納部が連結し、クローラ内周側に屈曲角が制限されている状態を示すクローラ幅方向から見た模式図である。
【
図10】
図10は第一連結部の膨出部が第二連結部の収納部から外れて第二連結部に異常な応力がかかることを示す、クローラ幅方向から見た説明図である。
【
図11】
図11は本発明の第二実施形態に係る外れ防止突起を示すクローラ幅方向から見た説明図である。
【
図12】
図12Aは本発明の第二実施形態に係る外れ防止突起がガイド突起からクローラ接地面方向に突出することを示すクローラ幅方向から見た側面図、
図12Bはクローラ周方向から見た側面図である。
【
図13】
図13は本発明の第三実施形態に係る弾性クローラ用芯金の組立方法の手順を示す説明図である。
【
図14】
図14は本発明の第三実施形態に係る弾性クローラ用芯金の組立方法における、芯金本体同士の一方の第一連結部を他方の第二連結部に嵌め込む連結工程によって連結された状態を示すクローラ内周面側から見た平面図である。
【
図15】
図15は本発明の第三実施形態に係る弾性クローラ用芯金の組立方法における、各々の芯金本体にガイド突起を取り付けるガイド突起取り付け工程を示すクローラ幅方向から見た側面図である。
【
図16】
図16は本発明の第三実施形態に係る弾性クローラ用芯金の組立方法における、各々の芯金本体にガイド突起を取り付けるガイド突起取り付け工程によって連結された状態を示すクローラ内周面側から見た平面図である。
【
図17】
図17Aは本発明の第4実施形態に係る、弾性クローラ用芯金がゴム弾性体などにより形成される無端状帯体形状の弾性クローラ本体内に、クローラ周方向の一定間隔置きに埋設されていることを示す、クローラ周方向から見たクローラ断面図、
図17Bはクローラ内周面側から見た平面図、
図17Cはクローラ幅方向から見た側面図である。
【
図18】
図18は本発明の弾性クローラ用芯金が埋設されたクローラが使用されるクローラ走行装置である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第一実施形態に係るガイド突起4装着前の弾性クローラ用芯金本体1、及び装着前のガイド突起4を示す。芯金本体1にはクローラ幅方向に延びる一対の翼部2と、該一対の翼部2を連結しクローラ走行装置Mの駆動輪S(
図18参照)と係合する係合部3、及び弾性クローラ内においてクローラ周方向で隣り合う芯金本体同士が連結するための第一連結部5、第二連結部6とで構成される一組の連結部を具える。第一連結部5はクローラ周方向の一方側(
図1Bにおいて紙面上方)に突出しており、第二連結部6はクローラ周方向の他方側(
図1Bにおいて紙面下方)に設けられる。
【0017】
図3は第一連結部5の形状を示す図で、翼部2からクローラ周方向の一方側に突出するアーム部5aと、アーム部5aのクローラ周方向側端部が少なくともクローラ幅方向一方側に膨出した膨出部5bを有する。
図3Dに示されるように、膨出部5bのクローラ幅方向から見た断面形状は、略半円形の凸曲面5cと略方形を組み合わせた略かまぼこ型に形成される。
図4は第二連結部6の形状を示す図である。第二連結部6は、嵌込部6a、収納部6b及び開放部6cを有している。収納部6bは芯金本体1内に設けられた空洞である。嵌込部6aは、クローラ内周面側に開いた収納部6bの開口である。また、開放部6cは、嵌込部6aから連続しクローラ周方向の他方側に開いた収納部6bの開口である。嵌込部6aは、芯金本体同士の連結作業時に、連結すべき他方の芯金の第一連結部5の膨出部5bを収納部6bに対して挿入するときに嵌め込む開口であって、膨出部5bを嵌め込めるように十分な大きさに開口している。
収納部6bは、膨出部5bを収容し、
図4BのX-X断面である
図4Dに示されるように、収納部6bのクローラ幅方向から見た断面形状は、膨出部5bの略半円形の形状部(以下、曲面部5c)を包む略半円形の凹曲面に内表面が形成されている。開放部6cは、クローラ内周側から接地面側(芯金本体1の厚さ方向)にかけた長さを持ち、膨出部5bのクローラ幅方向の幅よりも狭い幅の開口である。開放部6cからは、収納部6b内に収容された膨出部5bが脱出不可能であり、膨出部5bが収納部6bに入ったまま、アーム部5aが開放部6c内をクローラ内周側から接地面側の間で揺動可能である。収納部6bのクローラ接地面側は閉塞しており、アーム部5a及び膨出部5bのいずれもが脱出できない。このため、クローラ周方向の高い張力を芯金本体1同士の連結により支えることができる。
芯金本体1は、上型、下型からなる鋳型に溶湯を流し込んで作成される鋳物であるが、収納部6bとなる空洞は、上下型だけでは作ないため、中子を用いて形成する。上下型が分離され、芯金本体1を取り出す際に中子は崩れ落ちる。
【0018】
図5、
図6は第一連結部5と第二連結部6の詳細な形状を示した図で、
図5に示されるように膨出部5bの曲面部外表面の凸曲面半径をRと設定した場合、収納部6b内表面の凹曲面半径もRとするが、ここで収納部6b断面の仮想中心線CLを跨いで収納部6b最奥部に若干の平面帯eを形成している。これにより、
図7に示されるように、隣り合う芯金同士が水平状態に連結している場合においては膨出部5bの曲面部外表面は収納部6b内表面と線接触しており、
図8及び
図9に示されるように、屈曲した場合においては面接触することとなり、常に面接触をする場合のような回転時の摩擦が少なくなる。また膨出部5bの曲面部外表面と収納部6b内表面の間に若干の遊びが生じる為に、例えば異常な応力が働いた場合の連結部破損の危険性を低減することができる。
【0019】
また、
図6に示されるように収納部6b断面の仮想中心線CLを0度としてクローラ内周面側にθ1、クローラ接地面側にθ2と角度を設定した内壁面を収納部6b開放部末端近傍に形成している。これにより、
図8、
図9に示されるように、膨出部5bの略方形部が収納部6b開放部末端近傍のクローラ内周面側の内壁面S若しくは接地面側の内壁面Tに夫々当接し、収納部6bを水平に保った場合を0とした、膨出部5bの屈曲角がクローラ内周面側にθ2、クローラ接地面側にθ1として制限することができる。更に、膨出部5bの曲面部5cの外表面は収納部6b内表面と面接触することで強固に連結し、これにより収納部6bと膨出部5bの連結が自由に回転する場合と比べて、クローラ内周面側もしくは接地面側から異常な応力が働いた場合の芯金の連結外れの危険性を低減することができる。連結部の屈曲が生じるのは、通常は駆動輪Sと従動輪Aへの巻き掛け時のクローラ内周面側方向であるが、この場合は駆動輪S、従動輪Aの直径を勘案してθ2を15度から20度の範囲で任意に設定することができる。また、岩石や縁石への乗り上げ等によってクローラ接地面側方向に屈曲が生じることを想定して、θ1を任意に設定することができる。
図1に戻り、ガイド突起4は、転輪転動部4a、ガイド壁部4b及び挿入突起4cを有している。挿入突起4cは、芯金本体1側に設けられた挿入孔4dに着脱自在に挿入される。ガイド突起4が芯金本体1側に装着された際には、嵌込部6aの上にガイド突起4が被さる。被さるのは嵌込部6aの一部であり、嵌込部6aのクローラ内周側の空間上に離れたものではあるが、これにより、隣接する芯金本体1の膨出部5bが嵌込部6aから脱出不能になるため、芯金本体1同士の連結が外れることが抑制される。嵌込部6aの全部に被さり、かつ嵌込部6aを規定する周囲の縁にガイド突起4が当接するように被さっても良い。ガイド突起4は転輪転動部4aに走行装置Mの重量が乗り芯金本体1に押し付けられるものである。このガイド突起4が、膨出部5bの脱出を防止するので、収納部6bを塞ぐための部材を新たに設ける必要が無い。
【実施例2】
【0020】
図10は、芯金にクローラ接地側からクローラが縁石や岩石に乗り上げた場合などによる強い応力F1が働いた際に、膨出部5bが内周方向にずれたために第二連結部6にせん断力F2が働くことを示す説明図である。このようなせん断力F2が働くと、第二連結部6の収納部6bに亀裂が生じ、破損する問題が生じるかもしれない。この問題を防止するため、本発明の第二の実施形態に係る外れ防止突起7をガイド突起4に形成させたことを示したのが
図11である。
図12が、外れ防止突起7を形成させる位置の一例を示している。ガイド突起4からクローラ接地面側に向けて外れ防止突起7を形成させることによって、外れ防止突起7は嵌込部6aの中に入り込み、膨出部5bが第二連結部6の平面部分までずれることを防止し、せん断力F2による第二連結部6の破損を回避することができる。
第一実施形態及び第二実施形態のいずれにおいても、芯金本体1同士が強固に連結することが可能となるため、弾性クローラにおいて用いられているスチールコード等の抗張体を省略しても製品上十分な強度を保つができる。尚、強度をさらに高める為に、スチールコード等の抗張体を用いる場合には、抗張体が埋設される芯金厚さ方向の位置は、膨出部5bが収納部6bに収まってアーム部5aが揺動する揺動中心の位置に一致させておくのが良い。この位置からクローラ接地側にズレた芯金厚さ方向の位置では、抗張体が伸張により切断する恐れが増加する。
【実施例3】
【0021】
図13から
図16は、本発明の第三実施形態に係る、第一、または第二実施形態である弾性クローラ用芯金の組立方法を示すもので、
図13のように芯金本体同士の一方の第一連結部5を他方の第二連結部6に嵌め込む連結工程によって必要な数の芯金本体1を
図14のように連結させる。その後に
図15に示されるガイド突起取り付け工程によって挿入孔4dに挿入突起4cを挿入して、芯金本体1にガイド突起4を取り付けて
図16に示されるように、完成された芯金が連結することになる。このような方法を用いることで容易に芯金同士を連結することができ、またガイド突起4によって第二連結部6の嵌込部6aが塞がれるため、連結が外れることを防止できる。尚、挿入突起4c、及び挿入孔4dは、それぞれガイド突起側、芯金本体側に任意に形成することができる。
この場合、ガイド突起は芯金本体1に簡便に着脱が自在な構造であることが重要である。挿入方法が簡便であることは、組立時の作業性において重要であることが明らかであるが、引き抜き方法が簡便であることも、クローラの修理や解体時の作業性において重要である。着脱方法としては、器具による圧入・引き抜きの他、シアノアクリレート系やエポキシ系の合成樹脂系接着剤やハンダ等の金属系接着剤で挿入突起4cを挿入孔4d内に接着し、引き抜き時には熱処理によって接着を外す方法がある。また、挿入突起4cと挿入孔4dをねじ方式や鍵方式の構造にしても良い。
【実施例4】
【0022】
図17は、本発明の第4実施形態にかかる、第一、または第二実施形態である弾性クローラ用芯金が埋設された弾性クローラCを示すものである。この場合、ガイド突起4の取り付けは芯金本体1の弾性クローラ中への埋設、加硫後に行っても良いし、先に芯金本体1にガイド突起4を取り付けた後に埋設、加硫を行っても良い。
上記実施例において、膨出部5bは、アーム部5aのクローラ周方向端部がクローラ幅方向の両側に膨出した例を示したが、片方の一方側に膨出したもので有っても良い。また、ガイド突起4側に挿入突起4cを設けて芯金本体1側に挿入孔4dを設けたが、ガイド突起4側に挿入孔4dを設けて芯金本体1側に挿入突起4cを設けても良い。
【0023】
図18は、本発明の実施の形態に係る弾性クローラCを適用した走行装置Mを示す側面図である。この走行装置Mは、油圧モータ等によって駆動される駆動輪Sと、従動輪Aとを前後に離間して配置し、この駆動輪S及び従動輪Aの間に複数の転動輪を配置し、これら駆動輪S、従動輪A、及び転動輪に弾性クローラCを巻き掛けることによって構成されている。
【符号の説明】
【0024】
1 芯金本体
2 翼部
3 係合部
4 ガイド突起
4a 転輪転動部
4b ガイド壁部
4c 挿入突起
4d 挿入孔
5 第一連結部
5a アーム部
5b 膨出部
6 第二連結部
6a 嵌込部
6b 収納部
6c 開放部
7 外れ防止突起
M クローラ走行装置
S 駆動輪
A 従動輪
C 弾性クローラ