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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ねじボルトを延伸させる締付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20220107BHJP
   B25B 29/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B23P19/06 K
B25B29/00
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017139106
(22)【出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2018012191
(43)【公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】10 2016 113 196.2
(32)【優先日】2016-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
【住所又は居所原語表記】Uhlandstrasse 6a, D-59872 Meschede, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
【住所又は居所原語表記】Josef-Menke-Strasse 25, D-59581 Warstein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-018960(JP,A)
【文献】特表2008-534307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 - 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山付き端部において引っ張ることによってねじボルトを延伸させるための締付け装置であって、前記ねじ山付き端部(1)を包囲する支持管(2)と、該支持管(2)の延長部に配置されたシリンダ(3)であって、液圧力によって前記シリンダ(3)において軸方向に可動な少なくとも1つのピストンを有する、シリンダ(3)と、前記ねじ山付き端部(1)に螺合させることができかつ前記ピストンによって軸方向に沿って引っ張られるように設計されているチェンジオーバブシュ(6)と、前記ピストンへの液圧供給のための液圧機械(4)と、信号リンクであって、前記液圧機械(4)と、前記チェンジオーバブシュ(6)と前記ねじ山付き端部(1)との間のねじ山係合部(G)の長さを検出するための装置との間の、信号リンクと、を有する締付け装置において、前記ねじ山係合部(G)の長さを検出するための装置は、前記ねじボルト(7)の端面(12)と軸方向に離間して軸方向で向かい合って位置決めされた、前記チェンジオーバブシュ(6)に固定されたセンサエレメント(11)を有することを特徴とする、締付け装置。
【請求項2】
前記センサエレメント(11)は、光学、音響、磁気、電気、電磁気、光電気、誘導、低周波または高周波センサである、請求項1記載の締付け装置。
【請求項3】
前記センサエレメント(11)は、軸方向で前記ねじボルト(7)の前記端面(12)と向かい合った前記チェンジオーバブシュ(6)の内側(13)に配置されている、請求項1または2記載の締付け装置。
【請求項4】
前記センサエレメント(11)は、前記信号リンクを介して前記液圧機械(4)の液圧制御ユニット(8)に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項5】
前記センサエレメント(11)は、無線または有線の信号リンクを介して前記液圧機械(4)の液圧制御ユニット(8)に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項6】
前記センサエレメント(11)は、前記チェンジオーバブシュ(6)の長手方向チャネル(14)を通って延びる1つのケーブルを介して前記液圧制御ユニット(8)に接続されている、請求項4記載の締付け装置。
【請求項7】
前記液圧制御ユニット(8)は、最小ねじ山係合部長さ(G1)に達したときにのみ前記液圧機械(4)を作動させるように、設計されている、請求項から6までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項8】
前記センサエレメント(11)は、ねじ山付き突出部が設けられたセンサハウジング(16)に配置されており、このねじ山付き突出部を介して、前記チェンジオーバブシュの対応するねじ山付き受容部に螺入されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項9】
前記液圧機械(4)には、データ表示のための視覚的手段が設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項10】
前記視覚的手段は、測定されたねじ山係合部長さ(G)および最小ねじ山係合部長さ(G1)を表示する、請求項9記載の締付け装置。
【請求項11】
前記ねじボルト(7)の前記端面(12)と接触する軸方向に可動な測定ピンが、前記チェンジオーバブシュ(6)に固定されたセンサエレメント(11)に隣接して配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項12】
前記チェンジオーバブシュ(6)および前記測定ピンは、互いに対して軸方向に可動である、請求項11記載の締付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ山付き端部において引っ張ることによってねじボルトを延伸させるための締付け装置であって、締付け装置は、ねじ山付き端部を包囲する支持管と、支持管の延長部に配置されたシリンダであって、液圧力によってシリンダにおいて軸方向に可動な少なくとも1つのピストンを有する、シリンダと、ねじ山付き端部と共に螺合させることができかつピストンによって軸方向に沿って引っ張られるように設計されているチェンジオーバブシュと、ピストンの液圧供給のための液圧機械と、信号リンクであって、液圧機械と、前記チェンジオーバブシュとねじ山付き端部との間のねじ山係合部の程度を検出するための装置との間の、信号リンクと、を有する締付け装置に関する。
【0002】
ねじボルトを延伸させる締付け装置は従来技術から公知である。米国特許第5452629号明細書(US 5,452,629)に開示された締付け装置は、引張応力を決定するための測定配列を有する。測定配列は、基本的に、測定ロッドから成る。測定ロッドは、一列に配置されており、締め付けられるボルトのねじ山付き端部と接触しており、チェンジオーバブシュに沿って鉛直方向に続いている。ねじボルトと接触した最も下側の測定ロッドは第2の測定ロッドに接続されている。第2の測定ロッドは半径方向膨張部を有する。半径方向膨張部に対してばねが当接しており、ボルトの方向へ測定配列に予荷重をかけている。直線ポテンショメータ、誘導センサまたは光電子センサの形式のセンサが、測定配列の上端部において、測定ロッドにすぐ近接して配置されている。測定ロッドを包囲する管またはスリーブは、締付け装置の上端部までケーブルを案内する。電気抵抗の変化は、検出され、引張応力に比例する。これは、ケーブルに接続されたディスプレイユニットに表示することができる。シリンダまたはピストン装置への液圧流体の供給は、このようにして決定される引張応力を介して制御することができる。
【0003】
国際公開第2010/054959号明細書(WO 2010/054959 A1)には締付け装置が記載されており、その場合、測定ロッドは、測定ロッドの下端部を介して、締め付けられるねじボルトの端面に着座させられている。ロッドは、ボルトを包囲するチェンジオーバブシュに関して長手方向に移動可能であり、これは外側から容易に見られる。これにより、チェンジオーバブシュ内へのボルトの係合深さが十分であるかどうかを視覚的にチェックすることができる。
【0004】
独国特許出願公開第102005015922号明細書(DE 10 2005 015 922 A1)には、測定ロッドの相対移動が検出されるのではなく、ボルトと、ボルトから間隔を置かれているが位置固定されているセンサエレメントとの間の距離が検出される実施の形態が記載されている。チェンジオーバブシュはセンサエレメントに対して移動可能である。したがって、チェンジオーバブシュに対するセンサエレメントとボルトとの間の距離が検出される。
【0005】
引張応力または引張応力に比例するパラメータを測定するための従来技術から公知の測定配列は、チェンジオーバブシュと測定機器との間の相対移動に基づく。このような設計は、比較的大きな量の設計作業を必要とする。なぜならば、このような設計は、ボルトと、測定配列と、チェンジオーバブシュとの間の正確な適合を必要とするからである。このために、測定配列は、締付け装置内で摺動するように案内されなければならないまたは取り付けられなければならない。加えて、測定配列は、測定配列がチェンジオーバブシュと共に摺動することを防止するために、チェンジオーバブシュの外側の少なくとも1つの側に固定されなければならない。さらに、センサは、機械的に安定していなければならない、または別の形式で外部の機械的な荷重に対して保護されていなければならない。この結果、かなりの量の設計作業を生じる。
【0006】
締め付けられるボルトと直接接触するセンサ配列を有する従来技術から公知の締付け装置の場合、センサは高い機械的荷重を受け得る。全てのこれらの装置によって共有される1つの態様は、引張応力を測定データから計算することができるが、ねじ山係合部をこの形式において直接的に計算することができないということである。
【0007】
本発明によって解決される問題は、ねじ山付き端部において引っ張ることによってねじボルトを延伸させるための締付け装置を提供することであり、これは、チェンジオーバブシュと、締め付けられるボルトのねじ山係合部の程度の無接触測定を可能にする。加えて、このような締付け装置は、材料に対して優しい形式で、かつ増大した作動信頼性で、ねじ山係合を正確に測定する。
【0008】
この問題を解決するために、請求項1に記載の特徴を有するねじボルトを延伸させるための締付け装置が提供される。
【0009】
このような締付け装置の場合、締め付けられかつ延伸されるねじボルトのねじ山付き端部は、締付け装置の支持管によって包囲されている。シリンダが支持管の延長部に配置されており、シリンダには少なくとも1つのピストンが設けられている。ピストンは、液圧力によってシリンダ内で軸方向に可動である。ピストンへの液圧供給は、液圧機械を介して行われる。ピストンの軸方向および鉛直方向移動の間、ピストンは、チェンジオーバブシュに沿って軸方向に移動する。チェンジオーバブシュは、ねじ山付き端部に螺合することができる。締付け装置の別の構成部材は、チェンジオーバブシュとねじボルトのねじ山付き端部との間のねじ係合部を検出する装置であり、前記装置は、1つのリンクを介して液圧機械または液圧制御ユニットに接続されている。
【0010】
本発明によれば、ねじ山係合の程度、即ち長さを検出する装置の1つの構成部材は、センサエレメントである。センサエレメントは、チェンジオーバブシュに固定されており、軸方向に離間して、すなわち無接触でねじボルトの端面に向かい合って位置決めされている。センサエレメントがいかなる作動状態においてもねじボルトと接触しないことは有利である。したがって、衝撃またはショックによって生ぜしめられるセンサエレメントにおける機械的荷重が回避される。チェンジオーバブシュにおけるセンサエレメントの位置的に固定された配列により、ねじ山係合部の長さは、センサの位置が分かっており、かつセンサとチェンジオーバブシュの下端部との間の距離が分かっている場合に、測定された分離量に基づいて、直接的かつ正確に決定することができる。
【0011】
センサエレメントは、光学、音響、磁気、電気、電磁気、光電気、誘導、低周波または高周波センサであることができる。その他の測定方法、例えば機械的な接触測定を用いる前記センサエレメントの1つまたは複数の組合せも考えられる。例えば、従来技術から公知の接触測定は、ボルトに接続された測定ピンを介した無接触測定と組み合わせることができる。このような設計において、測定ピンおよび無接触センサは互いに隣接している。このような設計は、ねじ山係合部および引張応力を同時に測定することを可能にする。
【0012】
無接触測定配列は有利であり、より単純な設計を有する。前記センサエレメントは、ねじボルトの端面とセンサとの間の距離の無接触で極めて精確な測定を可能にする。チェンジオーバブシュの下端部とセンサエレメントとの間の距離は固定値であるので、ねじ山係合、すなわち、ねじボルトとのチェンジオーバブシュの係合部の長さは、ねじ係合部の測定された距離を引くことによって計算することができる。
【0013】
本発明の1つの好適な実施の形態では、センサエレメントは、軸方向でねじボルトの端面と向かい合ったチェンジオーバブシュの内側に配置されている。その結果、センサエレメントの位置座標は、明確にかつ一定に確立される。センサエレメントとねじボルトの端面との間の距離は、正確に、センサエレメントにおける機械的荷重なしに測定することができる。
【0014】
センサエレメントは信号リンクを介して液圧機械の液圧制御ユニットに接続されていると有利である。その結果、センサエレメントによって決定または記録された距離(または距離に比例した測定値)を、液圧制御ユニットへ送ることができる。これは、液圧機械の液圧制御ユニットによって出力された命令を、センサエレメントによって検出された値に合致させることを可能にする。したがって、液圧機械は、信号リンクを介してセンサエレメントと通信し、両構成部材は、それらの相互作用の点で最適化されることが可能である。2つの構成部材の機能的な連結が保証される。
【0015】
発明のさらに別の実施の形態では、センサエレメントは、無線信号リンクを介して液圧機械の液圧制御ユニットに接続されている。これは、液圧制御ユニットへの無接触データ伝送を可能にする。その結果、構成部材の数が減じられ、設計が単純化される。
【0016】
択一的に、センサエレメントは信号ケーブルを介して液圧機械の液圧制御ユニットに接続されている。ケーブルは、チェンジオーバブシュにおいて延びる長手方向チャネルに沿って案内されており、センサエレメントによって記録されたデータを液圧制御ユニットへ送信する。センサエレメントとねじボルトとの間の直接接触をこの実施の形態では省略することもでき、これは、センサエレメントの耐久性にとって有利である。このような実施の形態では、センサエレメントはチェンジオーバブシュに固定して接続されてもいる。
【0017】
ケーブルを収容する長手方向チャネルは、チェンジオーバブシュの中心軸線上に配置することもできるし、またはこの中心軸線に関してずれて配置することもできる。
【0018】
発明のさらに別の有利な実施の形態では、液圧制御ユニットは、所定の最小ねじ係合部長さが達せられるまでは、液圧機械は圧力を上昇させるために作動させられない。したがって、ユーザによって予め規定されたまたは自動的に予め規定された最小ねじ係合部長さのための値に達すると、液圧流体をピストン-シリンダユニットへポンプで送り、チェンジオーバブシュに引張力を与えることが可能になる。このような装置は、特に安全のために使用され、ねじ係合が不十分である場合にチェンジオーバブシュが壊れて緩んだり、ねじボルトから滑り落ちるリスクを低減する。加えて、このような設計は、人員による能動的な係合なしに締付け装置の完全に自動的な作動を可能にするような形式で締付け装置の作動を単純化する。液圧機械は、実際に存在するねじ山係合部に従って制御される。その結果、向上した作動信頼性が達成される。その1つの理由は、人間の関与によって生じる測定誤差がほとんど完全に排除されることである。
【0019】
発明のさらに別の有利な実施の形態では、センサエレメントは、センサハウジングに配置されており、センサハウジング自体には、ねじ山付き突出部が設けられている。このねじ山付き突出部は、チェンジオーバブシュの対応するねじ山受容部に螺入される。したがって、センサエレメント、またはセンサハウジングに固定されたセンサエレメントは、単純な形式でチェンジオーバブシュに固定して接続することができる。この実施の形態は、本発明による設計をも単純化し、同時に、作動信頼性を向上させる。
【0020】
液圧制御ユニットに視覚的ディスプレイ手段が設けられている場合も有利である。これらの手段は、例えば、測定されたねじ山係合部長さおよび最小ねじ山係合部長さを表示する。択一的にまたは付加的に、達成されたねじ山係合部長さが十分であるかどうかを表示するまたは音響的に信号で表すことも可能である。
【0021】
その他のパラメータは、例えば、引張応力を実際値または設定値として、または液圧として表すなど、視覚的な手段を用いて表すこともできる。その結果、発明による締付け装置のユーザは、液圧制御ユニットによって出力された信号値または測定値を認識することを可能にされており、これにより、必要であればこれらを修正し、それに従って締付け装置の作動を制御する。しかしながら、自動的な検出、修正および制御も可能である。
【0022】
発明のさらに別の実施の形態では、ねじボルトの端面に接触しかつチェンジオーバブシュの長手方向で軸方向に可動な測定ピンを、チェンジオーバブシュに固定されたセンサエレメントに隣接して配置することができる。前記測定ピンを、チェンジオーバブシュに沿って延びるチャネルに配置することができ、チェンジオーバブシュおよび測定ピンは互いに対して移動可能である。引張応力および/またはねじ係合部の範囲を測定ピンによって測定または制御することができる。
【0023】
発明のさらなる詳細および利点は、関連する図面の以下の説明から生じ、関連する図面には、発明による締付け装置の典型的な実施の形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ねじボルトと整列させられかつ突き当て部に対して当接した、ねじボルトを延伸させる締付け装置の単純化された断面図を示している。
図2図1と同じ据付け状況における、ねじボルトを延伸させる締付け装置の第2の実施の形態を示している。
図3】締付け装置がねじボルト上に完全に配置される直前の据付け状況における、図1または図2の実施の形態による同じ締付け装置を示している。
【0025】
本発明による締付け装置は、ねじ山結合部、特にねじボルト7がナット9を介して別の機械部分21に対して締め付けられているねじ山結合部を締め付ける、再締付けするまたはさらに緩めるために使用される。
【0026】
作動中、締付け装置は、ねじボルト7に予荷重力を加えることができる。これは、同義的に、ねじボルト7において引っ張るまたはねじボルト7を延伸させると言える。この予荷重の間、ねじボルト7に螺合させられたナット9を、必要であれば、締め付け、再締付けし、または緩めることができる。
【0027】
本発明による締付け装置は、図1および図2において2つの異なる実施の形態における据付け位置において示されている。2つの実施の形態は、それらの基本的な構成部材に関して同じである。
【0028】
締付け装置の中央の構成部材は、チェンジオーバブシュ6である。チェンジオーバブシュ6は、部分的に支持管2によって、部分的にシリンダ3によって包囲されている。一方の端部において、チェンジオーバブシュ6は、少なくとも部分的に開放するように、またはねじボルト7の方向で1つのタイプのスリーブとして、設計されている。チェンジオーバブシュ6のスリーブタイプセクション30は、内部に雌ねじ山31が設けられている。
【0029】
延伸または予荷重プロセスの開始の前、締付け装置は、ナット9を超えて延びるねじボルト7のねじ山付き端部1に配置される。締付け装置が完全に据え付けられる直前のこのような状況は、図3に示されている。この場合、チェンジオーバブシュ6がねじボルト7に配置されるのみならず、チェンジオーバブシュ6を包囲するシリンダハウジング22および支持管2もねじボルト7に配置される。
【0030】
シリンダハウジング22は、シリンダ内で軸方向に可動な1つまたは複数のピストン(図示せず)と共に、1つまたは複数のシリンダを包囲している。1つまたは複数のピストンは、チェンジオーバブシュ6が少なくとも1つのピストンによって軸方向に沿って移動されるように設計されている。
【0031】
シリンダハウジング22は、互いに鉛直方向で整列して配置された複数のシリンダセクションから成ることができる。シリンダハウジング22は、ナット9を包囲する支持管2でもってナット9の方向に連続している。支持管2は、シリンダハウジング22のワンピースの構成部材であるか、または公知の手段を用いてシリンダハウジング22に固定されている。支持管2は、支持管2を包囲するチェンジオーバブシュ6の場合もそうであるように、下側において開放している。
【0032】
図1および図2による据付け位置において、すなわち、ねじボルト7を締め付けるための作動位置において、支持管2は、ナット9の周辺の係合面に対して支持される。このような係合面は、例えば、機械部分21であることができる。係合面は、ねじボルト7の延伸の間、締付け装置のための突き当て部として使用される。締め付けられるナット9もまた、その下側32を介してこの係合面に対して当接する。
【0033】
ギヤボックス33を設けることもできる。ギヤボックス33は、支持管2における横開口を通じて作動し、ギヤボックス33によってナット9を回転、すなわち再締め付けすることができる。しかしながら、この回転は、ねじボルト7が緊張させられており、したがって、ナット9が緊張から解放されている状況においてのみ可能である。
【0034】
液圧機械4が、シリンダハウジング22の外側に配置されている。この液圧機械を介して、シリンダ3内の1つまたは複数の中空空間に、加圧された液圧流体が充填または供給される。シリンダ3は、少なくとも1つのピストンを軸方向に可動な形式で案内する。液圧機械4は、弁34を介して外部液圧供給システムに接続されている。
【0035】
締付け装置がねじボルト7上に配置されると、チェンジオーバブシュ6のスリーブタイプセクション30の雌ねじ山31は、ねじボルト7のねじ山付き端部1の雄ねじ山35に係合する。このために、チェンジオーバブシュ6の雌ねじ山31とねじボルト7の雄ねじ山35との間の所望のねじ山係合部長さGまたは最小限のねじ山係合部長さG1が達成されるまで、チェンジオーバブシュ6がねじボルト7に螺合させられる。
【0036】
ピストンは、液圧機械4を通じてシリンダ3の少なくとも1つの中空空間内に作動流体を供給することによって、持ち上げられる。このピストンは、この場合、軸方向に沿ってチェンジオーバブシュ6を引っ張る。ねじボルト7における引張力は、チェンジオーバブシュ6とねじ山付きボルト7との間のねじ山係合部Gによって伝達され、このねじボルト7は軸方向で予荷重を掛けられるまたは延伸させられる。次いで、ナット9をほぼ抵抗なしの形式で再締付けすることができる。
【0037】
図1による実施の形態において、締付け装置には、加えて、チェンジオーバブシュ6とねじボルト7のねじ山付き端部1との間のねじ係合部Gの長さを検出する装置が設けられている。この装置は、チェンジオーバブシュ6に固定されたセンサエレメント11を有する。センサエレメント11は、ねじボルト7の端面12と接触しておらず、したがって、全ての作動状況において、このねじボルト7から間隔を置いて、このねじボルト7と無接触で向かい合って位置決めされている。
【0038】
センサエレメント11は、底部に向かって開放したチェンジオーバブシュ6内に、すなわちチェンジオーバブシュ6のスリーブタイプセクション30内に配置されている。センサエレメント11がねじボルト7の端面12と整列した配列は好ましい。この場合、センサエレメント11およびねじボルト7の端面は、互いにすぐ向かい合って配置されている。
【0039】
1つの好適な実施の形態では、センサエレメント11は、チェンジオーバブシュ6において延びる長手方向チャネル14に配置されている。この長手方向チャネルは、この場合、チェンジオーバブシュの中心軸線上に正確に配置されているが、チェンジオーバブシュの中心軸線からずれていることもできる。
【0040】
センサエレメント11は、ねじボルト7の方向で、底部に向かって長手方向チャネル14を閉鎖している。この場合、センサエレメント11の下側41は、ねじボルト7の端面12と向かい合って配置されたチェンジオーバブシュ6の端面42と同一平面を成している。
【0041】
センサエレメント11は、ねじボルト7の端面12からのセンサエレメント11の距離Aを検出または測定するように設計されている。このために、センサエレメント11は、光学、音響、磁気、電気、電磁気、光電気、誘導、低周波または高周波センサであることができる。無接触距離測定に適したその他のセンサをセンサエレメント11として利用することもできる。複数のセンサを組み合わせることも可能である。例えば、1つのセンサタイプの複数のセンサエレメント11を並列に配置することができる。例えば、これは、測定の誤差を減じることができる。
【0042】
少なくとも1つのセンサエレメント11によって記録された距離Aは、信号の形式で液圧機械4の液圧制御ユニット8へ送られる。このために、センサエレメント11をケーブルに接続することができる。ケーブルは、締付け装置の上側部分まで長手方向チャネル14において延びており、締付け装置の外側において、さらに液圧制御ユニット8または液圧機械まで案内されている。測定された距離Aは、信号の形式でケーブルを介して液圧制御ユニット8へ送られる。
【0043】
信号、特にセンサエレメント11を制御するための命令の形式の情報は、無線伝送を介して液圧制御ユニット8からセンサエレメント11へ送られ、センサエレメント11によって受け取られる。センサエレメント11および液圧制御ユニット8は、信号に関して受信モードおよび送信モードの両方で機能する。
【0044】
センサエレメント11と液圧制御ユニット8との間の信号の送信および受信または信号ベースの通信は、従来技術から公知の無線送信路を介して無線で行うこともできる。例えば、信号ベースの通信は、無線、WLAN、Bluetoothを介して、またはトランスポンダなどの電磁システムを介して行うことができる。
【0045】
チェンジオーバブシュ6とねじボルト7との間のねじ山係合部Gは、センサエレメント11とねじボルト7の端面12との間の測定された距離Aから計算することができる。
【0046】
このために、センサエレメント11の下側41とチェンジオーバブシュ6の下端部44との間の距離F1が分かっていなければならない。これは、センサエレメント11の位置的に固定された配置と、締付け装置とチェンジオーバブシュ6とのサイズ比とから生じる。したがって、距離F1の値は、センサエレメント11の据付け後の装置固有の値として、液圧制御ユニット8の信号ベース評価ユニットまたはデータ処理ユニットに、固定の変数F1として入力することができる。もちろん、センサエレメント11が交換される場合には変数F1を変更することができる。
【0047】
チェンジオーバブシュ6とねじボルト7とのねじ山係合部長さGは、センサエレメント11とチェンジオーバブシュ6の下端部44との間の距離F1から、センサエレメント11とねじボルト7の端面12との間の測定値Aを引くことによって得られる。したがって、ねじ山係合部長さGは、G=F1-Aから得られる。
【0048】
締付け装置は、液圧機械4が、まずユーザまたは製造者によって予め設定された最小ねじ山係合部長さG1において作動されるように、設計されている。この最小ねじ山係合部長さが存在しない場合には、液圧制御ユニットは起動をブロックする。したがって、液圧制御ユニット8は、ねじ山係合部長さGの値がG>G1である場合にのみ液圧機械4を作動する。
【0049】
したがって、ねじ山係合部長さGが十分に大きい場合にのみ少なくとも1つのシリンダ3における少なくとも1つの中空空間内へ作動流体をポンプで送り込むことができる。加えて、ねじボルト7は、最小ねじ山係合部長さG1が達せられたときにのみ延伸させられる。
【0050】
図2の実施の形態では、センサエレメント11は、チェンジオーバブシュ6の端面42、またはチェンジオーバブシュ6を通って延びるチャネル14に対して、ねじボルト7の方向に突出している。これは、第1の実施の形態のセンサエレメント11とチェンジオーバブシュ6の下端部44との間の距離F1とは異なる距離F2を生じさせる。その理由は、センサエレメント11がねじボルト7から間隔を置いているが、第1の実施の形態におけるよりもねじボルト7に空間的により近いということである。ねじ山係合部長さGは、G=F2-Aに従って距離F2および測定距離Aから計算される。
【0051】
さらに、液圧制御ユニット8には、データ表示およびデータ入力のための視覚的手段が設けられている。これらは、締付け装置の電子機器に接続されている。これは、締付け装置のユーザが、データ入力を介して、ねじ山係合部長さGまたは予荷重の計算のために要求される幾つかの値を予め設定することを可能にする。このような値は、距離F1,F2、設定予荷重、またはあらゆるその他のパラメータであることができる。これらの値は、データ表示またはデータ入力のための視覚的手段またはその他の手段を介して、液圧制御ユニット8へ送ることができる。このために、タッチスクリーンまたはデータディスプレイの形式の視覚的手段に別個のキー入力を提供することができる。
【0052】
加えて、視覚的手段は、締付け装置の確実な作動にとって重要な全ての関連するパラメータまたは測定値を表示する。例えば、視覚的手段は、現在のねじ山係合部長さGおよび最小ねじ山係合部長さG1を表示する。または、達成されたねじ山係合部が十分であるかどうかを示す視覚的表示が存在する。しかしながら、ディスプレイは、このようなパラメータに限定される必要はない。
【0053】
締付け装置が、延伸されるねじボルト7に配置された後(図3)、支持管2は、突き当て部としての機械部分21(図1図2)に当接する。チェンジオーバブシュ6は、その雌ねじ山31を介して、締め付けられるねじボルト7の雄ねじ山35に螺合させられる。螺合は、手動でまたは機械的に行うことができる。センサエレメント11は、距離F1,F2を継続的に測定し、これを液圧制御ユニット8へ送る。装置の内部で予め規定されかつ確実な取扱いのための安全要求に対応する最小ねじ係合部長さG1に達するとすぐに、液圧制御ユニット8はこれを視覚的または音響的手段を介してユーザに通信する。これは、例えば、音響信号によってまたは視覚的手段の点滅を介して行うことができる。その後はじめて、液圧供給が液圧制御ユニットを介して可能とされ、その後はじめて、オペレータは作動ボタンを介して液圧供給を開始することができる。択一的に、液圧制御ユニット8は、自動的に、すなわちユーザによる手動による作動なしに、液圧機械4を介して液圧供給を開始することができる。
【0054】
作動後、作動流体は、ピストン-シリンダユニットにおける中空空間内へ搬送され、ピストンは鉛直方向に移動させられる。これらのピストンは、チェンジオーバブシュ6を引っ張り、これにより、ねじボルト7は鉛直方向に引っ張られるまたは延伸させられる。それに続き、ナット9を、例えばギヤボックス33を介してまたは手動で再び締め付けることができる。
【0055】
さらに、締付け装置を測定ピンに接続することができる。測定ピンは、ねじボルト7の端面12と接触しており、従来技術より公知である。この測定ピンは、センサエレメント11も配置されている同じチャネル14を通って案内することができる。測定ピンを案内するために第1のチャネル14に対して平行に延びる第2のチャネルを有する配列も可能である。測定ピンは、チェンジオーバブシュ6に対して軸方向に可動である。測定ピンは、予荷重を測定するために、またはねじ山係合部長さGを決定するための参照方法として、使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ねじ山付き端部
2 支持管
3 シリンダ
4 液圧機械
6 チェンジオーバブシュ
7 ねじボルト
8 液圧制御ユニット
9 ナット
11 センサエレメント
12 端面
13 内側
14 長手方向チャネル
16 センサハウジング
21 機械部分
22 シリンダハウジング
30 スリーブタイプセクション
31 雌ねじ山
32 下側
33 ギヤボックス
34 弁
35 雄ねじ山
41 下側
42 端面
44 下端部
A 測定された距離
G ねじ山係合部長さ
G1 最小ねじ山係合部長さ
F1 距離値
F2 距離値
図1
図2
図3