(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ω3およびω6不飽和脂肪酸酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/62 20220101AFI20220127BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20220127BHJP
A61K 31/231 20060101ALI20220127BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20220127BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220127BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220127BHJP
C07C 67/00 20060101ALI20220127BHJP
C07C 57/03 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C12P7/62
A23L33/12
A61K31/231
A61K31/232
A61P3/04
A61P3/10
C07C67/00
C07C57/03
(21)【出願番号】P 2018525065
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2017022524
(87)【国際公開番号】W WO2018003569
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2016129796
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391007356
【氏名又は名称】備前化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 志保
(72)【発明者】
【氏名】三澤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直道
(72)【発明者】
【氏名】田畑 宏
(72)【発明者】
【氏名】対馬 忠広
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111699(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/063617(WO,A2)
【文献】特開平07-291862(JP,A)
【文献】Chem Rev., 2011, Vol.111, No.10, p.5922-5943
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/62
A23L 33/12
A61K 31/231
A61K 31/232
A61P 3/04
A61P 3/10
C07C 67/00
C07C 57/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の修飾物または二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物の製造方法であって、以下:
(a)二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸または二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルを提供する工程
であって、ここで、該二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸は、ヘキサデカトリエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、リノール酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、テトラコサペンタエン酸、および、テトラコサヘキサエン酸からなる群から選択される、工程;
(b)リポキシゲナーゼ含有組成物と、該不飽和脂肪酸または該不飽和脂肪酸のエチルエステルとを含む混合物を提供する工程;
(c)該混合物をインキュベートして、
15分間~6時間、酵素反応を行う工程;
(d)該酵素反応で生成した混合物を還元する工程;
(e)該還元した混合物に
対して3分の1の容量~100%の容量の有機溶媒を添加する工程
であって、ここで、該有機溶媒は、DHAエチルエステル、n-ヘキサン、酢酸エチル、ペンタン、へプタン、ジエチルエーテル、および、ジイソプロピルエーテルからなる群から選択される、工程;
(f)該有機溶媒添加後の混合物を凍結する工程;および、
(g)該凍結後の混合物の上層を回収する工程;
を包含
し、ここで、該修飾物が、11-ヒドロキシヘキサデカトリエン酸、11-ヒドロキシヘキサデカテトラエン酸、13-ヒドロキシリノール酸、13-ヒドロキシ-α-リノレン酸、13-ヒドロキシステアリドン酸、13-ヒドロキシ-γ-リノレン酸、15-ヒドロキシジホモ-γ-リノレン酸、15-ヒドロキシエイコサテトラエン酸、15-ヒドロキシアラキドン酸、15-ヒドロキシEPA、17-ヒドロキシドコサジエン酸、17-ヒドロキシドコサトリエン酸、17-ヒドロキシドコサテトラエン酸、17-ヒドロキシDPA、17-ヒドロキシDHA、19‐ヒドロキシテトラコサペンタエン酸、および、19-ヒドロキシテトラコサヘキサエン酸からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記リポキシゲナーゼ含有組成物がリポギシゲナーゼ活性を示す豆粉またはリポギシゲナーゼ活性を示す豆浸漬液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下:
(h)工程(g)で上層を回収した後の混合物を
融解する工程;
(i)工程(h)で
融解した混合物に
対して3分の1の容量~100%の容量の有機溶媒を添加する工程
であって、ここで、該有機溶媒は、DHAエチルエステル、n-ヘキサン、酢酸エチル、ペンタン、へプタン、ジエチルエーテル、および、ジイソプロピルエーテルからなる群から選択される、工程;
(j)該有機溶媒添加後の混合物を凍結する工程;および、
(k)該凍結後の混合物の上層を回収する工程;
を包含する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、さらに以下:
(l)工程(k)で上層を回収した後の混合物を
融解する工程;
(m)工程(l)で
融解した混合物に
対して3分の1の容量~100%の容量の有機溶媒を添加する工程
であって、ここで、該有機溶媒は、DHAエチルエステル、n-ヘキサン、酢酸エチル、ペンタン、へプタン、ジエチルエーテル、および、ジイソプロピルエーテルからなる群から選択される、工程;
(n)該有機溶媒添加後の混合物を凍結する工程;および、
(o)該凍結後の混合物の上層を回収する工程;
を包含する、方法。
【請求項5】
前記
不飽和脂肪酸がDHA、EPA、および、DPAからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記
不飽和脂肪酸がDHAである、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記リポキシゲナーゼ含有組成物が大豆粉である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記不飽和脂肪酸の修飾物または不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物が、1
7-HDHAまたは1
7-HDHAエチルエステルである、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、工程(c)の酵素反応が1時間~6時間行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ω3およびω6不飽和脂肪酸酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EPA、DHA、DPAなどに代表されるω3脂肪酸などの二重結合の数が2個以上含まれる不飽和脂肪酸は体内で脂肪酸中間代謝物に変換し、いろいろな生理機能に関与する。筋肉と脂肪組織でDHA酸化代謝物のProtectin D1の低下は肥満性慢性炎症と関係することと、DHA合成できる遺伝子組み換えマウスは肥満によるインスリン抵抗性を抑制できることが発表されている(非特許文献1)。更に、DHAの酸化代謝物のProtectin DXが肝臓グルコース合成の抑制作用と糖代謝の促進作用を有することも発表されている(非特許文献2)。
【0003】
肥満マウスを用いた実験では、17S-HDHAが炎症性サイトカインの発現を抑制し糖耐性とインスリン抵抗性を改善すると報告されている(非特許文献3)
有用な効果が期待される17S-HDHAは、自然界の魚類、甲殻類、藻類および軟体動物など長鎖ω3多価不飽和脂肪酸を含む生物中に存在していることが確認されている。しかし、自然界における17S-HDHAなどのω3脂肪酸酸化物は含有量が少なく、天然より単離することは費用および労力の点において実用的ではない。
【0004】
リポキシゲナーゼのような酵素を用いてω3脂肪酸酸化物を生成することも可能である(特許文献1)。しかしながら、酵素自体が高価であること、および、酵素反応の効率が十分でないという問題がある。また、酵素反応後の反応混合物から目的物質を単離・精製する方法は、いまだ十分に効率的とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】White et al、Transgenic Restoration of Long-Chain n-3 Fatty Acids in Insulin Target Tissues Improves Resolution Capacity and Alleviates Obesity-Linked Inflammation and Insulin Resistance in High-Fat-Fed Mice、Diabetes、2010 Dec;59(12):3066-3073
【文献】White et al、Protectin DX alleviates insulin resistance by activating a myokine-liver glucoregulatory axis、Nat.Med.2014 Jun;20(6):664-669
【文献】Neuhofer A et al. Impaired Local Production of Proresolving Lipid Mediators in Obesity and 17-HDHA as a Potential Treatment for Obesity-Associated Inflammation. Diabetes 62:1945-1956, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酵素(例えば、リポキシゲナーゼ)を用いて二重結合の数が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の酸化物(例えば、ω3脂肪酸酸化物)を生成し、その後単離・精製する製造方法において、酵素反応条件、ならびに、酵素反応混合物から目的物質を単離・精製する方法を改善することが、本発明の解決課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、リポキシゲナーゼ酵素として、酵素製品ではなく、リポキシゲナーゼ含有組成物(例えば、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物)を用いることによって、二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の酸化物(例えば、ω3脂肪酸酸化物)を生成するリポキシゲナーゼ酵素反応を、効率的かつ経済的に実施できることを可能とした。豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物としては、例えば、豆(例えば、大豆)より調製した豆粉および豆浸漬液が挙げられるがこれらに限定されない。さらに発明者らは、酵素反応後の反応液(混合液)から生成物を単離・精製する際に、遠心法ではなく凍結法を用いることによって、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物の使用に付随する問題を解決し、上記課題を解決した。
【0009】
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の修飾物または二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物の製造方法であって、以下:
(a)二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸または二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルを提供する工程;
(b)リポキシゲナーゼ含有組成物と、該不飽和脂肪酸または該不飽和脂肪酸のエチルエステルとを含む混合物を提供する工程;
(c)該混合物をインキュベートして、酵素反応を行う工程;
(d)該酵素反応で生成した混合物を還元する工程;
(e)該還元した混合物に有機溶媒を添加する工程;
(f)該有機溶媒添加後の混合物を凍結する工程;および、
(g)該凍結後の混合物の上層を回収する工程;
を包含する、方法。
(項目2)
前記リポキシゲナーゼ含有組成物がリポギシゲナーゼ活性を示す豆粉またはリポギシゲナーゼ活性を示す豆浸漬液である、項目1に記載の方法。
(項目3)
項目1に記載の方法であって、さらに以下:
(h)工程(g)で上層を回収した後の混合物を溶解する工程;
(i)工程(h)で溶解した混合物に有機溶媒を添加する工程;
(j)該有機溶媒添加後の混合物を凍結する工程;および、
(k)該凍結後の混合物の上層を回収する工程;
を包含する、方法。
(項目4)
項目3に記載の方法であって、さらに以下:
(l)工程(k)で上層を回収した後の混合物を溶解する工程;
(m)工程(l)で溶解した混合物に有機溶媒を添加する工程;
(n)該有機溶媒添加後の混合物を凍結する工程;および、
(o)該凍結後の混合物の上層を回収する工程;
を包含する、方法。
(項目5)
前記不飽和脂肪酸がオメガ3系脂肪酸である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記オメガ3系脂肪酸がDHA、EPA、および、DPAからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記オメガ3系脂肪酸がDHAである、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記リポキシゲナーゼ含有組成物が大豆粉である、項目1に記載の方法。
(項目9)
項目1に記載の方法であって、前記不飽和脂肪酸の修飾物または不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物が、17S-HDHAまたは17S-HDHAエチルエステルである、方法。
(項目10)
項目1に記載の方法で製造された前記不飽和脂肪酸の修飾物または不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物を含む、飲食用組成物。
(項目11)
項目1に記載の方法で製造された前記不飽和脂肪酸の修飾物または不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物を含む、薬学的組成物。
【0010】
本発明は、不飽和脂肪酸酸化物(例えば、ω3脂肪酸酸化物)を製造する方法を提供する。不飽和脂肪酸酸化物としては、例えば、不飽和脂肪酸の酸化代謝物が挙げられるがこれに限定されない。例えば、本発明は、EPAの酸化物、DPAの酸化物およびDHAの酸化物からなる群から選択される物質を製造する方法を提供する。たとえば、この酸化物が、17-HDHA、PDX、17-HDPA、および、13-HSDAからなる群から選択される。EPA、DPAおよびDHAは、独立して、遊離脂肪酸型、アルコール型、エステル型、他の生理活性物質との複合体、各種グリセリド型(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、アルキルグリセリルエーテル脂質、アルケニルグリセリルエーテル脂質)、各種リン脂質型(例えば、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質)、各種アミン塩類(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン塩、ベネタミン塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等のヘテロサイクル芳香族アミン塩)、各種アンモニウム塩類(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩)および、各種金属塩類(例えば、リチウム、ナトリウム,カリウム,セシウム、ルビジウム、カルシウム,マグネシウム,アルミニウム,スズ,亜鉛,鉛,コバルト,ニッケルの塩)からなる群から選択される。さらに、エステル型におけるアルコール部分がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびその異性体、ペンタノールおよびその異性体、ヘキサノールおよびその異性体、ヘプタノールおよびその異性体、オクタノールおよびその異性体、より分子量の大きなアルコール(例えば、オレイルアルコール)およびその異性体、ならびに、不飽和結合を含むアルコールおよびそれらの異性体からなる群から選択される。
【0011】
本発明の二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の酸化物(例えば、ω3脂肪酸酸化物)を含む組成物はまた、インスリン抵抗性の改善(治療および予防)、インスリン感受性の増強、糖尿病の予防および治療、糖代謝改善、低密度リポ蛋白低減、コレステロール低減、肥満の低減、高トリグリセリド血症の予防および治療、アテローム性動脈疾患の予防および治療などにおいて優れた効果を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、新規かつ従来技術と比較して優れた利点を有する、二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の酸化物(例えば、ω3脂肪酸酸化物)を製造する方法を提供する。本発明では、効率的かつ安価にω3脂肪酸酸化物を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。また、本明細書において「wt%」は、「質量パーセント濃度」と互換可能に使用される。「%」は、特に明記されない場合、「wt%」または「w/w%」または「質量パーセント濃度」を意味する。
【0014】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0015】
本明細書において使用される用語「二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸」とは、二重結合が2個以上含まれる任意の不飽和脂肪酸をいう。好ましくは、ω3位および他の位置に二重結合を含み、より好ましくは、ω3位およびω6位に二重結合を含む脂肪酸である。本発明の不飽和脂肪酸の酸化物は、好ましくは、特定の位置に水酸基が1個以上結合した脂肪酸である。二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸としては、代表的には、ヘキサデカトリエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、テトラコサペンタエン酸、および、テトラコサヘキサエン酸のそれぞれについて、n-3系及びn-6系を含む全ての脂肪酸をいうがこれらに限定されない。また、二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の酸化物(修飾物)としては、例えば、15-ヒドロキシエイコサテトラエン酸、19-ヒドロキシテトラコサペンタエン酸、19-ヒドロキシテトラコサヘキサエン酸、11-ヒドロキシヘキサデカトリエン酸、11-ヒドロキシヘキサデカテトラエン酸、13-ヒドロキシリノール酸、13-ヒドロキシ-α-リノレン酸、13-ヒドロキシγ-リノレン酸、13-ヒドロキシステアリドン酸、15-ヒドロキシジホモ-γ-リノレン酸、15-ヒドロキシエイコサテトラエン酸、15-ヒドロキシEPA、17-ヒドロキシドコサジエン酸、17-ヒドロキシドコサトリエン酸、17-ヒドロキシドコサテトラエン酸、17-ヒドロキシDPA、17-ヒドロキシDHA、19‐ヒドロキシテトラコサペンタエン酸、および、19-ヒドロキシテトラコサヘキサエン酸、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
本明細書において使用される用語「ω3脂肪酸」とは、メチル末端から3番目の炭素(ω3位)から二重結合が存在する不飽和脂肪酸をいい、代表的には、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、テトラコサペンタエン酸、および、テトラコサヘキサエン酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0017】
本明細書において使用される用語「ω3脂肪酸の修飾物」とは、ω3脂肪酸を修飾した物質であり、ω3脂肪酸の酸化物(例えば、酸化代謝物)を包含し、代表的には、13-ヒドロキシ-α-リノレン酸、13-ヒドロキシステアリドン酸、15-ヒドロキシエイコサテトラエン酸、15-ヒドロキシEPA、17-ヒドロキシDPAn-3、17-ヒドロキシDHA、19-ヒドロキシテトラコサペンタエン酸、および、19-ヒドロキシテトラコサヘキサエン酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0018】
本明細書において使用される用語「グリセリド」とは脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリド、及びモノグリセリドからなる群から選択される成分を含む。本発明において、そうでないと規定しない限り、「グリセリド」は、リン脂質や糖脂質を含まない。
【0019】
本明細書において使用される用語「ドコサヘキサエン酸」とは、「DHA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリン、リン脂質にエステル結合した形態のいずれも包含する。
【0020】
本明細書において使用される用語「17-HDHA」とは、DHAの酸化物であり、17位が酸化され「-OH」が結合したDHAをいう。用語「17-HDHA」は、用語「17-ヒドロキシDHA」および用語「17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸」と互換可能に使用される。
【0021】
本明細書において使用される用語「エイコサペンタエン酸」とは、「EPA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリン、リン脂質にエステル結合した形態とのいずれも包含する。
【0022】
本明細書において使用される用語「ドコサペンタエン酸」とは、「DPA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリンにエステル結合した形態のいずれも包含する。また、「n-3」あるいは「n-6」のいずれかであると特定しない「DPA」は、「n-3 DPA」(すなわち、all-cis-7,10,13,16,19-ドコサペンタエン酸である)を意味する。「n-3 DPA」は「ω-3 DPA」と互換可能に使用される。
【0023】
本明細書において使用される用語「17-HDPA」とは、DPAの酸化物であり、17位が酸化され「-OH」が結合したDPAをいう。
【0024】
本明細書において使用される用語「n-6 DPA」は「all-cis-4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸」または「ω6 DPA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリンにエステル結合した形態のいずれも包含する。
【0025】
本明細書において使用される用語「ステアリドン酸」とは、「SDA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリンにエステル結合した形態のいずれも包含する。
【0026】
本明細書において使用される用語「α-リノレン酸」とは、「ALA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリンにエステル結合した形態のいずれも包含する。
【0027】
本明細書において使用される用語「エイコサテトラエン酸」とは、「ETA」と互換可能に使用され、そして、遊離脂肪酸の形態と、エタノール、グリセリンにエステル結合した形態のいずれも包含する。
【0028】
本明細書において使用される用語「リポキシゲナーゼ」とは、不飽和脂肪酸に分子状酸素を添加し、ヒドロペルオキシ基を導入する酸化還元酵素をいう。用語「リポキシゲナーゼ」は「リポキシダーゼ」と互換可能に使用される。リポキシゲナーゼは、植物に広く含まれている。リポキシゲナーゼの供給源としては、例えば、豆(例えば、大豆、インゲン豆、トラ豆、ウズラ豆、および、グリーンピースからなる群から選択される豆)、トマト、キャベツ、シロイヌナズナが挙げられるがこれらに限定されない。本発明においてリポキシゲナーゼによる酸化反応を行うために、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物を使用することができる。
本明細書において使用される用語「リポキシゲナーゼ含有組成物」とは、リポキシゲナーゼを含有する植物材料(植物全体または植物の一部)から調製した組成物(液体または固体)であって、原料となる植物材料が含有していたリポキシゲナーゼ、および、原料となる植物材料が含有していた少なくとも1つのリポキシゲナーゼ以外の成分を含有する組成物をいう。「豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物」とは、豆から調製した組成物(液体または固体)であって、原料となる豆が含有していたリポキシゲナーゼ、および、原料となる豆が含有していた少なくとも1つのリポキシゲナーゼ以外の成分を含有する組成物をいう。原料となる植物材料(例えば、豆)が含有していた少なくとも1つのリポキシゲナーゼ以外の成分の、組成物における含有量としては、例えば、1%(w/w)以上、2%(w/w)以上、3%(w/w)以上、4%(w/w)以上、5%(w/w)以上、6%(w/w)以上、7%(w/w)以上、8%(w/w)以上、9%(w/w)以上、10%(w/w)以上、12%(w/w)以上、14%(w/w)以上、16%(w/w)以上、18%(w/w)以上、または、20%(w/w)以上が挙げられるがこれらに限定されない。植物材料(例えば、豆)から調製した組成物は、液体であっても、固体であっても、液体と固体の両者を含んでいてもよい。豆から調製した組成物としては、例えば、豆粉および豆浸漬液、ならびにこれらを含む任意の組成物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
本明細書において使用される用語「豆粉」とは、豆を粉砕することによって得られる粉をいう。豆としては、例えば、大豆、インゲン豆、トラ豆、ウズラ豆、および、グリーンピースからなる群から選択される豆が挙げられるがこれらに限定されない。粉砕の条件は特に限定されず、また、粉砕された豆の粒径もまた特に限定されない。例えば、2000μm以上の粒子径をもつ豆粉砕物から600μm~2000μm、150μm~600μm、もしくは150μm以下の粉砕物いずれも使用可能である。本発明において、豆粉は、好ましくは大豆粉である。
本明細書において使用される用語「大豆粉」とは、大豆を粉砕した粉をいう。
【0030】
本明細書において使用される用語「豆浸漬液」とは、豆を液体(例えば、水)に浸漬して得られた溶液をいう。豆としては、例えば、大豆、インゲン豆、トラ豆、ウズラ豆、および、グリーンピースからなる群から選択される豆が挙げられるがこれらに限定されない。液体は、水性であっても油性であってもよく、好ましくは水性である。水性液体としては、水、緩衝液など任意の液体を使用することができる。浸漬条件は特に限定されることはなく、リポギシゲナーゼ活性を示す豆浸漬液が得られる限り、任意の条件を使用することができる。本発明において、豆浸漬液は、好ましくは大豆浸漬液である。
【0031】
本明細書において使用される用語「凍結法」とは、酵素反応後の反応液に有機溶媒を添加して油成分を抽出する際に、水層と乳化した中間層を凍結させ上層の有機溶媒を回収する方法をいう。水層と中間層を凍結させる温度は、使用する有機溶媒および酵素反応液の組成、ならびに、使用する有機溶媒および酵素反応液の比率に応じて当業者が適宜決定することができる。有機溶媒としては、例えば、DHAエチルエステル、n-ヘキサン、酢酸エチル、ペンタン、へプタン、ジエチルエーテル、および、ジイソプロピルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい有機溶媒はn-ヘキサンおよびDHAエチルエステルである。有機溶媒層である上層を回収した後、凍結していた中間層を溶解し、これに対して有機溶媒を添加することによって、上記の凍結法を複数回繰り返すことが可能である。
【0032】
(リポキシゲナーゼ含有組成物を利用する酵素反応)
本発明において使用可能なリポキシゲナーゼは、植物に広く含まれている。リポキシゲナーゼの供給源としては、例えば、豆(例えば、大豆、インゲン豆、トラ豆、ウズラ豆、および、グリーンピースからなる群から選択される豆)、トマト、キャベツ、シロイヌナズナが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、本発明では、リポキシゲナーゼ酵素反応を行うために、リポキシゲナーゼ含有組成物(例えば、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物)を使用することができる。豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物としては、例えば、豆粉および豆浸漬液が挙げられるがこれらに限定されない。原料として使用される豆としては、例えば、大豆、インゲン豆、トラ豆、ウズラ豆、および、グリーンピースからなる群から選択される豆が挙げられるがこれらに限定されない。本発明において使用される大豆粉または大豆浸漬液を調製するために使用される大豆は、代表的には、大豆およびマメ科植物が産生する種子などが挙げられるが、これらに限定されない。使用する大豆としては、例えば、一般的な黄大豆に加え、青大豆や黒大豆等の有色大豆が挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
豆から豆粉を調製するための粉砕条件は特に限定されない。粉砕された豆粉の粒径もまた、特に限定されない。例えば、2000μm以上の粒子径をもつ豆粉砕物から600μm~2000μm、150μm~600μm、もしくは150μm以下の粉砕物いずれも使用可能である。
大豆から大豆粉を調製するための粉砕条件もまた特に限定されない。粉砕された大豆粉の粒径もまた、特に限定されない。例えば、2000μm以上の粒子径をもつ大豆粉砕物から600μm~2000μm、150μm~600μm、もしくは150μm以下の粉砕物いずれも使用可能である。
【0034】
リポキシゲナーゼ含有組成物(例えば、豆粉または豆浸漬液などの豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物)を使用する酵素反応条件は、リポキシゲナーゼ含有組成物に含まれるリポキシゲナーゼ酵素が活性を示す任意の反応条件が使用可能である。そのような酵素反応条件としては、例えば、以下が挙げられるが、これに限定されない。例えば、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物として大豆粉などの豆粉あるいは大豆浸漬液などの豆浸漬液を利用することができる。あるいは、大豆粉または大豆浸漬液の代わりに他の豆から調製した粉または浸漬液を利用することも可能である。
(1)使用する緩衝液:ホウ酸緩衝液、アンモニア水、または、酢酸ナトリウム緩衝液
(2)使用する温度:30℃以下、好ましくは0~5℃
(3)使用するリポキシゲナーゼ含有組成物(例えば、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物)の濃度:代表的には、0.5%(重量/重量)~1.0%(重量/重量)、これ以上またはこれ以下でも反応が可能
(4)基質とリポキシゲナーゼ含有組成物(例えば、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物)との割合:基質に対するリポキシゲナーゼ含有組成物(例えば、豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物)の割合は、30%以下が望ましいがこれに限定されない。例えば、30%~100%または100%~450%、450%以上でも反応は可能
(5)反応時間:15分~6時間が望ましいが、15分以下もしくは6時間以上も可。
【0035】
市販の試薬リポキシゲナーゼは50,000~300,000units/mg solidsというリポキシゲナーゼ活性をもつ規格で販売されている。一方で、大豆のリポキシゲナーゼ活性は100~200units/g solidsで試薬と比較するととても低い。そのため、このリポキシゲナーゼ活性値のみから考えると、大豆を使用して反応を行う場合、試薬リポキシゲナーゼの250,000倍~3,000,000倍重量が必要となることになる。しかし、実験の結果ではこれよりもかなり少量、具体的には試薬量から換算される酵素活性の300倍程度の酵素活性を含む大豆量で同等の反応が進行することが明らかとなった。
【0036】
例えば、豆粉砕物(例えば、大豆粉砕物)を添加する場合、メッシュの網袋あるいは籠状の容器を用いて添加する事により、反応終了後、豆粉砕物を反応液から容易に除去できる。あるいは、豆浸漬液(例えば、大豆浸漬液)を添加する場合、豆浸漬液はあらかじめ粉砕物を除去されているため、反応終了後、豆粉砕物を反応液から除去する工程を省略することができる。
【0037】
上記の酵素反応の結果生じる脂肪酸酸化物が過酸化物である場合、必要に応じて過酸化物を還元し、水酸化物とする。還元は、反応生成物である過酸化物を水酸化物へ変換するための周知の手段によって行うことが可能である。必要に応じて、反応混合物から過酸化物を精製または部分精製した後に還元を行っても良い。使用される還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、N-アセチル-l-システイン、L-メチオニン、アスコルビン酸、および、シスチン、ならびに、リン系化合物、および、硫黄系化合物が挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、本発明においては、還元剤として、還元性スズ化合物、例えば塩化スズを使用することができる。リン系化合物としては、例えば、ホスフィン類、および、ホスフィン誘導体(例えば、トリメチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィン)が挙げられるがこれらに限定されない。硫黄系化合物としては、チオール基を含む化合物およびスルフィド基を含む化合物が挙げられるがこれらに限定されない。リン系化合物および/または硫黄系化合物を含む天然物(例えば、玉ねぎおよびニンニクなど)を使用してもよい。
【0038】
下記の凍結法を実施する前に、必要に応じて、クエン酸などの酸性物質を添加して、酵素反応物(還元剤処理をした酵素反応物であっても、還元剤処理をしていない酵素反応物のいずれであってもよい)のpHを約4~約5に調整してもよい。
【0039】
(凍結法)
本明細書において使用される用語「凍結法」では、酵素反応後の反応液に有機溶媒を添加して油成分を抽出する際に、乳化した中間層および水層を凍結させ上層の有機溶媒を回収する。中間層を凍結させる温度は、使用する有機溶媒および酵素反応液の組成、ならびに、使用する有機溶媒および酵素反応液の比率に応じて当業者が適宜決定することができる。代表的には、以下のとおりである。
(1)使用する有機溶媒の種類:代表的には、比重が1.0以下かつ融点が0℃以下である有機溶媒が使用できる。限定されることはないが、例えば、DHAエチルエステル、n-ヘキサン、酢酸エチル、ペンタン、へプタン、ジエチルエーテル、および、ジイソプロピルエーテルが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、n-ヘキサンである。(2)使用する有機溶媒の量比:限定されることはないが、好ましくは、水層の溶媒量に対して50%~100%
(3)使用する温度:0℃以下、好ましくは、-20℃以下(例えば、約-20℃、約-30℃、約-40℃、約-50℃、約-60℃、約-70℃、または、約-80℃)
(4)凍結時間:代表的には30分であるが、30分未満であってもよい
好ましい有機溶媒はDHAエチルエステルである。有機溶媒層である上層を回収した後、凍結していた中間層を溶解し、これに対して有機溶媒を添加することによって、上記の凍結法を複数回繰り返すことが可能である。この溶解に好ましい温度条件は0℃より高い温度かつ室温以下の温度である。
【0040】
理論に拘束されることは望まないが、水分を凍らせる事によって、水分子が互いに集合体を形成する時に、水以外の分子を排除する。そのため、例えば食塩水を凍らせると、その氷は殆ど塩分を含んでいない。また、再結晶で物質を精製できるのも同じ原理である。本凍結法では、この現象を利用し、迅速に水層と有機溶剤層を分離できる。
【0041】
遠心法では油層と水層の界面がはっきりせずフワフワとしたものがある状態であるため取り残しが多く、収率が悪化するのに対して、本発明では凍結法を利用することによって界面が明確になり油層と水層との分離が効率的になり、その結果、収量(および純度)が改善される。
【0042】
上記のとおり回収された上層(有機溶媒層)は、以下の周知の精製法を適用することによって、最終製品の純度を高めることが可能である。
【0043】
(周知の精製法)
・「真空精密蒸留法」では、各成分の沸点差を利用して分離する。例えば、EPAの場合、EPAを含む炭素鎖数が20の成分は魚油脂肪酸の中で中間の沸点に位置しており、バッチ式の場合、単塔式蒸留装置を用いる事が、連続蒸留の場合、二塔式装置ないしは四塔式装置が必要となる。二塔式であればC19以下の成分(初留)を留出させ、その残留分を第二塔に送りC20成分を(主留)を分取することにより精製を行う。
・「固定層クロマトグラフィー法」では、カラムに充填剤を詰め、原料を溶離液で通過させることにより目的の成分を含む画分を取り出し、濃縮・精製する。好ましい充填剤としては、シリカゲル、逆相シリカゲル、硝酸銀含浸シリカゲルが挙げられるがこの限りではない。
・「SMBクロマトグラフィー」では、液体クロマトグラフィーの原理を利用する分離法であって、原料中の特定の成分と、別の特定の成分に対して異なる選択的吸着能力を有する吸着剤が充填された複数の単位充填層を直列に連結するとともに、最下流部の単位充填層と最上流部の単位充填層とを連結し、無端状の循環系を形成した移動層を用いるクロマトグラフィーを用いる。本願明細書において、「SMBクロマトグラフィー」は、「擬似移動層クロマトグラフィー」と互換可能に使用される。
・「ウィンタリング処理」では、「脱ろう」と互換可能に使用され、油脂を指定した低温に長時間保って融点の高い油脂(例えば、グリセリドまたはアシルグリセロール)を析出される。
【0044】
(本発明の方法に使用する原料の調製法)
本発明の方法の原料であるEPA、DPAおよびDHAとしては、例えば、魚油原油エステルを使用することが可能である。
【0045】
脂肪酸を含む画分のエチルエステル化法は、周知である。例えば、分画されたグリセリド画分中の脂肪酸はエチルアルコールとの共存下、酸触媒又はアルカリ触媒又は酵素(リパーゼ)によりエチルエステル化される。好ましくは、分画されたグリセリド画分に含まれるグリセリン脂肪酸エステル中の脂肪酸はアルカリ触媒法または酵素法によってエチルエステル化される。分画された遊離脂肪酸画分中の脂肪酸はエチルアルコールとの共存下、酸触媒又は酵素(リパーゼ)によりエチルエステル化される。酵素を利用する場合、添加するエチルアルコールの量は、好ましくは、酵素を失活させない量であり、好ましくは、グリセリドまたは遊離脂肪酸に対して4モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下であるがこれらに限定されない。
【0046】
エチルエステル化されたω3系脂肪酸を含む油脂中のEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸は、尿素付加法(特開2007-89522号公報、特表2009-504588号公報)、硝酸銀錯体法(特開2010-64974号公報、特開平7-242895号公報)、真空薄膜蒸留法を含む真空精密蒸留法(特開平11-209786号公報)、液体クロマトグラフィー(以後、HPLCという)や疑似移動相クロマト法などのクロマト法(特開平11-209786号公報)などの1種類以上の組み合わせ法により比較的高純度に精製される。また、SMBクロマトグラフィーを用いてもよい。代表的な精製法は、以下のとおりである。
【0047】
(1.尿素付加法)
尿素付加法とは、溶解した尿素が結晶化する際に直鎖の分子を取り込みながら六角柱状の付加物結晶を形成する性質を利用する精製法である。例えば、原料と尿素メタノール溶液を混合し冷却し、飽和脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸を取り込んだ尿素付加物を形成させ、これをろ別することにより精製を行う。代表的には、尿素付加物からn-ヘキサン抽出し、シリカゲル処理の後、n-ヘキサンを留去して目的の不飽和脂肪酸を得る。
【0048】
(2.硝酸銀錯体法)
硝酸銀錯体法とは、脂肪酸の二重結合に対して硝酸銀溶液が錯体を形成する性質を利用する精製法である。高度不飽和脂肪酸エチルを精製する場合、原料と硝酸銀溶液を撹拌し、未反応エステルを例えばn-ヘキサン抽出した後に水相を希釈または加温し、遊離したエステルを再度n-ヘキサンにて抽出することにより目的の高度不飽和脂肪酸エチルの濃縮・精製を行う。
【0049】
(3.真空精密蒸留法)
真空精密蒸留法とは、各成分の沸点差を利用して分離する方法である。EPAの場合、EPAを含む炭素鎖数が20の成分は魚油脂肪酸の中で中間の沸点に位置しており、バッチ式の場合、単塔式蒸留装置を用いる事が、連続蒸留の場合、二塔式装置ないしは四塔式装置が必要となる。二塔式であればC19以下の成分(初留)を留出させ、その残留分を第二塔に送りC20成分を(主留)を分取することにより精製を行う。
【0050】
(4.クロマト法)
クロマト法としては、固定層クロマトグラフィーを用いる方法(固定層クロマトグラフィー法)およびSMBクロマトグラフィー法(擬似移動層クロマトグラフィー法)が挙げられる。固定層クロマトグラフィー法は、カラムに充填剤を詰め、原料を溶離液で通過させることにより目的の成分を含む画分を取り出し、濃縮・精製する方法である。本発明の方法においては、好ましい充填剤としては、シリカゲル、逆相シリカゲル、硝酸銀含浸シリカゲルが挙げられるがこの限りではない。
【0051】
(5.SMBクロマトグラフィー)
SMBクロマトグラフィーでは、無端状の循環系に対して原料と溶離液とを供給し、カラム内(単位充填層)を高速で移動するX成分(すなわち、弱親和性成分)と、カラム内を低速で移動するY成分(すなわち、親和性成分)とをそれぞれ異なる位置から抜き出す。そして、SMBクロマトグラフィーは、原料供給位置、溶離液供給位置、X成分抜き出¥し位置、およびY成分抜き出し位置を、一定の位置関係に保ちながら流体循環方向下流側に順次移動させることで、原料供給を連続的に行う処理操作を擬似的に実現する。その結果、層内での各成分の分布状態はほぼ一定の幅で移動し、各成分の抜出位置も、純度・濃度ともに高い部分を取り続けることが可能な操作方式である。
【0052】
(薬学的組成物)
本発明は、二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の酸化物(例えば、ω3脂肪酸酸化物)を含む組成物であって、糖尿病の予防、治療、インスリン感受性増強、糖代謝改善、低密度リポ蛋白、コレステロール低減、並びに肥満、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈疾患など、及びそれらに関連する疾患の予防と治療に対して優れた組成物を提供する。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、例えば、インスリン抵抗性の治療および予防、インスリン感受性の増強、糖尿病の予防および治療、糖代謝改善、低密度リポ蛋白低減、コレステロール低減、肥満の低減、高トリグリセリド血症の予防および治療、アテローム性動脈疾患の予防および治療からなる群から選択される用途のための、薬学的組成物である。
【0054】
(薬学的組成物の処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与によって治療および/または予防され得る疾患または障害の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤とは、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
【0055】
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
【0056】
本発明の薬学的組成物の好ましい投与形態は、経口投与であるが、非経口投与も使用し得る。非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
【0057】
本発明の製剤は、液体または半固体(すなわち、室温よりも高い融点範囲を示す)であり、当業者に公知の医薬剤形を用いて、それを必要とする患者に経口投与することができる。特に、そのような医薬剤形は、ハードシェルカプセルまたはソフトジェルカプセルであってよい。そのようなカプセルには、ハードゼラチンカプセルおよびソフトゼラチンカプセルが含まれる。この製剤はまた、吸着、ホットメルト顆粒化/コーティングなどの当業者に公知の技術により、ならびに/または選択されたキャリア、希釈剤、添加剤、および/もしくは結合剤により、従来の固体剤形へ変換してもよい。
【0058】
本発明によって製造される、二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の修飾物または二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物はまた、局所、経腸、静脈内、筋肉内、吸入、点鼻、関節内、髄腔内、経気管または経眼投与を含めての経口、非経口投与、外用に適した固体状または液状の有機または無機賦形剤などの薬学上許容しうる担体との混合物として医薬製剤の形態で使用できる。該医薬製剤としては、カプセル剤、錠剤、ペレット剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、吸入剤、注射剤、パップ剤、ゲル剤、テープ剤、点眼剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤、懸濁剤、乳剤などの固体、半固体または液体が挙げられる。これらの製剤は通常の方法により製造することができる。所望により、これらの製剤に、助剤、安定剤、湿潤剤ないし乳化剤、緩衝剤、その他慣用の添加剤を加えることができる。
【0059】
本発明によって製造される、二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸の修飾物または二重結合が2個以上含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルの修飾物は、例えば、点鼻薬によって鼻に、吸入薬によって経気管的に、もしくは坐剤による直腸的な局所投与において、または、錠剤、散剤、軟膏などを含む任意の適切な経路によって投与することもできる。
【0060】
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
【0061】
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0062】
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、有効成分としてのウイルス以外の生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブレン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0063】
治療剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵されてもよい。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した5%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製してもよい。
【0064】
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
【0065】
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【0066】
(飲食用組成物の製造)
本発明の好適な態様は飲食用組成物である。すなわち、本発明のω3脂肪酸酸化物を有効成分として含む薬学的組成物または飲食用組成物は、これをそのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、野菜ジュース、天然果汁、乳飲料、牛乳、豆乳、スポーツ飲料、ニアウォーター系飲料、栄養補給飲料、コーヒー飲料、ココア、スープ、ドレッシング、ムース、ゼリー、ヨーグルト、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、加工乳、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ケーキミックス、パン、ピザ、パイ、クラッカー、ビスケット、ケーキ、クッキー、スパゲティー、マカロニ、パスタ、うどん、そば、ラーメン、キャンデー、ソフトキャンデー、ガム、チョコレート、おかき、ポテトチップス、スナック、アイスクリーム、シャーベット、クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの粉末状または液状の乳製品、饅頭、ういろ、もち、おはぎ、醤油、たれ、麺つゆ、ソース、だしの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ、レトルトカレー、レトルトシチュー、レトルトスープ、レトルトどんぶり、缶詰、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり、冷凍食品および冷蔵食品、ちくわ、蒲鉾、弁当のご飯、寿司、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、スポーツ食品、栄養補助食品、サプリメント、健康食品等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦型剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。これらの食品類あるいは飲食用組成物におけるω3脂肪酸酸化物の配合量は、限定されることはないが、例えば、3%(w/w)~50%(w/w)、5%(w/w)~40%(w/w)、10%(w/w)~30%(w/w)、または、15%(w/w)~25%(w/w)である。これらの食品類あるいは飲食用組成物におけるDHAの配合量は、限定されることはないが、例えば、20%(w/w)~80%(w/w)、30%(w/w)~70%(w/w)、40%(w/w)~60%(w/w)、または、45%(w/w)~55%(w/w)である。サプリメントなどに利用する場合の不飽和脂肪酸の酸化物の配合量は、代表的には、0.1%~10%またはそれ以上である。
【0067】
本発明の組成物をサプリメントとして使用する場合、当該有効成分をそのまま用いても良く、また、ソフトカプセル、錠剤、散剤、顆粒剤等に製剤化して投与しても良い。本発明の組成物を飲食品に使用する場合は、飲食品の原料に添加して投与しても良い。
【実施例】
【0068】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
以下の方法を用いて、DHAから、17S-HDHAを製造し、回収した。
(1)0.024Mアンモニア水300mLにDHA(10.0g;0.030mol)を溶解する。
(2)そこへ消泡剤20mgを添加し、反応液を0~5℃に冷却。
(3)温度を確認後、粉砕した大豆2gを不織布フィルターに入れ反応液に入れる。
(4)酸素吹き込みを最低0.005MPaで開始。
(5)0~5℃、1時間、150rpmで撹拌。
(6)反応液の一部を採取し、TLCで反応を確認。
(7)未反応のDHAが確認された場合、さらに反応を30分~5時間継続。
(8)反応終了後、酸素吹き込みを止め、還元剤であるN-アセチル-l-システイン(19.6g;0.120mol)を添加し45分間撹拌して還元。
(9)その後、クエン酸で反応液をpH約4~約5に調整。
(10)n-ヘキサン100mLを添加し転倒混和で撹拌後、-50℃の冷凍庫で中間層が凝固するまで静置。
(11)上層を回収後、下層が融解したらn-ヘキサン100mLを添加し、同様の条件で凍結する。この操作を3回反復。
(12)凍結後の回収液を飽和食塩水および純水で洗浄後、無水MgSO4で脱水。
(13)この溶液をろ過後、溶媒を留去し目的の17S-HDHAを含む油を6.80g回収した。
【0070】
上記の本発明の方法を用いた結果、17S-HDHAを含む油の回収率が従来法と比較して2倍以上改善したという優れた効果が奏された。
【0071】
理論に拘束されることは望まないが、大豆を使用した酸化反応では、抽出工程前に反応液をアルカリ性から酸性に傾けると大豆から溶出したタンパク質が沈殿することが問題となるところ、その沈殿したタンパク質を含む反応液と有機溶媒を混合すると上層と水層の間に不溶のタンパク質を含む中間層が出現する。これは大豆の粒子径が小さくなればなるほど顕著に確認される現象である。従来法で用いた遠心法では中間層を強固に固定することが不十分であり、油の回収率が低下する。そこで、不溶のタンパク質を含む中間層を固定することを特徴とする本発明の凍結法を用いることによって、回収率の顕著な改善がもたらされた。
【0072】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。すなわち、本発明のリポキシゲナーゼ含有組成物として利用可能な組成物は、大豆粉に限定されるものではなく、大豆以外の豆(リポキシゲナーゼを含有する豆)由来の粉もまた利用可能である。さらに、本発明の豆由来リポキシゲナーゼ含有組成物として利用可能な組成物としては、豆浸漬液(例えば、大豆浸漬液)を使用することも可能である。また、本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、新規かつ従来技術と比較して優れた利点を有するω3脂肪酸酸化物を製造する方法を提供する。本発明では、効率的かつ安価にω3脂肪酸酸化物を製造することが可能となる。