(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】がんの腫瘍崩壊療法のためのVSV/NDVハイブリッドウイルス
(51)【国際特許分類】
C12N 15/47 20060101AFI20220128BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220128BHJP
C12N 15/45 20060101ALI20220128BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20220128BHJP
A61K 35/766 20150101ALI20220128BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220128BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C12N15/47
C12N7/01 ZNA
C12N15/45
A61K35/768
A61K35/766
A61K48/00
A61K45/00
A61K49/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2018560054
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2017062007
(87)【国際公開番号】W WO2017198779
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-13
(32)【優先日】2016-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513302064
【氏名又は名称】クリニクム レヒツ デア イザール デア テクニシェン ウニフェルジテート ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エーベルト, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】アルトモンテ, イェニファー
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-521786(JP,A)
【文献】Mol. Ther., 2013, Vol. 21, No. 10, pp. 1930-1937
【文献】Cancer Res., 2004, Vol. 64, pp. 3265-3270
【文献】Mol. Ther., 2010, Vol. 18, No. 2, pp. 275-284
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え腫瘍崩壊ウイルスであって、
水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含み、
VSVの糖タンパク質(Gタンパク質)が欠失しており、かつ、
ニューカッスル病ウイルス(NDV)の改変融合タンパク質(Fタンパク質)、および
NDVの血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質
を含
み、
NDVの前記改変Fタンパク質が、F3aa改変Fタンパク質であるか、
または、NDVの前記改変Fタンパク質が、前記F3aa改変Fタンパク質であり、プロテアーゼ切断部位における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、組換え腫瘍崩壊ウイルス。
【請求項2】
プロテアーゼ切断部位における前記少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばL289AがL289位にある、請求項1に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス。
【請求項3】
VSVの前記Gタンパク質が、前記改変融合タンパク質およびNDVのHNタンパク質で置き換えられている、請求項1
または2に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス。
【請求項4】
NDVの前記改
変Fタンパク
質が、配列番号10もしくは配列番号12のアミノ酸配列、
または、配列番号10もしくは12のアミノ酸配列に対して、少なくと
も90%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、NDVの前記改
変Fタンパク
質が、配列番号9もしくは配列番号11のヌクレオチド配列、
または、配列番号9もしくは11のヌクレオチド配列に対して、少なくと
も90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされ、
かつ/あるいは、NDVの該HNタンパク質が、配列番号6のアミノ酸配列、
または、配列番号6のアミノ酸配列に対して、少なくと
も90%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、NDVの該HNタンパク質が、配列番号5のヌクレオチド配列、
または、配列番号5のヌクレオチド配列に対して、少なくと
も90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、
請求項1または
3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルスをコードする核酸。
【請求項6】
請求項
5に記載の核酸を含むベクターであって、
任意選択で、
- レポーター遺伝子(複数可)、
例えば、HSV1-sr39TK、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)、ソマトスタチン受容体2(SSTR2)、ルシフェラーゼ(ホタルまたはウミシイタケ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、lacZ、チロシナーゼ、
- 標的細胞(複数可)または組織に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、腫瘍細胞(複数可)または腫瘍(複数可)に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、
IFN-α、IFN-β、もしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの免疫刺激性遺伝子、
PD-1、PD1-L、CTLA-4、LAG-3、もしくはB7-H3などの免疫チェックポイント阻害性抗体、および/または
ワクチン接種のための腫瘍関連抗原(TAA)(標的とされる該腫瘍に対して特異的)、
- あるいはそれらの組合せ
をさらに含む、ベクター。
【請求項7】
配列番号13のヌクレオチド配列、
または、配列番号13のヌクレオチド配列に対して、少なくと
も90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、配列番号6、12、14~17のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
または、配列番号6、12、14~17のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくと
も90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、
請求項
5に記載の核酸または請求項
6に記載のベクター。
【請求項8】
(i)請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または請求項
5から
7のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターと、
(ii)任意選択で、薬学的に許容されるキャリア(複数可)および/または賦形剤(複数可)と
を含む医薬組成物。
【請求項9】
薬物(複数可)、
例えば、
化学療法剤(複数可)、
放射線療法剤(複数可)、
腫瘍ワクチン(複数可)、
免疫チェックポイント阻害薬(複数可)、
細胞搬送系(複数可)、
小分子阻害薬(複数可)、
塞栓剤(複数可)、
遮蔽ポリマー(複数可)
をさらに含む、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
全身送達、腫瘍注射、静脈内投与、動脈内投与のために、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射のために製剤化される、
請求項
8または
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または請求項
5から
7のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物、あるいは請求項
8から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、遺伝子送達ツールとしての、ウイルスの生体内分布の(非侵襲的)画像化における、および/または腫瘍検出における使用のための、組成物または医薬組成物。
【請求項12】
医療において使用するための、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または請求項
5から
7のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物、あるいは請求項
8から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がんの診断、予防、および/または処置において使用するための、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または請求項
5から
7のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物、あるいは請求項
8から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
腫瘍崩壊療法において使用するための、請求項
13に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項15】
他の療法、例えば、
細胞搬送系、
例えば、T細胞、樹状細胞、NK細胞、間葉系幹細胞、
免疫療法、
例えば、腫瘍ワクチン、もしくは免疫チェックポイント阻害薬、
および/または
標準的な腫瘍療法、
例えば、ラジオ波焼灼療法、化学療法、塞栓術、小分子阻害薬
との組合せで使用するためのものであり、
かつ/あるいは、投与が、全身投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍への注射による投与、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射による投与である、請求項
13に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項16】
がんの診断、予防、および/または処置のための、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または請求項
5から
7のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物、あるいは請求項
8から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、該組成物または該医薬組成物は被験体に投与されることを特徴と
する、組成物または医薬組成物。
【請求項17】
前記投与が、全身投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍への注射による投与、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射による投与である、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え腫瘍崩壊ウイルスであって、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の糖タンパク質(Gタンパク質)が欠失しているVSVを含み、かつ、ニューカッスル病ウイルス(NDV)の改変融合タンパク質(Fタンパク質)、およびNDVの血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質を含む、組換え腫瘍崩壊ウイルスに関する。本発明はさらに、組換え腫瘍崩壊ウイルスをコードする核酸、および該核酸を含むベクターに関する。本発明はさらに、本発明のrVSV、上記核酸、または上記ベクターを含む医薬組成物に関し、さらに、遺伝子送達ツールとしての、および/または腫瘍検出のための使用に関する。本発明はさらに、医療において使用するための、特に、がんの診断、予防、および/または処置のための、組換え腫瘍崩壊水疱性口内炎ウイルス(VSV)に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍崩壊ウイルス(OV)は、選択的に複製し、周囲の正常組織を生かしつつ腫瘍細胞を殺滅するその固有の能力のために、がん処置用の治療剤の新規のクラスを表わす(Lorenceら、1994年;Coffeyら、1998年;Kirnら、2001年;Pengら、2001年)。OV療法は、本来的に腫瘍選択的であるか、または腫瘍細胞内で優先的に成長するように操作を加えられているかのいずれかである複製適格ウイルスの使用を伴う。悪性形質転換の過程の間に遺伝子異常が蓄積して、成長および生存に有利ながん細胞をもたらす。多くのOVは、これらの細胞におけるそれ自身の複製を支えるために、このような細胞内シグナル伝達経路における欠陥を利用する。特に、多くのがん細胞では、正常細胞において侵襲性ウイルスに対する自然免疫応答の重要な機構である、インターフェロン(IFN)を分泌するかまたはそれに応答する能力が損なわれている。これらの欠陥は、腫瘍細胞が生産的な抗ウイルス防御を行うことを妨げ、したがって、OVの複製は、これらの細胞において特異的に支持される。
【0003】
腫瘍崩壊ウイルスは、感染した腫瘍細胞の直接的な殺滅、ならびに、腫瘍に対して向けられ、近隣の感染していない腫瘍細胞の破壊をもたらしうる、腫瘍脈管構造の破壊および適応免疫応答の誘導などの間接的な効果の両方により、その効果を発揮する。さらに、プラスミドDNAから組換えウイルスベクターを操作により作製しレスキューすることを可能にする遺伝子系が利用可能である。このようにして、ウイルスを改変し、腫瘍特異性を増加させたり、または治療用遺伝子および/もしくはレポーター遺伝子を発現させたりすることができる。
【0004】
過去10年間にわたり、向上したOV療法の開発において著しい進歩がなされ、種々のベクターが治験に入った(Kirnら、2001年;Evertsおよびvan der Poel、2005年;PatelおよびKratzke、2013年)。近年、組換え単純ヘルペスウイルスIベクターが、臨床薬剤としての使用がFDAにより承認された初めての腫瘍崩壊ウイルスとなり(Amgenの2015年10月27日のプレスリリース)、欧州における承認が続くと予想されている。しかしながら、一般に、治験結果は、信頼でき予測的な前臨床モデルの不足を理由として、また、免疫適格宿主におけるほとんどのOV療法に対する不十分な腫瘍応答を理由として、期待はずれであることが多い。
【0005】
腫瘍崩壊ウイルス療法の治療有効性は、多くの場合、より安全なウイルスが減弱した治療効果をもたらす一方で、強力なベクターは毒性に関連付けられることが多いなど、安全性とのトレードオフになる。見込みのある前臨床データにもかかわらず、臨床薬剤としての水疱性口内炎ウイルス(VSV)の開発は、齧歯動物および非ヒト霊長類において野生型VSVによる処置に応答して重度の神経毒性が観察されたという事実により、実質的に妨げられてきた(van den Poolら、2002年;Johnsonら、2007年)。安全性の側面に加えて、高い腫瘍内力価のVSVがその短いライフサイクルの結果として急速に蓄積することで、早期かつ強力な自然免疫応答がもたらされ、これにより、宿主から除去される前に効率的に拡散して腫瘍塊全体を破壊するウイルスの能力が大幅に限定される(Altomonteら、2008年)。
【0006】
ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、ヒトにおける魅力的な安全性プロファイルを有する強力な腫瘍崩壊剤であることが示されているが、トリ種はこのウイルスの自然宿主であるため、NDVの使用は、鳥類および家禽産業に対する環境リスクを提示する。NDVの亜病原性株および短潜伏期性株は腫瘍崩壊ウイルスとして最も有効であることが示されているが、これらは2008年からUSDAにより指定病原体(select agents)に分類されており、それらの使用が禁止されているため、臨床薬剤へのNDVの開発が大幅に阻まれている(www.selectagents.gov)。
【0007】
腫瘍崩壊VSVベクターの安全性を改善するため、研究者らは種々の手法を調査してきた。まず、51位においてマトリックス(M)タンパク質のアミノ酸組成を変更するヌクレオチド置換または欠失を保有する組換えVSVは、細胞性転写および核細胞質間RNA輸送を阻害する内在性Mタンパク質の能力に干渉し、抗ウイルス性細胞応答を始動させる。これらのベクターは野生型よりも安全であることが示されているが、腫瘍内複製も減弱され(Stojdlら、2003年;Ebertら、2005年)、この手法の治療的価値は限定されている。VSVの安全性を改善するための別の方策は、ウイルスの指向性を改変するためにmiRNA標的配列をウイルスゲノムに組み込むことを伴うが、これらのベクターもさほど有効ではない(Edgeら、2008年;Kellyら、2010年)。
【0008】
NDVゲノムに操作を加えてトリ種における病原性を限定するための様々な試みが探究されている。例えば、特許出願第WO2015/032755(A1)号を参照されたい。これらの改変が安全性を本当に改善するか否か、およびこれらの改変がベクターの腫瘍崩壊能に及ぼす効果は、現時点では不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、腫瘍崩壊ウイルス療法のための改善した手段および方法、ならびに改善した腫瘍崩壊ウイルスが、当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、組換え腫瘍崩壊ウイルスであって、
水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含み、
VSVの糖タンパク質(Gタンパク質)が欠失しており、かつ、
ニューカッスル病ウイルス(NDV)の改変融合タンパク質(Fタンパク質)、および
NDVの血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質
を含む、組換え腫瘍崩壊ウイルスによって解決される。
【0012】
本発明によれば、この目的は、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルスをコードする核酸によって解決される。
【0013】
本発明によれば、この目的は、本発明の核酸を含むベクターによって解決される。
【0014】
本発明によれば、この目的は、
(i)本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、またはベクターと、
(ii)任意選択で、薬学的に許容されるキャリア(複数可)および/または賦形剤(複数可)と
を含む医薬組成物によって解決される。
【0015】
本発明によれば、この目的は、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物の、遺伝子送達ツール、および/もしくはウイルスの生体内分布の(非侵襲的)画像化としての、ならびに/または腫瘍検出のための使用によって解決される。
【0016】
本発明によれば、この目的は、医療において使用するための、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0017】
本発明によれば、この目的は、がんの診断、予防、および/または処置において使用するための、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0018】
本発明によれば、この目的は、がんの診断、予防、および/または処置の方法であって、
それを必要とする被験体に、治療有効量の、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をより詳細に以下に記述する前に、本明細書に記述される特定の方法論、プロトコール、および試薬は様々でありうるため、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語法は特定の実施形態を記述することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的では、本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0020】
本明細書において、濃度、量、および他の数値データは、範囲形式で表現または提示される場合がある。このような範囲形式は、便宜および簡潔さのために使用されるに過ぎず、したがって、範囲の限界として明確に挙げられている数値を含むだけでなく、その範囲内に包含されるすべての個別の数値または部分範囲も、各数値および部分範囲が明確に挙げられているかのように含むものと、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「20~100ヌクレオチド」の数値範囲は、明確に挙げられた20~100の値を含むだけでなく、示された範囲内の個別の値および部分範囲も含むものとして解釈すべきである。したがって、この数値範囲内に含まれるのは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、…97、98、100などの個別の値、および、例えば25~35、20~40、25~50などの部分範囲である。これと同じ原理が、「少なくとも25ヌクレオチド」など、数値を1つだけ挙げる範囲に適用される。さらに、このような解釈は、範囲の広さまたは記述されている特徴に関わらず適用されるべきである。
【0021】
腫瘍崩壊ウイルスおよびVSVベクター
上記で論じたように、本発明は、組換え腫瘍崩壊ウイルスを提供する。
【0022】
特に、本発明は、VSVの糖タンパク質タンパク質(glycoprotein protein)がシュードタイプ化されている組換え腫瘍崩壊VSVウイルスを提供する。
【0023】
開発中の最も見込みのあるOVベクタープラットフォームの中には、水疱性口内炎ウイルス(VSV)およびニューカッスル病ウイルス(NDV)がある。
【0024】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス科のマイナス鎖RNAウイルスである。VSVベクターは、高い腫瘍内力価および後の腫瘍細胞溶解をもたらす、その本来の腫瘍特異性および急速な複製サイクルのため、非常に魅力的な腫瘍崩壊剤である。
【0025】
VSVのゲノムは、5つの主要なタンパク質:糖タンパク質(G)、ラージポリメラーゼタンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、および核タンパク質(N)をコードする、マイナスセンスRNAの単一分子である。総ゲノムは約11,000ヌクレオチドである。
【0026】
VSVのGタンパク質は、ウイルス進入を可能にする。これは、宿主細胞上に存在するLDL受容体(LDLR)またはLDLRファミリーメンバーへのウイルス付着を媒介する。結合後、VSV-LDLR複合体は急速に形質膜陥入する。これは次に、エンドソーム膜とのウイルスエンベロープの融合を媒介する。VSVは、部分的にクラスリン被覆された小胞を介して細胞に進入する;ウイルスを含有する小胞は、従来の小胞よりも多くのクラスリンおよびクラスリンアダプターを含有する。ウイルスを含有する小胞は、アクチン装置の成分をその相互作用のために動員し、これにより、自身の取り込みを誘導する。複製は細胞質内で生じる。
【0027】
VSVのLタンパク質は、ゲノムの半分によってコードされ、リンタンパク質と組み合わさってmRNAの複製を触媒する。
【0028】
VSVのMタンパク質は、831ヌクレオチド長であって、229アミノ酸のタンパク質に翻訳するmRNAによってコードされる。予測されるMタンパク質配列は、膜会合を促進しうる長い疎水性または非極性のドメインを一切含有しない。このタンパク質は塩基性アミノ酸に富み、高度に塩基性のアミノ末端ドメインを含有する。
VSV Indiana完全ゲノム 配列番号1
NCBI GenBank受託番号J02428.1
VSV Indiana Gタンパク質 配列番号2および3
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列については、GenBank受託番号X03633.1を参照されたい。
【0029】
ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、パラミクソウイルス科のトリウイルスである。このファミリーのメンバーは、一本鎖の線状RNAを有する。総ゲノムは約16,000ヌクレオチドである。ウイルスの複製は、宿主細胞の細胞質内で起こる。
【0030】
これは、マイナス鎖RNAウイルスであり、かつ、健康な細胞に害が及ばないようにしながら腫瘍細胞内で複製し溶解を引き起こすその先天的な能力のために腫瘍崩壊ウイルスとして開発されたという点で、VSVと同様である(Altomonteら、2010年;Vigilら、2007年)。第I~II相臨床試験はNDVに関して有望であることを示し、療法に関連する毒性が最小限であることを示唆する。腫瘍崩壊剤としてのNDVの主要な利益は、血球凝集素-ノイラミニダーゼ(HN)および融合(F)タンパク質から構成されるウイルスエンベロープが、標的細胞へのウイルス付着および融合を媒介するだけでなく、感染細胞をそれらの近隣の感染していない細胞に融合させ、ウイルスの拡散および腫瘍細胞死滅化のための強力な機構をもたらしもすることである。さらに、新たなエビデンスは、細胞-細胞の融合により引き起こされたシンシチウム形成がマルチモーダルな細胞死応答をもたらし、これがウイルスの直接的な腫瘍崩壊効果と相乗作用して、腫瘍破壊の強力な機構となりうることを示している(Cuadrado-Castanoら、2015年)。
【0031】
ニューカッスル病ウイルスの2つのタンパク質がエンベロープ内に挿入される。これらは、血球凝集素/ノイラミニダーゼタンパク質(HN)および融合タンパク質(F)である。これら2つのタンパク質は、ウイルスの病毒性およびウイルスがいかに宿主細胞に感染するかを決定する際に重要である。
【0032】
血球凝集素/ノイラミニダーゼタンパク質は、次の問題の2つの部分を有する。(1)血球凝集素部分。これは、付着タンパク質であり、赤血球を含む宿主細胞の膜の外側にある受容体に結合する。(2)ノイラミニダーゼ部分は、宿主細胞の膜からのウイルスの放出を助ける酵素の活性部位である。この酵素の活性は、ウイルスが赤血球から溶離するのにかかる時間に影響を及ぼす。
【0033】
融合タンパク質Fは、ウイルスエンベロープを宿主細胞の膜に融合させる。これにより、ウイルスゲノムによる宿主細胞の透過が可能になる。融合が生じるためには、天然融合タンパク質の形状が変化しなければならない。この変化は、宿主細胞プロテアーゼがそのタンパク質を特定の切断部位で切断するときに起こる。これが起こった後、融合タンパク質が活性化され、細胞の膜に融合することができるようになる。切断部位の周りのアミノ酸の配列が、そのタンパク質の切断を活性化させうるプロテアーゼの範囲を決定する。したがって、この配列が病毒性を決定する。
【0034】
NDV Fタンパク質は、細胞膜とのウイルスの融合、およびシンシチウムの形成による細胞から細胞へのウイルス拡散に関与する。Fタンパク質内の多塩基性切断部位(multibasic cleavage site)の存在は、広範なプロテアーゼによるタンパク質切断および活性化を可能にし、短潜伏期性ウイルス株の病毒性の決定要因である。
【0035】
高度に減弱した長潜伏期性Hitchner B1 NDV株の腫瘍崩壊効力を増加させるため、多塩基切断部位(polybasic cleavage site)がFタンパク質に導入され、rNDV/F3aaが生成された(Vigilら、2007年)。結果として生じたウイルスは、胚発育卵における平均死亡時間に基づいて中等度の病毒性の表現型しか呈さなかった一方で、ウイルスは大きなシンシチウムを形成し、がん細胞におけるその複製が向上し、様々な動物腫瘍モデルにおいて腫瘍崩壊効果の向上をもたらした。長潜伏期性NDVであるLa Sota株のFタンパク質を類似した様式で改変したとき、同様の所見が示された(Peetersら、1999年)。本発明者らは、F3aa改変融合タンパク質内のアミノ酸289におけるロイシンからアラニンへの単一のアミノ酸置換(L289A)が、F3aa変異のみを保有するウイルスよりも、実質的により大きなシンシチウム形成および腫瘍壊死をもたらし、さらなる毒性が一切ないことをさらに実証した(Altomonteら、2010年)。
【0036】
rNDV/F3aa株の融合活性および腫瘍崩壊活性は、rNDV/F3aaを生成する、Fタンパク質の残基289におけるロイシンからアラニンへの点変異(L289A)により、さらに向上させることができる。同所性免疫応答肝腫瘍ラットモデル(orthotopic immunocompetent liver tumor rat model)において、肝動脈注入による変異体ウイルスの投与は、有意なシンシチウム形成および壊死をもたらし、これは、元のrNDV/F3aaウイルスによる処置と比べて有意な20%の生存期間延長につながった(Altomonteら、2010年)。
NDV Hitchner B1完全ゲノム 配列番号4
GenBank受託番号AF375823
NDV HNタンパク質 配列番号5および6
核酸およびアミノ酸配列については、GenBank受託番号AF375823およびNCBI遺伝子ID912270を参照されたい。
NDV Fタンパク質 配列番号7および8
核酸およびアミノ酸配列については、GenBank受託番号AF375823およびNCBI遺伝子ID912271を参照されたい。
【化1】
NDV F3aa改変融合タンパク質 配列番号9および10
【化2】
【化3】
L289Aを有するNDV F3aa改変融合タンパク質 配列番号11および12
【化4】
【化5】
【0037】
上記で論じたように、本発明は、VSVの糖タンパク質タンパク質がシュードタイプ化されている組換え腫瘍崩壊VSVウイルスを提供する。
【0038】
近年、ウイルスの糖タンパク質を異種ウイルスのものに交換すること(「シュードタイプ化」)の概念は、ウイルスの指向性を変更する有効な手段として実証されている。この手法を使用すると、ウイルス骨格は無傷に保たれ、したがって、感受性細胞におけるウイルス複製は最小限に抑えられるはずであるとする仮説が立てられている。1つのグループは、リンパ性脈絡髄膜炎(lymphocytic choriomemingitis)ウイルスのエンベロープタンパク質(LCMV-GP)でシュードタイプ化されたVSVベクターを記述しており、これは、野生型ベクターよりも向神経性が有意に低いことが示されている(Muikら、2011年)。同様に、VSVの糖タンパク質を麻疹ウイルスのものと交換し、単鎖可変抗体断片を用いて改変して、別個の表面受容体を発現するがん細胞に対してVSVを再標的化させた(Ayala-Bretonら、2012年)。
【0039】
本発明において、組換え腫瘍崩壊ウイルスであって、
水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含み、
VSVの糖タンパク質(Gタンパク質)が欠失しており、かつ、
ニューカッスル病ウイルス(NDV)の改変融合タンパク質(Fタンパク質)、および
NDVの血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質
を含む、組換え腫瘍崩壊ウイルスが提供される。
【0040】
好ましい実施形態では、NDVの改変融合タンパク質(Fタンパク質)は、F3aa改変Fタンパク質であり、
かつ/または、プロテアーゼ切断部位における、好ましくはL289位における、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばL289Aを含む。
【0041】
好ましい実施形態では、VSVのGタンパク質は、改変融合タンパク質およびNDVのHNタンパク質に置き換えられている。
【0042】
組換え腫瘍崩壊ウイルスは、さらに、VSVの残りのタンパク質、すなわちラージポリメラーゼタンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、および核タンパク質(N)を含む。
【0043】
例えば、VSVの内在性糖タンパク質は、全長VSVゲノムをコードするプラスミドから欠失している場合がある。改変融合タンパク質を含むNDV糖タンパク質(NDV/F(L289A))および血球凝集素-ノイラミニダーゼを含むNDV糖タンパク質(NDV/HN)は、VSVマトリックス(M)遺伝子とラージポリメラーゼ(L)遺伝子との間に別個の転写ユニットとして挿入されていてもよい。例えば、
図1を参照されたい。
【0044】
本発明のrVSV(ベクター)のある実施形態では、NDVの改変融合タンパク質(Fタンパク質)は、配列番号10のアミノ酸配列[=F3aaタンパク質のaa配列]もしくは配列番号12のアミノ酸配列[=F3aaタンパク質/L289Aのaa配列]、
または、配列番号10もしくは12のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、NDVの改変融合タンパク質(Fタンパク質)は、配列番号9のヌクレオチド配列[=F3aaタンパク質のヌクレオチド配列]もしくは配列番号11のヌクレオチド配列[=F3aaタンパク質/L289Aのヌクレオチド配列]、
または、配列番号9もしくは11のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0045】
本発明のrVSV(ベクター)のある実施形態では、NDVのHNタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列、
または、配列番号6のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、NDVのHNタンパク質は、配列番号5のヌクレオチド配列、または、配列番号5のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0046】
上記で論じたように、本発明は、本発明の腫瘍崩壊ウイルスをコードする核酸を含む。
【0047】
上記で論じたように、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを含む。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明のベクターは、
- レポーター遺伝子(複数可)、
例えば、HSV1-sr39TK、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)、ソマトスタチン受容体2(SSTR2)、ルシフェラーゼ(ホタルまたはウミシイタケ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、lacZ、チロシナーゼ、
- 標的細胞(複数可)または組織に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、腫瘍細胞(複数可)または腫瘍(複数可)に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、
IFN-α、IFN-β、もしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの免疫刺激性遺伝子、
PD-1、PD1-L、CTLA-4、LAG-3、もしくはB7-H3などの免疫チェックポイント阻害性抗体、および/または
ワクチン接種のための腫瘍関連抗原(TAA)(標的とされる腫瘍に対して特異的)、
- あるいはそれらの組合せ
をさらに含む。
【0049】
ある実施形態では、本発明の核酸またはベクターは、配列番号13のヌクレオチド配列[=完全なウイルス/ベクター構築物のヌクレオチド配列]、
または、配列番号13のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、配列番号6、12、14~17のアミノ酸配列[=ウイルス/ベクター構築物によりコードされるタンパク質のaa配列]をコードするヌクレオチド配列、
または、配列番号6、12、14~17のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0050】
配列番号13は、完全なウイルス/ベクター構築物のヌクレオチド配列を示す。
配列番号14~17ならびに12および6は、配列番号13によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を示し、すなわち、次の通りである:
配列番号14 タンパク質VSV-Nのアミノ酸配列、
配列番号15 タンパク質VSV-Pのアミノ酸配列、
配列番号16 タンパク質VSV-Mのアミノ酸配列、
配列番号12 タンパク質NDV-F3aa(L289A)のアミノ酸配列、
配列番号6 タンパク質NDV-HNのアミノ酸配列、
配列番号17 タンパク質VSV-Lのアミノ酸配列。
【0051】
医薬組成物
上記で論じたように、本発明は、
(i)本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または本発明の核酸、または本発明のベクターと、
(ii)任意選択で、薬学的に許容されるキャリア(複数可)および/または賦形剤(複数可)と
を含む医薬組成物を提供する。
【0052】
一実施形態では、医薬組成物は、薬物(複数可)、
例えば、
化学療法剤(複数可)、
放射線療法剤(複数可)、
腫瘍ワクチン(複数可)、
免疫チェックポイント阻害薬(複数可)、
細胞搬送系(複数可)、
小分子阻害薬(複数可)、
塞栓剤(複数可)、
遮蔽ポリマー(複数可)
をされに含む。
【0053】
一実施形態では、医薬組成物は、全身送達、腫瘍注射、静脈内投与、動脈内投与のために、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内(intrathecal)、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内(intracavernous)、脳内、脳室内、および硝子体内の注射のために製剤化されている。
【0054】
遺伝子送達ツールとしての、および/または腫瘍検出のための使用
上記で論じたように、本発明は、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物の、
- 遺伝子送達ツール、
および/もしくは
- ウイルスの生体内分布の(非侵襲的)画像化としての、
ならびに/または
- 腫瘍検出のための、
使用を提供する。
【0055】
ある実施形態では、本発明のベクターは、標的細胞(複数可)または組織に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、腫瘍細胞(複数可)または腫瘍(複数可)に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、
IFN-α、IFN-β、もしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの免疫刺激性遺伝子、
PD-1、PD1-L、CTLA-4、LAG-3、もしくはB7-H3などの免疫チェックポイント阻害性抗体、および/または
ワクチン接種のための腫瘍関連抗原(TAA)(標的とされる腫瘍に対して特異的)を含む。
【0056】
ある実施形態では、本発明のベクターは、レポーター遺伝子(複数可)、
例えば、HSV1-sr39TK、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)、ソマトスタチン受容体2(SSTR2)、ルシフェラーゼ(ホタルまたはウミシイタケ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、lacZ、チロシナーゼを含み、
そのため、例えば、ウイルスの生体内分布の非侵襲的画像化または腫瘍検出のために好適である。
【0057】
医学的使用
上で議論したように、本発明は、医療において使用するための、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を提供する。
【0058】
上で議論したように、本発明は、がんの診断、予防、および/または処置において使用するための、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を提供する。
【0059】
一実施形態では、本発明は、腫瘍崩壊療法において使用するための、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を提供する。
【0060】
本明細書で使用される「腫瘍崩壊ウイルス療法」という用語は、腫瘍退縮を誘導するための、腫瘍崩壊ウイルス、それらをコードする核酸、またはそれぞれのベクターの投与による、がんの治療を指す。
【0061】
一実施形態では、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物は、他の療法との組合せで使用するために提供される。
【0062】
前記他の療法は、
細胞搬送系、
例えば、T細胞、樹状細胞、NK細胞、間葉系幹細胞、
免疫療法、
例えば、腫瘍ワクチン、もしくは免疫チェックポイント阻害薬、
および/または
標準的な腫瘍療法、
例えば、ラジオ波焼灼療法、化学療法、塞栓術、小分子阻害薬
でありうる。
【0063】
一実施形態では、投与は、全身投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍への注射による投与、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射による投与である。
【0064】
がんの診断、予防、および/または処置の方法
上で議論したように、本発明は、がんの診断、予防、および/または処置の方法であって、
それを必要とする被験体に、治療有効量の、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0065】
本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、またはベクターの治療有効量は、所望の治療結果、特に腫瘍退縮をもたらす量である。
【0066】
組換えウイルス、核酸、ベクター、またはそれらの医薬組成物(複数可)は、好ましくは、例えば数日間から最長数週間までの一定期間にわたり、複数サイクルで投与される。
【0067】
一実施形態では、投与は、全身投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍への注射による投与、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射による投与である。
【0068】
一実施形態では、本発明の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、もしくはベクター、または本発明の医薬組成物は、他の療法との組合せで提供され、それを必要とする被験体に投与される。
【0069】
前記他の療法は、
細胞搬送系、
例えば、T細胞、樹状細胞、NK細胞、間葉系幹細胞、
免疫療法、
例えば、腫瘍ワクチン、もしくは免疫チェックポイント阻害薬、
および/または
標準的な腫瘍療法、
例えば、ラジオ波焼灼療法、化学療法、塞栓術、小分子阻害薬
でありうる。
【0070】
好ましい実施形態のさらなる記述
本発明は、内在性糖タンパク質が欠失しており、ニューカッスル病ウイルス(NDV)の改変エンベロープタンパク質で交換されている、シュードタイプ化されたVSVベクターを開示する。
【0071】
多塩基プロテアーゼ切断部位の導入により、NDVのHitchner B1株の融合タンパク質を改変すると(rNDV/F3aa)、外来性プロテアーゼの非存在下で広範な細胞における効率的なシンシチウム形成が可能になることが、これまでに実証されている(Vigilら、2007年)。本発明者らは、F3aa改変融合タンパク質内のアミノ酸289におけるロイシンからアラニンへの単一のアミノ酸置換(L289A)が、F3aa変異のみを保有するウイルスよりも、実質的により多くのシンシチウム形成および腫瘍壊死をもたらし、さらなる毒性が一切ないことをさらに実証した(Altomonteら、2010年)。
【0072】
本発明に従い、前記改変された超融合性(hyperfusogenic)Fタンパク質を、NDV HN付着タンパク質と併せて、VSV G欠失ベクターに挿入した。
【0073】
これら2つの強力な腫瘍崩壊ベクターのハイブリッドを作製することにより、本発明者らは、各ウイルスの有益な特色を統合すると同時に、それぞれの安全性の懸念を排除する。
【0074】
結果として得られるベクターはVSV骨格を有し、したがって、野生型VSVの急速な複製サイクルを維持する。さらに、NDVのHNおよび超融合性Fタンパク質の組み込みを理由として、組換えウイルスは向上したシンシチウム形成を誘導し、ウイルスの効率的な腫瘍内拡散、ならびに腫瘍細胞死および抗腫瘍免疫応答の誘導の強力な機構が可能になる。この方策を使用すると、NDVに関連付けられる環境上の脅威を伴わずに、融合性ウイルスの利益を達成することができる。
【0075】
さらに、内在性VSV糖タンパク質が欠失していることから、ベクターに関連付けられる神経毒性はないはずである。最後に、NDVは、腫瘍細胞において上方制御されるシアル酸残基を介して標的細胞に付着するため(Bullら、2014年)、本発明者らは、シュードタイプ化されたベクターを用いて、さらなる形質導入による腫瘍の標的化を達成することができる。
【0076】
多数のシュードタイプ化されたVSVベクターが野生型VSVよりも安全なベクターとして既に報告されているが、本発明者らの特異的なウイルス改変は、より安全であることに加えて、VSVエンベロープタンパク質の、NDVのものとの置換が、より強力なウイルスをもたらすという点で異なる。
【0077】
さらに本発明者らは、安全性に悪影響を与えることなく、結果として得られる組換えウイルスの有効性をさらに改善するために、NDV Fタンパク質の変異バージョンを導入する。
【0078】
この糖タンパク質交換の利益には、次の3つの部分からなる:
1.内在性VSV糖タンパク質に関連付けられる向神経性は、VSVエンベロープの欠失および非向神経性NDVエンベロープタンパク質の導入により回避されうる;
2.腫瘍細胞は、NDVの天然の受容体であるシアル酸残基の上方制御を介して標的化されうる;そして
3.ウイルス拡散および腫瘍細胞殺滅は、NDV Fタンパク質の高度に融合性の変異体バージョンの導入により有意に向上しうる。
【0079】
本発明者らの構築物は、安全性および有効性の両方の改善を同時にもたらす。
【0080】
本発明のシュードタイプ化されたウイルスは、野生型ベクターを上回る明らかな利点として、改善した安全性および向上した有効性を提示する。
【0081】
さらに、この特定のベクターにはまた、これまでに報告されているシュードタイプ化されたVSVベクターを上回る利点がある。VSV-GPベクター(LCMV-GPでシュードタイプ化されたもの)は安全性プロファイルの向上を示す、NDVのものと比較して、LCMV糖タンパク質により得られるさらなる治療機構はない(Muikら、2011年)。麻疹ウイルス(MV)は、パラミクソウイルス科のメンバーであり、かつそのエンベロープも血球凝集素および融合タンパク質からなるという点でNDVと同様であるが、rVSV-MVベクター(Ayala-Bretonら、2012年)は、融合性(fusigenicity)を増加させる改変を一切含有せず、シンシチウム形成において本発明者らの超融合性VSV-NDVよりも効率が低い可能性がある。さらに、MVは、3つの別個の受容体:CD46、シグナルリンパ球活性化分子(SLAM)、およびネクチン4を介して標的細胞に付着する。しかしながら、SLAM陽性免疫細胞の感染は免疫抑制をもたらし、ネクチン4陽性気道上皮細胞の感染は呼吸性排出(respiratory shedding)およびウイルス伝染をもたらし、これらは両方とも、腫瘍崩壊ウイルスによる療法の望ましくない副作用である。したがって、SLAMおよびネクチン4とのMV Hの相互作用を取り除く改変(Liuら、2014年)または付着タンパク質を腫瘍特異的受容体に再標的化する改変(Ayala-Bretonら、2012年)が、rVSV-MVベクターとの関連において、シュードタイプ化されたウイルスを腫瘍に再標的化するための方策として行われてきた。しかしながら、MVエンベロープの天然の付着機構に対するこれらの制限は、組換えウイルスを確実に減弱させる。実際、ネクチン4およびCD46は、MV H上に実質的に重複する受容体結合表面を有し、ネクチン4結合の妨害は、CD46への付着を損ない、腫瘍崩壊効果の大幅な減少をもたらすことが示された(Liuら、2014年)。最後に、ヒト集団の大部分は麻疹ウイルスのワクチン接種を受けているため、ウイルスエンベロープに対する高レベルの循環抗体は、rVSV-MVベクターの中和に関与する可能性がある。
【0082】
したがって、本発明者らのrVSV-NDVベクターは、その超融合性の特色、一般人口における既存の免疫の欠如、およびVSVまたはNDVと比較して減弱が予想されないことを理由として、これまでに報告されているシュードタイプ化されたベクターよりも優れている。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
組換え腫瘍崩壊ウイルスであって、
水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含み、
VSVの糖タンパク質(Gタンパク質)が欠失しており、かつ、
ニューカッスル病ウイルス(NDV)の改変融合タンパク質(Fタンパク質)、および
NDVの血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)タンパク質
を含む、組換え腫瘍崩壊ウイルス。
(項目2)
NDVの前記改変融合タンパク質(Fタンパク質)が、F3aa改変Fタンパク質であり、
かつ/または、プロテアーゼ切断部位における、好ましくはL289位における、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばL289Aを含み、
かつ/または、VSVの前記Gタンパク質が、前記改変融合タンパク質およびNDVのHNタンパク質で置き換えられている、
項目1に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス。
(項目3)
NDVの前記改変融合タンパク質(Fタンパク質)が、配列番号10もしくは配列番号12のアミノ酸配列、
または、配列番号10もしくは12のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、NDVの前記改変融合タンパク質(Fタンパク質)が、配列番号9もしくは配列番号11のヌクレオチド配列、
または、配列番号9もしくは11のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされ、
かつ/あるいは、NDVの該HNタンパク質が、配列番号6のアミノ酸配列、
または、配列番号6のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、NDVの該HNタンパク質が、配列番号5のヌクレオチド配列、
または、配列番号5のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、
項目1または2に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス。
(項目4)
項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルスをコードする核酸。
(項目5)
項目4に記載の核酸を含むベクターであって、
任意選択で、
- レポーター遺伝子(複数可)、
例えば、HSV1-sr39TK、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)、ソマトスタチン受容体2(SSTR2)、ルシフェラーゼ(ホタルまたはウミシイタケ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、lacZ、チロシナーゼ、
- 標的細胞(複数可)または組織に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、腫瘍細胞(複数可)または腫瘍(複数可)に送達される遺伝子(複数可)、
例えば、
IFN-α、IFN-β、もしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの免疫刺激性遺伝子、
PD-1、PD1-L、CTLA-4、LAG-3、もしくはB7-H3などの免疫チェックポイント阻害性抗体、および/または
ワクチン接種のための腫瘍関連抗原(TAA)(標的とされる該腫瘍に対して特異的)、
- あるいはそれらの組合せ
をさらに含む、ベクター。
(項目6)
配列番号13のヌクレオチド配列、
または、配列番号13のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなり、
かつ/あるいは、配列番号6、12、14~17のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
または、配列番号6、12、14~17のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、もしくは好ましくは少なくとも70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、
項目4に記載の核酸または項目5に記載のベクター。
(項目7)
(i)項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または項目4から6のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクターと、
(ii)任意選択で、薬学的に許容されるキャリア(複数可)および/または賦形剤(複数可)と
を含む医薬組成物。
(項目8)
薬物(複数可)、
例えば、
化学療法剤(複数可)、
放射線療法剤(複数可)、
腫瘍ワクチン(複数可)、
免疫チェックポイント阻害薬(複数可)、
細胞搬送系(複数可)、
小分子阻害薬(複数可)、
塞栓剤(複数可)、
遮蔽ポリマー(複数可)
をさらに含む、項目7に記載の医薬組成物。
(項目9)
全身送達、腫瘍注射、静脈内投与、動脈内投与のために、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射のために製剤化される、
項目7または8に記載の医薬組成物。
(項目10)
項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または項目4から6のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクター、または項目7から9のいずれか一項に記載の医薬組成物の、遺伝子送達ツール、ウイルスの生体内分布の(非侵襲的)画像化としての、および/または腫瘍検出のための使用。
(項目11)
医療において使用するための、項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または項目4から6のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクター、または項目7から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目12)
がんの診断、予防、および/または処置において使用するための、項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または項目4から6のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクター、または項目7から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目13)
腫瘍崩壊療法において使用するための、項目12に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、ベクター、または医薬組成物。
(項目14)
他の療法、例えば、
細胞搬送系、
例えば、T細胞、樹状細胞、NK細胞、間葉系幹細胞、
免疫療法、
例えば、腫瘍ワクチン、もしくは免疫チェックポイント阻害薬、
および/または
標準的な腫瘍療法、
例えば、ラジオ波焼灼療法、化学療法、塞栓術、小分子阻害薬
との組合せで使用するためのものであり、
かつ/あるいは、投与が、全身投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍への注射による投与、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射による投与である、
項目12に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、核酸、ベクター、または医薬組成物。
(項目15)
がんの診断、予防、および/または処置の方法であって、
それを必要とする被験体に、治療量の、項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍崩壊ウイルス、または項目4から6のいずれか一項に記載の核酸もしくはベクター、または項目7から9のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、
好ましくは、該投与が、全身投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍への注射による投与、
ならびに/または、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、心臓内、関節内、海綿内、脳内、脳室内、および硝子体内の注射による投与である、
方法。
【0083】
以下の実施例および図面は、本発明を例示するが、本発明をそれらに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】
図1は、NDVの糖タンパク質を発現する組換えシュードタイプ化VSV構築物を示す図である。全長VSVゲノムをコードするプラスミドからVSVの内在性糖タンパク質を欠失させた。改変融合タンパク質を含むNDV糖タンパク質(NDV/F(L289A))および血球凝集素-ノイラミニダーゼを含むNDV糖タンパク質(NDV/HN)を、VSVマトリックス(M)遺伝子とラージポリメラーゼ(L)遺伝子との間に別個の転写ユニットとして挿入した。確立された逆遺伝学系を使用し、それぞれのシュードタイプ化されたVSVベクターをレスキューした。
【0085】
【
図2】
図2は、rVSV-NDVがHCC細胞株において複製し、完全な細胞傷害性を引き起こすことができることを示す図である。ヒトHCC細胞株であるHuh7(A、B)およびHepG2(C、D)を、0.01の感染多重度(MOI)でrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVに感染させた。1時間の感染後、細胞を洗浄し、新鮮な培地を細胞に添加した。感染後の様々な時点で、LDHアッセイ(B、D)による細胞傷害性測定のために上清のアリコートを収集し、TCID50アッセイ(A、C)による細胞内力価測定のために細胞単層を溶解させた。実験は三連で行い、データは平均+/-標準偏差として提示されている。
【0086】
【
図3】
図3は、rVSV-NDV感染がHCC細胞における急速なシンシチウム形成をもたらすことを示す図である。シュードタイプ化されたrVSV-NDVベクターが腫瘍細胞においてシンシチウム形成を誘導する能力を評価するために、様々なHCC細胞株を0.01のMOIでrVSV-NDV、rNDV、またはrVSVに感染させ、感染後の様々な時点で顕微鏡により観察した。さらなる細胞を対照としてPBSで処理した。代表的なヒトHCC細胞株としてHuh7細胞が示されており、代表的な画像は200倍の拡大率でキャプチャした。
【0087】
【
図4】
図4は、NDVエンベロープタンパク質でのVSVのシュードタイプ化がIFNの抗ウイルス作用に対するベクターの感受性を変更しないことを示す図である。I型IFNに対するrVSV-NDVの感受性を評価するために、IFN感受性細胞株(A549)を、0.01のMOIでrVSV-NDV、rVSV、およびrNDVに感染させた。感染の48時間後に細胞を溶解させ、細胞内ウイルス力価をTCID50アッセイにより測定した。実験は三連で行い、平均値+/-標準偏差が示されている。
【0088】
【
図5】
図5は、rVSV-NDVの複製および細胞傷害性が初代ヒト肝細胞において実質的に減少することを示す図である。初代ヒト肝細胞を0.01のMOIでrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVに感染させた。細胞溶解物を様々な時点で細胞内ウイルス力価のTCID50分析に供した。さらに、LDHアッセイによる細胞傷害性測定のために様々な時点で上清のアリコートを収集した。実験は二連で(in duplicate)行い、平均+/-標準偏差が示されている。
【0089】
【
図6】
図6は、rVSV-NDVの複製および細胞傷害性が初代マウスニューロンにおいて実質的に減少することを示す図である。初代マウスニューロンを0.01のMOIでrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVに感染させた。細胞溶解物を様々な時点で細胞内ウイルス力価のTCID50分析に供した。標準的なMTSアッセイを使用し、さらなるウェルを細胞生存率についてアッセイした。実験は二連で行い、平均+/-標準偏差が示されている。
【0090】
【
図7】
図7は、シュードタイプ化されたrVSV-NDVベクターが免疫原性細胞死を引き起こすことを示す図である。Huh7細胞を48時間にわたり0.01のMOIでrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVに感染させたか、または偽感染させた。馴化培地を濃縮し、放出されたHMGB1、Hsp70、およびHsp90の検出のために10μgのタンパク質をウェスタンブロット分析に供した。
【0091】
【
図8】
図8は、シュードタイプ化されたrVSV-NDVベクターが免疫不全マウスでrVSVと比較して向上した安全性を示すことを示す図である。免疫不全の雄NOD-SCIDマウスを、10
6 TCID50の用量におけるrVSV-NDVまたはrVSV-GFP(図では簡略化のためにrVSVと称される)の尾静脈注射により処置した。マウスは毎日モニタリングし、人道的なエンドポイントにおいて安楽死させた。体重変化は、注射に関する時間に対してプロットし(左);血液中のウイルス力価は、1日目および7日目にTCID50分析により測定し(中央);生存の割合は、Kaplan-Maier生存曲線によってプロットした(左)。
【0092】
【
図9】
図9は、10
6 TCID50のrVSVで処置されたマウスが肝臓および脳における病理学的変化を明らかにしたことを示す図である。肝臓のH/E染色は、核溶解を伴う肝細胞の変性により指し示された、rVSV処置後の肝細胞の小群の壊死を明らかにした(左上パネル)。rVSV適用後の脳幹における急性壊死が、核濃縮および核崩壊を呈する、変性しているグリア細胞と共に観察された(右上パネル)。グリア細胞の変性は、カスパーゼ3の免疫組織化学染色によってさらに確認できた(右下)。代表的な画像が示されており、スケールバーは50μmに等しい。毒性の徴候を示した後にrVSVを与えたマウスの脳および肝臓の組織溶解物からウイルス力価を定量した。平均+SEMが示されている。
【実施例】
【0093】
1. 材料および方法
1.1 ウイルス
これまでに記述されているように(Huangら、2003年)、GFPレポーターを発現する組換えVSV(本明細書では「rVSV」と称される)を操作してレスキューした。これまでに記述されているように(Altomonteら、2010年)、F3aa(L289A)変異を保有し、GFPレポーター遺伝子を発現する組換えNDV(本明細書では「rNDV」と称される)を操作してレスキューした。
【0094】
全長VSVゲノムをコードするプラスミド(pVSV-XN2)をまず改変し、NDVのF3aa(L289A)改変融合タンパク質(Ebertら、2004年)をG遺伝子とL遺伝子との間のさらなる転写ユニットとして発現させることにより、組換えrVSV-NDVを産生した。内在性VSV糖タンパク質(G)をMluIおよびXhoI制限酵素での消化によって欠失させた。これらの制限酵素は、それぞれ、Gの5’および3’非コード領域内の特有の制限部位を認識する。G欠失プラスミドの自己ライゲーション後、NDV F遺伝子に続く特有のNheI制限部位において短いオリゴヌクレオチドリンカーを挿入して、HN遺伝子の挿入のための多重クローニング部位を作製した。G欠失VSV-NDV/F3aa(L289A)プラスミドにおける新しく組み込まれた制限部位内への挿入のために、PacIおよびPmeI制限部位をそれぞれPCR産物の5’末端および3’末端に導入するプライマーを用い、全長NDVゲノムをコードするプラスミドからPCRによりHN遺伝子を増幅した。結果として得られたプラスミドを配列分析に供して、PCR挿入物の忠実度のほか、遺伝子間の転写開始配列および転写終止配列ならびに遺伝子順序を確認した。最後に、マイナス鎖RNAウイルスをレスキューするための確立された逆遺伝学系(Lawsonら、1995年)を使用し、ここでは「rVSV-NDV」と称される感染性ウイルスをレスキューした。
図1も参照されたい。
【0095】
1.2 細胞株
2つのヒトHCC細胞株(HepG2およびHuh-7)をDr.Ulrich Lauer(University Hospital Tuebingen、Germany)から取得し、10%のウシ胎仔血清(FBS)、1%のL-グルタミン(200mM)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、1%の非必須アミノ酸、および1%のピルビン酸ナトリウムを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。A549細胞をATCC(Rockville、MD)から取得し、HCC細胞株と同じ培地中で培養した。公益国営財団Human Tissue and Cell Research(HTCR)foundation(Regensburg、Germany)の指針に従い、肝臓腫瘍の外科的切除を受けた患者(B型およびC型肝炎ウイルスならびにヒト免疫不全ウイルスに対して陰性)から初代ヒト肝細胞を得た。肝細胞はHepatoZYME-SFM培地(Gibco-Invitrogen、Karlsruhe、Germany)中で維持した。初代胎児性一次皮質ニューロンがE16.5マウスの皮質から切り離され、Stefan Lichtenthalerの研究室(DZNE、Munich、Germany)によって提供された。B27(2%)、0.5mMのグルタミン、および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したNeurobasal培地(Gibco)中で、ニューロン培養物を維持した。細胞株および初代細胞はすべて、5%のCO2を含む37℃の加湿インキュベータ内で維持した。
【0096】
1.3 顕微鏡による分析
ヒトHCC細胞株であるHuh7およびHepG2をおよそ90%の培養密度で6ウェル皿に蒔き、0.01のMOIでrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVのいずれかに感染させたか、または偽感染させた。感染の16時間後、24時間後、および48時間後に、Axiovert 40CFL顕微鏡(Zeiss)において200倍の拡大率で細胞を可視化し、顕微鏡に取り付けられたCanon Powershot A620カメラを用いて代表的な画像をキャプチャした。
【0097】
1.4 IFN用量応答アッセイ
インターフェロン感受性A549細胞をウェル当たり105細胞の密度で24ウェル皿に蒔き、一晩培養した。翌日の夕方、培養培地に直接添加した異なる濃度(0、100、500、および1000IU/ml)のUniversal type I Interferonで細胞を前処理した。一晩のインキュベーション後、細胞を0.01の感染多重度(MOI)でrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVのいずれかに感染させた。感染の48時間後、細胞を100μlのPBS中に収集し、3回の冷凍-解凍サイクルにより溶解させた。細胞溶解物のTCID50分析によって腫瘍内ウイルス力価を決定した。
【0098】
1.5 成長曲線(TCID50アッセイ)
HCC細胞株(Huh7およびHepG2)、ならびに初代ヒト肝細胞および初代マウスニューロンにおいて、ウイルス成長曲線を完成した。
【0099】
HCC細胞株をウェル当たり3.5×105細胞の密度で6ウェル皿に蒔き、一方でPHHおよびニューロンは、ウェル当たり105細胞の密度でコラーゲン被覆24ウェル皿に播種した。各細胞株を0.01の感染多重度(MOI)でrVSV、rNDV、およびrVSV-NDVに感染させた。感染は、37℃で1時間にわたり、1mlのPBS(6ウェル皿)または250μlのPBS(24ウェル皿)において行った。インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、新鮮な培地を添加した。細胞内ウイルス力価のTCID50分析のために、感染の0、16、24、48、および72時間後に細胞溶解物を収集した。
【0100】
1.6 細胞傷害性アッセイ(LDHまたはMTSアッセイ)
感染したHCC細胞株(Huh7およびHepG2)および初代ヒト肝細胞の細胞生存率を、細胞培養物上清から放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(Lactate Dehyrogenase)(LDH)を測定することによって分析した。成長曲線実験において行ったように細胞を蒔き、感染させ、洗浄した。感染の24、48、および72時間後に、上清のアリコートを収集し、CytoTox 96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assayプロトコール(Promega)を使用してLDH放出を定量した。各時点において、ウイルス感染後のLDH放出を、最大LDH放出対照に対する百分率として計算した。偽処理した細胞の上清中で検出されたベースラインLDHレベルを、実験のウェルから取得した値から減算した。
【0101】
CellTiter96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega、Madison、WI)を使用したMTS(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)アッセイにより、ニューロンの細胞生存率を分析した。ニューロンを5×104細胞/ウェルの密度でコラーゲン被覆96ウェル皿に播種し、偽処理したか、または0.01のMOIでrVSV、rNDV、もしくはrVSV-NDVに感染させた。感染の24、48、および72時間後に、製造元のプロトコールに従って細胞生存率を測定した。感染していない対照と比較した実験試料の細胞生存率の差として細胞傷害性を計算した。
【0102】
1.7 ウェスタンブロット
Huh7細胞をおよそ90%の培養密度で6ウェルプレートに蒔き、48時間にわたり0.01のMOIでrVSV、rNDV、またはrVSV-NDVに感染させたか、または偽感染させた。馴化培地を収集し、10kDのカットオフを有するAmicon Ultra Centrifugalフィルター(Merck Millipore、Billerica、MA)を使用して約200μlまで濃縮した。Pierce BCA Protein Assay(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用してタンパク質濃度を定量し、10μgの各試料を7.5%変性SDS-PAGEゲルにロードし、続いてニトロセルロース膜上に移した。HMGB1およびHsp90(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)ならびにHsp70(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)に対する特異的抗体と、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした適切な二次抗体とを使用して、タンパク質バンドを検出した。ECL Primeウェスタンブロット検出試薬(GE Healthcare Life Sciences、Pittsburgh、PA)を使用し、バンドを可視化した。
【0103】
2. 結果
組換えVSV-NDVベクター(
図1)を、複製および細胞傷害性について、腫瘍細胞において、また健康な肝細胞およびニューロンにおいても、in vitroで特徴付けた。本発明者らは、2つのヒト肝細胞癌(HCC)細胞株を代表的な腫瘍細胞として使用し、rVSV-NDVを、複製し細胞を殺滅するその相対的な能力に関して、rVSVおよびrNDVと比較した。rVSV-NDVの複製は、野生型ベクターと比較すると少し遅延したが、感染の約72時間後に同様の力価に達することができ、これは、in vitroで完全な細胞殺滅をもたらした(
図2)。
【0104】
ウイルス誘導性シンシチウム形成を観察するため、顕微鏡撮影のために、さらなる細胞を、rVSV-NDVならびに親rVSVおよびrNDVに感染させた。腫瘍細胞の顕微鏡による分析により、rVSV-NDVに感染させたウェル内では、シンシチウムの複数のフォーカスが感染後16時間までに明らかになったが、一方、これは、rNDVに感染させたものにおいては有意に遅延していた。予想通り、rVSVで処理した細胞はシンシチウムを形成しなかったが、これらは、VSV感染に典型的な細胞変性効果(CPE)に対する感受性が高く、感染の16時間後よりも早期に生じた(
図3)。
【0105】
糖タンパク質交換がI型インターフェロン(IFN)の抗ウイルス作用に対するベクターの感受性を偶発的に損失させたことを排除するために、IFN用量応答を行った。健康な細胞はIFN応答遺伝子によってウイルスを効率的に除去することができるが、腫瘍細胞はそのIFNシグナル伝達経路に欠陥があることが多いため、I型IFNに対するVSVの優れた感受性は、腫瘍特異性の鍵となる機構である。このアッセイは、I型IFNに対するrNDVの相対的な非感受性を明らかにしたが、rVSV-NDVベクターはIFNの添加によって急速に減弱し、rVSVで観察されたものと同様のレベルまで低減した(
図4)。
【0106】
本発明者らは次に、rVSV-NDVの安全性を評価するために、正常な初代ヒト肝細胞およびマウスニューロンにおいて成長曲線を完成させかつ細胞傷害性アッセイを行った。シュードタイプ化されたベクターの複製は経時的に極めてわずかしか観察することができず、力価は初代肝細胞において感染の48時間後に対照VSVベクターよりもおよそ5ログ(5 logs)低く、同じ時点でrNDVよりも3ログ低かった(
図5)。ほぼすべての肝細胞がrVSVへの感染の72時間後までに死滅したが、rVSV-NDVに感染した細胞におけるLDHアッセイにより細胞傷害性を観察することができなかった(
図5)。同様に、rVSV-NDVの力価は、調査したすべての時点で初代マウスニューロンにおいて対照VSVベクターよりも有意に低く、これは、PBS処理ニューロンにおいて観察されたものと同様のレベルの細胞生存率に対応した(
図6)。まとめると、rVSV-NDVは、健康な初代細胞における複製のエビデンスをほとんど示さず、皆無かそれに近いin vitroでの細胞傷害性をもたらし、rVSVおよびrNDVの両方より実質的に安全なウイルスであることを示した。
【0107】
rNDVについてシンシチウム形成を介して示されるように、シュードタイプ化されたrVSVベクターが免疫原性細胞死を誘導するかどうかを決定するため、本発明者らは、感染したHuh7細胞からの高移動度群ボックス1(HMGB1)ならびに熱ショックタンパク質70および90の放出を調査した。48時間の感染後、本発明者らは、rVSV感染細胞の上清中に放出された比較的低いレベルのHMGB1、Hsp70、およびHsp90を観察した。しかしながら、rNDVおよびrVSV-NDVの両方による感染は、分泌された3つすべての免疫原性細胞死に関するマーカーの高いレベルをもたらした(
図7)。これらの結果は、シュードタイプ化されたrVSV-NDVベクターへの感染により引き起こされた強力な直接的な細胞傷害性に加えて、このウイルスを用いたin vivo処置が、腫瘍に対して向けられる実質的な免疫応答をもたらしうることを示す。
【0108】
シュードタイプ化されたrVSV-NDVベクターのin vivoでの安全性を評価するため、およそ8週齢の免疫不全雄NOD-SCIDマウスを、マウス当たり10
6 TCID50の用量のrVSV-NDVまたは対照rVSV-GFPウイルスのいずれかの尾静脈注射(N=6)により処置した。マウスの体重および全体的な身体的外見を毎日モニタリングし、人道的なエンドポイントにおいてマウスを安楽死させた。1日目、3日目、7日目、14日目、および安楽死のときに、血清化学および循環ウイルス力価の分析のために血液をサンプリングした。rVSV-GFPを与えた2匹のマウスは、処置後の最初の週の間に体重が急速に減少し始め、6匹すべてが、処置後11日から17日の間に急性的に死亡したか、または、極度の体重減少、脱水、苦痛の徴候(姿勢の変化、運動障害、孤立など)、および/もしくは神経毒性の徴候(四肢の麻痺および回転行動)を理由として安楽死させられた(
図8)。さらに、処置後1日目および7日目に血液から感染性ウイルス力価を回収することができた(
図8、中央)。対照的に、rVSV-NDVを与えたマウスは、無視できる量の体重が減少しただけで健康に見え、研究全体を通して正常な挙動を呈した。これらのマウスのうち3匹は、主要臓器の組織学的分析のため処置後21日に安楽死させ、一方残りの動物は処置後60日間にわたりモニタリングし、60日の時点で病理学的分析のために安楽死させた。分析したいずれの時点でも、rVSV-NDVで処置したマウスの血液中で感染性ウイルス力価を検出することはできなかった。肝機能(GPT)および腎機能(BUNおよびクレアチニン)の血漿測定値は、いずれの処置群についても異常な値を示さなかった(データは示さない)。
【0109】
組織切片は、検体の処置群に対して盲検の病理学者により検査された。組織学的分析は、21日目または60日目のいずれかに安楽死させた、rVSV-NDV処置マウスから切り取った組織において、主要な病理学的所見がないことを明らかにした。さらに、rVSV-NDVで処置したマウスでは、脳または肝臓の組織内で検出可能な力価を観察することはできなかった(データは示さない)。全く対照的に、同じ用量のrVSV-GFPを与えたマウスは、重い類洞内の浮腫、単一細胞および小群の壊死を伴う中程度の急性肝炎、ならびに肝組織のアポトーシスを呈した(
図9)。さらに、核濃縮および核崩壊(karyorhexis)を呈する、変性しているグリア細胞と共に、脳幹における急性壊死を観察することができた。グリア細胞の変性は、カスパーゼ3の免疫組織化学染色によってさらに確認された。組織溶解物のTCID50分析は、剖検時に肝臓および脳における感染性VSVの定量可能なレベルを明らかにした。
【0110】
前出の記述、特許請求の範囲、および/または添付の図面において開示される特色は、別々でも、またそれらの組合せにおいても、本発明をその多様な形態で実現するための材料となりうる。
【0111】
【配列表】