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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61B5/055 351
A61B5/055 370
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017095375
(22)【出願日】2017-05-12
(65)【公開番号】P2018191697
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 聡志
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
(72)【発明者】
【氏名】石 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 昂也
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-045627(JP,A)
【文献】特開2014-150854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波磁場を被検体に印加する送信コイルと、
FOV(Field Of View)内の信号分布に基づいて、前記FOV内の特定領域を選択する選択手段と、
前記特定領域内の信号に基づいて、前記送信コイルに供給される高周波パルス信号の出力電力を決定する決定手段と、
を有し、
前記選択手段は、前記FOV内の少なくとも2つのピーク強度にそれぞれ対応する少なくとも2つの位置又は閾値処理された少なくとも2つの強度にそれぞれ対応する少なくとも2つの位置に基づいて、前記特定領域を選択する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記FOVは脊椎領域を含んだアキシャル面に設定され、前記選択手段は、前記FOVにおけるリードアウト方向の一次元信号分布に基づいて、前記特定領域を選択する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記少なくとも2個の位置は、2個の位置であり、
前記選択手段は、前記一次元信号分布における前記2個の位置の間を前記特定領域として決定する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記少なくとも2個の位置は、2個の位置であり、
前記選択手段は、前記一次元信号分布における、閾値以下の信号に対応する前記2個の位置に基づいて、前記特定領域を選択する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記一次元信号分布における、前記2個の位置の間の全体又は部分を、前記特定領域として選択する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
撮像を実行する撮像実行手段を更に有し、
前記選択手段は、複数のスライスのスライスごとに前記特定領域を選択し、
前記決定手段は、前記複数の特定領域のそれぞれに対して前記出力電力を決定し、前記撮像実行手段により撮像されるスライスの位置に最も近いスライスに相当する前記特定領域で決定された出力電力を選択する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記FOVは両膝領域を含んだアキシャル面に設定され、前記選択手段は、前記FOVにおけるリードアウト方向の一次元信号分布に基づいて、前記特定領域を決定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記少なくとも2個の位置は、4個の位置であり、
前記選択手段は、前記一次元信号分布における、閾値以下の信号に対応する前記4個の位置に基づいて2個の膝領域を検出し、前記4個の位置に基づいて前記2個の膝領域のうち一方を含む領域を前記特定領域として決定する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
撮像を実行する撮像実行手段を更に有し、
前記選択手段は、左膝領域及び右膝領域を2個の特定領域として選択し、
前記決定手段は、前記2個の特定領域のそれぞれに対して前記出力電力を決定し、
前記撮像実行手段は、前記左膝領域と前記右膝領域とのうち、撮像する膝領域に対応する出力電力で撮像を実行する、
請求項7又は8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、天板上の被検体を撮像し、被検体の内部情報を画像データとして取得する装置である。
【0003】
MRI装置は、高周波パルス、即ち、RF(Radio Frequency)パルスを送信する送信コイル、例えばWB(Whole Body)コイルを備える。WBコイルは、RF送信器からRFパルス信号を受信し、静磁場中に置かれた撮像部位の原子核スピンをラーモア周波数の高周波パルス、即ち、RFパルスで励起する。そして、MRI装置は、当該励起に伴って撮像部位から発生する磁気共鳴信号、即ち、MR(Magnetic Resonance)信号を受信コイル、例えばローカルコイルで受信し、MR信号に基づいて画像データを生成する。
【0004】
MRI装置は、例えばスピンエコーシーケンスにより被検体からMR信号を検出する際に、フリップ角90°を持たせるためのRFパルス(以下、「90°パルス」と呼ぶ)や、フリップ角180°を持たせるためのRFパルス(以下、「180°パルス」と呼ぶ)を送信コイルから被検体に印加する。その際、正確な90°パルスや180°パルスが印加されなければ、受信コイルは最大となる強度をもつMR信号を収集できない。
【0005】
そこで、MRI装置は、プリスキャンにおいて、RF送信器のゲインを変えることで、送信コイルに供給されるRFパルス信号の出力電力(以下、「RFレベル」と呼ぶ)が異なる複数のスピンエコーシーケンスを実行してMR信号をそれぞれ収集し、MR信号が最大となる場合のRFレベルを、90°パルスや180°パルスに相当するRFレベルとして決定する。
【0006】
ここで、MRI装置は、プリスキャンにおいて、FOV(Field Of View)内の全てのMR信号に基づいて、90°パルスに相当するRFレベルを決定する。例えば、撮像部位としての腹部についてプリスキャンを行う場合、MRI装置は、FOV内の全てのMR信号の平均値に基づいて、90°パルスに相当するRFレベルを決定する。その場合、注目部位である脊椎領域のMR信号が低くても、FOV全体のMR信号に合わせて90°パルスに相当するRFレベルが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-309128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、FOV内の注目部位に合わせて90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できるMRI装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るMRI装置は、送信コイルと、FOV内の複数位置に対応する複数の信号の強度の分布を示す信号分布に基づいて、前記FOV内の特定領域を選択する選択手段と、前記特定領域内の信号に基づいて、前記送信コイルに供給される高周波パルス信号の出力電力を決定する決定手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るMRI装置の全体構成を示す概略図。
図2】本実施形態に係るMRI装置に備えられるRF送信器の詳細構成を示す図。
図3】本実施形態に係るMRI装置の機能を示すブロック図。
図4】撮像部位として腹部が設定される場合における、本実施形態に係るMRI装置の動作をフローチャートとして示す図。
図5】(A)~(C)は、本実施形態に係るMRI装置における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図。
図6】(A)~(C)は、本実施形態に係るMRI装置における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布と、特定領域とを示す図。
図7】腰椎領域を含むFOV全体のMR信号に基づいて90°パルスに相当するRFレベルを決定する方法と、MRI装置1において選択される特定領域のMR信号に基づいて90°パルスに相当するRFレベルを決定する方法とをグラフを用いた対比によって説明するための図。
図8図4に示す、本実施形態に係るMRI装置の動作の第1例をフローチャートとして示す図。
図9】(A)は、本実施形態に係るMRI装置における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、(B)は、本実施形態に係るMRI装置における、腰椎領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図。
図10図4に示す、本実施形態に係るMRI装置の動作の第2例をフローチャートとして示す図。
図11】(A)は、本実施形態に係るMRI装置における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、(B)は、本実施形態に係るMRI装置における、腰椎領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図。
図12図4に示す、本実施形態に係るMRI装置の動作の第3例をフローチャートとして示す図。
図13】本実施形態に係るMRI装置において、腰椎領域を含む複数のスライスを示す図。
図14】撮像部位として脚部が設定される場合における、本実施形態に係るMRI装置の動作をフローチャートとして示す図。
図15】本実施形態に係るMRI装置における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図。
図16】本実施形態に係るMRI装置における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布と、特定領域とを示す図。
図17図14に示す、本実施形態に係るMRI装置の動作の第1例をフローチャートとして示す図。
図18】(A)は、本実施形態に係るMRI装置における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、(B)は、本実施形態に係るMRI装置における、両膝領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図。
図19】(A)は、本実施形態に係るMRI装置における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、(B)は、本実施形態に係るMRI装置における、両膝領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るMRI装置の全体構成を示す概略図である。
【0013】
図1は、本実施形態に係るMRI装置1を示す。MRI装置1は、磁石架台100、制御キャビネット300、コンソール400、及び寝台装置500を備える。磁石架台100、制御キャビネット300、及び寝台装置500は、一般的には、検査室に備えられる。検査室は、撮影室とも呼ばれる。コンソール400は、制御室に備えられる。制御室は、操作室とも呼ばれる。
【0014】
磁石架台100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、及びWBコイル12を有する。これらの部材は円筒状の筐体に収納されている。寝台装置500は、寝台本体50及び天板51を有する。
【0015】
制御キャビネット300は、傾斜磁場用電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF送信器32、RF受信器33、及びシーケンスコントローラ34を備える。
【0016】
コンソール400は、処理部(例えば、処理回路)40、記憶部(例えば、記憶回路)41、表示部(例えば、ディスプレイ)42、及び入力部(例えば、入力回路)43を備える。コンソール400は、ホスト計算機として機能する。
【0017】
磁石架台100の静磁場磁石10は、磁石が円筒形状の磁石構造であるトンネルタイプと、撮像空間を挟んで上下に一対の磁石が配置された開放型(オープン型)とに大別される。ここでは、静磁場磁石10がトンネル型である場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
【0018】
静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体、例えば患者Uが搬送されるボア内に静磁場を発生させる。ボアとは、磁石架台100の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石10は、例えば、液体ヘリウムを保持するための筐体と、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷凍機と、筐体内部の超伝導コイルとによって構成される。なお、静磁場磁石10は、永久磁石によって構成されてもよい。以下、静磁場磁石10が、超伝導コイルを有する場合について説明する。
【0019】
静磁場磁石10は、超伝導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超伝導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は、長時間、例えば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。
【0020】
傾斜磁場コイル11は、静磁場磁石10と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に設置されている。傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場用電源31から供給される電力により傾斜磁場を患者Uに印加する。
【0021】
ここで、傾斜磁場の生成に伴って発生する渦電流がイメージングの妨げとなることから、傾斜磁場コイル11として、例えば、渦電流の低減を目的としたASGC(Actively Shielded Gradient Coil)が用いられてもよい。ASGCは、X軸、Y軸、及びZ軸方向の各傾斜磁場をそれぞれ形成するためのメインコイルの外側に、漏れ磁場を抑制するためのシールドコイルを設けた傾斜磁場コイルである。
【0022】
WBコイル12は、全身用コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル11の内側に患者Uを取り囲むように概略円筒形状に設置されている。WBコイル12は、送信コイルとして機能する。つまり、WBコイル12は、RF送信器32から伝送されたRFパルス信号に従ってRFパルスを患者Uに向けて送信する。一方、WBコイル12は、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能に加え、受信コイルとしての機能を備える場合もある。その場合、WBコイル12は、受信コイルとして、原子核の励起によって患者Uから放出されるMR信号を受信する。
【0023】
MRI装置1は、WBコイル12の他、ローカルコイル20を備える場合もある。ローカルコイル20は、患者Uの体表面に近接して配置される。ローカルコイル20は、複数のコイル要素を備えてもよい。これら複数のコイル要素は、ローカルコイル20の内部でアレイ状に配列されるため、PAC(Phased Array Coil)と呼ばれることもある。
【0024】
ローカルコイル20には幾つかの種別がある。例えば、ローカルコイル20には、図1に示すように患者Uの胸部、腹部、又は脚部に設置されるボディコイル(Body Coil)や、患者Uの背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)といった種別がある。この他、ローカルコイル20には、患者Uの頭部を撮像するための頭部コイル(Head Coil)や、足を撮像するためのフットコイル(Foot Coil)といった種別もある。また、ローカルコイル20には、手首を撮像するためのリストコイル(Wrist Coil)、膝を撮像するためのニーコイル(Knee Coil)、肩を撮像するためのショルダーコイル(Shoulder Coil)といった種別もある。
【0025】
ローカルコイル20は、受信コイルとして機能する。つまり、ローカルコイル20は、前述のMR信号を受信する。ただし、ローカルコイル20は、MR信号を受信する受信コイルとしての機能に加え、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能を備える送受信コイルでもよい。例えば、ローカルコイル20としての頭部コイル及びニーコイルの中には、送受信コイルも存在する。つまり、ローカルコイル20は、送信専用、受信専用、送受信兼用の種別を問わない。
【0026】
傾斜磁場用電源31は、X軸、Y軸、及びZ軸の傾斜磁場を発生するコイルそれぞれを駆動する各チャンネル用の傾斜磁場用電源31x,31y,31zを備える。傾斜磁場用電源31x、31y、31zは、シーケンスコントローラ34の指令により、必要な電流を各チャンネル独立に出力する。それにより、傾斜磁場コイル11は、X軸、Y軸、及びZ軸の方向における傾斜磁場を患者Uに印加することができる。
【0027】
RF送信器32は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいてRFパルス信号を生成する。RF送信器32は、生成したRFパルス信号をWBコイル12に伝送する。なお、RF送信器32の詳細構成については、図2を使って後述する。
【0028】
ローカルコイル20で受信したMR信号、より具体的には、ローカルコイル20内の各コイル要素で受信したMR信号は、RF受信器33に伝送される。各コイル要素の出力線路や、WBコイル12の出力線路はチャンネルと呼ばれる。このため、各コイル要素やWBコイル12から出力される夫々のMR信号をチャンネル信号と呼ぶこともある。WBコイル12で受信したチャンネル信号もRF受信器33に伝送される。
【0029】
RF受信器33は、ローカルコイル20やWBコイル12からのチャンネル信号、即ち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
【0030】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場用電源31、RF送信器32、及びRF受信器33をそれぞれ駆動することによって患者Uの撮像を行う。撮像によってRF受信器33から生データを受信すると、シーケンスコントローラ34は、その生データをコンソール400に送信する。
【0031】
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備する。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0032】
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、及び入力回路43を備える。
【0033】
処理回路40は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路40は、記憶回路41に記憶された、又は、処理回路40内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで後述する機能を実現する。
【0034】
また、処理回路40は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、複数の記憶回路41が複数の処理回路の機能に対応するプログラムをそれぞれ記憶するものであってもよいし、1個の記憶回路41が複数の処理回路の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0035】
記憶回路41は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等を備える。記憶回路41は、USB(Universal Serial bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。記憶回路41は、処理回路40において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ42への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路43によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
【0036】
ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。
【0037】
入力回路43は、操作者によって操作が可能な入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路43に含まれるものとする。入力デバイスは、ポインティングデバイス(例えばマウス)、キーボード、及び各種ボタン等を含む。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路43はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路40に出力する。なお、MRI装置1は、入力デバイスがディスプレイ42と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0038】
寝台装置500は、寝台本体50及び天板51を備える。寝台本体50は、天板51を例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能なように配置する。天板51のX軸方向の移動は、天板51の左右方向、つまり、天板51の短手方向の移動である。天板51のY軸方向の移動は、天板51の上下方向、つまり、天板51の厚み方向の移動である。天板51のZ軸方向の移動は、天板51の前後方向、つまり、天板51の長手方向の移動である。撮像前に天板51に配置された患者Uを所定の高さまでY軸方向に移動させる。その後、寝台本体50は、天板51をZ軸方向に走行させて患者Uを磁石架台100内部に移動させる。
【0039】
図2は、MRI装置1に備えられるRF送信器32の詳細構成を示す図である。また、図2は、RF送信器32とWBコイル12との接続関係も図示する。
【0040】
図2に示すように、RF送信器32は、パルス波形発生器321、RF変調器322、RF増幅器323、方向性結合器324、検波器325、及びAD(Analog to Digital)変換器326を備える。
【0041】
パルス波形発生器321は、シーケンスコントローラ34による制御の下、包絡線情報を発生させる。
【0042】
RF変調器322は、シーケンスコントローラ34による制御の下、搬送波と、パルス波形発生器321によって発生された包絡線情報とをミキシングすることで共鳴周波数を有するRFパルス信号に変調する。
【0043】
RF増幅器323は、RF変調器322によって変調されたRFパルス信号を増幅して送信コイル、例えば、WBコイル12に伝送する。伝送されたRFパルス信号に応じて、WBコイル12は、RFパルスを患者U(図1に図示)に送信する。なお、RF送信器32からのRFパルス信号の伝送によりRFパルスを送信するものは、WBコイル12に限定されるものではなく、前述した頭部コイル及びニーコイルのようなローカルコイルの場合もある。
【0044】
方向性結合器324は、RFパルス信号の伝送線路上に伝送路に非接触で配置され、WBコイル12に伝送されるRFパルス信号を所要の結合度(カップリング係数)にて減衰させて検波器325に送る。
【0045】
検波器325は、方向性結合器324の出力信号を検波する。
【0046】
AD変換器326は、検波器325によって検波された出力信号をデジタル変換する。AD変換器326の出力データはRFパルス信号としてSAR(Specific Absorption Rate)の算出や、後述する90°パルス等に相当するRFレベルの決定のために使用される。
【0047】
図3は、MRI装置1の機能を示すブロック図である。
【0048】
コンソール400の処理回路40がプログラムを実行することによって、MRI装置1は、領域選択手段(例えば、領域選択機能)61、プリスキャン実行手段(例えば、プリスキャン実行機能)62、及びメインスキャン実行手段(例えば、メインスキャン実行機能)63として機能する。なお、機能61~63の全部又は一部は、コンソール400にASIC等のハードウェアとして備えられるものであっても良い。また、機能61~63の全部又は一部は、コンソール400のみならず、シーケンスコントローラ34に備えられるものであっても良い。
【0049】
領域選択機能61は、特定領域を選択するための所定のパルスシーケンスに従ってスキャン(以下、「領域選択スキャン」と呼ぶ。)を実行することで、FOV(Field Of View)内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す信号分布を収集し、その信号分布に基づいて特定領域を選択する機能を含む。領域選択スキャンで使用するパルスシーケンスの種類は、特に限定するものではなく、グラディエントエコー系のパルスシーケンスや、スピンエコー系のパルスシーケンスを使用することができる。
【0050】
プリスキャン実行機能62は、後述するメインスキャン実行機能63による診断画像の収集を行うメインスキャンに先立って、メインスキャンの設定の較正を行うためのパルスシーケンスに従ってプリスキャンを実行し、90°パルスのみ、又は、90°パルス及び180°パルスの両方(本明細書において、「90°パルス等」と呼ぶ)に相当するRFレベルの調整を行う機能を含む。プリスキャンで用いるパルスシーケンスも、特に限定するものではなく、グラディエントエコー系のパルスシーケンスや、スピンエコー系のパルスシーケンスを使用することができる。
【0051】
メインスキャン実行機能63は、プリスキャン実行機能62によって調整された、90°パルス等に相当するRFレベルに従って、診断画像の収集を行うメインスキャンを実行し、診断画像の生成を行う機能を含む。
【0052】
なお、MRI装置1が有する機能61~63の具体的な説明は、図4図19を用いて後述する。図4図13は、撮像部位が腹部である場合における機能61~63を説明するためのものであり、図14図19は、撮像部位が脚部である場合における機能61~63を説明するためのものである。腹部や脚部は、筋肉及び脂肪等による高い信号強度を周囲にもつ注目部位(脊椎及び膝等)を含む撮像部位の代表例である。
【0053】
図4は、撮像部位として腹部が設定される場合における、MRI装置1の動作をフローチャートとして示す図である。
【0054】
磁石架台100の撮像中心付近に患者Uの腹部が配置される(ステップST1)。領域選択機能61は、撮像部位として腹部を設定する(ステップST2)。ここで、領域選択機能61は、ステップST2において、入力回路43を介して操作者から指定された部位を撮像部位として設定しても良いし、寝台本体50及び天板51に設けられるポート(図示省略)に電気的に接続されたローカルコイル20の種別が検知されることで、ローカルコイル20の種別と、患者Uの進入向き(Head First又はFoot First)とに基づいて、撮像部位を設定してもよい。また、ローカルコイル20が複数のコイルエレメントを有する場合には、ローカルコイル20の種別の他に、ローカルコイル20のどのコイルエレメントが撮像のために選択されているかの情報を用いて、撮像部位を設定してもよい。例えば、領域選択機能61は、ポートに電気的に接続されたローカルコイル20としてのスパインコイルを検知して撮像部位として脊椎部(頸椎部、胸椎部、腰椎部、仙椎部、及び尾椎部を含む)を設定したり、スパインコイルを構成する複数のコイルエレメントの中から、ポートに電気的に接続されたコイルエレメントを検知して撮像部位として腰椎部を設定したりすることができる。
【0055】
領域選択機能61は、特定領域スキャンを実行し(ステップST3)、注目部位としての腰椎領域を含むFOV内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す信号分布を収集し、その信号分布に基づいて特定領域を選択する(ステップST4)。撮像部位が腹部である場合は、Z軸方向をスライス方向(周波数エンコード方向(即ちリードアウト方向)及び位相エンコード方向に直交する方向)とするシーケンスを採用することが好適であるので、その場合について説明する。Z軸方向をスライス方向とする場合の一次元信号分布(例えば、図9(B))又は二次元信号分布(例えば、図9(A))によれば、腰椎からのMR信号が信号分布上の一定範囲内に常に現れるからである。なお、撮像部位が腹部である場合であってもZ軸方向をスライス方向とする場合に限定されるものではない。また、撮像部位に応じてスライス方向が選択されてもよい。
【0056】
ここで、領域選択機能61が、ステップST3,ST4において、FOV内に特定領域を選択する意義について説明する。
【0057】
図5(A)~(C)は、MRI装置1における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図である。
【0058】
図5(A),(B)は、図5(C)に示すサジタル画像の中の、腰椎領域を含むスライスS1,S2における二次元信号分布を示す図である。図5(A),(B)において、上方が腹側を示し、下方が背中側を示す。図5(C)において、左方が腹側を示し、右方が背中側を示す。図5(A),(B)に示すように、筋肉及び脂肪等は、高い信号強度を示す一方で、腰椎及びその周辺は、低い信号強度を示す。
【0059】
ここで、MRI装置1は、プリスキャンにおいて、FOV内の全てのMR信号に基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを決定することが可能である。例えば、MRI装置1が撮像部位としての腹部についてプリスキャンを行う場合、FOV内の全てのMR信号(例えば、MR信号のFOV内での平均値や積算値)に基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを決定することが可能である。しかし、その場合、注目部位である腰椎のMR信号が低くても、腰椎領域を含むFOV全体のMR信号に合わせて90°パルス等に相当するRFレベルが決定されることになる。つまり、FOV内の全てのMR信号が使用されると、筋肉及び脂肪等の高い信号強度の影響を受け、注目部位である腰椎に対して90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できない。
【0060】
そこで、領域選択機能61は、注目部位である腰椎領域を含むFOV内に、90°パルス等に相当するRFレベルを決定するための特定領域を選択する(ステップST3,ST4)。
【0061】
図6(A)~(C)は、MRI装置1における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布と、特定領域とを示す図である。
【0062】
図6(A),(B)は、図6(C)に示すサジタル画像の中の、腰椎領域を含むスライスS1,S2における二次元信号分布を示す図である。なお、図6(A)の二次元信号分布は図5(A)の二次元信号分布に対応し、図6(B)の二次元信号分布は図5(B)の二次元信号分布に対応し、図6(C)は図5(C)と同一である。
【0063】
図6(A),(B)に示すように、操作者によって、注目部位である腰椎領域を含むように任意に特定領域(図中の太い線)が選択される。特定領域は、患者Uの患者情報に含まれる身長及び体重等から決定されるものであってもよい。制限された特定領域内のMR信号のみを使用すれば、筋肉及び脂肪等の高い信号強度の影響を低減することができるので、注目部位である腰椎に対して90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。なお、図6(C)に示すサジタル画像に基づいて特定領域が選択されてもよい(図中の太い線)。
【0064】
図4の説明に戻って、プリスキャン実行機能62は、後述するメインスキャン実行機能63による診断画像の収集を行うメインスキャンに先立って、メインスキャンの設定の較正を行うためのプリスキャンを実行し(ステップST5)、90°パルス等に相当するRFレベルの調整を行う。
【0065】
図7は、腰椎領域を含むFOV全体のMR信号に基づいて90°パルスに相当するRFレベルを決定する方法と、MRI装置1において選択される特定領域のMR信号に基づいて90°パルスに相当するRFレベルを決定する方法とをグラフを用いた対比によって説明するための図である。図7の横軸はRFレベル、即ち、RF送信器32(図1に図示)から出力されるRFパルス信号の出力電力を示し、図7の縦軸は、患者Uから放出されるMR信号の強度を示す。
【0066】
図7に示す破線グラフは、従来のプリスキャンにおいて、90°パルスに相当するRFレベルを決定するために、各RFレベルに対してFOV内のMR信号を収集してFOV全体のMR信号の平均を算出し、各RFレベルに対する平均値の分布としたグラフである。一方で、図7に示す実線グラフは、ステップST5(図4に図示)のプリスキャンにおいて、90°パルスに相当するRFレベルを決定するために、各RFレベルに対応する特定領域内のMR信号を収集して特定領域のMR信号の平均を算出し、各RFレベルに対する平均値の分布としたグラフである。
【0067】
図7に示すように、破線グラフは、筋肉及び脂肪等のMR信号強度の高い部位の影響を受けるため、実線グラフと比較して、平均のMR信号強度の最大値M1,M2の間に差が発生する。従来のプリスキャンでは、FOV内の信号強度の平均の最大値M1に基づいて、患者Uの腹部を撮像する場合の90°パルスに相当するRFレベルを決定していた。これに対して、本実施形態のプリスキャン(ステップST5(図4に図示))では、特定領域内の信号強度の平均の最大値M2に基づいて、患者Uの腹部を撮像する場合の90°パルスに相当するRFレベルが決定されることになる。なお、180°パルスに相当するRFレベルについては、90°パルスと同様に決定できるし、90°パルスに相当するRFレベルから算出してもよい。例えば、180°パルスに相当するRFレベルは、90°パルスに相当するRFレベルの4倍とすることができる。
【0068】
図4の説明に戻って、メインスキャン実行機能63は、プリスキャン実行機能62によって調整された90°パルス等に相当するRFレベルに従って、診断画像の収集を行うメインスキャンを実行し、診断画像の生成を行う(ステップST6)。
【0069】
MRI装置1によれば、プリスキャンの前段で、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な特定領域を任意に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて特定領域内のMR信号から注目部位である腰椎に合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。次いで、ステップST4の動作の具体例について、図8図13を用いて説明する。
【0070】
図8は、図4に示すMRI装置1の動作の第1の具体例をフローチャートとして示す図である。なお、図8において、図4に示すステップと同一ステップには同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
領域選択機能61は、腰椎領域を含むFOV内に特定領域を選択する際(ステップST3,ST4)、FOV内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す一次元又は二次元信号分布を取得する(ステップST4a)。領域選択機能61は、ステップST4aによって取得された一次元又は二次元信号分布からMR信号の強度変化のピークを検出し、ピークに対応する位置に基づいて特定領域を選択する(ステップST4b)。
【0072】
図9(A)は、MRI装置1における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、図9(B)は、MRI装置1における、腰椎領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図である。また、図9(B)の上段は、FOV内の一直線上の信号強度を色彩(ハッチングの種類)で分類した一次元信号分布であり、図9(B)の下段は、FOV内の一直線上の信号強度をグラフとして示す一次元信号分布である。
【0073】
図9(B)を用いて説明する。領域選択機能61は、ステップST3において、所定の共鳴周波数及び帯域幅でスライスを選択し、X軸方向に対してのみエンコーディングされたMR信号を収集する。即ち、領域選択スキャンでは、位相エンコード方向(Y軸方向)に設定する位相エンコード量を、例えばゼロに固定し、リードアウト方向(X軸方向)のみの1次元スキャンを行う。これにより、領域選択機能61は、X軸方向及びY軸方向に対してエンコーディングされたMR信号を収集する場合(図9(A)に図示)と比較して短時間でMR信号を収集することができる。
【0074】
領域選択機能61は、MR信号に基づく一次元信号分布から2個のピークP1,P2(閾値以上の信号強度とすることが望ましい)を検出し、ピークP1に対応するX位置とピークP2に対応するX位置の間に特定領域を選択する。というのも、ピークP1に対応するX位置とピークP2に対応するX位置の間に注目部位である腰椎領域が現れるものと推定されるからである。例えば、領域選択機能61は、ピークP1に対応するX位置からピークP2に対応するX位置の間の全体を特定領域として選択してもよいし、ピークP1に対応するX位置からピークP2に対応するX位置までの区間の中央を基準として60%の領域を特定領域として選択してもよい。これにより、エンコーディングされたX軸方向について制限された特定領域が選択される。
【0075】
なお、領域選択機能61は、図9(A)に示す二次元信号分布に基づいて特定領域を選択してもよい。その場合、領域選択機能61は、ステップST3において、所定の共鳴周波数及び帯域幅でスライスを選択し、X軸方向及びY軸方向に対してエンコーディングされたMR信号を収集する。領域選択機能61は、MR信号に基づく二次元信号分布のうちY軸方向の各Y位置におけるX軸方向の一次元信号分布成分から2個のピークに対応するXY位置を求め、求められた全てのXY位置により決定される二次元領域を特定領域として選択する。これにより、エンコーディングされたX軸方向及びY軸方向について制限された特定領域が選択される。
【0076】
MRI装置1の図8に示す動作によれば、プリスキャンの前段で、一次元又は二次元信号分布のピークに基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な特定領域を自動的に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて特定領域内のMR信号から注目部位である腰椎に合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。
【0077】
図10は、図4に示すMRI装置1の動作の第2の具体例をフローチャートとして示す図である。なお、図10において、図4に示すステップと同一ステップには同一符号を付して説明を省略する。撮像部位が腹部として設定されると、腕からのMR信号が信号分布におけるピークを示す場合が有り得る。その場合には、図8に示す動作よりも図10に示す動作の方が有効である。つまり、図10に示す動作では、信号分布から患者Uの胴体部分の輪郭、即ち、体輪郭を推定し、体輪郭の内側に特定領域を選択する。
【0078】
領域選択機能61は、腰椎領域を含むFOV内に特定領域を選択する際(ステップST3,ST4)、FOV内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す一次元又は二次元信号分布を取得する(ステップST4a)。領域選択機能61は、ステップST4aによって取得された一次元又は二次元信号分布からノイズレベルの信号強度を検出し、その信号強度に対応する位置に基づいて特定領域を選択する(ステップST4c)。
【0079】
図11(A)は、MRI装置1における、腰椎領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、図11(B)は、MRI装置1における、腰椎領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図である。また、図11(B)の上段は、FOV内の一直線上の信号強度を色彩(ハッチングの種類)で分類した一次元信号分布であり、図11(B)の下段は、FOV内の一直線上の信号強度をグラフとして示す一次元信号分布である。
【0080】
図11(B)を用いて説明する。領域選択機能61は、ステップST3において、所定の共鳴周波数及び帯域幅でスライスを選択し、X軸方向に対してのみエンコーディングされたMR信号を収集する。これにより、領域選択機能61は、X軸方向及びY軸方向に対してエンコーディングされたMR信号を収集する場合(図11(A)に図示)と比較して短時間でMR信号を収集することができる。
【0081】
領域選択機能61は、MR信号に基づく一次元信号分布から、ノイズレベルの信号強度P3,P4のX位置を患者Uの体輪郭として検出し、ノイズレベルの信号強度P3に対応するX位置とノイズレベルの信号強度P4に対応するX位置の間に特定領域を選択する。なお、閾値以下の信号強度が連続する場合は、連続する複数の信号強度のうちX軸方向の中心位置に最も近いX位置の信号強度を体輪郭とすることが望ましい。これにより、ノイズレベルの信号強度P3に対応するX位置とノイズレベルの信号強度P4に対応するX位置の間に注目部位である腰椎領域が現れるものと推定される。例えば、領域選択機能61は、ノイズレベルの信号強度P3に対応するX位置からノイズレベルの信号強度P4に対応するX位置の間の全体を特定領域として選択してもよいし、ノイズレベルの信号強度P3に対応するX位置からノイズレベルの信号強度P4に対応するX位置までの区間の中央を基準として60%の領域を特定領域として選択してもよい。これにより、エンコーディングされたX軸方向について制限された特定領域が選択される。
【0082】
なお、領域選択機能61は、図11(A)に示す二次元信号分布に基づいて特定領域を選択してもよい。その場合、領域選択機能61は、ステップST3において、所定の共鳴周波数及び帯域幅でスライスを選択し、X軸方向及びY軸方向に対してエンコーディングされたMR信号を収集する。領域選択機能61は、MR信号に基づく二次元信号分布のうちY軸方向の各Y位置における一次元信号分布成分から2個のノイズレベルの信号強度に対応するXY位置を求め、求められた全てのXY位置により決定される二次元領域を特定領域として選択する。これにより、エンコーディングされたX軸方向及びY軸方向について制限された特定領域が選択される。
【0083】
MRI装置1の図10に示す動作によれば、プリスキャンの前段で、一次元又は二次元信号分布のノイズレベルの信号強度に対応する位置に基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な特定領域を自動的に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて特定領域内のMR信号から注目部位である腰椎に合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。
【0084】
図4図11の説明において、1個のスライスに対して1個の特定領域が選択される場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。1個のスライスに対して複数の特定領域が選択されてもよいし、複数のスライスの各スライスに対して1個又は複数の特定領域が選択されるようにしてもよい。次に、複数のスライスの各スライスに対して1個の特定領域が選択される場合について図12及び図13を用いて説明する。
【0085】
図12は、図4に示すMRI装置1の動作の第3の具体例をフローチャートとして示す図である。なお、図12において、図4に示すステップと同一ステップには同一符号を付して説明を省略する。一般的にはスライスの位置ごとに90°パルス等に相当するRFレベルの最適値は変化する。そこで、図12の動作では、スライスの位置ごとに90°パルス等に相当するRFレベルの最適値を決定し、メインスキャンの際に、撮像スライスに近い位置にあるスライスにおいて決定された、90°パルス等に相当するRFレベルを採用する。
【0086】
領域選択機能61は、特定領域スキャンを実行し(ステップST3)、注目部位としての腰椎領域を含むFOV内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す信号分布を収集し、その信号分布に基づいて、複数のスライスのスライスごとに特定領域を選択する(ステップST4d)。
【0087】
図13は、MRI装置1において、腰椎領域を含む複数のスライスを示す図である。
【0088】
図13は、腰椎領域を含む複数のスライスS11~S14を示す。複数のスライスS11~S14のそれぞれについて、FOV内の信号分布から90°パルス等に相当するRFレベルが決定される。
【0089】
図12の説明に戻って、プリスキャン実行機能62は、後述するメインスキャン実行機能63による診断画像の収集を行うメインスキャンに先立って、メインスキャンの設定の較正を行うためのプリスキャンを実行し(ステップST5d)、スライスごとに90°パルス等に相当するRFレベルの調整を行う。
【0090】
メインスキャン実行機能63は、プリスキャン実行機能62によって調整された、90°パルス等に相当するRFレベルに従って、診断画像の収集を行うメインスキャンを実行し、診断画像の生成を行う(ステップST6d)。メインスキャン実行機能63は、ステップST6dにおいて、複数のスライスS11~S14(図13に図示)の中から、メインスキャン実行機能63により撮像されるスライスに近い位置にあるスライスにおいて決定された、90°パルス等に相当するRFレベルを選択する。
【0091】
MRI装置1の図12に示す動作によれば、プリスキャンの前段で、一次元又は二次元信号分布に基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な複数の特定領域を自動的に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて各特定領域内のMR信号から注目部位である腰椎に合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。
【0092】
図14は、撮像部位として脚部が設定される場合における、MRI装置1の動作をフローチャートとして示す図である。
【0093】
磁石架台100の撮像中心付近に患者Uの脚部が配置される(ステップST11)。領域選択機能61は、撮像部位として脚部を設定する(ステップST12)。ここで、領域選択機能61は、ステップST12において、入力回路43を介して操作者から指定された部位を撮像部位として設定しても良いし、寝台本体50及び天板51に設けられるポート(図示省略)に電気的に接続されたローカルコイル20の種別が検知されることで、ローカルコイル20の種別と、患者Uの進入向きとに基づいて、撮像部位を設定してもよい。例えば、領域選択機能61は、ポートに電気的に接続されたローカルコイル20としてのニーコイルを検知して撮像部位として膝部を設定することができる。
【0094】
領域選択機能61は、特定領域スキャンを実行し(ステップST13)、注目部位としての両膝領域を含むFOV内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す信号分布を収集し、その信号分布に基づいて特定領域を選択する(ステップST14)。撮像部位が脚部である場合は、Z軸方向をスライス方向(周波数エンコード方向及び位相エンコードに直交する方向)とするシーケンスを採用することが好適であるので、その場合について説明する。Z軸方向をスライス方向とする場合の一次元信号分布(例えば、図18(B))又は二次元信号分布(例えば、図18(A))によれば、両膝からのMR信号が信号分布上の一定範囲内に常に現れるからである。なお、撮像部位が脚部である場合であってもZ軸方向をスライス方向とする場合に限定されるものではない。また、撮像部位に応じてスライス方向が選択されてもよい。
【0095】
ここで、領域選択機能61が、ステップST13,ST14において、FOV内に特定領域を選択する意義について説明する。
【0096】
図15は、MRI装置1における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図である。
【0097】
図15は、両膝領域を含むスライスにおける二次元信号分布を示す図である。図15において、注目部位としてニーコイルが配置された片膝(以下、「注目膝」と呼ぶ。)を撮像する場合に、両膝領域を含むFOV内の全てのMR信号に基づいて90°パルス等に相当するRFレベルを決定すると、他の膝、両膝の間、両膝の外側から放出されるMR信号の影響を受け、注目膝に対して90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できない。そこで、領域選択機能61は、注目膝の領域を含む領域を特定領域として選択する(ステップST13,ST14)。
【0098】
図16は、MRI装置1における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布と、特定領域とを示す図である。なお、図16の二次元信号分布は図15の二次元信号分布に対応する。
【0099】
図16に示すように、操作者によって、注目膝の領域を含むように任意に特定領域(図中の太い線)が選択される。特定領域は、患者Uの患者情報に含まれる身長及び体重等から決定されるものであってもよい。限定された特定領域内のMR信号のみを使用すれば、他の膝等の信号の影響を低減することができるので、注目膝に対して90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。なお、サジタル画像(図示省略)に基づいて特定領域が選択されてもよい。
【0100】
図14の説明に戻って、プリスキャン実行機能62は、後述するメインスキャン実行機能63による診断画像の収集を行うメインスキャンに先立って、メインスキャンの設定の較正を行うためのプリスキャンを実行し(ステップST15)、90°パルス等に相当するRFレベルの調整を行う。
【0101】
メインスキャン実行機能63は、プリスキャン実行機能62によって調整された、90°パルス等に相当するRFレベルに従って、診断画像の収集を行うメインスキャンを実行し、診断画像の生成を行う(ステップST16)。
【0102】
MRI装置1によれば、プリスキャンの前段で、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な特定領域を任意に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて特定領域内のMR信号から注目膝に合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。次いで、ステップST13の動作例について、図15図19を用いて詳細に説明する。
【0103】
図17は、図14に示すMRI装置1の動作の第1例をフローチャートとして示す図である。なお、図17において、図14に示すステップと同一ステップには同一符号を付して説明を省略する。図17に示す動作では、信号分布から患者Uの体輪郭(両膝の輪郭)を推定し、いずれかの体輪郭を特定領域として選択する。
【0104】
領域選択機能61は、両膝領域を含むFOV内に特定領域を選択する際(ステップST13,ST14)、FOV内の複数位置に対応する複数のMR信号の強度の分布を示す一次元又は二次元信号分布を取得する(ステップST14a)。領域選択機能61は、ステップST14aによって取得された一次元又は二次元信号分布からノイズレベルの信号強度を検出し、ノイズレベルの信号強度に対応する位置に基づいて特定領域を選択する(ステップST14c)。
【0105】
図18(A)は、MRI装置1における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、図18(B)は、MRI装置1における、両膝領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図である。また、図18(B)の上段は、FOV内の一直線上の信号強度を色彩(ハッチングの種類)で分類した一次元信号分布であり、図18(B)の下段は、FOV内の一直線上の信号強度をグラフとして示す一次元信号分布である。
【0106】
図18(B)を用いて説明する。領域選択機能61は、ステップST13において、所定の共鳴周波数及び帯域幅でスライスを選択し、X軸方向に対してのみエンコーディングされたMR信号を収集する。即ち、領域選択スキャンでは、位相エンコード方向(Y軸方向)に設定する位相エンコード量を、例えばゼロに固定し、リードアウト方向(X軸方法)のみの1次元スキャンを行う。これにより、領域選択機能61は、X軸方向及びY軸方向に対してエンコーディングされたMR信号を収集する場合(図18(A)に図示)と比較して短時間でMR信号を収集することができる。
【0107】
領域選択機能61は、MR信号に基づく一次元信号分布からノイズレベルの信号強度をもつ4点P5~P8を患者Uの体輪郭として検出し、4点P5~P8のうち片側2点P5,P6の間か、片側2点P7,P8の間に特定領域を選択する。なお、閾値以下の信号強度が3箇所(X軸方向の左側、中央、及び右側)で連続する場合、X軸方向の左側については連続する複数の信号強度のうちX軸方向の中心位置に最も近いX位置の信号強度を体輪郭とし、X軸方向の中央については連続する複数の信号強度のうちX軸方向の中心位置に最も遠い2個のX位置の信号強度を体輪郭とし、X軸方向の右側については連続する複数の信号強度のうちX軸方向の中心位置に最も近いX位置の信号強度を体輪郭とすることが望ましい。というのも、片側2点の間に注目膝の領域が現れるものと推定されるからである。そして、領域選択機能61は、2点P5,P6の間の信号強度の代表値(例えば、平均値及び最大値等)と、2点P7,P8の間の信号強度の代表値とのうち大きい方(図18(B)の場合、2点P7,P8)の間の全体を特定領域として選択してもよいし、60%を特定領域として選択してもよい。これにより、エンコーディングされたX軸方向について制限された特定領域が選択される。
【0108】
なお、領域選択機能61は、図18(A)に示す二次元信号分布に基づいて特定領域を選択してもよい。その場合、領域選択機能61は、ステップST13において、所定の共鳴周波数及び帯域幅でスライスを選択し、X軸方向及びY軸方向に対してエンコーディングされたMR信号を収集する。領域選択機能61は、MR信号に基づく二次元信号分布のうちY軸方向の各Y位置におけるX軸方向の一次元信号分布成分から2個のノイズレベルの信号強度に対応するXY位置を求め、求められた全てのXY位置により決定される二次元領域を特定領域として選択する。これにより、エンコーディングされたX軸方向及びY軸方向について制限された特定領域が選択される。
【0109】
そして、メインスキャン実行機能63は、ステップST16において、プリスキャン実行機能62によって調整された複数の特定領域に対応する、90°パルス等に相当する複数のRFレベルからFOVの位置に合った90°パルス等に相当するRFレベルを選択し、それに従って、診断画像の収集を行うメインスキャンを実行し、診断画像の生成を行う。
【0110】
MRI装置1の図17に示す動作によれば、プリスキャンの前段で、一次元又は二次元信号分布のノイズレベルの信号強度に対応する位置に基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な特定領域を自動的に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて特定領域内のMR信号から注目膝に合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。
【0111】
図4図11の説明において、1個のスライスに対して1個の特定領域が選択される場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。1個のスライスに対して複数の特定領域が選択されてもよいし、複数のスライスの各スライスに対して1個又は複数の特定領域が選択されるようにしてもよい。次に、1個のスライスに対して複数の特定領域が選択される場合について図19を用いて説明する。
【0112】
図19(A)は、MRI装置1における、両膝領域を含むFOV内の二次元信号分布を示す図であり、図19(B)は、MRI装置1における、両膝領域を含むFOV内の一次元信号分布を示す図である。また、図19(B)の上段は、FOV内の一直線上の信号強度を色彩(ハッチングの種類)で分類した一次元信号分布であり、図19(B)の下段は、FOV内の一直線上の信号強度をグラフとして示す一次元信号分布である。
【0113】
両膝にそれぞれニーコイルが配置される場合、領域選択機能61は、2個の注目膝についてそれぞれ特定領域を選択し、2個の特定領域に対してそれぞれ、90°パルス等に相当するRFレベルを決定する。これにより、メインスキャン実行機能63は、メインスキャンにおいて、両膝のうち撮像される膝を含む特定領域で決定された出力電力を選択することができる。言い換えれば、メインスキャン実行機能63は、両膝を片方ずつ撮像する場合に、90°パルス等に相当するRFレベルを切り替えることができる。
【0114】
MRI装置1によれば、プリスキャンの前段で、一次元又は二次元信号分布のノイズレベルの信号強度に対応する位置に基づいて、90°パルス等に相当するRFレベルを調整するための適切な複数の特定領域を自動的に選択することができる。それにより、MRI装置1は、プリスキャンにおいて特定領域内のMR信号から2個の注目膝のそれぞれに合った90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。
【0115】
なお、図19を用いて、1個のスライスに対して複数の特定領域が選択される場合の例として、スライスの中であって重ならない複数の特定領域が決定される例を示したが、その場合に限定されるものではない。例えば、領域選択機能61は、スライスの中に中心を同一としてサイズの異なる複数の特定領域を決定してもよい。その場合、メインスキャン実行機能63は、ステップST16において、プリスキャン実行機能62によって調整された複数の特定領域に対応する、90°パルス等に相当する複数のRFレベルからFOVのサイズに合った90°パルス等に相当するRFレベルを選択し、それに従って、診断画像の収集を行うメインスキャンを実行し、診断画像の生成を行う。
【0116】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のMRI装置によれば、FOV内の注目部位に合わせて90°パルス等に相当するRFレベルを適切に決定できる。
【0117】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
1…磁気共鳴イメージング(MRI)装置
12…WBコイル
20…ローカルコイル
40…処理回路
61…領域選択機能
62…プリスキャン実行機能
63…メインスキャン実行機能
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