(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】オリゴシランおよびオリゴシラン化合物の純度を高める方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/107 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
C01B33/107 B
(21)【出願番号】P 2019553619
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 DE2017000425
(87)【国際公開番号】W WO2018108199
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】102016014900.0
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519218796
【氏名又は名称】インノウォヘム ウーゲー (ハフトゥングスベシュレンクト)
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】バウッハ、クリスティアン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014007685(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0264426(US,A1)
【文献】国際公開第2016/037601(WO,A1)
【文献】特開2013-212957(JP,A)
【文献】特開2006-169012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機オリゴシランおよび/またはハロゲン化オリゴシランおよび/または有機置換オリゴシラン
から選択され純度を高める対象である一種類のオリゴシラン化合物を少なくとも50%
含む液状混合物を調製し、前記液状混合物で、
複数回の精製手順を実施する
、オリゴシラン化合物の純度を高めるための方法であって、
前記精製手順は、
第1のステップa)で、前記
液状混合物を
前記オリゴシラン化合物の少なくとも一部分が凝固する温度に調節し、
また、前記凝固した固体は、前記液状混合物から分離し、
第2のステップb)で、前記液状混合物の
15%から45%を分離する
ことであり、
この際に、
第2のステップb)で分離した液状混合物は、蒸留して、前記オリゴシラン化合物を濃縮し、その後の精製手順における第1のステップa)で、液状混合物に添加する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップa)で形成された固体を、デカンテーション、ろ過、および/または遠心分離によって前記液状混合物から分離する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
温度調節時に、結晶化が始まるまで温度を下げ、次いでこの温度を所定の時間にわたって維持する
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
温度調節時に前記液状混合物を、好ましく撹拌またはポンピングして揺り動かす
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの精製手順を、閉鎖型反応器システムで実施する
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記方法を、不活性ガス下で実施する
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴシランおよびオリゴシラン化合物、具体的には、無機オリゴシラン、ハロゲン化オリゴシラン、または有機置換オリゴシランの純度を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業で超小型電子部品に用いられるケイ素化合物の不純物や汚染物は、望ましくないドーピングを引き起こし、それにより、例えば信号伝送や発熱のような超小型電子部品の機能に不利な影響が及ぶ。ハロゲン化シランから特定の汚染物を取り除く方法は、先行技術から既知である。例えば特許文献1は、捕捉試薬として有機化合物を個別のシランに添加し、金属元素または半金属元素によってシランの汚染物を低減する方法を開示している。つまり、捕捉試薬で用いられるアミノ基がリガンドとして作用し、金属中心または半金属中心を配位結合させることができる。この方法の欠点は、オリゴシラン、すなわち最大10個までの複数のケイ素原子を有するシランには用いることができないことである。捕捉試薬で用いられるアミノ基が、オリゴシランにおいて骨格転位を引き起こすことがあるからだ。そうした骨格転位は、例えば四塩化ケイ素などの短鎖シランの形成に、またその一方で、例えば(SiCl3)4Siなどの長鎖分岐シランの形成に有利であり得るが、その後の加工には望ましくなかったり、所望の生成物の完全分解につながったりする可能性がある。
【0003】
非特許文献1は、三塩化ホウ素とさまざまなシリルシロキサンの反応について記しており、このときシリルシロキサンは切断されて塩化シリルになる。しかしながら、この方法はさまざまなシロキサンの除去にのみ関連しており、例えばホウ素化合物、リン化合物、ヒ素化合物、およびアンチモン化合物などのドーパント含有化合物では低減が不可能である。
【0004】
シラン中の不純物を低減する別の方法が特許文献2から既知であり、この方法では、金属元素または半金属元素の不純物を、フッ化物と有機オリゴエーテル、またはポリエーテルの添加によって除去することができる。この方法は、基本的には金属不純物の除去を想定したもので、精製効果は、使用するフッ化物と不純物の反応性に依存する。欠点として、ルイス塩基とルイス酸は同じようにうまく除去することができない。それに加え、有機試薬を添加すると望ましくない副反応が引き起こされることがあり、そうするとこの試薬の除去が必要となる。
【0005】
先行技術から既知の方法には、ドーパント、金属化合物、有機および無機分子化合物などの不純物をオリゴシランから取り除くことができると同時に、所望の生成物に本質的な影響を及ぼさないものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第10 2009 027 729号
【文献】独国特許出願公開第10 2014 013 250号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Van Dyke,et al.,(Inorg. Chem.,Vol.3,No.5,1964 pp.747-752)
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、オリゴシランおよびその化合物中の、ドーパント、金属化合物、有機および無機分子化合物に起因する不純物を低減させると同時に、オリゴシランおよびその化合物の純度を高めることのできる方法を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、請求項1に従った方法によって達成される。本発明の有利な実施形態と展開は、従属クレームに示す特徴によって実現できる。
【0010】
オリゴシランおよび/またはオリゴシラン化合物の純度を高めるための本発明に従った方法では、無機オリゴシランおよび/またはハロゲン化オリゴシランおよび/または有機置換オリゴシランを含む少なくとも50%オリゴシラン化合物からなる第1の液状混合物を準備し、第1の液状混合物で少なくとも1つの精製手順を実施し、このとき、第1のステップa)で、混合物をオリゴシラン化合物の少なくとも一部分が凝固する温度に調節し、第2のステップb)で、液状混合物の少なくとも一部分を分離する。
【0011】
好ましくは、ステップa)で形成された固体を、ステップb)で液状混合物から完全に分離することができる。形成された固体は、主にオリゴシラン化合物の結晶である。得られた結晶は、温度調節によって再液化することができ、得られた液体は、ドーパント濃度が低く、および/またはオリゴシラン化合物の濃度が高い、もしくは純度が高い。得られた結晶の純度をさらに高めるために、第2の精製手順で、液化結晶を用いて精製手順をくり返すことができる。このように第2の精製手順で用いられた液化結晶は、第2の液状混合物と呼ばれる。それに加え、第3、第4、および第5の精製手順として、さらに精製手順を行う可能性があり、実施する精製手順の数に制限はない。
【0012】
有利には、本発明に従った方法は、温度が低下すると、通常の条件下では液体である純粋なオリゴシランが、その熱力学的な分布定数に従って、不純なオリゴシラン化合物、または不純なオリゴシラン化合物を含有する液状混合物から凝固または結晶化し、このとき不純物または不純化合物は、凝固点降下によってより低い温度で凝固または結晶化するという事実を用いている。それにより、例えば溶剤などの試薬を追加して処理することなく、母液とも呼ばれる不純物を含有する混合物から低温で、固体として純粋なオリゴシランを分離することができる。そのため、本発明に従った方法では、液状混合物の加熱や溶剤を必要とせずに、簡単な方法で、ドーパント、金属化合物、無機物、および有機物を同時に低減することができる。この方法によって、Al、Fe、Cuによる汚染が100ppb未満のオリゴシランを得ることができる。
【0013】
第1の液状混合物の準備には、例えば排気ガスからハロゲン化オリゴシランを凝縮できるシーメンス(Siemens)法やデグッサ(Degussa)法などのケイ素製造の廃棄物または副生成物を用いることができる。さらに、ハロゲン化オリゴシランまたはポリシランは、的を定めた熱的合成またはプラズマ化学合成によって、SiCl4またはHSiCl3などの単純なモノシランから得ることができ、このとき、H2などの還元剤を使うことができる。さらにオリゴシランは、ミュラー・ロショー(Mueller-Rochow)法などのケイ素生成の前駆体の調製方法において副生成物として生じ、排気ガスから分離して、本発明に従ったプロセスに、すなわち第1の液状混合物を準備するために用いることができる。好ましくは、各精製手順のために準備する液状混合物を事前蒸留し、少なくとも50%のオリゴシラン化合物の部分を得ることができる。
【0014】
結晶形成は、結晶化バッチを撹拌することによって影響を及ぼすことができ、このとき、できるだけ最大の層流であると有利である。乱流、不連続撹拌、または不均一な冷却があると、絡み合った結晶や懸濁した小さな結晶から固体の部分が生じ、結晶スラリーが形成される。そのため有利には、本発明に従った方法によって、結晶の懸濁液または緻密な結晶塊として、オリゴシランの純粋な結晶を得ることができる。
【0015】
本発明の目的上、オリゴシランは最大9個のケイ素原子で形成されるシランと理解され、本発明に従った所望の生成物は、SinX2n+2、SinX2n、SinX2n-2、SinX2n-4、SinX2n-6の組成を有するオリゴシランであり、n=2からn=9であり、このとき、互いに無関係な置換基Xは、ハロゲン、水素、または有機置換基である。便宜上、準備する第1の液状混合物およびその後の液状混合物に含まれるオリゴシラン化合物は、最大9個のケイ素原子で形成されていてよい。言い換えれば、最大9個のケイ素原子で形成される少なくとも50%のオリゴシラン化合物である第1の液状混合物またはその後の液状混合物は、好ましくは以下の精製手順で準備する。
【0016】
好ましくは、ステップa)およびb)からなる精製手順は、オリゴシランの純度を高めるために、および/またはオリゴシランの濃度を高めるために、1回以上くり返すことができる。この点で、その後の精製手順は、第2、第3、または第4の精製手順と呼ばれる。ステップb)で分離された混合物は、母液とも呼ぶことができ、このとき、第1の精製手順で分離された液状混合物は第1の母液と呼ばれ、第2の精製手順で分離された液状混合物は第2の母液と呼ばれ、以降これに準ずる。したがって、第1の分離液状混合物の少なくとも一部、すなわち第1の母液の一部を、第2の精製手順で第2の液状混合物に添加すると定めることができる。これにより、第1の母液中に存在するオリゴシランをその後の精製手順で得ることができるため、純粋なオリゴシランの収量が増加する。このとき、便宜上、純度のより高い第1の母液を用いるが、少なくとも、準備した第1の混合物の純度よりも大幅に低いわけではない。第1の母液は、さらなる液状混合物に添加する前に、事前蒸留することができる。この前処理によって、含有されるオリゴシラン化合物の濃縮が実現できる。さらに第3または第4の母液がある場合、量としては重要ではないものの、それぞれ次のバッチに再度添加すれば、過充填することなく、反応器容積を有意義に活用できる。
【0017】
本発明に従った方法の有利な実施形態に従って、ステップb)の少なくとも1つの精製手順において、少なくとも15%、かつ最大で50%の液状混合物を分離すると定めることができる。さらに、第2、またはそれ以降の精製手順の少なくとも1つで、少なくとも10%、かつ最大で80%、好ましくは15%から45%の第2、またはそれ以降の液状混合物を、第2、またはそれ以降の母液として分離すると定めることができる。本方法に使用する反応器の容量に基づいて、第2、またはそれ以降の母液の量が、準備する第1、第2、またはそれ以降の液状混合物の量を制限する可能性がある。ゆえに、第1、第2、またはそれ以降の母液の好ましくは10~40%を、準備する第1、第2、またはそれ以降の液状混合物に添加すると定めることができる。
【0018】
本発明に従った方法のさらなる有利な実施形態に従って、第1、第2、またはそれ以降の液状混合物は、調製用に温度を調節して、オリゴシラン化合物を溶解または融解させる。
【0019】
オリゴシランの結晶化は、第1、第2、またはそれ以降の液状混合物の温度を調節することによって実現する。オリゴシランの結晶化温度または凝固温度は、不純物の種類や量の影響を受けるため、必要な結晶化温度は、混合物を観察して決定し、このとき温度は、混合物中に結晶が最初に形成されるまで調節しながら徐々に下げていくと定めることができる。次いで、到達した温度を所定の時間にわたって、好ましくは結晶化が完了するまで、または一定時間にわたって結晶の大幅な増加が認められなくなるまで維持することができる。それに続いて、各精製手順で得られた母液、すなわち残った結晶化混合物を、形成された結晶から分離することができる。残った母液が、準備した液状混合物の条件を満たす場合、すなわち、少なくとも50%のオリゴシラン化合物からなる場合、次の精製手順をそのまま行うことができる。このとき、第1の精製手順と比べて低い温度に設定して、より低い温度で結晶化または凝固するさらなるオリゴシランのさらなる結晶を得ることができる。分離液状混合物が、少なくとも50%のオリゴシラン化合物で構成されていない場合、または母液が、液状混合物の条件を満たしていない場合、母液を事前蒸留して、オリゴシラン化合物を濃縮することができる。
【0020】
本発明に従った方法の有利な一実施形態に従って、第1、第2、またはそれ以降の液状混合物の温度調節時に、温度を、所定温度の範囲内で結晶化が始まる温度より低く変化させて、液状混合物の結晶化のパーセント度数または凝固のパーセント度数を達成すると定めることができる。こうして、いくつかのさらなるオリゴシランの結晶化を実現することができる。結晶化のパーセント度数または凝固のパーセント度数とは、それぞれの液状混合物で形成された結晶のパーセント値と理解される。例えば温度調節時に、形成される結晶の割合が液状混合物の50%になるまで温度を徐々に下げるか、または相当する温度を所定の時間にわたって維持することができる。逆に言えば、液状混合物の温度調節または結晶化は、最初の液状混合物のパーセント値が母液として維持されている間は、維持することができる。
【0021】
追加の方法ステップに従って、第1、第2、またはそれ以降の混合物の温度を、所望の生成物の結晶化温度より高く、結晶が分離する寸前の温度で、所定の時間にわたって維持することがさらに有利であり得る。解凍ステップとも呼べる追加の方法ステップによって、結晶化で検出された、または接着性の/包含された母液として結晶の形で存在した不純なオリゴシランまたはドーパントなどの望ましくない部分を、溶液中に戻して母液として取り除くことができる。有利には、オリゴシランの純度は解凍ステップによって高めることができる。
【0022】
好ましくは、ステップa)で形成された固体は、デカンテーション、ろ過、および/または遠心分離によって分離することができる。本発明に従った方法のさらなる有利な実施形態に従って、結晶分離後のさらなるプロセスステップとして、結晶の蒸留を1600hPa未満、好ましくは800hPa未満の圧力で、より好ましくは真空で行うと定めることができる。有利には、蒸留ステップによって、オリゴシランからとりわけ含有懸濁物を取り除くことができる。
【0023】
液状混合物を準備するために、さらなる実施形態に従って、オリゴシラン化合物を、温度調節に加えて、好ましくは少なくとも1つの無機オリゴシランおよび/またはハロゲン化オリゴシランおよび/または有機的に置換されたオリゴシランよりも低い凝固温度を有する溶剤に混ぜ入れると定めることができる。溶剤は、アルカン、クロロアルカン、特にジクロロメタン、シクロアルカン、トリグライム、ジグライム、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シラン、またはオリゴシランを含む群から選択できる。好ましくは、溶剤の少なくとも0.01質量%を使用できる。使用する溶剤は、後に続く蒸留ステップによって形成された結晶から取り除くことができる。
【0024】
本発明に従った方法のさらなる有利な実施形態に従って、結晶化プロセスを始めるために第1、第2、またはそれ以降の液状混合物に、温度調節時に無機オリゴシランおよび/またはハロゲン化オリゴシランおよび/または有機的に置換されたオリゴシランの種晶を接種することができる。
【0025】
好ましくは、液状混合物は、温度調節時に撹拌またはポンピングして、結晶形成を促す。
【0026】
本発明に従ったプロセス、特に精製手順を、閉鎖型反応器システムで実施することによって、後から不純物が入り込むのを防ぐことができる。このとき、反応器内で不活性ガスを用いて、望ましくない反応を最小限に抑えることができる。したがって、本発明に従った方法は不活性ガス下で実施することができる。さらに、母液から結晶を分離するとき、過圧の不活性ガスを用いることで、不純物が反応器に入り込むのを最小限に抑えることができる。
【0027】
有利には、本発明に従ったプロセスで、通常の条件下で液体である生成物を精製する。しかしながら、純粋な状態で固体である生成物も液状混合物から得ることができる。好ましくは、プロセスは、すでに純度が比較的高い、例えば99%超である個々の液体オリゴシラン化合物に適用することができ、それにより、本発明に従ったプロセスの実施後、個々のオリゴシラン化合物を非常に多くの用途に容易に用いることができる。さらに本発明に従ったプロセスには、先行技術で用いられている蒸留分離法と比べて、費用を削減でき、生成物純度を高めることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】オリゴシランおよび/またはオリゴシラン化合物の純度を高めるための本発明に従った方法の例示的な実施形態のフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、例示的な実施形態に基づいて例を通して本発明をより詳細に説明する。
【0030】
本発明に従った方法によってヘキサクロロジシランの純度を高める、第1の例示的な実施形態。
【0031】
第1の実施形態のために準備した第1の液状混合物は、ヘキサクロロジシラン(HCDS)81.88%、ヘキサクロロジシロキサン8.42%、ペンタクロロジシラン8.44%、テトラクロロシラン1.13%を含有しており、質量は1422.5gだった。第1の液状混合物に含まれるヘキサクロロジシランを精製するために、第1の精製手順で、第1の液状混合物を反応器に入れ、撹拌装置を用いて毎分回転数(rpm)600~1000で撹拌しながら、温度を-40~-48℃に調節した。温度調節プロセスは2時間後に終了させた。反応器壁に結晶層が形成されていた。残りの第1の液状混合物は孔径D3のフィルターフリットを用いて第1の母液として取り出し、それにより結晶から分離した。次いで、第2の精製手順を実施した。ここで、第1の精製手順から得た結晶を温度調節によって溶解させ、生じた液体を第2の液状混合物として反応器に入れ、撹拌装置を用いて600~1000rpmで撹拌しながら、2時間にわたって温度を-40~-48℃に調節した。残りの第2の液状混合物は孔径D3のフィルターフリットを用いて第2の母液として取り出し、それにより結晶から分離した。
【0032】
プロセスの進捗はガスクロマトグラフィーで観察した。このために、第1の液状混合物および形成された結晶から、いずれの場合も、第1および第2の精製手順後の結晶溶解後に、以下のGC解析結果を得た。
【0033】
【0034】
表1からわかるように、第2の精製手順後に、HCDS濃度が98.27%に上昇した。
【0035】
本発明に従った方法によってヘキサクロロジシランの純度を高める、第2の例示的な実施形態。
【0036】
第2の実施形態のために準備した第1の液状混合物は、ヘキサクロロジシラン(HCDS)99.898%、ヘキサクロロジシロキサン0.097%、テトラクロロシラン0.005%を含有しており、質量は1303.5gだった。第1の液状混合物に含まれるヘキサクロロジシランを精製するために、第1の精製手順で、第1の液状混合物を反応器に入れ、撹拌装置を用いて300~400rpmで撹拌しながら、温度を-6℃に調節した。温度調節プロセスは1時間後に終了させた。反応器壁に結晶層が形成されていた。残りの第1の液状混合物は孔径D3のフィルターフリットを用いて第1の母液として取り出し、それにより結晶から分離した。次いで、第1の精製手順と同じように、第2、第3、および第4の精製手順を実施した。こうして、各精製手順後に得られた結晶は、次の精製ステップのために温度調節によって液化し、いずれの場合も、液状混合物として用いた。
【0037】
第4の精製ステップ後に、表2に示すように、純度が99.99%超の精製HCDSを119.65g得ることができた。プロセスの進捗はガスクロマトグラフィーで観察した。このために、第1の液状混合物および形成された結晶から、いずれの場合も、第1、第2、第3、および第4の精製手順後の結晶溶解後に、以下のGC解析結果を得た。
【0038】
【0039】
本発明に従った方法によってヘキサクロロジシランの純度を高める、第3の例示的な実施形態。
【0040】
第3の例示的な実施形態では、ヘキサクロロジシランの純度を高めるために、先行する精製手順の母液の部分を次の精製手順で用いて、精製手順を連続的に実施した。この例示的な実施形態は、継続的で連続的なプロセスにおいて5つの精製手順を含む、本発明に従った方法を示している。最初に、以下の表3の第1カラムからわかるように、質量が47.505kgでHCDS濃度が99.304%である第1の液状混合物を準備する。第1の精製手順では、前のバッチの第2の母液23.8kgを、反応器に準備した第1の液状混合物に添加し、次いで、撹拌装置を用いて350rpmで撹拌しながら、温度を-20℃に調節した。温度調節プロセスは6時間52分後に終了させた。形成された結晶の基本部分は、緻密な中空シリンダーとなって反応器内壁で増大した。次いで、第1の母液27.5kgを反応器底部の排液弁から取り出し、形成された結晶を35℃で溶解させた。溶解中、第3の母液21.115kgを前のバッチに添加し、その結果、形成された第2の液状混合物の質量が64.92kgとなった。こうして形成された第2の液状混合物に第2の精製手順を実施した。このとき、前記手順を上述したように進めた。5時間50分後に、第2の母液として28.225kgを分離し、結晶化物を35℃で溶解し、一方で、前のバッチの第4の母液15.53kgを添加して、質量が52.225kgの第3の液状混合物を、第3の精製手順のために準備した。
【0041】
第3の精製手順では、第3の液状混合物を、撹拌装置を用いて350rpmで撹拌しながら、温度を-20℃に調節した。7時間12分後に結晶31.995kgを得て、20.23kgを第3の母液として分離した。結晶化物を35℃で溶解させ、一方で、第5の母液7.795kgを前のバッチに添加して、質量が39.79kgの第4の液状混合物を、第4の精製手順のために準備した。
【0042】
第4の精製手順では、第4の液状混合物を、撹拌装置を用いて350rpmで撹拌しながら、温度を-20℃に調節した。6時間10分後に第4の母液として14.49kgを分離し、結晶25.3kgを得た。結晶化物を35℃で溶解させ、第5の液状混合物として第5の精製手順に用いた。このとき、前のバッチの母液を添加せずに、最大の純度を達成にした。
【0043】
第5の精製手順では、第5の液状混合物を、撹拌装置を用いて350rpmで撹拌しながら、温度を-20℃に調節した。温度調節プロセスは6時間58分後に終了させた。次いで、液体5.84kgを第5の母液として分離することにより、純度が99.99%超のHCDS結晶化物を19.46g得た。
【0044】
プロセスの進捗はガスクロマトグラフィーで観察した。このために、第1の液状混合物および第5の精製手順後の最終結晶から、以下のGC解析結果を得た。
【0045】
【0046】
以下、一例として例示的な実施形態の図で、本発明に従った方法をより詳細に説明する。
【0047】
図1は、オリゴシランおよび/またはオリゴシラン化合物の純度を高めるための本発明に従った方法における例示的な実施形態のフローチャートを示す。図示した例示的な実施形態に従って、本発明に従ったプロセスはバッチで実施することができる。このとき、精製手順で第1のバッチから分離された母液ML2~ML5を、いずれの場合も、次のバッチの液状混合物に添加する。第1の混合物は、本実施例では粗混合物と呼ばれる。図表のX軸には4つのバッチを、Y軸方向には、第1RCから第5RCまでの精製手順の数を示している。符号K1~K5は、1~4の各バッチで得られた結晶化物を意味し、その純度は番号順に増加している。
【0048】
例示的な実施形態に従って、バッチ1~4はそれぞれ第1の液状混合物である原料混合物から開始し、第1の液状混合物はそれぞれ第1の精製手順である第1RCに加える。第2のバッチ2以降、第2の母液ML2の少なくとも一部分を、先の第1のバッチ1から第1の精製手順第1RCに混ぜ入れ、一緒に処理する。第1の精製手順第1RCによって、粗混合物よりも純度の高い第1の結晶化物K1と、純度の低い母液ML1がもたらされる。第1の母液ML1の部分は排出し、別途処理して、少なくとも原料混合物に相当する純度を達成する。第2の精製手順である第2RCでは、第1の結晶化物K1を、前のバッチの第3の母液ML3の少なくとも一部分と混合する。結晶化物K2および第2の母液ML2は、第2の精製手順第2RCから生じる。結晶化物K2は、第3の精製手順である第3RCのために、前のバッチの母液ML4の少なくとも一部分と混合する。結晶化物K3および第3の母液ML3は、第3の精製手順第3RCから生じる。結晶化物K3は、第4の精製手順である第4RCのために、前のバッチの母液ML5の少なくとも一部分と混合する。第5の精製手順である第5RCの後、生成物の純度は販売に十分な高さであるため、プロセスはこの時点で終了することができる。当業者が理解するように、本発明に従ったプロセスの本質から逸脱することなく、母液MLを再利用し、または再利用せずに、より少ない、またはより多くの精製手順RCを実施することができる。