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特許6996894スナップイン・ブッシュ及び高圧及び/又は高温マジックアングルスピニング核磁気共鳴分光法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】スナップイン・ブッシュ及び高圧及び/又は高温マジックアングルスピニング核磁気共鳴分光法
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G01N24/00 510E
G01N24/00 510B
G01N24/00 510Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017144364
(22)【出願日】2017-07-26
(65)【公開番号】P2018021910
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】15/225,688
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512159487
【氏名又は名称】バテル・メモリアル・インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォールター, エリック ディ.
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ, ジェシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】メータ, ハーディープ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ホイット, デイヴィッド ダブリュ.
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0044598(US,A1)
【文献】特表2007-505291(JP,A)
【文献】実開昭60-071730(JP,U)
【文献】国際公開第2009/054122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00-G01N 24/14
G01N 22/00-G01N 22/04
G01R 33/00-G01R 33/64
G01N 21/00-G01N 21/61
G01N 1/00-G01N 1/44
A61B 5/055
F16C 35/00-F16C 43/08
F16C 33/72-F16C 33/82
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マジックアングルスピニング核磁気共鳴分光装置のためのサンプル容器の組立体であって、
前記マジックアングルスピニング核磁気共鳴分光装置内に受容されるように構成され、内壁および床を画定する、ロータスリーブと、
前記ロータスリーブの前記内壁内に受容され、前記ロータスリーブ内のサンプルチャンバの天井を画定するように構成された部材と、
前記ロータスリーブ内の前記部材のスナップフィットを提供するように構成された、前記部材およびロータスリーブの間の、少なくとも1つのリッジおよび挿入溝の組み合わせであって、前記内壁が前記挿入溝を有し、かつ、前記部材が、前記挿入溝と係合してスナップフィットを提供するように構成された前記リッジを含む、少なくとも1つのリッジおよび挿入溝の組み合わせと、
を備える、組立体。
【請求項2】
前記リッジおよび挿入溝の組み合わせは、所定の長さの相補的な不連続部分を有する、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記部材は、2つの端部の間で延在し、一方の端部は、密封プラグを受けるように構成された穴を画定する、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記リッジおよび挿入溝の組み合わせは、前記部材の一方の端部の周囲に延在する1つの前記リッジ、および、前記ロータスリーブの内壁内に画定された前記挿入溝を備える、請求項3に記載の組立体。
【請求項5】
前記部材の一方の端部の反対側のもう一方の端部は、前記部材の他の端部の周囲に延在する溝をさらに備え、前記溝は、ガスケットの少なくとも一部をその中に固定するように構成されている、請求項3に記載の組立体。
【請求項6】
前記部材の一方の端部の反対側のもう一方の端部は、所定の材料がその内部を通過可能となるように構成される内部導管を画定する、請求項3に記載の組立体。
【請求項7】
前記導管を介して前記サンプルチャンバ内に入る材料の移動を調整するために前記導管に動作可能に接続される逆止弁をさらに備える、請求項6に記載の組立体。
【請求項8】
前記部材の一方の端部は、前記部材の長さに沿って前記一方の端部から垂直に延びるとともに、円筒部材の一方の端部の一部の撓みを提供する、少なくとも1つのスリットを画定する、請求項3に記載の組立体。
【請求項9】
前記サンプルチャンバの減圧を可能にするための圧力解放ポートをさらに備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
マジックアングルスピニング核磁気共鳴分光装置を使用するための方法であって、
前記マジックアングルスピニング核磁気共鳴分光装置内に受容されるように構成され、内壁および床を画定する、ロータスリーブを提供する過程と、
前記ロータスリーブ内のサンプルチャンバの天井を画定するように、前記ロータスリーブの前記内壁内に、部材を係合させる過程であって、前記係合させる過程は、前記ロータスリーブ内の前記部材のスナップフィットである、過程と、
前記ロータスリーブ内に前記サンプルチャンバを密封するとともに400Barの圧力限界値を提供するように、前記部材に密封プラグをねじ込む過程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記部材を係合させる過程は、前記ロータスリーブ内の挿入溝に、前記部材の周囲のリッジを係合させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記部材を係合させる過程は、前記リッジ近くの前記部材の少なくとも一部を撓ませて前記挿入溝に結合することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記部材を係合させる過程は、ガスケットを介して前記ロータスリーブに前記部材の一部を密封することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルチャンバに前記部材を通して所定の材料を移動させる過程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
逆止弁で前記材料の移動を調整する過程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記部材を係合させる過程は、前記サンプルチャンバに対して所定の位置に前記部材を保持するように、前記ロータスリーブの前記内壁と係合することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記部材内の圧力解放ポートを介して前記サンプルチャンバを減圧する過程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
サンプルの分析前に前記部材内の一方向フローバルブを介して、サンプルまたはカバーガスを前記サンプルチャンバ内に導入する過程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
所定の圧力および温度で、前記部材を介して前記サンプルチャンバ内にガスを導入する過程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記部材を係合させる過程は、前記リッジ近くの前記部材の少なくとも一部を撓ませて前記挿入溝に係合させること、および、ガスケットを介して前記ロータスリーブに前記部材の一部を密封することを含み、
方法は、逆止弁で移動の調整をしながら、前記サンプルチャンバに前記部材を通して所定の材料を移動させる過程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府支援研究開発により行われた発明に関する権利の声明)
本発明は、米国エネルギ省により授与された契約第DE-AC05-76RL01830号に基づく政府支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は概してマジックアングルスピニング(MAS)核磁気共鳴(NMR)装置に関する。詳細には、本発明はMAS-NMR分光分析を高圧・高温複合条件において可能にするブッシュに関する。
【背景技術】
【0003】
MAS-NMRは混合相サンプルにおける化学種別分析を行うための強力なツールである。高圧・高温複合条件におけるMAS-NMRの実施は種々の理由からまだ実現されておらず、化学反応及び変化そのものの測定は殆ど未開発の分野となっている。MAS-NMRの設計に変更を加えてこれら制限に対処するために、これまで様々な試みが行われてきた。
【0004】
以前のロータ設計には、エポキシ接着剤を使用して、ロータシリンダの内壁に沿って配置された細いねじ山に固定されたTORLON(登録商標)製のポリマブッシュと共に構成されたセラミックジルコニアロータが含まれていた。二酸化炭素中にメタンを含むような比較的低温且つ低圧及び穏やかな反応条件において検査されたサンプルについては、この設計はうまく機能していた。しかしながら、過酷なサンプル条件において、エポキシ接着剤はロータ内で化学変化を起こす。これらのロータ内で使用される密封装置も故障することもある。また、以前の設計では、高圧条件においてガスをロータ内に充填するために専用の圧力充填装置を必要とすることが多かった。したがって、これら先行技術によるロータシリンダの設計は、一般的には、圧力200Bar超且つ温度80℃超が組み合わさった状態で反応するサンプルの実動作下での測定には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のロータ設計には様々な制限があるため、多くの化学系については、MAS-NMRによる検査及び特性評価はまだ行われていない。その結果として、接着剤を使用せずにロータ内にサンプルチャンバを密封するために、高温且つ高圧が組み合わさった条件における操作を可能にする新しいブッシュ設計及び方法が必要となる。本発明はこれらのニーズに対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、新規なスナップイン・ブッシュ、及び、チャンバの内壁に対してブッシュの壁を押し付け、圧縮密封配置を形成することでサンプルチャンバを形成するために、スナップイン・ブッシュを使用してサンプルチャンバを密封することを含む、MAS-NMRロータスリーブを使用する方法である。これにより、ロータスリーブ内にサンプルチャンバが密封され、接着剤を必要とせずに400Barという高い圧力において動作可能なサンプルチャンバが提供される。1つの実施形態において、スナップイン・ブッシュは、周壁により接続された2つの端部を有するシリンダを含む。端部の一方は、MAS-NMRロータスリーブ内に嵌合されてサンプルチャンバの一部(通常は天井又は床)を画定するように構成されている。周壁は、典型的には、所定の高さでシリンダの周囲に延在していると共に、ロータスリーブの内壁の内側に画定された挿入溝内にスナップフィットされるように構成されているリッジを有する。好ましくは、このブッシュはロータ内径の全長に留まる。いくつかの実施形態においては、リッジ及び挿入溝は所定の長さの相補的な不連続部分を有する。いくつかの実施形態において、ブッシュは、内部にプラグを受けるように構成された内部穴を画定する。このプラグはブッシュに対してさらなる外力を加え、ブッシュの壁をロータスリーブの内壁に対して押し付ける。いくつかの別の適用例においては、ねじ山付きプラグ又はその中の他装置との接続を可能にするために、内部穴にはねじ山が形成されている。
【0007】
いくつかの適用例において、ブッシュは、ブッシュに周設され、Oリングの一部をその内部に固定するOリング溝の内部に配置される封止用Oリングも含む。他の適用例において、ブッシュは、所定の材料がその内部を通過できるように構成された内部導管と、導管を介してサンプルチャンバ内に入る材料の移動を調整するために導管に動作可能に連結された逆止弁とを画定する。このような構成により、圧力充填装置の使用を必要とせず、サンプルチャンバを直接的に加圧することが可能となる。いくつかの適用例においては、ブッシュの壁は、MAS-NMRチャンバ内部での強制圧縮係合を補助するようにブッシュが撓むことを可能にするスリットを画定する。スナップイン・ブッシュは、サンプルチャンバの近傍でブッシュに接続されるフランジを含んでいても良く、チャンバの内壁と係合するように構成され、ブッシュをサンプルチャンバの所定の位置に保持するように構成される。いくつかの例において、スナップイン・ブッシュは、サンプルチャンバの減圧を可能にするための圧力解放ポートも含む。
【0008】
使用時において、ブッシュは、ロータスリーブ内に挿入されてサンプルチャンバを形成し、サンプル又はカバーガスがサンプルチャンバ内に導入される。これは、動作前にはスナップイン・ブッシュ内の一方向フローバルブを介して、又は所定圧力及び温度での動作中にはスナップイン・ブッシュ内への導入により行うことができる。1つの実施形態において、スナップイン・ブッシュは、周壁により接続された2つの端部を有する半可撓性シリンダである。これら端部の一方は、MAS-NMRロータスリーブの内部に挿入された場合、サンプルチャンバの一部を画定するように構成されている。周壁は、所定の高さでシリンダの周囲に延在していると共に、ロータスリーブの内壁の内側に画定された挿入溝内にスナップフィットされ、接着剤無しで圧縮によりブッシュをロータスリーブ内に固定すると共に、サンプルチャンバ内の圧力を最大約400Barまでの圧力に保持するように構成されたリッジを有する。ブッシュは、所定の材料がその内部を通過するように構成された内部導管と、導管を介してサンプルチャンバ内に入る材料の移動を調整するために導管に操作可能に接続されたバルブも画定する。内部導管にはねじ山を設け、同様にねじ山を設けたプラグへ接続するために適合させても良い。
【0009】
このブッシュは先行技術を超える多種多様な効果をもたらす。接着剤の使用を必要としないことから、動作温度範囲が先行技術実施形態よりも大幅に高くなる。さらに、より高圧において良く機能するので、分析可能な材料のタイプが増え、先行技術に比べて他の効果をもたらす。
【0010】
前述した概要の目的は、米国特許商標局及び一般人が、特に、特許又は法律用語又は文体に精通していない科学者、技術者及び当業者が、本出願の技術開示内容の性質及び本質を簡単な検証により敏速に判断できることにある。要約は、クレームにより計られる本出願の発明を定義することを意図したものでもないし、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A-1G】図1A-1Gは、スナップイン・ブッシュの1つの実施形態の種々の図である。
【0012】
図2A-2B】図2A-2Bは、スナップイン・ブッシュの例を含むロータの組立体を示す図である。
【0013】
図3A-3B】図3A-3Bは、スナップイン・ブッシュを組み入れた組立体ロータの異なる図である。
【0014】
図4図4は、2つのスナップイン・ブッシュを利用してサンプルチャンバを形成する組立体ロータを示す図である。
【0015】
図5図5は、スナップイン・ブッシュの他の実施形態を示す図である。
【0016】
図6図6は、スナップイン・ブッシュの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、新規なスナップイン・ブッシュと、サンプルチャンバを形成及び密封するためにこのようなブッシュを使用することを含むMAS-NMRロータを使用する方法を説明する。このサンプルチャンバは、MAS-NMR装置が400Barという高い圧力で動作することを可能にする。図1-6は、本発明の様々な実施形態を示したものである。まず図1A-1Gを参照すると、1つのスナップイン・ブッシュの様々な図が示されている。この実施形態において、スナップイン・ブッシュには、周壁13により接続された2つの端部(9、11)を有するシリンダ10が含まれる。端部の一方(9)は、サンプルチャンバ8の一部(通常は天井4又は床6)を画定するように、MAS-NMRロータスリーブ内で装置に嵌合するように構成されている。周壁13は、典型的には、所定の高さでシリンダの周囲に延在すると共に、ロータスリーブの内壁5の内側に画定された挿入溝14内にスナップフィットされるように構成されているリッジ12を有する。所定の位置にあるとき、ブッシュ10は、接着剤無しで圧縮によりロータスリーブに固定され、サンプルチャンバの内部の圧力を最大約400Barまでの圧力に保つことが可能である。いくつかの実施形態においては、リッジ12及び挿入溝14は、所定の長さの相補的な不連続部分を有する。
【0018】
1つの実施形態において、固定リッジ12は、ブッシュのシリンダ壁に沿って所望の高さに配置されたポリマ材料の細い細片であり、少なくともその一部に周設される。固定リッジは連続でも不連続でも良く、シリンダに沿って殆どすべての位置に配置されても良い。好ましくは、固定リッジ12は、内壁5の一部(図示せず)の内部に配置された挿入溝14と結合するように構成されている。挿入溝14は、ロータスリーブ4の内壁の内側に機械加工された細い切り込みであり、スナップイン・ブッシュの外表面上に配置された固定リッジと結合するように構成されているか、又は逆に、高温及び/又は高圧動作のためにロータスリーブ内に接着剤無しでスナップイン・ブッシュを固定するスナップフィット結合部を形成する。この配置が記載されているが、本発明はこの特定の配置に限定されるものではないと理解すべきである。特に、配置は逆に変更することも可能であり、即ち、サンプルチャンバの内壁に、対として接続すべきブッシュ上の相補的な寸法の溝と係合するリッジ、フランジ又はその他の突起を含むように構成することもできる。
【0019】
いくつかの適用例において、シリンダ10は封止用Oリング26も含み、封止用Oリング26は、シリンダに周設されOリングの一部をその内部に固定するOリング溝28の内部に配置される。シリンダ内部に画定された内部導管、即ち、穴18は、シリンダの壁を支持し、シリンダの壁のロータスリーブの内壁との圧縮係合を増強するために配置することができるプラグ又は他装置とのねじ山相互連結を可能にするように構成されても良い。いくつかの実施形態において、この内部導管18は、所定の材料がシリンダ10を通過可能にする構成としても良い。逆止弁24をシリンダ10に沿って配置し、サンプルチャンバ内への材料の移動を調整する機能を果たしても良い。いくつかの適用例において、シリンダの壁13は、挿入を可能にし、MAS-NMRチャンバ内部での強制圧縮係合を補助するようにシリンダが撓むことを可能にするスリット16を画定する。いくつかの例において、スナップイン・ブッシュ10は、チャンバ8の内壁5と係合すると共に、Oリング無しの密封装置を提供するように構成されるシリンダに接続された一体封止部102(本実施形態ではフランジ)を含む。いくつかの例において、スナップイン・ブッシュは、さらに、サンプルチャンバの減圧を可能にする圧力解放ポート34を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、スナップイン・ブッシュ10は、ブッシュ10の外周に離間配置されると共に、ブッシュがロータスリーブ内に導入された場合は外壁の撓みを可能にする2つ以上のスリット16を含む。ロータスリーブ内に固定された場合は、ブッシュの壁は固定リッジ12と挿入溝14との間のスナップフィット結合部に対して外圧を加える。スナップイン・ブッシュ10は、ロータスリーブ内に導入された場合に、サンプルチャンバ8を密封する密封プラグ22をねじ込むためにその全長に沿って配置されたねじ山20を有する、ブッシュの中心に配置される選択された深さの内部穴18を含む。いくつかの実施形態において、内部穴18は、密封プラグの先端を収容するために、穴の底の先端点に収束している。密封プラグは、内部穴の適切な位置にねじ込まれると、ロータスリーブ内のスナップイン・ブッシュ10の壁を強固に支持及び補強する固定リッジ12と挿入溝14との間のスナップフィット結合部に対して外圧を加える。いくつかの実施形態において、フロー逆止弁24は、例えば、サンプルチャンバの直上又は直下のブッシュの基部に配置された一方向バルブと、ブッシュ10を介してサンプルチャンバ5内へのガス流入を可能にする流路である。
【0021】
1つの実施形態において、Oリング溝28は、ブッシュの中心の穴の外径に適合した深さで表面から内向きにブッシュ内に機械加工されている。この例では、Oリング溝の上縁は、Oリングが圧力下にある場合は気密性封止部を提供するために、平滑且つ無穴材である。使用時には、動作中のサンプルチャンバ内のガス圧の上昇が、Oリング26に対して加えられる背圧を上昇させ、Oリング溝28の上縁に対する封止部上の力を増大させ、動作中に密封サンプルチャンバからのガスの放出を防止し、サンプルチャンバ内の密封性を高める。ガスは、Oリングの引張ではなく、圧縮によりサンプルチャンバ内に保持される。この配置が、高圧、高温、遠心力を含む動作条件;回転速度、磁界、重力を含む動作条件;及びこれら各種運転条件の組み合わせにおける封止用Oリングの効率を高める。1つの実施形態において、Oリングは1mmの横断面と内部穴18の直径に適合する外径とを有する。封止用Oリング26は、例えば、フルオロエラストマー(例えば、VITON(登録商標)、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン パフォーマンス エラストマーズ, エルエルシー)、ニトリル含有エラストマー(例えば、BUNA 90(登録商標)、米国カリフォルニア州オレンジのワルコ ビルトライト)、EPDM、シリコーン、FKM、FFKM、Kalrez、又は、適当な化学的適合性又は温度定格を有する他の適合性材料が含まれる高性能ポリマ材料から製造することができるが、それらには限定されない。
【0022】
1つの実施形態において、逆止弁24は、サンプルチャンバにサンプル又はカバーガスが充填される場合、ロータスリーブ内側に位置するように、ブッシュ10内部に配置される。他の実施形態において、逆止弁24は、ロータスリーブの外側に配置しても良い。いくつかの実施形態において、ブッシュ10は、ここでさらに詳述するように、密封プラグ22がロータスリーブから除去された場合は、サンプルチャンバ内でのサンプルの分析に続いてサンプルチャンバからサンプルガスを放出する、即ち、ベントするサンプルガスの解放ポート(減圧ベント)34も含む。
【0023】
実施形態のいくつかにおいて、スナップイン・ブッシュ10は、例えば、ポリエーテル・エーテル・ケトンポリマ(例えば、PEEK(登録商標)、米国ペンシルベニア州ウェストコンショホッケンのビクトレックス ユーエスエー,インク.)、ポリイミドポリマ(例えば、VESPEL(登録商標)、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン);ポリアミド-イミドポリマ(例えば、TORLON(登録商標)、米国ジョージア州アルファレッタのソルベイ アドバンスド ポリマーズ,エルエルシー.);KEL-F(登録商標)、米国内の販売会社);ポリベンゾイミダゾール熱可塑性ポリマ(例えば、CELAZOLE(登録商標)、米国内の販売会社);他の高性能ポリマ;及びこれら各種ポリマの組み合わせが含まれる高性能ポリマ材料により製造されるが、それらには限定されない。このような高性能ポリマ(VESPEL(登録商標)は例示)は、温度定格300℃において少なくとも最大約8.62E+04kPa(12,500psi)までの高い引張強度をブッシュに提供する。
【0024】
逆止弁24は、組立体ロータを分解せずにサンプルチャンバ内にサンプルガス又はカバーガスを導入するために、サンプルチャンバに隣接した1つ以上のガス注入口32を含んでいる。代表的な実施形態において、逆止弁24は、ブッシュ10の反対側に、スクエア溝28の底縁内に形成された2つの円形切口30を含む。図2A-2Bに示されるように、ガス注入口32は、Oリング溝28の下面内に形成されると共に、外圧が周囲の内圧を超えた場合は、組立体ロータ内のサンプルチャンバに単一流動方向でガスが流入することを可能にする様々な形状の短い切り込み30を含む。ガス注入口は、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形及び異形を含む形状であっても良い。図5に示されるような矩形の切り込み30は、2つのOリングを考慮してちょうど良い狭さの寸法にしてあり、それにより、逆止弁の性能を維持しつつ密封性が高められる。溝28の上縁及び下縁に対する切り込み30の位置が、逆止弁を介してサンプルチャンバ内に入るガスの流動方向を決定する。
【0025】
図3A-3B及び図4に示されるように、スナップイン・ブッシュ及びロータスリーブの様々な実施形態が示されている。組立体ロータとスナップイン・ブッシュが組み合わされて使用された場合は、ここでさらに詳述するように、高温及び/又は高圧を含む動作中にサンプルチャンバ内を広範な温度及び圧力条件に維持することが可能となる。多数の固定リッジ、挿入溝及びスナップフィット結合部を示した代表的な例は限定を意図したものではない。例えば、いくつかの実施形態において、スナップイン・ブッシュは、動作中における圧力又はサンプルの損失を伴わずに、さらに高温及び/又はさらに高圧において、サンプルチャンバ内にサンプルを維持する2つ以上の固定リッジ及び2つ以上の挿入溝を含む。本発明のスナップイン・ブッシュは、様々な効果を提供する。スナップフィット結合部を有するスナップイン・ブッシュは、動作中にサンプルチャンバ内においてサンプルを分析するために、これまでには達成されなかった高圧及び高温の上限を提供する。スナップフィット結合部は、サンプルチャンバを密封する封止用Oリングの位置から遠位のロータスリーブの端でロータスリーブ内にブッシュを固定し、動作中のロータ内の最高応力点も、確実に最低温度となるようにする(通常は周囲温度で導入される空気含有ガスの流入に起因する)。これは、高圧及び/又は高温動作中におけるサンプルチャンバ内へのサンプル封じ込めを維持するのに役立つ。さらに、高温動作中にサンプルチャンバ内の高温ガスにより加熱されるサンプルは、ロータスリーブの中心に位置しており、これにより、動作条件において密封性が維持される。ここに記載した本発明の実施形態は、その素材であるポリマ材料の温度限界までの温度においてロータを密封する。
【0026】
本発明のスナップイン・ブッシュは、動作中のサンプルチャンバ内において、以前のブッシュ設計(2900psi/200Barが限界)に比べて少なくとも最高約6000psi(413.69Bar)以上までという優れた圧力限界を提供する。スナップフィット結合部は、引張ではなく、圧縮によりブッシュをロータスリーブ内に固定し、それにより、ここで詳述したような高圧及び/又は高温条件におけるロータ内での密封能力を高める。これらの優れた圧力及び温度限界を有する本発明のスナップイン・ブッシュは、使用するロータを小型化(例えば、6mm、5mm、4mm又はそれ以下に)することを可能にし、それにより、より高い周波数磁場及びより高いスピン速度の使用を可能とする。より高い磁場及びスピン速度は、スペクトル分解能を向上させる。
【0027】
スナップイン・ブッシュはロータスリーブへの着脱が容易であり、それにより、以前の設計に比べてサンプルチャンバ内へのサンプルの導入及びロータの洗浄が容易となる。Oリング逆止弁を備えたスナップイン・ブッシュは、機械的フィードスルーを備えた以前の設計において使用される外部装荷菅を必要とせずに、組立体ロータ内におけるサンプルチャンバの加圧を増強する。ここに記載したブッシュは、専用スリーブと共に利用することも、市販の標準スリーブと共に利用することもできる。逆止弁は、さらに、高温及び高圧条件におけるサンプルチャンバの封止部の強度を高める。本発明のスナップイン・ブッシュは耐薬品性を有しており、したがって、過酷な化学的環境に対する耐性を有する。さらに、スナップイン・ブッシュは、これまで過酷な化学的環境の影響を受けやすかった封止用接着剤が必要無くなる。したがって、サンプルの取り扱いが改良され、本発明のスナップイン・ブッシュに対応するために、市販のロータスリーブを簡単に変更することができる。
【0028】
表1は本発明のスナップイン・ブッシュを使用して行われた様々な実験の圧力及び温度条件の一覧である。
【0029】
【表1】
【0030】
1.硝酸鉛基準により測定したサンプルの温度、VTガスの温度はそれよりも5℃-15℃高かった
2.ガンマ・バレロラクトン
3.MOF-有機金属フレームワーク
4.テトラヒドロフラン
5.超臨界CO
【0031】
本発明の数多くの実施形態を示し、記載してきたが、そのより幅広い解釈において発明から逸脱することなく、多くの変更及び修正を加えられることは、当業者にとっては明白であろう。したがって、添付クレームは、本発明の範囲に含まれるようなすべての変更及び修正を対象とすることを意図している。
図1A-1C】
図1D-1G】
図2A-2B】
図3A-3B】
図4
図5
図6