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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】光硬化性人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/87 20060101AFI20220107BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20220107BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/46
A61K8/81
A61K8/55
A61K8/31
A61K8/41
A61Q3/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017121821
(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公開番号】P2019006689
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】中小路 裕子
(72)【発明者】
【氏名】田中 久生
(72)【発明者】
【氏名】松本 亜希子
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533716(JP,A)
【文献】特開2014-005260(JP,A)
【文献】特開2015-131791(JP,A)
【文献】特開平11-209244(JP,A)
【文献】国際公開第2005/032500(WO,A1)
【文献】特表2008-511745(JP,A)
【文献】特開平02-133415(JP,A)
【文献】特開2004-307767(JP,A)
【文献】特開2014-023590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 29/18、31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物
(C)(A)成分及び(B)成分に該当しない、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
(D)光重合開始剤
(E)連鎖移動剤、
を含有することを特徴とする光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
前記(E)連鎖移動剤が、テルペノイド系化合物または、α―メチルスチレンダイマー誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、(A)及び(B)(C)成分の合計を100重量部として30~70重量部、
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物であり、同3~20重量部、
(C)(A)成分及び(B)成分に該当しない、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物であり、同20~50重量部、
(D)光重合開始剤であり、同0.5~5.0重量部、
(E)連鎖移動剤であり、同0.001~1.0重量部、
を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項4】
(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、(A)及び(B)(C)成分の合計を100重量部として40~60重量部、
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物であり、同4~18重量部、
(C)(A)成分及び(B)成分に該当しない、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物であり、同28~42.5重量部、
(D)光重合開始剤であり、同0.5~3.0重量部、
(E)連鎖移動剤であり、同0.01~0.5重量部、
を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項5】
さらに光重合促進剤が含有されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項6】
さらに添加剤が含まれていることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性人工爪組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面光沢性、操作性、接着耐久性、低硬化発熱性及び防汚性に優れた光硬化性人工爪組成物である。爪及びジェルネイル材料及びアクリルネイル材料、ネイルマニキュア材料等に代表されるネイル材料上に筆等を使用して塗布及び被覆を行い、紫外線及び/または可視光線で硬化させて使用する光硬化性人工爪組成物である。
【0002】
本発明の光硬化性人工爪組成物を使用することによって、美的外観に優れた表面光沢性を容易に得る事が出来ると共に、塗布・被覆及び光硬化に基づく簡便且つ早急な操作性が得られる。さらに、本発明の光硬化性人工爪組成物は長期間の日常生活に耐え得る強度を有し、長期的な表面光沢性の維持及び良好な防汚性を有している。
【0003】
加えて、本発明の光硬化性人工爪組成物を使用することによって低硬化発熱性の光硬化性人工爪組成物が得られ、光重合に伴う硬化熱による熱痛を低減する事が可能である。
【背景技術】
【0004】
本発明の光硬化性人工爪組成物は、一般にジェルネイルと呼ばれる爪化粧料の一つであり、使用方法や材料特性に応じてベースジェル、カラージェル、トップジェル、イクステンションジェル等と呼ばれる場合もある。ジェルネイル材料においては使用方法に応じて市場要求が異なる場合もあり、特にベースジェルは爪とジェルネイルを長期間にわたり接着する事が出来る優れた接着耐久性を求められる。また、トップジェルは優れた表面光沢を発現し長期間にわたり維持する事が出来る優れた表面光沢維持性が求められる。一方、使用方法が異なってもネイルアート等を行う際の操作性や粘性、光照射時の重合に伴う硬化熱の低減、長期間美的外観を保持可能な強度等はジェルネイル材料に求められる特性である。
【0005】
加えて、光照射時間の短縮に関しても研究がなされており、最近では低照度蛍光管ランプを応用した光照射装置から高照度可視光LEDライトへの転換がなされている。ジェルネイル用光照射装置として、高照度可視光LEDライトが用いられるようになり、ジェルネイルの硬化時間が大幅に短縮され施術時間の短縮が可能となる一方で、光重合に伴う硬化熱による熱痛が問題となっている。光重合に伴う硬化熱による熱痛低減方法としては、ジェルネイルの塗布量や光照射時間、照射強度等の制御が提案され、施術現場において実施されているのが現状であり、低硬化発熱性のジェルネイル材料の開発が望まれている。
【0006】
特許文献1に記載のネイルコーティング組成物は少なくとも1つのアクリレートモノマーと組み合わせたアクリレート末端オリゴマーを含む放射線硬化性成分と、前記ネイルコーティング組成物の約5~約90重量%の量で存在するチオール成分とを含み、前記チオール成分は、2つ以上のSH基を含む化合物を含み、前記チオール成分が二官能性および/または三官能性チオールからなる場合には、前記ネイルコーティング組成物の少なくとも15%の量で存在する、ネイルコーティング組成物と、(ii)爪に前記ネイルコーティング組成物を適用する手段とを備えることを特徴とするパッケージである。当該発明は改善された耐欠け性、爪への良好な接着性、高光沢仕上げ、および短い指触乾燥時間を有するネイルコーティング組成物であり、光重合に伴う硬化熱の低減に関する検討はなされていない。
【0007】
特許文献2では、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物と、1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物と、光重合開始剤とを含む人工爪原料組成物、及び当該人工爪原料組成物の硬化方法が開示されている。当該発明は接着剤およびプライマーを用いることなく、人工爪と自爪の接着性を長期間保つことが可能であり、かつ、人工爪を自爪から容易に除去可能な人工爪原料組成物であり、同様に光重合に伴う硬化熱の低減に関する検討はなされていない。
【0008】
特許文献3では、20~70重量%の脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーと、10~50重量%のポリエステルアクリレートオリゴマーと、10~50重量%の低刺激性アクリレートモノマーと、2~11重量%の光重合開始剤と、1~4.5重量%のチオールモノマーとを含み、前記低刺激性アクリレートモノマーがトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)とイソボルニルアクリレート(IBOA)の組み合わせである、ジェルポリッシュ組成物が開示されている。当該発明は、ヒドロキシアクリレートやエチルメチルアクリレートのような刺激性の反応性(メタ)アクリレートモノマーを含有しないことを特徴とし、皮膚に対し低刺激性又は非刺激性であり、爪に対する優れた接着性を有するジェルポリッシュ組成物を提供しているが、光重合に伴う硬化熱の低減に関する検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2014-533716号公報
【文献】特開2014-005260号公報
【文献】特開2015-131791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は表面光沢性、操作性、接着耐久性、低硬化発熱性及び防汚性に優れた光硬化性人工爪組成物である。爪及びジェルネイル材料及びアクリルネイル材料、ネイルマニキュア材料等に代表されるネイル材料上に筆等を使用して塗布及び被覆を行い、紫外線及び/または可視光線で硬化させて使用する光硬化性人工爪組成物である。
【0011】
本発明の光硬化性人工爪組成物を使用することによって、美的外観に優れた表面光沢性を容易に得る事が出来ると共に、塗布・被覆及び光硬化に基づく簡便且つ早急な操作性が得られる。また光硬化後の表面硬化性が良好であり、紫外線及び/または可視光線を使用して硬化させた後に、ワイプ等を使用して硬化物表面の未重合層を除去する工程が不要な光硬化性人工爪組成物である。
【0012】
さらに、本発明の光硬化性人工爪組成物は長期間の日常生活に耐え得る強度を有し、長期的な表面光沢性の維持及び良好な防汚性を有している。加えて、本発明の光硬化性人工爪組成物を使用することによって低硬化発熱性の光硬化性人工爪組成物が得られ、光重合に伴う硬化熱による熱痛を低減する事が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく以下の知見を見出した。
1.
(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物
(C)(A)成分及び(B)成分に該当しない、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
(D)光重合開始剤
(E)連鎖移動剤、
を含有することを特徴とする光硬化性人工爪組成物。
2.
(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、(A)及び(B)(C)成分の合計を100重量部として30~70重量部、
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物であり、同3~20重量部、
(C)(A)成分及び(B)成分に該当しない、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物であり、同20~50重量部、
(D)光重合開始剤であり、同0.5~5.0重量部、
(E)連鎖移動剤であり、同0.001~1.0重量部、
を含有することを特徴とする上記1に記載の光硬化性人工爪組成物。
3.
(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、(A)及び(B)(C)成分の合計を100重量部として40~60重量部、
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物であり、同4~18重量部、
(C)(A)成分及び(B)成分に該当しない、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物であり、同28~42.5重量部、
(D)光重合開始剤であり、同0.5~3.0重量部、
(E)連鎖移動剤であり、同0.01~0.5重量部、
を含有することを特徴とする上記1~2に記載の光硬化性人工爪組成物。
4.さらに光重合促進剤が含有されていることを特徴とする、上記1~3に記載の光硬化性人工爪組成物。
5.さらに添加剤が含まれていることを特徴とする、上記1~4に記載の光硬化性人工爪組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光硬化性人工爪組成物を使用することによって、美的外観に優れた表面光沢性を容易に得る事が出来ると共に、塗布・被覆及び光硬化に基づく簡便且つ早急な操作性が得られる。また光硬化後の表面硬化性が良好であり、紫外線及び/または可視光線を使用して硬化させた後に、ワイプ等を使用して硬化物表面の未重合層を除去する工程が不要な光硬化性人工爪組成物である。さらに、本発明の光硬化性人工爪組成物は長期間の日常生活に耐え得る強度を有し、長期的な表面光沢性の維持及び良好な防汚性を有している。加えて、本発明の光硬化性人工爪組成物を使用することによって低硬化発熱性の光硬化性人工爪組成物が得られ、光重合に伴う硬化熱による熱痛を低減する事が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において(メタ)アクリレート基とは、アクリレート基及びメタクリレート基の包括的表記で
ある。
本発明において、(A)1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個以上のウレタン結合を有する既知のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであれば、広く使用できる。例えば、エチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、ブチレングリコ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、1,6-ヘキサンジオ-ル、トリメチロ-ルプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリト-ル、ポリエステルポリオ-ル、ポリカプロラクトンポリオ-ル及びポリエ-テルポリオ-ルなどの水酸基含有化合物とポリイソシアネ-ト化合物とを反応させてポリウレタンポリオ-ル(1分子中に2個以上の水酸基を含有するポリウレタン化合物)を製造し、次いでポリウレタンポリオ-ルとイソシアネ-ト基含有アクリレ-トモノマ-とをアクリル重合反応を防ぎながら夫々を反応させることにより得られる。
または、ポリウレタンポリイソシアネ-ト(1分子中に2個以上のイソシアネ-ト基を含有するポリウレタン化合物)を製造し、次いでポリウレタンポリイソシアネ-トと(メタ)アクリル酸や水酸基含有アクリレ-トモノマ-とをアクリル重合反応を防ぎながら夫々を反応させることにより得られる。
ここで、該オリゴマ-(A)は水酸基を含有していてもしていなくてもよい。
【0016】
上記ポリイソシアネ-ト化合物としては好ましい例として、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、トリメチレンジイソシアネ-ト、1,4-テトラメチレンジイソシアネ-ト、ペンタメチレンジイソシアネ-ト、リジンジイソシアネ-トなどの脂肪族ポリイソシアネ-ト類、イソホロンジイソシアネ-ト、4-4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネ-ト)などの脂環式ポリイソシアネ-ト類、これらのポリイソシアネ-トのビウレットタイプ付加物、及びイソシアヌル環タイプ付加物などが挙げられる。
イソシアネ-ト基含有アクリレ-トモノマ-としては、例えばイソシアナトエチル(メタ)アクリレ-ト等を挙げることができる。
【0017】
また、水酸基含有アクリレ-トモノマ-としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ-ト、(ポリ)アルキレングリコ-ルモノアクリレ-ト等を挙げる事ができる。さらにこれらのモノマ-とラクトン(例えば、ε-カプロラクトン等)との付加物なども挙げることができる。
【0018】
本発明における(A)成分の含有量としては、(A)、(B)及び(C)成分の合計を100重量部として、特に30~70重量部の範囲が好ましく、より好ましくは40~60重量部である。(A)成分をこれら
範囲内の含有量で使用した場合は、さらに良好な光沢性及び耐着色性、操作性を得ることができる。更に(A)成分としては少なくとも1種類以上含まれていればよく、その組合せは2種類にとどまらず3種類以上であってもよい。
【0019】
本発明における(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物としては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,3-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、3,6-ジクロロ-1,2-ベンゼンジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、テトラエチレングリコールビス(3-
メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジメルカプトジエチルスルフィド、1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、テトラキス(7-メルカプト-2,5-ジチアヘプチル)メタン、トリチオシアヌル酸、1,2-ベンゼンジメタン、チオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)ブタン、1,1-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)イソブタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-5-メチルフェニル)プロパン、ビス(2-(2-メルカプトプロポキシ)-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-3-t-ブチルフェニル)プロパン、トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、ビス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)プロパン、トリス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、及びこれらのアルキルビニールエーテル付加物等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。これら多官能チオール化合物は、例えば、市販品を用いても良いし、適宜合成しても良い。市販品として例えば、SC有機化学社製のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、昭和電工社製のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(商品名カレンズMT(登録商標)PE1)、昭和電工社製のトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、昭和電工社製の1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(商品名カレンズMT(同上)NR1)等があげられる。
【0020】
本発明の光硬化性人工爪組成物において(B)成分の含有量は、(A)、(B)及び(C)成分の合計を100重量部として、通常は3~20重量部とすることが好ましく、特に4~18重量部とすることがより好ましい。これらかかる範囲内に設定することによって、さらに美的外観に優れた表面光沢性を容易に得る事が出来ると共に、光硬化後の表面硬化性が良好であり、紫外線及び/または可視光線を使用して硬化させた後に、ワイプ等を使用して硬化物表面の未重合層を除去する工程が不要な光硬化性人工爪組成物を調製することが出来る。
【0021】
(C)1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物として、(A)成分及び(B)成分に該当しないラジカル重合性化合物を用いる。(C)成分として使用できるラジカル重合性化合物は、特に限定されず、例えば重合性官能基の個数で分類すると、以下のような化合物が例示される。
【0022】
1個の重合性官能基を有する化合物として、例えばメトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサフタル酸、ステアリル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
2個の重合性官能基を有する化合物として、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
3個以上の重合性官能基を有する化合物として、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
(C)成分として、上記ラジカル重合性化合物以外に人工爪組成物の目的に応じて他のラジカル重合性化合物、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性官能基を有するオリゴマー又はポリマーを用いても良い。また、酸性基、フルオロ基等の置換基を同一分子内に有していても良い。ここで、分子内に少なくとも1個以上の重合性官能基を有するオリゴマー又はポリマーとしては、例えばウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、アクリルオリゴマー、ポリエステルオリゴマー等の公知のオリゴマー、又はウレタンポリマー、エポキシポリマー、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー等の公知のポリマーが使用できる。
【0026】
これらの(C)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、特定の(C)成分の粘性が室温で極めて高い場合、あるいは固体である場合は、別の(C)成分として低粘度のラジカル重合性化合物と組み合わせて混合物として好適に使用することができる。
【0027】
(C)成分の含有量は(A)、(B)及び(C)成分の合計を100重量部として、通常は20~50重量部とすることが好ましく、特に28~42.5重量部とすることがより好ましい。これらかかる範囲内に設定することによって、さらに優れた表面光沢性、操作性、接着耐久性、低硬化発熱性及び防汚性を付与することができる。
【0028】
本発明において、(D)光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス-(η6-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1,1-ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、メチルベンゾイルホルメート、ミヒラーズケトン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、tert-ブチルアントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ジメチルベンジルケタール等、数多く挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。本発明における前記光重合開始剤は、一般に広く利用されている光重合開始剤でも良い。例えば、可視光線を利用する光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、商品名ルシリン(LUCIRIN:登録商標)TPO)、UVを利用する光重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF社製、商品名ダロキュア(登録商標)1173)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製、商品名イルガキュア(登録商標)184)が広く利用されている。
【0029】
(D)成分の含有量は、用いる(D)成分の種類等に応じて適宜設定することができるが、(A)~(C)成分の合計を100重量部として、通常は0.5~5重量部とすることが好ましく、特に0.5~3重量部とすることがより好ましい。これらかかる範囲内に設定することによって、さらに優れた光硬化性を付与することができる。
【0030】
また本発明の光硬化性人工爪組成物に光重合促進剤を含有して用いることも好ましい。特に第三級アミンを用いることが好ましい。具体的には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-n-ブチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、m-クロロ-N,N-ジメチルアニリン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N-ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノフェニルアルコール、p-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジメチル-3,5-キシリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-α-ナフチルアミン、N,N-ジメチル-β-ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’-(n-ブチルイミノ)ジエタノール等を使用することができる。
【0031】
光重合促進剤を使用する場合の含有量は、用いる光重合促進剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、(A)~(C)成分の合計を100重量部として、通常は0.1~5.0重量部とすることが好ましく、特に0.1~2.0重量部とすることがより好ましい。これらかかる範囲内に設定することによって、さらに優れた表面硬化性や内部硬化性を発現すると共に、低い黄変性を有するという効果を得ることができる。
【0032】
本発明の光硬化性人工爪組成物に用いる(E)連鎖移動剤は、具体的に例示すると、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタンなどのメルカプタン化合物、リモネン、ミルセン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、β-ピネン、α-ピネンなどのテルペノイド系化合物、α-メチルスチレンダイマー(2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン)誘導体など、公知の化合物が何等制限無く使用することができる。これらの連鎖移動剤の中でもテルペノイド系化合物、α-メチルスチレンダイマー誘導体が特に好ましい。具体的にはα-テルピネン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンが特に好ましい。また、これら連鎖移動剤は、1種だけでなく2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
これら連鎖移動剤の添加量は(A)~(C)成分の合計を100重量部として、0.001~1.0重量部であることが好ましく、また、特に0.01重量部以上0.5重量部以下であることが好ましい。これらかかる範囲に設定することによって、さらに光重合に伴う硬化熱による熱痛を低減する事ができ、機械的強度が担保される。
【0034】
〔その他の成分〕
本発明の光硬化性人工爪組成物では、上記(A)~(E)成分のほかにも、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要・用途に応じて公知の人工爪組成物に配合されている各種添加剤を適量添加することもできる。例えば、着色剤(顔料等)、重合禁止剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防腐剤、表面調整剤等を挙げることができる。本発明組成物では、有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0035】
〔本発明組成物の性状〕
本発明組成物の性状は限定的ではないが、通常は液状組成物として提供される。すなわち、常温(5~35℃)及び常圧下で液体状の成分を含む組成物として使用することができる。このような性状は、(A)~(C)成分の少なくとも1種として常温・常圧下で液体の成分を使用することにより実現することができる。本発明組成物が液状である場合の粘度は特に限定されないが、通常は1.0~100[Pa.s]の範囲内で適宜設定することができる。このような粘度に設定することにより、より優れた塗工性、作業性等を達成することができる。
【0036】
〔本発明組成物の調製〕
本発明組成物は、前記の各成分を均一に混合することによって調製することができる。混合する方法は限定的でなく、例えばミキサー、ニーダー等の公知の混合攪拌装置を使用することにより実施することができる。なお、本発明組成物は、使用時に光の照射(LED照射、UV照射等)下で重合することにより硬化する組成物である場合には、調製工程中及び調製後は本発明組成物を暗室下におくことが必要である。
【0037】
〔人工爪組成物の使用〕
本発明組成物は、天然爪(自爪)の表面上に人工爪を形成させるために好適に用いることができる。より具体的には、(1)液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程(塗布工程)及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該ラジカル重合性化合物を重合させる工程(硬化工程)を含む人工爪形成方法に使用することができる。
【0038】
前記の塗布工程では、液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する。塗布する場合の条件は、公知の方法に従って実施することができる。また、本発明では、塗布工程に先立って、前処理として、例えば爪表面のサンディング工程、油分・ダストの拭取り工程等の公知の工程を実施しても良い。
【0039】
前記の硬化工程では、前記塗膜に光を照射することにより当該ラジカル重合性化合物を重合させる。すなわち、本発明組成物は、ラジカル重合性化合物を光の照射下(好ましくはLED照射下)で重合させることが好ましい。光照射する場合の光の波長は限定的ではないが、通常は360~500nmの範囲内にあることが好ましい。このような波長をもつ光(光源)としては、公知又は市販の光源を使用することができる。例えば、LED照射装置、UV照射装置等を使用することができる。本発明で使用する光源としてLED照射装置を使用することが望ましい。LED照射を採用する場合には、容易に高出力の照射光が得られると共に、コンパクトな照射装置を設計できるというメリットが得られる。
【実施例
【0040】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、何ら実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例において人工爪組成物の調製に用いた成分とその略号]
1分子内に、少なくとも1個以上の(メタ)アクリレート基、及び1個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
A1:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:1000)
A2:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:700)
A3:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:6000)
1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物
B1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
B2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)
B3:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)
B4:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
C1:イソボロニルメタクリレート
C2:トリメチロールプロパントリアクリレート
C3:トリエチレングリコールジメタクリレート
光重合開始剤
D1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
連鎖移動剤
E1:2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン
E2:γ-テルピネン
その他成分
・F1:BYK(登録商標)-333(ビッグケミー・ジャパン株式会社製、表面調整剤)
・F2:N-メチルジエタノールアミン(光重合促進剤)
【0042】
[光硬化性人工爪組成物の調製]
各配合割合に従い、それぞれの成分を大気圧下23℃の条件で自転・公転式混合機を使用して混合し均一液状の人工爪組成物を調製した。調製した人工爪組成物約10gを、黒色遮光ジャー容器に充填し光沢度測定及び施術評価に使用した。
【0043】
[粘度測定]
調製した光硬化性人工爪組成物を50mLガラス製サンプル容器に50g充填し、これを粘度測定用試料とした。ローター回転式粘度計(東機産業株式会社製、型式:RB80L)を使用して23℃環境下で粘度測定を行った。なお、粘度はローターの回転開始180秒後の測定値とした。
【0044】
本発明の光硬化性人工爪組成物の粘度範囲としては、1.0~100[Pa.s]であり、好ましくは、1.0~30[Pa.s]である。粘度値が100[Pa.s]を超えてしまうと、光硬化性人工爪組成物を操作する場合に糸曳現象が顕著に認められると共に、高粘度であることから均一な塗布表面を形成できない為に光硬化性人工爪組成物の操作性において特性が劣る。また、粘度値が1.0[Pa.s]未満においては、低粘度であることから、塗布した光硬化性人工爪組成物が塗布面から垂れ落ちる等の現象が認められ、均一な塗布表面を形成できない為に光硬化性人工爪組成物の操作性において特性が劣る。また、5.0~100[Pa.s]までの粘度範囲においては、クリーム容器、軟膏容器、コンテナ容器等に充填し使用者が筆等を使用して用いる包装形態である事が好ましく、1.0~10[Pa.s]までの粘度範囲においては、マニキュア容器に代表されるハケ付容器に充填した包装形態とする事が好ましい。
【0045】
[タックフリーテスト]
本発明の光硬化性人工爪組成物の表面硬化性の評価としてタックフリーテストを実施した。ガラス平板上にスペーサーを使用して光硬化性人工爪組成物を厚さ0.1-0.2mmになるように塗布した。塗布面上部より市販ジェルネイル用光硬化装置(商品名「プレストLEDライト(ネイルラボ社製)」)を使用して20秒間の光照射を行った後に、光硬化性人工爪組成物の光照射面に対してエチルアルコールで清浄にした指先で触れ、未重合層の有無やベタツキを確認した。本試験は一つの光硬化性人工爪組成物に対して3回実施した。また、本試験の評価尺度は以下の通りである。
○:未重合層が無く、ベタツキが認められない
△:未重合層は無いが、ベタツキが認められる
×:未重合層が認められる
表面硬化性が良好であり、紫外線及び/または可視光線を使用して硬化させた後に、ワイプ等を使用して硬化物表面の未重合層を除去する工程が不要な光硬化性人工爪組成物であるためには、前期評価尺度が「○」である必要がある。
【0046】
[施術評価]
施術者としては日本ネイリスト協会認定ネイリストが各3名の被験者に対して、下記の施術方法に従って施術を実施し、以下の評価方法に基づき、1.施術時の操作性、2.施術直後の光硬化性人工爪組成物の艶(光沢性)、3.施術2週間後の光硬化性人工爪組成物の艶(光沢性)の耐久性、4.耐(変)着色性、5.硬化熱を評価した。
【0047】
施術方法:一般的な施術方法であるナチュラルネイルジェルフローターを次の工程に従って施術した。
天然爪表面をスポンジファイルでサンディングする。
ネイルクレンザーを染込ませたワイプで油分・ダストを拭取る。
クリアジェル(市販製品名:LED GELプレスト(登録商標)クリアジェル(ネイルラボ社製))を天然爪全体に塗布する。
光重合装置(市販製品名:LED GELプレスト(同上)LEDライト(ネイルラボ社製))を使用して20秒間光重合を行う。
重合したクリアジェルの上面にカラージェル(市販製品名:LED GELプレスト(同上)カラージェル(ネイルラボ社製))を使用してカラーリングを行う。
光重合装置(市販製品名:LED GELプレスト(同上)LEDライト(ネイルラボ社製))を使用して20秒間光重合を行う。
再度(工程5)を行う。
再度(工程6)を行う。
実施例または比較例の光硬化性人工爪組成物を塗布する。
光重合装置(市販製品名:LED GELプレスト(同上)LEDライト(ネイルラボ社製))を使用して20秒間光重合を行う。
【0048】
施術評価方法:表1に施術評価項目及び評価尺度を記載した。
【0049】
表 1 施術評価項目及び、評価尺度
(注)評価項目「艶の耐久性」に関しては、施術直後の艶が良好であるサンプル(判定が◎または○の評価サンプル)に関して実施した。
【0050】
表 2 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0051】
実施例1及び実施例2、実施例3は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例1及び比較例2、比較例3は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0052】
表 3 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0053】
実施例4及び実施例5、実施例6は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
【0054】
また、実施例7及び実施例8、実施例9は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
【0055】
表 4 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0056】
実施例10及び実施例11、実施例12、実施例13は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例4は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0057】
表 5 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0058】
実施例14及び実施例15、実施例16は、本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例5及び比較例6、比較例7は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0059】
表 6 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0060】
実施例17及び実施例18は、本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例8及び比較例9は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0061】
表 7 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0062】
実施例19及び実施例20、実施例21、実施例22は、本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例10及び比較例11は本発明の構成要件である(A)及び(C)、(D)、(E)成分を配合するが、(B)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(B)成分を配合しないことによって、表面硬化性が著しく損なわれ未重合層が残存し、艶の低下が認められた。さらに、表面硬化性が不十分である事から、日常生活環境下での艶の耐久性や耐着色性に関して不良であった。
【0063】
表 8 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0064】
実施例23及び実施例24、実施例25は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例12及び比較例13、比較例14は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0065】
表 9 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0066】
実施例26及び実施例27、実施例28は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例15及び比較例16、比較例17は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0067】
表 10 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0068】
実施例29及び実施例30、実施例31は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例18及び比較例19、比較例20は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0069】
表 11 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0070】
実施例32及び実施例33、実施例34、実施例35は、本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
一方で、比較例21は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)成分を配合するが、(E)成分を配合しない光硬化性人工爪組成物の例である。(E)成分を配合しないことによって、光重合に伴う硬化熱が発生し、被験者の指先に著しい熱痛を与える事が認められ光硬化性人工爪組成物として不良であった。
【0071】
表 12 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0072】
実施例36及び実施例37、実施例38、実施例39、実施例40、実施例41は、本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
【0073】
表 13 光硬化性人工爪組成物の配合割合及び評価結果
[配合割合:重量部]
【0074】
実施例42及び実施例43、実施例44、実施例45、実施例46、実施例47は本発明の構成要件である(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合する光硬化性人工爪組成物の例である。(A)及び(B)、(C)、(D)、(E)成分を配合することでネイル材料として優れた表面硬化性、操作性、表面光沢性(艶)、耐久性、耐着色性及び硬化熱特性が得られる事が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は爪化粧料の分野において、優れた表面光沢性、操作性、表面硬化性、防汚性、及び低硬化発熱性を有する光硬化性人工爪組成物として、極めて有用である。