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特許6996775個体の毛髪の成長を促進する、毛髪の抜けを予防する、または個体の毛包幹細胞の生成を促進する薬物の調製における組成物の用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】個体の毛髪の成長を促進する、毛髪の抜けを予防する、または個体の毛包幹細胞の生成を促進する薬物の調製における組成物の用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/60 20060101AFI20220128BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20220128BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K35/60 ZMD
A61K31/711
A61P17/14
A61K8/72
A61K8/98
A61Q7/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019539971
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2018085282
(87)【国際公開番号】W WO2018202028
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2019-08-20
(31)【優先権主張番号】62/501,099
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505302362
【氏名又は名称】高雄醫學大學
【氏名又は名称原語表記】KAOHSIUNG MEDICAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.100, Shih-chuan 1st Road, Sanmin Dist. Kaohsiung City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 亨
(72)【発明者】
【氏名】許文俐
(72)【発明者】
【氏名】顔佳蓉
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509000(JP,A)
【文献】御手洗 誠 ほか,シロサケ白子由来DNAの老化促進マウスにおける脳機能改善および老化抑制効果,日本食品科学工学会誌,2008年,第55巻,第10号,p.461-467
【文献】庵原 啓司,サケ由来の機能性食品素材の開発とその応用,食品工業,2007年09月30日,第50巻,第18号,p.104-116
【文献】Hsu WL et al.,Derinat Protects Skin against Ultraviolet-B (UVB)-Induced Cellular Damage,Molecules,2015年,Vol.20, No.11,p.20297-202311,doi: 10.3390/molecules201119693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
A61Q 7/00
PubMed
医中誌WEB
J-STAGE
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の毛髪の成長を促進するための薬物の調製における組成物の使用であって、前記組成物は、魚の卵から抽出した天然のデオキシリボ核酸(DNA)ナトリウム組成物であり、90%以上のDNAナトリウム塩からなり、前記DNAのサイズが100~300塩基対であり、前記薬物は皮膚用の薬物であって、前記組成物の有効量は14μg/ml~60μg/mlである、組成物の使用。
【請求項2】
前記毛髪が頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に位置する、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
個体の毛包幹細胞の生成を促進するための薬物の調製における組成物の使用であって、前記組成物は、魚の卵から抽出した天然のデオキシリボ核酸(DNA)ナトリウム組成物であり、90%以上のDNAナトリウム塩からなり、前記DNAのサイズが100~300塩基対である、有効量の組成物の使用。
【請求項4】
前記組成物有効量が10μg/ml~1500μg/mlである請求項3に記載の組成物の使用。
【請求項5】
前記組成物有効量が10μg/ml~150μg/mlである請求項3に記載の組成物の使用。
【請求項6】
前記薬物は皮膚用の薬物を指す、請求項3に記載の組成物の使用。
【請求項7】
前記毛包幹細胞が頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に位置する、請求項3に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体の毛髪の成長を促進する、毛髪の抜けを予防する、または個体の毛包幹細胞の生成を促進する薬物の調製における組成物の用途に関し、前記組成物は有効量のデリナット(Derinat)を含み、デオキシリボ核酸ナトリウムを主要な活性成分とする。
【背景技術】
【0002】
毛包は、毛髪を成長させる重要な皮膚付属器官であり、毛包幹細胞(hair follicle stem cell)など数種類の細胞からなる。毛包の周期は、成長期(anagen stage)、退行期(catagen stage)および休止期(telogen stage)を含み、3つの段階を絶えず繰り返す。成長期の特徴は毛包幹細胞の活性化であり、この時期の毛包幹細胞は絶えず増殖し、皮下組織の方向に成長する。成長期の中期に達すると、毛包幹細胞は分裂を停止して冬眠の状態に入り、毛髪の成長は、毛包幹細胞から分化して生じる外毛根鞘(outer root sheath)、内毛根鞘(inner root sheath)、およびマトリクス細胞(matrix cell)が担う。これらの細胞は最終的にキューティクルを有する構造に分化して、肉眼で見える毛幹(hair shaft)を構成する。
【0003】
毛包周期の異常は、たびたび毛髪が成長しない、または毛髪が抜けるという深刻な状況を引き起こし、脱毛症はこのうちの最もよく見られる状況の1つである。脱毛症は男女関わらず、個体の心身、自尊心の低下に影響を及ぼし、さらにはその生活における多くの側面に影響を及ぼし、人々を苦しめる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、市場には効果的に毛髪を増殖させることができる製品はなく、せいぜい毛髪構造の安定度を高め、毛髪を失う確率を低くすることができるのみである。あるいは5αリダクターゼ(5α-reductase)を抑制して、ジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone、DHT)の生成量を減少させ、脱毛症を治療する目的を達成するが、これは性機能障害の副作用を有する。したがって、効果的で無毒、さらに相対的に副作用を有さない組成物または方法を提供して、毛髪の成長を促進する、または毛髪の抜けを予防することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
デリナット(Derinat)組成物は、魚の卵(多くはマスまたはサケ)から抽出した天然のデオキシリボ核酸(DNA)ナトリウム組成物であり、90%以上のDNAナトリウム塩からなり、大きさは約100~300塩基対前後である。本発明は、このデリナットが皮膚細胞に対して高用量(1.5ミリグラム/ミリリットル(mg/ml))で、ヒト皮膚角化細胞(keratinocytes、KC)および皮膚繊維芽細胞(human dermal fibroblasts、HDF)に無毒性であることを開示している。本発明のデリナットは皮膚細胞内のカルシウムイオン濃度を低下させることができ、さらに皮膚細胞を保護し、皮膚細胞の活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の生成を低下させる作用を達成する。よりさらに、ヌードマウスで実験を行い、毎日ヌードマウスの背中に有効量のデリナットを含む組成物を2時間接触させると、1週間後ヌードマウスの背中の毛髪が増加することを発見し;続いて、ヌードマウスを屠殺して背中の皮膚を採取し、ヘマトキシリン-エオジン染色(H&E Stain)を行うと、毛包が増殖し、さらに比較的多くの毛包が成長期(anagen stage)であることを発見した。毛包の増殖は幹細胞の活性化と関係するため、免疫組織化学染色(immunohistochemistry(IHC)staining)を行い、幹細胞に発現する2つの分子標識CD49fおよびOct-3/4を観察する。結果から、前記デリナットで処理後、比較的多くの毛包幹細胞が発現することを発見した。そればかりか、前記デリナットは毛包細胞中の活性酸素種の生成を低下させることもでき、皮膚および毛包細胞を保護する機能を有する。以上の実験結果をまとめると、デリナットは皮膚細胞に対して毒性を有さないだけでなく、毛包の増殖を促進し、毛包幹細胞を活性化することができる。このほか皮膚組織中の活性酸素種の生成を低下させることもでき、さらには皮膚細胞および毛包細胞を保護する効果を達成する。
【0006】
本発明は、個体の毛髪の成長を促進する、または毛髪の抜けを予防する薬物の調製における組成物の用途に関し、前記組成物は有効量のデリナット(Derinat)を含む。
【0007】
一実施例において、前記組成物は10~1500マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0008】
一実施例において、前記組成物は10~150マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0009】
一実施例において、前記組成物は経皮使用の医薬組成物を指す。前記組成物が薬物に調製されるとき、各単位の薬物に含まれるデリナットの単位用量は10~1500マイクログラム(μg)、より好ましくは10~150マイクログラム(μg)である。
【0010】
一実施例において、前記個体(subject)は毛髪が成長しない、毛髪が抜ける、または毛髪が成長しない、もしくは毛髪が抜けるリスクを有する哺乳動物を含む。
【0011】
一実施例において、前記毛髪は頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に位置する。
【0012】
本発明は、さらに個体の毛包幹細胞の生成を促進する薬物の調製における組成物の用途に関し、前記組成物は有効量のデリナットを含む。
【0013】
一実施例において、前記組成物は10~1500マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0014】
一実施例において、前記組成物は10~150マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0015】
一実施例において、前記組成物は経皮使用の医薬組成物を指す。
【0016】
前記組成物が薬物に調製されるとき、各単位の薬物に含まれるデリナットの単位用量は10~1500マイクログラム(μg)、より好ましくは10~150マイクログラム(μg)である。
【0017】
一実施例において、前記個体は毛髪が成長しない、毛髪が抜ける、または毛髪が成長しない、もしくは毛髪が抜けるリスクを有する哺乳動物を含む。
【0018】
一実施例において、前記毛髪は頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に位置する。
【0019】
本発明は、個体の毛髪の成長を促進する、または毛髪の抜けを予防する方法も提供し、これは前記個体に有効量のデリナットを含む組成物を部分的に投与することを含む。
【0020】
一実施例において、前記組成物は10~1500マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0021】
一実施例において、前記組成物は10~150マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0022】
一実施例において、前記組成物は経皮使用の医薬組成物を指す。
【0023】
一実施例において、前記個体は毛髪が成長しない、毛髪が抜ける、または毛髪が成長しない、もしくは毛髪が抜けるリスクを有する哺乳動物を含む。
【0024】
一実施例において、前記毛髪は頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に位置する。
【0025】
本発明は、さらに個体の毛包幹細胞の生成を促進する方法を提供し、これは前記個体に有効量のデリナットを含む組成物を部分的に投与することを含む。
【0026】
一実施例において、前記組成物は10~1500マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0027】
一実施例において、前記組成物は10~150マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを含む。
【0028】
一実施例において、前記組成物は経皮使用の医薬組成物を指す。
【0029】
一実施例において、前記個体は毛髪が成長しない、毛髪が抜ける、または毛髪が成長しない、もしくは毛髪が抜けるリスクを有する哺乳動物を含む。
【0030】
一実施例において、前記毛髪は頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に位置する。
【0031】
本発明に記載の組成物は、一部分および領域に使用して作用させる組成物を含む。本文で用いる「一部分」という語は、本文に記載する組成物を適した薬剤担体に混入させ、頭髪が薄くなった、または抜けた部位に塗布して、部分的に作用させることに関する。したがって、この種の部分用組成物は、処理される皮膚表面と直接接触させ、外側から塗る化合物の薬物剤形を含む。この目的に用いられる通常の薬物剤形は、軟膏剤、綿撒糸、クリーム、シャンプー剤、乳液、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾルなどを含み、さらに治療する身体部位に応じて、パッチまたは含浸被覆材の剤形で使用することができる。「軟膏剤」という語は油性基質、水溶性基質およびエマルジョン基質を有する製剤(クリームを含む)を含み、前記基質は例えばワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール類およびこれらの組成物の混合物から選択される。
【0032】
眉毛または瞼への部分利用について、薬学的に許容可能な緩衝剤および塩を添加することにより、薬物を水溶液、クリーム、軟膏剤または油剤中に調合することができる。この種の医薬組成物は、防腐剤(例えば塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、4-ヒドロキシ安息香酸)およびフェニル水銀塩(例えば硝酸塩、塩化物、酢酸塩およびホウ酸塩)または抗酸化剤、さらに添加剤(例えばEDTA、ソルビトール、ホウ酸など)を含むか、または含まなくてもよい。このほか、特に水溶液は増粘剤を含むことができ、例えば多糖(例えばメチルセルロース)、ムコ多糖(例えばヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸)または多価アルコール(例えばポリビニルアルコール)である。インサイチュゲル(in situ gel、溶液状態で投与後、投与した部位で相転換することができ、液体状態から半固体ゲル状態に転化する製剤を指す)を形成する物質に応じて、様々な徐放ゲルおよび基質と、可溶性および不溶性の眼科用挿入剤とを使用することができる。実際の状況下で、様々な薬物の分量および様々な用量を製剤に応用することができる。
【0033】
皮膚および頭皮への部分利用について、軟膏剤、クリーム、綿撒糸またはパッチを活性成分の担体として有利に使用し、医薬組成物を調製することができる。このほか、これらの医薬組成物は防腐剤を含むか、または含まなくてよい。この種の防腐剤は、前記医薬組成物およびメチル、プロピル-またはブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、トリメチルグリシン、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウムなどを含む。本医薬組成物は様々な基質により徐放輸送を行うことができる。医薬組成物の毎日の使用用量に達する必要がある場合、抗酸化剤が存在する、または存在しない状況下で、毎日1回または数回組成物を使用することができる。
【0034】
本発明で言及した毛髪が成長しない、または毛髪が抜けることにより毛髪量が減少する状況は、脱毛(例えば男性型脱毛症、円形脱毛症など)、遺伝性脱毛、瘢痕、やけど、放射線療法、化学療法、症候性脱毛症、傷害事故、毛包損傷、手術の外傷、切開傷または皮膚移植のレシピエント部位の創傷によるものでよい。
【0035】
本発明はすべての哺乳動物種に応用することができ、人および動物の両者を含む。人では、本発明の組成物は、頭皮、顔面、あごひげ、頭部、胴、四肢、恥部、上唇、眉毛または瞼に使用することができる。毛皮を得るために飼育している動物では、商業的な原因のため、本発明の組成物を身体表面全体に使用して毛皮全体を改善することができる。美観的な原因のため、本発明の組成物を動物に応用することができ、例えばダニ症による一定程度のはげ、もしくはその他の疾病より円形脱毛症を有する犬または猫の皮膚に使用する。
【0036】
前文、後文に他に明確に説明していなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用する単数形の「一」および「前記」は複数の対象物を含む。例を挙げると、言及した「一誘導体」は複数の前記誘導体を含み、言及した「一個体」は言及した1つまたは複数の個体を含むなどである。
【0037】
また、他に説明していなければ、「または」は「および/または」を意味する。同じように、「含む」、「含む」は互換して使用することができ、制限する意味はない。
【0038】
さらに理解すべきこととして、各実施例の記載で「含む」という語を使用するとき、当業者はいくつかの特定の状況下で、「基本的に…からなる」または「…からなる」という語を使用して実施例を説明することができることを理解しなければならない。
【0039】
他に定義していなければ、本文中で使用するすべての技術および科学用語は、いずれも当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本文中に記載する方法および物質と類似する、または同等の方法および物質は、開示した方法および組成物を実施するのに用いることができるが、本文中には例示的な方法、装置および物質についてのみ記載する。
【0040】
前文および文章全体で考察した開示案は、本出願の出願日より前に開示された内容についてのみ提供する。本文のすべての面において、本発明者が以前の開示のために本発明が優先権を有する権利がないと認めると理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、ヒト皮膚細胞に対するデリナットの毒性を検討する。結果は、皮膚角化細胞(KC)および皮膚繊維芽細胞(HDF)において、高濃度の1.5ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)デリナット処理下で、細胞はいずれも明らかに死亡しないことを示している。
図2図2は、低濃度の15マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)および150マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)デリナットを、それぞれ皮膚角化細胞(KC)および皮膚繊維芽細胞(HDF)中で処理すると、カルシウムイオン([Ca2+)の刺激(motivation)を抑制することができることを示す。
図3図3は、ヌードマウスの背中の毛髪の成長に対するデリナットの影響を検討する。1週間、毎日ヌードマウスの背中に14マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)または60マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットを2時間接触させる。結果から、デリナット群のヌードマウスの背中の毛髪はいずれも多くなることを発見した。
図4図4は、ヌードマウスを屠殺して背中の皮膚を採取し、ヘマトキシリン-エオジン染色(H&E Stain)を行った結果、デリナット群の毛包が増殖し、さらに比較的多くの毛包が成長期であることを発見した。
図5図5は、毛包の増殖が毛包幹細胞の活性化に関係するため、免疫組織化学染色(immunohistochemistry(IHC)staining)を行い、毛包幹細胞に発現する2つの分子標識CD49fおよびOct-3/4を観察する。結果から、デリナットで処理後、比較的多くの毛包幹細胞が発現することを発見した。
図6A図6Aは、生体染色により皮膚組織または毛包細胞における活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の発現量を測定する。図6Aは、デリナットが皮膚細胞中の活性酸素種を低下させることができることを示している。
図6B図6Bは、生体染色により皮膚組織または毛包細胞における活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の発現量を測定する。図6Bは、デリナットが毛包細胞中の活性酸素種を低下させることができることを示しており、破線は毛包細胞の範囲を示し、矢印が指す部分が毛包細胞である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例は用途を限定するものではなく、本発明のいくつかの状態を示しているに過ぎない。
【0043】
実施例1:ヒト皮膚細胞に対するデリナットの毒性の検討
デリナットをヒト皮膚角化細胞および皮膚繊維芽細胞に使用して、ヒト皮膚細胞に対するデリナットの毒性を測定する。結果は、高濃度の1.5ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)デリナット処理下で、皮膚角化細胞(KC)および皮膚繊維芽細胞(HDF)はいずれも明らかに死亡しないことを示している(図1)。
【0044】
実施例2:細胞内カルシウムイオン濃度の変化の抑制に対するデリナットの試験
既知の通り、皮膚細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇するとき、過多のカルシウムイオンはミトコンドリアに影響を及ぼし、ミトコンドリアは活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)を生成し、さらには皮膚細胞の損傷を引き起こす。皮膚細胞のカルシウムチャネル活性および細胞内カルシウムイオン濃度に対するデリナット(Derinat)の影響を観察するため、まず初代ヒト皮膚角化細胞および皮膚繊維芽細胞をデリナットで24時間処理し、その後カルシウム指示薬(Fluo-4-AM)を利用して、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定する。カルシウムチャネルに対するDerinatの影響を観察するとき、カルシウムチャネルの特性によりカルシウムチャネルをより正確に測定する。細胞内カルシウムイオンの動的変化を測定するとき、ATPを利用して細胞を刺激し、カルシウムチャネルを開く。まずカルシウムイオンが存在しない緩衝溶液中でATPを利用してカルシウムチャネルを刺激して開き、その後ATPを洗浄して除き、2ミリモル濃度(mM)カルシウムイオンを含む緩衝溶液に換え、その後曲線高度を測定して、高度面積の定量を行う。図2は、Derinatを投与していない対照群およびDMSOを投与した群と比較して、低濃度の15マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)および150マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)デリナットが、皮膚角化細胞および皮膚繊維芽細胞のカルシウムチャネル活性を抑制することができ、これにより細胞内カルシウムイオン濃度を低下させ、皮膚細胞を保護する効果を達成することを示している。
【0045】
実施例3:ヌードマウスの毛髪の成長に対するデリナットの影響
ヌードマウスの毛髪の成長に対するデリナットの影響を検討するため、14マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)(すなわち3.5マイクログラム/平方センチメートル(μg/cm))または60マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)(すなわち14マイクログラム/平方センチメートル(μg/cm))のデリナットを毎日ヌードマウスの背中に2時間接触させる。1週間の試験後、結果からデリナット群のヌードマウスの背中の毛髪はいずれも増加することを発見した(図3)。14マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)のデリナットが効果を有するため、後続の実験はこの用量を主とした。ヌードマウスを屠殺後、背中の皮膚を採取し、ヘマトキシリン-エオジン染色で切片を観察した結果、デリナット群の毛包が増殖し、比較的多くの毛包が成長期(anagen stage)であることを発見した(図4)。毛包の増殖は幹細胞の活性化と関係するため、免疫組織化学染色を行い、毛包幹細胞に発現する2つの分子標識CD49fおよびOct-3/4を観察する。結果から、デリナットで処理後、分子標識CD49fおよびOct-3/4の発現量がいずれも増加したことを発見し、比較的多くの毛包幹細胞が生成されたことを示している(図5)。
【0046】
実施例4:皮膚組織中の活性酸素種の生成に対するデリナットの影響
皮膚組織中の活性酸素種の生成に対するデリナットの影響をよりさらに理解するため、生体染色により皮膚細胞および毛包細胞中の活性酸素種の発現量を測定する。同様に、皮膚細胞または毛包細胞に関わらず、デリナットが活性酸素種の生成を低下させることができ、さらには皮膚細胞および毛包細胞を保護する効果を達成することを発見した(図6Aおよび図6B)。
【0047】
当業者がこの技術を製作および使用する方法を理解することができるようにするため、本発明はすでに十分に詳細に例を挙げて説明した。しかしながら、各種の変形、修正または改良は、本発明の趣旨および範囲と等しいと見なすべきである。
【0048】
当業者は本発明の目的を容易に理解して実現し、さらに先ほど言及した結果および利点を得る。本発明で使用する細胞、動物、材料、それらを生成する過程および方法は、最も好ましい実施例を示しているため、例示的なものであり、本発明の範囲を制限しない。当業者が本技術を製作または使用するとき、生じる修正またはその他の用途は、いずれも本発明の趣旨内に包含され、さらに特許請求の範囲により限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B