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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】キズ取り機構
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/12 20060101AFI20220107BHJP
   B21D 5/08 20060101ALI20220107BHJP
   B23D 79/00 20060101ALI20220107BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20220107BHJP
   B24B 27/033 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B24B7/12
B21D5/08 P
B23D79/00 A
B24B9/00 601C
B24B27/033 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017028197
(22)【出願日】2017-02-17
(65)【公開番号】P2018130816
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】青木 広之
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198790(JP,A)
【文献】特開平06-126609(JP,A)
【文献】特開2013-099822(JP,A)
【文献】実開昭57-145656(JP,U)
【文献】特開2007-181911(JP,A)
【文献】特開昭61-031513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0171932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/033
B21D 5/08
B23D 79/00
B24B 7/12
B24B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール成形機により鋼製の板材に波状断面を付与する製造設備において前記ロール成形機の下流側に設けられており、
波状断面を付与された前記板材の流れ方向に沿った当該板材の縁における付着物を剥ぎ取る縁キズ取り部であって、前記板材をその厚さ方向に挟むようにして、上側から前記縁に当接する上縁当接部と、下側から前記縁に当接する下縁当接部とを有する縁キズ取り部と、
波状断面を付与された前記板材の流れ方向に沿った当該板材の面における擦過痕を磨き取る面キズ取り部であって、前記板材をその厚さ方向に挟むようにして、上側から前記面に当接する表面当接部と、下側から前記面に当接する背面当接部とを有する面キズ取り部と、
を備えることを特徴とするキズ取り機構。
【請求項2】
前記縁キズ取り部は、前記製造設備に固定される固定部と、前記縁に当接する縁当接部と、前記固定部と前記縁当接部とを連結する腕部とを備え、
前記面キズ取り部は、前記製造設備に固定される固定部と、前記面に当接する面当接部と、前記固定部と前記面当接部とを連結する腕部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のキズ取り機構。
【請求項3】
前記縁キズ取り部は、前記流れ方向において前記面キズ取り部の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキズ取り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を製造する製造設備に設けられるキズ取り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両や歩行者を保護するため支柱にレールビーム(板材)を取り付けて道路の側部に設置されるガードレールが知られている。ガードレールのレールビームは、製造設備(製造ライン)において鋼板をロールフォーミングすることにより波状断面を有するように加工成形される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-085052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図6に示すように、ロールフォーミング中に、レールビーム200の長手方向に延びる縁210にはバリやカエリに類似した付着物211が発生したり、レールビーム200の表面220a及び背面220bには擦過痕221が付いたりすることがある。レールビーム200に付着物211や擦過痕221等のキズを発見した場合、作業員が製造設備上を流れるレールビーム200に接近してキズ211,221を取り除くことは、作業員の安全の観点から実施することはできない。そのため、製造設備から搬出されて積み重ねられたレールビーム200の積層群から、レールビーム200を抜き出してキズ211,221を取り除かなければならず作業効率が悪い。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造設備上において板材に付いたキズを取り除くことを可能にするキズ取り機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、板材の製造設備において、該製造設備における前記板材の流れ方向に沿った当該板材の端部におけるキズを取るキズ取り機構であって、前記端部におけるキズを取るキズ取り部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記端部における縁のキズを取る縁キズ取り部と、前記端部における面のキズを取る面キズ取り部とを備えることが好ましい。
【0008】
また、前記縁キズ取り部は、前記製造設備に固定される固定部と、前記縁に当接する縁当接部と、前記固定部と前記縁当接部とを連結する腕部とを備え、前記面キズ取り部は、前記製造設備に固定される固定部と、前記面に当接する面当接部と、前記固定部と前記面当接部とを連結する腕部とを備えることが好ましい。
【0009】
また、前記縁キズ取り部は、前記板材をその厚さ方向に挟むようにして、上側から前記縁に当接する上縁当接部と、下側から前記縁に当接する下縁当接部とを有し、前記面キズ取り部は、前記板材をその厚さ方向に挟むようにして、上側から前記面に当接する表面当接部と、下側から前記面に当接する背面当接部とを有することが好ましい。
【0010】
また、前記縁キズ取り部は、前記流れ方向において前記面キズ取り部の上流側に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造設備上において板材に付いたキズを取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るキズ取り機構を備えた製造設備を部分的に示す図である。
図2】縁キズ取り部材セットの構成を説明する図である。
図3】縁キズ取り部材における縁当接部の構成を説明する図である。
図4】面キズ取り部材セットの構成を説明する図である。
図5】面キズ取り部材における縁当接部の構成を説明する図である。
図6】レールビームの一部を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施の形態をとりうる。
<キズ取り機構>
図1は、本実施の形態に係るキズ取り機構を備えた製造設備を部分的に示す図である。図2は、縁キズ取り部材セットの構成を説明する図であり、図2(a)は、上縁キズ取り部材の斜視図であり、図2(b)は、下縁キズ取り部材の斜視図である。図3は、縁キズ取り部材の縁当接部の構成を説明する図であり、図3(a)は、縁当接部の斜視図であり、図3(b)は、除去部材を備えた縁当接部の断面図である。図4は、面キズ取り部材セットの構成を説明する図であり、図4(a)は、表面キズ取り部材の斜視図であり、図4(b)は、背面キズ取り部材の斜視図である。図5は、面キズ取り部材の当接部の構成を説明する図であり、図5(a)は、除去部材を備えた面当接部の斜視図であり、図5(b)は、除去部材を備えた面当接部の側面図である。
【0014】
キズ取り機構1は、例えば、ガードレールに備え付けられるレールビームといった鋼製の帯状板材に、例えばロールフォーミングにより波状断面を付与した板材(以下、鋼板ともいう。)200を製造する製造設備Lに設けられる。キズ取り機構1は、製造設備L上を搬送される鋼板200の流れ方向Fにおいて、例えばロールフォーミングを行うロール成形機(図示せず。)の下流側に設けられている。キズ取り機構1は、流れ方向Fに沿った鋼板200の側端部におけるキズ211,221を擦り取る。
【0015】
図1に示すように、キズ取り機構1は、鋼板200の側端部の縁(エッジ)210に存在する鋼板200のバリやカエリに類似した付着物211を取る縁キズ取り部材セット(縁キズ取り部)10、及び側端部の面220(表面220a,背面220b)に付いた擦過痕221を取る面キズ取り部材セット(面キズ取り部)20を備える。縁キズ取り部材セット10は、流れ方向Fにおいて面キズ取り部材セット20の上流側に設けられている。
ここで、「側端部の縁210」とは、表面220a側の上縁210a及び背面220b側の下縁210bのことである。なお、付着物211及び擦過痕221は、製造設備Lにおいて鋼板200の製造中にロール成形機において発生するキズであり、以下、それぞれを、単に「キズ211」、「キズ221」ともいう。
【0016】
[縁キズ取り部材セット]
縁キズ取り部材セット10は、上縁キズ取り部材11と、下縁キズ取り部材16とを備える。なお、縁キズ取り部材セット10において、上縁キズ取り部材11は、製造設備Lにおける鋼板200の流れ方向Fにおいて、下縁キズ取り部材16に対して下流側に配置されている。
【0017】
(上縁キズ取り部材)
上縁キズ取り部材11は、鋼板200の厚さ方向において上側(表面220a側)から鋼板200の上縁210aに接触してキズ(付着物)211を剥ぎ取る。図2(a)に示すように、上縁キズ取り部材11は、鋼板200の上縁210aに当接する上縁当接部12と、製造設備Lに固定される固定部13と、上縁当接部12と固定部13とを連結する腕部14とを備える。
図3(a)、(b)に示すように、上縁当接部12は、互いに離間自在に連結された平面視略矩形の一対の金属板材12a,12bと、当該一対の金属板材12a,12bの間に挟まれた、例えば金属製のたわし等の除去部材12cとを備える。
【0018】
一対の金属板材12a,12bのうち一方の金属板材12aは、その周縁部が他方の金属板材12bに向かって折り曲げて形成された折曲げ部12aaを有する。折曲げ部12aaは、金属板材12aの周縁部のうち平行に延びる一対の部分に形成されている。折曲げ部12aaの先端は、縁部の延在方向に沿って波状に形成された歯部12abを有する。
金属板材12aは、折曲げ部12aaを有していない一の周縁部の中央部に、腕部14が入り込む切欠き部12acを有する。金属板材12aは、腕部14と切欠き部12acにおいて溶接されている。また、金属板材12aは、その中央部に厚さ方向に貫通した貫通孔(図示せず。)を有する。
他方の金属板材12bは、一方の金属板材12aを臨む内面の中央部に、周面にネジ山が形成された棒状部12baを有する。図示の実施の形態において金属板材12bは、金属板材12aよりも外方に大きく形成されているが同じであってもよい。
【0019】
一対の金属板材12a,12bは、腕部14が互いに溶接されることで連結されている。また、一対の金属板材12a,12bにおいては、他方の金属板材12bの棒状部12baを金属板材12aの貫通孔に挿通して、挿通側とは反対側で、例えば蝶ナットNを棒状部12baに締結することで互いの間隔が調節される。
【0020】
除去部材12cは、他方の金属板材12bの一方の金属板材12aとは反対側の外面を覆い、端部が一方の金属板材12aの歯部12abと、一方の金属板材12aを臨む他方の金属板材12bの内面との間で挟持されている。除去部材12cは、製造設備Lに設置された状態において下方(鋼板200の表面220a)を臨むようになっている。
一対の金属板材12a,12bは、蝶ナットNを回すことで互いの間隔を調節することができ、間隔を狭める方向に蝶ナットNを回すことで一方の金属板材12aの歯部12abと他方の金属板材12bとの間で除去部材12cが確実に挟持される。
【0021】
図2(a)に示すように、固定部13は、平面視略矩形状の金属製の板材により形成されている。固定部13は、互いに平行に延在する一対の切込み部13aを有する。切込み部13aは、長手方向に延びる一対の辺のうち一方の辺から他方の辺に向かって延在している。
腕部14は、一端が固定部13に溶接により連結されており、他端が一方の金属板材12aに溶接により連結されている。
腕部14は、固定部13に対して垂直に延びる垂直部位14aと、固定部13とは反対側で垂直部位14aに対して略直角に曲がって延びる直角部位14bと、当該直角部位14bに対して固定部13側に向かって斜めに延びる傾斜部位14cとを有する。図示の実施の形態における傾斜部位14cは、上縁キズ取り部材11が製造設備Lに取り付けられた場合、波状断面を有する鋼板200の側端部に向かい合うようになっている。傾斜部位14cは、一方の金属板材12aの切欠き部12acに進入した状態で一方の金属板材12aの切欠き部12ac、及び他方の金属板材12bの内面に溶接により連結されている。上縁当接部12は、鋼板200の上縁210aに表面220a側から当接する。
【0022】
(下縁キズ取り部材)
図2(b)に示すように、下縁キズ取り部材16は、鋼板200の厚さ方向において下側(背面220b側)から鋼板200の下縁210bにおけるキズ211を取る。下縁キズ取り部材16は、鋼板200の下縁210bに当接する下縁当接部17と、製造設備Lに固定される固定部18と、下縁当接部17と固定部18とを連結する腕部19とを備える。下縁当接部17の除去部材12cは、製造設備Lに設置された状態において上方(鋼板200の背面220b)を臨むようになっている。
なお、下縁当接部17は、一対の金属板材17a,17bと、除去部材17cとを備え、固定部18は、切込み部18aを備える。下縁当接部17及び固定部18は、上縁キズ取り部材11の上縁当接部12及び固定部13と同じ構成を有するため、下縁当接部17及び固定部18の具体的な説明は省略する。
腕部19は、固定部18に対して垂直に延びる垂直部位19aを有する。垂直部位19aは、その一端が下縁当接部17に溶接により連結されており、他端が固定部18に溶接により連結されている。垂直部位19aは、一方の金属板材17aに溶接により連結されており、具体的には、一方の金属板材17aと垂直部位19aとは、互いに所定の角度をなしている。この角度は、下縁当接部17が、鋼板200の下縁210bに背面220b側から当接するように設定された角度である。
【0023】
[面キズ取り部材セット]
図1に示すように、面キズ取り部材セット20は、表面キズ取り部材21と、背面キズ取り部材26とを備える。なお、面キズ取り部材セット20において、表面キズ取り部材21は、製造設備Lの鋼板200の流れ方向Fにおいて、背面キズ取り部材26に対して下流側に配置されている。
【0024】
(表面キズ取り部材)
図4(a)に示すように、表面キズ取り部材21は、鋼板200の厚さ方向において上側(表面220a側)から鋼板200の表面220aにおけるキズ221aを磨き取る。表面キズ取り部材21は、鋼板200の表面220aに当接する表面当接部22と、製造設備Lに固定される固定部23と、表面当接部22と固定部23とを連結する腕部24とを備える。
【0025】
図5に示すように、表面当接部22は、互いに離間自在に連結された平面視略矩形の一対の金属板材22a,22bと、当該一対の金属板材22a,22bのうち金属板材22bに取り付けられて擦過痕221を除去する、例えば不織布等の除去部材22cとを備える。
【0026】
一対の金属板材22aのうち一方の金属板材22aは、その中央部に厚さ方向に貫通した貫通孔(図示せず。)を有する。金属板材22aは、その周縁部が他方の金属板材22bに向かって折り曲げられて形成された折曲げ部22aaを有する。図示の実施の形態において折曲げ部22aaは、金属板材22aの周縁部のうち平行に延びる一対の部分に形成されているが、全周に亘って形成されていてもよい。
他方の金属板材22bは、一方の金属板材22aを臨む内面においてその中央部に厚さ方向に貫通した貫通孔(図示せず。)を有する。
除去部材22cは、他方の金属板材22bの一方の金属板材22aとは反対側の外面に取り付けられている。具体的には、除去部材22cは、ボルトBを当該除去部材22cに差し込んで、他方の金属板材22b及び一方の金属板材22aの貫通孔に挿通することで金属板材22bに取り付けられている。除去部材22cは、製造設備Lに設置された状態において下方(鋼板200の表面220a)を臨むようになっている。除去部材22cの表面粗さは、例えば、♯120~240である。
【0027】
一対の金属板材22a,22bは、他方の金属板材22bを一方の金属板材22aの折曲げ部22aaの間に収容している。ボルトBは、除去部材22c側から金属板材22bの貫通孔及び金属板材22aの貫通孔に挿通されて、一方の金属板材22aから突出したボルトBの先端に蝶ナットNを締結して、他方の金属板材22bは、金属板材22aに連結される。
【0028】
なお、固定部23は、切込み部23aを備え、腕部24は、垂直部位24a、直角部位24b及び傾斜部位24cを備える。固定部23及び腕部24は、縁キズ取り部材セット10の固定部13及び腕部14と同じ構成を有するので、固定部23及び腕部24の具体的な構成の説明は省略する。
【0029】
(背面キズ取り部材)
背面キズ取り部材26は、鋼板200の厚さ方向において下側(裏側)から鋼板200の背面220bにおけるキズ221を取る。背面キズ取り部材26は、鋼板200の背面220bに当接する背面当接部27と、製造設備Lに固定される固定部28と、背面当接部27と固定部28とを連結する腕部29とを備える。背面当接部27の除去部材22cは、製造設備Lに設置された状態において上方(鋼板200の背面220b)を臨むようになっている。
なお、背面当接部27は、一対の金属板材27a,27bと、除去部材27cとを備え、固定部28は、切込み部28aを備える。背面当接部27及び固定部28は、表面キズ取り部材21の表面当接部22及び固定部23と同じ構成を有するため、背面当接部27及び固定部28の具体的な説明は省略する。
【0030】
腕部29は、固定部28に対して垂直に延びる垂直部位29aを有する。垂直部位29aは、一方の金属板材27aに溶接により連結されており、具体的には、一方の金属板材27aと垂直部位29aとは、互いに所定の角度をなしている。この角度は、背面当接部27が、鋼板200の背面220bに当接するように設定された角度である。
【0031】
<キズ取り機構の適用例>
製造設備Lにおいてロール成形機のロールフォーミングにより波状断面が付与された鋼板200には、図6に示すように、縁210に付着物211、表面220a及び背面220bに擦過痕221が存在していることがある。
そこで、2つのキズ取り機構1,1が、鋼板200の製造設備Lにおいて、例えばロール成形機の下流側に設置される。図1に示すように、製造設備Lには、鋼板200の流れ方向Fに対して直交するようにH鋼3が設けられている。H鋼3は、流れ方向Fに沿って4本設けられている。各キズ取り機構1,1は、H鋼3の長手方向において所定の間隔をあけてH鋼3上に対向するようにして固定されている。
【0032】
キズ取り機構1は、製造設備Lにおける鋼板200の流れ方向Fに沿って、縁キズ取り部材セット10、面キズ取り部材セット20の順に配置されている。具体的には、流れ方向Fの上流側から、下縁キズ取り部材16、上縁キズ取り部材11、背面キズ取り部材26及び表面キズ取り部材21の順に各H鋼3上に固定されている。
キズ取り機構1が固定される各H鋼3の位置には、周面にネジ山が形成された2本の棒状部材31が流れ方向Fに沿って並んで設けられている。この棒状部材31に、上縁キズ取り部材11、下縁キズ取り部材16、表面キズ取り部材21及び背面キズ取り部材26を、それぞれの固定部13,18,23,28を切込み部13a,18a,23a,28aにおいて押し込む。
【0033】
各切込み部13a,18a,23a,28aの終端部が棒状部材31に当接した位置において、棒状部材31に蝶ナットNを締結させて各固定部13,18,23,28をH鋼3に固定する。この固定状態において、上縁キズ取り部材11の上縁当接部12及び下縁キズ取り部材16の下縁当接部17はそれぞれ、鋼板200の上縁210a及び下縁210bに当接するようになり、表面キズ取り部材21の表面当接部22は、鋼板200の表面220aに当接するようになり、背面キズ取り部材26の背面当接部27は、鋼板200の背面220bに当接するようになる。つまり、この状態において、キズ取り機構1は、製造設備Lにおいて所望の位置に位置決めされている。
【0034】
キズ取り機構1により、流れ方向Fに搬送される鋼板200のキズ211,221に対してオンラインにおいて処置を施すことができるので、オフラインにおける作業員による処置に比べて作業負担を軽減することができる。さらに、キズ取り機構1により、作業員によるキズ除去に比べてキズ除去の程度が一定になり鋼板200の品質が向上する。
【0035】
流れ方向Fにおいて、縁キズ取り部材セット10、面キズ取り部材セット20を直列に配置することにより、鋼板200の縁210及び面220に発生する異なるキズ211,221に対して適切な処置を施すことができる。また、縁キズ取り部材セット10において剥ぎ取られずに残ってしまった縁210におけるキズ211を、面キズ取り部材セット20において除去することもできる。
【0036】
縁及び面キズ取り部材セット10,20においては、鋼板200をその厚さ方向において挟むようにして縁及び面キズ取り部材セット10,20の上縁当接部12及び下縁当接部17、表面当接部22及び背面当接部27が鋼板200に上下(表面220a及び背面220b側)から当接している。かくして、鋼板200は、縁及び面キズ取り部材セット10,20により異なる方向(上下方向)から押圧されているので、上縁当接部12、下縁当接部17、表面当接部22及び背面当接部27は、それぞれ鋼板200の縁210及び面220に適切な力によって確実に当接することができる。
【0037】
上縁キズ取り部材11における腕部14の傾斜部位14c及び表面キズ取り部材21における腕部24の傾斜部位24cは、当接する鋼板200の断面形状に合わせた角度を有している。したがって、キズ取り機構1を製造設備Lに設置した状態において、上縁キズ取り部材11の上縁当接部12及び表面キズ取り部材21の表面当接部22は、それぞれ鋼板200の上縁210a及び表面220aに確実に当接することができる。
また、下縁キズ取り部材16における下縁当接部17及び背面キズ取り部材26はそれぞれ、当接する鋼板200の断面形状に合わせた角度で腕部24,29に連結されているので、それぞれ鋼板200の下縁210b及び背面220bに確実に当接することができる。
【0038】
キズ取り機構1は、固定部13,18,23,28を製造設備Lの棒状部材31に押し込んで蝶ナットNを締結するだけで簡単に製造設備Lに設置することができる。棒状部材31は、規格化された鋼板200に合わせてH鋼3に設けられているので、縁及び面キズ取り部材セット10,20は、それぞれ鋼板200の所望の縁210及び面220に確実に当接するようになっている。さらに、固定部13,18,23,28における切込み部13a,18a,23a,28aの存在により、製造設備Lにおける固定位置を鋼板200の幅に応じて自由に変更することもできる。
【0039】
<その他>
なお、縁キズ取り部材セット10により、鋼板200の上縁210aと下縁210bとの間の領域におけるキズも除去することができる。
また、上縁キズ取り部材11の腕部14及び表面キズ取り部材21の腕部24における傾斜部位14c,24cはそれぞれ、直角部位14b,24bに対して、例えばヒンジを介して連結されていてもよく、下縁キズ取り部材16の腕部19及び背面キズ取り部材26の腕部29はそれぞれ、上縁当接部12及び下縁当接部17に対して、例えばヒンジを介して連結されていてもよい。かくして、鋼板200にその断面形状に合わせて各当接部12,17,22,27を正確に対向させることができる。
また、上縁キズ取り部材11と表面キズ取り部材21とを一体に構成し、下縁キズ取り部材16と背面キズ取り部材26とを一体に構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 キズ取り機構
10 縁キズ取り部材セット(縁キズ取り部)
11 上縁キズ取り部材
12 上縁当接部
13 固定部
14 腕部
16 下縁キズ取り部材
17 下縁当接部
18 固定部
19 腕部
20 面キズ取り部材セット(面キズ取り部)
21 表面キズ取り部材
22 表面当接部
23 固定部
24 腕部
26 背面キズ取り部材
27 背面当接部
28 固定部
29 腕部
200 鋼板(板材)
210 縁
210a 上縁
210b 下縁
220 面
220a 表面
220b 背面
L 製造設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6