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  • 特許-樹脂製収容体の製造方法 図1
  • 特許-樹脂製収容体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】樹脂製収容体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G10K11/16 120
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021143172
(22)【出願日】2021-09-02
(62)【分割の表示】P 2018115520の分割
【原出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2021192115
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506330977
【氏名又は名称】株式会社 照和樹脂
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大川 康夫
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-294048(JP,A)
【文献】実開昭61-011556(JP,U)
【文献】特開2009-235761(JP,A)
【文献】特開2009-150932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の可撓性の樹脂フィルムから形成されている第1部材であって、複数の凹部を有する第1部材、及び、1枚の可撓性の樹脂フィルムで形成されているシート状の第2部材であって、前記複数の凹部を封止して前記第1部材とで互いに区画された複数の中空部を形成し、前記第1部材とで前記複数の中空部のそれぞれに複数の吸音材のそれぞれを収容する第2部材を備える樹脂製収容体の製造方法であって、
1枚の可撓性の樹脂フィルムに真空成形法に前記複数の凹部を形成して、前記第1部材を準備する工程と、
前記複数の凹部の中に前記複数の吸音材が充填された前記複数の凹部を前記第2部材により封止する工程と、
を含む樹脂製収容体の製造方法。
【請求項2】
前記第1部材における前記複数の凹部同士の間の領域には、前記凹部に沿って延在する分割用の線が形成されている、
請求項1に記載の樹脂製収容体の製造方法。
【請求項3】
前記複数の凹部のそれぞれは、規則的に並べられている、
請求項1又は2に記載の樹脂製収容体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を吸収する吸音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音を防いだり室内の静寂性を高めるために、音を吸収及び/又は遮断する部材が開発されている。例えば特許文献1には、防音シートとメッシュシートの間に、吸音材を収容したパックを配置したフレキシブル防音・吸音シートが開示されている。特許文献1において、吸音材には粒状の多孔質材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-235761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、吸音部材を低コストで製造することを検討した。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、吸音部材の製造コストを下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、可撓性の樹脂で形成されており、互いに区画された複数の中空部を有している部材と、
前記複数の中空部に収容されている粒状の組成物と、
を備え、
前記粒状の組成物は、紙又はパルプと、可撓性の樹脂とを混練したものであり、
前記部材は、
複数の凹部を有しているシート状の第1部材と、
前記複数の凹部を封止するシート状の第2部材と、
を有しており、
前記中空部は、前記凹部と前記第2部材によって囲まれて領域である吸音部材が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸音部材の製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る吸音部材の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る吸音部材10の平面図である。図2は、図1のA-A断面図である。吸音部材10は、部材100及び粒状の組成物200を備えている。部材100は、可撓性の樹脂で形成されており、互いに区画された複数の中空部130を有している。粒状の組成物200は複数の中空部130のそれぞれに収容されており、紙又はパルプと、可撓性の樹脂とを混練したものである。以下、吸音部材10について詳細に説明する。
【0010】
図2に示すように、部材100は、第1部材110及び第2部材120を有している。第1部材110はシート状の部材であり、複数の凹部112を有している。第2部材120もシート状の部材であり、凹部112を封止している。第2部材120は、第1部材110の全面に一枚の第2部材120取り付けられていてもよいし、複数の凹部112のそれぞれに、第2部材120が個別に取り付けられていてもよい。
【0011】
詳細には、第1部材110及び第2部材120は、いずれも樹脂フィルムを用いて形成されている。この樹脂フィルムは、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、及びPETを用いて形成されているが、他の樹脂を用いて形成されていてもよい。そして第1部材110の凹部112は、真空成形法を用いて形成されている。第1部材110は、第2部材120と同じ厚さの領域を有していてもよい。この領域は、例えば隣り合う2つの凹部112の間の領域である。この場合、第1部材110の材料として、第2部材120と同じ樹脂フィルムを用いることができるため、吸音部材10の製造コストを低くすることができる。ただし、第1部材110は第2部材120より薄くてもよいし、第2部材120より厚くてもよい。
【0012】
そして、第2部材120は、第1部材110のうち凹部112が形成されていない領域114に固定されている。この固定方法としては、接着剤を用いる方法や溶着などがある。第2部材120が第1部材110に固定されることにより、中空部130が形成される。言い換えると、中空部130は、凹部112と第2部材120に囲まれた領域である。
また、第2部材120と第1部材110が互いに固定されている部分は、凹部112を隙間なく囲んでいるのが好ましい。このようにすると、第1部材110と第2部材120の隙間から凹部112の中に水分や異物が入ることを抑制できる。
【0013】
複数の中空部130の中には、粒状の組成物200が複数位置している。粒状の組成物200は吸音材として機能する。粒状の組成物200は、上記したように、紙又はパルプと、可撓性の樹脂とを混練したものであり、例えば以下のようにして製造される。この製造方法において、紙又はパルプとしては、壁紙または壁紙の廃材(以下、壁紙と記載)が用いられている。ただし、紙又はパルプとして他の物を用いてもよい。
【0014】
まず、原料となる壁紙を準備する。壁紙の廃材は、例えば建物を解体するとき、リフォームするとき、壁紙を施工するとき、及び工場で壁紙を製造するときに出てくる。近年の壁紙には、紙を主素材としたもの(紙系壁紙)、有機質の繊維を主成分としたもの(繊維系壁紙)、紙に塩化ビニルなどの熱可塑性の樹脂からなる表面化粧層を紙の表面に設けたもの(塩化ビニル樹脂系壁紙やプラスチック系壁紙)などがある。本実施形態では、これらを分別せずに原料として使用してもよいし、特定の物のみを使用してもよい。特定のものを使用する場合、例えば塩化ビニル樹脂系壁紙及びプラスチック系壁紙の少なくとも一方が好適である。そして、原料となる壁紙は、紙又はパルプを25重量%以上35重量%以下含み、かつ、熱可塑性の樹脂を25重量%以上35重量%以下含んでいるのが好ましい。そして、必要に応じて、粉砕機を用いて壁紙を粉砕する。
【0015】
次いで、準備した壁紙と、熱可塑性の樹脂(例えば軟質樹脂)とを、混練機能を有する装置、例えばベント付き二軸押出装置に入れ、加熱しながら混練する。混練時に添加される樹脂は、原料となる壁紙に最も多く含まれる樹脂、例えば塩化ビニルであるが、これに限定されない。また、添加される樹脂の量は、例えば壁紙の5%以上15%以下である。また、壁紙が全体の80重量%以上95重量%以下、添加される樹脂が全体の5重量%以上20重量%以下、合計で100重量%以下であってもよい。そして、この混練の際、混練物は、混練物が含有している樹脂のガラス転移温度以上に加熱される。
【0016】
そして、壁紙及び樹脂を十分に混練したら、これらを粒状に成形するとともに、樹脂のガラス転移点以下、例えば室温に冷却する。この成形及び冷却は、例えばホットメルト粉砕機を用いて行われる。このようにして、実施形態に係る組成物が製造される。なお、本実施形態における粒状には、ペレット状のものや、フレーク状のものが含まれる。また、組成物は、既定の大きさのメッシュ、例えば8φのメッシュを通過したものであるのが好ましい。
【0017】
この組成物は、原料となる壁紙の組成と比較して、樹脂の含有量が多くなっている。具体的には、この組成物は、パルプ又は紙を25重量%以上35重量%以下、熱可塑性の樹脂を35重量%以上45重量%以下含んでいる。また、比重は1.4g/cm3以上1.7g/cm3以下である。そしてこの組成物は、紙又はパルプを含んでおり、かつ製造時に十分混練されている。このため、この組成物は吸音材として好適である。
【0018】
本実施形態において、部材100の少なくとも第1部材110には、分割用の線12が形成されている。分割用の線12は、第1部材110及び第2部材120の双方に設けられているのが好ましい。分割用の線12は、例えばミシン目であり、部材100を複数に分割するために設けられている。
【0019】
分割用の線12は、中空部130と重ならない部分、すなわち隣り合う中空部130の間を、中空部130に沿って延在している。図1に示す例において、複数の中空部130は格子状に並んでいる。そして分割用の線12は、中空部130の間を延在している。言い換えると、部材100において、複数の分割用の線12が第1の方向(図1の上下方向)及び第2の方向(図1の左右方向)に延在している。すなわち、部材100は複数の分割用の線12によって複数の矩形の領域に分けられている。そしてこれら複数の矩形の領域のそれぞれに、中空部130が設けられている。
【0020】
分割用の線12を設けると、ユーザは、吸音部材10を分割用の線12に沿って切断することにより、吸音部材10を必要な大きさにすることができる。なお、吸音部材10には分割用の線12が設けられていなくてもよい。この場合、ユーザは、ハサミやカッターを用いて吸音部材10を必要な大きさに分割すればよい。
【0021】
なお、分割用の線12の両脇において、第1部材110及び第2部材120は互いに接合されているのが好ましい。このようにすると、分割用の線12に沿って部材100を分割しても、第1部材110と第2部材120が分離することを抑制できる。
【0022】
次に、吸音部材10の製造方法について説明する。まず、第1部材110の材料となる樹脂フィルムを準備し、この樹脂フィルムを加工することにより、凹部112を形成する。これにより、第1部材110が形成される。次いで、凹部112の中に粒状の組成物200を充填し、その後、凹部112を第2部材120で封止する。その後、第1部材110及び第2部材120に、これらを貫通するミシン目を形成する。このミシン目が、分割用の線12となる。ただし、分割用の線12が第1部材110にのみ形成されている場合、ミシン目は、凹部112に粒状の組成物200を充填する前、さらに好ましくは凹部112を形成する前に、形成される。
【0023】
以上、本実施形態によれば、吸音部材10は、部材100及び粒状の組成物200を用いて形成されている。粒状の組成物200は、部材100の中空部130に収容されている。そして、部材100は、第1部材110及び第2部材120を用いて形成されている。中空部130は、第1部材110の凹部112と第2部材120によって囲まれた空間である。このため、吸音部材10の製造を容易に行え、その結果、10の製造コストは低くなる。
【0024】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 吸音部材
12 線
100 部材
110 第1部材
112 凹部
114 領域
120 第2部材
130 中空部
200 組成物
図1
図2