(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】液体内の微細気泡の存在を確認する装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2202 20180101AFI20220107BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20220107BHJP
G01N 23/2204 20180101ALI20220107BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01N23/2202
G01N23/2251
G01N23/2204
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2017234256
(22)【出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】318006228
【氏名又は名称】大平研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大平 猛
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056096(WO,A1)
【文献】特開平01-127292(JP,A)
【文献】特開平10-115624(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158806(WO,A1)
【文献】特開2016-095183(JP,A)
【文献】特開2001-338276(JP,A)
【文献】木村 利昭,走査電子顕微鏡法(4),日本調理科学会誌,2000年02月20日,33巻、1号,pp. 86-93,https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/33/1/33_86/_pdf/-char/ja,DOI https://doi.org/10.11402/cookeryscience1995.33.1_86
【文献】鈴木 重尚,走査型電子顕微鏡による氷の表面の観察,低温科学、物理篇,北海道大学低温科学研究所,1974年03月31日,Vol.32,pp. 1-12,https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/18241/1/32_p1-12.pdf
【文献】根井 外喜男,凍結技法,電子顕微鏡,1975年,10巻、2号,pp. 135-141,https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo1950/10/2/10_2_135/_pdf/-char/ja,DOI https://doi.org/10.11410/kenbikyo1950.10.135
【文献】川崎 他,急速凍結レプリカ電子顕微鏡法で観察したウルトラファインバブルの形状,日本混相流学会混相流シンポジウム2015講演論文集(CD-ROM),2015年08月04日,2015,E114,https://www.idec.com/home/img/finebubble/pdf/JSMF_2015_03.pdf
【文献】ナノバブルの安定化に関する形態学的アプローチ,科学研究費助成事業研究成果報告書,2015年06月09日,挑戦的萌芽研究、課題番号2560035
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 1/00-G01N 1/44
G01N 15/00-G01N 15/14
H01J 37/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
J-STAGE
KAKEN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡の試料室内に固定配置可能な検査台と、
該検査台に着脱自在に保持される基台と、前記
基台上に固定支持され予め極低温に冷却されて検査対象となる液体を冷凍した氷柱が入れられる容器と、前記
基台上に固定支持されて、カッターをロック位置から前記氷柱の頭部をカットして通過する位置まで高速移動可能なカッター機構と、前記
基台上に固定支持されて前記ロック位置に前記カッターを保持するロック機構と、前記検査台に設けられて前記ロック機構の解除を行うロック解除機構とを有し、
前記氷柱を、前記試料室内の前記容器に入れて真空状態として、前記カッター機構で前記氷柱の頭部をカットし、その頂部表面を前記顕微鏡で観察することを特徴とする液体内の微細気泡の存在を確認する装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体内の微細気泡の存在を確認する装置において、前記氷柱の頂部表面を昇華させて、高さが変化する該氷柱の頂部表面を前記顕微鏡で随時観察することを特徴とする液体内の微細気泡の存在を確認する装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体内の微細気泡の存在を確認する装置において、前記カッターが前記氷柱の頭部をカットして通過した後、前記カッター機構に設けられた貫通孔を通して前記氷柱の頂部表面を観察可能であることを特徴とする液体内の微細気泡の存在を確認する装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の液体内の微細気泡の存在を確認する装置において、前記容器の上面には、該容器の上面に沿って摺動可能に配置されたカッター保持ブロックと、該カッター保持ブロックの両側に配置され、前記カッター保持ブロックの摺動をガイドする一対のガイドブロックとが設けられたことを特徴とする液体内の微細気泡の存在を確認する装置。
【請求項5】
請求項4記載の液体内の微細気泡の存在を確認する装置において、前記ロック機構は、基部が前記ガイドブロックに回動可能に保持されたアーム部を有し、前記カッター保持ブロックの上面には、該カッター保持ブロックがロック位置にある時に、前記アーム部が係合するロック溝が形成され、前記各ガイドブロックの上面には、前記ロック溝の位置に合わせて切欠きが形成されており、前記アーム部が下方に回動されて前記ロック溝に係合されることにより、前記カッター保持ブロックがロック位置に保持されることを特徴とする液体内の微細気泡の存在を確認する装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体内の微細気泡(主にマイクロバブル)の存在を確認する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水、河川、池、湖沼、ダム等の水質浄化や排水処理、半導体、電子部品、風呂、洗濯物、頭皮等の各種洗浄、魚介類や甲殻類等の輸送や養殖、植物の水耕栽培、医療といった様々な分野で微細気泡(一般的に、発生時の気泡の直径が数マイクロメートル~約50マイクロメートル以下のマイクロバブル)が利用されている。そして、この微細気泡を発生させるため、各種の微細気泡発生装置(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が提案されている。このような微細気泡発生装置の使用に当たっては、液体内に微細気泡が存在しているか否かの確認や、液体内に含まれる微細気泡の大きさと量の確認を行うことが望ましく、装置販売時の品質保証や装置使用時の品質管理の面から、販売時(納入時)の初期検査や購入後の定期検査、使用前の動作確認検査が重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-176950号公報
【文献】特開2017-148717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には、微細気泡発生装置そのものの開発や改良に注力しており、微細気泡の存在を確認するための合理的、実用的な方法や装置は存在していない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、微細気泡発生装置の製造者や使用者(購入者)が、簡単かつ確実に液体内の微細気泡の存在を確認する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法は、検査対象となる液体を極低温媒体で急速冷凍して氷柱とする第1工程と、前記氷柱を顕微鏡の試料室内に入れて、該試料室を真空状態とする第2工程と、前記試料室内で、前記氷柱の頭部をカット(タッキング)して、前記氷柱の頂部表面を均一平面とする第3工程と、前記試料室内の前記氷柱の頂部表面を徐々に気化させながら、前記顕微鏡で前記氷柱の頂部表面を観察して微細気泡の有無を確認する第4工程とを有する。
【0006】
第1の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法において、前記極低温媒体は液体窒素であることが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法において、前記試料室内に、極低温に冷却した金属を配置し、前記氷柱の頂部表面から気化した水分を霜の状態で付着回収することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法において、前記顕微鏡は走査電子顕微鏡であることが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する装置は、顕微鏡の試料室内に固定配置可能な検査台と、該検査台に着脱自在に保持される基台と、前記基台上に固定支持され予め極低温に冷却されて検査対象となる液体を冷凍した氷柱が入れられる容器と、前記基台上に固定支持されて、カッターをロック位置から前記氷柱の頭部をカットして通過する位置まで高速移動可能なカッター機構と、前記基台上に固定支持されて前記ロック位置に前記カッターを保持するロック機構と、前記検査台に設けられて前記ロック機構の解除を行うロック解除機構とを有し、
前記氷柱を、前記試料室内の前記容器に入れて真空状態として、前記カッター機構で前記氷柱の頭部をカットし、その頂部表面を前記顕微鏡で観察する。
【0010】
【0011】
第2の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する装置において、前記カッター機構の駆動源として、スプリングが使用されていることが好ましい。
【0012】
第2の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する装置において、前記ロック解除機構にはカムと、該カムを駆動する減速モータが使用されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法は、第1工程において、検査対象となる液体を極低温媒体で急速冷凍して氷柱とするので、短時間で試料(氷柱)を作製することができ、実用性に優れる。第2工程において、氷柱を顕微鏡の試料室内に入れて、試料室を真空状態とすることにより、第4工程において、氷柱の頂部表面を徐々に気化(厳密には昇華)させ、高さが変化する氷柱の頂部表面を随時、顕微鏡で観察して液体内の微細気泡の有無を空洞として直接的に確認することができ、微細気泡の検出の確実性、信頼性に優れる。第3工程において、試料室内で、氷柱の頭部をカットして、氷柱の頂部表面を均一平面とすることにより、第4工程において、顕微鏡で氷柱の頂部表面全体を確実に観察することができ、微細気泡の検出漏れを防止できる。
【0014】
極低温媒体が液体窒素である場合、工業的に大量に製造することができ、廉価であり、短時間で液体を極低温まで急速冷凍することができるので、実用性に優れる。
【0015】
試料室内に、極低温に冷却した金属を配置し、氷柱の頂部表面から気化した水分を霜の状態で付着回収する場合、試料室内のその他の場所に水分(霜)が付着することを防止することができ、微細気泡の観察が妨げられることがなく、微細気泡の観察の効率性、確実性に優れる。
【0016】
顕微鏡が走査電子顕微鏡である場合、液体内の微細気泡を可視化して卓上で簡単かつ確実に微細気泡の有無を確認することができ、微細気泡発生装置の出荷前検査や出荷後の定期検査等に好適に用いることができる。
【0017】
第2の発明に係る液体内の微細気泡の存在を確認する装置は、顕微鏡の試料室内に固定配置可能な検査台と、検査台に設けられ予め極低温に冷却されて検査対象となる液体を冷凍した氷柱が入れられる容器を有するので、氷柱が頂部表面以外から急速に溶けることを防止して、真空状態で徐々に気化(昇華)する氷柱の頂部表面を観察して微細気泡の有無を確実に検出することができる。また、検査台に設けられて、カッターをロック位置から氷柱の頭部をカットして通過する位置まで高速移動可能なカッター機構を有するので、試料室内で、氷柱の頭部をカットして、氷柱の頂部表面を均一平面とすることができ、氷柱の頂部表面全体を確実に観察することができる。さらに、検査台に設けられてロック位置にカッターを保持するロック機構と、検査台に設けられてロック機構の解除を行うロック解除機構を有するので、試料室内でロック解除機構を駆動してロック機構を解除するだけで、カッター機構のカッターを高速移動させて氷柱の頭部をカットすることができ、操作性に優れる。
【0018】
容器と、カッター機構と、ロック機構が、基台上に固定支持され、基台が検査台に着脱自在に保持されるので、容器と、カッター機構と、ロック機構を一体に取り扱うことができ、検査台への着脱が容易で取り扱い性に優れる。また、基台上に固定支持された容器と、カッター機構と、ロック機構を検査台から取り外して、液体窒素等の極低温媒体で簡単に極低温に冷却することができ、ロック解除機構は検査台に取り付けたままで極低温に冷却されることがなく、動作不良の発生を防ぐことができ、動作の確実性、安定性に優れる。
【0019】
カッター機構の駆動源として、スプリングが使用されている場合、容器と共にカッター機構が予め極低温に冷却されていても、カッターをスプリングの力で高速移動させることができ、動作不良が発生することがなく、動作の確実性、安定性に優れる。
【0020】
ロック解除機構に、カムと、カムを駆動する減速モータが使用されている場合、減速モータによってカムを駆動する(回転させる)だけで、簡単かつ確実にロック機構を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)、(B)は本発明の一実施の形態に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法及び装置を示す概念図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る液体内の微細気泡の存在を確認する装置による氷柱の観察時の状態を示す平面図である。
【
図3】同装置のロック機構でカッター機構がロックされた状態を示す側面図である。
【
図4】同装置のロック機構でカッター機構がロックされた状態を示す側断面図である。
【
図5】同装置のロック機構でカッター機構がロックされた状態を示す背面図である。
【
図6】同装置のロック機構のストッパーが解除された状態を示す背面図である。
【
図7】同装置のロック機構によるカッター機構のロックが解除された状態を示す背面図である。
【
図8】同装置による氷柱の観察時の状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る液体内の微細気泡の存在を確認する方法及び装置は、検査対象となる液体を極低温媒体で冷凍した氷柱11の頂部表面11aを走査電子顕微鏡(顕微鏡の一例、以下、単に「顕微鏡」ともいう)で観察して、液体内の微細気泡(主にマイクロバブル)の存在を確認するものである。
図1(A)に示すように、顕微鏡の試料室70内に固定配置された検査台12に、予め極低温に冷却した容器15を設置し、氷柱11を収容する。試料室70内は真空ポンプ71により真空状態とする。そして、
図1(B)に示すように、カッター16により氷柱11の頭部をカットして、氷柱11の頂部表面11aを均一平面とし、頂部表面11aを徐々に気化させながら観察を行い、微細気泡の有無を確認する。なお、カッター16は容器15の上面に沿って高速移動することにより、氷柱11の頭部をカットできるものであればよく、その移動は直線移動でも回転移動でもよい。また、カッター16の駆動手段は適宜、選択することができ、例えばモータ等の動力(回転力)やスプリングの復元力等を用いて駆動することができる。
【0023】
次に、
図2~
図8により、本発明の一実施の形態に係る液体内の微細気泡の存在を確認する装置(以下、単に装置という)10の具体的な構成を説明する。なお、
図2~
図4、
図8において、右側を装置10の前面(前方)側とし、左側を装置10の背面(後方)側として説明する。
図2~
図8に示すように、装置10は、顕微鏡の試料室内に固定配置可能な円板状の検査台(例えばアルミニウム製)12を有している。
図4、
図8に示すように、検査台12には2つの位置決めピン13が上面から突出して設けられており、基台(例えばアルミニウム製)14がピン嵌合により検査台12上に着脱自在に保持されている。そして、基台14上には、検査対象となる液体を冷凍した氷柱11が入れられる容器(例えばステンレス製)15と、カッター16をロック位置17から氷柱11の頭部をカットして通過する位置まで高速移動可能なカッター機構18と、ロック位置17にカッター16を保持するロック機構19が固定支持されている。なお、符号20は容器15を検査台12に固定する固定ボルトである。これにより、基台14を介して、容器15と、カッター機構18と、ロック機構19を一体に取り扱うことができ、検査台12への着脱が容易となる。また、基台14上に固定支持された容器15と、カッター機構18と、ロック機構19を検査台12から取り外して、液体窒素等の極低温媒体で簡単に極低温に冷却することができる。
【0024】
以下、各部の詳細を説明する。
まず、
図2、
図4、
図8に示すように、容器15は円筒状に形成された氷柱収容部21を有しており、氷柱収容部21の上端側外周には座ぐり状の空間部21aが形成されている。これにより、容器15全体は極低温に冷却して氷柱11全体の急速な気化を防ぎつつ、氷柱11の頂部表面側は気化し易くして、観察時間の短縮を図ることができる。なお、空間部21aの外径や深さは、適宜、選択することができる。そして、カッター機構18は、容器15の上面に、装置10の前後方向と平行に摺動可能に配置されたカッター保持ブロック22を有している。カッター保持ブロック22の底部にはカッター16が取り付けられており、カッター16の刃先23がカッター保持ブロック22の先端から前方に突出している。また、
図2~
図8に示すように、容器15の上面のカッター保持ブロック22の両側には、装置10の前後方向と平行に配置され、カッター保持ブロック22の摺動をガイドする一対のガイドブロック25、26が設けられている。ガイドブロック25、26には、
図3~
図8に示すように、それぞれ長手方向に沿ってガイド溝27、28が形成されており、カッター保持ブロック22の両外側に突出して設けられた前後2箇所のガイドピン29、30が遊嵌されている。さらに、基台14の上面前方側には、
図2~
図4、
図8に示すように、カッター機構18の一部である固定ブロック31が固定支持されており、ガイドピン29と対となる固定ピン32が、固定ブロック31の両外側に突出して設けられている。そして、
図2、
図3、
図5~
図7に示すように、ガイドピン29の両端と固定ピン32の両端が、それぞれカッター機構18の駆動源となるスプリング(引張コイルバネ)33で連結されている。よって、
図3~
図6に示すように、カッター保持ブロック22がロック位置17にあってロック機構19でロックされている時はスプリング33が伸長しており、
図2、
図7、
図8に示すように、ロック機構19が解除された時はスプリング33が収縮してカッター保持ブロック22を前方に高速移動させることができる。ロック機構19が解除され、カッター保持ブロック22が前方に高速移動することにより、氷柱収容部21に頭部が突出して収容された氷柱11の頭部をカッター16でカットし、氷柱11の頂部表面11aを均一平面とすることができる。なお、
図2、
図8に示すように、カッター16及びカッター保持ブロック22には、カッター16が氷柱11の頭部をカットして通過した後、一部が氷柱収容部21と重なる位置に長孔状の貫通孔34、35がそれぞれ形成されているので、氷柱収容部21に収容された氷柱11の頂部表面11aを貫通孔34、35を通して観察することができる。また、
図2、
図3、
図4、
図8に示すように、容器15の前方側から固定ブロック31までの隙間(空間)を覆うように飛散防止カバー36が取り付けられているので、カッター16によってカットされた氷柱11の頭部が周囲に飛散することを防止することができる。なお、固定ブロック31の上面には2つのカバー固定ピン37が突出して設けられており、飛散防止カバー36をピン嵌合により簡単に位置決めして保持することができ、着脱も容易に行うことができる。
【0025】
次に、
図2~
図8に示すように、ロック機構19は、基部の回動軸38がガイドブロック25に回動可能に保持されたアーム部39を有している。そして、
図2、
図4~
図8に示すように、カッター保持ブロック22の上面には、カッター保持ブロック22(カッター16)がロック位置にある時に、アーム部39が係合するロック溝40が形成されている。また、
図2、
図4、
図8に示すように、ガイドブロック25、26の上面には、ロック溝40の位置に合わせて切欠き41、42が形成されている。
図3~
図6に示すように、アーム部39を下方に回動させてロック溝40に係合させることにより、スプリング33の引張力に抗して、カッター保持ブロック22(カッター16)をロック位置に保持することができる。なお、ロック機構19のロックが不意に外れないように、ロック機構19には、
図2、
図3、
図5~
図7に示すように、ストッパー43を設けることが望ましい。ストッパー43は、アーム部39に取り付けられたスライド部材44と、ガイドブロック26の上面に取り付けられた係止部材45からなっている。スライド部材44は、アーム部39の先側上面に配置されたスライド片46と、スライド片46の先部から下方に屈曲して設けられた操作片47を有するL字状に形成されている。また、スライド片46には、
図2に示すように、アーム部39の長手方向と平行な長孔48が形成されている。なお、
図2、
図5、
図6に示すように、アーム部39の先側のスライド片46を支持する部分は基側より高さが低くなるように段差49が設けられており、
図5、
図6に示すロック状態では、段差49の上面と係止部材45との間に隙間が形成されている。そして、ストッパー取付け螺子50が長孔48を貫通してアーム部39に螺着されることにより、スライド部材44がアーム部39の段差49上を長手方向に沿って摺動可能に保持される。また、係止部材45は、
図2、
図3、
図5~
図7に示すように、切欠き42側に突出する係止突起51を有している。よって、
図5に示すように、操作片47を操作してスライド部材44をガイドブロック26に近付けるようにスライドさせた状態では、スライド片46の端部が段差49の上面と係止部材45との隙間に差し込まれた状態で係止突起51に係止され、ストッパー43が機能してアーム部39が上方に回動することを防止できる。なお、アーム部39には係止突起51と重なる位置に係止突起51よりも幅広の切欠き溝52が形成されているので、アーム部39を回動させる際に、係止突起51と干渉することはない。
【0026】
次に、検査台12には、
図2、
図3、
図5~
図7に示すように、ロック機構19の解除を行うロック解除機構53が設けられている。このロック解除機構53の駆動には減速モータ55を使用しており、常温で使用することが望ましい。よって、ロック解除機構53は、
図3に示すように、固定ボルト56によって直接、検査台12に固定し、検査台12と共に、顕微鏡の試料室内に固定配置可能とした。これにより、先に説明したように、基台14上に固定支持された容器15と、カッター機構18と、ロック機構19を検査台12から取り外して、液体窒素等の極低温媒体で極低温に冷却する際に、ロック解除機構53は検査台12に取り付けたままとして冷却されることがなく、動作不良の発生を防ぐことができる。ロック解除機構53は、減速モータ55の回転軸57に取り付けられた略長円形状のストッパー解除用カム58と、円形に形成され回転軸57に偏心して取り付けられたロック解除用のカム59を有している。
図3~
図5に示したロック状態から回転軸57が右回りに90度回転すると、
図5の状態からストッパー解除用カム58が操作片47を側方(右方向)に押圧し、スライド部材44が右方向にスライドすることにより、
図6に示すように、スライド片46が係止部材45の係止突起51から外れ、ストッパー43が解除された状態となる。この時点では、アーム部39はロック溝40に係止されており、ロックは解除されていない。この状態からさらに回転軸57が右回りに90度回転すると、
図7に示すように、カム59によってアーム部39が上方に押し上げられ、ロック溝40から外れて、ロック機構19のロックが解除された状態となる。これにより、
図3に示したように、ロック状態で伸長していたスプリング33が、
図2に示したように収縮し、カッター保持ブロック22が装置10の前方側に高速移動して、
図2、
図8に示した状態となる。このとき、カッター16によって、氷柱11の頭部がカットされ、氷柱11の頂部表面11aが観察可能となる。
【0027】
次に、検査台12上の空きスペースにはブロック状の金属(例えばステンレス)60が載置されている。このとき、
図5~
図7に示すように、検査台12上に突出する金属固定ピン61を設け、金属60の底面に嵌合孔(図示せず)を設けておけば、金属60を検査台12上に簡単に着脱自在に配置することができる。この金属60は容器15と同様に、極低温に冷却された状態で検査台12と共に試料室内に設置されることにより、顕微鏡で氷柱11の頂部表面11aを観察する際に、氷柱11の頂部表面11aから気化した水分を霜の状態で付着回収することができる。その結果、試料室内のその他の場所に水分(霜)が付着することを防止して、微細気泡の観察が妨げられることがない。
なお、金属60の形状や大きさ(表面積)は、適宜、選択することができる。特に、
図2に示すように、金属60の上面に嵌合ピン62を設けておけば、同様に形成した複数のブロック状の金属を適宜、積み重ねて水分の回収量を調整することができる。
【0028】
次に、装置10を用いて液体内の微細気泡の存在を確認する方法について説明する。
まず、ロック解除機構53が取り付けられた検査台12を顕微鏡の一例である走査電子顕微鏡の試料室内に固定配置しておく。このとき、検査台12上には、必要に応じて極低温に冷却された金属60を設置する。
基台14上に固定支持された容器15と、カッター機構18と、ロック機構19は検査台12から取り外し、極低温媒体の一例である液体窒素で極低温に冷却する。このとき、カッター機構18はロック機構19でロックされ、ストッパー43も機能した状態となっている(
図3、
図4参照)。
また、検査対象となる液体(例えば、微細気泡発生装置で微細気泡を発生させた水)をシリンダ(例えば、内径4mm程度)に吸入し、極低温媒体の一例である液体窒素で急速冷凍して氷柱11とする(第1工程)。
【0029】
次に、基台14上に固定支持された容器15と、カッター機構18と、ロック機構19を極低温に冷却された状態で、試料室内の検査台12上に設置する。
また、シリンダを液体窒素から取り外し、シリンダ内の氷柱11をピストンで押し出して、容器15の氷柱収容部21に収容し、飛散防止カバー36を取付ける。このとき、
図4に示すように、氷柱11の高さは氷柱収容部21の高さよりも高く、氷柱11の頭部が容器15の上面よりも上方に突出している。この状態で試料室を真空状態とする(第2工程)。
【0030】
次に、先に説明したように、試料室内でロック解除機構53を駆動し、ロック機構19によるカッター機構18のロックを解除してカッター16を高速移動させ、氷柱11の頭部をカットして氷柱11の頂部表面11aを均一平面とし(第3工程)、
図2、
図8に示した状態となる。
試料室内の氷柱11の周囲が容器15によって冷やされており、氷柱11の頂部表面11aが徐々に気化(昇華)するので、高さが変化する氷柱11の頂部表面11aを走査電子顕微鏡で随時観察して微細気泡の有無を空洞として確認することができる(第4工程)。なお、氷柱11の頂部表面観察の状況は動画で撮影して記録することができ、後から再生して詳細に確認することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、上記の実施の形態では、カッター機構18において、ロック状態で駆動源となるスプリング33を伸長させ、ロック解除時にスプリング33を収縮させてカッター16を高速移動させたが、ロック状態でスプリング(圧縮コイルバネ)を収縮させておき、ロック解除時にスプリングを伸長させる構造としてもよい。また、ロック解除機構の駆動源として、減速モータ55の代わりにソレノイド等を用いてもよい。
なお、極低温媒体として、液体窒素の他に、例えば液体ヘリウム、液体エタン、液体プロパン等も使用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10:装置、11:氷柱、11a:頂部表面、12:検査台、13:位置決めピン、14:基台、15:容器、16:カッター、17:ロック位置、18:カッター機構、19:ロック機構、20:固定ボルト、21:氷柱収容部、21a:空間部、22:カッター保持ブロック、23:刃先、25、26:ガイドブロック、27、28:ガイド溝、29、30:ガイドピン、31:固定ブロック、32:固定ピン、33:スプリング、34、35:貫通孔、36:飛散防止カバー、37:カバー固定ピン、38:回動軸、39:アーム部、40:ロック溝、41、42:切欠き、43:ストッパー、44:スライド部材、45:係止部材、46:スライド片、47:操作片、48:長孔、49:段差、50:ストッパー取付け螺子、51:係止突起、52:切欠き溝、53:ロック解除機構、55:減速モータ、56:固定ボルト、57:回転軸、58:ストッパー解除用カム、59:カム、60:金属、61:金属固定ピン、62:嵌合ピン、70試料室、71:真空ポンプ