(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】粘着テープロール
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220107BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20220107BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220107BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
B32B27/00 M
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2017066009
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2019-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2016066009
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 嘉謨
(72)【発明者】
【氏名】日野 久仁宏
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 克典
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-136367(JP,A)
【文献】特開平09-188857(JP,A)
【文献】特開平08-012952(JP,A)
【文献】特開2013-072062(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1332315(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層とを有する粘着テープをロール状に捲回した粘着テープロールであって、
巻長さが300m以上であり、
前記基材層の厚さは、20~200μmであり、前記粘着剤層の厚さは、2~30μmであり、
前記基材層は、ポリオレフィン系樹脂と離型剤(a)を含有し、前記粘着剤層は、
スチレン系エラストマーと離型剤(b)
と粘着付与剤とを含有し、
前記粘着剤層中の前記離型剤(b)の含有量
は、前記スチレン系エラストマー100重量部に対して0.5~1.5重量部であり、前記基材層中の前記離型剤(a)の含有量
は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5~4重量部であり、かつ、前記離型剤(b)の含有量が前記離型剤(a)の含有量に対して1/2倍~1倍であり、
巻芯側の端部から10mの位置における前記粘着剤層の最表面における前記離型剤(b)の濃度を巻芯側濃度とし、巻外側の端部から10mの位置における前記粘着剤層の最表面における前記離型剤(b)の濃度を巻外側濃度としたときに、下記式(1)で表される濃度変化率が10%以下である
ことを特徴とする粘着テープロール。
|巻芯側濃度-巻外側濃度|/巻外側濃度×100 (1)
【請求項2】
前記粘着剤層中の前記粘着付与剤の含有量が、前記粘着剤層を構成するベース樹脂100重量部に対して40重量部以下であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープロール。
【請求項3】
離型剤(a)及び(b)は、アミン系離型剤、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤又は金属石鹸系離型剤であることを特徴とする請求項1
又は2記載の粘着テープロール。
【請求項4】
離型剤(a)及び(b)は、飽和脂肪酸ビスアミドであることを特徴とする請求項1、2
又は3記載の粘着テープロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽展開性であり、かつ、繰り出し位置に係わらず粘着テープの粘着力の変化が少ない粘着テープロールに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは簡便に接合が可能なことから各種産業分野に用いられている。建築分野では養生シートの仮固定、内装材の貼り合わせ等に、自動車分野ではシート、センサー等の内装部品の固定、サイドモール、サイドバイザー等の外装部品の固定等に、電気電子分野ではモジュール組み立て、モジュールの筐体への貼り合わせ等に粘着テープが用いられている。また、光学デバイス、金属板、塗装した金属板、樹脂板、ガラス板等の部材の表面を保護するための表面保護テープとしても、基材層と、その一方の面に積層された粘着剤層とを有する粘着テープが用いられている(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
粘着テープは、通常、共押出法等により製造された後、ロール状に捲回した粘着テープロールの形で出荷され、適宜粘着テープロールから繰り出し、適当な形状に切断して供される。
図1に、粘着テープロールからの粘着テープの繰り出しを説明する模式図を示した。
図1において粘着テープ2は、基材層21と粘着剤層22とからなる。粘着テープロール1は、粘着テープ2を捲回してなる。粘着テープ2は、粘着テープロール1から繰り出されて、使用に供される。
【0004】
粘着テープには用途毎に要求される粘着力を発揮できる一方、粘着テープロールから繰り出すときに必要な力(展開力)は小さい方(いわゆる「軽展開性」)が好ましい。
しかしながら、同じ粘着テープであるにも係わらず、粘着テープロールから繰り出した粘着テープの粘着力に大きな差異が生じることがあるという問題があった。即ち、粘着テープロールの巻外付近から繰り出した粘着テープでは高い粘着力を示すのに対して、巻芯付近から繰り出した粘着テープでは粘着力が低くなってしまい、品質の安定性の観点から大きな問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-129085号公報
【文献】特開平6-1958号公報
【文献】特開平8-12952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、軽展開性であり、かつ、繰り出し位置に係わらず粘着テープの粘着力の変化が少ない粘着テープロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材層と粘着剤層とを有する粘着テープをロール状に捲回した粘着テープロールであって、前記基材層は、ポリオレフィン系樹脂と離型剤(a)を含有し、前記粘着剤層は、離型剤(b)を含有する粘着テープロールである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、粘着テープロールから繰り出した粘着テープの粘着力に大きな差異が生じる原因について検討した。その結果、基材層に含まれる離型剤の転写の偏りに原因があることを突き止めた。
粘着テープロールでは、軽展開性を確保するために、基材層に離型剤を配合することが行われる。例えば、基材層としてポリオレフィン系樹脂を用い、これに離型剤を配合すると、基材層から離型剤がブリードアウトして基材層の表面にごく薄い離型層が形成される。粘着テープロールにおいては、基材層の表面に形成された離型層は、巻きつけた粘着剤層の粘着面に接触する。これにより、粘着テープロールの軽展開性を確保することができる。
このような軽展開性の粘着テープロールにおいては、基材層の表面に形成された離型層が巻きつけた粘着剤層の粘着面に接触することから、離型層の一部が粘着剤層の表面に転写されることがある。離型層の転写により粘着テープの粘着力は低下するが、一定以上の粘着力を有する粘着剤層を選択すれば、実用上の問題はないと考えられてきた。しかしながら、本発明者らは、このような離型層の転写の程度が、繰り出し位置によって大きく異なることを突き止めた。粘着テープロールに捲回された粘着テープには、「巻き締め」と呼ばれる応力がかかる。この応力は、粘着テープロール中において一定ではなく、巻芯付近では強く、巻外付近では弱くなる。従って、巻芯付近においては離型層が粘着剤層の粘着面により強く押しつけられ、転写の程度がより大きくなるのに対して、巻外付近では押しつけられる応力がより弱く、転写の程度がより小さくなる。これにより、巻外付近から繰り出した粘着テープでは、粘着剤層の表面にあまり離型層が転写されておらず高い粘着力を示すのに対して、巻芯付近から繰り出した粘着テープでは、粘着剤層の表面に多量の離型層が転写されていて粘着力が低くなってしまうものと考えられた。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、基材層に離型剤を配合するだけではなく、粘着剤層にも離型剤を配合することにより、軽展開性であり、かつ、繰り出し位置に係わらず粘着力の変化が少ない粘着テープロールを提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の粘着テープロールは、基材層と粘着剤層とを有する粘着テープをロール状に捲回したものである。
上記基材層は、ポリオレフィン系樹脂と離型剤(a)を含有する。このような基材層では、離型剤がブリードアウトして基材層の表面にごく薄い離型層が形成されることから、軽展開性の粘着テープロールを得ることができる。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、従来公知のポリオレフィン系樹脂を用いることができ、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂等が挙げられる。
上記ポリプロピレン樹脂として、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。
上記ポリエチレン樹脂として、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。なかでも、透明性、剛性、耐熱性の観点からポリプロピレン樹脂が好ましく、ホモポリプロピレン、又は、プロピレンと少なくとも1種のα-オレフィンとの共重合体がより好ましい。
【0011】
上記離型剤(a)は、一般に粘着テープの基材層に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、アミン系離型剤、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、金属石鹸系離型剤等が挙げられる。これらの離型剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アミン系離型剤、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤又は金属石鹸系離型剤が好ましく、アミン系離型剤がより好ましく、アミン系離型剤のなかでは飽和脂肪酸ビスアミドがより好ましい。
【0012】
上記飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸脂肪族ビスアミドや、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、N-N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等の飽和脂肪酸芳香族ビスアミドが挙げられる。飽和脂肪酸脂肪族ビスアミドのなかでは、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。また、飽和脂肪酸芳香族ビスアミドのなかでは、m-キシリレンビスステアリン酸アミドが好ましい。これらの飽和脂肪酸ビスアミドは単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記シリコン系離型剤としては、例えば、シリコンオイル、シランカップリング剤、シリコンポリマー等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合したポリマーが好ましい。
上記フッ素系離型剤としては、例えば、炭素数1~18のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記炭素数1~18のパーフルオロアルキル基は、炭素数1~6であることがより好ましい。上記炭素数1~18のパーフルオロアルキル基は、直鎖状及び分岐状のどちらでも構わない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記炭化水素系離型剤としては、例えば、合成品ワックス、天然品ワックス等が挙げられる。なかでも、PEワックス、PPワックスが好ましい。
上記金属石鹸系離型剤としては、例えば、長鎖脂肪酸又は有機酸の金属塩(アルカリ金属以外の金属の塩)等が挙げられる。
【0014】
上記基材層中の上記離型剤(a)の含有量は特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は4重量部である。上記離型剤(a)の含有量がこの範囲内であると、基材層からブリードアウトして形成される離型層の厚みが1~100nm程度となり、粘着テープロールの軽展開性を確保しながら、過剰な転写による粘着剤層の粘着力の低下を防止することができる。上記離型剤(a)の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0015】
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤等の添加剤、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤を含有してもよい。
【0016】
上記基材層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は200μmである。上記基材層の厚さがこの範囲内であると、取り扱い性に優れる。上記基材層の厚さのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は180μmである。
【0017】
上記粘着剤層を構成するベース樹脂は特に限定されないが、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、オレフェン系エラストマー等が挙げられる。なかでも、高い粘着力(初期粘着力)を発揮することができ、また、スチレン含有量により硬度を自由に調整しやすいことから、スチレン系エラストマーが好適である。
【0018】
上記スチレン系エラストマーとしては特に限定されず、例えば、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)等が挙げられる。
【0019】
上記スチレン系エラストマーのなかでも、高分子の一次構造設計において適度な粘弾性に調整しやすいことから、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)が特に好適である。
【0020】
上記粘着剤層は、離型剤(b)を含有する。これにより、繰り出し位置に係わらず粘着力の変化が少ない粘着テープロールを提供することができる。
この理由については必ずしも明らかではないが、粘着剤層にも離型剤を配合することにより、基材層側からの不規則な離型層の転写を防止できるためではないかと考えられる。
【0021】
上記粘着剤層に含有される離型剤(b)としては、上記基材層に含有される離型剤(a)と同様のものを用いることができる。
なお、上記基材層に含有される離型剤(a)と上記粘着剤層に含有される離型剤(b)とは、同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0022】
上記粘着剤層中の上記離型剤(b)の含有量は特に限定されないが、上記ベース樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は4重量部である。上記離型剤(b)の含有量がこの範囲内であると、適度な粘着力を確保しながら、繰り出し位置による粘着力の変化を低減することができる。上記離型剤(b)の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0023】
上記粘着剤層中の上記離型剤(b)の含有量と上記基材層中の上記離型剤(a)の含有量は、重量比で1/3~3の範囲内であることが好ましい。両者の比がこの範囲内であると、適度な粘着力と、繰り出し位置による粘着力の変化の低減とをより確実に両立することができる。
【0024】
上記粘着剤層は、粘着力の制御等を目的に、必要に応じて、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤、接着昂進防止剤等の添加剤を含有してもよい。
上記粘着剤層中の上記粘着付与剤の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層を構成するベース樹脂100重量部に対して40重量部以下であることが好ましい。
【0025】
上記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は2μm、好ましい上限は30μmである。上記粘着剤層の厚さがこの範囲内であると、被着体に対する充分な粘着力と取り扱い性とを両立することができる。上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は2.5μm、より好ましい上限は20μmである。
【0026】
本発明の粘着テープロールは、上記粘着テープをロール状に捲回したものである。
本発明の粘着テープロールは、芯材を用いずに粘着テープのみを捲回したものであってもよく、芯材の周りに粘着テープを捲回したものであってもよい。
【0027】
本発明の粘着テープロールの巻長さは特に限定されないが、巻長さが300m以上である場合に、特に本発明の効果が発揮される。これは、巻長さが長いほど、巻芯付近と巻外付近との「巻き締め」による応力差が大きくなるためと考えられる。上記巻長さは、500m以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明の粘着テープロールは、巻芯側サンプルの上記粘着剤層最表面における離型剤の濃度と、巻外側サンプルの上記粘着剤層最表面における離型剤の濃度との濃度変化率が30%以下であることが好ましい。
なお、巻芯側サンプルとは、巻芯側の端部から10mまでの位置で切り出したサンプルを意味し、巻外側サンプルとは、巻外側の端部から10mまでの位置で切り出したサンプルを意味する。上記濃度変化率は、下記式により算出される。
濃度変化率=|巻芯側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度-巻外側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度|/巻外側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度×100
【0029】
本発明の粘着テープロールを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
上記粘着テープを製造する方法としては、例えば、予めTダイ成形又はインフレーション成形にて得られた層上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により他の層を積層する方法、各々の層を独立してフィルムとした後、得られた各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、上記基材層及び粘着剤層の各材料を多層の押出機に供給して成形する共押出成形が好ましく、厚み精度の点から、Tダイ成形がより好ましい。
このようにして製造された粘着テープをロール状に捲回することにより本発明の粘着テープロールを得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、軽展開性であり、かつ、繰り出し位置に係わらず粘着テープの粘着力の変化が少ない粘着テープロールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】粘着テープロールからの粘着テープの繰り出しを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0033】
<粘着剤層のベース樹脂>
粘着剤層のベース樹脂としては、以下の合成例1、2で合成したもの、及び、市販品1を用いた。合成例及び市販品のベース樹脂について、表1に示した。
【0034】
(1)合成例1
窒素置換された反応容器に、脱気、脱水されたシクロヘキサン500重量部、スチレン15重量部及びテトラヒドロフラン5重量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn-ブチルリチウム0.13重量部を添加して、昇温重合を行い、芳香族アルケニル重合体ブロック(ブロックA)を得た。
芳香族アルケニル重合体ブロックの重合転化率が略100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、芳香族アルケニル化合物としてスチレン20重量部及び共役ジエン化合物として1,3-ブタジエン65重量部を加え、更に昇温重合を行い、共役ジエン重合体ブロック(ブロックB)を得た。
重合転化率がほぼ100%に達した後、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.06重量部を加え、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。
反応容器内に、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.07重量部を加えて、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約15万であり、カップリング率(共重合体全体のうちのカップリングした共重合体の含有量)は60%であった。また、一部取り出したポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、モレロ法により算出したところ、ビニル結合含有率は64モル%であった。
【0035】
(2)合成例2
窒素置換された反応容器に、脱気、脱水されたシクロヘキサン500重量部、スチレン9重量部及びテトラヒドロフラン5重量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn-ブチルリチウム0.13重量部を添加して、昇温重合を行い、芳香族アルケニル重合体ブロック(ブロックA)を得た。
芳香族アルケニル重合体ブロックの重合転化率が略100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、1,3-ブタジエン91重量部を加え、更に昇温重合を行い、共役ジエン重合体ブロック(ブロックB)を得た。
重合転化率がほぼ100%に達した後、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.06重量部を加え、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。
反応容器内に、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.07重量部を加えて、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約15万であり、カップリング率(共重合体全体のうちのカップリングした共重合体の含有量)は60%であった。また、一部取り出したポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、モレロ法により算出したところ、ビニル結合含有率は64モル%であった。
【0036】
(3)市販品1
ベース樹脂として市販のスチレン-エチレンブチレン共重合体(JSR社製、商品名「DR1321P」)を用いた。
【0037】
【0038】
<離型剤>
離型剤としては、以下のものを用いた。
離型剤A:飽和脂肪酸アミド系離型剤、エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)(日油社製、商品名「アルフローH50F」)
離型剤B:不飽和脂肪酸アミド系離型剤、エチレンビスエルカ酸アミド(日本化成社製、商品名「スリパックスR」)
離型剤D:金属石鹸系離型剤、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製、商品名「SC-100」)
離型剤E:フッ素系離型剤、トリフロロエチルメタクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルM-3F」)
離型剤F:シリコン系離型剤、シリコーングラフトLDPE(東レダウコーニング社製、商品名「BY27-202H」)
【0039】
(実施例1)
合成例1のベース樹脂100重量部に対して、粘着付与剤(荒川化学工業社製、商品名「アルコンP100」)5重量部、酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」)1重量部、及び、離型剤として離型剤A1.5重量部を配合し、粘着剤層用樹脂組成物を得た。
一方、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名「J715M」)100重量部に対して、離型剤として離型剤A1.5重量部を配合し、基材層用樹脂組成物を得た。
得られた粘着剤層用樹脂組成物及び基材層用樹脂組成物を、押し出し温度200℃、キャストロール温度25℃の条件でTダイ法により、基材層の厚さが36μm、粘着剤層の厚さが4μmの粘着テープを共押出し、得られた粘着テープを巻長さ2000mで巻き取って、粘着テープロールを得た。
【0040】
(実施例2、4~5、8~15、参考例3、6~7、比較例1~5)
粘着剤層用樹脂組成物、基材層用樹脂組成物の配合や、巻長さを表2、3に示したようにした以外は実施例1と同様にして、粘着テープロールを得た。
【0041】
(評価)
実施例、参考例、比較例で得られた粘着テープロールについて、以下のように評価を行った。
結果を表2、3に示した。
【0042】
(1)展開力の評価
JIS Z 0237に準拠し、20m/分の繰り出し速度で粘着テープロールから粘着テープを繰り出し、高速巻き戻し力を測定した。得られた測定値をもとに、以下の基準で展開力を判定した。
◎:高速巻き戻し力が2N/50mm以下
○:高速巻き戻し力が2N/50mmを超え、3.0N/50mm以下
×:高速巻き戻し力が3.0N/50mmを超える
【0043】
(2)粘着剤層最表面における離型剤の濃度の評価
粘着テープロールから粘着テープを繰り出し、巻外側の端部から10mまでの位置で切り出したものを巻外側サンプルと、巻芯側の端部から10mまでの位置で切り出したものを巻芯側サンプルとした。
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により、巻外側サンプル及び巻芯側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度を測定した。
得られたデータより、粘着剤層最表面における離型剤の濃度変化率(|巻芯側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度-巻外側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度|/巻外側サンプルの粘着剤層最表面における離型剤の濃度×100)を算出し、以下の基準により判定した。
◎:変化率が10%以下
○:変化率が10%を超え、30%以下
×:変化率が30%を超える
【0044】
(3)粘着力の評価
粘着テープロールから粘着テープを繰り出し、巻外側の端部から10mまでの位置で切り出したものを巻外側サンプルと、巻芯側の端部から10mまでの位置で切り出したものを巻芯側サンプルとした。
【0045】
厚さが130μmのアクリル樹脂板に、25mm幅に細切した巻外側サンプル又は巻芯側サンプルの粘着テープを貼り付けて試験片を作成した。なお、室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で粘着テープをアクリル樹脂板に貼り付けた。次いで、JIS Z 0237に準拠し、粘着テープを300mm/分の速度で引き剥がして、巻外側サンプル及び巻芯側サンプルの粘着力(180°剥離強度)を測定した。
得られたデータより、粘着力変化率(|巻芯側サンプルの粘着力-巻外側サンプルの粘着力|/巻外側サンプルの粘着力×100)を算出し、以下の基準により判定した。
◎:変化率が20%以下
○:変化率が20%を超え、50%以下
×:変化率が50%を超える
【0046】
【0047】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、軽展開性であり、かつ、繰り出し位置に係わらず粘着テープの粘着力の変化が少ない粘着テープロールを提供できる。
【符号の説明】
【0049】
1 粘着テープロール
2 粘着テープ
21 基材層
22 粘着剤層