(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法および使用方法ならびにガラス基板積層用ポリイミド前駆体溶液
(51)【国際特許分類】
B32B 17/10 20060101AFI20220107BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220107BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220107BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220107BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220107BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/34
B32B27/20 Z
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019167246
(22)【出願日】2019-09-13
(62)【分割の表示】P 2016570696の分割
【原出願日】2016-01-21
【審査請求日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2015010080
(32)【優先日】2015-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 猛
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐己
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-131659(JP,A)
【文献】特表2012-519960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0161864(US,A1)
【文献】国際公開第2013/147087(WO,A1)
【文献】特開平09-176329(JP,A)
【文献】特開2013-036021(JP,A)
【文献】特開2015-044977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00- 43/00
C08G73/00- 73/26
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、このガラス基板上に形成されたフィラ含有ポリイミド層を含むポリイミド被膜とからなる積層体であって、前記フィラが
黒鉛粒子および/またはシリコン粒子であり、前記フィラの含有量が、ポリイミド被膜の全質量に対し、10~40質量%(ただし、10質量%を除く)であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記ポリイミド被膜が、前記フィラ含有ポリイミド層、および当該フィラ含有ポリイミド層上に形成されたフィラ非含有ポリイミド層を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液をガラス基板上に塗布、乾燥し、熱処理することにより、フィラ含有ポリイミド層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の積層体を電子デバイスの製造に用いることを特徴とする積層体の使用方法。
【請求項5】
黒鉛粒子および/またはシリコン粒子をフィラとして含有し、前記フィラの含有量が、全固形分質量に対し、10~40質量%(ただし、10質量%を除く)であることを特徴とするガラス基板積層用ポリイミド前駆体溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、特に、優れた耐熱性と寸法安定性とを有するポリイミド層(被膜)とガラス基板とからなる積層体、およびその製造方法および使用方法ならびにガラス基板積層用ポリイミド前駆体溶液(ポリイミド被膜形成用ポリイミド前駆体溶液)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、および電子ペーパー等の電子デバイスの分野では、主としてガラス基板上に電子素子を形成したものが用いられているが、ガラス基板は剛直であり、しなやかさに欠けるため、フレキシブルになりにくいという問題がある。
【0003】
そこで、フレキシブル性を有しかつ良好な耐熱性と寸法安定性とを有するポリイミド等の有機高分子材料をガラス基板に積層一体化した積層体を基板として用いる方法が提案されている。
【0004】
特許文献1~3には、低い熱膨張係数(CTE)を有するポリイミド被膜をガラス基板上に形成して積層一体化し、これを電子素子形成のための基板として利用することが提案されている。ここで、ポリイミドのCTEは、ポリイミドの寸法安定性を示す指標の1つであり、低いCTEを有するガラス基板(例えば、特許文献3に記載されているようなCTEが4ppm/℃以下の無アルカリガラス基板)のCTEに近いほど、電子素子形成工程における高温処理過程で、積層体界面で生じるポリイミドの歪が小さくなり、ポリイミド被膜の寸法安定性が向上する。
【0005】
前記低熱膨張係数(CTE)のポリイミドとしては、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)等の芳香族テトラカルボン酸類とp-フェニレンジアミン(PDA)等の芳香族ジアミンとから得られるポリイミドが、CTEが比較的低く、かつ優れた耐熱性を有することが知られている。
【0006】
このようなポリイミド被膜が積層されたガラス基板においては、ガラス基板をキャリア用の基板として利用する場合、ポリイミド被膜の表面に電子素子を形成後、最後にポリイミド被膜をガラス基板から剥離することにより、フレキシブル基板とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-297054号公報
【文献】特開2012-35583号公報
【文献】特開2014-205327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来開示されたポリイミド被膜では、CTEを充分に小さくすることが難しく、その寸法安定性は充分なものではなかった。従い、例えば、ガラス基板から剥離されたポリイミド被膜がカールしやすいという問題があった。カールの曲率半径が小さいほど、ポリイミド被膜の取り扱いが煩雑となり、作業性に問題が生じた。また、ポリイミド被膜のガラス基板からの剥離特性も充分なものではなかった。
【0009】
そこで、本発明は前記課題を解決するものであって、ポリイミド被膜と、ガラス基板とからなる積層体において、ポリイミド被膜を、ガラス基板から剥離する際、良好な剥離特性を有し、かつ剥離されたポリイミド被膜がカールしにくい積層体とその製造方法および使用方法、ならびにこのようなポリイミド被膜を形成させることができるガラス基板積層用ポリイミド前駆体溶液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、前記積層体にておいて、ガラス基板とポリイミド被膜とからなる積層体において、ポリイミド被膜の構成を特定のものとすることにより前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記を趣旨とするものである。
(1)ガラス基板と、このガラス基板上に形成されたフィラ含有ポリイミド層を含むポリイミド被膜とからなる積層体であって、前記フィラの熱膨張係数が10ppm/℃以下であることを特徴とする積層体。
(2)前記ポリイミド被膜が、前記フィラ含有ポリイミド層、および当該フィラ含有ポリイミド層上に形成されたフィラ非含有ポリイミド層を含む、(1)に記載の積層体。
(3)前記フィラが、カーボン粒子、セラミック粒子およびシリコン粒子からなる群から選択される1種以上のフィラである、(1)または(2)に記載の積層体。
(4)フィラ含有ポリイミド前駆体溶液をガラス基板上に塗布、乾燥し、熱処理することにより、フィラ含有ポリイミド層を形成することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
(5)(1)~(3)のいずれかに記載の積層体を電子デバイスの製造に用いることを特徴とする積層体の使用方法。
(6)熱膨張係数が10ppm/℃以下のフィラを含有することを特徴とするガラス基板積層用ポリイミド前駆体溶液。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体のポリイミド被膜は、ガラス基板に接しているポリイミド被膜のCTEが充分に低く、カールしにくい。カールしたとしても、カールの曲率半径が充分に大きい。また本発明の積層体は、ポリイミド被膜が良好な剥離性を有しているので、フラットパネルディスプレイおよびフレキシブルデバイス等の電子デバイスを製造する際の積層体として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
[積層体]
本発明の積層体は、ガラス基板と、ポリイミド被膜とからなるものである。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、または無アルカリガラス等からなる基板を用いることができ、これらのなかで、無アルカリガラス基板を好ましく用いることができる。これらのガラス基板は、シランカップリング剤処理等公知の表面処理がなされていてもよい。
【0015】
前記ガラス基板の厚みとしては、0.3~5.0mmが好ましい。厚みが0.3mmより薄いと基板のハンドリング性が低下することがある。また、厚みが5.0mmより厚いと生産性が低下することがある。
【0016】
本発明の積層体は、ガラス基板と、このガラス基板上に形成されたフィラ含有ポリイミド層を含むポリイミド被膜とからなる。ここで、フィラ含有ポリイミド層とは、ポリイミド層の全質量に対し、フィラ含有量が5質量%以上であるポリイミド層をいう。フィラ非含有ポリイミド層とは、フィラ含有量が5質量%未満であるポリイミド層をいう。本発明の積層体においては、ポリイミド層に含有されるフィラは、後で詳述するCTEが10ppm/℃以下のフィラ(以下、「特定フィラ」と略記することがある)である。これにより、良好な剥離性を確保することができる。しかも、当該ポリイミド被膜のCTEを充分に低減化できるため、剥離時のカールの発生を充分に防止できる。カールが発生したとしても、カールの曲率半径を充分に大きくすることができる。ポリイミド被膜が特定フィラを含有しないと、当該ポリイミド被膜のCTEを充分に低減化できないため、剥離時にカールの発生を充分に防止できない。また剥離性を確保できないことがある。
【0017】
ポリイミド被膜は、単層の特定フィラ含有ポリイミド層(以下、「層-1」と略記することがある)のみからなってもよいが、当該層-1とフィラ非含有ポリイミド層(以下、「層-2」と略記することがある)とからなる多層構造とし、層-1がガラス基板に直接的に接したものであってもよい。ポリイミド層(層-1または層-2)には、通常ポリイミドフィルム製造の際に用いられる公知の添加剤(例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の滑剤等)等が含有されていてもよい。
【0018】
ポリイミド被膜(ポリイミド層)とは、原料となるテトラカルボン酸類とジアミンの略等モルを、溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体であるポリアミック酸(以下、「PAA」と略記することがある)溶液をガラス基板上に塗布して、乾燥、熱硬化(イミド化)してポリイミド被膜(ポリイミド層)としたものをいう。ここで、このPAAから得られるポリイミドは、非熱可塑性ポリイミドであることが好ましく、そのガラス転移温度は250℃以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の積層体においては、ポリイミド被膜が、単層であっても、多層であっても、テトラカルボン酸類として芳香族テトラカルボン酸類を用いたポリイミドから得られる被膜を用いることが好ましい。ここで、芳香族環を有するテトラカルボン酸類(テトラカルボン酸、その二無水物またはエステル化物等)としては、例えば、ピロメリット酸類、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸類、4,4’-オキシジフタル酸類、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸類、p-ターフェニルテトラカルボン酸類、m-ターフェニルテトラカルボン酸類等、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0020】
これらの中で、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、およびそれらの混合物が好ましい。
【0021】
ポリイミド被膜が多層構造の場合、芳香族テトラカルボン酸類の種類は、層-1および層-2のポリイミドにおいて、同一であっても、異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0022】
本発明の積層体においては、ポリイミド被膜が、単層であっても、多層であっても、ジアミンとして芳香族ジアミンを用いたポリイミドから得られる被膜を用いることが好ましい。芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン(PDA)、m-フェニレンジアミン、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス(アニリノ)エタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノベンゾエート、ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノトルエン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、ジアミノアントラキノン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン等、およびそれらの混合物を挙げることができる。これらの芳香族ジアミンは、単体または混合物として使用することができる。
【0023】
これらの中で、PDA、DADE、ODAおよびそれらの混合物が好ましい。
【0024】
ポリイミド被膜が多層構造の場合、ジアミンの種類は、層-1および層-2のポリイミドにおいて、同一であっても、異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0025】
本発明の積層体においては、CTEが10ppm/℃以下のフィラを含有したポリイミド被膜を用いる。このようなフィラとしては、CTEが所定範囲内のフィラであれば特に限定されず、例えば、カーボン粒子(黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノシート、グラフェン等)、セラミック粒子(窒化珪素、炭化珪素等)、シリコン粒子(同4.7ppm/℃)等が挙げられる。ポリイミド被膜における剥離性のさらなる向上およびカールのさらなる防止の観点から、カーボン粒子、シリコン粒子、またはそれらの混合物が好ましい。これらの各フィラは、CTEが10ppm/℃以下であれば、不純物として他の原子を含むことを妨げるものではない。本発明で用いられるフィラのCTEの下限に特段の制限はない。
【0026】
フィラのCTE値については、 R.E. Taylor, CINDAS Data Series on Materials Properties, Thermal Expansion of Solids, Vol 1-4, ASM International, 1998、Welding, Brazing, and Soldering, Vol 6, ASM Handbook, ASM International, 1993等の文献値を参照することができるが、フィラのCTEが10ppm/℃以下かどうかは、以下のような方法によって判定することもできる。すなわち、CTEが10~20ppm/℃のフィラ非含有のポリイミド被膜と、このポリイミド被膜に、被膜質量に対し30質量%のフィラを含有したポリイミド被膜とのCTEを比較し、フィラ含有ポリイミド被膜のCTEが、フィラ非含有ポリイミド被膜のCTE以下であれば、そのフィラはCTEが10ppm/℃以下と判定される。逆に、フィラ含有ポリイミド被膜のCTEが、フィラ非含有ポリイミド被膜のCTEを上回れば、そのフィラはCTEが10ppm/℃超と判定される。例えば、銅、銀等の金属粒子はCTEが10ppm/℃を超えており、本発明の積層体のフィラとして用いることはできない。
【0027】
特定フィラの平均粒径範囲は、0.01~2μm程度とすることが好ましい。ここで平均粒径はレーザー回折法で測定した体積基準の測定値をいう。特定フィラの粒子形状は、不定形状、球状、角状、線状等制限はないが、不定形状が好ましい。特定フィラの含有量は、ポリイミド被膜の全質量に対し、5~50質量%とすることが好ましく、10~40質量%とすることがより好ましく、20~30質量%とすることが更に好ましい。このようにすることにより、ポリイミド被膜のCTEをさらに充分に低減化できるとともに、さらに良好な剥離性を確保することができる。特定フィラの含有量の基準「ポリイミド被膜の全質量」とは、ポリイミド被膜が単層構造の場合は「当該単層構造のポリイミド被膜を構成するフィラ含有ポリイミド層(層-1)の全質量」のことであり、ポリイミド被膜が多層構造の場合は「当該多層構造のポリイミド被膜を構成するフィラ含有ポリイミド層(層-1)の全質量」のことである。
【0028】
ポリイミド被膜の厚みとしては、ポリイミド被膜が単層構造の場合は、1~50μmとすることが好ましい。また、ポリイミド被膜が層-1と層-2とからなる多層構造の場合は、層-1の厚みとしては、0.1~5μmとすることが好ましく、0.5~4μmとすることがより好ましい。層-2の厚みとしては5~50μm程度とすることが好ましい。
【0029】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、フィラ含有ポリイミド前駆体溶液をガラス基板上に塗布、乾燥し、熱処理することにより、フィラ含有ポリイミド層(層-1)を形成することを特徴とする。フィラ含有ポリイミド前駆体溶液は、特定フィラを含有するガラス基板積層用ポリイミド前駆体溶液のことである。
【0030】
詳しくは、例えばポリイミド被膜が層-1のみからなる単層構造を有する場合、当該ポリイミド被膜は、例えば、特定フィラ未配合のPAA溶液(以下、「PAA-S」と略記することがある)に、特定フィラを均一に配合したPAA溶液(以下、「PAA-F」と略記することがある)を、ガラス基板上に、塗布、乾燥したのち、PAAを熱硬化することにより得られる。この溶液PAA-Fが前記フィラ含有ポリイミド前駆体溶液に相当するものである。塗布後の乾燥温度としては、80~150℃とすることが好ましい。熱硬化温度としては、350~450℃とすることが好ましく、380~420℃とすることがより好ましい。なお、熱硬化温度が高いほど、ポリイミド被膜のCTEは低下するが、ポリイミド被膜とガラス基板との層間の接着強度が増加し、剥離特性は低下する傾向にある。熱硬化温度が450℃を超えると、ポリイミド被膜の一部が熱分解する虞がある。
【0031】
特定フィラを均一に配合したPAA溶液には、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、およびそのアミドおよび金属塩等の離形剤を配合することができる。これらの中で、ステアリン酸が好ましい。離形剤の配合量としては、ポリイミド被膜の全質量に対して0.01~2質量%添加することが好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
【0032】
特定フィラを、PAA-Sに均一に配合するには、プラネタリーミキサー、サンドミル、ボールミル、ジェットミル、三本ロール、撹拌プロペラ等公知の方法を用いて、均一に混合すればよい。これらのPAA溶液には、必要に応じて、各種界面活性剤および有機シランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、PAA以外の他のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0033】
PAA-Sは、例えば、前記した芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの略等モルを溶媒中で重合反応させることにより得られる。前記溶媒としては、PAAを溶解する溶媒であれば、制限はないが、例えば、アミド系溶媒、尿素系溶媒、エーテル系溶媒等を用いることができる。
【0034】
アミド系溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。また、尿素系溶媒の具体例としては、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、ジメチルエチレン尿素、ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。また、エーテル系溶媒の具体例としては、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または混合物として用いることができる。これらの中で、NMP、DMAc、およびそれらの混合物が好ましい。
【0035】
PAA溶液を製造する際の反応温度としては、-30~70℃が好ましく、-15~60℃がより好ましい。またこの反応において、モノマーおよび溶媒の添加順序は特に制限はなく、いかなる順序でもよい。ポリイミド前駆体の固形分濃度としては1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。このPAAは部分的にイミド化されていてもよい。なお、これらのPAA溶液は市販品も用いることができる。
【0036】
また例えば、ポリイミド被膜が層-1および層-2からなる多層構造を有する場合、当該ポリイミド被膜をガラス基板上に形成するには、先ず、PAA-Fをガラス板上に塗布、乾燥する。次に、この被膜(層-1)上に、PAA-Sを塗布、乾燥して層-2を形成後、一括して熱硬化する。塗布後の乾燥温度としては、層-1、層-2共に、80~150℃とすることが好ましい。また、熱硬化温度としては、350~450℃とすることが好ましく、380~420℃とすることがより好ましい。なお、層-1を塗布、乾燥した後は、熱硬化することなく、PAA-Sを塗布することが好ましい。このようにすることにより、層-1と層-2の界面での接着強度が向上し、強固に一体化されたポリイミド被膜とすることができる。
【0037】
ガラス基板へのPAA-Fの塗布およびPAA-F被膜へのPAA-Sの塗布の方法としては、テーブルコータ、ディップコータ、バーコータ、スピンコータ、ダイコータ、スプレーコータ等公知の方法を用い、連続式またはバッチ式で塗布することができる。
【0038】
本発明においては、ポリイミド被膜が単層構造を有する場合には層-1の上に、多層構造を有する場合には層-2の上に、さらに他のポリマー層を形成してもよい。
【0039】
[用途]
前記のようにして得られた本発明の積層体は、ポリイミド被膜の表面に電子素子を形成後、当該ポリイミド被膜をガラス基板から容易に剥離することができるので、電子デバイスの製造に有用である。ポリイミド被膜には、フィラが含有されているので、その分、ガラス界面との接着強度が弱まり、剥離を容易に行うことができる。また剥離後において、電子素子が形成されたポリイミド被膜はカールが充分に防止されている。
【0040】
電子素子としては、従来より電子デバイスの分野で用いられているあらゆる電子素子が使用可能である。電子素子の形成方法は、ポリイミド被膜(フィルム)をフレキシブル基板として用いる電子デバイスの分野で公知の方法を採用することができる。
【0041】
電子デバイスとしては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD);および電子ペーパー等のフレキシブルデバイスが挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0043】
<フィラ非含有ポリイミド前駆体溶液PAA-S1~PAA-S2の調製>
(PAA-S1)
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、PDA(0.6モル)と脱水したDMAc(重合溶媒)を投入して攪拌し、PDAを溶解した。この溶液をジャケットで30℃以下に冷却しながら、BPDA(0.6モル)を徐々に加えた後、50℃で100分重合反応させることにより、ポリイミド前駆体溶液 PAA-S1を得た。PAA-S1の固形分濃度は15質量%であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は62000であった。
【0044】
(PAA-S2)
「PDA(0.6モル)」を「PDA(0.5モル)およびODA(0.1モル)の混合物」としたこと以外は、PAA-S1と同様にして、ポリイミド前駆体溶液PAA-S2を得た。PAA-S2の固形分濃度は16質量%であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は72000であった。
【0045】
<フィラ含有ポリイミド前駆体溶液PAA-F2~PAA-F6の調製>
〔実施例1〕
(PAA-F2)
PAA-S1に、シリコン粒子(平均粒径:0.5μm、CTE:4.7ppm/℃)と脱水したDMAc(希釈溶媒)を加え、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合処理を行い、固形分が16質量%、シリコン粒子含有量が全固形分質量(シリコン粒子質量+ポリイミド換算質量)に対し、30質量%のフィラ含有ポリイミド前駆体溶液 PAA-F2を得た。
【0046】
(PAA-F3)
シリコン粒子含有量を全固形分質量に対し、20質量%としたこと以外は、PAA-F2と同様にして、PAA-F3を得た。
【0047】
(PAA-F4)
フィラとして黒鉛粒子(平均粒径:0.3μm、CTE:0.5ppm/℃)を用いたこと以外は、PAA-F2と同様にして、PAA-F4を得た。
【0048】
(PAA-F5)
フィラとしてカーボンブラック(平均粒径0.03μmのチャンネルブラック、CTE:0.5ppm/℃)を用い、カーボンブラック含有量を、全固形分質量に対し、23質量%としたこと以外は、PAA-F2と同様にして、PAA-F5を得た。
【0049】
(PAA-F6)
PAA-S2に、シリコン粒子(平均粒径:0.5μm、CTE:4.7ppm/℃)、ステアリン酸、脱水したDMAc(希釈溶媒)を加え、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合処理を行い、全固形分質量(シリコン粒子質量+ポリイミド換算質量+ステアリン酸)に対し、シリコン粒子を30質量%、ステアリン酸を0.5質量%含有したポリイミド前駆体溶液PAA-F6を得た。
【0050】
〔比較例1〕
(PAA-F7)
フィラとして銅粒子(平均粒径:0.6μm、CTE:17ppm/℃)を用いたこと以外は、PAA-F2と同様にして、PAA-F7得た。
【0051】
<単層構造型積層体の製造>
〔実施例2〕
厚み0.7mmの無アルカリガラス基板(CTE:3.2ppm/℃)の表面上に、フィラ含有ポリイミド前駆体溶液PAA-F2をテーブルコータにより塗布し、130℃で10分間乾燥してPAA被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から400℃まで2時間かけて昇温した後、400℃で2時間熱処理し、PAAを熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と厚み約15μmのフィラ含有ポリイミド被膜とからなる積層体A-2を得た。
【0052】
(被膜のCTE)
積層体A-2からポリイミド被膜を剥離して、CTEを測定した結果、CTEは6.3ppm/℃であった。なお、CTEの測定は、パーキンエルマー社製TMA-7を用い、13mm×3mmの試料に対して長手方向に20mNの荷重を加え、10℃/分の昇温速度で測定したときの100℃~250℃における寸法変化量を測定することにより行った。A-2のポリイミド被膜のCTE測定結果を表1に示す。
【0053】
(剥離特性)
積層体A-2のポリイミド被膜とガラス基板界面との剥離特性を以下のようにして評価した。すなわち、ポリイミド被膜とガラス基板界面との接着強度をJIS K6854に基づいて180°剥離試験により測定し、接着強度が0.1N/cm未満の場合、界面での剥離特性が「良好」と判定した。逆に、接着強度が0.1N/cm以上の場合、剥離特性が「不良」と判定した。A-2の剥離特性評価結果を表1に示す。
【0054】
(カール特性)
次に、積層体から剥離されたポリイミド被膜のカール特性を以下のようにして評価した。すなわち、ガラス基板から剥離して、10cm角に切り出したポリイミド被膜の曲率半径を測定した。その曲率半径が50mm以上の場合、カール特性が「良好」と判定した。逆に、曲率半径が50mm未満の場合、カール特性が「不良」と判定した。A-2から得られたポリイミド被膜のカール特性評価結果を表1に示す。
【0055】
〔実施例3〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA-F3を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体A-3を得た。A-3の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0056】
〔実施例4〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA-F4を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体A-4を得た。A-4の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0057】
〔実施例5〕(参考例)
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA-F5を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体A-5を得た。A-5の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0058】
〔実施例6〕
厚み0.7mmの無アルカリガラス基板(CTE:3.2ppm/℃)の表面上に、PAA-F6をテーブルコータにより塗布し、130℃で10分間乾燥してPAA被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から380℃まで2時間かけて昇温した後、380℃で2時間熱処理し、PAAを熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と厚み約20μmのフィラ含有ポリイミド被膜とからなる積層体A-6を得た。A-6の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0059】
〔比較例2〕
ポリイミド前駆体溶液として、PAA-S1を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラを含有しないポリイミド被膜からなる積層体AR-1を得た。AR-1の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0060】
〔比較例3〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA-S2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体AR-2を得た。AR-2の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0061】
〔比較例4〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA-F7を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体AR-7を得た。AR-7の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0062】
【0063】
表1に示したように、本発明の積層体A-2~A-6は、ガラス基板に接している層に、所定のフィラが含有されている。このため、ポリイミド被膜の剥離特性が良好であり、かつCTEが低く、カール特性も良好であることが判る。
【0064】
これに対し、比較例4で示したAR-7のポリイミド被膜には、フィラが含有されているので、剥離特性は良好であっても、フィラである銅粒子のCTEが高いために、カール特性が不良であることが判る。
また、比較例2,3で示したように、フィラ非含有のポリイミド被膜では、剥離特性およびカール特性が共に不良であることが判る。
【0065】
<複層構造型積層体の製造>
〔実施例7〕
前記無アルカリガラス基板の表面上にPAA-F2をテーブルコータにより塗布し、130℃で10分間乾燥してPAA被膜を形成した。次いで、室温(25℃)に戻し、このPAA被膜上に、PAA-S1をテーブルコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥して2層目のPAA被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から400℃まで2時間かけて昇温した後、400℃で2時間熱処理し、PAAを熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と、このガラス基板上に層-1(フィラ含有ポリイミド層:厚み3μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体L-2を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0066】
〔実施例8〕
層-1形成用として、PAA-F3を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層-1(フィラ含有ポリイミド層:厚み3μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み21μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:24μm)とからなる積層体L-3を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0067】
〔実施例9〕
層-1形成用として、PAA-F4を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層-1(フィラ含有ポリイミド層:厚み2μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:22μm)とからなる積層体L-4を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0068】
〔実施例10〕(参考例)
層-1形成用として、PAA-F5を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層-1(フィラ含有ポリイミド層:厚み2μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み21μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体L-5を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0069】
〔実施例11〕
層-1形成用として、PAA-F6を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層-1(フィラ含有ポリイミド層:厚み2μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み21μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体L-6を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0070】
〔比較例5〕
層-1形成用として、フィラ非含有のPAA-S1を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層-1(フィラ非含有ポリイミド層:厚み3μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体LR-1を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0071】
〔比較例6〕
層-1形成用として、PAA-F7を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層-1(フィラ含有ポリイミド層:厚み3μm)および層-2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体LR-7を得た後、この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0072】
【0073】
表2に示したように、本発明の積層体L-2~L-6は、ガラス基板に接している層-1には、所定のフィラが含有されている。このため、剥離特性が良好であり、かつ層-1のCTEが低く、カール特性も良好であることが判る。
【0074】
これに対し、比較例6で示したLR-7の層-1には、フィラが含有されているので、剥離特性は良好であっても、フィラである銅粒子のCTEが高いために、カール特性が不良であることが判る。
また、比較例5より、層-1としてフィラ非含有のポリイミド被膜を用いると、ポリイミド被膜が多層であっても、剥離特性およびカール特性が共に不良であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の積層体は、良好な剥離性を有し、かつ剥離されたポリイミド被膜がカールしにくいので、当該積層体を構成するポリイミド被膜の表面に電子素子を形成することにより電子デバイスの製造に有用である。