(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】予後不良急性骨髄性白血病の治療へのミトコンドリア活性阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/422 20060101AFI20220128BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K31/422
A61P35/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019505429
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(86)【国際出願番号】 CA2017050921
(87)【国際公開番号】W WO2018023197
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-21
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】599116890
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ モントリオール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ガイ ソーバゴー
(72)【発明者】
【氏名】イレーヌ バチェッリ
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】Annals of Hematology,2015年,94,201-210
【文献】Mitochondrion,2015年,21,41-48
【文献】Leukemia Research,2014年,38,402-410
【文献】Scientific Reports 6,2016年04月,6,24589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/422
A61P 35/02
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、急性骨髄性白血病(AML)の治療
における使用のための医薬組成物であって、
前記AMLが、以下の特徴:
(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;
(b)
【表1】
上記表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;
(c)
【表2】
上記表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;
(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに
(e)総細胞数1×10
6個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度:
のうち少なくとも1つの特徴を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記AMLが予後不良AMLである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記AMLが、HOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB5、HOXB6、HOXB7、HOXB9、HOXB-AS3、HOXA1、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9、HOXA10、HOXA10-AS、HOXA11、HOXA11-AS、MEIS1および
PBX3
から選択される、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXA9および/またはHOXA10である、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記AMLが、
前記表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記AMLが、
前記表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記AMLが、
中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の細胞遺伝学的または分子的リスク因子を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記AMLが、中等度の細胞遺伝学的リスクのAMLおよび/またはNK-AMLである、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも2つ
又は少なくとも3つの因子を含む、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および/または変異DNAメチル化遺伝子を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記DNAメチル化遺伝子が、DNMT3AまたはIDH1である、
請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記AMLが、変異NPM1と変異FLT3と変異DNMT3Aとを含む、
請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を有するFLT3(FLT3-ITD)である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記AMLが、総細胞数1×10
6個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記AMLが、総細胞数5×10
5個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、
請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記AMLが、
前記特徴(a)~(e)のうち少なくとも2つ
又は少なくとも3つの特徴を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記AMLが、変異NPM1を有するNK-AMLである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記
ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩が、医薬組成物中に存在する、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
対象が小児対象である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象が成人対象である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年8月2日に出願されたカナダ特許出願第2,937,896号の利益を主張するものであり、上記出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、全般的には急性骨髄性白血病(AML)、より具体的には通常予後不良であるAMLサブタイプの治療に関するものである。
【背景技術】
【0003】
急性骨髄性白血病(AML)は特に致命的な形態の癌の1つであり、患者のほとんどが診断から2年以内に死亡する。AMLは若年成人の主たる死因の1つとなっている。AMLは、病態生理学的にも、遺伝学的にも、予後の面でも不均一な新生物の集合である。現在、AML患者は主として細胞遺伝学および分子解析に基づき、予後が著明に対照的なAMLのグループまたは亜群に分類される。現時点で、全AML患者の約45%が特定の再発性の細胞遺伝学的異常の有無に基づき、様々な予後の異なるグループに分類されている。
【0004】
FLT3チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)でFLT3受容体チロシンキナーゼを標的化することにより、FLT3変異AML(一般に臨床転帰が不良である)の治療に有望な結果が得られることが示されているが、ほとんどの患者は奏効が不十分で持続性のものではない。TKIに対する獲得耐性の誘導も臨床的問題点の1つとして浮上している。また、AMLで病的に活性化されるその他のキナーゼ、例えばc-KITおよびJAK2などの阻害剤でも骨髄応答が得られたのは極めてまれである。
【0005】
このため、AML、例えば予後不良のAMLなどの治療のための新たな治療戦略の特定が必要とされている。
【0006】
本明細書の記載では多数の文献を参照し、その文献の内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は以下の項目1~88を提供する:
【0008】
1.対象の急性骨髄性白血病(AML)の治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0009】
2.対象の急性骨髄性白血病(AML)を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0010】
3.前記AMLが予後不良AMLである、項目1または2に記載の使用。
【0011】
4.前記AMLが、以下の特徴:(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つの特徴を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の使用。
【0012】
5.前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を含む、項目4に記載の使用。
【0013】
6.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB5、HOXB6、HOXB7、HOXB9、HOXB-AS3、HOXA1、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9、HOXA10、HOXA10-AS、HOXA11、HOXA11-AS、MEIS1および/またはPBX3である、項目5に記載の使用。
【0014】
7.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXA9および/またはHOXA10である、項目6に記載の使用。
【0015】
8.前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を含む、項目4~7のいずれか1項に記載の使用。
【0016】
9.前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を含む、項目4~8のいずれか1項に記載の使用。
【0017】
10.前記AMLが、項目1の項目(d)に明記される細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を含む、項目4~9のいずれか1項に記載の使用。
【0018】
11.前記AMLが、中等度の細胞遺伝学的リスクのAMLおよび/またはNK-AMLである、項目10に記載の使用。
【0019】
12.前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも2つの因子を含む、項目10または11に記載の使用。
【0020】
13.前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも3つの因子を含む、項目12に記載の使用。
【0021】
14.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および/または変異DNAメチル化遺伝子を含む、項目4~13のいずれか1項に記載の使用。
【0022】
15.前記DNAメチル化遺伝子が、DNMT3AまたはIDH1である、項目14に記載の使用。
【0023】
16.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および変異DNAメチル化遺伝子を含み、好ましくは、DNAメチル化遺伝子がDNMT3Aである、項目14または15に記載の使用。
【0024】
17.前記変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を有するFLT3(FLT3-ITD)である、項目4~16のいずれか1項に記載の使用。
【0025】
18.前記AMLが、総細胞数1×106個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、項目4~17のいずれか1項に記載の使用。
【0026】
19.前記AMLが、総細胞数5×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、項目18に記載の使用。
【0027】
20.前記AMLが、特徴(a)~(e)のうち少なくとも2つの特徴を含む、項目4~19のいずれか1項に記載の使用。
【0028】
21.前記AMLが、特徴(a)~(e)のうち少なくとも3つの特徴を含む、項目20に記載の使用。
【0029】
22.前記AMLが、変異NPM1を有するNK-AMLである、項目4~21のいずれか1項に記載の使用。
【0030】
23.ミトコンドリア活性阻害剤が、医薬組成物中に存在する、項目1~22のいずれか1項に記載の使用。
【0031】
24.対象が小児対象である、項目1~23のいずれか1項に記載の使用。
【0032】
25.対象が成人対象である、項目1~23のいずれか1項に記載の使用。
【0033】
26.急性骨髄性白血病(AML)の治療における使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0034】
27.前記AMLが予後不良AMLである、項目26に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0035】
28.前記AMLが、以下の特徴:(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つの特徴を含む、項目26または27に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0036】
29.前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を含む、項目28に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0037】
30.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB5、HOXB6、HOXB7、HOXB9、HOXB-AS3、HOXA1、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9、HOXA10、HOXA10-AS、HOXA11、HOXA11-AS、MEIS1および/またはPBX3である、項目29に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0038】
31.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXA9および/またはHOXA10である、項目30に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0039】
32.前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を含む、項目28~31のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0040】
33.前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を含む、項目28~32のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0041】
34.前記AMLが、項目28の項目(d)に明記される細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を含む、項目28~33のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0042】
35.前記AMLが、中等度の細胞遺伝学的リスクのAMLおよび/またはNK-AMLである、項目34に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0043】
36.前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも2つの因子を含む、項目28~35のいずれか1項に記載の使用のためミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0044】
37.前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも3つの因子を含む、項目36に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0045】
38.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および/または変異DNAメチル化遺伝子を含む、項目28~37のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0046】
39.前記DNAメチル化遺伝子が、DNMT3AまたはIDH1である、項目38に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0047】
40.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および変異DNAメチル化遺伝子を含み、好ましくは、DNAメチル化遺伝子がDNMT3Aである、項目38または39に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0048】
41.前記変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を有するFLT3(FLT3-ITD)である、項目28~40のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0049】
42.前記AMLが、総細胞数1×106個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、項目28~41のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0050】
43.前記AMLが、総細胞数5×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、項目42に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0051】
44.前記AMLが、項目28に明記される特徴(a)~(e)のうち少なくとも2つの特徴を含む、項目28~43のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0052】
45.前記AMLが、項目28に明記される特徴(a)~(e)のうち少なくとも3つの特徴を含む、項目44に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0053】
46.前記AMLが、変異NPM1を有するNK-AMLである、項目28~45のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0054】
47.ミトコンドリア活性阻害剤が、医薬組成物中に存在する、項目26~46のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0055】
48.対象が小児対象である、項目26~47のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0056】
49.対象が成人対象である、項目26~47のいずれか1項に記載の使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩。
【0057】
50.急性骨髄性白血病(AML)に罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療が奏効する可能性を判定する方法であって、前記対象のAML細胞が、以下の特徴:(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つの特徴を含むかどうかを判定することを含み、前記AML細胞に前記以下の特徴のうち少なくとも1つの特徴がみられることが、対象に前記治療が奏効する可能性が高いことを示す、方法。
【0058】
51.前記AML細胞が、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を示す、項目50に記載の方法。
【0059】
52.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB5、HOXB6、HOXB7、HOXB9、HOXB-AS3、HOXA1、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9、HOXA10、HOXA10-AS、HOXA11、HOXA11-AS、MEIS1および/またはPBX3である、項目51に記載の方法。
【0060】
53.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXA9および/またはHOXA10である、項目52に記載の方法。
【0061】
54.前記AML細胞が、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を示す、項目50~53のいずれか1項に記載の方法。
【0062】
55.前記AML細胞が、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を示す、項目50~55のいずれか1項に記載の方法。
【0063】
56.前記AML細胞が、項目50の項目(d)に明記される細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を含む、項目50~55のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
57.前記AMLが、中等度の細胞遺伝学的リスクのAMLおよび/またはNK-AMLである、項目50~56のいずれか1項に記載の方法。
【0065】
58.前記AML細胞が、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも2つの因子を含む、項目50~57のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
59.前記AML細胞が、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも3つの因子を含む、項目58に記載の方法。
【0067】
60.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および/または変異DNAメチル化遺伝子を含む、項目58に記載の方法。
【0068】
61.前記DNAメチル化遺伝子が、DNMT3AまたはIDH1である、項目60に記載の方法。
【0069】
62.前記AML細胞が、変異NPM1、変異FLT3および変異DNAメチル化遺伝子を含み、好ましくは、DNAメチル化遺伝子がDNMT3Aである、項目60または61に記載の方法。
【0070】
63.前記変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を有するFLT3(FLT3-ITD)である、項目50~62のいずれか1項に記載の方法。
【0071】
64.前記AML細胞のLSC頻度が、総細胞数1×106個当たりLSC約1個以上である、項目50~63のいずれか1項に記載の方法。
【0072】
65.前記AML細胞のLSC頻度が、総細胞数5×105個当たりLSC約1個以上である、項目64に記載の方法。
【0073】
66.前記AMLが、変異NPM1を有するNK-AMLである、項目50~65のいずれか1項に記載の方法。
【0074】
67.急性骨髄性白血病(AML)を治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、より好ましくはムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0075】
68.前記AMLが予後不良AMLである、項目67に記載の方法。
【0076】
69.前記AMLが、以下の特徴:(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つの特徴を含む、項目67または68に記載の方法。
【0077】
70.前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を含む、項目69に記載の方法。
【0078】
71.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB5、HOXB6、HOXB7、HOXB9、HOXB-AS3、HOXA1、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9、HOXA10、HOXA10-AS、HOXA11、HOXA11-AS、MEIS1および/またはPBX3である、項目69または70に記載の方法。
【0079】
72.前記1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が、HOXA9および/またはHOXA10である、項目71に記載の方法。
【0080】
73.前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を含む、項目69~72のいずれか1項に記載の方法。
【0081】
74.前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を含む、項目69~73のいずれか1項に記載の方法。
【0082】
75.前記AMLが、項目69の項目(d)に明記される細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を含む、項目69~74のいずれか1項に記載の方法。
【0083】
76.前記AMLが、中等度の細胞遺伝学的リスクのAMLおよび/またはNK-AMLである、項目69~75のいずれか1項に記載の方法。
【0084】
77.前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも2つの因子を含む、項目69~76のいずれか1項に記載の方法。
【0085】
78.前記AMLが、前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち少なくとも3つの因子を含む、項目77に記載の方法。
【0086】
79.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および/または変異DNAメチル化遺伝子を含む、項目77に記載の方法。
【0087】
80.前記AMLが、変異NPM1、変異FLT3および変異DNAメチル化遺伝子を含む、項目80に記載の方法。
【0088】
81.前記DNAメチル化遺伝子が、DNMT3AまたはIDH1、好ましくはDNMT3Aである、項目79または80に記載の方法。
【0089】
82.前記変異FLT3が、遺伝子内縦列重複を有するFLT3(FLT3-ITD)である、項目69~81のいずれか1項に記載の方法。
【0090】
83.前記AMLが、総細胞数1×106個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、項目69~82のいずれか1項に記載の方法。
【0091】
84.前記AMLが、総細胞数5×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を含む、項目83に記載の方法。
【0092】
85.前記AMLが、変異NPM1を有するNK-AMLである、項目69~84のいずれか1項に記載の方法。
【0093】
86.ミトコンドリア活性阻害剤が、医薬組成物中に存在する、項目67~85のいずれか1項に記載の方法。
【0094】
87.対象が小児対象である、項目67~86のいずれか1項に記載の方法。
【0095】
88.対象が成人対象である、項目67~86のいずれか1項に記載の方法。
【0096】
以下に単なる例として記載する本発明の具体的な実施形態に関する非限定的説明を、添付図面を参照しながら読めば、本発明のその他の目的、利点および特徴がさらに明らかになるであろう。
【0097】
添付図面については以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1-1】HOXネットワーク遺伝子の発現とAMLの予後との間の関係を示す図である。
図1A:生存試験を実施するのに十分な情報が入手可能なAML患者のコホートであり本明細書で試験した予後Leucegene AMLコホート(AML患者263例)を対象にした、HOXネットワーク遺伝子のメンバーの一貫した高発現(黒、各グラフの右上)およびHOXネットワーク遺伝子のメンバーの一貫した低発現(灰色、各グラフの左下)がみられる患者試料の特定。括弧内の値は各遺伝子の発現の範囲を示す。略号:AML:急性骨髄性白血病;HOX:ホメオボックス;MEIS1:MEISホメオボックス1;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;Std:標準偏差。
【
図1-2】HOXネットワーク遺伝子の発現とAMLの予後との間の関係を示す図である。
図1B:高HOXネットワーク亜群に属するAML患者(下の線、n=100)対低HOXネットワーク亜群に属するAML患者(下の線、n=27)の全生存期間。
図1C:高HOXA9/HOXA10 AML試料集団の特定。
図1Bのp値はログランク検定により求めたものである。略号:AML:急性骨髄性白血病;HOX:ホメオボックス;MEIS1:MEISホメオボックス1;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;Std:標準偏差。
【
図1-3】HOXネットワーク遺伝子の発現とAMLの予後との間の関係を示す図である。
図1D:高HOXA9/HOXA10群に属するAML患者(下の線、n=131)および中/低HOXA9/HOXA10群に属するAML患者(上の線、n=132)の全生存期間。
図1Dのp値はログランク検定により求めたものである。略号:AML:急性骨髄性白血病;HOX:ホメオボックス;MEIS1:MEISホメオボックス1;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;Std:標準偏差。
【
図2-1】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2A:60種類の化合物(表4)に関する一次スクリーニングのワークフローの概要。高HOX患者試料(暗灰色、n=131)と中/低HOX患者試料(明灰色、n=132)とを識別する代表的な遺伝子としてHOXA9およびHOXA10を用いた。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図2-2】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2B:ムブリチニブが高HOX AML患者細胞を標的とする候補薬物であることを確認するに至った一次スクリーニングの結果のまとめ。水平方向の破線はp=0.05に相当し、垂直方向の破線はEC
50値の差が2.5倍であることを示す。
図2C:高HOX標本(暗灰色、右上)および中/低HOX標本(明灰色)を含む検証スクリーニングに含めたAML患者試料。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図2-3】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2D:検証スクリーニングで測定した高HOX AML試料と中/低HOX AML試料のEC
50値の差。p値はマン・ホイットニーの検定により求めた。
図2E:異なるAML標本200例で測定したムブリチニブEC
50値の頻度により、ムブリチニブ感受性群(EC
50<375nM、n=100)とムブリチニブ耐性群(EC
50≧375nM、n=100)が決まる。正常な未分化CD34-ポジティブ臍帯血細胞はムブリチニブに対して中程度の感受性を示した(EC
50>375nM)。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図2-4】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2F:ムブリチニブ感受性群に属する患者とムブリチニブ耐性群に属する患者の全生存期間の差。p値はログランク検定により求めた。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図2-5】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2G:HOXネットワーク遺伝子の過剰発現を強調表示したムブリチニブ感受性標本対ムブリチニブ耐性標本のトランスクリプトームプロファイル。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図2-6】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2H:発現の差が最も大きい遺伝子(基準:log(変化倍数)>0.8(=6倍)、RPKM>0.1)を強調表示したムブリチニブ感受性標本対ムブリチニブ耐性標本のトランスクリプトームプロファイル。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図2-7】高HOX AML細胞の薬理学的応答の特徴付けを示す図である。
図2I:RNAシーケンシングのデータに適用した偽発見率(FDR)補正多重マン・ホイットニーの検定によるムブリチニブ感受性AML標本(n=100、コホート全体の中央値による分割、EC
50=375nM)対ムブリチニブ耐性AML標本(n=100)に過小発現(点線より上)または過剰発現(点線より下)した遺伝子のリスト。用いたカットオフ:発現>0.1RPKM、感受性標本と耐性標本との間のlog(変化倍数)>0.7(遺伝子発現の差が5倍)。略号:AML:急性骨髄性白血病;ANKRD18B:アンキリン反復ドメイン18B;BEND6:BENドメイン含有6;COL4A5:IV型コラーゲンアルファ5;FDR:偽発見率;HOX:ホメオボックス;KIRREL:Kin Of IRRE Like;LINC:長鎖非コード;LSC:白血病幹細胞;MEIS1:MEISホメオボックス1;MIR:マイクロRNA;MSLN:メソテリン;NKX2.3:NK2ホメオボックス 3;PI3K:ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ;PPBP:前血小板塩基性タンパク質;PRDM16:PR/SETドメイン16;PRG3:プロテオグリカン3;RPKM:Reads Per Kilobase per Million mapped reads;RTK:受容体チロシンキナーゼ;S100A16:S100カルシウム結合タンパク質A16;SNORD:低分子核小体RNA;ST18:腫瘍形成能抑制18、亜鉛フィンガー;ZNF:亜鉛フィンガータンパク質。
【
図3-1】様々な遺伝学的および臨床的特徴によるムブリチニブ感受性AML標本の特徴付けを示す図である。
図3A:ボンフェローニ補正後の正確なフィッシャー検定によりムブリチニブ感受性AML標本(EC
50<375nM、n=100)およびムブリチニブ耐性AML標本(EC
50≧375nM、n=100)に多数みられた臨床的特徴。略号:AML:急性骨髄性白血病;AbnChr:異常染色体;ASXL1:Additional Sex Combs Like 1、転写調節因子;CEBPA:CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ;Complex:複合核型;DNMT3A:DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3アルファ;EVI1:エコトロピックウイルス組込み部位1;FLT3:Fms関連チロシンキナーゼ3;HOX:ホメオボックス;IDH:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADP(+));Inter(AbnK):異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク;m;変異;MLL:混合系統白血病1;NK:正常核型;NPM1:ヌクレオフォスミン(核小体リン酸化タンパク質B23、ヌマトリン);NRAS:神経芽腫RASウイルス発癌遺伝子ホモログ;NUP98:ヌクレオポリン 98kDa;RUNX1:Runt関連転写因子1;SRSF2:セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2;TET2:Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2;TP53:腫瘍タンパク質P53;WT1:ウイルムス腫瘍1;+8:8番染色体トリソミー。
【
図3-2】様々な遺伝学的および臨床的特徴によるムブリチニブ感受性AML標本の特徴付けを示す図である。
図3B:細胞遺伝学的リスクのクラスごとのムブリチニブEC
50値。全パネルの水平方向の直線は中央値を示す。略号:AML:急性骨髄性白血病;AbnChr:異常染色体;ASXL1:Additional Sex Combs Like 1、転写調節因子;CEBPA:CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ;Complex:複合核型;DNMT3A:DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3アルファ;EVI1:エコトロピックウイルス組込み部位1;FLT3:Fms関連チロシンキナーゼ3;HOX:ホメオボックス;IDH:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADP(+));Inter(AbnK):異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク;m;変異;MLL:混合系統白血病1;NK:正常核型;NPM1:ヌクレオフォスミン(核小体リン酸化タンパク質B23、ヌマトリン);NRAS:神経芽腫RASウイルス発癌遺伝子ホモログ;NUP98:ヌクレオポリン 98kDa;RUNX1:Runt関連転写因子1;SRSF2:セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2;TET2:Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2;TP53:腫瘍タンパク質P53;WT1:ウイルムス腫瘍1;+8:8番染色体トリソミー。
【
図3-3】様々な遺伝学的および臨床的特徴によるムブリチニブ感受性AML標本の特徴付けを示す図である。
図3C:ボンフェローニ補正後の正確なフィッシャー検定によりムブリチニブ高感受性AML標本(EC
50<100nM、n=59)およびムブリチニブ高耐性AML標本(EC
50>1μM、n=58)に多数みられた変異。略号:AML:急性骨髄性白血病;AbnChr:異常染色体;ASXL1:Additional Sex Combs Like 1、転写調節因子;CEBPA:CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ;Complex:複合核型;DNMT3A:DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3アルファ;EVI1:エコトロピックウイルス組込み部位1;FLT3:Fms関連チロシンキナーゼ3;HOX:ホメオボックス;IDH:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADP(+));Inter(AbnK):異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク;m;変異;MLL:混合系統白血病1;NK:正常核型;NPM1:ヌクレオフォスミン(核小体リン酸化タンパク質B23、ヌマトリン);NRAS:神経芽腫RASウイルス発癌遺伝子ホモログ;NUP98:ヌクレオポリン 98kDa;RUNX1:Runt関連転写因子1;SRSF2:セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2;TET2:Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2;TP53:腫瘍タンパク質P53;WT1:ウイルムス腫瘍1;+8:8番染色体トリソミー。
【
図3-4】様々な遺伝学的および臨床的特徴によるムブリチニブ感受性AML標本の特徴付けを示す図である。
図3D:存在する変異遺伝子ごとのムブリチニブEC
50値。
図3E:遺伝子亜群ごとのムブリチニブEC
50値。
図3F:ムブリチニブ感受性患者試料の特徴のまとめ。
図3E~3Iのp値はマン・ホイットニーの検定により算出したものである。全パネルの水平方向の直線は中央値を示す。略号:AML:急性骨髄性白血病;AbnChr:異常染色体;ASXL1:Additional Sex Combs Like 1、転写調節因子;CEBPA:CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ;Complex:複合核型;DNMT3A:DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3アルファ;EVI1:エコトロピックウイルス組込み部位1;FLT3:Fms関連チロシンキナーゼ3;HOX:ホメオボックス;IDH:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADP(+));Inter(AbnK):異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク;m;変異;MLL:混合系統白血病1;NK:正常核型;NPM1:ヌクレオフォスミン(核小体リン酸化タンパク質B23、ヌマトリン);NRAS:神経芽腫RASウイルス発癌遺伝子ホモログ;NUP98:ヌクレオポリン 98kDa;RUNX1:Runt関連転写因子1;SRSF2:セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2;TET2:Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2;TP53:腫瘍タンパク質P53;WT1:ウイルムス腫瘍1;+8:8番染色体トリソミー。
【
図3-5】様々な遺伝学的および臨床的特徴によるムブリチニブ感受性AML標本の特徴付けを示す図である。
図3G:NPM1、FLT3-ITDおよびDNMT3Aに変異(m)を有する予後不良患者標本(Papaemmanuil,E. et al.,N Engl J Med 374,2209-2221)対その他のAML試料のEC
50値。
図3E~3Iのp値はマン・ホイットニーの検定により算出したものである。全パネルの水平方向の直線は中央値を示す。略号:AML:急性骨髄性白血病;AbnChr:異常染色体;ASXL1:Additional Sex Combs Like 1、転写調節因子;CEBPA:CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ;Complex:複合核型;DNMT3A:DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3アルファ;EVI1:エコトロピックウイルス組込み部位1;FLT3:Fms関連チロシンキナーゼ3;HOX:ホメオボックス;IDH:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADP(+));Inter(AbnK):異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク;m;変異;MLL:混合系統白血病1;NK:正常核型;NPM1:ヌクレオフォスミン(核小体リン酸化タンパク質B23、ヌマトリン);NRAS:神経芽腫RASウイルス発癌遺伝子ホモログ;NUP98:ヌクレオポリン 98kDa;RUNX1:Runt関連転写因子1;SRSF2:セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2;TET2:Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2;TP53:腫瘍タンパク質P53;WT1:ウイルムス腫瘍1;+8:8番染色体トリソミー。
【
図3-6】様々な遺伝学的および臨床的特徴によるムブリチニブ感受性AML標本の特徴付けを示す図である。
図3H~3I:正常核型(NK)亜群(
図3H)および変異NPM1(NPM1m)を有するNK亜群(
図3I)に属するムブリチニブ感受性群の患者試料対ムブリチニブ耐性群の患者試料の白血病幹細胞(LSC)頻度。
図3E~3Iのp値はマン・ホイットニーの検定により算出したものである。全パネルの水平方向の直線は中央値を示す。略号:AML:急性骨髄性白血病;AbnChr:異常染色体;ASXL1:Additional Sex Combs Like 1、転写調節因子;CEBPA:CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ;Complex:複合核型;DNMT3A:DNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3アルファ;EVI1:エコトロピックウイルス組込み部位1;FLT3:Fms関連チロシンキナーゼ3;HOX:ホメオボックス;IDH:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADP(+));Inter(AbnK):異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク;m;変異;MLL:混合系統白血病1;NK:正常核型;NPM1:ヌクレオフォスミン(核小体リン酸化タンパク質B23、ヌマトリン);NRAS:神経芽腫RASウイルス発癌遺伝子ホモログ;NUP98:ヌクレオポリン 98kDa;RUNX1:Runt関連転写因子1;SRSF2:セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2;TET2:Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2;TP53:腫瘍タンパク質P53;WT1:ウイルムス腫瘍1;+8:8番染色体トリソミー。
【
図4-1】ムブリチニブの腫瘍細胞に対する作用を評価した実験の結果を示す図である。
図4A:OCI-AML3を様々な濃度のムブリチニブで処理してから4日後の生細胞(ヨウ化プロピジウム(PI)ネガティブ細胞)の数。
図4B:OCI-AML3を様々な濃度のムブリチニブで処理してから27時間後にDMSO処理細胞と比較したPIポジティブ細胞(死細胞)の富化倍数。略号:AML:急性骨髄性白血病;ERBB2:Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2;FITC:フルオレセインイソチオシアナート;PE:フィコエリトリン;Pos:ポジティブ。
【
図4-2】ムブリチニブの腫瘍細胞に対する作用を評価した実験の結果を示す図である。
図4C:対照DMSO、100nMムブリチニブまたは10μMムブリチニブで処理してから24時間後のOCI-AML3細胞における初期アポトーシス細胞および後期アポトーシス細胞の割合。
図4D:ムブリチニブのERBB2阻害剤ジトシル酸ラパチニブに対するAML患者の細胞感受性の比較。略号:AML:急性骨髄性白血病;ERBB2:Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2;FITC:フルオレセインイソチオシアナート;PE:フィコエリトリン;Pos:ポジティブ。
【
図4-3】ムブリチニブの腫瘍細胞に対する作用を評価した実験の結果を示す図である。
図4E:ムブリチニブまたは2種類の既知のERBB2阻害剤、すなわちジトシル酸ラパチニブまたはサピチニブで処理した後のOCI-AML3の用量反応曲線。
図4F:ムブリチニブ感受性患者試料とムブリチニブ耐性患者試料のERBB2遺伝子発現の比較。略号:AML:急性骨髄性白血病;ERBB2:Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2;FITC:フルオレセインイソチオシアナート;PE:フィコエリトリン;Pos:ポジティブ。
【
図4-4】ムブリチニブの腫瘍細胞に対する作用を評価した実験の結果を示す図である。
図4G:フローサイトメトリーにより測定したERBB2過剰発現BT474乳癌細胞系およびOCI-AML3ムブリチニブ感受性AML細胞系におけるERBB2タンパク質発現とアイソタイプ対照の比較。試料を2μMのムブリチニブで24時間処理するか、またはDMSOで擬似処理した。略号:AML:急性骨髄性白血病;ERBB2:Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2;FITC:フルオレセインイソチオシアナート;PE:フィコエリトリン;Pos:ポジティブ。
【
図5-1】ムブリチニブが腫瘍細胞死を媒介する作用機序を評価した実験の結果を示す図である。
図5A:OCI-AML3白血病細胞を6mMのN-アセチル-システイン(NAC)(活性酸素種(ROS)スカベンジャー)または溶媒(水)と4時間プレインキュベートした後、100nMムブリチニブで24時間処理するか、または溶媒(DMSO)で処理した。フローサイトメトリーでのアネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)染色による評価で、ムブリチニブ処理による細胞のアポトーシス死がみられた。NACの存在下で細胞を培養したところ、ムブリチニブ誘導性細胞死が減少した。
【
図5-2】ムブリチニブが腫瘍細胞死を媒介する作用機序を評価した実験の結果を示す図である。
図5B:細胞内のヒドロキシル、ペルオキシルおよびその他のROSの活性を測定する蛍光発生色素である2’,7’-ジクロロフルオレセインジアセタート(DCFDA)を用いたフローサイトメトリー染色であり、ムブリチニブ処理(500nM、24時間)によりOCI-AML3白血病細胞にROS活性が誘導されることを示している。
図5Cおよび5Dは、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)によりムブリチニブ処理OCI-AML3またはムブリチニブ未処理OCI-AML3で検出されたグルタチオンの還元レベルおよび酸化レベルをそれぞれ示している。
図5Eは、ムブリチニブ(1μM)がOCI-AML3白血病細胞の酸素消費速度(OCR)に及ぼす影響を、Seahorse XF(登録商標)細胞外フラックスアナライザー(Agilent(登録商標))を用いて測定し評価した実験の結果を示している。
【
図5-3】ムブリチニブが腫瘍細胞死を媒介する作用機序を評価した実験の結果を示す図である。
図5Fは、ムブリチニブがミトコンドリア電子伝達鎖(ETC)複合体I(ミトコンドリアの呼吸/活性に極めて重要である)に及ぼす影響を、無細胞アッセイ(MitoTox(商標)Complex I OXPHOS活性マイクロプレートアッセイ、Abcam社)を用いて測定し評価した実験の結果を示している。
図5Gは、OCI-AML3細胞系およびOCI-AML5細胞系をムブリチニブで処理(384ウェルプレートでの6日間の培養アッセイ)したときの用量反応曲線を示すグラフである。
図5Hは、OCI-AML3細胞系およびOCI-AML5細胞系を他のETC阻害剤、すなわち、オリゴマイシン(複合体V阻害剤、
図5H)で処理した場合の用量反応曲線を示すグラフである。
【
図5-4】ムブリチニブが腫瘍細胞死を媒介する作用機序を評価した実験の結果を示す図である。
図5I~5Jは、OCI-AML3細胞系およびOCI-AML5細胞系を他のETC阻害剤、すなわち、ロテノン(複合体I阻害剤、
図5I)およびデグエリン(複合体I阻害剤、
図5J)で処理した場合の用量反応曲線を示すグラフである。
【
図6-1】ムブリチニブ処理がOCI-AML3細胞のクエン酸回路の様々な中間物質、すなわち、クエン酸(
図6A)、アルファ-ケトグルタル酸(
図6B)のレベルに及ぼす影響を示すグラフである。
【
図6-2】ムブリチニブ処理がOCI-AML3細胞のクエン酸回路の様々な中間物質、すなわち、コハク酸(
図6C)、フマル酸(
図6D)およびリンゴ酸(
図6E)のレベルに及ぼす影響を示すグラフである。
【
図7】ムブリチニブおよびメトホルミン塩酸塩のAML標本に対する阻害作用を示すグラフである。AML標本20例について、白血病幹細胞の活性が保存される培養条件(Pabst et al.,2014,Nature Methods 11(4):436-42)下で1μMのムブリチニブおよびメトホルミン塩酸塩に対する感受性を試験した。
【
図8】Complex I Enzyme Activity Microplate Assay Kitを製造業者の指示(Abcam社、カタログ番号ab109721)の通りに用いて評価したOCI-AML3細胞の複合体I酵素活性に対するムブリチニブの作用を示すグラフである。複合体I活性は、NADHからNAD+への酸化およびOD=450nmでの吸光度を増大させる色素の同時還元により求められる。
【発明を実施するための形態】
【0099】
(発明の開示)
本明細書で使用される遺伝学、分子生物学、生化学および核酸に関する用語および記号は、当該分野の標準的な論文およびテキスト、例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第4版,2012(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(2001年およびそれに対するのちの改訂);Kornberg and Baker,DNA Replication,第2版(W University Science Books,2005);Lehninger,Biochemistry,第6版(WH Freeman & Co(Sd),New York,2012);Strachan and Read,Human Molecular Genetics,第2版(Wiley-Liss,New York,1999);Eckstein編,Oligonucleotides and Analogs:A Practical Approach(Oxford University Press,New York,1991);Gait編,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1984);などのものに従うものである。いずれの用語も、関連分野で確立されているその典型的な意味を有するものと理解されるべきである。
【0100】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、その冠詞の文法上の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の目的語を指すのに使用される。例として、「an element(要素)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。本明細書全体を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「comprise」、「comprises」および「comprising」(いずれも「含む」という意味)という単語は、記載される段階もしくは要素または段階もしくは要素のグループを包含するが、その他のいかなる段階もしくは要素も段階もしくは要素のグループも除外するものではないことを示すものと理解される。
【0101】
本明細書で言及されるGenbank、RefSeq、UniProt、NCBIおよび/またはEnsemblのアクセッション番号に対応するヌクレオチドおよびアミノ酸配列を含めた情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
本明細書に記載される方法はいずれも、本明細書で別途明示されるか、または別の形で文脈によって明らかに否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。
【0103】
本明細書に記載される例または例示語句(「例えば」、「など」)の使用はいずれも、単に本発明を一層よく説明するのを意図するものであって、別途特許請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0104】
本明細書では、「約」という用語はその通常の意味を有する。「約」という用語は、ある数値が、その数値を求めるのに用いる装置もしくは方法に内在する誤差の変動を含むか、または記載される数値に近い数値、例えば記載される数値(もしくは数値の範囲)の10%または5%以内を包含することを表すのに使用される。
【0105】
本明細書に開示される実施形態および特徴のありとあらゆる組合せおよび部分的組合せが本発明に包含される。例えば、本明細書で特定される遺伝子のうち2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の遺伝子の任意の組合せという表現が、本明細書に記載される方法で使用され得る。
【0106】
「対象」および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。一実施形態では、患者は成人AML患者である。一実施形態では、患者は60歳未満である。別の実施形態では、患者は60歳以上である。別の実施形態では、AML患者は小児AML患者である。
【0107】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、投与する活性薬剤(ミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)の量であって、治療する疾患(AML)の1つまたは複数の症状をある程度緩和する、例えば、AML細胞の増殖を阻害し、かつ/または細胞死を誘導する量を指す。有効量は、有害作用、例えば正常細胞の増殖の阻害および/または細胞死の誘導を最小限に抑えるよう調整される。
【0108】
本明細書に記載される試験では、高レベルのHOXネットワーク遺伝子を発現し、予後/生存率不良の原因となるAML細胞がムブリチニブに対して感受性であることを示す。ムブリチニブ感受性AML細胞は、ある特定の特徴を有するAML試料、例えば、特定の遺伝子の過剰発現または過小発現、ある特定の細胞遺伝学的または分子的リスク因子、例えば正常核型(NK)、変異NPM1、FLT3-ITDおよびDNMT3Aの標本中など、ならびに白血病幹細胞(LSC)頻度の高い標本中に大量に存在することもわかった。また、チロシンキナーゼヒト上皮増殖因子受容体2(HER2/ErbB2)の阻害剤と特徴付けられるムブリチニブがAML細胞中のこのタンパク質を標的としないことも明らかになり、ムブリチニブがミトコンドリアの活性/呼吸、より具体的には電子伝達鎖(ETC)の阻害によりAML細胞のアポトーシスを誘導し、それにより感受性AML細胞のROS産生量を増大させることを示す有力な証拠を記載する。その他のミトコンドリアの活性/呼吸の阻害剤もムブリチニブ感受性AML細胞のアポトーシスを誘導することがわかった。
【0109】
したがって一態様では、本開示は、AML、例えば予後不良または高リスクAMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、例えば電子伝達鎖(ETC)阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。本開示は、AML、例えば予後不良もしくは高リスクAMLに罹患している対象の治療への、またはAML、例えば予後不良もしくは高リスクAMLに罹患している対象を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、例えばETC阻害剤の使用を提供する。本開示は、AML、例えば予後不良または高リスクAMLに罹患している対象の治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、例えばETC阻害剤も提供する。
【0110】
別の態様では、本開示は、ある薬剤がAML、例えば予後不良または高リスクAMLを治療するのに適し得るかどうかを判定する方法であって、前記薬剤が生体系(例えば、細胞または細胞抽出物)のミトコンドリアの活性または呼吸を阻害する(例えば、ETCを阻害する)かどうかを判定することを含み、ミトコンドリア活性の阻害が、その薬剤がAMLの治療に適し得ることを示す、方法を提供する。
【0111】
本明細書で使用される「ミトコンドリア活性阻害剤」(または「ミトコンドリア呼吸阻害剤」)という用語は、酸化的細胞エネルギー産生過程の阻害剤、通常、好気的細胞代謝の阻害剤を指す。「酸化的細胞エネルギー産生過程阻害剤」は、細胞内のトリカルボン酸(TCA)回路(クエン酸回路、CACまたはクレブス回路としても知られる)(炭水化物、脂肪およびタンパク質を二酸化炭素と水に化学的に変換して利用可能なエネルギー形態にする)の阻害剤または細胞内の酸化的(好気的)解糖(細胞質内でのグルコースからピルビン酸への代謝)もしくは解糖基質(ピルビン酸)の酸化的リン酸化の阻害剤を包含する。本開示によるミトコンドリア活性阻害剤とは、ETCまたは酸化的リン酸化を遮断する能力を示し、活性酸素種(ROS、例えばH2O2など)の産生を引き起こす(すなわち、細胞内のROSレベルを上昇させる)薬剤のことである、すなわち、ROS誘導ミトコンドリア活性阻害剤のことである。ミトコンドリア活性阻害剤の有効量とは、AML細胞に対して毒性を示す(AML細胞増殖を阻害し、かつ/またはAML細胞死を誘導する)が、正常な非AML細胞に対しては毒性を示さない(またはあまり毒性を示さない)量のことである。
【0112】
一実施形態では、ミトコンドリア活性阻害剤はTCA回路阻害剤、例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸リアーゼ、アルファケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、スクシニルCoAシンターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸シンターゼ、グルタミナーゼおよびピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体のうちの1つまたは複数の阻害剤である。いくつかのTCA回路の阻害剤が当該技術分野で公知である。TCA回路阻害剤の例としては、NAD+および/またはNADHの枯渇剤(例えば、ヒポグリシンAおよびその代謝産物メチレンシクロプロピル酢酸、D(-)-3-ヒドロキシブチラートなどのケトン体、アロキサン、PNU)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤、例えば亜ヒ酸塩、ジクロロビニル-システイン、p-ベンゾキノンおよびチアミナーゼなど、クエン酸シンターゼの阻害剤、例えばフルオロ酢酸塩、ハロゲン化酢酸(ヨード酢酸、ブロモ酢酸、クロロ酢酸)、フルオロアセトアミド、ハロゲン化アセチルCoA(フルオロアセチルCoA、ブロモアセチルCoA、クロロアセチルCoA、ヨードアセチルCoA)、ハロゲン化クロトン酸(フルオロクロトン酸、ヨードクロトン酸、ブロモクロトン酸、クロロクロトン酸)、ハロゲン化ケトン体(クロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨードアセト酢酸、フルオロ酪酸、クロロ酪酸、ブロモ酪酸、ヨード酪酸、フルオロアセトン、クロロアセトン、ブロモアセトン、ヨードアセトン)およびハロゲン化オレイン酸(ヨードオレイン酸、ブロモオレイン酸、クロロオレイン酸、フルオロオレイン酸)など、アコニターゼの阻害剤、例えばハロゲン化クエン酸およびハロゲン化クエン酸2R,3R異性体(フルオロクエン酸、ブロモクエン酸、クロロクエン酸、ヨードクエン酸)など、イソクエン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤、例えばジクロロビニルシステイン(DCVC)など、コハク酸デヒドロゲナーゼの阻害剤、例えばマロン酸塩、DCVC、ペンタクロロブタジエニルシステイン、2-ブロモヒドロキノン、3-ニトロプロピオン酸およびcis-クロトナリド殺真菌剤など、グルタミナーゼの阻害剤、例えば6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)など、その他のTCA回路阻害剤、例えばグル-ヒドロキシオキサマート、p-クロロマーキュリフェニルスルホン酸、L-グルタミン酸ガンマヒドロキサマート、p-クロロマーキュリフェニルスルホン酸、アシビシン(アルファ-アミノ-3-クロロ-4,5-ジヒドロ-5-イソオキサゾール酢酸、ハロゲン化グルタミン(フルオログルタミン、ヨードグルタミン、クロログルタミン、ブロモ-グルタミン)またはハロゲン化グルタミン酸(フルオログルタミン酸、ヨードグルタミン酸、クロログルタミン酸、ブロモグルタミン酸)、ハロゲン化アミノ酸など、ならびにその類似体、誘導体および塩が挙げられる。
【0113】
ETC(呼吸鎖としても知られる)は、真核細胞のミトコンドリアの膜間腔内に存在する一連のタンパク質複合体であり、酸化還元反応を介して電子供与体から電子受容体へ電子を伝達し、この電子伝達と膜を挟んだプロトン(H+イオン)伝達とを共役させて、アデノシン三リン酸(ATP)の合成を駆動する電気化学的プロトン勾配を生じさせる。ETCの構成要素は4種類の複合体(複合体I~IV)に組織化されており、各複合体には複数の異なる電子伝達体が含まれている。NADH-コエンザイムQ還元酵素またはNADHデヒドロゲナーゼとしても知られる複合体Iは、NADHから電子を受容し、解糖、クエン酸回路、脂肪酸酸化およびETCの間をつなぐ役割を果たす。コハク酸-コエンザイムQ還元酵素またはコハク酸デヒドロゲナーゼとしても知られる複合体IIは、コハク酸デヒドロゲナーゼを含み、クエン酸回路とETCを直接つなぐ役割を果たす。複合体IおよびIIはともに、複合体IIIの基質となる還元型コエンザイムQのCoQH2を産生する。コエンザイムQ還元酵素としても知られる複合体IIIは、CoQH2から電子を伝達して、複合体IVの基質となるシトクロームcを還元する。最後に、シトクロームc還元酵素としても知られる複合体IVは、シトクロームcから電子を伝達して酸素分子を水に還元する。
【0114】
本明細書で使用される「ETC阻害剤」という用語は、ミトコンドリア電子伝達の任意の段階の阻害剤、例えば、ヒトミトコンドリアETCの複合体I、複合体II、複合体IIIおよび/または複合体IVの阻害剤を指し、細胞のROS産生を誘導する(すなわち、ROSレベルを未処理細胞より上昇させる)、すなわちROS誘導ETC阻害剤である。
【0115】
いくつかのETCの阻害剤が当該技術分野で公知である。ETC阻害剤の例としては、ロテノンおよびその誘導体(例えば、デグエリン、アリールアジドアモルフィゲニン、アモルフィスピロノン、テフロシン、アモルフィゲニン、12a-ヒドロキシアモルフィゲニン、12a-ヒドロキシダルパノールおよび6’-0-D-グルコピラノシルダルパノール)、テノイルトリフルオロアセトン(TTFA)、ジフェニレンヨードニウムクロリド(DPI)、フェンホルミン、ロリニアスタチン1およびロリニアスタチン2、アミタール、2-ヘプチル-4-ヒドロキシキノリン、アンチマイシンA1およびその誘導体(例えば、ミキソチアゾール)、有機カルコゲン、例えばエブセレン(Ebs)、ジフェニルジセレニド(PhSe)2およびジフェニルジテルリド(PhTe)2など、セロトニン-ノルアドレナリン再取込み二重阻害剤(例えば、ベンラファキシン、O-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、デスメチルクロミプラミン、イミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびクロルプロマジン)、リコカルコンA、アスコクロリン、ストロビリルビンB(Strobilirubin B)、ピエリシジン、イミプラミンNADH結合酵素阻害剤、例えば2-アントラセン-カルボン酸など、NADH結合酵素アンタゴニスト、例えばα-NADHなど、ならびに銅キレート剤、例えばジエチルジチオカルバマートなどが挙げられる。ETCの複合体IIIの活性の阻害剤には、PCT公開WO2012/0700015号(例えば、N-シクロノニル-3-ホルムアミド-2-ヒドロキシベンズアミド)およびWO2013/174947号(例えば、3-ホルムアミド-N-(ヘプタデカン-9-イル)-2-ヒドロキシベンズアミド、N-シクロペンタデシル-7-ヒドロキシ-1H-インダゾール-6-カルボキサミド、3,5-ジクロロ-N-(3-(3-クロロ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-2-ヒドロキシベンズアミド、2-(3-ホルムアミド-2-ヒドロキシベンズアミド)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イルオクタノアート、N-シクロペンタデシル-3-ホルムアミド-2-ヒドロキシベンズアミド、N-シクロドデシル-3-ホルムアミド-2-ヒドロキシベンズアミド、3,5-ジクロロ-N-シクロペンタデシル-2-ヒドロキシベンズアミド、3,5-ジクロロ-N-デシル-2-ヒドロキシベンズアミド、N-(3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシフェニル)ウンデカンアミド、N-(4-(シクロペンタデシルカルバモイル)フェニル)-3-ホルムアミド-2-ヒドロキシベンズアミド、N-(ヘプタデカン-9-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-カルボキサミド、N-(3-(3-クロロ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イン)プロピル)-7-ヒドロキシ-1H-イミダゾール-6-カルボキサミド、N-(3-(3-クロロ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)プロピル)-3-フォマミド(fomamido)-2-ヒドロキシベンズアミド、N-(3-(10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)プロピル)-3-フォマミド(fomamido)-2-ヒドロキシベンズアミド、N-(3-(1-(ヘプタデカン-9-イル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-2-ヒドロキシフェニル)ホルムアミド、N-(3-(1-シクロペンタデシル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-2-ヒドロキシフェニル)ホルムアミド、N-シクロノニル-7-ヒドロキシ-1H-インダゾール-6-カルボキサミド、N-シクロノニル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-カルボキサミドおよびN-シクロペンタデシル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-カルボキサミド)に記載されているもの、ならびにその類似体、誘導体および塩がある。
【0116】
一実施形態では、ETC阻害剤は、ヒトミトコンドリアETCの主要なROS産生部位であると考えらえている複合体Iおよび/または複合体IIIの活性を阻害する。一実施形態では、ETC阻害剤は、ヒトミトコンドリアETCの複合体IIIの活性を遮断する。別の実施形態では、ETC阻害剤は、ヒトミトコンドリアETCの複合体(I)の活性を遮断する。複合体I阻害剤は、Fato et al.(Biochim Biophys Acta,2009 May;1787(5):384-392)の分類によるクラスA複合体I阻害剤である。本明細書で使用される「クラスA複合体I阻害剤」という用語は、細胞のROS産生を誘導する複合体Iの阻害剤を指す、すなわち、ROS誘導複合体I阻害剤である。クラスA複合体I阻害剤の例としては、ロテノン、ピエリシジンA、ロリニアスタチン1およびロリニアスタチン2が挙げられる。一実施形態では、クラスA複合体I阻害剤は、複合体Iのキノン結合部位またはその付近に結合する。
【0117】
上記のように、本明細書に記載される試験では、ムブリチニブがミトコンドリア活性、より具体的にはETCの阻害によりAML細胞のアポトーシスを誘導し、それにより白血病細胞のROS産生が誘導されることを示す証拠が得られた。ムブリチニブはクラスA複合体I阻害剤に相当する作用機序を示す。
【0118】
したがって、一実施形態では、ETC阻害剤はムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩である。したがって、別の態様では、本開示は、細胞内のミトコンドリアの活性または呼吸の阻害、例えばETCの阻害へのムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用に関するものである。
【0119】
別の態様では、本開示は、AML、例えば予後不良または高リスクAMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。本開示は、AML、例えば予後不良または高リスクAMLに罹患している対象の治療への、またはAML、例えば予後不良または高リスクAMLに罹患している対象を治療する薬剤の製造へのムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。本開示は、AML、例えば予後不良または高リスクAMLに罹患している対象の治療への使用のためのムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩も提供する。
【0120】
別の態様では、本開示は、予後不良または高リスクAMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0121】
TAK-165とも呼ばれるムブリチニブ(1-(4-{4-[(2-{(E)-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エテニル}-1,3-オキサゾール-4-イル)メトキシ]フェニル}ブチル)-1H-1,2,3-トリアゾール、CAS番号366017-09-6)は以下の構造:
【化1】
を有する。
【0122】
ムブリチニブはヒト上皮増殖因子受容体2(ERBB2/HER2)の強力な阻害剤として記載されている(Nagasawa et al.,Int J Urol.2006 May;13(5):587-92)。ムブリチニブを合成する方法は当該技術分野で公知であり、例えば、PCT公開WO/2001/77107号に記載されている。一実施形態では、本明細書に記載される方法および使用は、ムブリチニブの使用または投与を含む。
【0123】
本発明者らは、ムブリチニブに対する感受性の高いAML標本が、(i)ある特定の遺伝子(表1を参照されたい)、特にホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の発現がムブリチニブに対する耐性の高いAML標本より高いこと、(ii)ある特定の遺伝子(表2を参照されたい)の発現がムブリチニブに対する耐性の高いAML標本より低いこと;(iii)ある特定の細胞遺伝学的または分子的リスク因子、例えば中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、高HOX状態、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子(DNMT3A、TET2、IDH1、IDH2)、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)など;ならびに(iv)耐性の高いAML標本より白血病幹細胞(LSC)頻度が高い、すなわち、総細胞数1×106個当たりのLSCが約1個であるLSC頻度を含めたある特定の特性/特徴を有することを明らかにした。
【0124】
【0125】
【0126】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載される方法/使用により治療する対象は、以下の特徴:(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つのものを特徴とするAMLに罹患している。
【0127】
別の態様では、本開示は、AMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記AMLが、以下の特徴:(a)1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;ならびに(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つの特徴を有する、方法を提供する。
【0128】
別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療へのミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、上に明記した特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴を有する、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、上に明記した特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴を有する、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩であって、前記AMLが、上に明記した特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴を有する、ミトコンドリア活性阻害剤を提供する。
【0129】
一実施形態では、治療する対象は、上記の特徴(a)~(e)のうち1つまたは複数の特徴を有することが既に確認されている。別の実施形態では、この方法は、ミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与する前に、例えば適切なアッセイを実施することにより、上記の特徴のうち1つまたは複数の特徴を有する対象を特定する段階をさらに含む。
【0130】
別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象に適した治療法を決定する方法であって、対象のAML細胞試料に本明細書に明記される特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴がみられるかどうかを判定することを含み、特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴がみられることが、対象がミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む治療法に適した候補であることを示し、特徴(a)~(e)がみられないことが、対象がミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む治療法に適した候補ではない、すなわち、ミトコンドリア活性阻害剤を含まない治療法の候補であることを示す、方法を提供する。
【0131】
別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象に適した治療法を決定する方法であって、対象のAML細胞試料に本明細書に明記される特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴がみられるかどうかを判定することを含み、特徴(a)~(e)のうち少なくとも1つの特徴がみられることが、対象が哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ阻害剤を含む治療法に適した候補ではない(すなわち、mTORキナーゼ阻害剤を含まない治療法の候補である)ことを示し、特徴(a)~(e)がみられないことが、対象が哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ阻害剤、例えば、AZD-2014(3-(2,4-ビス((S)-3-メチルモルホリノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-N-メチルベンズアミド、ビスツセルチブ)、AZD-8055((5-(2,4-ビス((S)-3-メチルモルホリノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-メトキシフェニル)メタノール)、OSI-027((1r,4r)-4-(4-アミノ-5-(7-メトキシ-1H-インドール-2-イル)イミダゾ[1,5-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)シクロヘキサンカルボン酸)を含む治療法に適した候補であることを示す、方法を提供する。一実施形態では、この方法は、特徴(a)、すなわち、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子、例えば、表1に記載されるHOX遺伝子のうちHOXA9および/またはHOXA10などの1つまたは複数の遺伝子の高発現がみられるかどうかを判定することを含む。
【0132】
別の態様では、本開示は、予後不良または高リスクAMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象の予後不良または高リスクAMLの治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象の予後不良または高リスクAMLを治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象の予後不良または高リスクAMLの治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0133】
別の態様では、本開示は、中リスクAMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象の中リスクAMLの治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象の中リスクAMLを治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象の中リスクAMLの治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0134】
別の態様では、本開示は、高リスクおよび/または中リスクAMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象の高リスクおよび/または中リスクAMLの治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象の高リスクおよび/または中リスクAMLを治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象の高リスクおよび/または中リスクAMLの治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0135】
本明細書で使用される「予後」という用語は、推定されるAMLの転帰または経過;患者の回復または生存の可能性の予測を指す。本明細書で使用される「予後不良AML」または「高リスクAML」という用語は、現時点で利用可能な治療法に基づき長期生存率(5年以上)が約25%または20%未満であるAMLを指す。予後不良AMLは、例えば、5番染色体または7番染色体の一部欠損、9番染色体と11番染色体の間での転座、3番染色体の転座または逆位、6番染色体と9番染色体の間での転座、9番染色体と22番染色体の間での転座、11番染色体の異常、FLT3遺伝子変異、EVI1高発現、複合核型(3超となる異常)およびHOXネットワーク遺伝子高発現を伴うことが多い。
【0136】
本明細書で使用される「中リスクAML」という用語は、現時点で利用可能な治療法に基づき長期生存率(5年以上)が約60%~約25%であるAMLを指す。中リスクAMLは一般に、好ましい細胞遺伝学的異常および特定の好ましくない細胞遺伝学的異常(すなわち、「情報価値のない」細胞遺伝学的異常)が認められず、AML患者の相当な割合(約55%)を占める。中リスクAMLの例としては、正常核型(NK)AML、正常核型(NK)を伴うAMLのNUP98-NSD1融合、8番染色体トリソミー単独のAMLおよび中等度の異常核型AMLが挙げられる。
【0137】
別の態様では、本開示は、AML(例えば、高リスクまたは予後不良AML)を治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を示す(すなわち、高HOX AML)、方法を提供する。別の態様では、本開示は、AML(例えば、高リスクまたは予後不良AML)の治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AML(例えば、高リスクまたは予後不良AML)を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AML(例えば、高リスクまたは予後不良AML)の治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩であって、前記AMLが、1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を示す、阻害剤を提供する。
【0138】
本開示は、AMLに罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療が奏効する可能性を判定する方法であって、前記対象のAML細胞が1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現を示すかどうかを判定することを含み、前記AML細胞の1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の高レベルの発現が、対象に前記治療が奏効する可能性が高いことを示す、方法も提供する。
【0139】
HOX-MEIS-PBXネットワーク(HOXネットワーク)の調節解除は、AML患者によくみられる分子異常である(Lawrence,H.J. et al.,Leukemia 13,1993-1999(1999))。それは例えば2つのAMLサブタイプ、すなわち、ヌクレオフォスミン遺伝子に変異のある正常核型(NK)を有するAML患者(NK NPM1m、患者の25%前後を占める)および11q23上に混合系統白血病遺伝子(MLL)を含む染色体転座を有する患者亜群(患者の8%)として検出される。
【0140】
本明細書で使用される「HOXネットワーク遺伝子」という用語は、転写因子(TF)ファミリーHOXの調節ネットワークに関与し、造血系統の細胞に発現する遺伝子を指す。造血系統の細胞に発現する「HOXネットワーク遺伝子」のメンバーとしては、HOX遺伝子クラスターA、BおよびC、例えばHOXB1、HOXB2、HOXB3、HOXB4、HOXB5、HOXB6、HOXB7、HOXB9、HOXB-AS3、HOXA1、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9、HOXA10、HOXA10-AS、HOXA11、HOXA11-ASおよびHOXA-AS3など、ならびにMEIS1およびPBX3などのその他の遺伝子が挙げられる。一実施形態では、AMLに少なくとも1種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも2種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも3種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも4種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも5種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも10種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも15種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに少なくとも20種類のHOXネットワーク遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLにHOXA9およびHOXA10のうち少なくとも1種類が高発現する。一実施形態では、AMLにHOXA9およびHOXA10の両方が高発現する。HOX遺伝子が高発現するAMLは、予後不良(生存率不良)、中リスク細胞遺伝学、高レベルのFLT3発現、高頻度のFLT3およびNPM1変異およびLSC高頻度を特徴とする明確なAMLの生物学的亜群を定める(例えば、Roche et al.,Leukemia(2004)18,1059-1063;Kramarzova et al.,Journal of Hematology & Oncology 2014 7:94を参照されたい)。一実施形態では、AMLに高発現するHOXネットワーク遺伝子(1つまたは複数)は、表1に記載されるHOXネットワーク遺伝子のうちの1つまたは複数の遺伝子である。
【0141】
一実施形態では、上記の方法は、対象の白血病細胞を含む試料の1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子の発現レベルを測定し、そのレベルを基準レベルまたは対照と比較して、白血病細胞にその1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が高発現または過剰発現しているかどうかを判定し、その1つまたは複数のHOXネットワーク遺伝子が白血病細胞に高発現または過剰発現している場合、その対象をミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療に選択することをさらに含む。
【0142】
本開示は、AMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を示す、方法も提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩であって、前記AMLが、表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を示す、阻害剤を提供する。
【0143】
本開示は、AMLに罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療が奏効する可能性を判定する方法であって、前記対象のAML細胞が表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現を示すかどうかを判定することを含み、前記AML細胞のその1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現が、対象に前記治療が奏効する可能性が高いことを示す、方法も提供する。
【0144】
一実施形態では、AMLに表1の少なくとも1種類の遺伝子が高発現(過剰発現)する。一実施形態では、AMLに表1の少なくとも2種類の遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに表1の少なくとも3種類の遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに表1の少なくとも4種類の遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに表1の少なくとも5種類の遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに表1の少なくとも10種類の遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに表1に記載される遺伝子のうち少なくとも1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、10種類またはそれ以上の遺伝子が高発現する。一実施形態では、AMLに表1に記載される全遺伝子が高発現する。
【0145】
一実施形態では、上記の方法は、対象の白血病細胞を含む試料において表1の遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定し、そのレベルを基準レベルまたは対照と比較して、白血病細胞にその1つまたは複数の遺伝子が高発現または過剰発現しているかどうかを判定し、その1つまたは複数の遺伝子が白血病細胞に高発現または過剰発現している場合、その対象をミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療に選択することをさらに含む。
【0146】
本開示は、AMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を示す、方法も提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩であって、前記AMLが、表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を示す、阻害剤を提供する。
【0147】
本開示は、AMLに罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療が奏効する可能性を判定する方法であって、前記対象のAML細胞が表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現を示すかどうかを判定することを含み、前記AML細胞のその1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現が、対象に前記治療が奏効する可能性が高いことを示す、方法も提供する。
【0148】
一実施形態では、AMLに表2の少なくとも1種類の遺伝子が弱発現(過小発現)する。一実施形態では、AMLに表2の少なくとも2種類の遺伝子が弱発現する。一実施形態では、AMLに表2の少なくとも3種類の遺伝子が弱発現する。一実施形態では、AMLに表2の少なくとも4種類の遺伝子が弱発現する。一実施形態では、AMLに表2の少なくとも5種類の遺伝子が弱発現する。一実施形態では、AMLに表2の少なくとも10種類の遺伝子が弱発現する。一実施形態では、AMLで上記の全遺伝子がアップレギュレートされる。一実施形態では、AMLに表2に記載される遺伝子のうち少なくとも1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、10種類またはそれ以上の遺伝子が弱発現する。一実施形態では、AMLに表2に記載される全遺伝子が弱発現する。
【0149】
一実施形態では、上記の方法は、対象の白血病細胞を含む試料において表2の遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定し、そのレベルを基準レベルまたは対照と比較して、白血病細胞にその1つまたは複数の遺伝子が弱発現または過小発現しているかどうかを判定し、その1つまたは複数の遺伝子が白血病細胞に弱発現または過小発現している場合、その対象をミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療に選択することをさらに含む。
【0150】
本明細書に開示される1つまたは複数の遺伝子またはコードされる遺伝子産物(例えば、mRNA、タンパク質)(例えば、HOXネットワーク遺伝子、表1~3の遺伝子)の発現の判定は、核酸またはタンパク質を検出する任意の既知の方法を用いて実施し得る。諸実施形態では、発現を対照または基準レベル(例えば、ミトコンドリア活性阻害剤に対して耐性または感受性(例えば、ムブリチニブ耐性またはムブリチニブ感受性)であることがわかっているAML対象の試料で得られたレベル)と比較して、対象にミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)が奏効する可能性を評価し、その対象をミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩で治療し得るかどうかを判定する。
【0151】
次いで、下に開示する方法などのよく用いられる方法に従い、例えば核酸増幅法を用いて、または用いずに、上記の遺伝子に対応する核酸のレベル(例えば、転写物)を評価することができる。いくつかの実施形態では、核酸増幅法を用いて、1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを検出することができる。例えば、様々な周知の確立されたいずれかの方法論により単離した核酸基質を用いる増幅法および検出法にオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブを使用し得る(例えば、Sambrook et al.,supra;Lin et al.,in Diagnostic Molecular Microbiology,Principles and Applications,pp.605-16(Persing et al.編(1993);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(2001年およびそれに対するのちの改訂))。核酸を増幅する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および逆転写PCR(RT-PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号を参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Weiss,Science 254:1292-93(1991)を参照されたい)、鎖置換増幅(SDA)(例えば、Walker et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392-396(1992);米国特許第5,270,184号および同第5,455,166号を参照されたい)、高温SDA(tSDA)(例えば、欧州特許第0684315号を参照されたい)ならびに米国特許第5,130,238号;Lizardi et al.,BioTechnol.6:1197-1202(1988);Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-77(1989);Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-78(1990);米国特許第5,480,784号;同第5,399,491号;米国特許出願公開第2006/46265号に記載されている方法が挙げられる。これらの方法には、RNAポリメラーゼを用いて標的領域の複数のRNA転写物を産生させる転写増幅法(TMA)の使用が含まれる(例えば、米国特許第5,480,784号;同第5,399,491号および米国特許出願公開第2006/46265号を参照されたい)。核酸のレベルは、RNAシーケンシング(RNA-seq)などの「次世代シーケンシング」(NGS)法でも測定し得る。一実施形態では、1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定する方法は、核酸増幅の段階を含む。
【0152】
核酸または増幅産物は、プローブ(例えば、標識プローブ)と核酸または増幅産物の一部分とをハイブリダイズさせることにより検出または定量化し得る。プライマーおよび/またはプローブを検出可能な標識で標識してよく、このような標識は、例えば、蛍光部分、化学発光部分、放射性同位元素、ビオチン、アビジン、酵素、酵素基質またはその他の反応基であり得る。本明細書で使用される「検出可能な標識」という用語は、適切な検出システムを用いて検出され得るシグナル(例えば、光)を発する部分を指す。本明細書に記載される方法には任意の適切な標識を使用し得る。検出可能な標識としては、例えば、酵素または酵素基質、反応基、発色団、例えば色素または着色粒子など、生物発光部分、リン光部分または化学発光部分を含めた発光部分および蛍光部分が挙げられる。一実施形態では、検出可能な標識は蛍光部分である。よく用いられるフルオロフォアとしては、特に限定されないが、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)および5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)が挙げられる。フルオロフォアは、特に限定されないが:FAM、TET、HEX、Cy3、TMR、ROX、Texas Red(登録商標)、LC赤640、Cy5およびLC赤705を含めた当該技術分野で公知の任意のフルオロフォアであり得る。本明細書に提供される方法および組成物に使用するフルオロフォアを、例えば、Biosearch Technologies社(ノバート、カリフォルニア州)、Life Technologies社(カールスバド、カリフォルニア州)、GE Healthcare社(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、Integrated DNA Technologies社(コーラルビル、アイオワ州)およびRoche Applied Science社(インディアナポリス、インディアナ州)から購入し得る。いくつかの実施形態では、特定の分光測光サーマルサイクラーなどの特定の検出器に使用できるように、機器の光源に応じてフルオロフォアを選択する。いくつかの実施形態では、2つ以上の標的核酸を検出するよう(マルチプレックスアッセイ)アッセイをデザインする場合、互いに十分に離れた吸収波長および発光波長を有する(すなわち、スペクトルの重複が最小限に抑えられた)2つ以上の異なるフルオロフォアを選択し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の特定の消光剤を用いて十分に機能するようフルオロフォアを選択する。蛍光標識と消光剤の適切な組合せの代表例には、蛍光FAM(励起最大波長=494nm、発光最大波長=520nm)と、ZEN(商標)消光剤(略称なし;吸収最大波長532nm)と、アイオワブラックフルオレセイン消光剤(IBFQ、吸収最大波長=531nm)(Integrated DNA Technologies(登録商標)社)とを含む、FAM/ZEN/IBFQがある。検出可能な標識および/または消光剤とプライマーおよび/またはプローブは、当該技術分野で周知の標準的方法論に従って共有結合させることができる。
【0153】
その他の周知の検出技術としては、例えば、ゲルろ過、ゲル電気泳動およびアンプリコンの可視化ならびに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が挙げられる。ある特定の実施形態では、例えば、リアルタイムTMAまたはリアルタイムPCRを用い、増幅産物を蓄積させてそのレベルを検出する。一実施形態では、1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定する方法は、プローブによる核酸または増幅産物の検出または定量化の段階を含む。
【0154】
一実施形態では、上記の方法は、異なる試料間での比較を容易にするため、遺伝子発現レベルを正規化する段階、すなわち、上記の遺伝子について測定したレベルを安定に発現する対照遺伝子(またはハウスキーピング遺伝子)に対して正規化することを含む。本明細書で使用される「正規化すること」または「正規化」は、細胞投入量、核酸(RNA)またはタンパク質の質、逆転写(RT)の効率、増幅、標識、精製などの「外因性」パラメータ、すなわち、試料中の細胞による遺伝子発現の実際の「内因性」のばらつきに起因しない差を考慮に入れるため、異なる試料間の生の遺伝子発現値/データの試料間のばらつきを補正することを指す。このような正規化は、1つまたは複数の「ハウスキーピング」または「対照」遺伝子、すなわち、異なる組織の細胞間でも異なる実験条件下でも発現が一定である(すなわち、比較的ばらつきが小さい)ことがわかっている遺伝子について測定した遺伝子発現値/データに基づき被験遺伝子(または目的とする遺伝子)の生の遺伝子発現値/データを補正することにより実施する。したがって、一実施形態では、上記の方法は、生体試料中のハウスキーピング遺伝子の発現レベルを測定することをさらに含む。適切なハウスキーピング遺伝子は当該技術分野で公知であり、いくつかの例が、下の表3に示されるものを含め、国際公開第2014/134728号に記載されている。
【0155】
【0156】
その他のよく用いられるハウスキーピング遺伝子としては、TBP、YWHAZ、PGK1、LDHA、ALDOA、HPRT1、SDHA、UBC、GAPDH、ACTB、G6PD、VIM、TUBA1A、PFKP、B2M、GUSB、PGAM1およびHMBSが挙げられる。
【0157】
一実施形態では、1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定する方法は、対象の生体試料中の1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子の発現レベルを測定することをさらに含む。
【0158】
別の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子またはコードされる遺伝子産物の発現をタンパク質レベルで測定する。タンパク質の量/レベルを測定する方法は当該技術分野で周知である。タンパク質のレベルは、タンパク質と特異的に結合するリガンド、例えば抗体またはそのフラグメントなどを用いて直接検出し得る。諸実施形態では、複合体の検出および定量化を容易にするため、そのような結合分子または試薬(例えば、抗体)を標識/コンジュゲートして、例えば、放射能、発色団、フルオロフォアまたは酵素で標識する(直接的検出)。あるいは、結合分子または試薬を用い、次いで、その結合分子または試薬を特異的に認識する第二のリガンド(または第二の結合分子)を用いて[タンパク質/結合分子または試薬]複合体を検出することにより、タンパク質レベルを間接的に検出してもよい(間接的検出)。複合体の検出および定量化を容易にするため、そのような第二のリガンドを放射能、発色団、フルオロフォアまたは酵素で標識し得る。イムノアッセイの抗体を標識するのに用いられる酵素は当該技術分野で公知であり、最も広く用いられているのが西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびアルカリホスファターゼ(AP)である。結合分子または試薬の例としては、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、天然または合成のリガンドなどが挙げられる。
【0159】
試料中のタンパク質の量/レベルを測定する方法の例としては、特に限定されないが、ウエスタンブロット、免疫ブロット、酵素結合免疫測定法(ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴(SPR)、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学的(IHC)解析、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、抗体アレイ、顕微鏡法(例えば、電子顕微鏡法)、フローサイトメトリー、プロテオミクスベースのアッセイ、および特に限定されないが他のタンパク質パートナーと結合または相互作用するリガンドを含めたタンパク質の特性または活性、酵素活性、蛍光に基づくアッセイが挙げられる。例えば、目的のタンパク質が、所与の標的をリン酸化することがわかっているキナーゼである場合、被験化合物の存在下で標的のリン酸化レベルを測定することにより目的のタンパク質のレベルまたは活性を求め得る。目的のタンパク質が、1つまたは複数の所与の標的遺伝子の発現を誘導することがわかっている転写因子である場合、標的遺伝子(1つまたは複数)の発現レベルを測定することにより目的のタンパク質のレベルまたは活性を求め得る。
【0160】
「対照レベル」または「基準レベル」は本明細書では互換的に使用され、同等の「対照」試料で測定した別個のベースラインレベルを広く指すものであり、このような「対照」試料は一般に、目的の遺伝子の発現レベルがわかっており、かつ/またはミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)が奏効するかどうかがわかっている対象の試料、例えば、ミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)が奏効しないことがわかっている対象のAML試料である。対応する対照レベルは、複数の基準対象または対照対象で測定したレベルに基づき算出した平均値または中央値レベルに対応するレベル(例えば、所定の基準または確立された基準)であり得る。対照レベルは、当該技術分野で認められている、または対照対象1例もしくは対照対象のグループ(例えば、ミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)が奏効しないことがわかっている対象のグループ)の試料で測定したレベルに基づき確立された所定の「カットオフ」値であり得る。例えば、「閾値基準レベル」は、ミトコンドリア活性阻害剤が奏効する可能性のある(例えば、ムブリチニブ感受性)AML対象と、ミトコンドリア活性阻害剤が奏効する可能性が低い(例えば、ムブリチニブ耐性)対象とを統計的に有意な方法で識別することを可能にする遺伝子(1つまたは複数)の最小発現レベル(カットオフ)に対応するレベルであり得、これは、例えば、ミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)の薬理学的奏効が異なるAML患者の試料を用いて求め得るものである。あるいは、「閾値基準レベル」は、ミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)に感受性を示すAML対象と、ミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブ)に耐性を示すAML対象とを統計的に有意な方法で最良に、または最適に識別することを可能にする遺伝子発現レベル(カットオフ)に対応するレベルであり得る。対応する基準/対照レベルは、年齢、性別、人種またはその他のパラメータに合わせて調整または正規化し得る。したがって、「対照レベル」は、あらゆる対象に個別に等しく適用できる単一の数字/値であり得るか、または対照レベルは、特定の患者の亜群に応じて異なるものであり得る。したがって、例えば、高齢男性の対照レベルが若年男性のものと異なる可能性があり、女性の対照レベルが男性のものと異なる可能性がある。例えば、被験集団を可能性が低いグループ、可能性が中程度のグループおよび/または可能性が高いグループなどのグループに、あるいは四分位または五分位に均等(または不均等)に分ける場合、所定の基準レベルを分けることができる。本発明による対照レベルは、所定のレベルまたは基準のほかにも、実験試料と並行して試験する他の試料(例えば、目的の遺伝子の発現レベルがわかっており、かつ/またはムブリチニブに対して奏効するかどうかがわかっている対象の試料)で測定したレベルであり得ることも理解されよう。基準レベルまたは対照レベルは、正規化したレベル、すなわち、ハウスキーピング遺伝子の発現に基づき正規化した基準値または対照値に対応するものであり得る。
【0161】
本明細書で使用される「高発現」または「高レベルの発現」(過剰発現)は、(i)試料中に存在する1つもしくは複数の所与の細胞において上記の遺伝子(タンパク質および/またはmRNA)のうち1つもしくは複数の遺伝子の発現が(対照より)高いこと、および/または(ii)試料中の上記1つもしくは複数の遺伝子を発現する細胞の量が(対照より)多いことを指す。本明細書で使用される「低/弱発現」または「低/弱レベルの発現」(過小発現)は、(i)試料中に存在する1つもしくは複数の所与の細胞において1つもしくは複数の遺伝子(タンパク質および/またはmRNA)の発現が(対照より)低いこと、および/または(ii)試料中の上記1つもしくは複数の遺伝子を発現する細胞の量が(対照より)少ないことを指す。一実施形態では、高い、または低いは、対照レベル(例えば、所定のカットオフ値)を上回る、または下回る発現レベルを指す。別の実施形態では、高い、または低いは、対照レベル(例えば、所定のカットオフ値)を少なくとも1標準偏差上回る、または下回る(例えば、適切な統計解析を用いて求めた場合に統計的に有意である)発現レベルを指し、「同程度の発現」または「同レベルの発現」は、対照レベル(例えば、所定のカットオフ値)を1標準偏差未満上回る、または下回る(例えば、偽発見率(FDR)/q値、スチューデントのt検定/p値、マン・ホイットニーの検定/p値などの適切な統計解析を用いて求めた場合に統計的に有意でない)発現レベルを指す。諸実施形態では、高い、または低いは、対照レベル(例えば、所定のカットオフ値)を少なくとも1.5標準偏差、2標準偏差、2.5標準偏差、3標準偏差、4標準偏差または5標準偏差上回る、または下回る発現レベルを指す。別の実施形態では、「高発現」は、被験試料での対照レベルより少なくとも10%、20%、30%、40%、45%または50%高い発現を指す。一実施形態では、「低発現」は、被験試料での対照レベルより少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%低い発現を指す。別の実施形態では、高い、または低いは、被験試料における対照試料より少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、25倍または50倍高いまたは低い発現レベルを指す。
【0162】
別の態様では、本開示は、AMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)を投与することを含み、前記AMLが、以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA(例えば、単一アレルまたは両アレル)、変異FLT3、変異DNMT3A、変異TET2、変異IDH1、変異IDH2、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、中等度の細胞遺伝学的リスク、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子を示す、方法を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象の治療へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)の使用であって、前記AMLが、上記の細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象を治療する薬剤の製造へのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)の使用であって、前記AMLが、上記の細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を示す、使用を提供する。別の態様では、本開示は、AMLの治療への使用のためのミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)であって、前記AMLが、上記の細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子を示す、阻害剤を提供する。
【0163】
一実施形態では、対象は、中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)および/または高HOX発現を特徴とするAMLに罹患している。一実施形態では、対象は、中等度の細胞遺伝学的リスクを有するAMLに罹患している。一実施形態では、対象は、正常核型(NK)を有するAMLに罹患している。一実施形態では、対象は、高HOX発現を有するAMLに罹患している。
【0164】
本開示は、AMLに罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)が奏効する可能性を判定する方法であって、前記対象のAML細胞が、以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNMT3A、変異TET2、変異IDH1、変異IDH2、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、中等度の細胞遺伝学的リスク、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子を示すかどうかを判定することを含み、前記AML細胞に前記細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子が存在することが、対象に前記治療が奏効する可能性が高いことを示す、方法も提供する。一実施形態では、上記の変異遺伝子の変異は、表5Bに示される位置のうち1つまたは複数の位置にある。さらなる実施形態では、上記の変異遺伝子の変異は、表5Bに示される変異のうち1つまたは複数の変異である。
【0165】
一実施形態では、方法/使用はNK-AMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異FLT3(例えば、遺伝子内縦列重複を有するFLT3、FLT3-ITD)を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異CEBPAを有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異DNMT3Aを有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異TET2を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異IDH1を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異IDH2を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異RUNX1を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異WT1を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、変異SRSF2を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では。方法/使用は、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、8番染色体トリソミー(+8)を有するAMLを治療するためのものである。一実施形態では、方法/使用は、異常染色体(5/7)を有するAMLを治療するためのものである。
【0166】
一実施形態では、方法は、上記の細胞遺伝学的または分子的リスク因子のうち2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の因子の任意の組合せを有するAMLを治療するためのものである。
【0167】
一実施形態では、AMLは、MLL転座を有するAMLではない。一実施形態では、AMLはEVI1再構成AMLではない。一実施形態では、AMLは、コア結合因子(CBF)AML、例えばt(8:21)またはinv(16)染色体再構成を有するAMLではない。一実施形態では、AMLは、変異NRAS、変異c-KITおよび/または変異TP53を有するAMLではない。
【0168】
一実施形態では、AMLは、変異NPM1を有するNK-AMLである。一実施形態では、AML細胞は、変異NPM1と、変異FLT3(例えば、遺伝子内縦列重複を有するFLT3、FLT3-ITD)と、DNMT3Aなどの変異DNAメチル化遺伝子とを含む。さらなる実施形態では、AML細胞は、変異NPM1と、変異FLT3(例えば、遺伝子内縦列重複を有するFLT3、FLT3-ITD)と、DNMT3Aなどの変異DNAメチル化遺伝子とを含み、変異NRASを含まない。
【0169】
本明細書に明記される細胞遺伝学的および分子的リスク因子は、2008年の世界保健機関(WHO)の分類(Vardiman et al.,Blood 2009 114:937-951)および近年のゲノム分類の進歩(Papaemmanuil,E. et al.,N Engl J Med 374,2209-2221,2016)に基づくものである。
【0170】
別の実施形態では、上記の方法/使用は、対象の白血病細胞を含む試料中に本明細書に明記される細胞遺伝学的および分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子が存在する(または存在しない)ことを判定し、細胞遺伝学的および分子的リスク因子のうち1つまたは複数の因子が存在する場合、その対象をミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療に選択することをさらに含む。
【0171】
細胞遺伝学的または分子的リスク因子(変異(1つまたは複数)、転座、融合、染色体異常など)を特定する方法およびキットは当該技術分野で周知であり、例えば、核型、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、DNAシーケンシングおよびマイクロアレイ技術がこれに含まれる(例えば、Gulley et al.,J Mol Diagn.2010 Jan;12(1):3-16を参照されたい)。試料中の変異(1つまたは複数)、転座、融合などの存在の判定は、任意の適切な方法を用いて実施し得る(例えば、Syvanen,Nat Rev Genet.2001 Dec;2(12):930-42を参照されたい)。例えば、変異(1つまたは複数)の存在をゲノムDNA、転写物(RNAまたはcDNA)またはタンパク質のレベルで検出し得る。配列および多型を核酸レベルで決定するのに適した方法の例としては、例えば「次世代シーケンシング」法(例えば、ゲノムシーケンシング、RNAシーケンシング(RNA-seq))またはその他のシーケンシング法による、例えばゲノムDNAまたは転写物(cDNA)中の変異(1つまたは複数)を含む核酸配列のシーケンシング;(同等のハイブリダイゼーション条件下、例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で)変異(1つまたは複数)を含む核酸配列と特異的にハイブリダイズすることが可能であり、変異(1つまたは複数)を含まない対応する核酸配列とはハイブリダイズしない(または少ない程度にハイブリダイズする)核酸プローブのハイブリダイゼーション(例えば、分子ビーコン);制限断片長多型解析(RFLP);増幅断片長多型PCR(AFLP-PCR);変異(1つまたは複数)を含む核酸配列と特異的にハイブリダイズするプライマーを使用し、プライマーが、変異(1つまたは複数)が存在する場合は増幅産物を産生し、変異(1つまたは複数)を含まない核酸配列を増幅の鋳型に使用する場合はその同じ増幅産物を産生しない、変異(1つまたは複数)を含む核酸フラグメントの増幅、核酸配列ベースの増幅(Nasba)、プライマー伸長アッセイ、FLAPエンドヌクレアーゼアッセイ(インベーダーアッセイ、Olivier M.(2005).Mutat Res.573(1-2):103-10)、5’-ヌクレアーゼアッセイ(McGuigan F.E.およびRalston S.H.(2002)Psychiatr Genet.12(3):133-6)、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイが挙げられる。その他の方法としては、in situハイブリダイゼーション解析および一本鎖立体配座多形解析が挙げられる。SNP遺伝子型同定プラットフォームがいくつか市販されている。ほかの方法については当業者に明らかであろう。
【0172】
変異(1つまたは複数)および/または融合(1つまたは複数)の存在の判定は、ポリペプチド/タンパク質レベルでも実施し得る。ポリペプチドレベルで変異を検出するのに適した方法の例としては、コードされるポリペプチドのシーケンシング;変異ポリペプチドに未変異ポリペプチドと比較して質量分析またはHPLCスペクトルの変化がみられる、コードされるポリペプチドの消化とそれに続くペプチドフラグメントの質量分析またはHPLC解析;および変異ポリペプチドに対し対応する未変異ポリペプチドと比較して変化した免疫反応性を示す免疫学的試薬(例えば、抗体、リガンド)を用いる免疫検出が挙げられる。免疫検出では、抗タンパク質抗体または抗タンパク質抗体に結合する二次抗体と結合させた酵素標識、クロモ力学的標識、放射性標識、磁気標識または発光標識の使用によりポリペプチド分子と抗タンパク質抗体との間の結合量を測定することができる。さらに、その他の高親和性リガンドを使用し得る。用いることができるイムノアッセイとしては、例えば、ELISA、ウエスタンブロットおよび当業者に公知のその他の技術が挙げられる(HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999ならびにEdwards R,Immunodiagnostics:A Practical Method,Oxford University Press,Oxford;England,1999を参照されたい)。変異ポリペプチドに対し対応する未変異ポリペプチドと比較して変化した免疫反応性を示す抗体を作製する方法については、のちにさらに詳細に記載する。
【0173】
上記の検出技術はいずれも、マイクロアレイ、例えば、SNPマイクロアレイ、DNAマイクロアレイ、タンパク質アレイ、抗体マイクロアレイ、組織マイクロアレイ、電子バイオチップまたはタンパク質チップをベースとする技術の形式で用いてもよい(Schena M.,Microarray Biochip Technology,Eaton Publishing,Natick,Mass.,2000を参照されたい)。
【0174】
別の実施形態では、本明細書に記載されるAML細胞の1つまたは複数の特徴の存在を確認するための方法は、対象から生体試料を採取または収集することをさらに含む。様々な実施形態では、試料は、変異(1つまたは複数)の検出に適した生物学的材料、例えばゲノムDNA、RNA(cDNA)および/またはタンパク質を含有する任意の入手源、例えば、白血病細胞(AML細胞)を含む対象の組織または細胞試料(血液細胞、免疫細胞(例えば、リンパ球)などに由来するものであり得る。試料を細胞精製/濃縮技術に供して、特定の細胞亜群または細胞型(1つまたは複数)に富む細胞集団を入手し得る。試料をよく用いられる単離および/または精製技術に供して核酸(ゲノムDNA、cDNA、mRNA)および/またはタンパク質を濃縮し得る。したがって、一実施形態では、この方法を単離した核酸および/またはタンパク質試料、例えば単離ゲノムDNAなどで実施し得る。生体試料は、体液、組織または細胞試料を収集する任意の方法、例えば血液細胞試料を収集する静脈穿刺などを用いて収集し得る。
【0175】
本開示は、AMLを治療する方法であって、必要とする対象に有効量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記AMLが、総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度を示す、方法も提供する。
【0176】
本開示は、AMLに罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療が奏効する可能性を判定する方法であって、前記対象のAML細胞のLSC頻度を求めることを含み、総細胞数1×106個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度が、対象に前記治療が奏効する可能性が高いことを示す、方法も提供する。
【0177】
一実施形態では、AMLは、総細胞数9×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数8×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数7×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数6×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数5×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数4×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数3×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数2×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。一実施形態では、AMLは、総細胞数1×105個当たりのLSCが約1個以上であるLSC頻度を示す。
【0178】
AML細胞試料のLSC頻度は、当該技術分野で公知の方法を用いて、例えば、のちに記載する試験に用いるように、LSC関連マーカー(CD34+CD38-)および光散乱異常を用いるフローサイトメトリーベースのアッセイ(Terwijn et al.,PLoS One.2014 Sep 22;9(9):e107587)を用いて、またはNOD/SCID/IL2Rγc欠損(NSG)マウスをベースとする異種移植モデルに限界希釈法(LDA)(Sarry et al.,J Clin Invest.2011;121(1):384-395;Pabst,C. et al.,Blood 127,2018-2027および米国特許出願公開第2014/0343051(A1)号)を用いて測定し得る。一実施形態では、のちの実施例に記載するNSGマウスに限界希釈法を用いてLSC頻度を測定する。
【0179】
一実施形態では、上記の方法は、対象の白血病細胞を含む試料のLSC頻度を測定し、LSC頻度が総細胞数1×106個当たりLSC約1個以上である場合、その対象をムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療に選択することをさらに含む。
【0180】
別の実施形態では、ミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩をプロドラッグとして、例えば薬学的に許容されるエステルとして投与/使用する。「プロドラッグ」という用語は、薬理学的に許容され、投与する対象に対して実質的に無毒性である活性薬剤(ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩などのミトコンドリア活性阻害剤)の類似体を指す。より具体的には、プロドラッグは、活性薬剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩)の生物学的効果および特性を保持しており、温血動物の血流中に吸収されると、親活性薬剤が生じるように切断または代謝される。化合物のプロドラッグを作製する方法は当該技術分野で公知である。
【0181】
本開示の方法では、ミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を任意の従来の経路を用いて、例えば、経口的に、静脈内に、非経口的に、皮下に、筋肉内に、腹腔内に、鼻腔内に、または経肺的に(例えば、エアゾール)投与し得る。
【0182】
一実施形態では、ミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物中に存在する。したがって、別の態様では、本発明は、対象のAMLの治療への使用のための組成物であって、ミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩などを含む、組成物を提供する。
【0183】
一実施形態では、組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または添加剤を含む。組成物に補助的活性化合物を組み込んでもよい。担体/添加剤は、例えば、静脈内投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与または経肺投与(例えば、エアゾール)に適したものであり得る(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,by Loyd V Allen,Jr,2012,第22版,Pharmaceutical Press;Handbook of Pharmaceutical Excipients,by Rowe et al.,2012,第7版,Pharmaceutical Pressを参照されたい)。医薬組成物は、当該技術分野で公知の標準的方法を用いて、所望の純度のムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の任意選択の薬学的に許容される担体および/または添加剤とを混合することにより調製し得る。
【0184】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体または添加剤」という用語は、その当該技術分野での通常の意味を有し、有効成分(ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩などのミトコンドリア活性阻害剤)そのものではなく、有効成分の生物活性の効果に干渉することがなく、対象に対して毒性を示さない、すなわち、対象に対して毒性を示さない種類の担体もしくは添加剤であり、かつ/または対象に対して毒性を示さない量で使用するものである、任意の成分を指す。添加剤/担体としては、例えば、結合剤、滑沢剤、希釈剤、充填剤、増粘剤、崩壊剤/溶出促進剤、可塑剤、コーティング剤、バリア層製剤、滑沢剤、界面活性剤、安定剤、放出遅延剤、透過促進剤、滑剤、固化阻止剤、抗粘着剤、安定剤、帯電防止剤、膨張剤およびその他の成分が挙げられる。当業者には認識されるように、単一の添加剤が同時に2種類以上の機能を果たし得る、例えば、結合剤と増粘剤の両方として機能し得る。同じく当業者には認識されるように、上記の用語は必ずしも互いに排他的であるわけではない。
【0185】
有用な希釈剤、例えば充填剤としては、例えば、特に限定されないが、第二リン酸カルシウム、二リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、デンプン、粉末糖、コロイド状二酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ、タルク、コロイドシリカ、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロースおよびその組合せが挙げられる。最小限の薬物量の錠剤のかさを増大させて十分な大きさおよび重量の錠剤にすることができる充填剤としては、クロスカルメロースナトリウムNF/EP(例えば、Ac-Di-SoI(商標));無水ラクトースNF/EP(例えば、Pharmatose(商標)DCL 21);および/またはポビドンUSP/EPが挙げられる。
【0186】
結合剤材料としては、例えば、特に限定されないが、デンプン(コーンスターチおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、ポビドン、ロウならびに天然ゴムおよび合成ゴム、例えば、アラビアゴムアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素NF/EP(例えば、Cab-O-Sil(商標)M5P)、ケイ化微結晶性セルロース(SMCC)、例えば、ケイ化微結晶性セルロースNF/EP(例えば、Prosolv(商標)SMCC90)および二酸化ケイ素、その混合物など)、veegumならびにその組合せが挙げられる。
【0187】
有用な滑沢剤としては、例えば、キャノーラ油、パルミトステアリン酸グリセリン、水素化植物油(タイプI)、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸フマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルクおよびステアリン酸亜鉛、グリセリルベハパート(glyceryl behapate)、ラウリル硫酸マグネシウム、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム/酢酸ナトリウム(組合せ)、DL-ロイシン、ステアリン酸カルシウム、ナトリウムステアリルフマラート、その混合物などが挙げられる。
【0188】
増量剤としては、例えば、微結晶性セルロース、例えば結合剤の特性も有するAVICEL(登録商標)(FMC社)またはEMCOCEL(登録商標)(Mendell社);第二リン酸カルシウム、例えばEMCOMPRESS(登録商標)(Mendell社);硫酸カルシウム、例えばCOMPACTROL(登録商標)(Mendell社);およびデンプン、例えばStarch 1500;およびポリエチレングリコール(CARBOWAX(登録商標))が挙げられる。
【0189】
崩壊剤または溶出促進剤としては、デンプン、粘土、セルロース、アルギン酸塩、ゴム、架橋ポリマー、コロイド状二酸化ケイ素、オスモゲン、その混合物など、例えば、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(AC-DI-SOL(登録商標))、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(EXPLOTAB(登録商標)、PRIMO JEL(登録商標))架橋ポリビニルポリピロリドン(PLASONE-XL(登録商標))、塩化ナトリウム、スクロース、ラクトースおよびマンニトールなどが挙げられる。
【0190】
固体経口剤形のコアおよび/またはコーティングに使用可能な接着防止剤および滑剤としては、特にタルク、デンプン(例えば、コーンスターチ)、セルロース、二酸化ケイ素、ラウリル硫酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸金属塩を挙げ得る。
【0191】
シリカ流動調節剤の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよびグアーガムが挙げられる。
【0192】
適切な界面活性剤としては、薬学的に許容される非イオン性、イオン性および陰イオン性の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の例にはラウリル硫酸ナトリウムがある。必要に応じて、投与する医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの無毒性の補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラート、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン塩なども少量含有し得る。必要に応じて、香味剤、着色剤および/または甘味剤も添加し得る。
【0193】
安定剤の例としては、アラビアゴム、アルブミン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ベントナイト、第二リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カルナウバロウ、キサンタンガム、デンプン、ステアリン酸塩(1つまたは複数)、ステアリン酸、ステアリン酸モノグリセリドおよびステアリルアルコールが挙げられる。
【0194】
増粘剤の例は、例えば、タルクUSP/EP、天然ゴム、例えばグアーガムもしくはアラビアゴムなど、またはセルロース誘導体、例えば微結晶性セルロースNF/EP(例えば、Avicel(商標)PH102)、メチルセルロース、エチルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロースなどであり得る。有用な増粘剤には、様々な粘度等級のものが入手可能な補助剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースがある。
【0195】
可塑剤の例としては、アセチル化モノグリセリド(食品添加物として使用することができる);食品包装、医療製品、化粧品および小児用玩具に使用されるクエン酸アルキル;クエン酸トリエチル(TEC);TECより沸点が高く揮発性が低いクエン酸アセチルトリエチル(ATEC);クエン酸トリブチル(TBC);PVCおよび塩化ビニルコポリマーと適合性があるクエン酸アセチルトリブチル(ATBC);ガム剤および放出制御医薬にも使用されるクエン酸トリオクチル(TOC);クエン酸アセチルトリオクチル(ATOC);PVCと適合性があり、放出制御医薬にも使用されるクエン酸トリヘキシル(THC);PVCと適合性があるクエン酸アセチルトリヘキシル(ATHC);PVCと適合性があるクエン酸ブチリルトリヘキシル(BTHC、クエン酸トリヘキシルo-ブチリル);PVCと適合性があるクエン酸トリメチル(TMC);アルキルスルホン酸フェニルエステル、ポリエチレングリコール(PEG)またはその任意の組合せが挙げられる。任意選択で、可塑剤はクエン酸トリエチルNF/EPを含み得る。
【0196】
透過促進剤の例としては、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、DMSOなど)、アゾン(例えば、ラウロカプラム)、ピロリドン(例えば、2-ピロリドン、2P)、アルコールおよびアルカノール(エタノールまたはデカノール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、界面活性剤ならびにテルペンが挙げられる。
【0197】
一実施形態では、医薬組成物は経口製剤であり、経口投与用のものである。一実施形態では、医薬組成物は錠剤または丸剤の形態である。
【0198】
経口投与に適した製剤としては、(a)液剤、例えば有効量の活性薬剤(1つまたは複数)/組成物(1つまたは複数)を水、生理食塩水またはPEG400などの希釈剤に懸濁させたものなど;(b)それぞれ所定量の有効成分を液体、固体、顆粒またはゼラチンとして含有するカプセル剤、サシェ剤または錠剤;(c)適切な液体を用いた懸濁剤;および(d)適切な乳剤を挙げ得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、バレイショデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびその他の添加剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、色素、崩壊剤ならびに薬学的に適合する担体のうち1つまたは複数のものを含み得る。トローチ剤形態は、香味剤、例えばスクロース中に有効成分を含み得るほか、香錠剤は、不活性な基剤、例えばゼラチンとグリセリンまたはスクロースとアラビアゴムの乳剤、ゲル剤などに有効成分を含み、有効成分に加えて当該技術分野で公知の担体を含有する。
【0199】
任意の適切な量のミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブもしくはその薬学的に許容される塩またはそれを含む医薬組成物を対象に投与し得る。用量は、投与様式を含めた多数の因子によって決まる。単一用量内に含まれるミトコンドリア活性阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩の量は通常、重大な中毒を引き起こさず効果的にAMLを予防する、遅延させる、または治療する量となる。
【0200】
AMLの重症度の予防、治療または軽減に適したミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブもしくはその薬学的に許容される塩または組成物の用量は、例えば、治療するAMLのタイプ、AMLの重症度および経過、ミトコンドリア活性阻害剤または組成物を予防目的または治療目的のいずれで投与するのか、これまでの治療法、患者の病歴およびミトコンドリア活性阻害剤または組成物に対する応答、ならびに主治医の判断によって決まる。ミトコンドリア活性阻害剤、例えば、ムブリチニブもしくはその薬学的に許容される塩または組成物は、一度に、または一連の治療で患者に投与するのが適切であり得る。好ましくは、ヒトを対象に試験する前に、in vitroで、次いで有用な動物モデルで用量反応曲線を求めるのが望ましい。本開示は、ミトコンドリア活性阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩およびそれを含む組成物の用量を提供する。例えば、AMLのタイプおよび重症度に応じて、1日当たり体重1kgに対し約1μg/kg~約1000mg(mg/kg)のミトコンドリア活性阻害剤を投与し得る。諸実施形態では、有効量は、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg/25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kgであり得、25mg/kgの増分で1000mg/kgまで増加するか、または上記の値のうち任意の2つの値の範囲内に収まり得る。典型的な1日用量は、上記の因子に応じて約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲内に収まり得る。数日以上にわたって反復投与する場合、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が認められるまで治療を継続する。ただし、これ以外の投与レジメンも有用であり得る。この治療法の進捗は、従来の技術およびアッセイにより容易にモニターされる。ミトコンドリア活性阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を任意の適切な投与スケジュール/レジメンに従って、例えば、1日2回、1日1回、2日毎、週2回、毎週などで投与し得る。一実施形態では、投与は1日1回である。
【0201】
一実施形態では、医薬組成物は、ミトコンドリア活性阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を約0.1mg~約100mg含む。さらなる実施形態では、医薬組成物は、ミトコンドリア活性阻害剤、好ましくはクラスA ETC複合体I阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を約1mg~約50mg、約2mg~約30mg、約5mg~約25mgもしくは20mg、または約10mg含む。
【0202】
一実施形態では、上記の治療は、2種類以上の(すなわち、組合せの)活性薬剤/治療剤または治療法の使用/投与を含み、そのうち1種類はミトコンドリア活性阻害剤、例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩を用いるものである。本開示の予防剤/治療剤および/または組成物の組合せは、任意の従来の剤形として(例えば、連続的に、同時に、異なる時間に)投与または共投与し得る。本開示における共投与は、臨床転帰を改善するため同時治療の過程で2種類以上の治療薬を投与することを指す。このような共投与は、同一の広がりをもつ、つまり、重複する期間の間に実施するものであってもよい。例えば、第一の薬剤(例えば、ムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩などのミトコンドリア活性阻害剤)を第二の活性薬剤または治療薬の投与の前に、同時に、前後に、または後に患者に投与し得る。一実施形態では、薬剤を単一の組成物の形で組み合わせて/製剤化して同時に投与し得る。一実施形態では、1つまたは複数の活性薬剤を、現時点で問題の障害の予防または治療に使用している1つまたは複数の薬剤、例えば、AMLの治療に使用している化学療法薬と組み合わせて使用/投与する。ムブリチニブを他のAMLの治療法、例えば幹細胞/骨髄移植と組み合わせて使用してもよい。
【0203】
別の態様では、本開示は、AMLに罹患している対象にミトコンドリア活性阻害剤、例えばムブリチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療が奏効する可能性があるかどうかを判定する方法であって、AMLが以下の特徴:(a)1つまたは複数のホメオボックス(HOX)ネットワーク遺伝子の高レベルの発現;(b)表1に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の高レベルの発現;(c)表2に示される遺伝子のうち1つまたは複数の遺伝子の低レベルの発現;(d)以下の細胞遺伝学的または分子的リスク因子:中等度の細胞遺伝学的リスク、正常核型(NK)、変異NPM1、変異CEBPA、変異FLT3、変異DNAメチル化遺伝子、変異RUNX1、変異WT1、変異SRSF2、異常核型を伴う中等度の細胞遺伝学的リスク(intern(abnK))、8番染色体トリソミー(+8)および染色体異常(5/7)のうち1つまたは複数の因子;および(e)総細胞数1×106個当たりの白血病幹細胞(LSC)が約1個以上であるLSC頻度のうち少なくとも1つの特徴を有するかどうかを判定することを含み;前記AMLに上記の特徴のうち少なくとも1つの特徴がみられることが、患者にミトコンドリア活性阻害剤による治療が奏効する可能性があることを示す、方法を提供する。
【0204】
上記の特徴を測定する方法は当該技術分野で周知であり、代表的な方法については上に記載されている。
【0205】
(本発明を実施するための形態(1つまたは複数))
以下の非限定的な例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0206】
実施例1:材料および方法
ヒト白血病試料
この試験は、モントリオール大学、メゾヌーヴ・ロズモン病院およびシャルル=ル・モワーヌ病院(ロンゲイユ、ケベック州、カナダ)研究倫理委員会(REB)による承認を受けたものである。AML試料はいずれも、2001年~2017年にBanque de Cellules Leucemiques du Quebec(BCLQ)の手順に従いインフォームドコンセントを得て収集したものである。同意を得た母親から臍帯血液(CB)単位を収集し、EasySep(登録商標)ポジティブ選択キット(StemCell Technologies社、バンクーバー、カナダ、カタログ番号18056)でヒトCD34+CB細胞を単離した(Fares et al.,Science.2014 Sep 19;345(6203):1509-12)。
【0207】
化学スクリーニング
初代細胞:凍結AML単核細胞を20%FBSとDNアーゼI(100μg/mL)とを含有するイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中、37℃で解凍した。次いで、既に報告されている最適化AML増殖培地(Pabst,C. et al.,Nature methods 11,436-442,2014):IMDM、15%BIT(ウシ血清アルブミン、インスリン、トランスフェリン;Stem Cell Technologies(登録商標))、100ng/mL SCF、50ng/mL FLT3-L、20ng/mL IL-3、20ng/mL G-CSF(Shenandoah(登録商標))、10-4M β-メルカプトエタノール、500nM SR1(Alichem(登録商標))、500nM UM729(Institute for Research in Immunology and Cancer(IRIC)の医薬品化学コア施設で合成したもの)、ゲンタマイシン(50μg/mL)およびシプロフロキサシン(10μg/mL)で細胞を培養した。
【0208】
拡大したCB細胞とは、Fares et al.(上記)に記載されている通りに新鮮なCB細胞をUM171を添加して6日間培養して得られた細胞のことである。新鮮なCB細胞とは、Fares et al.,Science.2014 Sep 19;345(6203):1509-12に記載されている通りに、ポジティブCD34選択(EasySep(登録商標)キット、StemCell Technologies社、バンクーバー、カナダ)により臍帯血標本から直接収集した細胞のことである。SCF 100ng/mL、TPO 100ng/mL,FLT3-L 50ng/mL(Shenandoah(登録商標))、Glutamax(登録商標)1×、LDL 10μg/mL、シプロフロキサシン10μg/mL、500nM SR1(Alichem(登録商標))および35nM UM171(Institute for Research in Immunology and Cancer(IRIC)の医薬品化学コア施設で合成したもの)を含有するStemSpan(登録商標)-ACF(Stemcell Technologies 09855)でCB細胞(新鮮なCB細胞および拡大したCB細胞)を培養した。
【0209】
細胞系。OCI-AML3細胞をアルファ-MEM、20%FBSで維持し、一方、乳腺腫瘍BT474細胞をDMEM 10%FBSで維持した。BT474(ATCC(登録商標)HTB-20(商標))はSylvie Mader氏の研究室から寄贈されたものであり、一方、OCI-AML3細胞およびOCI-AML5細胞はドイツ細胞バンク(DSMZ、アクセション番号はそれぞれACC582およびACC247)から購入したものである。
【0210】
化合物。いずれの粉末も使用直前にDMSOに溶かし、培地で希釈した。全条件で最終DMSO濃度を0.1%とした。Santa Cruz社、Selleckchem社、Calbiochem社、AdooQ Bioscience社、Cayman chemical社およびSynkinase社を含めた様々な供給業者から60種類の化合物を購入した。
【0211】
細胞用量反応生存能アッセイ。親細胞を384ウェルプレートに1ウェル当たり5,000個/50μLの密度で播種した。最初のスクリーニングでは、化合物を段階希釈(10希釈、1:3、10μMまたは20μMから開始)して播種細胞に二重反復で加えた。追加の化合物を加えずに0.1%DMSOで処理した細胞をネガティブ対照として用いた。6日間培養した後、CellTiterGlo(登録商標)アッセイ(Promega(登録商標))を製造業者の指示通りに用いて、1ウェル当たりの生存細胞数を評価した。阻害のパーセントを以下の通りに算出した:100-(100×(平均発光値(化合物)/平均発光値(DMSO));式中、平均発光値(化合物)は化合物処理細胞で得られた発光シグナルの平均値に対応し、平均発光値(DMSO)は対照DMSO処理細胞で得られた発光シグナルの平均値に対応する。
【0212】
ActivityBase(登録商標)SARview Suite(IDBS社、ロンドン、イギリス)およびGraphPad(登録商標)Prism 4.03(ラホヤ、カリフォルニア州、米国)を用いて4パラメータ非線形カーブフィッティング法によりEC50値(50%の阻害に達するのに必要な化合物の濃度に相当する)を算出した。
【0213】
白血病幹細胞(LSC)頻度の評価
既に詳述されている(Pabst,C. et al.,Blood 127,2018-2027,2016)通りに、免疫不全NSGマウスに限界希釈法を用いてLSC頻度を評価した。NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスをJackson Laboratory(登録商標)(バーハーバー、メイン州)から購入し、無病原菌動物施設で飼育した。いずれのAML試料も、致死量未満の放射線(250cGy、137Cs-ガンマ発生源)を照射した8~12週齢のNSGマウスに尾静脈から移植した。AML細胞を解凍後、レシピエントマウス4匹からなるグループに4種類の異なる細胞投与量で直接移植した。移植から10~16週間後、マウス骨髄へのヒト白血病生着をフローサイトメトリーにより判定した。平均150,000のゲート事象が得られた。骨髄細胞集団のうちヒト細胞が1%超占めていた場合、マウスをポジティブと見なした。白血病によるものではないことが明らかな死亡(例えば、照射から最初の2週間)がみられた場合のみマウスを除外した。未分取の患者試料中に存在する白血病細胞と正常細胞の生着を識別するため、CD45+CD33+細胞またはCD45+CD34+細胞の割合がCD19+CD33-またはCD3+の割合より大きいレシピエントに限り、白血病起源の細胞を保有するものと見なした。
【0214】
フローサイトメトリー染色
以下のFACS抗体を用いた:抗ヒトCD45 Pacific Blue(BioLegend社、304029)、CD45フルオレセインイソチオシアナート(FITC;BioLegend社、304006)、CD33フィコエリトリン(PE;BD Bioscience社、555450)、CD33 BV421(BD社、562854)、CD34抗原提示細胞(APC;BD Bioscience社、555824)、CD34 APC(Stem Cell Technologies社、10613)、CD3 FITC(BD Bioscience社、555332)、CD4 APC-Cy7(BD社、560158)、CD8 APC(BD社、555369)、CD3 PE-Cy5(BD社、555334)、CD19 PE-Cy7(BD Bioscience社、557835)、抗マウスCD45.1 APC-efluor730(eBioscience社、47-0453-82)、ERBB2-PE(Biolegend(登録商標)社、324406)、アネキシンV FITC(BD Bioscience(登録商標)社、556419)。最終濃度1μg/mLのヨウ化プロピジウムを用いて死細胞を染色した。ROS定量化には、通常の増殖条件下で細胞を1μM H2DCFDA(Thermo Fisher社、D399)で染色した。LSRII(登録商標)フローサイトメータ(BD Bioscience(登録商標)社)、BD Canto(登録商標)IIサイトメーター(BD Bioscience社)またはIQue Screener(Intellicyt(登録商標)社)で細胞を解析し、結果をBD蛍光励起セルソーター(FACS)Diva(登録商標)4.1およびFlowJo(登録商標)Xソフトウェアで解析した。
【0215】
次世代シーケンシングおよび変異定量化
シーケンシング、変異解析および転写物定量化のワークフローが既に記載されている(Lavallee,V.-P. et al.,Blood 125,140-143,2014;Lavallee,V.-P. et al.,Nat.Genet.47,1030-1037,2015)。簡潔に述べれば、TruSeq(登録商標)RNA/TruSeq(登録商標)DNA Sample Preparation Kits(Illumina(登録商標))を用いてライブラリーを構築した。Illumina(登録商標)HiSeq 2000を200サイクルのペアエンドランを用いてシーケンシングを実施した。Illumina(登録商標)Casava 1.8.2パッケージおよびElandv2マッピングソフトウェアを用いて、RefSeqアノテーション(UCSC、2014年4月16日)に従い配列データを参照ゲノムhg19にマップした。Casava 1.8.2を用いてバリアントを特定し、Tophat 2.0.7およびCufflinks 2.1.1を用いて、部分的タンデム重複などの融合または大きい変異を特定した。
【0216】
転写物レベルをマップされたリード100万個当たりのキロベース当たりのリード数(Reads Per Kilobase per Million mapped reads)(RPKM)で表し、RefSeqアノテーション(UCSC、2014年4月16日)に従い遺伝子に注釈を付けた。
【0217】
LC/MSによる代謝産物測定(クエン酸回路中間物質およびグルタチオン)
McGill MetabolomicsプラットフォームでLC/MSによる代謝産物測定を実施した。基準となる代謝産物標準品をSigma-Aldrich社から購入し、LC/MSグレードの溶媒および添加剤、すわなち、酢酸アンモニウム、ギ酸、水、メタノールおよびアセトニトリルをFisher社から購入した。OCI-AML3細胞(500万個、四重反復、DMSOまたはムブリチニブ500nMで20時間処理)を氷冷150mMギ酸アンモニウム(pH7.2)で2回洗浄した。次いで、LC/MSグレードのメタノール50%/水50%混合物380μlおよび冷アセトニトリル220μlを用いて代謝産物を抽出した。次いで、1.4mmのセラミックビーズで2分間、30Hzで攪拌する(TissueLyser、Qiagen社)ことにより試料をホモジナイズした。ライセートに体積300μlの氷冷水および600μlの氷冷塩化メチレンを加えた。試料をボルテックスし、氷上に10分間静置して相分離させた後、4,000rpmで5分間遠心分離した。上の水層を予冷した新たなチューブに移した。最終的に、-4℃で稼働させた真空遠心分離(Labconco社)により試料を乾燥させ、LC-MS/MSデータ収集の準備が整うまで-80℃で保管した。LC-MS/MS解析には、最初に標本を水50μlに再懸濁させ、15,000rpm、1℃で15分間遠心分離することにより清澄化した。LC-MS/MS解析の持続時間中、試料をオートサンプラー内で4℃に維持した。Scherzo SM-C18(3mm×150mm)3μmカラムおよびガードカラム(Imtakt USA社)を10℃で稼働させて用いて、標本をU-HPLC(超高速液体クロマトグラフィー)(1290 Infinity、Agilent Technologies社)により分離した。
【0218】
Seahorse代謝フラックス実験
96ウェルSeahorse Bioanalyzer XFe96(登録商標)またはXFe24(登録商標)を製造業者の指示(Agilent Technologies社)通りに用いて、酸素消費速度および細胞外酸性化速度を測定した。Seahorse XF Base培地に、ミトコンドリアストレス試験の場合は1mMピルビン酸塩、2mMグルタミンおよび10mMグルコースを添加し、解糖ストレス試験の場合は1mMピルビン酸塩、2mMグルタミンを添加し、グルコースは添加しなかった。次いで、アッセイの前にSeahorse培地のpHを7.4に調整した。簡潔に述べれば、ポリ-リジン(Sigma-Aldrich社、P4707)で3時間プレコートしたSeahorse 96ウェル(または24ウェル)プレートに白血病細胞をウェル毎に温度/CO2を予め調整したSeahorse培地100μL中75,000個/ウェル(または150μL中150,000個/ウェル)の密度で播種した。次いで、Seahorseプレートを1400rpmで5分間遠心分離した。次いで、Seahorse培地をさらに75μL(または375μL)加え、最終的に、一定体積25μL(または75μL)の化合物を添加することにより、細胞を製造業者の指示通りに解析した。化合物をムブリチニブは1μM、オリゴマイシンは1μM、FCCPは0.5μM、ロテノン/アンチマイシンAは0.5μM、グルコースは10mMおよび2-デオキシ-グルコースは50mMの最終濃度で細胞に急激に注入した。
【0219】
ETC複合体I活性の無細胞アッセイ
MitoSciences社(Abcam社、ケンブリッジ、イギリス)からETC複合体I活性の無細胞キットアッセイを購入し、製造業者のプロトコルに従って使用した。GraphPad(登録商標)Prism 4.03(ラホヤ、カリフォルニア州、米国)を用いて4パラメータ非線形カーブフィッティング法によりIC50値を算出した。
【0220】
統計処理
ウィルコクソン順位和検定を用いて差次的遺伝子発現の解析を実施し、既に記載されている通りに偽発見率(FDR)法を網羅的遺伝子解析に適用した(Lavallee,V.-P. et al.,Blood 125,140-143,2014)。予後Leucegeneコホートに属する患者について全生存期間の差のp値をログランク検定により算出した。
【0221】
実施例2:高HOX AML患者は一般に疾患予後が不良である。
AML細胞試料のHOXネットワークに属する遺伝子の発現が一貫して高い(
図1A)ことは、患者の全生存期間が有意に短いことと相関があることがわかった(
図1B)。
図1Cから、白血病細胞のHOXA9発現とHOXA10発現の間に相関があることがわかり、
図1Dから、高HOXA9/HOXA10群に属するAML患者の生存期間が、
図1Bに示される高HOXネットワーク亜群に属する患者のものと同程度であることがわかり、このことは、HOXA9とHOXA10の高発現を高HOXネットワーク患者の検出の代用として用い得ることを示している。全体的にみると、以上のデータから、HOXネットワーク遺伝子の高発現を示すAML細胞を有する患者は予後不良であり、適切なAML治療から利益を受ける可能性があることがわかる。
【0222】
実施例3:ムブリチニブは高HOX AML細胞を効果的に阻害する。
HOXA9およびHOXA10の高発現を高HOXネットワーク患者試料の検出の代用として用いて、RASおよびPI3K経路のメンバーである受容体チロシンキナーゼ(RTK)を標的とする60種類の阻害剤と接触させた高HOX標本と中/低HOX標本とで生存率を比較して評価した(
図2A、表4)。
【0223】
【0224】
高HOX患者の細胞は、中/低HOX試料と比較してRTK ERBB2阻害剤ムブリチニブに対する感受性が有意に高かった(
図2B)。その他の被験化合物では感受性の統計的有意差はみられなかった。
【0225】
さらに大きいAML試料のコホートを対象とした用量反応検証スクリーニングでは、高HOX患者の細胞の方が中/低HOX AML細胞よりムブリチニブに対する感受性が有意に高いことが確認された(
図2C~2D)。被験AML集団のムブリチニブEC
50の中央値は約375nMであった(
図2E)。ムブリチニブ感受性群に属する患者(EC
50<375nM)は、ムブリチニブ耐性群の患者(EC
50≧375nM、
図2F)より全生存期間が有意に短い。ムブリチニブ感受性群に属する標本は実施例2に示した結果と同じように、HOXネットワークの遺伝子を過剰発現する(
図2G)。発現の差が最も大きい遺伝子(RPKM値の差が6倍、RPKM>0.1)を
図2Hに示し、AMLのムブリチニブ感受性トランスクリプトームシグネチャー全体を
図2I、表1(ムブリチニブ感受性細胞に5倍超のRPKM値で過剰発現した遺伝子、RPKM>0.1)および表2(ムブリチニブ感受性細胞に5倍超のRPKM値で過小発現した遺伝子、RPKM>0.1)に示す。以上のデータを考え合わせると、ムブリチニブは、HOXネットワーク遺伝子が高発現するAML患者の治療に優れた候補薬物であることがわかる。
【0226】
実施例4:古典的な遺伝学的/細胞遺伝学的分類によるムブリチニブ標的集団
ムブリチニブに対する感受性の高いAMLサブタイプを特定することを目的とした1組の実験の結果を
図3A~3Gおよび表5A~5Bに示す。
図3A、3Bおよび3Fから、ムブリチニブ感受性AML細胞は、中等度の細胞遺伝学的リスクのクラスに属する頻度が最も高く、NPM1、IDH1、SRSF2、CEBPA、DNMT3AまたはFLT3-ITDに変異を有することが多く(
図3C、3Dおよび3G)、一般に正常核型を有する(NK、
図3A、3Eおよび3F)ことがわかる。ムブリチニブ耐性標本と比較してムブリチニブ感受性標本に最も顕著に富化された変異がみられたのは、IDH1、SRSF2およびCEBPAであったのに対し、AML試料のNRAS、KIT、ITDではないFLT3およびTP53の変異は、ムブリチニブ感受性群にはムブリチニブ耐性群と比較して少数みられた(表5A)。変異の詳細を表5Bに示す。
【0227】
【0228】
【表6-1】
【表6-2】
*=停止コドンを導入する変異;-=フレームシフト変異
ASXL1=NM_015338;CEBPA=NM_004364;DNMT3A=NM_022552;FLT3=NM_004119;IDH1=NM_005896;IDH2=NM_002168;KIT=NM_001093772;NPM1=NM_002520;NRAS=NM_002524;RUNX1=NM_001754;SRSF2=NM_003016;TET2=NM_017628;TP53=NM_001276760;WT1=NM_024426。
【0229】
注目すべきなのは、近年特に予後不良であることが明らかになった(Papaemmanuil,E. et al.,N Engl J Med 374,2209-2221,2016)NPM1、DNMT3AおよびFLT3-ITDに同時に変異のあるAML標本は、ムブリチニブに対して特に感受性が高いことがわかった(EC
50の中央値は他のAMLサブタイプが423nMであるのに対し96nMである、
図3G)ことである。NKを有する標本(AML患者の30%を占める、
図3H)またはNKおよびNPM1変異を有する試料(AML患者試料の25%を占める、
図3I)に注目すると、免疫不全マウスを用いた限界希釈法から、ムブリチニブ感受性標本の白血病幹細胞(LSC)の頻度がムブリチニブ耐性試料より有意に高いことがわかる。一般に、LSC頻度が高いと微小残存病変(MRD)が増大し予後不良になることがわかっている(例えば、Moshaver B. et al.,Stem Cells 26,3059-3067(2008)を参照されたい)。全体的にみると、以上の結果は、ムブリチニブによる治療から最も利益を受けると思われるAML患者集団の選択に有用な指標となり、ムブリチニブに対する感受性と患者試料のLSC頻度との間に何らかの関係がある可能性を示す証拠となる。
【0230】
実施例5:AMLにおけるムブリチニブの作用機序の評価
ムブリチニブ処理は用量依存性に生細胞数の減少(ヨウ化プロピジウム(PI)ネガティブ細胞の減少により測定される)を引き起こす(
図4A)。死(PIポジティブ)細胞数の増加により細胞が減少し(
図4B)、死細胞は、ムブリチニブ感受性AML細胞系OCI-AML3のアネキシンV染色(アポトーシスのマーカー)の増大により示唆されるように、アポトーシスにより死滅するものと思われる(
図4C)。
【0231】
ムブリチニブは特異的ERBB2阻害剤として記載されており(Nagasawa,J. et al.,Int J Urol 13,587-592,2006)、次に、ムブリチニブがこの標的を介してAML細胞に作用するかどうかを評価した。また別の強力なERBB2阻害剤ラパチニブを一次スクリーニングに含め(
図2A);特筆すべきことに、試験したAML患者標本は41例とも、ムブリチニブとは対照的にラパチニブに耐性を示した(
図4D)。同様に、OCI-AML3細胞はムブリチニブには感受性を示したが、別の2つの強力なERBB2阻害剤であるラパチニブにもサピチニブにも感受性を示さず(
図4E)、このことは、ムブリチニブのAML細胞に対する作用がERBB2阻害剤のクラスと共通するものではないことを示す証拠となる。全体的にみると、ムブリチニブに対して感受性を示したAML患者細胞は、ERBB2遺伝子の発現レベルがムブリチニブ耐性標本と同程度に低レベルであった(中央値は約0.5RPKM、
図4F)。最後に、ERBB2発現のフローサイトメトリー解析では、ムブリチニブ感受性AML細胞系OCI-AML3がポジティブ対照の乳癌細胞系BT474とは対照的に、検出可能なレベルのERBB2タンパク質を発現しないことが明らかになった(
図4G)。以上の結果を考え合わせると、ムブリチニブがERBB2以外の標的を介してAML細胞に細胞死を誘導することがわかる。
【0232】
次に、ムブリチニブ処理によって誘導されるアポトーシスに、例えば活性酸素種(ROS)の増大による酸化ストレスが関与するかどうかを評価した。
図5Aからわかるように、AML3白血病細胞をROSスカベンジャーであるN-アセチル-システイン(NAC)の存在下でインキュベートした場合、ムブリチニブ誘導性アポトーシスが有意に減少した。また、ムブリチニブで処理したAML3細胞では、2’,7’-ジクロロフルオレセインジアセタート(DCFDA)蛍光発生色素により評価したROS活性(ヒドロキシル、ペルオキシル)のレベルの増大がみられた(
図5B)。また、上記の白血病細胞では、ムブリチニブで処理すると(500nM、24時間)、DMSO対照と比較して酸化グルタチオンのレベルが増大し(
図5C)、還元型グルタチオンのレベルが低下し(
図5D)、このことは、ムブリチニブが感受性白血病細胞に酸化ストレスを誘導することを示している。
【0233】
感受性白血病細胞のムブリチニブ誘導性酸化ストレスがミトコンドリアの活性、すなわち電子伝達鎖(ETC)の活性に影響を及ぼすかどうかを評価するため、ムブリチニブで処理した細胞の酸素消費速度を測定した。
図5Eからわかるように、OCI-AML3白血病細胞にムブリチニブ(1μM)を急激に注入したところ、この細胞の酸素消費速度に支障を来たした。
図5Fに示されるデータから、ムブリチニブがETC複合体Iの活性に対して阻害作用を示すことがわかる。
図5Gから、白血病細胞系OCI-AML5がOCI-AML3細胞とは対照的に、ムブリチニブ誘導性細胞死に対して耐性であることがわかり、このことは、これらの細胞系に代謝機能またはミトコンドリア機能の相違があることを示唆している。この仮説と一致するように、OCI-AML3は、オリゴマイシン(F
1-F
0ATPシンターゼ、複合体Vの阻害剤、
図5H)、ロテノン(クラスA複合体I阻害剤、
図5I)およびデグエリン(クラスA複合体I阻害剤、
図5J)などの他のミトコンドリア活性阻害剤に対する感受性がOCI-AML5より高いことがわかった。
【0234】
図6A~6Eに示される結果から、ムブリチニブ処理がOCI-AML3細胞のクエン酸回路の複数の中間物質、すなわち、クエン酸(
図6A)、アルファ-ケトグルタル酸(
図6B)、コハク酸(
図6C)、フマル酸(
図6D)およびリンゴ酸(
図6E)のレベルを低下させることがわかり、ムブリチニブによってこの白血病細胞のミトコンドリア活性/呼吸に支障を来たすことが裏付けられる。
【0235】
抗糖尿病薬メトホルミンは、腫瘍細胞系(前立腺、悪性メラノーマおよび乳腺)の増殖を阻害し、オートファジーの増強を介して相乗的にFLT3-ITD+AML細胞をキナーゼ阻害剤ソラフェニブに対して感受性にすることがわかっている(Wang et al.,2015.Leukemia Research 39:1421-1427)。メトホルミンは、HCT116 p53
-/-大腸癌細胞のミトコンドリア複合体Iを阻害するが、ロテノンおよびアンチマイシンとは対照的に、この細胞によるROS(H
2O
2)産生は増大させないこともわかっている(Wheaton et al.,2014.Elife.13(3):e02242)。このため、次に、AML細胞に対するムブリチニブの作用とメトホルミンの作用との間に相関があるかどうかを検討した。
図7に示されるように、試験したAML標本20例全体で各化合物によって誘導されたAML細胞阻害の割合を比較すると、白血病細胞に対するムブリチニブの阻害作用とメトホルミンの阻害作用との間に相関はみられない(ピアソン相関係数r=-0.17)ことがわかり、このことは、上記の2種類の化合物が異なる作用機序を介して作用し、異なるAML細胞を標的とすることを示す証拠となる。
【0236】
Complex I Enzyme Activity Microplate Assay Kitを製造業者の指示(Abcam社、カタログ番号ab109721)の通りに用いて、OCI-AML3細胞の複合体I酵素活性に対するムブリチニブの阻害作用をさらに評価した。このアッセイは、ユビキノンの存在に依存しない複合体Iのジアホラーゼ型活性を測定するものであり、このため、ユビキノン結合部位またはその付近に結合するロテノンなどの阻害剤がこのアッセイを阻害することはない。
図8に示される結果から、ムブリチニブの複合体Iに対する阻害作用が、ロテノンなどのクラスA阻害剤について記載されている(Fato et al.,Biochim Biophys Acta,2009 May;1787(5):384-392)のと同じくNADH非依存性であることがわかり、このことは、ムブリチニブがこの細胞のROSを増大させることができることと一致する。
【0237】
ここまで、具体的な実施形態により本発明を説明してきたが、添付の「特許請求の範囲」で定められる本発明の趣旨および本質から逸脱することなく本発明を改変することができる。