(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】大きい成形部品のためのポリアミド成形用コンパウンド
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20220107BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220107BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08L77/06
B29C45/00
C08K7/06
(21)【出願番号】P 2016530237
(86)(22)【出願日】2014-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2014074313
(87)【国際公開番号】W WO2015071281
(87)【国際公開日】2015-05-21
【審査請求日】2017-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-06
(32)【優先日】2013-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ランベルツ ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンケルマン ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ハーダー フィリップ
【合議体】
【審判長】杉江 渉
【審判官】蔵野 雅昭
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0120972号明細書
【文献】国際公開第2012/169604号
【文献】国際公開第2012/058350号
【文献】米国出願公開第2012/0196961号明細書
【文献】特開昭61-108659号公報
【文献】特開昭59-53536号公報(新たに追加された文献)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B29C45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の組成:
(A) 20~70質量%の少なくとも1つの半結晶性半芳香族ポリアミドであって、6T/6Iの形であり、かつ65~73モル%のヘキサンジアミン及びテレフタル酸から構成された単位を含む、前記半結晶性半芳香族ポリアミド;
(B) 3~11質量%の少なくとも1つの耐衝撃性改良剤として、エチレンとグリシジルメタクリレートのコポリマー;
(C) 25~60質量%の少なくとも1つの炭素繊維;
(D) 0~5質量%の少なくとも1つの添加剤、
ここで、成分(A)~(D)は合計100質量%である
を有するポリアミド成形用組成物。
【請求項2】
存在する成分(B)の量が6から11質量%までであることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項3】
成分(C)が、0.1から50mmまでの長さ及び5から40μmまでの直径の炭素繊維であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項4】
成分(C)の少なくとも1つの炭素繊維のポリアミド成形用組成物中に存在する割合が30から50質量%までであり、成分(C)の炭素繊維が被覆されており、そのコーティングが、エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、又はポリアミドをベースとするコーティング材料より選ばれるか、又は成分(C)の炭素繊維が被覆されておらず、プラズマ処理されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項5】
成分(D)の添加剤が、ガラスビーズ、ガラス繊維、鉱物粉末、UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤及び離型剤、着色物質及び標識物質、無機顔料、有機顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、鎖延長添加剤、伝導性添加剤、架橋剤、難燃剤、膨張剤、粘度調整剤、異種ポリマー、及び/又はこれらの混合物からなる群より選ばれ、且つ/又は
成分(D)の添加剤が、多くても1質量%の割合のポリカルボジイミドを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項6】
成分(D)の少なくとも1つの添加剤の割合が、0.05から5質量%までの範囲にあることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項7】
外径60mm、壁厚4mm、及び深さ95mmのそれから製造されたビーカー形の射出成形物の取り出しに加えなければならない離型力が3000N未満であり、且つ/又は
外径60mm、壁厚4mm、及び深さ95mmのそれから製造されたビーカー形の射出成形物の離型力が、47.625質量%のPA 6T/6I(モル比70:30、融点325℃、ISO 307に従って、m-クレゾール中0.5%で20℃において定量した相対粘度η
rel = 1.58、0.04質量%の水含有量、ISO 1133に従った、21.6kgに対して340℃でのメルトボリュームレイト(MVR) 144cm
3/10分)、50質量%の、直径10μm及び平均長4.5mmのサイズのガラス繊維(ガラス繊維の合計質量に基づき、0.1質量%の加水分解アミノシラン、並びに、ガラス繊維の合計質量に基づき、0.5質量%の1/3のポリウレタン水性分散液及び2/3の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーでできている)、0.2質量%のカオリン、0.175質量%のCuI/KI安定剤系、及び2.0質量%の、PA66をベースとするカーボンブラックマスターバッチでできている組成物の離型力の4倍以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項8】
ISO 179-1に従って測定した耐衝撃性が、少なくとも35kJ/m
2であり、且つ/又は
ISO527に従って定量した破断時の引張ひずみが、少なくとも0.8%であり、且つ/又は
ISO527に従って定量した弾性係数が、少なくとも24GPaであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物の製造方法であって、成分(A)としての35から70質量%までの少なくとも1つの半芳香族ポリアミドが、成分(A)の溶融状態で、成分(C)としての25から60質量%の少なくとも1つの炭素繊維と共に、成分(C)がサイドフィードによって導入されるスクリュー型押出機において配合され、ここで、配合工程の前に及び/又はそれの間に及び/又はそれの後に、3から11質量%までの少なくとも1つの耐衝撃性改良剤が成分(B)として組み込まれ、且つ/又は0から5質量%までの少なくとも1つの添加剤が成分(D)として組み込まれることを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物でできている耐熱性成形物であって、その成形物が自動車、機械工学、電子工学、及び/又は電気セクターからの構成部品であることを特徴とする、前記成形物。
【請求項11】
射出容積を50mlから10 000mlまでの範囲で用いることによる耐熱性成形物の製造のための射出成形プロセスにおける請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物の使用。
【請求項12】
射出された組成物が射出成形用金型の離型面と接触している表面積が、500から10 000cm
2までの範囲にあることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、小さい離型力、及び低い射出圧力を必要とし、且つ高い強度を有する大きい成形物の製造のための炭素繊維補強ポリアミド成形用組成物に関する。本発明は、更に、ポリアミド成形用組成物の製造方法、それから作られた前記大きい成形物及び構成部品の製造方法、及びそのポリアミド成形用組成物の使用及びそれぞれの構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
欧州特許出願公開第0 477 027号明細書には、耐衝撃性が改善され且つ少なくとも50モル%のテレフタル酸ブロックを有する結晶性半芳香族ポリアミド及び耐衝撃性改良剤として官能基化ブロックコポリマーをベースとするポリアミド成形用組成物が開示されている。この成形用組成物は、また、高温用途、例えば自動車部品用に適しているものである。明示された系は、6T/6I及び6T/6I/66と全質量に基づき2から25質量部までの範囲にある異なる割合の耐衝撃性改良剤とをベースとしている。補強系は一般用語で記載されており、可能な系はリストに示されているが、用いられていない。
国際公開第00/78869号パンフレットには、銅ハロゲン化物熱安定剤を有する射出成形用途のための耐衝撃性が改良された半芳香族高温ポリアミドが開示されている。ここでもまた、種々の割合の6T/6I/66をベースとした系が提唱されており、耐衝撃性改良剤の割合は全質量に基づき5から50質量%までの範囲にある。更に、60%までの添加剤、なかでも、充填剤が存在し得ることが述べられている。6T/6I/66が用いられ、実施例には、添加剤を全質量に基づき1.2質量部の割合の着色顔料、及び全質量に基づき33質量部の割合のそれぞれのチョップドガラスの形で用いられている。
【0003】
欧州特許出願公開第1 971 642号明細書には、他の必須成分としてポリカルボジイミドを有する炭素繊維補強ポリアミド組成物が開示されている。様々な脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、及び半芳香族ポリアミドが可能なポリアミドとして記載されており、ここでは好ましくはポリアミド66である。炭素繊維の割合は5から20%までの範囲にあり、用いられる量もまた5から20%までである。更に、耐衝撃性改良剤の使用が、選択として、特に2から29.7質量部までの割合で記載されている。全てがPA66を用いている実施例には、耐衝撃性改良剤が、特に10%の割合で常に合計質量に基づき用いられている。
米国特許出願公開第2010120972号明細書には、少なくとも1つの半芳香族ポリアミド、芳香族サイズを有する表面処理炭素繊維を含み、更に0から約25質量%までのPTFEを含んでもよい熱可塑性複合組成物が開示されている。
欧州特許出願公開第1 860 134号明細書には、高い滞留安定性、耐熱湯性、及び耐薬品性、並びに他の樹脂との優れた接着性や適合性等を有する半芳香族ポリアミド樹脂が開示されている。半芳香族ポリアミド樹脂は、50から100モル%までの芳香族ジカルボン酸単位及び9から13個までの炭素原子を有する60から100モル%までの脂肪族ジアミン単位をベースとしている。更に、ポリアミド樹脂の分子鎖の末端基の少なくとも10%は、末端基保護剤によって保護されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の説明
従来技術の成形用組成物の望ましくない特性は、なかでも、特に大きい構成部品のための使用において、それによって射出成形プロセスの問題が生じるという事実である: その成形用組成物のために加えなければならない離型力は製造問題につながる値とみなし得る。構成部品の機械的性質の欠陥につながる手段をとらずにこの問題に解決策を見出すことはこれまで可能ではなかった。このことが本発明の介入するところである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、請求項1に記載のポリアミド成形用組成物及びそれぞれのその製造方法に関し、特に、射出成形プロセスによる大きい成形物の製造のためのその使用に関する。提唱される成形用組成物は、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤を有する少なくとも1つの半芳香族ポリアミド、少なくとも1つの炭素繊維から構成され、更に他の添加剤から構成されてもよい。
提唱される成形用組成物の特徴は、なかでも特に、成形用組成物が射出成形機において成形物の製造のために用いられる場合の低離型力である。離型力が臨界値を超えている場合には、金型から取り出されるときに射出成形物に対する損傷を回避することができなくなる。このことは、特に大きいサイズの射出成形にとって、すなわち、特に、例えば、500から10 000mlまでの射出容積を有し、より好ましくは一例として離型面において射出成金型と接触している表面積が500より大きく10 000cm2までの成形物にとって特に重要である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特に、本発明は、下記の組成:
(A) 20から79質量%までの、好ましくは50から80モル%までのヘキサンジアミン及びテレフタル酸から構成された単位を含んでいるコポリアミドの形の少なくとも1つの芳香族ポリアミド、
(B) 1から15質量%までの少なくとも1つの耐衝撃性改良剤;
(C) 20から60質量%までの少なくとも1つの炭素繊維、
(D) 0から5質量%までの少なくとも1つの添加剤
ここで、成分(A)~(D)が合計100質量%である、
を有するポリアミド成形用組成物を提供する。
驚くべきことに、各種成分(A)~(D)の割合のこの特定の組み合わせの結果から、得られたポリアミド成形用組成物が最終用途に、特に大きい成形物の製造、例えば自動車セクターにおける高温用途に必要とされる熱機械的性質を、同時に射出成形用金型の問題を回避しつつ与え得るということがわかる; 特に、非常に低い離型力が達成され得ることがわかる。
【0007】
ここで成形用組成物における成分(A)の割合は、好ましくは30から70質量%まで、又は35から65質量%までの範囲にあり、特に好ましくは40から60質量%までの範囲にある。
第1の好適実施態様において、前記ポリアミド成形用組成物は、成分(A)が50から80モル%まで、好ましくは60から75モル%まで、特に好ましくは65から73モル%までの、ヘキサンジアミン及びテレフタル酸から構成される単位を含んでいるコポリアミドであることを特徴とする。その材料が、好ましくはガラス転移温度(Tg)が少なくとも100℃、好ましくは少なくとも115℃、及び/又は融点が少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260又は少なくとも270℃、特に250から330℃までの範囲で、特に、260から320℃までの範囲で、及び/又は融解エンタルピーが少なくとも30J/g、好ましくは少なくとも35J/g、特に好ましくは少なくとも40J/gである半結晶ポリアミドであることが好ましい。成形用組成物がアモルファスポリアミドを含まないことが好ましい。
【0008】
それ故、成分(A)は、好ましくは一般的な6T/xxタイプのポリアミドであることができ、一例として一般構造6T/6I、6T/10T、6T/12T、6T/10I、6T/12I 6T/66、6T/610、6T/612等を有する系、或いは一例として6T/6I/66タイプの系を用いることが可能である。成分(A)は、一般的な6T/D6タイプ、及び/又は一般的な6T/DTタイプ(ここで、Dはジアミン単位2-メチル-1,5-ペンタンジアミンを表す)のポリアミドを含まないことが好ましい。他の可能な系は、6T部分と一緒にラクタム又はアミノカルボン酸をベースとし、例は6T/6、6T/10、6T/12タイプ等の系である。しかしながら、ここではコポリアミドが本質的に脂肪族二酸及び/又は脂肪族ラクタムを含まず更に/又はアミノカルボン酸を含まないことが好ましい; アジピン酸を含まないことが特に好ましい。更にその材料が脂肪族ジアミン又は複数の異なる脂肪族ジアミンをベースとし、好ましくは4から14個までの炭素原子、好ましくは6、8、10、及び/又は12個の炭素原子を有する非分枝鎖脂肪族ジアミンをベースとするコポリアミドであることが好ましい。特に好ましくは、単一の、好ましくは非分枝鎖脂肪族ジアミン、特にヘキサンジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、又はドデカンジアミンのみをベースとする。言い換えれば、好ましくは6T/6I、6T/10T、6T/12T、6T/10I、6T/12Iタイプの系である。
【0009】
成分(A)は、50モル%を超え、好ましくは60モル%を超え、特に好ましくは65モル%を超える6T単位を含んでいる6T/6Iコポリアミドであることが好ましい。
成分(B)として用いられる耐衝撃性改良剤は、好ましくは下記の群: 天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブタジエン及び/又はイソプレンとスチレン又はスチレン誘導体や他のコモノマーとのコポリマー、水素添加コポリマー、及び/又は無水物、(メタ)アクリル酸、及びそのエステルとのグラフト化又は共重合によって得られるコポリマー、及びこれらの系の混合物より選ばれる。成分(B)は、また、好ましくはブタジエン、イソプレン、又はアルキルアクリレートから構成される架橋エラストマーコアを有するグラフトゴム、及び好ましくはポリスチレンでできているグラフトシェル、非極性又は極性オレフィンホモポリマー又はコポリマー、例えば、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、又はエチレン・オクテンゴム、又はエチレン・酢酸ビニルゴム、又は無水物、(メタ)アクリル酸、及びそのエステルとのグラフト化又は共重合によって得られる非極性又は極性オレフィンホモポリマー又はコポリマー、或いは前記系の混合物であり得る。耐衝撃性改良剤(B)は、また、カルボン酸官能基化コポリマー、例えばポリ(エテン・コ・(メタ)アクリル酸)又はポリ(エテン・コ・1-オレフィン・コ・(メタ)アクリル酸)(ここで、1-オレフィンは、4個を超える原子を有するアルケン又は不飽和(メタ)アクリルエステルであることができ、酸基が金属イオンである程度まで中和されているコポリマーを含める)であり得る。
【0010】
スチレンモノマー(スチレン及びスチレン誘導体)及び他のビニル芳香族モノマーをベースとする他の好ましい耐衝撃性改良剤は、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンから構成されるブロックコポリマー、及びアルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素添加ブロックコポリマー、及びこれらの種類の耐衝撃性改良剤の組み合わせである。ブロックコポリマーは、好ましくは、アルケニル芳香族化合物から誘導される少なくとも1つのブロック(A)と共役ジエンから誘導される少なくとも1つのブロック(B)を含んでいる。水素添加ブロックコポリマーの場合、脂肪族系不飽和炭素-炭素二重結合の割合は水素添加によって還元され得る。好ましく使用し得る他のブロックコポリマーは、直鎖構造を有する2ブロック、3ブロック、4ブロック、及びポリブロックコポリマーである。分枝鎖及び星型の構造も同様に使用し得る。分枝鎖ブロックコポリマーは、既知の方法で、例えばポリマー主鎖へのポリマー「分枝鎖」のグラフト反応によって得られる。
アルケニル芳香族モノマーとして、スチレン、及び/又は芳香環に及び/又はC=C二重結合にC1-20-炭化水素部分による又はハロゲン原子による置換を有する他のビニル芳香族モノマーと一緒に又はそれの混合物中で用いることも可能である。
【0011】
アルケニル芳香族モノマーの例は、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ビニルトルエン、1,2-ジフェニルエチレン、1,1-ジフェニルエチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、クロロスチレン、及びこれらの組み合わせである。好ましくは、スチレン、p-メチルスチレン、アルファ-メチルスチレン、及びビニルナフタレンである。
スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ビニルトルエン、1,2-ジフェニルエチレン、1,1-ジフェニルエチレン、又はこれらの混合物を用いることが好ましい。スチレンを用いることが特に好ましい。アルケニルナフタレンを用いることも可能である。
使用し得るジエンモノマーの例は、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、イソプレン、クロロプレン、及びピペリレンである。好ましくは1,3-ブタジエン及びイソプレン、特に1,3-ブタジエン(以下、ブタジエンと略記される)である。
【0012】
アルケニル芳香族モノマーとしてスチレン及びジエンモノマーとしてブタジエンを用いることが好ましい。すなわち、ブロックコポリマーがブタジエン・スチレンブロックコポリマーであることが好ましい。ブロックコポリマーは、一般的には、それ自体は既知の方法のアニオン重合によって製造される。
更に、スチレンモノマーとジエンモノマーに加えて他のコモノマーを同時に使うことも可能である。コモノマーの割合は、用いられるモノマーの全量に基づき、好ましくは0から50質量%まで、特に好ましくは0から30質量%まで、特に0から15質量%までである。適切なコモノマーの例は、アクリレート、特にC1-12-アルキルアクリレート、例えばn-ブチルアクリレート又は2-エチルヘキシルアクリレート、及び対応するメタクリレート、特にC1-12-アルキルメタクリレート、例えば特にメチルメタクリレート(MMA)である。他の可能なコモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルメチルエーテル、二価アルコールのジアリルエーテルやジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、及び酢酸ビニルである。
【0013】
水素添加ブロックコポリマーは、また、共役ジエンに加えて、低級炭化水素の部分、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、ジシクロペンタジエン、又は非共役ジエンを含んでいてもよい。水素添加ブロックコポリマー中のブロックBから得られる還元されていない脂肪族不飽和結合の割合は、50%より低く、好ましくは25%より低く、特に10%より低い。ブロックAからの芳香族部分は、多くても25%の程度まで還元されている。水素添加ブロックコポリマースチレン・(エチレン・ブチレン)2ブロック及びスチレン(エチレン・ブチレン)・スチレン3ブロックコポリマーは、スチレン・ブタジエンコポリマー及びスチレン・ブタジエン・スチレンコポリマーの水素添加によって得られる。
ブロックコポリマーは、好ましくは20から90質量%までのブロックA、特に50から85質量%までのブロックAから構成される。ジエンは、ブロックBに1,2-又は1,4-配置で取り込まれ得る。
ブロックコポリマーのモル質量は、好ましくは5000から500 000g/モルまで、好ましくは20 000から300 000g/モルまで、特に40 000から200 000g/モルまでである。
適切な水素添加ブロックコポリマーは、市販で入手し得る製品、例えばKRATON(登録商標)(Kraton Polymers) G1650、G1651、G1652、TUFTEC(登録商標)(Asahi Chemical) H1041、H1043、H1052、H1062、H1141、H1272である。
【0014】
水素添加されていないブロックコポリマーの例は、ポリスチレン・ポリブタジエン、ポリスチレン・ポリ(エチレン・プロピレン)、ポリスチレン・ポリイソプレン、ポリ(α-メチルスチレン)・ポリブタジエン、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン・ポリ(エチレン・プロピレン)・ポリスチレン、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレン、及びポリ(α-メチルスチレン・ポリブタジエン・ポリ(α-メチルスチレン)、及びこれらの組み合わせである。
市販で入手し得る適切な水素添加されていないブロックコポリマーは、商標SOLPRENE(登録商標)(Phillips)、KRATON(登録商標)(Shell)、VECTOR(登録商標)(Dexco)、及びSEPTON(登録商標)(Kuraray)を有する種々の製品である。
他の好適実施態様において、本発明の成形用組成物は、成分(B)がポリオレフィンホモポリマー又はエチレン・α-オレフィンコポリマー、特に好ましくはEPエラストマー及び/又はEPDMエラストマー(エチレン・プロピレンゴム、それぞれのエチレン・プロピレン・ジエンゴム)であることを特徴とする: この材料は、一例として、20から96質量%まで、好ましくは25から85質量%までのエチレンを有するエチレン・C3-12-α-オレフィンコポリマーをベースとするエラストマーであることができ、ここで特に好ましいC3-12-α-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び/又は1-ドデセン、及びこれらの組み合わせの群より選ばれるオレフィンであり、特に好ましい成分(B)は、エチレン・プロピレンゴム及び/又はLLDPE、及び/又はVLDPEである。
【0015】
或いは又は更に(例えば混合物において)、成分(B)は、非共役ジエンを有するエチレン-C3-12-α-オレフィンをベースとするターポリマーであることができ、これは、好ましくは25から85質量%までのエチレン及び多くても10質量%までの非共役ジエンを含み、特に好ましいC3-12-α-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び/又は1-ドデセン、及びこれらの組み合わせの群より選ばれるオレフィンであり、且つ/又は非共役ジエンは、好ましくはビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、及び/又は特に5-エチリデンノルボルネンの群より選ばれる。
更に、成分(B)としてエチレン・アクリレートコポリマーを用いることも可能である。成分(B)として可能な他の形は、これらの系を含むエチレン・ブチレンコポリマー及び混合物(ブレンド)である。成分(B)は、ポリアミドへの良好な結合に充分な濃度で、主鎖ポリマーと不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸、又は不飽和モノアルキルジカルボキシレートとの熱反応又はフリーラジカル反応によって導入される無水物基を有することが好ましく、好ましく用いられる試薬は、下記の群: マレイン酸、無水マレイン酸、モノブチルマレエート、フマル酸、アコニット酸、イタコン無水物、及びこれらの組み合わせ/混合物より選ばれる。0.1から4.0質量%までの不飽和無水物が耐衝撃性成分(B)へグラフト化されること、又は不飽和ジカルボン酸無水物又はその前駆体が他の不飽和モノマーと一緒にその材料へグラフト化されることが好ましい。一般的には、グラフト化の程度が0.1から1.0%までの範囲にあることが好ましく、特に好ましくは0.3から0.7%までの範囲にある。成分(B)としての他の可能性は、エチレン・プロピレンコポリマーとエチレン・ブチレンコポリマーとの混合物であり、リンゴ酸無水物グラフト化の程度(MAHグラフト化率)は0.3から0.7%までの範囲にある。
【0016】
更に、成分(B)は、官能基、例えばカルボン酸基、エステル基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラノール基、カルボキシレート基を有することができるし、挙げた官能基の2つ以上の組み合わせを有することもできる。これらの官能基をもつモノマーは、共重合又はグラフト化によってエラストマーポリオレフィンに結合することができる。
オレフィンポリマーをベースとする耐衝撃性改良剤は、また、不飽和シラン化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、又はプロペニルトリメトキシシランでグラフト化することによって変性されていることができる。エラストマーポリオレフィンは、直鎖、分枝鎖、又はコア-シェル構造を有するランダムコポリマー、交互コポリマー、又はセグメント化コポリマーであり、ポリアミドの末端基と反応し得る官能基を含んでいるので、ポリアミドと耐衝撃性改良剤間に充分な適合性を与える。
それ故、本発明の耐衝撃性改良剤としては、オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテンのホモポリマー及びコポリマー及びオレフィンと共重合性モノマー、例えば酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、メチルヘキサジエンとのコポリマーが含まれる。
【0017】
結晶性オレフィンポリマーの例は、低密度、中密度、及び高密度のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン・プロピレンブロック及びランダムコポリマー、エチレン・メチルヘキサジエンコポリマー、プロピレン・メチルヘキサジエンコポリマー、エチレン・プロピレン・ブテンコポリマー、エチレン・プロピレン・ヘキセンコポリマー、エチレン・プロピレン・メチルヘキサジエンコポリマー、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)(EVA)、ポリ(エチレン・エチルアクリレート)(EEA)、エチレン・オクテンコポリマー、エチレン・ブテンコポリマー、エチレン・ヘキセンコポリマー、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー、及び挙げたポリマーの組み合わせである。
適切な市販で入手し得る耐衝撃性改良剤の例は、以下である:
・TAFMER MC201: 67% EPコポリマー(20モル%プロピレン) + 33% EBコポリマー(15モル% 1-ブテン)のg-MAH(~0.6%)ブレンド: 三井化学、日本。
・TAFMER MH5010: g-MAH(~0.6%)エチレン・ブチレンコポリマー; 三井化学。
・TAFMER MH7010: g-MAH(~0.7%)エチレン・ブチレンコポリマー; 三井化学。
・TAFMER MH7020: g-MAH(~0.7%) EPコポリマー、三井化学。
・EXXELOR VA1801: g-MAH(~0.7%) EPコポリマー; ExxonMobil Chemical、米国。
・EXXELOR VA1803: g-MAH(0.5~0.9%) EPコポリマー、アモルファス、Exxon。
・EXXELOR VA1810: g-MAH(~0.5%) EPコポリマー、Exxon。
・EXXELOR MDEX 94-1 1: g-MAH(0.7%) EPDM、Exxon。
・FUSABOND MN493D: g-MAH(~0.5%)エチレン・オクテンコポリマー、DuPont、米国。
・FUSABOND A EB560D(g-MAH)エチレン・n-ブチルアクリレートコポリマー、DuPont。
・ELVALOY、DuPont
・Lotader AX 8840、Arkema、仏国。
【0018】
耐衝撃性改良剤のポリマー結合カルボキシ基は、金属イオンを介して完全に又はある程度まで相互に結合しているアイオノマーも好ましい。
耐衝撃性改良剤(B)がエチレンとグリシジルメタクリレートのコポリマーであることが特に好ましい。
成分(B)として上述の可能な系は、個々に或いは2種類以上の系の混合物で使用し得る。
効果は、一般的には、存在する成分(B)の量が3から15質量%まで、好ましくは5から14質量%まで、特に好ましくは6から11質量%までである場合に得られることがわかる。
他の好適実施態様において、成分(C)の炭素繊維は、リサイクレート炭素繊維(又は再生炭素繊維)(recyclate carbon fiber)であり得る。
成分(C)の炭素繊維に対して、一般的には0.1から50mmまでの長さ及び5から40μmまでの直径の繊維が好ましい。炭素繊維のベースとして、PAN系、ピッチ系、又はセルロース系繊維を用いることが好ましい。特にPAN繊維(PAN = ポリアクリロニトリル)が好ましい。
一実施態様において、成分(C)の炭素繊維は、被覆された形であることができ、そのコーティングが、特に、エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、又はこれらの混合物をベースとするコーティング材料より選ばれることができ、コーティングの質量が、炭素繊維の質量に基づき、好ましくは4質量%を超えない。一好適実施態様においては、成分(C)の炭素繊維のコーティングは、少なくとも1つのポリアミドと少なくとも1つのエポキシドの混合物又はそれらのコポリマーから構成され得る。ポリアミドの質量割合が混合物又はコポリマー中のエポキシドの質量割合より大きいことが好ましい。ポリアミドの質量割合が67質量%であること及びエポキシドの質量割合が33質量%であることが特に好ましい。
【0019】
他の実施態様において、成分(C)の炭素繊維は被覆されていないことができ、ここで他の好適実施態様において、被覆されていない炭素繊維の表面はプラズマ処理されている。
ポリアミド成形用組成物中の成分(C)の炭素繊維の割合は、たいてい好ましくは20質量%を超え、好ましくは25から60質量%まで、好ましくは30から50質量%まで、特に好ましくは35から45質量%までである。
一好適実施態様において、成分(D)の添加剤は、ガラスビーズ、ガラス繊維(丸い又は平坦な断面を有する)、鉱物粉末、UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤や離型剤、着色物質や標識物質、無機顔料、有機顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、鎖延長添加剤、伝導性添加剤、架橋剤、難燃剤、膨張剤、粘度調整剤、異種ポリマー、及び/又はこれらの混合物からなる群より選ばれる。
ここで成分(D)の中に存在する粘度調整剤は、なかでも、多くても1質量%の割合のポリカルボジイミドであり得るが、ポリアミド成形用組成物がポリカルボジイミドを全く含まないことが好ましい。
【0020】
粘度調整剤、これらの中で特にポリカルボジイミドは、分子量の増大に、従って、流動性の低下につながる。特に長い流路が射出成形用金型のホットランナーにある大きい成分の場合、低流動性は問題である。
成分(D)に挙げられた異種ポリマーは、上記の成分(B)の意味において任意の耐衝撃性改良剤を含むものとして理解すべきでない。
成分(D)の少なくとも1つの添加剤の割合は、0.05から4質量%まで、好ましくは0.1から2質量%まで、特に好ましくは0.15から1質量%までの範囲にあることが好ましい。
本発明の好ましい成形用組成物は、以下の通り構成される:
(A) 30から60質量%までの少なくとも1つの半芳香族ポリアミド、特に6T/6Iタイプ
(B) 4から11質量%までの少なくとも1つの耐衝撃性改良剤、
(C) 35から55質量%までの少なくとも1つの炭素繊維、
(D) 1から4質量%までの少なくとも1つの添加剤、
ここで、成分(A)~(D)は、合計100質量%である。
【0021】
上記で説明したように、提唱された成形用組成物の特徴は、なかでも、特に大きい構成部品のための離型力が予想外に小さいということである。他の好適実施態様の特徴は、従って、ビーカーモールドに対して測定した、実験の項で記載されているように製造した射出成形物を提唱されたポリアミド成形用組成物から取り出すために加えなければならない離型力が、3000N未満、好ましくは2000N未満、特に好ましくは1500N未満であることである。好適実施態様の特徴は、ビーカーモールドに対して定量した、提唱されたポリアミド成形用組成物からの実験の項で記載されているように製造した射出成形物のための離型力が、47.625質量%のPA 6T/6I(モル比70:30、融点325℃、相対粘度1.58 [ISO 307に従って、m-クレゾール中0.5%で20℃において定量した]、0.04質量%の水分含有量、ISO1133に従って、340℃、21.6kgで、MVR 144cm3/10分)、50質量%のガラス繊維(直径10μm、平均長4.5mmの丸いガラス繊維、サイズが、ガラス繊維の全質量に基づき、0.1質量%の加水分解アミノシラン及びガラス繊維の全質量に基づき、0.5質量%の1/3がポリウレタン水性分散液及び2/3が多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーでできている、特に名称Vetrotrex 995 EC10-4.5で入手し得る)、0.2質量%のカオリン、0.175質量%のCuI/KI安定剤系、及び2.0質量%のPA66をベースとするカーボンブラックマスターバッチでできている組成物の離型力の4倍以下、好ましくは3倍以下、特に好ましくは2倍以下であるということである; これは、実験の項で述べた条件下で製造されたものである。
【0022】
非常に大きい部品の場合に生じる離型力は、本発明の使用で述べたように、試験のために製造された実験の項で記載されている成形物の場合より著しく大きい。
ISO 179-1に従って定量した提唱されたポリアミド成形用組成物の耐衝撃性は、好ましくは少なくとも35kJ/m2、好ましくは少なくとも45kJ/m2、特に好ましくは少なくとも50kJ/m2である。
ISO 527に従って定量した提唱されたポリアミド成形用組成物の破断時の引張ひずみは、好ましくは少なくとも0.8%、好ましくは少なくとも1.0%、特に好ましくは少なくとも1.2%である。
ISO 527に従って定量した提唱されたポリアミド成形用組成物の弾性係数は、少なくとも24GPa、好ましくは少なくとも26GPa、特に好ましくは少なくとも27GPaである。
更に、本発明は、上記のポリアミド成形用組成物の製造方法を提供する。この方法は、特に、成分(A)として35から70質量%までの少なくとも1つの半芳香族ポリアミドが、溶融状態の成分(A)で、成分(C)として20から60質量%の少なくとも1つの炭素繊維と共に、好ましくは、成分(C)が好ましくはサイドフィードによって導入されるスクリュー型の押出機において配合(コンパウンド化)され、ここで、配合(コンパウンド化)工程の前に及び/又はそれの間に及び/又はそれの後に、1から15質量%の少なくとも1つの耐衝撃性改良剤が成分(B)として組み込まれ、且つ/又は0から5質量%までの少なくとも1つの添加剤が成分(D)として組み込まれることを特徴とする。
【0023】
本発明は、更に、上記のポリアミド成形用組成物でできている特に耐熱性成形物であって、成形物が自動車、機械工学、電子工学及び/又は電気セクターからの構成部品であり、特に下記の群: 自動車車体、機械部品及び横梁(crossbeam)の耐力用及び補強用の要素より選ばれる構成部品であることを特徴とする前記成形物を提供する。
更に、本発明は、これらの耐熱性成形物の製造方法、及び、特に、射出容積を50mlから10 000 mlまでの範囲で、好ましくは500mlから5000mlまでの範囲で、特に好ましくは2000mlから3500mlまでの範囲で用いることによる耐熱性成形物の製造のための、好ましくは射出成形プロセスにおける、上で定義したポリアミド成形用組成物の使用を提供する。射出された材料がここで離型面における射出成形用金型と接触している表面積は、好ましくは500から10 000cm2までの範囲、好ましくは1000から7000cm2までの範囲、特に好ましくは3000から5000cm2までの範囲にある。語句「離型面」は、取り出し側から金型のノズル側を分離する表面を意味する。
従属クレームは、更なる実施態様を提供する。
【実施例】
【0024】
好適実施態様の説明
本発明の好適実施態様を、限定されるものでなく単に例示として役立つものとして解釈されるべきである実施例によって下記に記載する。本発明の実施例及び比較例において用いられる材料を表1に挙げる。
【0025】
表1: 用いられる材料
a) ISO 307に従って定量した(20℃でm-クレゾール中0.5%のポリアミド); ISO規格 307の項11よってRV = t/t
0から相対粘度(RV)を算出;
b) 熱安定剤、カーボンブラックマスターバッチ及び核形成剤の混合物。
【0026】
成形用組成物の配合:
本発明の実施例IE1~IE3、並びに比較例CE1及びCE2のための成形用組成物をBerstorff製ZE 40A×33D UT二軸スクリュー押出機において製造した。100質量%の全体の成形用組成物に基づき、質量パーセント(質量%)で表2に表示された定量的割合の出発材料を二軸スクリュー押出機において配合した。得られたペレットから試験用試料を射出成形した。試験片について表2に表示された特性を定量した。
【0027】
表2: 組成物
(-): かろうじて識別可能、(+): 亀裂。
【0028】
表2に表示された機械的データを下記の規格に従って定量した。
引張弾性率:
ISO 527、引張試験速度1mm/分
ISO引張試験片、規格: ISO/CD 3167、A1型、170×20/10×4mm、温度23℃。
極限引張強さ及び破断時の引張ひずみ:
ISO 527、補強材料のための引張試験速度5mm/分
ISO引張試験片、規格: ISO/CD 3167、A1型、170×20/10×4mm、温度23℃。
シャルピー耐衝撃性:
ISO 179-2/1eU(シャルピー耐衝撃性)
ISO試験片、規格: ISO/CD 179、1型、80×10×4mm、温度23℃
シャルピーノッチ付き耐衝撃性:
ISO 179-2/1eU(シャルピー耐衝撃性)
ISO試験片、規格: ISO 179-1、1型、80×10×4mm、温度23℃.
MVR:
ISO 1133
離型力:
表2に表示された離型力は、エジェクタとしてストリッパプレートを有するビーカー金型を用いて定量した。離型力は、測定されたコアストリッパ力に対応する。円柱状ビーカーの外径は60mmであり、その壁厚は4mmであり、その深さは95mmである。ビーカー金型のコアを研磨し、コーティングを有しない。ビーカーをスプルーゲート(120°、5mm、7mm)によって底部で接続する。底部には、コアの取り出し時に真空の形成を回避することを意図する3つの孔がある。本発明の実施例及び比較例の全てに対して金型温度を160℃に設定した。その他の射出成形パラメータを表2に表示する。
用いられる射出成形機は、シリンダ直径25mm及び標準的な3ゾーンスクリューを有するEngel E-Victory 120である。
【0029】
【0030】
好ましい半芳香族ポリアミドは、半結晶性PA 6T/6I(好ましくは比70:30で)である。しかしながらアモルファスPA 6T/6I(1:2)が混合される場合には、著しく大きい離型力が加えられなければならない(CE1とIE1~IE3との比較を参照のこと)。成形用組成物が耐衝撃性改良剤を含まない場合には、同様に、著しく大きい離型力を加えることが必要である(IE1~IE3とCE2の比較を参照のこと)。