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特許6996792薬剤の吐出制御システム、その制御方法、および、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】薬剤の吐出制御システム、その制御方法、および、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A01M7/00 H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020523183
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2019022601
(87)【国際公開番号】W WO2019235585
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018109306
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002093(WO,A3)
【文献】国際公開第2017/208354(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布液体又は粉体を散布する散布機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するためのシステムであって、
降水の可能性を検知して降水信号を生成する降水予測部と、
外部に前記散布液体又は粉体を吐出するか否かを制御し、前記降水信号に基づいて散布液体又は粉体の散布を中止する散布制御部と、
を備える、散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項2】
前記降水予測部は、前記散布機械の周辺の気圧を測定する気圧測定部と、前記気圧に基づいて前記散布機械が散布液体又は粉体を散布する領域に降水の可能性があるか否かを判定する降水判定部と、を備える、請求項1記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項3】
前記降水判定部は、前記気圧測定部が測定する気圧の経時変化に基づいて、前記気圧の急変を検知して、前記散布機械が散布液体又は粉体を散布する領域に降水の可能性があるか否かを判定する、請求項2記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項4】
別の散布機械から送信される降水信号を受信する他機情報受信部をさらに備え、前記散布制御部は、前記他機情報受信部が受信する前記降水信号に基づいて前記散布液体又は粉体の散布を中止させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項5】
前記降水予測部が生成する降水信号を、前記散布機械の外部に送信する機体情報送信部をさらに備える、請求項4記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項6】
予測機により測定される気圧を受信する予測機情報受信部をさらに備え、前記降水予測部は前記気圧に基づいて、降水の可能性を検知する、請求項1乃至5のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項7】
飛行制御部を有するドローンに搭載される散布液体又は粉体の吐出制御システムであって、前記ドローンが着陸している状態で降水の可能性を検知するとき、前記飛行制御部は前記ドローンの離陸を行わない、請求項1乃至6のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項8】
前記散布機械が散布液体又は粉体を散布する領域における前記散布液体又は粉体の蒸発しやすさを判定して、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成し、前記蒸発信号を前記散布制御部に伝達する蒸発予測部をさらに備え、前記散布制御部は、前記蒸発信号に基づいて前記散布液体又は粉体の散布を停止する、請求項1乃至7のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項9】
前記蒸発予測部は、前記領域における温度および湿度の少なくとも一方を測定する蒸発測定部と、前記温度および湿度の少なくとも一方に基づいて前記領域における蒸発しやすさが所定以上であるか否かを判定する蒸発判定部と、を備える、請求項8記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項10】
散布液体又は粉体を散布する散布機械に備えられ、前記散布液体又は粉体の吐出を制御するためのシステムであって、
前記散布液体又は粉体が散布される領域における前記散布液体又は粉体の蒸発しやすさを判定して、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成する蒸発予測部と、
外部に前記散布液体又は粉体を吐出するか否かを制御し、前記蒸発信号に基づいて散布液体又は粉体の散布を中止する散布制御部と、を備え
前記吐出制御システムが搭載されたドローンが着陸している状態で蒸発しやすさが所定以上であるとき、前記ドローンの飛行制御部は前記ドローンの離陸を行わない、散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項11】
前記蒸発予測部は、前記領域における温度および湿度の少なくとも一方を測定する蒸発測定部と、前記温度および湿度の少なくとも一方に基づいて前記領域における蒸発しやすさが所定以上であるか否かを判定する蒸発判定部と、を備える、請求項10記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項12】
別の散布機械から送信される蒸発信号を受信する他機情報受信部をさらに備え、前記散布制御部は、前記他機情報受信部が受信する前記蒸発信号に基づいて前記散布液体又は粉体の散布を中止させる、請求項10又は11のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項13】
前記蒸発予測部が生成する蒸発信号を、前記散布機械の外部に送信する機体情報送信部をさらに備える、請求項12記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項14】
予測機により測定される温度および湿度の少なくとも一方を受信する蒸発予測部をさらに備え、前記蒸発予測部は前記温度および湿度の少なくとも一方に基づいて、蒸発のしやすさを予測する、請求項10乃至13のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項15】
降水信号又は蒸発信号に基づいて、降水可能性又は蒸発しやすさが高いことを通知する、請求項1乃至14のいずれかに記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項16】
前記通知の後、前記薬剤制御部は、使用者により入力される指令を待機し、入力された前記指令に基づいて前記散布液体又は粉体の散布を行うか否かを決定する、請求項15記載の散布液体又は粉体の吐出制御システム。
【請求項17】
散布液体又は粉体を散布する散布機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するための方法であって、
降水の可能性を検知して降水信号を生成するステップと、
外部に前記散布液体又は粉体を吐出するか否かを制御し、前記降水信号に基づいて散布液体又は粉体の散布を中止するステップと、
を含む、散布液体又は粉体の吐出制御方法。
【請求項18】
散布液体又は粉体を散布する散布機械に備えられ、前記散布液体又は粉体の吐出を制御するためのプログラムであって、
降水の可能性を検知して降水信号を生成する命令と、
外部に前記散布液体又は粉体を吐出するか否かを制御し、前記降水信号に基づいて散布液体又は粉体の散布を中止する命令と、
をコンピュータに実行させる、散布液体又は粉体の吐出制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、薬剤の吐出制御システム、その制御方法、および、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。欧米と比較して農地が狭い日本においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
その一方で、農業用の薬剤散布向け自律飛行型ドローンについては安全性に対する考慮が十分とは言いがたいケースがあった。薬剤を搭載したドローンの重量は数10キログラムになるため、人の上に落下する等の事故が起きた場合に重大な結果を招きかねない。また、通常、ドローンの操作者は専門家ではないためフールプルーフの仕組みが必要であるが、これに対する考慮も不十分であった。今までに、人間による操縦を前提としたドローンの安全性技術は存在していたが(たとえば、特許文献2)、特に農業用の薬剤散布向けの自律飛行型ドローンに特有の安全性課題に対応するための技術は存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬剤の散布の実効性を担保するための薬剤の吐出制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る薬剤の吐出制御システムは、薬剤を散布する農業用機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するためのシステムであって、降水の可能性を検知して降水信号を生成する降水予測部と、外部に前記薬剤を吐出するか否かを制御し、前記降水信号に基づいて薬剤の散布を中止する薬剤制御部と、を備える。
【0008】
前記降水予測部は、前記農業用機械の周辺の気圧を測定する気圧測定部と、前記気圧に基づいて前記農業用機械が薬剤を散布する領域に降水の可能性があるか否かを判定する降水判定部と、を備えていてもよい。
【0009】
前記降水判定部は、前記気圧測定部が測定する気圧の経時変化に基づいて、前記気圧の急変を検知して、前記農業用機械が薬剤を散布する領域に降水の可能性があるか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0010】
別の農業用機械から送信される降水信号を受信する他機情報受信部をさらに備え、前記薬剤制御部は、前記他機情報受信部が受信する前記降水信号に基づいて前記薬剤の散布を中止させるように構成されていてもよい。
【0011】
前記降水予測部が生成する降水信号を、前記農業用機械の外部に送信する機体情報送信部をさらに備えていてもよい。
【0012】
予測機により測定される気圧を受信する予測機情報受信部をさらに備え、前記降水予測部は前記気圧に基づいて、降水の可能性を検知するように構成されていてもよい。
【0013】
飛行制御部を有するドローンに搭載される薬剤の吐出制御システムであって、前記ドローンが着陸している状態で降水の可能性を検知するとき、前記飛行制御部は前記ドローンの離陸を行わないように構成されていてもよい。
【0014】
前記農業用機械が薬剤を散布する領域における前記薬剤の蒸発しやすさを判定して、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成し、前記蒸発信号を前記薬剤制御部に伝達する蒸発予測部をさらに備え、前記薬剤制御部は、前記蒸発信号に基づいて前記薬剤の散布を停止するように構成されていてもよい。
【0015】
前記蒸発予測部は、前記領域における温度および湿度の少なくとも一方を測定する蒸発測定部と、前記温度および湿度の少なくとも一方に基づいて前記領域における蒸発しやすさが所定以上であるか否かを判定する蒸発判定部と、を備えていてもよい。
【0016】
本発明の別の観点に係る薬剤の吐出制御システムは、薬剤を散布する農業用機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するためのシステムであって、前記薬剤が散布される領域における前記薬剤の蒸発しやすさを判定して、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成する蒸発予測部と、外部に前記薬剤を吐出するか否かを制御し、前記蒸発信号に基づいて薬剤の散布を中止する薬剤制御部と、を備える。
【0017】
前記蒸発予測部は、前記領域における温度および湿度の少なくとも一方を測定する蒸発測定部と、前記温度および湿度の少なくとも一方に基づいて前記領域における蒸発しやすさが所定以上であるか否かを判定する蒸発判定部と、を備えていてもよい。
【0018】
別の農業用機械から送信される蒸発信号を受信する他機情報受信部をさらに備え、前記薬剤制御部は、前記他機情報受信部が受信する前記蒸発信号に基づいて前記薬剤の散布を中止させるように構成されていてもよい。
【0019】
前記蒸発予測部が生成する蒸発信号を、前記農業用機械の外部に送信する機体情報送信部をさらに備えていてもよい。
【0020】
予測機により測定される温度および湿度の少なくとも一方を受信する蒸発予測部をさらに備え、前記蒸発予測部は前記温度および湿度の少なくとも一方に基づいて、蒸発のしやすさを予測するように構成されていてもよい。
【0021】
飛行制御部を有するドローンに搭載される薬剤の吐出制御システムであって、前記ドローンが着陸している状態で蒸発しやすさが所定以上であるとき、前記飛行制御部は前記ドローンの離陸を行わないように構成されていてもよい。
【0022】
降水信号又は蒸発信号に基づいて、降水可能性又は蒸発しやすさが高いことを通知するように構成されていてもよい。
【0023】
前記通知の後、前記薬剤制御部は、使用者により入力される指令を待機し、入力された前記指令に基づいて前記薬剤の散布を行うか否かを決定するように構成されていてもよい。
【0024】
本発明の別の観点に係る薬剤の吐出制御方法は、薬剤を散布する農業用機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するための方法であって、降水の可能性を検知して降水信号を生成するステップと、外部に前記薬剤を吐出するか否かを制御し、前記降水信号に基づいて薬剤の散布を中止するステップと、を含む。
【0025】
本発明の別の観点に係る薬剤の吐出制御方法は、薬剤を散布する農業用機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するための方法であって、前記薬剤が散布される領域における前記薬剤の蒸発しやすさを判定して、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成するステップと、外部に前記薬剤を吐出するか否かを制御し、前記蒸発信号に基づいて薬剤の散布を中止するステップと、を含む、薬剤の吐出制御方法。
【0026】
本発明の別の観点に係る薬剤の吐出制御プログラムは、薬剤を散布する農業用機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するためのプログラムであって、降水の可能性を検知して降水信号を生成する命令と、外部に前記薬剤を吐出するか否かを制御し、前記降水信号に基づいて薬剤の散布を中止する命令と、をコンピュータに実行させる。
【0027】
本発明の別の観点に係る薬剤の吐出制御プログラムは、薬剤を散布する農業用機械に備えられ、前記薬剤の吐出を制御するためのプログラムであって、前記薬剤が散布される領域における前記薬剤の蒸発しやすさを判定して、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成する命令と、外部に前記薬剤を吐出するか否かを制御し、前記蒸発信号に基づいて薬剤の散布を中止する命令と、をコンピュータに実行させる。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0028】
薬剤の散布の実効性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願発明に係る薬剤の吐出制御システムを有するドローンの第1実施形態を示す平面図である。
図2】上記ドローンの実施例の正面図である。
図3】上記ドローンの実施例の右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】本願発明に係るドローンの実施例を使用した薬剤散布システムの全体概念図の例である。
図7】本願発明に係るドローンの実施例の制御機能を表した模式図である。
図8】上記ドローンおよび周辺に配置された予測機が有する、降水可能性および蒸発しやすさを判定する構成に関する機能ブロック図である。また、同様の機能を有する別のドローンの機能ブロック図を併記した。
図9】上記ドローンが、降水可能性および蒸発しやすさを判定するフローチャートである。
図10】上記ドローンが、同様の機能を有する別のドローンが有する他機情報受信部から降水信号又は蒸発信号を受信した場合のフローチャートである。
図11】上記ドローンが、上記ドローンが有する予測機情報受信部により気圧、温度、および湿度の測定結果を受信した場合のフローチャートである。
図12】本願発明に係る薬剤の吐出制御システムの第2実施形態におけるドローンが、降水可能性および蒸発しやすさを判定するフローチャートである。
図13】上記ドローンが、同様の機能を有する別のドローンが有する他機情報受信部から降水信号又は蒸発信号を受信した場合のフローチャートである。
図14】上記ドローンが、上記ドローンが有する予測機情報受信部により気圧、温度、および湿度の測定結果を受信した場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0031】
●薬剤の吐出制御システム(1)●
本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。ドローンは、農業用機械の例である。
【0032】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、バッテリー消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。
【0033】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられていることが望ましい。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転することが望ましい。なお、一部の回転翼101-3b、および、モーター102-3bが図示されていないが、その位置は自明であり、もし左側面図があったならば示される位置にある。図2、および、図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0034】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0035】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0036】
図4に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。操縦器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されることが望ましいが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていることが望ましい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作機(図示していない)を使用してもよい(非常用操作機は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であることが望ましい)。操縦器401とドローン100はWi-Fi等による無線通信を行なうことが望ましい。
【0037】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の障害物が存在する場合もある。
【0038】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようにすることが望ましい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピューター群と関連ソフトウェアであり、操縦器401と携帯電話回線等で無線接続されていることが望ましい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行なってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行なってもよい。
【0039】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0040】
図6に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表した模式図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピューターであってよい。フライトコントローラー501は、操縦器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0041】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっていることが望ましい。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護を行なうことが望ましい。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操縦器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピューターによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0042】
バッテリー502は、フライトコントローラー501、および、ドローンのその他の構成要素に電力を供給する手段であり、充電式であることが望ましい。バッテリー502はヒューズ、または、サーキットブレーカー等を含む電源ユニットを介してフライトコントローラー501に接続されていることが望ましい。バッテリー502は電力供給機能に加えて、その内部状態(蓄電量、積算使用時間等)をフライトコントローラー501に伝達する機能を有するスマートバッテリーであることが望ましい。
【0043】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操縦器401とやり取りを行ない、必要な指令を操縦器401から受信すると共に、必要な情報を操縦器401に送信できることが望ましい。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておくことが望ましい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えていることが望ましい。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、GPSモジュール504により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。GPSモジュール504は重要性が高いため、二重化・多重化しておくことが望ましく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのGPSモジュール504は別の衛星を使用するよう制御することが望ましい。
【0044】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段(さらに、加速度の積分により速度を計算する手段)である。また、6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーを使用することが望ましい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていることが望ましい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0045】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513はドローン障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器であることが望ましい。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の障害物に接触したことを検知するためのセンサーである。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操縦器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0046】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0047】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操縦器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0048】
薬剤が散布される圃場は、雨等が降る可能性がある。圃場に薬剤を散布している間、又は散布後であっても圃場に薬剤が定着するまでの間に雨等が降ると、圃場に散布された薬剤が流されてしまい、薬剤を意図通り圃場に定着することができない。また、散布された薬剤が特定の地点に集中して流れ込むことにより、当該地点に過剰濃度の薬剤が滞留して圃場の薬害、又はその薬剤に触れる可能性のある人体に対する安全性を損なう危険がある。そこで、圃場に薬剤を散布するドローンにおいては、圃場に雨等が降ることを予測し、降水が予測される場合には、ドローンを退避させる機能を有することが望ましい。また、ドローンの離陸前に降水が予測される場合は、ドローンの飛行を禁止させる機能を有することが望ましい。
【0049】
雨等とは、雨、雪、みぞれ、ひょう、あられなど、大気から落下する種々の降水現象を指す。
【0050】
図7に示すように、本願発明に係るドローン100は、飛行制御部23と、降水予測部24と、蒸発予測部25と、他機情報受信部26と、機体情報送信部27と、予測機情報受信部28と、ドローン100から吐出する薬剤の量を制御する薬剤制御部30と、を備える。
【0051】
また、ドローン100と同様の機能を有する別のドローン100bは、飛行制御部23bと、降水予測部24bと、蒸発予測部25bと、他機情報受信部26bと、機体情報送信部27bと、予測機情報受信部28bと、ドローン100bから吐出する薬剤の量を制御する薬剤制御部30bと、を備える。ドローン100およびドローン100bは適宜の手法により通信することができる。この構成については後述する。
【0052】
飛行制御部23は、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bを制御することで回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bの回転数および回転方向を制御して、ドローン100を使用者402が意図する区画内で飛行させる機能部である。また、飛行制御部23は、ドローン100の離陸および着陸の制御を行う。具体的には、飛行制御部23はマイコン等で実装されるCPUであり、フライトコントローラー501である。
【0053】
なお、飛行制御部23は、ドローン100の正常動作においてドローン100の飛行を制御するために動作してもよいし、正常動作における飛行制御手段とは別に構成されていてもよい。後者の場合、飛行制御部23は、降水検知、降水予測、又は蒸発予測時に退避行動を取る場合にのみ動作する。
【0054】
所定の安全行動とは、飛行中であれば退避行動、飛行前の準備状態であれば飛行規制措置である。
【0055】
退避行動は例えば、通常の着陸動作、ホバリングを例とする空中停止や、最短のルートで直ちに所定の帰還地点まで移動する「緊急帰還」を含む。所定の帰還地点とは、あらかじめフライトコントローラー501に記憶させた地点であり、例えば離陸した地点である。所定の帰還地点とは、例えば使用者402がドローン100に近づくことが可能な陸上の地点であり、使用者402は帰還地点に到達したドローン100を点検したり、手動で別の場所に運んだりすることができる。
【0056】
また、退避行動は、最適化されたルートで所定の帰還地点まで移動する「通常帰還」であってもよい。最適化されたルートとは、例えば、通常帰還指令を受信する前に薬剤散布したルートを参照して算出されるルートである。例えば、ドローン100は、まだ薬剤を散布していないルートを経由して、薬剤を散布しながら所定の帰還地点まで移動する。
さらに、退避行動は、すべての回転翼を停止させてドローン100をその場から下方に落下させる「緊急停止」も含む。
【0057】
飛行規制措置は、飛行前の準備段階において飛行を規制する措置であって、使用者の飛行命令を拒否したり、使用者に状態の確認を要求したりするものである。
飛行規制措置がとられた場合には、異常の確認や整備がなされない限り、飛行できないように制御されてもよい。
【0058】
飛行制御部23は、降水予測部24が検知する降水可能性の程度、又は既に降水しているか否かに応じて異なる退避行動を行うように構成されていてもよい。例えば、降水を事前に予測し、降水が起こる前に発着地点406に帰還が可能である場合は、通常帰還を行う。非常に強い降水の発生により通常帰還すら困難な状況の場合は、緊急帰還又はその場で通常の着陸動作を行う。さらに、回転翼が強い雨等に打たれ、通常の着陸動作を行うことも困難であると判断された場合は、「緊急停止」を選択してもよい。
【0059】
薬剤制御部30は、薬剤タンク104から薬液を散布する量又はタイミングを制御する制御部である。例えば、薬剤タンク104から各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4までの経路のどこかに、薬液経路を開閉する開閉手段が設けられていて、薬剤制御部30は、開閉手段により薬液の放出を遮断した後に各種の緊急動作を実行する。また、薬剤制御部30は、退避行動を実行する前にポンプ106を停止する。降水の可能性がある場合、圃場に薬剤を散布しても定着せず流れてしまうため、散布しても薬剤が無駄になってしまうためである。
【0060】
降水予測部24は、薬剤を散布する領域に降水の可能性があることを検知して降水信号を生成し、降水信号を飛行制御部23に伝達する機能部である。降水予測部24は、気圧測定部241および降水判定部242を有する。
【0061】
気圧測定部241は、ドローン100の周辺の気圧を測定する機能部である。気圧測定部241は、例えば気圧センサー507により構成されるが、気圧を測定する機能部を複数有していてもよい。
【0062】
降水判定部242は、気圧測定部241が測定する気圧に基づいて、ドローン100が薬剤を散布する領域に降水の可能性があるか否かを判定する機能部である。具体的には、降水判定部242は、気圧測定部241が測定する気圧が所定以下の場合には、薬剤を散布する領域に降水の可能性がある旨の信号(以下、「降水信号」ともいう。)を生成し、飛行制御部23に伝達する。
【0063】
また、降水判定部242は、気圧測定部241が測定する気圧の経時変化に基づいて、薬剤が散布される領域に降水の可能性があるか否かを判定してもよい。具体的には、測定される気圧が所定時間内に所定以上変化する場合、すなわち気圧の急変がある場合、降水判定部242は降水の可能性を検知してもよい。気圧の急変は、急激な上昇又は急激な下降のいずれかを検知してもよいし、双方を検知してもよい。
【0064】
降水判定部242は、測定される気圧又は気圧の経時変化に基づいて、飛行制御部23がいずれの退避行動を行うかを決定し、決定した退避行動の種類を飛行制御部23に伝達してもよい。
【0065】
また、降水判定部242は、気圧測定部241が測定する気圧の情報に基づいて、降水の可能性が高いと判定する場合、薬剤制御部30に降水信号を伝達する。薬剤制御部30が薬剤を散布していた場合、薬剤制御部30は、降水信号が伝達されると薬剤の散布を停止する。
【0066】
例えば、気圧の急変を検知して降水が予測された場合、まず薬剤制御部30は薬剤の散布を停止し、飛行制御部23はホバリングを行う。降水予測部24は、ホバリング中において繰り返し降水予測を行い、さらに降水の可能性が高まる場合は、飛行制御部23によりドローン100を発着地点まで飛行させる、通常帰還又は緊急帰還を行ってもよい。
【0067】
降水判定部242が、薬剤が散布される領域に降水の可能性が高いと判定する気圧の閾値は、予めドローン100に記憶されている固定された閾値であってもよいし、状況に応じて変更される変動する閾値であってもよい。変動する閾値の場合は、ドローン100に無線又は有線接続される適宜の構成により自動で変動されてもよいし、使用者402により手動で変更可能であってもよい。散布する薬剤の種類によって、圃場への定着に要する時間や、降水の影響の度合いが異なる場合があるため、薬剤タンク104に貯留されている薬剤の種類により、閾値が変更されるように構成されていてもよい。この場合、薬剤タンク104又は薬剤タンク104から吐出ノズルに至る経路中に薬剤の種類を判別するセンサが配置され、当該判別センサの判別結果に応じて、あらかじめ薬剤の種類に対応して定められた閾値に自動で変更されてもよい。
【0068】
降水予測部24は、ドローン100が有する適宜の通信手段により、使用者402が監視する操縦器401に、降水の可能性を検知した旨を表示する。また、降水予測部24は、ドローン100が有する表示手段、例えばLEDにより、ドローン100が降水の可能性を検知した旨が表示されるように構成してもよい。また、ドローン100のスピーカから適宜の音を出してもよい。
【0069】
また、使用者402がドローン100の情報をアイウェア型ウェアラブル端末機により取得する場合には、アイウェアの画面上に表示または投影してもよい。また、使用者402がドローン100の情報をイヤホン型ウェアラブル端末機により取得する場合に、音により通知してもよい。
【0070】
なお、本実施形態においては、降水の可能性を予測する手段として気圧および気圧の経時変化を計測したが、別の手段であってもよい。また、降水が発生していることを検知する機能部を有していてもよい。例えば、ドローン100の機体表面の静電容量の変化をセンサーにより測定して、ドローン100が濡れていることを検知することにより、降水が発生していると判断してもよい。
【0071】
Web等で公開されている天気予報の情報では、ある地域の広域的な天候の変化を知ることはできるが、夕立のような、局地的で短時間の降水現象を知ることは困難である。そこで、ドローン100自体が降水の可能性を予測する構成によれば、ドローン100が存在する地点の気圧を測定して天候の変化を予測することができるため、薬剤を散布する圃場における、局地的で短時間の天候の変化を含めたより正確な降水予測が可能である。また、ドローン100は、例えば高度測定等、別の用途を想定して気圧センサー507を備える場合が多い。したがって、気圧センサー507を使用して降水予測を行うドローン100によれば、搭載されている気圧センサー507を降水予測にも使用することで、ハード的な構成を追加することなく、より正確かつ効率よく安全に薬剤散布を行うことができる。
【0072】
他機情報受信部26は、周辺に存在する別のドローン100bが送信する情報を受信する機能部である。機体情報送信部27は、ドローン100の外部に情報を送信する機能部である。別のドローン100bとは、ドローン100の近傍の空間を飛行するドローンである。別のドローン100bは、同一使用者402により管理されるドローンであってもよいし、別の使用者により管理されるドローンであってもよい。また、本実施の形態においては、別のドローン100bは本発明に係るドローンと同様の構成の薬剤散布用ドローンを想定しているが、別の目的で周辺を飛行するドローンであってもよく、例えば薬剤タンクを有しない監視用ドローンであってもよい。
【0073】
機体情報送信部27は、降水判定部242により生成される降水信号をドローン100の外部に送信する。他機情報受信部26は、別のドローン100bが有する機体情報送信部27bからの降水信号を受信し、飛行制御部23および薬剤制御部30に伝達する。飛行制御部23は、他機情報受信部26が受信する降水信号に基づいて、退避行動を開始する。ドローン100が着陸している状態の場合は、飛行制御部23はドローン100の離陸を禁止する。さらに、薬剤制御部30は、他機情報受信部26が受信する降水信号に基づいて薬剤の散布を停止する。
【0074】
なお、機体情報送信部27は、降水信号に代えて、自機が測定する気圧を他機情報受信部26bに送信してもよい。この場合、他機情報受信部26は、別のドローン100bからの気圧を降水判定部242に送信する。降水判定部242は、別のドローン100bからの気圧又は気圧の経時変化に基づいて、降水の可能性を検知する。
【0075】
他機情報受信部26および機体情報送信部27を有するドローン100によれば、周辺に存在するドローン同士で互いに情報の授受が可能である。他機情報受信部26および機体情報送信部27は、例えばWi-fiを利用することにより、基地局やクラウドを介して気圧情報を送受信してもよいし、他機情報受信部26および機体情報送信部27が直接通信してもよい。直接通信する方式としては、Bluetooth(登録商標)やZigbee(登録商標)など種々の構成が適用可能である。
【0076】
他機情報受信部26は、ドローン100が通常飛行中、ホバリング中に加えて、着陸している際にも降水信号又は他機に測定される気圧情報を受信することができる。すなわち、ドローン100が着陸している状態で、降水の可能性が検知される場合、飛行制御部23はドローン100を離陸させないようにすることができる。また、操縦器401の機能の一部を制限し、離陸の指令を送信できないようにしてもよい。
【0077】
別のドローン100bにより予測される降水可能性を受信する他機情報受信部26を備える構成によれば、降水判定部242は、ドローン100から離れた地点における降水可能性に基づいて当該ドローン100が薬剤を散布する領域の降水可能性を予測することができる。天候の変化を起こさせる雲は、離れた地点から徐々に近づいてくる場合が多い。したがって、離れた地点における降水可能性の情報を参照することで、より精度よく降水の可能性を予測することができる。
【0078】
予測機情報受信部28は、固定された予測機40により測定される気圧を受信可能な受信部である。予測機40は、ドローン100の飛行空間近傍に配置されている。予測機40は、例えばWi-fiの基地局やRTK-GPSの基地局に設置されている。予測機40は、予測機情報受信部28に気圧情報を送信する。予測機情報受信部28は、受信される気圧を降水判定部242に伝達する。
【0079】
なお、予測機40は、測定する気圧に基づいて降水の可能性を判定する判定部を有していてもよい。予測機40は、降水の可能性が高いと判定した場合、降水信号をドローン100の予測機情報受信部28に送信する。予測機情報受信部28は、予測機40から送信される降水信号を受信し、飛行制御部23および薬剤制御部30に伝達する。また、予測機40は、Web等で公開されている気象情報を参照して降水の可能性を判定し、降水可能性が高い場合は降水信号を予測機情報受信部28に送信してもよい。
【0080】
予測機情報受信部28は、ドローン100が通常飛行中、ホバリング中に加えて、着陸している際にも降水信号又は予測機40により測定される気圧を受信することができる。ドローン100が着陸している状態で、降水の可能性が高いと判定される場合、飛行制御部23はドローン100を離陸させない。予測機情報受信部28の構成によれば、ドローン100が存在している地点から離れた場所における降水の可能性を受信することができる。すなわち、離れた地点から徐々に近づいてくる天候の変化を察知し、当該地点における降水可能性をより正確に予測することができる。
【0081】
蒸発予測部25は、薬剤が散布される領域における薬剤の蒸発のしやすさを判定する機能部である。ドローン100は、水溶液、又は水との混合液である薬剤を霧状に散布する。薬剤は、蒸発しやすい環境に散布すると、空中で薬剤中の水分が蒸発してしまう。多くの場合、薬剤の粒子径は水粒子の粒子径より小さいため、水分を失った薬剤は空中を飛散し、圃場内の所望の地点に定着できないおそれがある。また、薬剤自体が揮発性の高いものである場合、薬剤そのものが蒸発してしまい、所望の地点に定着できないおそれがある。したがって、蒸発予測部25によれば、蒸発しやすい環境を判定し、蒸発のしやすさが所定以上の場合は、薬剤の散布を中止することができる。すなわち、より正確かつ効率よく安全に薬剤散布を実効あらしめることができる。
【0082】
蒸発予測部25は、蒸発測定部251と、蒸発判定部252と、を備える。
【0083】
蒸発測定部251は、薬剤が散布される領域における温度および湿度の少なくとも1個を測定する機能部である。なお、蒸発測定部251は、温度および湿度以外の、蒸発のしやすさに関連する指標を測定してもよい。例えば、蒸発測定部251は、風速を測定してもよい。
【0084】
蒸発判定部252は、蒸発測定部251により測定される温度および湿度の少なくとも1個の測定結果に基づいて薬剤が散布される領域における前記薬剤の蒸発しやすさを判定する。例えば、蒸発判定部252は、温度および湿度の閾値をそれぞれ有し、温度が閾値以上、かつ湿度が閾値以下の場合には、蒸発しやすさが所定以上であると判定する。また、蒸発判定部252は、温度および湿度双方の値を複合的に勘案して、すなわち温度および湿度を含む関数を計算することにより、蒸発のしやすさを判定してもよい。
【0085】
蒸発判定部252は、蒸発しやすさが所定以上であるときに蒸発信号を生成する。そして、蒸発判定部252は、薬剤制御部30に蒸発信号を伝達する。薬剤制御部30は、蒸発信号が伝達されると、薬剤の散布を停止する。また、蒸発判定部252は、飛行制御部23に蒸発信号を伝達する。飛行制御部23は、蒸発信号が伝達されると、飛行規制措置を取るか、飛行中の場合は退避行動を行う。
【0086】
例えば、蒸発しやすい環境であることが予測された場合、まず薬剤制御部30は薬剤の散布を停止し、飛行制御部23はホバリングを行う。蒸発予測部25は、ホバリング中において繰り返し蒸発予測を行い、さらに蒸発しやすさが高まる場合は、飛行制御部23によりドローン100を発着地点406まで飛行させる、通常帰還又は緊急帰還を行ってもよい。
【0087】
蒸発判定部252が蒸発のしやすさを判定する温度および湿度の閾値は、予めドローン100に記憶されている固定された閾値であってもよいし、状況に応じて変更される変動する閾値であってもよい。変動する閾値の場合は、ドローン100に無線又は有線接続される適宜の構成により自動で変動されてもよいし、使用者402により手動で変更可能であってもよい。散布する薬剤の種類によって、蒸発のしやすさが異なる場合があるため、薬剤タンク104に貯留されている薬剤の種類により、閾値が変更されるように構成されていてもよい。この場合、薬剤タンク104又は薬剤タンク104から吐出ノズルに至る経路中に薬剤の種類を判別するセンサが配置され、当該判別センサの判別結果に応じて、あらかじめ薬剤の種類に対応して定められた閾値に自動で変更されてもよい。
【0088】
なお、他機情報受信部26、機体情報送信部27、予測機情報受信部28、および予測機40は、気圧を測定して降水を予測する構成として説明したが、温度および湿度の少なくとも一方を測定して蒸発のしやすさを予測する構成としても同様に動作する。
【0089】
図9に示すように、まず、ドローン100が着陸している状態において、気圧測定部241は気圧を測定する(ステップS1)。
【0090】
降水判定部242は、気圧測定部241が測定する気圧又は気圧の経時変化に基づいて、薬剤が散布される圃場の降水可能性を判定する(ステップS2)。
【0091】
降水判定部242により、降水可能性が高いと判定される場合、ドローン100の離陸を禁止する飛行規制措置をとる(ステップS3)。
【0092】
降水判定部242が降水の可能性が高くないと判定する場合、蒸発測定部251は、温度および湿度の少なくとも一方を測定する(ステップS4)。蒸発判定部252は、温度および湿度の少なくとも一方の測定結果に基づいて、薬剤を散布する領域が蒸発しやすい状況であるか否かを判定する(ステップS5)。蒸発しやすさが所定以上である場合、ドローン100の離陸を禁止する飛行規制措置をとる(ステップS3)。蒸発判定部252により、蒸発しやすさが低いと判定される場合、ドローン100は飛行を開始する(ステップS6)。
【0093】
なお、本実施形態では、降水予測により降水の可能性が高くない場合に蒸発予測を行うものとしたが、先に蒸発予測を行い、蒸発しやすさが高くない場合に降水予測を行ってもよい。以下の説明においても同様である。
【0094】
飛行開始後のホバリング中又は移動中において、気圧測定部241は、常時気圧を測定する(ステップS7)。降水判定部242は、測定される気圧又は気圧の経時変化に基づいて、降水可能性が高いか否かを判定する(ステップS8)。降水可能性が高くない場合、温度および湿度の少なくとも一方を測定し(ステップS9)、蒸発しやすさが高いか否かを判定する(ステップS9)。蒸発しやすさが低いと判定される場合、ステップS7に戻り、ホバリング中又は移動中において気圧測定、降水判定、温度および湿度測定、ならびに蒸発判定、すなわちステップS7乃至S10を繰り返す。降水可能性又は蒸発しやすさが高い場合、薬剤制御部30は薬剤の散布を中止する(ステップS11)。そして、機体情報送信部27は降水信号又は蒸発信号を別のドローン100bに送信する(ステップS12)。また、ドローン100は退避行動を開始する(ステップS13)。
【0095】
なお、ステップS11乃至S13の間において、降水予測および蒸発予測を並行して適宜行ってもよい。特に、退避行動(ステップS13)を行うにあたり、降水の可能性又は蒸発しやすさに応じて、まずホバリングを行い、さらに降水の可能性又は蒸発しやすさが上昇した場合には通常帰還又は緊急帰還を行うなど、随時行われる予測結果に基づいて、順次異なる退避行動を行ってもよい。
【0096】
本構成によれば、圃場に薬剤が定着されず、流されてしまうような降水現象の発生を予測して薬剤散布を停止することにより、薬剤散布の実効性を担保することができる。
【0097】
図10に示すように、まず、ドローン100の他機情報受信部26が別のドローン100bからの降水信号又は蒸発信号を受信する(ステップS21)。なお、他機情報受信部26が降水信号および蒸発信号を受信するのは、計画通りの飛行である通常飛行、ホバリング中、および着陸している状態のいずれであってもよい。ドローン100が飛行中か着陸している状態かを判断する(ステップS22)。ドローン100が飛行中の場合、薬剤制御部30は薬剤の散布を行っている場合には薬剤の散布を停止する(ステップS23)。また、飛行制御部23は退避行動を開始する(ステップS24)。
【0098】
ドローン100が着陸している状態の場合は、飛行制御部はドローン100の離陸を禁止し、離陸を行わないようにする飛行規制措置を行う(ステップS25)。降水が予測されることにより、又は蒸発が予想されることにより、ドローン100が離陸すべきでない旨を操縦器401に表示する。また、操縦器401の操作の一部を制限し、離陸を伴う命令を入力し得ないようにしてもよい。
【0099】
図11に示すように、まず、ドローン100の予測機情報受信部28は、予測機40が測定した気圧を受信する(ステップS31)。なお、予測機情報受信部28が降水信号を受信するのは、計画通りの飛行である通常飛行、ホバリング中、および着陸している状態のいずれであってもよい。降水判定部242は、予測機情報受信部28が受信する気圧に基づいて降水可能性が高いか否かを判定する(ステップS32)。
【0100】
降水判定部242により降水可能性が低いと判定される場合、予測機情報受信部28は、予測機情報受信部28から温度および湿度の少なくとも一方を受信する(ステップS33)。蒸発判定部252は予測機情報受信部28からの情報に基づいて、薬剤が散布される圃場における薬剤の蒸発しやすさを判定する(ステップS34)。蒸発しやすさが低いと判定される場合、ステップS31に戻る。
【0101】
降水判定部242により降水可能性が高いと判定される場合、又は蒸発判定部252により蒸発しやすさが高いと判定される場合、ドローン100が飛行中か着陸している状態かを判断する(ステップS35)。ドローン100が飛行中又はホバリング中の場合、薬剤制御部30は、薬剤の散布を行っている場合には薬剤の散布を停止する(ステップS36)。また、飛行制御部23は、退避行動を開始する(ステップS37)。
【0102】
ドローン100が着陸している状態の場合、飛行制御部23はドローン100の離陸を禁止し、ドローン100の飛行は行わないようにする飛行規制措置を行う(ステップS38)。また、降水の可能性が高いためドローン100が離陸すべきでない旨を操縦器401に表示してもよい。さらに、操縦器401の操作の一部を制限し、離陸を伴う命令を入力し得ないようにしてもよい。
【0103】
●薬剤の吐出制御システム(2)●
本発明に係る薬剤の吐出制御システムの第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。第2実施形態における薬剤の吐出制御システムは、降水信号又は蒸発信号を受信した際に、安全行動、すなわち退避行動又は飛行規制措置を行うか否かを使用者に確認するステップを有する。特に説明がない場合、第2実施形態の吐出制御システムの構成は、第1実施形態のものと同一である。
【0104】
図12に示すように、まず、ドローン100が着陸している状態において、気圧測定部241は気圧を測定する(ステップS1)。
【0105】
降水判定部242は、気圧測定部241が測定する気圧又は気圧の経時変化に基づいて、薬剤が散布される圃場の降水可能性を判定する(ステップS2)。
【0106】
降水判定部242が降水の可能性が高くないと判定する場合、蒸発測定部251は、温度および湿度の少なくとも一方を測定する(ステップS4)。蒸発判定部252は、温度および湿度の少なくとも一方の測定結果に基づいて、薬剤を散布する領域が蒸発しやすい状況であるか否かを判定する(ステップS5)。蒸発判定部252により、蒸発しやすさが低いと判定される場合、ドローン100は飛行を開始する(ステップS6)。
【0107】
降水判定部242により降水可能性が高いと判定される場合、又は蒸発判定部252により蒸発しやすさが高いと判定される場合、使用者402にその旨が通知される(ステップS111)。そして、使用者402により入力される、薬剤散布に関する動作を継続するか否かを示す指令を待機する。使用者402からの指令が入力され、飛行を行わない旨の指令があった場合、飛行規制措置を行う(ステップS3)。入力された指令が飛行を開始する旨の指令であった場合、ドローン100は飛行を開始する(ステップS6)。
【0108】
飛行開始後のホバリング中又は移動中において、気圧測定部241は、常時気圧を測定する(ステップS7)。降水判定部242は、測定される気圧又は気圧の経時変化に基づいて、降水可能性が高いか否かを判定する(ステップS8)。降水可能性が高くない場合、温度および湿度の少なくとも一方を測定し(ステップS9)、蒸発しやすさが高いか否かを判定する(ステップS9)。蒸発しやすさが低いと判定される場合、ステップS7に戻り、ホバリング中又は移動中において気圧測定、降水判定、温度および湿度測定、ならびに蒸発判定、すなわちステップS7乃至S10を繰り返す。
【0109】
降水可能性又は蒸発しやすさが高い場合、ドローン100又は操縦器401により使用者402にその旨が通知される(ステップS111)。そして、使用者402により入力される、薬剤散布に関する動作を継続するか否かを示す指令を待機する。使用者402からの指令が入力され、薬剤散布を中止する散布停止指令であった場合、薬剤散布を中止する(ステップS11)。そして、機体情報送信部27は降水信号又は蒸発信号を別のドローン100bに送信する(ステップS12)。また、ドローン100は退避行動を開始する(ステップS13)。使用者402から薬剤散布を継続する旨の入力があった場合、ドローン100は薬剤散布を継続し、ステップS7に戻る。
【0110】
図13に示すように、まず、ドローン100の他機情報受信部26が別のドローン100bからの降水信号又は蒸発信号を受信する(ステップS21)。なお、他機情報受信部26が降水信号および蒸発信号を受信するのは、計画通りの飛行である通常飛行、ホバリング中、および着陸している状態のいずれであってもよい。次いで、使用者402にその旨が通知される(ステップS211)。そして、使用者402により入力される、薬剤散布に関する動作を継続するか否かを示す指令を待機する。使用者402からの指令が入力され、薬剤散布を中止する散布停止指令であった場合、ドローン100が飛行中か着陸している状態かを判断する(ステップS22)。ドローン100が飛行中の場合、薬剤制御部30は薬剤の散布を行っている場合には薬剤の散布を停止する(ステップS23)。また、飛行制御部23は退避行動を開始する(ステップS24)。
【0111】
ドローン100が着陸している状態の場合は、飛行制御部はドローン100の離陸を禁止し、離陸を行わないようにする飛行規制措置を行う(ステップS25)。
【0112】
図14に示すように、まず、ドローン100の予測機情報受信部28は、予測機40が測定した気圧を受信する(ステップS31)。なお、予測機情報受信部28が降水信号を受信するのは、計画通りの飛行である通常飛行、ホバリング中、および着陸している状態のいずれであってもよい。降水判定部242は、予測機情報受信部28が受信する気圧に基づいて降水可能性が高いか否かを判定する(ステップS32)。
【0113】
降水判定部242により降水可能性が低いと判定される場合、予測機情報受信部28は、予測機情報受信部28から温度および湿度の少なくとも一方を受信する(ステップS33)。蒸発判定部252は予測機情報受信部28からの情報に基づいて、薬剤が散布される圃場における薬剤の蒸発しやすさを判定する(ステップS34)。蒸発しやすさが低いと判定される場合、ステップS31に戻る。
【0114】
降水判定部242により降水可能性が高いと判定される場合、又は蒸発判定部252により蒸発しやすさが高いと判定される場合、使用者402にその旨が通知される(ステップS311)。そして、使用者402により入力される、薬剤散布に関する動作を継続するか否かを示す指令を待機する。使用者402からの指令が入力され、薬剤散布を中止する散布停止指令であった場合(ステップS312)、ドローン100が飛行中か着陸している状態かを判断する(ステップS35)。ドローン100が飛行中又はホバリング中の場合、薬剤制御部30は、薬剤の散布を行っている場合には薬剤の散布を停止する(ステップS36)。また、飛行制御部23は、退避行動を開始する(ステップS37)。
【0115】
ドローン100が着陸している状態の場合、飛行制御部23はドローン100の離陸を禁止し、ドローン100の飛行は行わないようにする飛行規制措置を行う(ステップS38)。
【0116】
図12乃至図14で説明した第2実施形態において、薬剤散布に関する動作を継続する旨の入力が行われた場合、降水可能性又は蒸発しやすさの報知を行う閾値を上げる変更が自動で行われてもよい。また、一度薬剤散布を継続する旨の入力が行われた場合、報知を所定時間停止する構成を有していてもよい。上述のような構成によれば、薬剤散布の継続が選択された場合、降水可能性又は蒸発しやすさの指標が変化しない場合において繰り返し報知が行われるのを防ぐことができる。また、使用者402からの入力履歴に基づいて、最適な閾値を自動で学習するように構成されていてもよい。
【0117】
降水可能性又は蒸発しやすさが所定以上であることを使用者402に報知し、使用者402による確認入力に基づいて動作を決定する本構成によれば、ドローン100が飛行を開始するか、もしくは飛行中又はホバリング中において薬剤散布を行うかどうかを使用者402が決定することができる。薬剤散布を行う圃場特有の事情や、使用者402が入手した各種情報、又は使用者402の事情を加味して、柔軟に薬剤散布を行うことができる。
【0118】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、薬剤散布を行う農業用機械全般に適用可能である。特に、自律飛行を行うドローンに適用可能である。また、自律的に動作する、地面を自走する農業用機械にも適用可能である。
【0119】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかる薬剤の吐出制御システムにおいては、降水又は蒸発が起こり得る圃場への薬剤散布に対して、より正確に効率よく薬剤を散布する吐出制御システムを提供することができる。また、圃場および人体に対して安全性の高い吐出制御システムを提供することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14