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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】医療用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61M25/00 540
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017116193
(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公開番号】P2019000233
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514030023
【氏名又は名称】山之内 大
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山之内 大
(72)【発明者】
【氏名】盆子原 央
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0367285(US,A1)
【文献】特表2012-526636(JP,A)
【文献】特開2008-23318(JP,A)
【文献】特表2013-523404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0059309(US,A1)
【文献】国際公開第2011/151911(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166265(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313732(US,A1)
【文献】米国特許第5897533(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内内腔に処置を施すための医療用デバイスであって、
管状のシース部と、
前記シース部内を移動可能に構成され、前記体内内腔の異物を捕捉するための捕捉部を有する異物捕捉用カテーテルと、
前記異物捕捉用カテーテル内を移動可能に構成され、前記捕捉部が配置された前記体内内腔に処置を施すための処置部を有する処置用カテーテルとを備え、
前記処置用カテーテルを前記異物捕捉用カテーテル内に装填し、さらに当該異物捕捉用カテーテルを前記シース部内に装填し当該シース部の先端を封止した状態で、前記体内内腔に挿入可能に構成され
前記処置部は、管軸方向に沿って配置された複数の金属線からなり、前記管軸方向に略直交する径方向に略球状に拡張した状態で前記体内内腔の異物を絡め取るように構成され、
前記シース部及び前記異物捕捉用カテーテルのうち少なくとも一方には、前記シース部から前記異物捕捉用カテーテルが脱落するのを防止するとともに前記シース部から液体が漏れるのを防止する第1防止機構が設けられている、
医療用デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用デバイスにおいて、
前記処置用カテーテルは、前記処置用カテーテルの先端部に配設された先端チップを有し、
前記先端チップは、
前記処置用カテーテルを前記異物捕捉用カテーテル内に装填し、さらに当該異物捕捉用カテーテルを前記シース部内に装填した状態で、前記シース部の開口端を封止可能に構成されており、かつ、
前記シース部に対して前記処置用カテーテルを相対的に遠位側に移動させることにより、前記シース部の開口端の封止を解除可能に構成されている医療用デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用デバイスにおいて、
前記シース部の先端は、前記処置用カテーテルを前記異物捕捉用カテーテル内に装填し、さらに当該異物捕捉用カテーテルを前記シース部内に装填した状態で、前記シース部の先端を封止可能に構成されており、かつ、
前記シース部に対して前記異物捕捉用カテーテル又は前記処置用カテーテルを相対的に遠位側に移動させることにより、前記シース部の開口端の封止を解除可能に構成されている医療用デバイス。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の医療用デバイスにおいて、
前記異物捕捉用カテーテル及び前記処置用カテーテルのうち少なくとも一方には、前記異物捕捉用カテーテルから前記処置用カテーテルが脱落するのを防止する第2防止機構が設けられている医療用デバイス。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の医療用デバイスにおいて、
前記処置用カテーテルは、
前記体内内腔の異物を除去するための異物除去用カテーテルである医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に発生した血栓又は塞栓などの異物を除去するカテーテルとして、カテーテル本体の先端に拡張部を備える異物除去用カテーテルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の異物除去用カテーテルによれば、治療箇所よりも下流側の位置で拡張部を拡張させることにより、治療箇所から剥がれ落ちた異物の飛散を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-252895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の異物除去用カテーテルを経皮的に血管内に挿入する場合、例えば、(A)シースイントロデューサ(シースとダイレータが組み合わされたデバイス)を用いて、拡張部を収縮させた状態での異物除去用カテーテルをシースイントロデューサ内に挿入するか、または、(B)シースイントロデューサを用いずに、カテーテル本体の内腔にダイレータを直接挿入し、拡張部を収縮させた状態で異物除去用カテーテルを血管内に挿入する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、上記(A)の方法を用いた場合、血管内にシースイントロデューサを挿入後、シースからダイレータを抜き取らなければならない。また、上記(B)の方法を用いた場合も、血管内に異物除去用カテーテルを挿入後、カテーテル本体からダイレータを抜き取らなければならない。いずれの方法においても、長尺のガイドワイヤを血管内に挿入した状態でダイレータを抜き取らなければならず、手技の煩雑さが否めない。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、使用者の作業負担を軽減することが可能な医療用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療用デバイスは、体内内腔に処置を施すための医療用デバイスであって、管状のシース部と、前記シース部内を移動可能に構成され、前記体内内腔の異物を捕捉するための捕捉部を有する異物捕捉用カテーテルと、前記異物捕捉用カテーテル内を移動可能に構成され、前記捕捉部が配置された前記体内内腔に処置を施すための処置部を有する処置用カテーテルとを備え、前記処置用カテーテルを前記異物捕捉用カテーテル内に装填し、さらに当該異物捕捉用カテーテルを前記シース部内に装填し当該シース部の先端を封止した状態で、前記体内内腔に挿入可能に構成され、前記処置部は、管軸方向に沿って配置された複数の金属線からなり、前記管軸方向に略直交する径方向に略球状に拡張した状態で前記体内内腔の異物を絡め取るように構成され、前記シース部及び前記異物捕捉用カテーテルのうち少なくとも一方には、前記シース部から前記異物捕捉用カテーテルが脱落するのを防止するとともに前記シース部から液体が漏れるのを防止する第1防止機構が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の医療用デバイスによれば、シース部内に異物捕捉用カテーテルと処置用カテーテルを装填し当該シース部の先端を封止した状態で医療用デバイスを体内内腔に挿入可能に構成されているため、シースイントロデューサ又はダイレータを使用しなくても済む。つまり、ダイレータの抜き取りに要していた手間を省くことができるため、使用者の作業負担を軽減することができる。また、シース部内に異物捕捉用カテーテルと処置用カテーテルを装填し当該シース部の先端を封止した状態で医療用デバイスを体内内腔に挿入することから、挿入時におけるシース部の潰れやキンクの発生を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療用デバイスによれば、シース部内に異物捕捉用カテーテルと処置用カテーテルを装填し当該シース部の先端を封止した状態で医療用デバイスを体内内腔に挿入可能に構成されている結果、使用者の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る医療用デバイス1の全体構成を説明するために示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る医療用デバイス1の構成部品を組み合わせた状態を示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係る医療用デバイス2の全体構成を説明するために示す図である。
図4図4は、第3実施形態に係る医療用デバイス3の全体構成を説明するために示す図である。
図5図5は、第3実施形態に係る医療用デバイス3を説明するために示す図である。図5(a)はシース部50の先端58が閉じた状態を示す図であり、図5(b)はシース部50の先端58が開いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の医療用デバイスについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態では、本発明の医療用デバイスの一例として、血管内に発生した血栓又は塞栓などの異物を除去するために用いる血管内異物除去デバイスを例示して説明する。
【0018】
まず、第1実施形態に係る医療用デバイス1の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る医療用デバイス1の全体構成を説明するために示す図である。図2は、第1実施形態に係る医療用デバイス1の構成部品を組み合わせた状態を示す図である。
なお、図1及び図2において、発明の理解を容易にするため、医療用デバイス1を構成する各部材の長さや太さ、肉厚等を誇張して図示している。
【0019】
この明細書において「遠位部」又は「先端部」とは、医療用デバイス1の使用者からみて遠いほうの端部側の領域を指し、「近位部」又は「基端部」とは、医療用デバイス1の使用者からみて近いほうの端部側(手元側)の領域を指す。
【0020】
第1実施形態に係る医療用デバイス1は、血管内に発生した血栓又は塞栓などの異物を除去するために用いる血管内異物除去デバイスであって、図1に示すように、管状のシース部10と、シース部10内を移動可能に構成された異物捕捉用カテーテル20と、異物捕捉用カテーテル20内を移動可能に構成された異物除去用カテーテル30とを備える。
【0021】
シース部10は、長尺であって管状のシースチューブ12と、シースチューブ12の近位部に設けられた液体充填ポート14と、シースチューブ12の近位部端に設けられた第1バルブ16とを有する。
【0022】
図示による説明は省略するが、シースチューブ12の内部にはルーメンが設けられており、異物捕捉用カテーテル20を通すことができるように構成されている。
【0023】
シースチューブ12は、可撓性を有する材料で形成されている。可撓性材料としては、例えば、合成樹脂(エラストマー)、合成樹脂に他の材料が混合された樹脂コンパウンド、合成樹脂が多層で構成された多層構造体、又は合成樹脂と金属線との複合体などを好ましく用いることができる。
【0024】
液体充填ポート14は、シースチューブ12の内部ルーメンに連通しており、液体充填ポート14を介してシースチューブ12内に例えば生理食塩水等の液体を充填可能に構成されている。なお、図示による説明は省略するが、液体充填ポート14の開口端部は、キャップ等の封止部材又はシリコンゴム等からなる弁体によって液密に閉鎖されている。
【0025】
第1脱落防止機構としての第1バルブ16は、例えば弁部材であって、シースチューブ12から血液等が漏出するのを防止するとともに、シース部10内に挿入した異物捕捉用カテーテル20の望ましくない位置ずれ及び脱落を防止する機能を有する。
【0026】
異物捕捉用カテーテル20は、長尺であって管状のカテーテルチューブ22と、カテーテルチューブ22の近位部に設けられた液体充填ポート24と、カテーテルチューブ22の近位部端に設けられた第2バルブ26と、カテーテルチューブ22の遠位部端に設けられた捕捉部28とを有する。異物捕捉用カテーテル20は、例えば、血管内に発生した血栓又は塞栓などの異物を捕捉するための血栓捕捉用カテーテルである。
【0027】
図示による説明は省略するが、カテーテルチューブ22の内部にはルーメンが設けられており、異物除去用カテーテル30を通すことができるように構成されている。カテーテルチューブ22の外径は、シースチューブ12の内径以下となるように設定されている。
【0028】
カテーテルチューブ22を構成する材料については、シースチューブ12と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
液体充填ポート24は、カテーテルチューブ22の内部ルーメンに連通しており、液体充填ポート24を介してカテーテルチューブ22内に例えば生理食塩水等の液体を充填可能に構成されている。なお、図示による説明は省略するが、液体充填ポート24の開口端部は、キャップ等の封止部材又はシリコンゴム等からなる弁体によって液密に閉鎖されている。
【0030】
第2脱落防止機構としての第2バルブ26は、例えば弁部材であって、カテーテルチューブ22から血液等が漏出するのを防止するとともに、異物捕捉用カテーテル20内に挿入した異物除去用カテーテル30の望ましくない位置ずれ及び脱落を防止する機能を有する。
【0031】
捕捉部28は、血管内の異物を捕捉する部材である。捕捉部28は、例えば、略円筒形状の網部28aと、網部28aを覆うように形成された膜部28bから構成されている。網部28aは、例えばステンレス鋼、Ni-Ti合金、チタン合金など金属細線を格子状に編み込んだ構造からなり、半径方向(管軸に直交する方向)に拡張及び収縮可能に構成されている。膜部28bを構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂や、ポリウレタン樹脂などを好ましく用いることができる。これらの樹脂材料によって作成された膜部は、生体適合性及び耐久性が比較的高く、かつ、化学的にも安定している。
【0032】
処置用カテーテルとしての異物除去用カテーテル30は、長尺であって管状のカテーテルチューブ32と、カテーテルチューブ32の近位部に配置された操作部33と、操作部33の側面に設けられた液体充填ポート34及び操作レバー35と、カテーテルチューブ32の近位部端に設けられたコネクタ36と、カテーテルチューブ32の遠位部に設けられた除去部37と、カテーテルチューブ32の先端に設けられた先端チップ38とを有する。異物除去用カテーテル30は、例えば、血管内に発生した血栓又は塞栓などの異物を除去するための血栓除去用カテーテルである。
【0033】
図示による説明は省略するが、カテーテルチューブ32の内部にはルーメンが設けられており、ガイドワイヤや薬液等を通すことができるように構成されている。なお、後述する操作部33、除去部37及び先端チップ38についても、同様のルーメンが設けられており、ガイドワイヤや薬液等を通すことができるように構成されている。カテーテルチューブ32の外径は、カテーテルチューブ22(異物捕捉用カテーテル20)の内径以下となるように設定されている。
【0034】
操作部33は、操作レバー35を操作することによって後述する除去部37の拡張/収縮を操作するための部材である。
【0035】
液体充填ポート34は、カテーテルチューブ32の内部ルーメンに連通しており、液体充填ポート34を介してカテーテルチューブ32内に例えば生理食塩水等の液体を充填可能に構成されている。なお、図示による説明は省略するが、液体充填ポート34の開口端部は、キャップ等の封止部材又はシリコンゴム等からなる弁体によって液密に閉鎖されている。
【0036】
コネクタ36には、図示しない止血弁が設けられており、例えばガイドワイヤ等を挿入可能に構成されている。
【0037】
除去部37は、例えば複数の金属線を管軸方向(異物除去用カテーテル30の長手方向)に沿って配置した部材であり、図1に示すように、略球状に拡張し、かつ、カテーテルチューブ32とほぼ同じ径の管状へと収縮可能に構成されている。
【0038】
除去部37を構成する金属線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金を好ましく用いることができる。また、金属線はともに超弾性(変形しても力を取り除くとすぐに元の形に戻る性質)を有する材料から構成されている。超弾性を有する材料として、例えばNi-Ti合金を好適に用いることができる。なお、材料としてX線造影性を有する合金を用いることにより、X線不透過マーカーとしてもよい。この場合、除去部の位置を体外から確認することができる。
【0039】
先端チップ38は、異物除去用カテーテル30を異物捕捉用カテーテル20内に装填し、さらに当該異物捕捉用カテーテル20をシース部10内に装填した状態で、シース部10の開口端18を封止可能に構成されている。また、先端チップ38は、シース部10に対して異物除去用カテーテル30を相対的に遠位側に移動させることにより、シース部10の開口端18の封止を解除可能に構成されている。
【0040】
先端チップ38の全体形状は、例えば略長球状(ラグビーボールに似た形状)である。先端チップ38の最大径は、シースチューブ12の開口端18を封止した際にシースチューブ12との段差をなくすよう、シースチューブ12の径とほぼ同じとなるように設定されている。
【0041】
先端チップ38を構成する材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂等から構成された合成樹脂(又はそのエラストマー)などの、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料を好ましく用いることができる。
【0042】
次に、医療用デバイス1の使用方法について説明する。
【0043】
使用前の医療用デバイス1は、図2に示すように、異物除去用カテーテル30が異物捕捉用カテーテル20内に装填され、さらに当該異物捕捉用カテーテル20がシース部10内に装填された状態である。
【0044】
血管内にガイドワイヤを通した状態で、ガイドワイヤに沿わせるように、図2に示す医療用デバイス1を血管内に挿入し、標的部位(異物が存在する部位)の手前まで医療用デバイス1を送達する。
【0045】
次に、シース部10の位置を固定した状態で、異物捕捉用カテーテル20及び異物除去用カテーテル30を前方に移動させることにより、異物捕捉用カテーテル20及び異物除去用カテーテル30をシース部10から送り出す。なお、異物捕捉用カテーテル20及び異物除去用カテーテル30の位置を固定した状態で、シース部10を後退させてもよい。
【0046】
異物捕捉用カテーテル20の捕捉部28を拡張させた状態で、異物除去用カテーテル30の除去部37に血管内の異物を絡め取る。除去部37に異物を絡め取るために、例えば、標的部位において除去部37を管軸中心に回転させてもよいし、標的部位において除去部37を前進/後退させてもよいし、標的部位において除去部37を拡張/収縮してもよい。
【0047】
そして、異物を絡めたまま除去部37を収縮させて、除去部37及び捕捉部28をシース部10内に引き込む。その後、シース部10内から異物捕捉用カテーテル20及び異物除去用カテーテル30を抜き取る作業を行うことにより、経皮的に異物を体外に取り出すことができる。なお、シース部10内に異物捕捉用カテーテル20を挿入したまま、異物捕捉用カテーテル20から異物除去用カテーテル30のみを抜き取ってもよい。
【0048】
以上のように構成された第1実施形態に係る医療用デバイス1によれば、シース部10内に異物捕捉用カテーテル20と異物除去用カテーテル30を装填した状態で医療用デバイス1を血管内に挿入可能に構成されているため、シースイントロデューサ又はダイレータを使用しなくても済む。つまり、ダイレータの抜き取りに要していた手間を省くことができるため、使用者の作業負担を軽減することができる。また、シース部10内に異物捕捉用カテーテル20と異物除去用カテーテル30を装填した状態で医療用デバイス1を血管内に挿入することから、挿入時におけるシース部の潰れやキンクの発生を抑制することもできる。
【0049】
ところで、シースイントロデューサを用いて従来の異物除去用カテーテルを経皮的に血管内に挿入する場合は、シースイントロデューサに異物除去用カテーテルを挿入するために、インサーターなどと呼ばれる付属部品を用いる必要があった。
これに対し、第1実施形態に係る医療用デバイス1によれば、シース部10内に異物捕捉用カテーテル20及び異物除去用カテーテル30が既に装填された状態で使用するため、インサーターが不要となる。その結果、製品全体としての部品点数の削減やコスト低廉化に寄与することができる。
【0050】
第1実施形態に係る医療用デバイス1においては、上記の構成からなる先端チップ38を備えているため、血管内に医療用デバイス1を挿入する際に、シースチューブ12の開口端18を先端チップ38によって封止することができ、シースチューブ12内に血液が侵入するのを防ぐことができる。また、先端チップ38があることによって、ガイドワイヤに沿って医療用デバイス1を挿入する際の挿入抵抗を低減することができる。また、シース部10に対して異物除去用カテーテル30を相対的に遠位側に移動させれば、先端チップ38による開口端18の封止を解除可能に構成されていることから、使用者にとって取り扱いやすい医療用デバイスといえる。
【0051】
第1実施形態に係る医療用デバイス1においては、シース部10には第1バルブ16が設けられており、異物捕捉用カテーテル20には第2バルブ26が設けられているため、異物捕捉用カテーテル20又は異物除去用カテーテル30の望ましくない脱落を防止することができる。また、例えば、血管内で異物除去用カテーテル30を前進又は後退させる際に異物捕捉用カテーテル20の位置がずれてしまう等、各カテーテルにおける望ましくない位置ずれを、第1バルブ16及び第2バルブ26によって抑制することができる。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態では、本発明の医療用デバイスの一例として、血管内壁からの止血に用いる血管内止血用デバイスを例示して説明する。
【0053】
図3は、第2実施形態に係る医療用デバイス2の全体構成を説明するために示す図である。なお、図3において、図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付している。
【0054】
第2実施形態に係る医療用デバイス2は、血管内壁からの止血に用いる血管内止血用デバイスであって、図3に示すように、管状のシース部10と、シース部10内を移動可能に構成された異物捕捉用カテーテル20と、異物捕捉用カテーテル20内を移動可能に構成された血管内止血用カテーテル40とを備える。
【0055】
図3に示すシース部10及び異物捕捉用カテーテル20については、第1実施形態で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0056】
処置用カテーテルとしての血管内止血用カテーテル40は、長尺であって管状のカテーテルチューブ42と、カテーテルチューブ42の近位部に配置された操作部43と、操作部43の側面に設けられた液体充填ポート44及び操作レバー45と、カテーテルチューブ42の近位部端に設けられたコネクタ46と、カテーテルチューブ42の遠位部に設けられた止血部47と、カテーテルチューブ42の先端に設けられた先端チップ48とを有する。血管内止血用カテーテル40は、例えば、血管内壁からの止血に用いるカテーテルである。
【0057】
図3に示すカテーテルチューブ42、操作部43、液体充填ポート44、操作レバー45、コネクタ46及び先端チップ48については、第1実施形態で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0058】
止血部47は、例えば複数の金属線を管軸方向(血管内止血用カテーテル40の長手方向)に沿って配置され、略球状に拡張し、かつ、カテーテルチューブ42とほぼ同じ径の管状へと収縮可能な弾性変形部47aと、弾性変形部47aの中間部分(弾性変形部47aを拡張させたときに最大径となる部分を含む)に配置された止血膜47bとを有する。
【0059】
弾性変形部47aを構成する金属線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金を好ましく用いることができる。また、金属線はともに超弾性(変形しても力を取り除くとすぐに元の形に戻る性質)を有する材料から構成されている。超弾性を有する材料として、例えばNi-Ti合金を好適に用いることができる。なお、材料としてX線造影性を有する合金を用いることにより、X線不透過マーカーとしてもよい。この場合、除去部の位置を体外から確認することができる。
【0060】
止血膜47bは、弾性変形部47aの全周に張り渡された膜状部材であり、弾性変形部47aの拡張及び収縮に追従可能な可撓性の材料で構成されている。
【0061】
止血膜47bを構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリフッ化ビニリデン等の材料を好適に用いることができる。
【0062】
このように、第2実施形態に係る医療用デバイス2は、処置用カテーテルの種類が、第1実施形態に係る医療用デバイス1とは異なっているが、第1実施形態に係る医療用デバイス1の場合と同様に、シース部10内に異物捕捉用カテーテル20と血管内止血用カテーテル40を装填した状態で医療用デバイス2を血管内に挿入可能に構成されているため、シースイントロデューサ又はダイレータを使用しなくても済む。つまり、ダイレータの抜き取りに要していた手間を省くことができるため、使用者の作業負担を軽減することができる。また、シース部10内に異物捕捉用カテーテル20と血管内止血用カテーテル40を装填した状態で医療用デバイス2を血管内に挿入することから、挿入時におけるシース部の潰れやキンクの発生を抑制することもできる。
【0063】
第2実施形態に係る医療用デバイス2は、処置用カテーテルの種類が異なる点以外の点では、第1実施形態に係る医療用デバイス1の場合と同様の構成を有しているため、第1実施形態に係る医療用デバイス1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0064】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係る医療用デバイス3の全体構成を説明するために示す図である。図5は、第3実施形態に係る医療用デバイス3を説明するために示す図である。図5(a)はシース部50の先端58が閉じた状態を示す図であり、図5(b)はシース部50の先端58が開いた状態を示す図である。なお、図4において、図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付している。
【0065】
第3実施形態に係る医療用デバイス3は、基本的には第1実施形態に係る医療用デバイス1と同様の構成を有するが、シース部及び異物除去用カテーテルの構成が、第1実施形態に係る医療用デバイス1とは異なる。
【0066】
すなわち、第3実施形態におけるシース部50は、図5(a)及び図5(b)に示すように、シースチューブ52の先端58が変形可能に構成されている。具体的に説明すると、シースチューブ52の先端58には、例えば所定の破断線が形成されている。使用前の医療用デバイス3は、図5(a)に示す状態であり、異物除去用カテーテル60を異物捕捉用カテーテル20内に装填し、さらに当該異物捕捉用カテーテル20をシース部50内に装填した状態で、シース部50の先端58は封止されている。この状態で血管内に挿入した後、シース部50に対して異物捕捉用カテーテル20及び異物除去用カテーテル60を前進(図5(b)の黒矢印方向に移動)させることにより、上述の破断線に沿って先端58が破断され、シース部50の開口端の封止が解除される(すなわち開口する)こととなる。
【0067】
また、図4に示すように、第3実施形態における異物除去用カテーテル60の先端には、第1実施形態で説明した先端チップ38が設けられていない。
【0068】
第3実施形態におけるシース部50及び異物除去用カテーテル60について、その他の部材については、第1実施形態における対応する部材と同様の構成を有するため、説明を省略する。また、図4に示す異物捕捉用カテーテル20についても、第1実施形態で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0069】
このように、第3実施形態に係る医療用デバイス3は、シース部及び異物除去用カテーテルの構成が、第1実施形態に係る医療用デバイス1とは異なっているが、第1実施形態に係る医療用デバイス1の場合と同様に、シース部50内に異物捕捉用カテーテル20と異物除去用カテーテル60を装填した状態で医療用デバイス3を血管内に挿入可能に構成されているため、シースイントロデューサ又はダイレータを使用しなくても済む。つまり、ダイレータの抜き取りに要していた手間を省くことができるため、使用者の作業負担を軽減することができる。また、シース部50内に異物捕捉用カテーテル20と異物除去用カテーテル60を装填した状態で医療用デバイス3を血管内に挿入することから、挿入時におけるシース部の潰れやキンクの発生を抑制することもできる。
【0070】
第3実施形態に係る医療用デバイス3は、シース部及び異物除去用カテーテルの構成が異なる点以外の点では、第1実施形態に係る医療用デバイス1の場合と同様の構成を有しているため、第1実施形態に係る医療用デバイス1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0072】
(1)上記実施形態においては、シース部に第1脱落防止機構(第1バルブ)が設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シース部ではなく異物捕捉用カテーテル側に第1脱落防止機構が設けられていてもよいし、シース部と異物捕捉用カテーテルの両方に第1脱落防止機構の構成部品が分散して設けられていてもよい。
【0073】
(2)上記実施形態においては、異物捕捉用カテーテルに第2脱落防止機構(第2バルブ)が設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、異物捕捉用カテーテルではなく処置用カテーテル(異物除去用カテーテル又は血管内止血用カテーテル)側に第2脱落防止機構が設けられていてもよいし、異物捕捉用カテーテルと処置用カテーテルの両方に第2脱落防止機構の構成部品が分散して設けられていてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態においては、シース部内に異物捕捉用カテーテルと異物除去用カテーテル(又は血管内止血用カテーテル)とを装填したときに、図2に示すように、異物除去用カテーテルの除去部(又は血管内止血用カテーテルの止血部)に対して、異物捕捉用カテーテルの捕捉部が遠位側に位置するように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、異物除去用カテーテルの除去部(又は血管内止血用カテーテルの止血部)に対して、異物捕捉用カテーテルの捕捉部が近位側に位置するように構成されていてもよいし、異物除去用カテーテルの除去部(又は血管内止血用カテーテルの止血部)と異物捕捉用カテーテルの捕捉部がほぼ同じ位置となる(例えば、収縮状態の捕捉部の中に、収縮状態の除去部が配置される)ように構成されていてもよい。
【0075】
(4)上記実施形態においては、拡張時における除去部及び弾性変形部の各形状が、長球状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、球状、扁球状又は鶏卵状であってもよいし、除去部又は弾性変形部の各端部が長球状であって、リトリバーの中間部が円筒状からなる形状であってもよい。
【0076】
(5)上記実施形態においては、除去部及び弾性変形部が金属材料で構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、生体適合性を有する樹脂などを材料としてもよい。
【0077】
(6)上記実施形態においては、捕捉部における網部全体を覆うように、膜部が形成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、網部におけるテーパー形状となっている部分(網部の近位部側)を膜部で覆わずに、露出させる構成としてもよい。また、網部の材料として、金属材料に限らず、例えば、生体適合性を有する樹脂などを材料としてもよい。
【0078】
(7)上記実施形態においては、処置用カテーテルが異物除去用カテーテル又は血管内止血用カテーテルである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、血管内に発生した異物を溶解するための異物溶解用カテーテル等、異物除去用カテーテル及び血管内止血用カテーテルとは異なるカテーテルを処置用カテーテルとして用いた場合であっても、本発明を適用可能である。
【0079】
(8)上記実施形態においては、使用対象となる管状組織が、血管である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、消化管や胆管等、他の管状組織の内部に発生した異物を除去するための医療用デバイスにも、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,2,3・・・医療用デバイス
10,50・・・シース部
12,52・・・シースチューブ
14,24,34,44,54,64・・・液体充填ポート
16,56・・・第1バルブ(第1脱落防止機構)
18・・・開口端
20・・・異物捕捉用カテーテル
22,32,42,62・・・カテーテルチューブ
26・・・第2バルブ(第2脱落防止機構)
28・・・捕捉部
28a・・・網部
28b・・・膜部
30,60・・・異物除去用カテーテル(処置用カテーテル)
33,43,63・・・操作部
35,45,65・・・操作レバー
36,46,66・・・コネクタ
37,67・・・除去部
38,48・・・先端チップ
40・・・血管内止血用カテーテル(処置用カテーテル)
47・・・止血部
47a・・・弾性変形部
47b・・・止血膜
58・・・(シースチューブの)先端
図1
図2
図3
図4
図5