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特許6996925杭頭解析システム、杭頭解析方法、及び杭頭解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】杭頭解析システム、杭頭解析方法、及び杭頭解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 11/06 20060101AFI20220107BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01C11/06
G01C15/00 104Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017190104
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019066242
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大西 康司
(72)【発明者】
【氏名】高梨 将輝
(72)【発明者】
【氏名】秋山 秀吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清泰
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020910(JP,A)
【文献】特開2016-180681(JP,A)
【文献】特開2017-096688(JP,A)
【文献】特開2010-261298(JP,A)
【文献】特開2014-153336(JP,A)
【文献】特開平01-219215(JP,A)
【文献】特開昭63-210614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0307366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設された杭の杭頭を解析する杭頭解析システムであって、
移動体に設けられたカメラにより撮影された、前記杭を含む対象地の画像を複数取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得した複数の画像から前記対象地の三次元モデルを生成する三次元モデル生成部と、
前記三次元モデル生成部により生成された前記三次元モデルから前記杭頭を検出する杭頭検出部と、
前記杭頭検出部により検出された杭頭と、予め取得した設計情報に基づく杭頭との整合を判別する整合判別部と、
を備える杭頭解析システム。
【請求項2】
前記杭頭検出部は前記杭頭の杭芯を検出し、
前記整合判別部は、前記杭芯と前記設計情報に基づく杭埋設点との整合を判別する請求項1記載の杭頭解析システム。
【請求項3】
前記杭頭検出部は前記杭頭の地表から杭の頂面までの高さである杭頭高さを検出し、
前記整合判別部は、前記杭頭高さと前記設計情報に基づく杭頭高さとの整合を判別する請求項1又は2記載の杭頭解析システム。
【請求項4】
前記杭頭検出部は前記杭頭の傾きを検出し、
前記整合判別部は、前記杭頭の傾きと前記設計情報に基づく前記杭頭の傾きとの整合を判別する請求項1から3のいずれか一項に記載の杭頭解析システム。
【請求項5】
さらに、前記三次元モデル生成部により生成された三次元モデル上に、前記整合判別部により判別された杭頭の整合に関する情報を表示させる表示部を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の杭頭解析システム。
【請求項6】
前記杭頭には、色が付されており、
前記杭頭検出部は前記三次元モデルから杭頭を検出するための要素として、前記色を含める請求項1から5のいずれか一項に記載の杭頭解析システム
【請求項7】
コンピュータが、打設された杭の杭頭を解析する杭頭解析方法であって、
移動体に設けられたカメラにより撮影された、前記杭を含む対象地の画像を複数取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程にて取得した複数の画像から前記対象地の三次元モデルを生成する三次元モデル生成工程と、
前記三次元モデル生成工程にて生成された前記三次元モデルから前記杭頭を検出する杭頭検出工程と、
前記杭頭検出工程にて検出された杭頭と、予め取得した設計情報との整合を判別する整合判別工程と、
を備える杭頭解析方法。
【請求項8】
打設された杭の杭頭を解析する杭頭解析プログラムであって、
移動体に設けられたカメラにより撮影された、前記杭を含む対象地の画像を複数取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程にて取得した複数の画像から前記対象地の三次元モデルを生成する三次元モデル生成工程と、
前記三次元モデル生成工程にて生成された前記三次元モデルから前記杭頭を検出する杭
頭検出工程と、
前記杭頭検出工程にて検出された杭頭と、予め取得した設計情報との整合を判別する整合判別工程と、
をコンピュータに実行させるための杭頭解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎として打設される杭の杭頭の解析を行う杭頭解析システム、杭頭解析方法、及び杭頭解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事において、構造物の基礎となる杭を設計図面どおりに打設することは、建物の基礎作りに影響するため重要である。そのため、杭打設後に杭芯位置や杭頭の高さ等が設計図面に従って正確に建て込みされているかどうかを確認する必要がある。
【0003】
そこで従来は、打設後の杭頭の位置をGPSやトータルステーション(TS)等を用いて計測を行い、CADデータ等の設計図面と照合して杭芯のずれを測定することで、杭芯が設計値の許容範囲内(施工誤差以内)であるか否かを判定していた。
【0004】
例えば、自動追尾式のTSを設置して、作業者がターゲットを杭頭等の計測したい地点に持っていき、計測指示を出すことで、当該地点における座標を計測可能な技術がある(特許文献1参照)。
【0005】
また、近年は工事現場の点群モデルを取得して、杭頭部の点群とそれに対応する杭モデルとを合わせることで杭芯の座標を取得する技術も開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-325884号公報
【文献】特開2017-96688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術のように自動追尾式のTSを用いたとしても、杭頭の計測には作業者が杭1つ1つを回って計測を行わなくてはならず、労力と時間がかかるという問題がある。また、作業者の経験や技量にも依存することもあり精度が不安定であるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2の技術では、点群モデルを工事現場の上空からレーザスキャナにより走査することによって取得しているが、レーザスキャナにより杭頭部を検出するには工事現場全域を走査して工事現場全域の点群データを取得した後、杭頭部を含む対象エリアの点群だけをトリミングする必要がある。この工事現場全域の点群データはデータ量が膨大となるという問題がある。
【0009】
特に、大規模な構造物を建築する場合は、工事現場も広範となり、特許文献1の技術では作業者が杭間を移動する距離と時間が増大し、特許文献2の技術では点群のデータ量がさらに増大するという問題がある。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、杭頭の解析をより効率的に、且つ安定した精度で行うことのできる杭頭解析システム、杭頭解析方法、及び杭頭解析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明に係る杭頭解析システムでは、打設された杭の杭頭を解析する杭頭解析システムであって、移動体に設けられたカメラにより撮影された、前記杭を含む対象地の画像を複数取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得した複数の画像から前記対象地の三次元モデルを生成する三次元モデル生成部と、前記三次元モデル生成部により生成された前記三次元モデルから前記杭頭を検出する杭頭検出部と、前記杭頭検出部により検出された杭頭と、予め取得した設計情報に基づく杭頭との整合を判別する整合判別部と、を備える。
【0012】
上記杭頭解析システムにおいて、前記杭頭検出部は前記杭頭の杭芯を検出し、前記整合判別部は、前記杭芯と前記設計情報に基づく杭埋設点との整合を判別するものとしてもよい。
【0013】
また、上記杭頭解析システムにおいて、前記杭頭検出部は前記杭頭の地表から杭の頂面までの高さである杭高さを検出し、前記整合判別部は、前記杭頭高さと前記設計情報に基づく杭頭高さとの整合を判別するものとしてもよい。
【0014】
また、上記杭頭解析システムにおいて、前記杭頭検出部は前記杭頭の傾きを検出し、前記整合判別部は、前記杭頭の傾きと前記設計情報に基づく前記杭頭の傾きとの整合を判別するものとしてもよい。
【0015】
また、上記杭頭解析システムにおいて、さらに、前記三次元モデル生成部により生成された三次元モデル上に、前記整合判別部により判別された杭頭の整合に関する情報を表示させる表示部を備えてもよい。
【0016】
また、上記杭頭解析システムにおいて、前記杭頭には、色が付されており、前記杭頭検出部は前記三次元モデルから杭頭を検出するための要素として、前記色を含めてもよい。
【0017】
上記した目的を達成するために、本発明に係る杭頭解析方法では、打設された杭の杭頭を解析する杭頭解析方法であって、移動体に設けられたカメラにより撮影された、前記杭を含む対象地の画像を複数取得する画像取得工程と、前記画像取得工程にて取得した複数の画像から前記対象地の三次元モデルを生成する三次元モデル生成工程と、前記三次元モデル生成工程にて生成された前記三次元モデルから前記杭頭を検出する杭頭検出工程と、前記杭頭検出工程にて検出された杭頭と、予め取得した設計情報との整合を判別する整合判別工程と、を備える。
【0018】
上記した目的を達成するために、本発明に係る杭頭解析プログラムでは、打設された杭の杭頭を解析する杭頭解析プログラムであって、移動体に設けられたカメラにより撮影された、前記杭を含む対象地の画像を複数取得する画像取得工程と、前記画像取得工程にて取得した複数の画像から前記対象地の三次元モデルを生成する三次元モデル生成工程と、前記三次元モデル生成工程にて生成された前記三次元モデルから前記杭頭を検出する杭頭検出工程と、前記杭頭検出工程にて検出された杭頭と、予め取得した設計情報との整合を判別する整合判別工程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
上記手段用いる本発明に係る杭頭確認システムによれば、杭頭の解析をより効率的に、且つ安定した精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る杭頭解析システムの全体構成図である。
図2】杭頭解析システムの制御ブロック図である。
図3】杭頭解析ルーチンを示すフローチャートである。
図4】写真測量により杭頭部分を抽出する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0022】
図1には本発明の一実施形態に係る杭頭解析システムの全体構成図が示されており、図2には当該杭頭解析システムの制御ブロック図が示されている。これらの図に基づき、杭頭解析システムの構成について説明する。
【0023】
杭頭解析システム1は、写真測量に基づく解析システムであり、工事現場Cの上空を移動しつつ写真測量用の画像を複数撮影する移動撮影装置2と、当該移動撮影装置2により撮影した画像から三次元モデルの生成及び杭頭の解析を行う解析装置3と、を有している。
【0024】
本実施形態の工事現場Cは、杭の打設後、根切りを行い、杭頭処理を行った杭頭H1、H2、・・・Hmが露出している状態にある。なお本実施形態では、円筒状の鋼杭を例に説明するが、杭の材質や形状はこれに限られるものではなく、例えば、杭は断面矩形の角杭でもよい。
【0025】
移動撮影装置2は、移動体であるUAV10に、写真測量用の画像を撮影するカメラ11が搭載されて構成されている。なお、カメラ11が撮影する画像は静止画像及び動画像でもよい。
【0026】
詳しくは、UAV10は、工事現場Cの上空を、予め定められた飛行経路で飛行したり、遠隔操作により自由に飛行したりすることが可能な飛行移動体である。当該UAV10には飛行を行うための飛行機構10aの下部にジンバル機構10bが設けられている。
【0027】
カメラ11はUAV10のジンバル機構10bより支持されており、当該ジンバル機構10bによって撮影方向を自由に変更可能である。本実施形態では、ジンバル機構10bは、工事現場Cの撮影のため上空から常に下方を撮影するよう姿勢を安定化させる。
【0028】
また、カメラ11には、GPS信号を受信可能なGPSユニット12が設けられている。当該GPSユニット12は、受信したGPS信号に基づき移動撮影装置2の現在位置を測量可能である。
【0029】
解析装置3は、写真測量用のプログラムや杭解析用のプログラムを実行可能なパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理端末である。
【0030】
次に図2を参照しつつ、杭頭解析システム1の移動撮影装置2及び解析装置3が搭載する制御系の構成について説明する。なお、移動撮影装置2のUAV10に係る飛行制御については、周知の技術を適用すればよく、説明を省略する。
【0031】
図2に示すように、移動撮影装置2は、上述したカメラ11、GPSユニット12の他に、撮影制御部13及び記憶部14を有している。なお、図示しないが、移動撮影装置2は、この他にも操作部や表示部等が設けられていてもよい。
【0032】
撮影制御部13は、カメラ11及びGPSユニット12と電気的に接続されている。当該撮影制御部13は、隣合う画像が一部重複するように、予め設定された撮影周期で撮影を行うようカメラ11を制御するとともに、撮影時点における位置情報をGPSユニット12より取得する機能を有している。さらに、撮影制御部13は、カメラ11により撮影した画像と、GPSユニット12より取得した位置情報とを対応付けて、記憶部14に記憶する。
【0033】
記憶部14は、各種情報を記憶可能な、例えばフラッシュメモリであり、主に撮影制御部13から送られる位置情報を含む画像を記憶する。当該記憶部14に記憶された情報は、他の記憶媒体や、有線又は無線による通信を介して他の装置に移動又は複製可能である。
【0034】
一方、解析装置3は、主に、画像取得部20、三次元モデル生成部21、杭頭検出部22、整合判別部23、表示部24を有している。なお、解析装置3には、図示しない記憶部に、工事現場Cにおける杭の埋設点座標や、杭の形状、大きさ等の仕様を含む設計情報が記憶されている。
【0035】
画像取得部20は、上記記憶部14に記憶されている位置情報を含む画像を取得する部分である。
【0036】
三次元モデル生成部21は、画像取得部20にて取得した複数の画像に基づき、写真測量の手法により、三次元モデルを生成する部分である。詳しくは、一部重複する複数の画像から互いに共通する特徴点を抽出し、空間的な位置関係が合うように合成することで三次元モデル(ステレオモデル)を生成する。例えば、工事現場Cにおける根切り部分の形状や頂点を特徴点とする。また、予め工事現場Cの既知点に対空標識等を設置し、画像と地上点との対応付け(相対的な座標から絶対的な座標への対応付け)のための標定点や、精度確認を行うための検証点として使用する。また、杭頭に対空標識や画像処理において認識しやすいマークを付けたり、杭そのものの形状を利用することで、杭頭位置の三次元計測作業の向上を図ることができる。
【0037】
杭頭検出部22は、三次元モデル生成部21により生成された三次元モデルの中から、杭頭を検出する部分である。これは、例えば画像認識により自動で杭頭を検出したり、作業者が表示部24を通して三次元モデルの中から目視により手動で検出してもよい。そして、杭頭検出部22は、検出された杭頭の杭芯の位置、杭頭の高さ、杭頭の傾きを検出する。つまり、円筒状の杭頭の中心位置のXY座標(水平面座標)を杭芯の位置として検出し、地表から杭頂面までのZ座標(鉛直座標)を杭頭の高さとして検出し、杭芯軸とZ軸(鉛直軸)との角度差を杭頭の傾きとして検出する。
【0038】
整合判別部23は、杭頭検出部22により検出された杭頭と、記憶部から予め取得した設計情報における杭頭の仕様との整合を判別する部分である。具体的には、杭芯の位置、杭頭の高さ、杭頭の傾きが、設計情報の値に対して許容範囲内にあるか否かを判別する。
【0039】
表示部24は、PCのディスプレイ等であり、三次元モデル生成部21により生成された三次元モデル上に、整合判別部23により判別された杭頭の整合に関する情報を表示させることが可能である。
【0040】
このように構成された、杭頭解析システム1は、まず、図1に示すように、移動撮影装置2により工事現場Cの上空を移動しながら所定の撮影周期で写真測量用の画像P1、P2、…Pnを複数撮影する。その後、解析装置3により当該画像P1、P2、…Pnから三次元モデルを生成して、杭頭を検出して、当該杭頭の整合を判別する。
【0041】
ここで、図3図4を参照すると、図3には本実施形態の杭頭解析システムにおける杭頭解析ルーチンが示されており、図4には杭頭の整合判別についての説明図が示されており、以下、途中図5を参照しつつ、図4のフローチャートに沿って杭頭解析プログラムの実行による杭頭解析方法について説明する。なお、図4は、簡略化のために三次元モデルMを平面とし杭頭のみを三次元化して示しており、杭頭は大きさ、高さ、傾き等は実際の表示よりも大きく示している。
【0042】
図4に示すように、まず杭頭解析ルーチンのステップS1として、移動撮影装置2が工事現場Cの上空を飛行し、隣り合う画像が一部重複するように所定の周期で工事現場Cの画像を撮影する。また、撮影制御部13は、各撮影と同時にGPSユニット12により撮影時点の移動撮影装置2の位置情報を取得し、位置情報を含む画像を記憶部14に記憶する。
【0043】
ステップS2として、移動撮影装置2は、全ての撮影を終えると飛行を完了する。
【0044】
そして、ステップS3として、解析装置3の画像取得部20は、移動撮影装置2の記憶部14から、位置情報を含む画像を取得する(画像取得工程)。
【0045】
ステップS4として、三次元モデル生成部21は、取得した複数の画像から写真測量の手法に基づき、三次元モデルを生成する(三次元モデル生成工程)。具体的には、各画像の撮影姿勢(外部標定要素)とカメラの校正パラメータ(内部標定要素)を推定する。そして、各画像内より特徴点を抽出し、画像間でマッチングを行い、ステレオモデルを生成する。また、複数画像内から対象物(例えば杭頭)の画素を指定し、三次元位置を計測する、いわゆるマニュアル計測を行う。又は、このマニュアル計測を自動化し、画像間で重複するエリアに対して、三次元の点群データを生成してもよい。
【0046】
また、ステップS5として、杭頭検出部22は、生成された三次元モデルの中から杭頭を検出する(杭頭検出工程)。
【0047】
このステップS4及びS5について、具体的には、図4に示すように、三次元モデル生成部21は、一部重複する画像P1、P2及び図示しないその他の画像から三次元モデルMを生成する。
【0048】
図4では、三次元モデルM上に第1の杭頭H1から第4の杭頭H4が含まれており、杭頭検出部22は、自動又は手動によりこれらの杭頭を検出する。さらに、杭頭検出部22はこれらの杭芯位置(例えばH1o)、杭頭の高さ(例えばH1h)、杭芯軸(例えばH1a)を検出し、続くステップS6からS8にてこの検出された杭の整合判別を行う(整合判別工程)。
【0049】
ステップS6において、整合判別部23は、杭芯位置が許容範囲内であるか否かを判別する。当該判別は、例えば杭頭の杭芯位置の座標と設計情報における杭芯位置座標との位置差分を算出し、当該位置差分が予め定めた許容範囲内であるかで判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち図4の第1の杭頭H1のように、杭芯位置H1oの座標が設計情報における杭芯位置H1p(杭埋設点)とほぼ一致する場合は、次のステップS7に進む。
【0050】
ステップS7において、整合判別部23は、杭頭高さが許容範囲内であるか否かを判別する。当該判別は、例えば杭頭高さと杭頭モデルH0の杭頭高さH0hとの高さ差分を算出し、当該高さ差分が予め定めた許容範囲内であるかで判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち図4の第1の杭頭H1のように、杭頭高さH1hが杭頭モデルH0における杭頭高さH0hとほぼ一致する場合は、次のステップS8に進む。
【0051】
ステップS8において、整合判別部23は、杭頭傾きが許容範囲内であるか否かを判別する。当該判別は、例えば杭頭傾きと杭頭モデルH0の杭頭傾き(例えば鉛直)との傾き差分を算出し、当該傾き差分が予め定めた許容範囲内であるかで判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち図4の第1の杭頭H1のように、杭頭軸H1aの傾きが杭頭モデルH0における杭頭軸H0aの傾きとほぼ一致する場合(傾き0)は、次のステップS9に進む。
【0052】
ステップS9において、表示部24はステップS6~S8の判別結果が全て真(Yes)である杭頭はほぼ設計通りに設置されているものとして、当該杭頭については表示画面上では通常表示で表示する。例えば図4の第1の杭頭H1は、通常表示で表示される。
【0053】
次のステップS10において、整合判別部23は、この時点で上記ステップS5にて検出された杭頭の全ての整合判別を完了したか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合は当該ルーチンを終了する。一方、当該判別結果が偽(No)である場合、即ち整合判別を行っていない杭頭が残っている場合は、ステップS5に戻り、次の杭頭の整合判別を行う。
【0054】
上記ステップS6~S8のいずかの判別結果が偽(No)である場合は、即ち杭芯位置、杭頭高さ、杭頭傾きのいずれか一つでも許容範囲外である場合は、ステップS11に進む。
【0055】
ステップS11では、許容範囲外であった杭頭について表示画面上にて警告表示を行う。この警告表示は、許容範囲外にある要素の種類(杭芯位置、杭頭高さ、杭頭傾き)に応じて警告表示を変えてもよいし、差分の程度によって警告表示を変えてもよい。
【0056】
例えば、図4では、第2の杭頭H2は位置差分ΔH2oが許容範囲外であることを示しており、第3の杭頭H3は高さ差分ΔH3hが許容範囲外であることを示しており、第4の杭頭は傾き差分ΔH4aが許容範囲外であることを示している。
【0057】
以上のように、本実施形態の杭頭解析システム1では、解析装置3が、UAV10に設けられたカメラ11により撮影された工事現場Cの複数の画像を取得する。そして解析装置3は、当該画像から三次元モデルを生成し、そこから杭頭を検出して、整合判別を行っている。写真測量による三次元モデルので生成は、レーザスキャナのように工事現場全域において点群データを取得する必要はなく、杭頭を含む必要な範囲のみの点群データを生成すれば杭頭の整合判別に足りることからデータ量を少なくすることができ効率的に杭頭の解析を行うことができる。また、作業者が杭頭を計測するよりも安定した精度を確保することができる。
【0058】
そして、当該写真測量に基づく三次元モデルから、杭頭の杭芯の位置、杭頭高さ、杭頭の傾きを検出し、それぞれの整合を判別することで、杭の打設状態の確認も行うことができる。
【0059】
また、例えば図4に示す三次元モデルMのように、杭頭の整合に関する情報を閲覧者が理解しやすく表示することで、杭の打設の不具合というを即座に発見することができる。
【0060】
以上のことから本実施形態に係る杭頭解析システム、杭頭解析方法、及び杭頭解析プログラムによれば、杭頭の解析をより効率的に、且つ安定した精度で行うことができる。
【0061】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0062】
上記実施形態では、杭頭検出部22において、自動又は手動で杭頭を検出しているが、予め工事現場Cにて杭頭に色を付しておいてから移動撮影装置2による撮影を行い、三次元モデルから杭頭を検出するための一つの要素として、付した色を用いてもよい。例えば、杭の種類ごとに色を変えたりしてもよい。レーザスキャナによる点群データで対象物の色を識別することができないが、写真測量では実際の工事現場Cの色までモデル化に含めることができ、これにより杭頭の検出をより円滑に且つ正確に行うことができるようになる。
【0063】
また、上記実施形態では、移動撮影装置2はUAV10を移動体として用いているが、移動体はこれに限られず、例えば、有人の飛行体であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、移動撮影装置2の位置をGPSユニット12により測量しているが、移動撮影装置2の位置を測量する手段はこれに限られるものではなく、例えば自動追尾式のトータルステーションにより移動撮影装置2を追尾測量した結果を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 杭頭解析システム
2 移動撮影装置
3 解析装置
10 UAV
11 カメラ
12 GPSユニット
13 撮影制御部
14 記憶部
20 画像取得部
21 三次元モデル生成部
22 杭頭検出部
23 整合判別部
24 表示部
C 工事現場
M 三次元モデル
H1、H2、H3、H4、Hm 杭頭
図1
図2
図3
図4