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特許6996846水処理装置、水処理方法、および水中生物の飼育水の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】水処理装置、水処理方法、および水中生物の飼育水の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20220107BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220107BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A01K63/04 A
A01K63/04 Z
C02F1/44 F
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C02F1/78
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017007427
(22)【出願日】2017-01-19
(65)【公開番号】P2018113925
(43)【公開日】2018-07-26
【審査請求日】2019-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福水 圭一郎
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192612(JP,A)
【文献】特開2015-181973(JP,A)
【文献】特開2016-214175(JP,A)
【文献】特開2015-019647(JP,A)
【文献】特開2003-047969(JP,A)
【文献】特開2002-306930(JP,A)
【文献】特開2000-301174(JP,A)
【文献】特開2002-292379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0113249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00 - 63/10
C02F 1/44
C02F 1/70 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子有機物を含む高分子有機物含有水を処理する水処理装置であって、
前記高分子有機物含有水を貯留する原水槽と、
前記原水槽の水を循環して有機物処理を行う有機物処理手段と、
前記有機物処理手段を介して前記原水槽内の水を循環させる原水循環配管と、
前記原水槽の水を膜ろ過処理する膜ろ過手段と、
前記膜ろ過手段により膜ろ過処理した処理水の少なくとも一部を前記原水槽へ返送する、前記原水循環配管とは別の返送手段と、
前記原水槽と前記膜ろ過手段との間の有機物濃度測定手段と、
を備え
前記有機物濃度測定手段により測定した有機物濃度に応じて、前記原水槽から前記有機物処理手段へ循環する循環流量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記高分子有機物含有水は、水中生物の飼育水であり、前記膜ろ過手段による膜ろ過処理で得られる膜ろ過処理水を飼育水として再利用することを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、
前記有機物処理手段が、オゾンマイクロバブルを用いる手段であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
高分子有機物を含む高分子有機物含有水を処理する水処理方法であって、
前記高分子有機物含有水を原水槽に貯留し、前記原水槽の水を原水循環配管を通して循環して有機物処理を行う一方で、前記原水槽の水を膜ろ過処理し、前記膜ろ過処理した処理水の少なくとも一部を、前記原水循環配管とは別の返送手段によって前記原水槽へ返送し、
前記原水槽から前記膜ろ過処理の間で有機物濃度を測定し、前記測定した有機物濃度に応じて、前記原水槽から前記有機物処理へ循環する循環流量を制御することを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項に記載の水処理方法であって、
前記高分子有機物含有水は、水中生物の飼育水であり、前記膜ろ過処理で得られる膜ろ過処理水を飼育水として再利用することを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の水処理装置であって、
前記有機物処理において、オゾンマイクロバブルを用いて処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
水中生物の飼育水の製造装置であって、
前記水中生物を飼育する水槽と、
前記水槽からの飼育水を貯留する原水槽と、
前記原水槽の水を循環して有機物処理を行う有機物処理手段と、
前記有機物処理手段を介して前記原水槽内の水を循環させる原水循環配管と、
前記原水槽の水を膜ろ過処理する膜ろ過手段と、
前記膜ろ過手段により膜ろ過処理した処理水の少なくとも一部を前記水槽に返送する、前記原水循環配管とは別の返送手段と、
前記原水槽と前記膜ろ過手段との間の有機物濃度測定手段と、
を備え
前記有機物濃度測定手段により測定した有機物濃度に応じて、前記原水槽から前記有機物処理手段へ循環する循環流量を制御することを特徴とする水中生物の飼育水の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質等の高分子有機物を含む高分子有機物含有水を処理する水処理装置および水処理方法に関する。また、本発明は、その水処理方法を利用した、水中生物の飼育水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過を連続運転していくと、ろ過水量が低下するファウリングが生じる。このファウリングを抑制する方法あるいは膜を洗浄する方法として、一般的には次亜塩素酸ナトリウム水溶液を膜の2次側から1次側に逆流させる方法が用いられる。さらに膜の洗浄を高める方法として、塩素を含む水を膜の2次側から逆流させた後、その水を所定時間保持することで膜を洗浄する方法(特許文献1参照)や、マイクロバブルやナノバブルの微細気泡を用いた方法(特許文献2参照)等がある。
【0003】
特に、養殖や水族館のようなタンパク質等の高分子有機物を含む高分子有機物含有水を膜ろ過処理しようとする場合、タンパク質等の高分子有機物がファウリングを助長してしまう可能性がある。さらに、一度ファウリングを起こしてしまった膜は、酸やアルカリ等を用いた薬品洗浄を行う必要があり、洗浄にかかるメンテナンス費用や、装置停止を見込んだ予備系列の設置等、コストが膨らむ要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-015365号公報
【文献】特開2010-253457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、膜のファウリングを抑制し、安定した運転が可能な、高分子有機物含有水を処理する水処理装置および水処理方法を提供することである。また、本発明の目的は、その水処理方法を利用した、水中生物の飼育水の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高分子有機物を含む高分子有機物含有水を処理する水処理装置であって、前記高分子有機物含有水を貯留する原水槽と、前記原水槽の水を循環して有機物処理を行う有機物処理手段と、前記有機物処理手段を介して前記原水槽内の水を循環させる原水循環配管と、前記原水槽の水を膜ろ過処理する膜ろ過手段と、前記膜ろ過手段により膜ろ過処理した処理水の少なくとも一部を前記原水槽へ返送する、前記原水循環配管とは別の返送手段と、前記原水槽と前記膜ろ過手段との間の有機物濃度測定手段と、を備え、前記有機物濃度測定手段により測定した有機物濃度に応じて、前記原水槽から前記有機物処理手段へ循環する循環流量を制御する水処理装置である。
【0008】
前記水処理装置において、前記高分子有機物含有水は、水中生物の飼育水であり、前記膜ろ過手段による膜ろ過処理で得られる膜ろ過処理水を飼育水として再利用することが好ましい。
【0009】
前記水処理装置において、前記有機物処理手段が、オゾンマイクロバブルを用いる手段であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、高分子有機物を含む高分子有機物含有水を処理する水処理方法であって、前記高分子有機物含有水を原水槽に貯留し、前記原水槽の水を原水循環配管を通して循環して有機物処理を行う一方で、前記原水槽の水を膜ろ過処理し、前記膜ろ過処理した処理水の少なくとも一部を、前記原水循環配管とは別の返送手段によって前記原水槽へ返送し、前記原水槽から前記膜ろ過処理の間で有機物濃度を測定し、前記測定した有機物濃度に応じて、前記原水槽から前記有機物処理へ循環する循環流量を制御する水処理方法である。
【0012】
前記水処理方法において、前記高分子有機物含有水は、水中生物の飼育水であり、前記膜ろ過処理で得られる膜ろ過処理水を飼育水として再利用することが好ましい。
【0013】
前記水処理方法において、前記有機物処理において、オゾンマイクロバブルを用いて処理を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、水中生物の飼育水の製造装置であって、前記水中生物を飼育する水槽と、前記水槽からの飼育水を貯留する原水槽と、前記原水槽の水を循環して有機物処理を行う有機物処理手段と、前記有機物処理手段を介して前記原水槽内の水を循環させる原水循環配管と、前記原水槽の水を膜ろ過処理する膜ろ過手段と、前記膜ろ過手段により膜ろ過処理した処理水の少なくとも一部を前記水槽に返送する、前記原水循環配管とは別の返送手段と、前記原水槽と前記膜ろ過手段との間の有機物濃度測定手段と、を備え、前記有機物濃度測定手段により測定した有機物濃度に応じて、前記原水槽から前記有機物処理手段へ循環する循環流量を制御する、水中生物の飼育水の製造装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、高分子有機物含有水を処理する水処理装置および水処理方法において、膜のファウリングを抑制し、安定した運転が可能となる。また、その水処理方法を利用した、水中生物の飼育水の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】ヒラメを飼育した飼育水のLC-OCD測定結果を示す図である。
図3】比較例で用いた水処理装置を示す概略構成図である。
図4】実施例および比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0019】
水処理装置1は、高分子有機物含有水を貯留する原水槽12と、原水槽12の水を循環して有機物処理を行う有機物処理手段として、オゾン発生装置24を備えるオゾン処理装置22と、原水槽12の水を膜ろ過処理する膜ろ過手段として、膜ろ過装置16とを備える。水処理装置1は、水中生物を飼育する水槽10と、膜ろ過水を貯留する膜ろ過水槽18と、オゾン分解手段として活性炭処理装置20とを備えてもよい。水処理装置1は、原水槽12と膜ろ過装置16との間に有機物濃度測定手段として、有機物濃度測定装置14を備えてもよい。
【0020】
図1の水処理装置1において、水槽10のオーバーフロー出口と原水槽12の原水入口とが原水配管40により接続されている。原水槽12の循環出口とオゾン処理装置22の入口とがポンプ36を介して原水循環配管52により接続され、オゾン処理装置22の出口と原水槽12の循環入口とが流量計38を介して原水循環配管54により接続されている。原水槽12の原水出口と膜ろ過装置16の入口とがポンプ30を介して原水供給配管42により接続されている。膜ろ過装置16の出口と膜ろ過水槽18の入口とが膜ろ過水配管44より接続され、膜ろ過水槽18の出口と活性炭処理装置20の入口とがポンプ32を介して膜ろ過水供給配管46により接続されている。活性炭処理装置20の出口と水槽10の入口とが返送配管48により接続されている。原水槽12と膜ろ過装置16との間、すなわち原水供給配管42には、有機物濃度測定装置14が設置されている。膜ろ過水槽18の下部と膜ろ過装置16の2次側入口とはポンプ34を介して逆洗水配管50により接続されている。膜ろ過装置16の1次側出口と、原水槽12の逆洗排水入口とは、逆洗排水配管58により接続されている。オゾン処理装置22の下部にはオゾン発生装置24がオゾン供給配管56により接続されている。有機物濃度測定装置14には制御装置26が電気的接続手段等により接続され、制御装置26と流量計38とは、電気的接続手段等により接続され、制御装置26とポンプ36とは、インバータ28を介して電気的接続手段等により接続されている。
【0021】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0022】
水槽10において魚類等の水中生物が飼育水中で飼育されている。飼育水には、水中生物の飼育に伴い、通常、タンパク質等の高分子有機物、懸濁物質等が含まれる。水槽10内の飼育水、すなわち高分子有機物等を含む高分子有機物含有水は、原水配管40を通して原水槽12に送液される。原水槽12内の高分子有機物含有水の一部は、ポンプ36により、原水循環配管52を通してオゾン処理装置22に供給される。
【0023】
オゾン処理装置22には、オゾン発生装置24で発生させたオゾンマイクロバブルがオゾン供給配管56を通して下部より供給される。オゾン処理装置22において、オゾンマイクロバブルにより、高分子有機物含有水中の有機物の循環処理(ここでは主に有機物の分解処理)が行われる(有機物処理工程)。また、オゾン処理装置22において、オゾンマイクロバブルを用いた加圧浮上により、濃縮された懸濁物質等が固液分離される。有機物処理が行われたオゾン処理水は、原水循環配管54を通して原水槽12に循環される。排オゾンは、オゾン排出配管等を通して排出され、オゾン除去装置により処理されてもよい。
【0024】
一方で、原水槽12中の原水は、ポンプ30により原水供給配管42を通して膜ろ過装置16に供給される。膜ろ過装置16において、原水中の残存した懸濁物質等が膜を用いてろ過されて除去される(膜ろ過工程)。
【0025】
膜ろ過された膜ろ過水は、膜ろ過水配管44を通して必要に応じて膜ろ過水槽18に貯留された後、ポンプ32により膜ろ過水供給配管46を通して必要に応じて活性炭処理装置20に供給される。活性炭処理装置20において、膜ろ過水中の残オゾンが活性炭により分解処理される(オゾン分解工程)。
【0026】
残オゾンが分解処理された処理水は、返送配管48を通して水槽10に返送され、飼育水として再利用されてもよい(返送工程)。ポンプ32および返送配管48等が、処理水の少なくとも一部を水槽10に返送する返送手段として機能する。処理水を水槽10に返送して再利用することで、補給水や排水にかかるコストを削減することができる。
【0027】
膜ろ過装置16の洗浄が必要になった場合は、膜ろ過水が膜ろ過水槽18からポンプ34により逆洗水配管50を通して膜ろ過装置16の2次側から1次側に逆流されて、膜が洗浄されてもよい(逆洗工程)。逆洗排水は、系外に排出されてもよいし、逆洗排水配管58を通して原水槽12に供給されてもよい。
【0028】
本実施形態に係る水処理装置1において、高分子有機物含有水を原水槽12に貯留し、原水槽12の水を循環して有機物処理を行い、原水槽12の水を膜ろ過処理することにより、高分子有機物や生物等による膜のファウリングを抑制し、膜ろ過装置16の安定した運転が可能となる。原水槽の水を循環して有機物処理を行うことによって、多段処理により有機物の効率的な分解が可能となる。
【0029】
逆洗工程中には、有機物の循環処理を行ってもよいし、停止してもよい。原水槽12に供給される逆洗排水に高分子有機物等を多く含む場合には、逆洗工程中でも有機物の循環処理を行うことが好ましい。
【0030】
高分子有機物とは、重量平均分子量が10万~200万の範囲の有機物である。重量平均分子量は、排水中に含まれる有機物の成分を把握する方法として、LC-OCD(Liquid Chromatography-Organic Carbon Detection)装置(DOC-LABOR社製、mobel12007)を用いて、湿式酸化法(カラム:HW50S)で測定することができる。LC-OCDとは、有機物を分子量毎に分け、それぞれの成分の有機物濃度を測定する方法である。LC-OCDの測定例として、ヒラメを飼育した飼育水の分析結果を図2に示す。図2に示すLC-OCDスペクトルは、横軸の保持時間(RT:Retention Time)[min]が短いほど、有機物の分子量が大きいことを示すが、保持時間(RT)が26~34min付近に検出されているピークが、重量平均分子量が10万~200万の範囲のタンパク質等の高分子有機物である。
【0031】
有機物処理手段としては、オゾン発生装置を備えるオゾン処理装置の他に、紫外線酸化処理装置等が挙げられる。処理性能等の観点から、オゾン発生装置を備えるオゾン処理装置が好ましい。有機物処理手段としては、オゾンマイクロバブルを用いるオゾン処理装置であることが好ましい。
【0032】
オゾンマイクロバブルは、例えば、直径が10μm~100μm程度の、オゾンを含む微細なオゾン含有気泡である。オゾンマイクロバブルを用いるオゾン処理装置により、高分子有機物および懸濁物質を含む高分子有機物含有水に対して、オゾンを含む微細気泡であるオゾンマイクロバブルの表面に懸濁物質を疎水性吸着させ浮上分離させて除去するとともに、オゾンマイクロバブルによる有機物酸化効果が得られる。また、オゾンをマイクロバブルとして用いることで、オゾン処理装置22の槽内にオゾンマイクロバブルを長時間保持することができるため、有機物との反応時間が増え、有機物の処理効果が飛躍的に向上すると考えられる。
【0033】
膜ろ過装置16としては、例えば、限外ろ過膜(UF膜)または精密ろ過膜(MF膜)等のろ過膜を有するものであればよく、特に制限はない。
【0034】
膜ろ過水中の残オゾンの濃度が高く、水槽10に返送されて生物の飼育等に影響を及ぼすことが懸念される場合は、膜ろ過装置16の後段に活性炭処理装置20等のオゾン分解手段を設けることが好ましい。膜ろ過装置16の後段にオゾン分解手段を備えることにより、残オゾンによる生物の飼育等への影響を低減することができる。このため、原水が養殖や水族館等の飼育水等である場合に、処理水を水槽10へ返送しても、生物への影響を低減することができる。
【0035】
オゾン分解手段としては、活性炭を充填した活性炭充填塔等の活性炭処理装置の他に、Pd担持担体、酸化チタン、白金等の過酸化物分解触媒を充填した充填塔等が挙げられ、コスト等の観点から活性炭充填塔等の活性炭処理装置が好ましい。また、過酸化物分解触媒を充填した充填塔への通水方向は、下向流と上向流のどちらでもよいが、過酸化物の分解率を高めるためには下向流が好ましい。
【0036】
図1の例では、処理水の全てが水槽10に返送されて飼育水に添加されているが、処理水の少なくとも一部が水槽10に返送されて飼育水に添加されればよく、処理水の一部が水槽10に返送されて飼育水に添加されてもよいし、処理水の全てが水槽10に返送されて飼育水に添加されてもよい。使用する水量を低減する等の観点から、処理水の一部が水槽10に返送されることが好ましく、処理水の全てが水槽10に返送されることがより好ましい。処理水の全てが水槽10に返送される閉鎖循環系とすることにより、使用する水量を低減することができる等の利点がある。また、循環は、常時循環してもよいし、定期的に循環してもよい。通常は、水槽10中の水質をできるだけ保つために、常時循環すればよい。
【0037】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置において、原水槽12と膜ろ過装置16との間に有機物濃度測定手段として有機物濃度測定装置14を備え、有機物濃度測定装置14により測定した原水の有機物濃度に応じて、原水槽12からオゾン処理装置22へ循環する循環流量を制御することが好ましい。有機物濃度測定装置14により測定した原水の有機物濃度が高い場合には、原水槽12からオゾン処理装置22へ循環する循環流量を高くし、有機物濃度が低い場合には、原水槽12からオゾン処理装置22へ循環する循環流量を低くすればよい。また、有機物濃度測定装置14により測定した原水の有機物濃度が所定の基準値以下(例えば1mg/L以下)になるように、循環流量を制御してもよい。有機物濃度測定装置14により測定した原水の有機物濃度が所定の基準値を超える等、一時的に高くなった場合には、原水槽12から膜ろ過装置16への原水の供給を停止して、原水槽12からオゾン処理装置22への循環処理を所定の時間行ってもよい。
【0038】
有機物濃度測定装置14としては、有機物の濃度が測定できるものであればよく、特に制限はない。有機物濃度測定装置14としては、例えば、原水の吸光度を測定する分光光度計等が挙げられる。有機物濃度測定装置14としては、例えば、有機汚染モニタ(株式会社明電舎製UVAM-222K)を利用することができる。
【0039】
循環流量の制御方法の例を以下に示すが、これに限定するものではない。
(1)ブランク水の有機物濃度測定(=A0)
(2)高分子有機物含有水の有機物濃度測定(=A1)
(3)演算
A’=A1―A0
インバータ28の出力(%)=B0+A’×B1
B0=基本出力、B1=係数
(4)上記(3)の演算結果を制御装置26によりインバータ28に出力し、ポンプ36の循環流量を変化
【0040】
有機物濃度測定装置14により測定した有機物濃度に応じて、原水槽12からオゾン処理装置22へ循環する循環流量を制御することにより、タンパク質等の有機物を含む高分子有機物含有水中の懸濁物質を、安定処理することが可能となり、膜ろ過装置16の膜洗浄のランニングコストや、水処理装置1が過剰に大きくなることによるイニシャルコストを削減することが可能となる。特に、給餌等の要因により飼育水中の高分子有機物濃度が変動する場合に有効である。
【0041】
本実施形態に係る水処理装置1および水処理方法は、水族館や養殖等、水中生物を飼育する際に用いられる飼育水等の処理に適用され、飼育水は海水であっても、淡水であってもよい。水族館や養殖のような水中生物を飼育する過程で生じる、タンパク質等の高分子有機物を含む高分子有機物含有水の処理に好適に適用される。生物を飼育する場合、給餌等の要因により飼育水中の有機物濃度が変動する(例えば、±0.5~10mg/L)特徴がある。特に、水族館や養殖のような水中生物を飼育する過程で生じる、タンパク質等の高分子有機物を含む海水の処理に適しており、魚類等の水中生物の養殖や水族館等の魚類等の水中生物の飼育水処理に用いられる閉鎖系循環処理により適している。すなわち、本実施形態に係る水処理装置1は、水中生物の飼育水の製造装置または処理装置として、好適に用いることができる。
【0042】
高分子有機物含有水中の高分子有機物の濃度は、例えば、0.1~5mg/Lの範囲である。高分子有機物含有水中の懸濁物質の濃度は、例えば、10~100mg/Lの範囲である。
【実施例
【0043】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
実施例では、図1に示す水処理装置1を用い、比較例では、オゾン処理装置、膜ろ過装置、活性炭処理装置を直列接続とした実験系である、図3に示す水処理装置を用いた。実施例の実験条件を表1、比較例の実験条件を表2に示す。
【0045】
比較例で用いた図3に示す水処理装置では、水槽100から高分子有機物含有水を原水槽102に貯留した後、ポンプによりストレーナ114を通してオゾン処理装置104に供給した。オゾン処理装置104にはオゾン発生装置116で発生させたオゾンマイクロバブルを供給した。オゾン処理したオゾン処理水をオゾン処理水槽106に貯留した後、ポンプにより膜ろ過装置108に供給し、膜ろ過処理を行った。膜ろ過水を膜ろ過水槽110に貯留した後、ポンプにより活性炭処理装置112に供給し、活性炭処理を行った。処理水は水槽100に返送した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例において、有機物濃度測定装置14により測定した有機物濃度に応じて、原水槽12からオゾン処理装置22へ循環する循環流量を制御した。循環流量の制御方法を以下に示す。
(1)ブランク海水(人工海水)の有機物濃度測定(=A0)
(2)高分子有機物含有水(飼育水)の有機物濃度測定(=A1)
(3)演算
A’=A1―A0
インバータ28の出力(%)=B0+A’×B1
B0=基本出力、B1=係数
(4)上記(3)の演算結果を制御装置26によりインバータ28に出力し、ポンプ36の循環流量を変化
【0049】
実施例および比較例の膜間差圧のトレンドを図4に示す。
【0050】
図4に示すように、比較例に比べて、実施例では膜ろ過装置の膜間差圧の上昇を抑制することができた。この結果から、実施例の水処理装置および水処理方法によって、膜のファウリングを抑制することが可能となり、膜ろ過装置の安定運転や膜の薬品洗浄頻度を抑制できることが示唆された。また、オゾン処理装置への循環流量を高めに設定することで、膜ろ過装置の膜間差圧上昇を抑制することは可能であるが、ポンプの電気代等のコストがかかってしまう。
【0051】
このように、実施例では、高分子有機物含有水を処理する水処理装置および水処理方法において、膜のファウリングを抑制し、安定した運転が可能となった。
【符号の説明】
【0052】
1 水処理装置、10,100 水槽、12,102 原水槽、14 有機物濃度測定装置、16,108 膜ろ過装置、18,110 膜ろ過水槽、20,112 活性炭処理装置、22,104 オゾン処理装置、24,116 オゾン発生装置、26 制御装置、28 インバータ,30,32,34,36 ポンプ、38 流量計、40 原水配管、42 原水供給配管、44 膜ろ過水配管、46 膜ろ過水供給配管、48 返送配管、50 逆洗水配管、52,54 原水循環配管、56 オゾン供給配管、58 逆洗排水配管、106 オゾン処理水槽、114 ストレーナ。
図1
図2
図3
図4