(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】累積染毛料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/895 20060101AFI20220107BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220107BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220107BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20220107BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K8/895
A61K8/19
A61K8/36
A61K8/34
A61Q5/06
A61Q5/10
A61K8/44
(21)【出願番号】P 2017120795
(22)【出願日】2017-06-20
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼千代 惠一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤石 哲明
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 聡
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320895(JP,A)
【文献】特開平11-60453(JP,A)
【文献】特開2015-140326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性染料の少なくとも1種0.1~2.0質量%と、カーボンブラック0.5~5.0質量%と、水不溶性樹脂として(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー1.0~5.0質量%と、浸透助剤3.0~20質量%と、キレート剤0.001~1.0質量%と、有機酸と、低級アルコールと、水とを少なくとも含み、
前記(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー以外のアクリル系共重合体樹脂を含まず、pHが2.5~4.5であることを特徴とする累積染毛料組成物。
【請求項2】
前記酸性染料は、少なくとも黒401号を含むことを特徴とする請求項1記載の累積染毛料組成物。
【請求項3】
前記
浸透助剤が
下記A群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の累積染毛料組成物。
A群:ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノシキエタノール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、エトキシジグリコール、N-メチルピロリドン、N-メチル-2ピロリドン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用直後の洗髪が不要であり、塗布直後の毛髪染毛性(一時着色性)に優れるだけでなく、使用する回数を重ねる毎に徐々に毛髪を染色していく累積染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般に汎用される、永久染毛料(酸化染毛料)や半永久染毛料(酸性染料)は、使用時の染毛操作が複雑で、且つ面倒であり、周囲や衣服、被施術者の皮膚が染色されてしまうなどの欠点を有している。
そのため、一般的には、理美容院で施術してもらうか、若しくは汚れても直ぐに洗い流せるように入浴時に自己施術しなくてならないなど、使用者に過大な負担を強いるものであった。
【0003】
これらの負担を軽減し、1回で染まる量は少なくても簡便に繰り返し使用することで累積的に染毛できる染毛料として、例えば、1)直接染料0.01~5質量%及び芳香族アルコール1~20質量%を含有し、pHが1.5~5.0であり、複数回の繰り返しの使用により毛髪を染色する染毛料組成物において、ベタイン変性シリコーンを含有する染毛料組成物(例えば、特許文献1参照)、2)水溶性染料の少なくとも1種0.4~3重量%と、ノニオン若しくはアニオンのシリコーン系樹脂0.5~7重量%と、カーボンブラック0.4~4重量%と、アクリル系共重合体樹脂0.5~6重量%と、低級アルコール15~55重量%と、水20重量%以上とを含有し、かつ、pHを2~5に調整してなることを特徴とする染毛料(例えば、本出願人による特許文献2参照)などが知られている。
しかしながら、上記特許文献1の累積染毛料組成物は、カーボンブラックの含有はなく、また、毛髪への染色力は十分ではない点に課題がある。
【0004】
一方、毛髪、特に白髪への染色力を向上させるために、黒401号を含む酸性染料にカーボンブラックを酸性雰囲気下で併用すると、直ぐに変色して(赤くなって)しまうという課題を有するものであるが、上記特許文献2(実施例1~5)では、ノニオン若しくはアニオンのシリコーン系樹脂、アクリル系共重合体樹脂などの成分と低級アルコールと、水などの各成分を好適な使用量で組み合わせることなどにより、上記変色などの課題を解消しているものであるが、色相安定性を更に改善して、更なる染毛力の向上が望まれているのが現状である。
【0005】
更に、黒401号を含む酸性染料とカーボンブラックを併用したものとして、例えば、(A)特定構造の分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、(B)ベタイン変性シリコーン、および(C)皮膜形成性樹脂を含有した整髪剤、トリートメント、毛髪着色剤などの毛髪用組成物(例えば、特許文献3参照)が知られている。
しかしながら、この特許文献3の毛髪用組成物は、累積染毛料組成物ではなく、また、毛髪への染色力も十分でなく、配合物性も相違し、本発明とは技術思想(構成及びその作用効果)などが相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-22927号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2007-320895号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2008-308435号公報(特許請求の範囲、実施例17)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、黒401号を含む酸性染料とカーボンブラックを酸性雰囲気下で併用した累積染毛料組成物であっても、変色や刺激性もなく、一時着色性に優れ、更なる染毛力の向上となる累積染毛性と、耐水性などに優れた累積染毛料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討を重ねた結果、酸性染料の少なくとも1種と、カーボンブラックと、水不溶性樹脂と、浸透助剤と、キレート剤と、低級アルコールと、有機酸と、水とを各特定の範囲で含み、染毛料組成物のpHを特定の範囲とすることなどにより、上記目的の累積染毛料組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の累積染毛料組成物は、酸性染料の少なくとも1種0.1~2.0質量%と、カーボンブラック0.5~5.0質量%と、水不溶性樹脂1.0~5.0質量%と、浸透助剤3.0~20質量%と、キレート剤0.001~1.0質量%と、有機酸と、低級アルコールと、水とを少なくとも含み、pHが2.5~4.5であることを特徴とする。
前記酸性染料は、少なくとも黒401号を含むことが好ましい。
前記水不溶性樹脂は(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、黒401号を含む酸性染料とカーボンブラックを酸性雰囲気下で併用した累積染毛料組成物であっても、色相安定性に優れ、変色や刺激性もなく、一時着色性、更なる染毛力の向上となる累積染毛性と耐水性などに優れた累積染毛料組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の累積染毛料組成物を使用した毛髪用塗布具の一例を示すものであり、キャップを外した状態の斜視図である。
【
図2】
図1の毛髪用塗布具であって、キャップを含めた分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の累積染毛料組成物は、酸性染料の少なくとも1種0.1~2.0質量%と、カーボンブラック0.5~5.0質量%と、水不溶性樹脂1.0~5.0質量%と、浸透助剤3.0~20質量%と、キレート剤0.001~1.0質量%と、有機酸と、低級アルコールと、水とを少なくとも含み、pHが2.5~4.5であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に用いる酸性染料としては、一般的に化粧品で用いられている法定色素中の酸性染料のうち、少なくとも1種を用いることができ、好ましくは、少なくとも黒色401号を含むことが望ましい。
黒色401号以外の酸性染料の具体例としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色 106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色206号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色403号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下、同様)が挙げられる。
【0014】
これらの酸性染料の含有量は、累積染毛料組成物全量に対して、合計量で0.1~2.0質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)、好ましくは、0.2~1.5%が望ましい。
この酸性染料の含有量が0.1%未満の場合、染毛効果が十分に得られず、一方、2.0%を超えると、水及び低級アルコールの混合溶媒中への溶解度の影響で、系が不安定になったり、皮膚等への汚染が生じやすくなるため、好ましくない。
なお、黒色401号の含有量は、カーボンブラックとの併用効果などの点から、酸性染料中に、10~100%含まれていること(累積染毛料組成物全量に対して、0.01~2.0質量%)が望ましい。
【0015】
本発明の累積染毛料組成物は、上記黒色401号を含む酸性染料により、各色の髪の色調、特に黒色を発揮せしめることができるが、更に、白髪などを鮮やかに隠蔽するため、カーボンブラックを含有(併用)せしめるものである。
用いることができるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック等、各製法によって製造された染毛料組成物に用いられる市販のカーボンブラック、具体的には、Special Black 6,Color Black S170,SB-4(以上、デグサ社製)、DCブラック、ユニビュアブラックLC902、ミッドナイトブラック(以上、ジオテック社製)等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0016】
これらのカーボンブラックの含有量が、累積染毛料組成物全量に対して、0.5~5.0%、好ましくは、0.5~4.5%とすることが望ましい。
このカーボンブラックの含有量が0.5%未満であると、黒色401号を含む酸性染料との併用効果、並びに、白髪を更に充分に隠蔽する点で劣ることとなり、一方、5.0%を越えると、粘度が急激に上昇し、使用性の点から、好ましくない。
【0017】
本発明の耐水性樹脂は、形成される被膜が耐水性を有しているものであれば特に限定されず、種々の耐水性樹脂を用いることができ、ポリジメチルシロキサンとアクリル系ポリマーの共重合体であるシリコーン・アクリルブロックコポリマー、例えば、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーなどの少なくとも1種が挙げられる。
好ましくは、累積染毛性を維持できる点、耐水性の点から、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーの使用が望ましい。
【0018】
これらの水不溶性樹脂の含有量は、固形分換算で累積染毛料組成物全量に対して、1.0~5.0%、好ましくは、2.0~4.0%とすることが望ましい。
この水不溶性樹脂の含有量が1.0%未満では、耐水性が乏しくなり、一方、5.0%を越えると、粘度が高くなったり、累積染毛性が低下し、好ましくない。
【0019】
本発明の累積染毛料組成物には、更なる染毛効果を発揮せしめる点から、浸透助剤が含有される。
用いることができる浸透助剤としては、例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノシキエタノール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、エトキシジグリコール、N-メチルピロリドン、N-メチル-2ピロリドン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
これらの浸透助剤の含有量は、累積染毛料組成物料全量に対して、3~20%であり、好ましくは、5~20%が好適である。
この浸透助剤の含有量が3%未満の場合は、更なる染毛効果が不十分であり、一方、20%を超える場合は、染毛料塗布後の乾燥性が低下し、衣服等への色移りなどが増すため、好ましくない。
【0021】
上記黒401号を含む酸性染料にカーボンブラックを酸性雰囲気下で併用すると、確かな理由は定かではないが、黒401号の不純物とカーボンブラックの反応により、直ぐに変色して(赤くなって)しまうものであるが、本発明では、キレート剤(色相安定剤又は変色防止剤)を含有せしめることにより、変色を防止し、色相安定性を更に向上せしめて上記黒401号を含む酸性染料とカーボンブラックとの相乗作用により、更に鮮やかな黒色とし、白髪などへの染毛力を著しく向上させるものとなる。
用いることができるキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸(ASDA)、アミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)または、これらの塩、これらの誘導体、及びこれらの誘導体の塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記EDTAなどの塩は、特に限定されないが、EDTA-2Na、EDTA-3Na、EDTA-4Na等が挙げられる。これらのキレート剤の中でも、上述の変色防止の更なる向上、累積染毛料組成物の安定性向上の点から、EDTA-2Na、DTPA、HEDPが好ましい。
【0022】
これらのキレート剤の含有量は、累積染毛料組成物全量に対して、0.001~1.0%であり、好ましくは、0.01~0.1%が好適である。
このキレート剤の含有量が0.001%未満の場合は、変色防止効果が低く、一方、1.0%を超える場合は、皮膚への刺激が強くなるため、好ましくない。
【0023】
本発明に用いる低級アルコールとしては、例えば、エチルアルコール(エタノール)、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールなどの染毛料に使用できる低級アルコールの少なくとも1種を用いることができ、安全性、乾燥性、匂い等の点からエチルアルコールが望ましい。
【0024】
これらの上記低級アルコールの含有量は、累積染毛料組成物全量に対して、25~60%、好ましくは、30~50%とすることが望ましい。
この低級アルコールの含有量が25%未満であると、乾燥性が低下し、一方、60%を越えると、染毛効果が十分に発揮されないこととなり、好ましくない。
【0025】
本発明に用いる有機酸は、累積染毛料組成物のpHを後述するように酸性域下とするために用いるものであり、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸など少なくとも1種の有機酸、及びこれらの塩が挙げられる。
この有機酸の含有量は、後述する累積染毛料組成物のpH範囲となるように好適な量が用いられる。
【0026】
本発明における累積染毛料組成物の残部は、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、水道水等)を使用でき、その含有量としては、染毛効果と乾燥性を更に高度に両立する点等から、累積染毛料組成物全量に対して、好ましくは、30~60%とすることが望ましい。
【0027】
本発明の累積染毛料組成物は、染毛力向上、皮膚刺激防止、皮膚染着トラブル防止のため、pHを2.5~4.5に調整することものであり、好ましくは、pHを2.5~4.1に調整することが望ましい。
この染毛料のpHが2.5未満の場合、皮膚染着性が増大するので好ましくなく、一方、pHが4.5を超える場合は、染毛性が低下し、好ましくない。
本発明において、pHの調整は、上述の乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸等の有機酸又はその塩、場合によっては無機酸、または、トリエタノールアミンなどのアルカリを用いて行うことができる。
【0028】
本発明の累積染毛料組成物は、上記酸性染料の少なくとも1種、カーボンブラック、水不溶性樹脂、浸透助剤、キレート剤、有機酸、低級アルコール、水などの各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原材料、例えば、各種界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、還元防止剤、油性成分、香料、動植物抽出物などを適宜量含有することができる。
【0029】
本発明の累積染毛料組成物は、常法により調製することができ、上記酸性染料の少なくとも1種、カーボンブラック、水不溶性樹脂、浸透助剤、キレート剤、有機酸、低級アルコール、水などの各成分を上記各含有量の範囲、上記pHの範囲となるように配合し混練することなどにより、製造することができる。
例えば、水不溶性樹脂、低級アルコールなどのアルコール相と、酸性染料と水などの水相とを各々を汎用のディスパーなどにて均一になるまで撹拌後、アルコール相と水相を混合した後、更に有機酸などを加え、ホモミキサーなどにて均一になるまで撹拌して、累積染毛料組成物を調製することができる。
【0030】
このように構成される本発明の累積染毛料組成物を使用に供するにあたっては、汎用の毛髪用塗布具を用いることができ、用いる毛髪用塗布具の形状、構造等は特に限定されるものでなく、例えば、中綿タイプの塗布具、ノック式のバルブ装置を備えた塗布具、マスカラタイプの塗布具、チューブタイプの塗布具、ピストン押圧機構を備えた塗布具などが挙げられる。
【0031】
図1及び
図2は、本発明の累積染毛料組成物を吸蔵した中綿タイプの毛髪用塗布具であり、多孔質塗布体と、多孔質塗布体に並設される櫛部材とからなる櫛部によって髪を梳くと共に、取り付けられる容器内の塗布液、すなわち、本発明の累積染毛料組成物を、該多孔質塗布体を介して毛髪に塗布しうる毛髪用塗布具である。
具体的には、
図1及び
図2に示す如く、塗布具付き化粧料容器1の毛髪用塗布具において、櫛部30は、櫛部材11と、櫛部材11に並設される板状の多孔質塗布体10とからなり、その櫛部30によって髪を梳くと共に、取り付けられる容器本体2内の塗布液となる累積染毛料組成物を塗布体10を介して毛髪に塗布しうるものである。
【0032】
化粧料容器1において、樹脂容器本体2は筒状に成形されている。容器本体2の尾端2Aは開口され、
図2に示す貯留担持体4が容器本体2内に挿入収容される。貯留担持体4には本発明の累積染毛料組成物が担持される。尾端2Aの内壁にはネジが形成され、蓋部材5Bにもネジが形成されて両者が螺合されてその開口が密封されると共に、蓋部材5Bは貯留担持体4の端部4Aを押し付け固定している。なお、蓋部材5Bには意匠的な蓋部材5Aが蓋部材5Bに取り付けられる。
上記の貯留担持体4としては塗布液となる本発明の累積染毛料組成物を担持できるものである限り、その材料に制限されるものではなく、例えば、中綿等を挙げることができる。
【0033】
容器本体2の先端2Bには、矩形筒状の取付孔6、差込穴7及び螺合部9が形成され、取付孔6はほぼ中央に形成される。取付孔6には板状の多孔質塗布体10が挿入され、両側に設けた差込穴7には樹脂製の櫛部材11が装着される。螺合部9は、後述するキャップ内壁の螺合部に螺合される。多孔質塗布体10は、矩形支持部材12を介して取付孔6内に装填され、多孔質塗布体10は容器本体2の軸方向に沿って設けられる。多孔質塗布体10の基端10Aは、その装填時に上述の担持体4の先端4Bの一部に挿入されて連結される。
なお、矩形支持部材12の外壁面と取付孔6の筒状の内壁面とは液密に密着しており、また、支持部材12は取付孔6から着脱可能でも、完全に固定されても良い。
【0034】
上記の多孔質塗布体10は、その使用する塗布液である累積染毛料組成物の液保持力(mm)が所定の範囲となるように調整されて、液漏れ(直流)を防止して櫛部30への適度な累積染毛料組成物の供給ができる。上記多孔質塗布体の素材としては、スライバーペン芯、フェルト状物、連続気泡スポンジ状物等が好適である。
【0035】
櫛部材11は、
図1及び2に示すように、樹脂製の成形部材からなり、基部13と基部13の先端面に一定間隔をおいて設けられる複数の櫛歯14とからなる。基部13は上述の差込穴7と着脱可能に係合される係合部として成形され、また櫛歯14の先端部はRが付けられて丸み成形される。基部13と差込穴7との係合時、櫛部材11は取付孔6に装填された多孔質塗布体10に並設される。かかる櫛部材11の取付状態では、櫛歯14の先端14Bが多孔質塗布体10の先端10Bより突き出しており、
図1に示すようにその突出量は0.2~3.0mmの範囲にあり、特に好ましくは、0.5~2.0mmの範囲である。
かかる突出量(0.2~3.0mm)により、その使用時に頭皮等に累積染毛料組成物が付着せず、頭髪の殆どがその根本から頭髪だけに累積染毛料組成物を塗布することができる。上記の範囲未満の突出量(0.2mm未満)では頭皮に直接多孔質塗布体10が当接するおそれがあり、また、上記の範囲を超えてくる(3.0mmを超えると)と、頭髪の根本への十分な塗布が困難となってくる。
【0036】
また、
図1に示すように互いに列配される多孔質塗布体10と櫛歯14との間隔は非接触で且つ5.0mm以内に近接されて互いに配されてなることが好ましく、特に、0.5~3.5mmの範囲であることが好ましい。この毛髪用塗布具では、このような多孔質塗布体10と櫛歯14の距離を一定間隔以内に保つ必要は必ずしもないが、上記の範囲内での距離を保つことで、累積染毛料組成物が櫛部を汚すことを防ぐと共に、毛髪への塗布性をより向上させることができる。
従って、櫛部30は、容器本体2の先端部2A、多孔質塗布部材10、矩形支持部材12、及び基部13及び櫛歯14からなる櫛部材11から構成される。
上記の櫛部30は、内キャップ、中キャップ及び外キャップからなるキャップ15で覆われる。
【0037】
このように構成される毛髪用塗布具にあっては、櫛部30の構造において多孔質塗布体10を用いるので、櫛歯自体に塗布液となる累積染毛料組成物の直接吐出口を設けるよりその塗布性に優れている。また、多孔質塗布体10においてその使用する塗布液の液保持力を所定範囲にすることにより、塗布液の液漏れ(直流)を十分に防止すると共に櫛部30への適度な且つ均等な塗布液の供給が可能となる。
また、このような多孔質塗布体10には近接して櫛部材11の櫛歯14が列設されるが、かかる櫛部材の櫛歯の先端を所定範囲で突き出させることにより、塗布体からの塗布液が頭皮に直接作用しないようにすることができる。このため地肌を汚すことがない。更に、近接範囲を所定範囲内とすることにより、塗布液が櫛部材11を汚すのを防ぐと共に、髪梳き状態とが良く、十分な塗布性が確保できるものとなる。
【0038】
このように構成され使用に供される本発明の累積染毛料組成物は、上記酸性染料の少なくとも1種0.1~2.0質量%と、カーボンブラック0.5~5.0質量%と、水不溶性樹脂1.0~5.0質量%と、浸透助剤3.0~20質量%と、キレート剤0.001~1.0質量%と、有機酸と、低級アルコールと、水とを少なくとも含み、pHを2.5~4.5とすることにより、上記黒401号を含む酸性染料にカーボンブラックを酸性雰囲気下で併用しても、変色することがなく、上記黒401号を含む酸性染料とカーボンブラックとの相乗作用により、更に鮮やかな黒色となり、白髪などへの染毛力を向上させることができ、しかも、低pH環境下でも色相の安定性もよく、累積染毛料組成物の経時の安定性も向上し、使用直後の洗髪が不要であり、刺激もなく、塗布直後の毛髪染毛性(一時着色性)に優れるだけでなく、使用する回数を重ねる毎に徐々に毛髪を染色していく累積染毛性に優れ、耐水性、使用性に優れた累積染毛料組成物が得られることとなる。
【実施例】
【0039】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1~19及び比較例1~12〕
下記表1に示す配合処方(全量100質量%)で、汎用のディスパーにて均一になるまで撹拌して各累積染毛料組成物を調製した。
上記の方法で得られた実施例1~19及び比較例1~12の各累積染毛料組成物について、下記方法により、累積染毛料組成物のpH、耐水性、一時着色性、累積染毛性(累積3回)、刺激性、色相安定性、総合評価の各評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0041】
(累積染毛料組成物のpHの測定方法)
上記方法で得られた実施例1~19及び比較例1~12の各染毛料組成物をガラス電極pH計にて、25℃におけるpHを測定した。
【0042】
(耐水性の評価方法)
1gの毛髪毛束(100%白髪)に、得られた各染毛料組成物0.1gを塗布し、常温で120分間放置した。その後、毛束に水で湿らせた濾紙を押し当て、濾紙への色の付き具合を、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:濾紙に染毛料が全く付着しない。
○:濾紙に染毛料が薄く付着する。
△:濾紙に染毛料がやや濃く付着する。
×:濾紙に染毛料が濃く付着する。
【0043】
(一時着色性の評価方法)
1gの毛髪毛束(20%白髪混じり)に、得られた各染毛料組成物0.2gを塗布し、乾燥後白髪が隠ぺいされたか否かを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:毛束は、白髪、黒髪の違いが認識出来ないレベルで隠ぺいされている。
○:染毛ムラはあるが、染毛色にほぼ隠ぺいされている。
△:染毛色に染毛されているが、白髪の存在が確認出来る。
×:殆ど着色しない。
【0044】
〔累積染毛性(累積3回)の評価方法〕
1gの毛髪毛束(100%白髪)に、得られた各染毛料組成物0.2gを塗布・乾燥後、2回洗髪する作業を3回繰り返した後、毛髪毛束の染毛状態を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:市販の酸化染毛料(ヘアカラー)と同等。
○:市販の酸化染毛料と比較すると、若干染毛性に劣る。
△:市販の酸化染毛料と比較すると、明らかに染毛性が劣っている。
×:殆ど染まっていない。
【0045】
(刺激性の評価方法)
試験者(成人女子)10人が各染毛料組成物を収容した
図1及び
図2に示す毛髪用塗布具を用いて実際に頭髪に使用した際の刺激性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:刺激を感じた人が0人
○:刺激を感じた人が1人
△:刺激を感じた人が2人
×:刺激を感じた人が3人以上
【0046】
(色相安定性の評価方法)
得られた各染毛料組成物を30mlのサンプル瓶に秤量し、50℃の環境下に3ヶ月間放置後、各染毛料組成物の色相(液色)を製造直後の色相(液色)と比較して変色の有無、並びに、瓶の底に凝集物等の沈降物が無いことなどを目視により下記評価基準にて評価した。
評価基準:
◎:色相(液色)は均一で変色はなく、沈降物が底部に確認されない。
○:ごくわずかな変色が見られるが、比べなければわからない。
△:わずかな変色が見られ、単体でみても変色に気づく。
×:はっきりと変色を見て取れる。
【0047】
(総合評価の評価方法)
上記耐水性、一時着色性(塗布直後の染毛性)、累積染毛性(累積3回)、刺激性、色相安定性の各評価基準(◎、○、△、×)の数、評価項目により、下記評価基準で総合評価した。
評価基準:
◎:全ての評価(5項目)が◎のもの。
○:×と△がなく、1つでも○があるもの。
△:×がなく、1つでも△があるもの。
×:1つでも×があるもの。
【0048】
【0049】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1~19は、本発明の範囲外となる比較例1~12に較べ、耐水性、一時着色性、累積染毛性(累積3回)、刺激性、色相安定性の全てにおいて優れていることが確認された。
これに対して、比較例1~12を個別的にみると、比較例1及び2は、本発明のキレート剤の含有量が本発明の範囲外となる場合であり、比較例3及び4は、本発明のカーボンブラックの含有量が本発明の範囲外となる場合であり、比較例5及び6は、本発明の水不溶性樹脂の含有量が本発明の範囲外となる場合であり、比較例7及び8は、本発明の浸透助剤の含有量が本発明の範囲外となる場合であり、比較例9及び10は、本発明の有機酸の含有量が本発明の範囲外となる場合であり、比較例11及び12は、本発明の酸性染料の含有量が本発明の範囲外となる場合であり、これらの場合は、本発明の効果を発揮することできないことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
白髪などの染毛に好適な累積染毛料組成物が得られる。