(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 376
(21)【出願番号】P 2017199505
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】田村 昂広
(72)【発明者】
【氏名】高井 博司
(72)【発明者】
【氏名】小沼 伸行
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081704(JP,A)
【文献】高津安男ほか,Phase-sensitive Inversion-recovery(PSIR)を用いた子宮ダイナミックスタディのための基礎検討,放射線技術学会誌,2016年01月,第72巻、第1号,第31-41頁
【文献】Olivier Mougin et al.,Imaging Gray Matter with Concomitant Null Point Imaging from the Phase Sensitive Inversion Recovery Sequence,Magnetic Resonance in Medicine,2016年,vol.76,pp.1512-1516
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スライスを含み前記第1スライスより厚い第1領域に対して第1IRパルスを印加し、前記第1IRパルスの印加後に前記第1スライスに関する第1MRデータを収集し、前記第1MRデータの収集後に核磁化の回復に関する第1スポイラーパルスを前記第1領域に印加し、前記第1スポイラーパルスの印加後に前記第1領域から離れた第2スライスに関する第2MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する第1シーケンスを第1心周期において実行し、
前記第2スライスを含み前記第2スライスより厚
く前記第1領域とは異なる第2領域に対して第2IRパルスを印加し、前記第2IRパルスの印加後に前記第2MRデータを収集し、前記第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスを前記第2領域に印加し、前記第2スポイラーパルスの印加後に前記第1MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する第2シーケンスを前記第1心周期に続く第2心周期で実行する、シーケンス制御部、
を具備する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1シーケンスは、前記第1MRデータの収集の直前に前記第2MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを収集することをさらに有し
前記第2シーケンスは、前記第2MRデータの収集の直前に前記第1MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを収集することをさらに有する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
第1スライスに対して第1IRパルスを印加し、前記第1IRパルスの印加後であって前記第1スライスに関する第1MRデータの収集の直前に前記第1スライスから離れた第2スライスに関する第2MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集し、前記第1MRデータを収集し、前記第1MRデータの収集後に核磁化の回復に関する第1スポイラーパルスを前記第1スライスに印加し、前記第1スポイラーパルスの印加後に前記第2MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを再度収集する第1シーケンスを第1心周期において実行し、
前記第2スライスに対して第2IRパルスを印加し、前記第2IRパルスの印加後であって前記第2MRデータの収集の直前に前記第1MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集し、前記第2MRデータを収集し、前記第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスを前記第2スライスに印加し、前記第2スポイラーパルスの印加後に前記第1MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを再度収集する第2シーケンスを前記第1心周期に続く第2心周期で実行する、シーケンス制御部、
を具備する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記シーケンス制御部は、
前記第1IRパルスを、前記第1スライスを含み前記第1スライスより厚い第1領域に印加し、
前記第2IRパルスを、前記第2スライスを含み前記第2スライスより厚
く前記第1領域とは異なる第2領域に印加する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1スライスは、複数のスライスに相当する厚みを有し、
前記第2スライスは、前記複数のスライスに相当する厚みを有し、
前記シーケンス制御部は、
前記第1MRデータの収集時と前記第1MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータの収集時とにおいて、前記第1スライスに応じた多周波数帯域のRFパルスを前記第1スライスに印加し、
前記第2MRデータの収集時と前記第2MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータの収集時とにおいて、前記第2スライスに応じた多周波数帯域のRFパルスを前記第2スライスに印加する、
請求項1、2、4のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第1MRデータの位相補正に用いられる2つの前記リファレンスデータの平均を計算することで第1平均データを生成し、前記第1平均データを用いて前記第1MRデータに対する位相補正を実行することで第1実画像を生成し、
前記第2MRデータの位相補正に用いられる2つの前記リファレンスデータの平均を計算することで第2平均データを生成し、前記第2平均データを用いて前記第2MRデータに対する位相補正を実行することで第2実画像を生成する、画像生成部、
をさらに具備する請求項2乃至4のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
第1スライスに対して第1IRパルスを印加し、前記第1IRパルスの印加後に第1フリップ角を用いて前記第1スライスに関する第1MRデータを収集し、前記第1MRデータの収集後に核磁化の回復に関する第1スポイラーパルスを前記第1スライスに印加する第1シーケンスを第1心周期において実行し、
前記第1スライスから離れた第2スライスに対して第2IRパルスを印加し、前記第2IRパルスの印加後に前記第1フリップ角を用いて前記第2スライスに関する第2MRデータを収集し、前記第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスを前記第2スライスに印加し、前記第2スポイラーパルスの印加後に前記第1フリップ角以上の第2フリップ角を用いて前記第1MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する第2シーケンスを前記第1心周期に続く第2心周期で実行し、
前記第1スライスおよび前記第2スライスから離れた第3スライスに対して第3IRパルスを印加し、前記第3IRパルスの印加後に前記第1フリップ角を用いて前記第3スライスに関する第3MRデータを収集し、前記第3MRデータの収集後に第3スポイラーパルスを前記第3スライスに印加し、前記第3スポイラーパルスの印加後に前記第2フリップ角を用いて前記第2MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する第3シーケンスを前記第2心周期に続く第3心周期で実行し、
前記第3心周期に続く第4心周期のうち前記第3スポイラーパルスの印加の直後の心時相において、前記第2フリップ角を用いて、前記第3MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する第4シーケンスを実行する、シーケンス制御部、
を具備する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記シーケンス制御部は、
前記第1IRパルスを、前記第1スライスを含み前記第1スライスより厚い第1領域に印加し、
前記第2IRパルスを、前記第2スライスを含み前記第2スライスより厚
く前記第1領域とは異なる第2領域に印加し、
前記第3IRパルスを、前記第3スライスを含み前記第3スライスより厚
く前記第1領域及び前記第2領域とは異なる第3領域に印加する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1スライスは、複数のスライスに相当する厚みを有し、
前記第2スライスは、前記複数のスライスに相当する厚みを有し、
前記第3スライスは、前記複数のスライスに相当する厚みを有し、
前記シーケンス制御部は、
前記第1MRデータの収集時と前記第1MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータの収集時とにおいて、前記第1スライスに応じた多周波数帯域のRFパルスを前記第1スライスに印加し、
前記第2MRデータの収集時と前記第2MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータの収集時とにおいて、前記第2スライスに応じた多周波数帯域のRFパルスを前記第2スライスに印加し、
前記第3MRデータの収集時と前記第3MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータの収集時とにおいて、前記第3スライスに応じた多周波数帯域のRFパルスを前記第3スライスに印加する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記第2シーケンスは、前記第2MRデータの収集の直前に前記第1MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを収集することをさらに有し、
前記第3シーケンスは、前記第3MRデータの収集の直前に前記第2MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを収集することをさらに有し、
前記第4シーケンスは、前記第4心周期のうち前記第3MRデータの収集タイミングの心時相の直前の心時相において、前記第3MRデータの位相補正に用いられる前記リファレンスデータを収集することをさらに有する、
請求項7乃至9のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置は、Phase Sensitive Inversion Recovery(以下、PSIR(位相感応性反転回復)と呼ぶ)法による撮像を行う場合、一つ目のR波をトリガとして画像データを収集し、続いて2つ目のR波をトリガとしてリファレンスデータを収集する。リファレンスデータの収集は、MRデータの収集後の縦磁化が熱平衡状態に略回復後、実行される。MRI装置は、リファレンスデータを用いてMRデータの位相を補正し、実画像(Real画像)を生成する。PSIR法は、被検体の心臓を撮像対象として用いられることが多いため、息止め撮像となる。
【0003】
従来のPSIR法における撮像手順では、1枚の実画像を得るために2心拍に亘ってデータの収集が必要となるため、撮像時間が長くなるという問題点がある。撮像時間の増加は、息止め時間の増加および息止め回数の増加となるため、被検体に対する負担の増加、および画質への影響が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Peter Kellman et al., “Phase-Sensitive Inversion Recovery for Detecting Myocardial Infarction Using Gadolinium-Delayed Hyperenhancement” Magnetic Resonance in Medicine 372-383, (2002):47(2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、PSIR法に関する撮像において、撮像時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、第1シーケンスを第1心周期において実行し、第2シーケンスを前記第1心周期に続く第2心周期で実行するシーケンス制御部を有する。第1シーケンスの実行により、シーケンス制御部は、第1スライスを含み前記第1スライスより厚い第1領域に対して第1IRパルスを印加し、前記第1IRパルスの印加後に前記第1スライスに関する第1MRデータを収集し、前記第1MRデータの収集後に核磁化の回復に関する第1スポイラーパルスを前記第1領域に印加し、前記第1スポイラーパルスの印加後に前記第1領域から離れた第2スライスに関する第2MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する。第2シーケンスの実行により、シーケンス制御部は、前記第2スライスを含み前記第2スライスより厚い第2領域に対して第2IRパルスを印加し、前記第2IRパルスの印加後に前記第2MRデータを収集し、前記第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスを前記第2領域に印加し、前記第2スポイラーパルスの印加後に前記第1MRデータの位相補正に用いられるリファレンスデータを収集する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態において実行されるPSIR法に関するシーケンスの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における動作の処理手順の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態において、第1シーケンスおよび第2シーケンスにおける各種パルスおよび各種シーケンスが実行される領域の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の応用例において、第1収集シーケンスと第2リファレンス収集シーケンスとにおいて、マルチバンド撮像が実施されるスライスの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態において実行されるPSIR法に関するシーケンスの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態における動作の処理手順の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態において実行されるPSIR法に関するシーケンスの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態における動作の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を用いて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
(第1の実施形態)
図1を用いて、本実施形態におけるMRI装置100の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態におけるMRI装置100の構成を示す図である。
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信回路(送信部)113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路(受信部)119と、シーケンス制御回路(シーケンス制御部)121と、バス123と、インタフェース(入力部)125と、ディスプレイ(表示部)127と、記憶装置(記憶部)129と、処理回路(処理部)131とを備える。なお、MRI装置100は、静磁場磁石101と傾斜磁場コイル103との間において中空の円筒形状のシムコイルを有していてもよい。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石である。なお、静磁場磁石101は、略円筒形状に限らず、開放型の形状で構成されてもよい。静磁場磁石101は、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、中空の円筒形状に形成されたコイルである。傾斜磁場コイル103は、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場の方向と同方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸及びY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル103における3つのコイルは、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0013】
傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)を形成する。スライス選択用傾斜磁場は、撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴(Magnetic Resonance:以下、MRと呼ぶ)信号の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0014】
傾斜磁場電源105は、シーケンス制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0015】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。寝台107は、例えば、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように、本MRI装置100が設置された検査室内に設置される。
【0016】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路であり、インタフェース125を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板1071を長手方向および上下方向へ移動させる。
【0017】
送信回路113は、シーケンス制御回路121の制御により、ラーモア周波数等に対応する高周波パルス(RF(Radio Frequency)パルス)を送信コイル115に供給する。
【0018】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。送信コイル115は、送信回路113からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場に相当する送信RF波を発生する。送信コイルは、例えば、全身用コイル(whole body coil:WBコイル)である。WBコイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。
【0019】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。なお、
図1において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、被検体Pの撮像対象に対応し、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0020】
受信回路119は、シーケンス制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタル化された複素数データであるデジタルのMR信号を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換を実行する。受信回路は119は、A/D変換されたデータを標本化(サンプリング)する。これにより、受信回路119は、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、シーケンス制御回路121に出力する。
【0021】
シーケンス制御回路121は、処理回路131から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給されるRFパルスの大きさ、送信回路113により送信コイル115にRFパルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。
【0022】
バス123は、インタフェース125と、ディスプレイ127と、記憶装置129と、処理回路131との間でデータを伝送させる伝送路である。バス123には、ネットワーク等を介して、各種生体信号計測器、外部記憶装置、各種モダリティなどが適宜接続されてもよい。例えば、生体信号計測器として、不図示の心電計がバスに接続される。
【0023】
インタフェース125は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路を有する。インタフェース125は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路を有する。なお、インタフェース125が有する回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、インタフェース125は、本MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路を有していてもよい。
【0024】
ディスプレイ127は、処理回路131におけるシステム制御機能1311による制御のもとで、画像生成機能により生成された各種MR画像、撮像および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイ127は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスである。
【0025】
記憶装置129は、画像生成機能1313を介してk空間に充填されたMRデータ、画像生成機能1313により生成された画像データ等を記憶する。記憶装置129は、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置129は、処理回路131で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶装置129は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(hard disk drive)、ソリッドステートドライブ(solid state drive)、光ディスク等である。また、記憶装置129は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0026】
処理回路131は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAM等のメモリ等を有し、本MRI装置100を統括的に制御する。処理回路131は、システム制御機能1311、画像生成機能1313を有する。システム制御機能1311、画像生成機能1313にて行われる各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置129へ記憶されている。処理回路131は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置129から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路131は、
図1の処理回路131内に示された複数の機能等を有することになる。
【0027】
なお、
図1においては単一の処理回路131にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路131を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、処理回路131が有するシステム制御機能1311、画像生成機能1313は、それぞれシステム制御部、画像生成部の一例である。
【0028】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0029】
プロセッサは、記憶装置129に保存されたプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。なお、記憶装置129にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路109、送信回路113、受信回路119、シーケンス制御回路121等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0030】
処理回路131は、システム制御機能1311により、MRI装置100を制御する。具体的には、処理回路131は、記憶装置129に記憶されているシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100の各回路を制御する。例えば、処理回路131は、システム制御機能1311により、インタフェース125を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置129から読み出す。なお、処理回路131は、撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを生成してもよい。処理回路131は、撮像プロトコルをシーケンス制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0031】
処理回路131は、画像生成機能1313により、リードアウト傾斜磁場の強度に従って、k空間のリードアウト方向に沿ってMRデータを充填する。処理回路131は、k空間に充填されたMRデータに対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を生成する。例えば、処理回路131は、複素のMRデータから絶対値(Magnitude)画像を生成することが可能である。また、処理回路131は、複素のMRデータにおける実部データと虚部データとを用いて位相画像を生成することが可能である。処理回路131は、絶対値画像および位相画像などのMR画像を、ディスプレイ127や記憶装置129に出力する。
【0032】
以上が本実施形態に係るMRI装置100の全体構成についての説明である。以下、本MRI装置100において実行されるシーケンスについて説明する。本実施形態におけるPSIR法に関して具体的に説明するために、本MRI装置100において実行されるシーケンスが適用される撮像対象部位は、造影剤が投与された心臓であるものとする。PSIR法は、反転時間(inversion time:TI)の設定が不要な遅延造影MRIである。PSIR法は、予め造影剤が投与された心臓において、正常心筋における縦緩和時間と障害心筋の縦緩和時間との差異(T1コントラスト)を強調した画像を取得する撮像シーケンスである。心筋の障害とは、例えば梗塞である。なお、本MRI装置100において実行されるシーケンスが適用される撮像対象部位は、心臓に限定されず、他の撮像対象部位であってもよい。シーケンス制御回路121は、隣接する2つの心周期のうち一つ目の心周期において第1シーケンスを実行し、一つ目の心周期に続く2つ目の心周期において第2シーケンスを実行する。第1シーケンスおよび第2シーケンスに係る撮像プロトコルは、記憶装置129に記憶される。第1シーケンスおよび第2シーケンスについては、後程詳述する。
【0033】
図2は、本実施形態において実行されるPSIR法に関するシーケンスの一例を示す図である。
図2における(a)は、心電計により取得された被検体Pの心電図(ECG:electrocardiogram)の波形(以下、心電波形と呼ぶ)を示している。
図2の(a)におけるCC1は、隣接する2つのR波で挟まれた第1心周期を示している。
図2の(a)におけるCC2は、第1心周期CC1に続く第2心周期を示している。シーケンス制御回路121は、第1心周期CC1において第1シーケンスS1を実行し、第2心周期CC2において第2シーケンスS2を実行する。
【0034】
図2における(b)は、反転回復パルス(Inversion Recovery パルス:以下、IRパルスと呼ぶ)を被検体Pに印加するタイミングを示している。IRパルスは、IRパルスが印加された領域における核磁化を反転させるパルスである。IRパルスの印加タイミングは、例えば、以下のようにして設定される。まず、正常心筋の縦磁化がIRパルスにより反転された時点から、正常心筋の縦磁化がゼロとなる時点までの期間(以下、回復期間とよぶ)が設定される。次いで、拡張期の開始時点から回復期間だけ遡った時点における心周期の時相(以下、特定時相と呼ぶ)が特定される。1心周期において、R波から特定時相までの時間(以下、所定時間と呼ぶ)が決定される。所定時間は、記憶装置129に記憶される。IRパルスの印加タイミングは、複数の心周期各々において、R波から所定時間経過後に設定される。
【0035】
図2における(c)は、第1スライスにおける縦磁化Mz1の時間変化を示している。
【0036】
図2における(d)は、第1スライスを含み第1スライスより厚い第1領域から離れた第2スライスにおける縦磁化Mz2の時間変化を示している。例えば、心基部および心底部を含む領域と心尖部を含む領域とにより被検体Pの心臓に関する領域を2分した場合、第1領域は、例えば、心基部および心底部を含む領域に対応する。また、心尖部を含む領域は、第2スライスを含み第2スライスより厚い第2領域に対応する。
【0037】
以下、第1心周期CC1においてシーケンス制御回路121により実行される第1シーケンスS1について説明する。第1シーケンスS1は、第1IRパルスIR1と、第1収集シーケンスM1と、第1スポイラーパルスSp1と、第2リファレンス収集シーケンスR2とを有する。
【0038】
第1IRパルスIR1は、第1領域における核磁化を反転させるRFパルスである。第1IRパルスIR1は、第1心周期CC1において、R波から所定時間が経過した時刻t1で、第1領域に印加される。
【0039】
第1収集シーケンスM1は、第1心周期CC1における第1IRパルスIR1の印加後に、第1スライスに関する画像用のMRデータ(以下、第1MRデータと呼ぶ)を収集するシーケンスである。第1収集シーケンスM1で実行されるシーケンスとしては、例えば、フリップ角を小さくして、短い繰り返し時間(repetition time:TR)で撮像するグラディエントエコー法が用いられる。例えば、2次元的にセグメント化されたFLASH(2D segmented FLASH(fast low angle shot))法などである。
【0040】
第1スポイラーパルスSp1は、第1領域における核磁化を回復させるスポイラーパルスである。第1心周期CC1における第1収集シーケンスM1の実行後に、第1スポイラーパルスSp1は、第1領域に印加される。第1スポイラーパルスSp1は、例えば、グラディエントスポイリングに関する傾斜磁場スポイラである。なお、第1スポイラーパルスSp1は、傾斜磁場スポイラに限定されず、例えば、縦磁化Mzを強制回復させるRFパルス(以下、RFスポイラと呼ぶ)であってもよい。また、第1スポイラーパルスSp1として、傾斜磁場スポイラとRFスポイラとが併用して用いられてもよい。
【0041】
第2リファレンス収集シーケンスR2は、第1心周期CC1における第1スポイラーパルスSp1の印加後に、第2スライスにおいてリファレンスデータ(以下、第2リファレンスデータと呼ぶ)を収集するシーケンスである。第2リファレンスデータは、後述する第2収集シーケンスM2により収集された画像用のMRデータ(以下、第2MRデータと呼ぶ)および第2リファレンスデータの位相補正に用いられる。位相補正については、後程詳述する。第2リファレンス収集シーケンスR2は、第1収集シーケンスM1におけるフリップ角より小さいフリップ角で、かつ収集タイミングおよびスライス位置が異なることを除いて第1収集シーケンスM1と同様なシーケンスである。
【0042】
以下、第2心周期CC2においてシーケンス制御回路121により実行される第2シーケンスS2について説明する。第2シーケンスS2は、第2IRパルスIR2と、第2収集シーケンスM2と、第2スポイラーパルスSp2と、第1リファレンス収集シーケンスR1とを有する。
【0043】
第2IRパルスIR2は、第2領域における核磁化を反転させるRFパルスである。第2IRパルスIR2は、第2心周期CC2において、R波から所定時間が経過した時刻t2で、第2領域に印加される。
【0044】
第2収集シーケンスM2は、第2心周期CC2における第2IRパルスIR2の印加後に、第2スライスに関する第2MRデータを収集するシーケンスである。第2収集シーケンスM2は、心周期およびスライス位置が異なることを除いて第1収集シーケンスM1と同様なシーケンスである。
【0045】
第2スポイラーパルスSp2は、第2領域における核磁化を回復させるスポイラーパルスである。第2スポイラーパルスSp2は、第2心周期CC2における第2収集シーケンスM2の実行後に、第2領域に印加される。第2スポイラーパルスSp2は、心周期および印加領域が異なることを除いて第1スポイラーパルスSp1と同様なパルスである。
【0046】
第1リファレンス収集シーケンスR1は、第2心周期CC2における第2スポイラーパルスSp2の印加後に、第1スライスにおいてリファレンスデータ(以下、第1リファレンスデータと呼ぶ)を収集するシーケンスである。第1リファレンスデータは、第1MRデータおよび第1リファレンスデータの位相補正に用いられる。第1リファレンス収集シーケンスR1は、心周期およびスライス位置が異なることを除いて第2リファレンス収集シーケンスR2と同様なシーケンスである。
【0047】
(動作)
図3および
図4を参照して、本実施形態における動作の処理手順について説明する。
図3は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示す図である。
図4は、第1シーケンスS1および第2シーケンスS2における各種パルスおよび各種シーケンスが実行される領域の一例を示す図である。
図4における(a)は、第1IRパルスIR1が印加される第1領域Re1を斜線で示している。
図4における(b)は、第1MRデータが収集される第1スライスSL1と、第2リファレンスデータが収集される第2スライスSL2とを示している。
図4における(c)は、第2IRパルスIR2が印加される第2領域Re2を斜線で示している。
図4における(d)は、第1リファレンスデータが収集される第1スライスSL1と、第2MRデータが収集される第2スライスSL2とを示している。
【0048】
(ステップSa1)
シーケンス制御回路121は、第1シーケンスS1の実行により、第1心周期CC1において第1MRデータと第2リファレンスデータとを収集する。具体的には、
図2、
図4に示すように、シーケンス制御回路121は、第1心周期CC1における最初のR波の検出時刻(t
0)から所定時間経過後の時刻t
1において第1IRパルスIR1を第1領域Re1に印加するために、送信回路113を制御する。
図4の(a)に示すように、第1IRパルスIR1は、非選択なIRパルスではなく、第1スライスSL1に選択的に印加される選択的なIRパルスである。
図4の(a)に示すように、第1領域Re1の厚みは、撮像対象部位において、画像化される第1スライスSL1より厚い。
【0049】
シーケンス制御回路121は、
図2および
図4に示すように、第1心周期CC1の略拡張期において第1収集シーケンスM1を実行し、第1スライスSL1に関する第1MRデータを収集する。第1MRデータの収集後に、シーケンス制御回路121は、第1領域Re1に第1スポイラーパルスSp1を印加するために、送信回路113と傾斜磁場電源105とのうち少なくとも一方を制御する。第1スポイラーパルスSp1の印加後、シーケンス制御回路121は、第2リファレンス収集シーケンスR2を実行し、第2スライスSL2に関する第2リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、第1MRデータと第2リファレンスデータとを処理回路131へ出力する。
【0050】
(ステップSa2)
シーケンス制御回路121は、第2シーケンスS2の実行により、第2心周期CC2において第2MRデータと第1リファレンスデータとを収集する。具体的には、
図2、
図4に示すように、シーケンス制御回路121は、第2心周期CC2における最初のR波(または第1心周期CC1における最後のR波)の検出時刻から所定時間経過後の時刻t
2において第2IRパルスIR2を第2領域Re2に印加するために、送信回路113を制御する。
図4の(c)に示すように、第2IRパルスIR2は、第1IRパルスIR1と同様に、非選択なIRパルスではなく、第2スライスSL2に選択的に印加される選択的なIRパルスである。
図4の(c)に示すように、第2領域Re2の厚みは、撮像対象部位において、画像化される第2スライスSL2より厚い。
【0051】
図2の(d)および
図4の(d)に示すように、シーケンス制御回路121は、第2心周期CC2の略拡張期において第2収集シーケンスM2を実行し、第2スライスSL2に関する第2MRデータを収集する。第2MRデータの収集後に、シーケンス制御回路121は、第2領域Re2に対して第2スポイラーパルスSp2を印加するために、送信回路113と傾斜磁場電源105とのうち少なくとも一方を制御する。第2スポイラーパルスSp2の印加後、シーケンス制御回路121は、第1リファレンス収集シーケンスR1を実行し、第1スライスSL1に関する第1リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、第2MRデータと第1リファレンスデータとを処理回路131へ出力する。
【0052】
(ステップSa3)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第1リファレンスデータに基づいて、第1位相補正用データを生成する。処理回路131は、第2リファレンスデータに基づいて第2位相補正用データを生成する。第1位相補正用データは、第1スライスSL1に関して、受信コイル117等に起因する位相歪み(位相誤差)をキャンセルするための重みに相当する。第2位相補正用データは、第2スライスSL2に関して、受信コイル117等に起因する位相歪み(位相誤差)をキャンセルするための重みに相当する。具体的には、処理回路131は、第1リファレンスデータと第1リファレンスデータの複素共役と予め計測されたノイズ分散とを用いて、第1位相補正用データを生成する。処理回路131は、第2リファレンスデータと第2リファレンスデータの複素共役と上記ノイズ分散とを用いて、第2位相補正用データを生成する。
【0053】
(ステップSa4)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第1位相補正用データを用いて、第1MRデータおよび第1リファレンスデータ各々に対して位相補正を実行する。処理回路131は、第2位相補正用データを用いて、第2MRデータおよび第2リファレンスデータ各々に対して位相補正を実行する。本ステップの処理における位相補正により、第1MRデータ、第2MRデータ、第1リファレンスデータ、第2リファレンスデータ各々において、位相誤差がキャンセルされる。
【0054】
(ステップSa5)
処理回路131は、画像生成機能1313により、位相補正後の第1リファレンスデータを用いて、位相補正後の第1MRデータから位相情報を除去する。処理回路131は、位相補正後の第2リファレンスデータを用いて、位相補正後の第2MRデータから位相情報を除去する。具体的には、処理回路131は、位相補正後の第1リファレンスデータにおける実成分と虚成分とを用いて、第1位相情報を計算する。次いで、処理回路131は、位相補正後の第1MRデータから第1位相情報を取り除く。位相補正後の第1MRデータから第1位相情報が取り除かれたデータ(以下、第1位相除去データと呼ぶ)の実部分において、第1MRデータにおける信号の極性は保持される。処理回路131は、位相補正後の第2リファレンスデータにおける実成分と虚成分とを用いて、第2位相情報を計算する。次いで、処理回路131は、位相補正後の第2MRデータから第2位相情報を取り除く。位相補正後の第2MRデータから第2位相情報が取り除かれたデータ(以下、第2位相除去データと呼ぶ)の実部分において、第2MRデータにおける信号の極性は保持される。
【0055】
(ステップSa6)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第1位相除去データにおける実成分を用いて第1実画像を再構成する。処理回路131は、第2位相除去データにおける実成分を用いて第2実画像を再構成する。なお、本ステップにおいて、処理回路131は、受信コイル117の感度マップを用いて、第1実画像および第2実画像に対して受信コイル117の感度むらに対する補正を実行してもよい。
【0056】
処理回路131は、第1実画像および第2実画像を、ディスプレイ127および記憶装置129等に出力する。ディスプレイ127は、第1実画像および第2実画像を表示する。記憶装置129は、第1実画像および第2実画像を記憶する。なお、ステップSa1乃至ステップSa6の処理は、適宜繰り返されてもよい。また、ステップSa1乃至ステップSa6の処理は、撮像対象部位において操作者が所望する複数のスライスに対応する複数の実画像が得られるまで、適宜繰り返されてもよい。
【0057】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態に係るMRI装置100によれば、第1スライスSL1を含み第1スライスSL1より厚い第1領域Re1に対して第1IRパルスIR1を印加し、第1IRパルスIR1の印加後に第1スライスSL1に関する第1MRデータを収集し、第1MRデータの収集後に核磁化の回復に関する第1スポイラーパルスSp1を第1領域Re1に印加し、第1スポイラーパルスSp1の印加後に第1領域Re1から離れた第2スライスSL2に関する第2MRデータのための第2リファレンスデータを収集する、第1シーケンスS1を第1心周期CC1において実行することができる。次いで、本MRI装置100によれば、第2スライスSL2を含み第2スライスSL2より厚い第2領域Re2に対して第2IRパルスIR2を印加し、第2領域Re2に対する第2IRパルスIR2の印加後に第2MRデータを収集し、第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスSp2を第2領域Re2に印加し、第2スポイラーパルスSp2の印加後に第1MRデータのための第1リファレンスデータを収集する、第2シーケンスS2を第2心周期CC2で実行することができる。
【0058】
以上のことから、本実施形態におけるMRI装置100によれば、PSIR法に関する撮像において、撮像時間を短縮することができる。加えて、本MRI装置100によれば、第1領域Re1に対して第1IRパルスIR1を印加し、かつ第2領域Re2に対して第2IRパルスIR2を印加することができるため、IRパルスを確実に撮像対象のスライスに印加することができる。このため、本MRI装置100によれば、被検体P内において撮像期間中に撮像対象部位が動く場合において、撮像対象のスライスに選択的にIRパルスを印加する場合に比べて、IRパルスの印加位置のズレにより撮像時間が延長することを回避することができる。
【0059】
(応用例)
第1の実施形態との相違は、第1、第2収集シーケンス(M1、M2)、および第1、第2リファレンス収集シーケンス(R1、R2)において、多スライス同時撮像(以下:マルチバンド撮像と呼ぶ)を実行することにある。以下、マルチバンド撮像について、
図5を用いて説明する。
図5は、第1収集シーケンスM1と第2リファレンス収集シーケンスR2とにおいて、マルチバンド撮像が実施されるスライスの一例を示す図である。
【0060】
図5における(a)は、第1IRパルスIR1が印加される第1領域Re1を斜線で示している。
図5における(b)は、第1MRデータが収集される第1スライスSL1に含まれる複数のスライス(SL1-1、SL1-2)と、第2リファレンスデータが収集される第2スライスSL2に含まれる複数のスライス(SL2-1、SL2-2)とを示している。
【0061】
以下、説明を具体的にするために、
図5に示すように、第1領域Re1および第2領域Re2には、4つのスライスが包含されるものとする。また、第1スライスSL1および第2スライスSL2は、2つ分のスライス厚を有するものとする。なお、第1スライスSL1および第2スライスSL2に包含されるスライスの数は、
図5に示す2つに限定されず、3以上のスライスであってもよい。また、第1領域Re1および第2領域Re2に包含されるスライスの数は、4つに限定されず、4以上のスライスであってもよい。
【0062】
シーケンス制御回路121は、例えば、インタフェース125を介した操作者の指示により、マルチバンド撮像が実施される第1、第2スライス(SL1、SL2)の厚みを設定する。設定された厚みは、複数のスライス(SL1-1およびSL1-2、SL2-1およびSL2-2)を包含する厚みに相当する。なお、マルチバンド撮像に関する厚みは、デフォルトとして、第1、第2シーケンス(S1、S2)に関連付けられて、記憶装置129に記憶されてもよい。
【0063】
シーケンス制御回路121は、設定された複数のスライスによる厚み、ボア111における複数のスライスの位置と、スライス選択用傾斜磁場とに基づいて、第1、第2収集シーケンス(M1、M2)、および第1、第2リファレンス収集シーケンス(R1、R2)において用いられるRFパルスの多周波数帯域を決定する。なお、マルチバンド撮像におけるRFパルスの多周波数帯域は、デフォルトとして、第1、第2シーケンス(S1、S2)に関連付けられて、記憶装置129に記憶されてもよい。
【0064】
シーケンス制御回路121は、第1収集シーケンスM1の実行により、スライスSL1-1とスライスSL1-2とを含む第1スライスSL1に対して、多周波数帯域のRFパルスを印加する。シーケンス制御回路121は、第2リファレンス収集シーケンスR2の実行により、スライスSL2-1とスライスSL2-2とを第2スライスSL2に対して、多周波数帯域のRFパルスを印加する。
【0065】
シーケンス制御回路121は、第2収集シーケンスM2の実行により、スライスSL2-1とスライスSL2-2とを含む第2スライスSL2に対して、多周波数帯域のRFパルスを印加する。シーケンス制御回路121は、第1リファレンス収集シーケンスR1の実行により、スライスSL1-1とスライスSL1-2とを含む第1スライスSL1に対して、多周波数帯域のRFパルスを印加する。
【0066】
処理回路131は、画像生成機能1313により、受信コイル117の感度マップを用いて、第1MRデータを、スライスSL1-1およびスライスSL1-2各々に対応するMRデータに分離する。処理回路131は、受信コイル117の感度マップを用いて、第2リファレンスデータを、スライスSL2-1およびスライスSL2-2各々に対応するリファレンスデータに分離する。処理回路131は受信コイル117の感度マップを用いて、第2MRデータを、スライスSL2-1およびスライスSL2-2各々に対応するMRデータに分離する。処理回路131は、受信コイル117の感度マップを用いて、第1リファレンスデータを、スライスSL1-1およびスライスSL1-2各々に対応するリファレンスデータに分離する。処理回路131は、
図3におけるステップSa3乃至Sa6にかかる処理をスライスSL1-1、スライスSL1-2、スライスSL2-2、およびスライスSL2-2毎に実行し、スライスSL1-1、スライスSL1-2、スライスSL2-2、およびスライスSL2-2各々の実画像を生成する。
【0067】
以上に述べた構成によれば、第1の実施形態における効果に加えて以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態に係るMRI装置100によれば、第1スライスSL1が複数のスライスに相当する厚みを有し、第2スライスSL2が複数のスライスに相当する厚みを有し、第1MRデータの収集時と第1リファレンスデータの収集時とにおいて、第1スライスSL1に応じた多周波数帯域のRFパルスを第1スライスSL1に印加し、第2MRデータの収集時と第2リファレンスデータの収集時とにおいて、第2スライスSL2に応じた多周波数帯域のRFパルスを第2スライスSL2に印加することができる。これにより、本実施形態におけるMRI装置100によれば、PSIR法に関する撮像において、多スライスを同時に撮像することができ、第1の実施形態に比べて撮像時間をさらに短縮することができる。
【0068】
(第2の実施形態)
第1の実施形態および応用例との相違は、第1心周期CC1における第1MRデータの収集の直前に第2リファレンスデータを第2スライスSL2においてさらに収集し、第2心周期CC2における第2MRデータの収集の直前に第1リファレンスデータを第1スライスSL1においてさらに収集することにある。また、第1の実施形態および応用例とにおける更なる相違は、第1IRパルスIR1および第1スポイラーパルスSp1が第1スライスSL1に選択的に印加され、第2IRパルスIR2および第2スポイラーパルスSp2が第2スライスSL2に選択的に印加されることにある。
【0069】
図6は、本実施形態において実行されるPSIR法に関するシーケンスの一例を示す図である。
図6における(a)は、心電計により取得された被検体Pの心電波形を示している。
図6における(b)は、第1IRパルスIR1と第2IRパルスIR2とを被検体Pに印加するタイミングを示している。
図6における(c)は、第1スライスSL1における縦磁化Mz1の時間変化を示している。
図6における(d)は、第2スライスSL2における縦磁化Mz2の時間変化を示している。
【0070】
第1シーケンスS1は、
図6に示すように、第1MRデータの収集の直前に第2スライスSL2において第2リファレンスデータを収集する第2-1リファレンス収集シーケンスR2-1をさらに有する。第2シーケンスS2は、
図6に示すように、第2MRデータの収集の直前に第1スライスSL1において第1リファレンスデータを収集する第1-1リファレンス収集シーケンスR1-1をさらに有する。本実施形態における第2-2リファレンス収集シーケンスR2-2は、第1の実施形態における第2リファレンス収集シーケンスR2に対応する。本実施形態における第1-2リファレンス収集シーケンスR1-2は、第1の実施形態における第1リファレンス収集シーケンスR1に対応する。
【0071】
第2-2リファレンス収集シーケンスR2-2と、第2-1リファレンス収集シーケンスR2-1との相違は、第1心周期CC1における収集タイミングが異なることにある。第1シーケンスS1における第2-1リファレンス収集シーケンスR2-1の開始時点は、第1収集シーケンスM1の開始時点から第2-2リファレンス収集シーケンスR2-2の実行期間だけ遡った時点の心時相であって、第1心周期CC1における最初のR波と対応付けられる。第2-1リファレンス収集シーケンスR2-1の開始時点は、記憶装置129に第1シーケンスS1とともに記憶される。
【0072】
第1-2リファレンス収集シーケンスR1-2と、第1-1リファレンス収集シーケンスR1-1との相違は、第2心周期CC2における収集タイミングが異なることにある。第2シーケンスS2における第1-1リファレンス収集シーケンスR1-1の開始時点は、第2収集シーケンスM2の開始時点から第1-2リファレンス収集シーケンスR1-2の実行期間だけ遡った時点の心時相であって、第2心周期CC2における最初のR波と対応付けられる。第1-1リファレンス収集シーケンスR1-1の開始時点は、記憶装置129に第2シーケンスS2とともに記憶される。
【0073】
(動作)
図6および
図7を参照して、本実施形態における動作の処理手順について説明する。
図7は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示す図である。本動作において、第1の実施形態と相違する処理について説明する。
【0074】
(ステップSb1)
シーケンス制御回路121は、第1シーケンスS1の実行により、第1心周期CC1において、第1MRデータと2つの第2リファレンスデータとを収集する。具体的には、
図6の(b)に示すように、シーケンス制御回路121は、第1心周期CC1における最初のR波をトリガとして、時刻t
1において第1IRパルスIR1を第1スライスSL1に印加するために、送信回路113を制御する。本実施形態における第1IRパルスIR1は、第1スライスSL1に選択的に印加される選択的なIRパルスである。
【0075】
シーケンス制御回路121は、第1心周期CC1において、R波をトリガとして第2-1リファレンス収集シーケンスR2-1を実行することにより、1つ目の第2リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、1つ目の第2リファレンスデータの収集に後に、第1MRデータを収集する。第1MRデータの収集後に第1スポイラーパルスSp1を第1スライスSL1に印加するために、シーケンス制御回路121は、送信回路113と傾斜磁場電源105とのうち少なくとも一方を制御する。シーケンス制御回路121は、第1スポイラーパルスSp1の印加後に第2-2リファレンス収集シーケンスR2-2を実行することにより、2つ目の第2リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、収集された2つの第2リファレンスデータを処理回路131へ出力する。
【0076】
(ステップSb2)
シーケンス制御回路121は、第2シーケンスS2の実行により、第2心周期CC2において、第2MRデータと2つの第1リファレンスデータとを収集する。具体的には、
図6の(b)に示すように、シーケンス制御回路121は、第2心周期CC2における最初のR波(または第1心周期CC1における最後のR波)をトリガとして、時刻t
2において第2IRパルスIR2を第2スライスSL2に印加するために、送信回路113を制御する。本実施形態における第2IRパルスIR2は、第2スライスSL2に選択的に印加される選択的なIRパルスである。
【0077】
シーケンス制御回路121は、第2心周期CC2において、R波をトリガとして第1-1リファレンス収集シーケンスR1-1を実行することにより、1つ目の第1リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、1つ目の第1リファレンスデータの収集後に、第2MRデータを収集する。第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスSp2を第2スライスSL2に印加するために、シーケンス制御回路121は、送信回路113と傾斜磁場電源105とのうち少なくとも一方を制御する。シーケンス制御回路121は、第2スポイラーパルスSp2の印加後に第1-2リファレンス収集シーケンスR1-2を実行することにより、2つ目の第1リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、収集された2つの第1リファレンスデータを処理回路131へ出力する。
【0078】
(ステップSb3)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第1スライスSL1に関する2つの第1リファレンスデータの平均を計算することにより、第1平均データを生成する。第1平均データは、例えば、2つの第1リファレンスデータにおける位相成分を平均化したデータである。なお、第1平均データは、2つの第1リファレンスデータにおける強度成分を重み付け加算することにより生成されてもよい。
【0079】
(ステップSb4)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第2スライスSL2に関する2つの第2リファレンスデータの平均を計算することにより、第2平均データを生成する。第2平均データは、例えば、2つの第2リファレンスデータにおける位相成分を平均化したデータである。なお、第2平均データは、2つの第2リファレンスデータにおける強度成分を重み付け加算することにより生成されてもよい。
【0080】
(ステップSb5)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第1平均データに基づいて、第1位相補正用データを生成する。処理回路131は、第2平均データに基づいて、第2位相補正用データを生成する。
【0081】
(ステップSb6)
処理回路131は、画像生成機能1313により、第1位相補正用データを用いて、第1MRデータおよび第1平均データ各々に対して位相補正を実行する。処理回路131は、第2位相補正用データを用いて、第2MRデータおよび第2平均データ各々に対して位相補正を実行する。本ステップの処理における位相補正により、第1MRデータ、第2MRデータ、第1平均データ、第2平均データ各々において、位相誤差がキャンセルされる。
【0082】
(ステップSb7)
処理回路131は、画像生成機能1313により、位相補正後の第1平均データを用いて、位相補正後の第1MRデータから位相情報を除去する。処理回路131は、位相補正後の第2平均データを用いて、位相補正後の第2MRデータから位相情報を除去する。具体的には、処理回路131は、位相補正後の第1平均データにおける実成分と虚成分とを用いて、第1位相情報を計算する。次いで、処理回路131は、位相補正後の第1MRデータから第1位相情報を取り除く。処理回路131は、位相補正後の第2平均データにおける実成分と虚成分とを用いて、第2位相情報を計算する。次いで、処理回路131は、位相補正後の第2MRデータから第2位相情報を取り除く。以降の処理は、
図3のステップSa6と同様なため、説明は省略する。なお、本ステップSb7の後に続くステップSa6の処理において、処理回路131は、受信コイル117の感度マップを用いて、第1実画像および第2実画像に対して受信コイル117の感度ムラに対する補正を実行してもよい。また、ステップSb1乃至ステップSb7の処理およびステップSb7の処理に続くステップSa6の処理は、適宜繰り返されてもよい。また、ステップSb1乃至ステップSb7の処理およびステップSb7の処理に続くステップSa6の処理は、撮像対象部位において操作者が所望する複数のスライスに対応する複数の実画像が得られるまで、適宜繰り返されてもよい。
【0083】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態に係るMRI装置100によれば、第1スライスSL1に対して第1IRパルスIR1を印加し、第1IRパルスIR1の印加後であって第1MRデータの収集の直前に第2リファレンスデータを第2スライスSL2において収集し、第1MRデータを収集し、第1MRデータの収集後に第1スポイラーパルスSp1を第1スライスSL1に印加し、第1スポイラーパルスSp1の印加後に第2スライスSL2において第2リファレンスデータを再度収集する、第1シーケンスS1を第1心周期CC1において実行することができる。次いで、本MRI装置100によれば、第2スライスSL2に対して第2IRパルスIR2を印加し、第2IRパルスIR2の印加後であって第2MRデータの収集の直前に第1リファレンスデータを第1スライスSL1において収集し、第2MRデータを収集し、第2MRデータの収集後に第2スポイラーパルスSp2を第2スライスSL2に印加し、第2スポイラーパルスSp2の印加後に第1スライスSL1において再度第1リファレンスデータを収集する、第2シーケンスS2を第2心周期CC2で実行することができる。
【0084】
以上のことから、本実施形態におけるMRI装置100によれば、PSIR法に関する撮像において、撮像時間を短縮することができる。加えて、本MRI装置100によれば、第1収集シーケンスM1おける時相に近い第1平均データを用いて第1MRデータを位相補正し、第2収集シーケンスM2おける時相に近い第2平均データを用いて第2MRデータを位相補正することができるため、位相補正の精度が向上し、実画像の画質を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態における変形例として、第1の実施形態のように、第1IRパルスIR1および第1スポイラーパルスSp1を第1領域Re1に印加し、第2IRパルスIR2および第2スポイラーパルスSp2を第2領域Re2に印加してもよい。また、本実施形態におけるさらなる変形例として、第1の実施形態の変形例のように、マルチバンド撮像が適用されてもよい。これらの変形例における処理内容及び効果は、第1の実施形態および第1の実施形態の変形例に準拠するため、説明は省略する。
【0086】
(第3の実施形態)
第1の実施形態、応用例、第2の実施形態との相違は、
図8に示すように、心周期およびスライスごとに、MRデータの収集とリファレンスデータの収集とをずらすことにある。
図8は、本実施形態において実行されるPSIR法に関するシーケンスの一例を示す図である。
図8における(a)は、心電計により取得された被検体Pの心電波形を示している。
図8における(b)は、第1IRパルスIR1と第2IRパルスIR2とを被検体Pに印加するタイミングを示している。
図8における(c)は、第1スライスSL1における縦磁化Mz1の時間変化を示している。
図8における(d)は、第2スライスSL2における縦磁化Mz2の時間変化を示している。
図8における(e)は、第1スライスSL1および第2スライスSL2から離れた第3スライスにおける縦磁化Mz3の時間変化を示している。
【0087】
図8に示すように、第1シーケンスS1は、第1IRパルスIR1と、第1収集シーケンスM1と、第1スポイラーパルスSp1とを有する。第2シーケンスS2は、第2IRパルスIR2と、第2収集シーケンスM2と、第2スポイラーパルスSp2と、第1リファレンス収集シーケンスR1とを有する。第3シーケンスS3は、第3IRパルスIR3と、第3収集シーケンスM3と、第3スポイラーパルスSp3と、第2リファレンス収集シーケンスR2とを有する。第4シーケンスS4は、第3リファレンス収集シーケンスR3を有する。
【0088】
本実施形態における撮像対象のスライス数は、
図8に示すように3として説明するが、このスライス数に限定されない。本実施形態における第1IRパルスIR1および第1スポイラーパルスSp1は、第2の実施形態と同様に第1スライスSL1に選択的に印加される。本実施形態における第2IRパルスIR2および第2スポイラーパルスSp2は、第2の実施形態と同様に第2スライスSL2に選択的に印加される。
【0089】
本実施形態における第3IRパルスIR3は、第3スライスにおける核磁化を反転させるRFパルスである。第3IRパルスIR3は、第3心周期CC3において、R波から所定時間が経過した時刻t3で、第3スライスに選択的に印加される。
【0090】
第3収集シーケンスM3は、第3心周期CC3における第3IRパルスIR3の印加後に、第3スライスに関する画像用のMRデータ(以下、第3MRデータと呼ぶ)を収集するシーケンスである。第3収集シーケンスM3は、心周期およびスライス位置が異なることを除いて第1、第2収集シーケンス(M1、M2)と同様なシーケンスである。
【0091】
第3スポイラーパルスSp3は、第3スライスにおける核磁化を回復させるスポイラーパルスである。第3スポイラーパルスSp3は、第3心周期CC3における第3収集シーケンスM3の実行後に、第3スライスに選択的に印加される。第3スポイラーパルスSp3は、心周期および印加領域が異なることを除いて第1スポイラーパルスSp1および第2スポイラーパルスSp2と同様なパルスである。
【0092】
本実施形態における第1乃至第3リファレンス収集シーケンス(R1、R2、R3)は、第1、第2収集シーケンス(M1、M2)におけるフリップ角(以下、第1フリップ角と呼ぶ)以上の第2フリップ角を用いて実行される。例えば、第1乃至第3リファレンス収集シーケンス(R1、R2、R3)において用いられる第2フリップ角は、第1の実施形態および第2の実施形態における第1、第2リファレンス収集シーケンスにおけるフリップ角より大きい角度に設定される。第1フリップ角は、第1乃至第3シーケンス(S1、S2、S3)とともに記憶装置129に記憶され、第2フリップ角は、第2乃至第4シーケンス(S2、S3、S4)とともに記憶装置129に記憶される。
【0093】
第2リファレンス収集シーケンスR2は、第3心周期CC3における第3スポイラーパルスSp3の印加後に、第2スライスにおいて第2リファレンスデータを収集するシーケンスである。第2リファレンス収集シーケンスR2は、心周期およびスライス位置が異なることを除いて第1リファレンス収集シーケンスR1と同様なシーケンスである。
【0094】
第3リファレンス収集シーケンスR3は、第3心周期CC4に続く第4心周期CC3のうちスポイラーパルス(第1乃至第3スポイラーパルス)の印加の直後の心時相において、第2フリップ角を用いて、第3スライスにおいてリファレンスデータ(以下、第3リファレンスデータと呼ぶ)を収集するシーケンスである。第3リファレンスデータは、第3MRデータおよび第3リファレンスデータの位相補正に用いられる。第3リファレンス収集シーケンスR3は、心周期およびスライス位置が異なることを除いて第1、第2リファレンス収集シーケンス(R1、R2)と同様なシーケンスである。
【0095】
(動作)
図8および
図9を参照して、本実施形態における動作の処理手順について説明する。
図9は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示す図である。本動作において、第1の実施形態と相違する処理について説明する。
【0096】
(ステップSc1)
シーケンス制御回路121は、第1心周期CC1における第1シーケンスS1の実行により、第1スライスSL1への第1IRパルスIR1の印加後、第1フリップ角を用いて第1MRデータを収集する。シーケンス制御回路121は、第1MRデータを処理回路131へ出力する。
【0097】
(ステップSc2)
シーケンス制御回路121は、第2心周期CC2における第2シーケンスS2の実行により、第1フリップ角を用いて第2MRデータを収集し、第1フリップ角より大きい第2フリップ角を用いて第1リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、第2MRデータと第1リファレンスデータとを処理回路131へ出力する。
【0098】
(ステップSc3)
シーケンス制御回路121は、第3心周期CC3における第3シーケンスの実行により、第1フリップ角を用いて第3MRデータを収集し、第2フリップ角を用いて第2リファレンスデータを収集する。具体的には、
図8に示すように、シーケンス制御回路121は、第3心周期CC3における最初のR波(または第2心周期CC2における最後のR波)の検出時刻から所定時間経過後の時刻t
3において第3IRパルスIR3を第3スライスに印加するために、送信回路113を制御する。
【0099】
図8の(d)に示すように、シーケンス制御回路121は、第3心周期CC3の略拡張期において第3収集シーケンスM3を実行し、第3スライスに関する第3MRデータを収集する。第3MRデータの収集後に、シーケンス制御回路121は、第3スライスに対して第3スポイラーパルスSp3を印加するために、送信回路113と傾斜磁場電源105とのうち少なくとも一方を制御する。第3スポイラーパルスSp3の印加後、シーケンス制御回路121は、第2リファレンス収集シーケンスR2を実行し、第2リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、第3MRデータと第2リファレンスデータとを処理回路131へ出力する。
【0100】
(ステップSc4)
シーケンス制御回路121は、第4心周期CC4における第4シーケンスS4の実行により、第2フリップ角を用いて第3リファレンスデータを収集する。具体的には、シーケンス制御回路121は、第4心周期CC4のうち第1乃至第3スポイラーパルス(Sp1、Sp2、Sp3)の印加の直後の心時相において、第3リファレンス収集シーケンスR3を実行し、第3リファレンスデータを収集する。シーケンス制御回路121は、第3リファレンスデータを処理回路131へ出力する。
【0101】
処理回路131は、画像生成機能1313により、
図3におけるステップSa3乃至Sa6にかかる処理を第1スライスSL1、第2スライスSL2、および第3スライス毎に実行し、第1スライスSL1、第2スライスSL2、および第3スライス各々の実画像を生成する。
【0102】
なお、ステップSc1乃至ステップSc4の処理およびスライス各々の実画像の生成処理は、適宜繰り返されてもよい。このとき、第4シーケンスS4は、第1シーケンスS1に組み込まれてもよい。また、ステップSc1乃至ステップSc4の処理およびスライス各々の実画像の生成処理は、撮像対象部位において操作者が所望する複数のスライスに対応する複数の実画像が得られるまで、適宜繰り返されてもよい。このとき、第4シーケンスには、第1乃至第3スライスとは異なるスライスに関するIRパルス、収集シーケンス、スポイラーパルスが組み込まれてもよい。
【0103】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態に係るMRI装置100によれば、第1スライスSL1に対して第1IRパルスIR1を印加し、第1IRパルスIR1の印加後に第1フリップ角を用いて第1スライスSL1に関する第1MRデータを収集し、第1MRデータの収集後に第1スポイラーパルスSp1を第1スライスSL1に印加する、第1シーケンスS1を第1心周期CC1において実行することができる。次いで、本MRI装置100は、第2スライスSL2に対して第2IRパルスIR2を印加し、第2IRパルスIR2の印加後に第1フリップ角を用いて第2MRデータを収集し、第2MRデータの収集後に第2IRパルスIR2を第2スライスSL2に印加し、第2IRパルスIR2の印加後に第2フリップ角を用いて第1リファレンスデータを収集する、第2シーケンスS2を第2心周期CC2で実行することができる。次いで、本MRI装置100は、第3スライスに対して第3IRパルスIR3を印加し、第3IRパルスIR3の印加後に第1フリップ角を用いて第3MRデータを収集し、第3MRデータの収集後に第3スポイラーパルスSp3を第3スライスに印加し、第3スポイラーパルスSp3の印加後に第2フリップ角を用いて第2リファレンスデータを収集する、第3シーケンスS3を第3心周期CC3で実行することができる。次いで、本MRI装置100は、第4心周期CC4のうち第3スポイラーパルスIR3の印加の直後の心時相において、第2フリップ角を用いて第3リファレンスデータ収集する、第4シーケンスS4を実行することができる。
【0104】
以上のことから、本実施形態におけるMRI装置100によれば、PSIR法に関する撮像において、撮像時間を短縮することができる。加えて、本MRI装置100によれば、ステップSc1乃至ステップSc4の処理およびスライス各々の実画像の生成処理を繰り返す場合、同一スライスにおいてリファレンス収集シーケンスからMRデータの収集シーケンスまで、1心周期に亘る1心拍分の時間間隔を設けることができる。これにより、リファレンス収集シーケンスの実行直後の縦磁化を熱平衡状態に回復させることができる。このため、本MRI装置100によれば、第1乃至第3リファレンス収集シーケンス(R1、R2、R3)において、第1フリップ角以上の第2フリップ角、例えば、第1、第2の実施形態におけフリップ角より大きい第2フリップ角を用いて第1乃至第3リファレンスデータを収集することができる。MR画像におけるSNRは、フリップ角が大きいほど大きくなるため、本実施形態のMRI装置100によれば、位相補正に用いられる第1乃至第3位相補正用データのSNRを向上させることができる。これにより、本MRI装置100によれば、位相補正の精度が向上し、実画像の画質を向上させることができる。
【0105】
また、本実施形態における変形例として、第1の実施形態のように、第1IRパルスIR1および第1スポイラーパルスSp1を第1領域Re1に印加し、第2IRパルスIR2および第2スポイラーパルスSp2を第2領域Re2に印加し、第1領域Re1および第2領域Re2とは異なり第3スライスを含む第3領域に対して第3IRパルスIR3および第3スポイラーパルスSp3を印加してもよい。加えて、撮像対象のスライスが4スライスである場合、IRパルスによる領域間の干渉を避けるために、スライスを包含する領域を挟む2つの領域について、順にIRパルスを印加し、MRデータを収集してもよい。また、本実施形態におけるさらなる変形例として、第1の実施形態の変形例のように、マルチバンド撮像が本実施形態に適用されてもよい。
【0106】
また、本実施形態における変形例として、第2の実施形態のように、第2MRデータの収集の直前に第1リファレンスデータを第1スライスSL1においてさらに収集し、第3MRデータの収集の直前に第2リファレンスデータを第2スライスSL2においてさらに収集し、第4心周期CC4のうち第3MRデータの収集タイミングの直前の心時相において、第3リファレンスデータを第3スライスにおいてさらに収集してもよい。これらの変形例における処理内容及び効果は、第1の実施形態および第1の実施形態の変形例、および第2の実施形態に準拠するため、説明は省略する。
【0107】
また、第1、第2の実施形態の変形例として、リファレンス収集シーケンスの直後にスポイラーパルスが実施されてもよい。このとき、いずれの実施形態および変形例等においても、第2フリップ角を第1フリップ角以上にすることができ、位相補正の精度が向上し、実画像の画質を向上させることができる。
【0108】
以上述べた実施形態および少なくとも一つの変形例等のMRI装置100によれば、PSIR法に関する撮像において、撮像時間を短縮することができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
100…磁気共鳴イメージング装置、101…静磁場磁石、103…傾斜磁場コイル、105…傾斜磁場電源、107…寝台、109…寝台制御回路、111…ボア、113…送信回路、115…送信コイル、117…受信コイル、119…受信回路、121…シーケンス制御回路、123…バス、125…インタフェース、127…ディスプレイ、129…記憶装置、131…処理回路、1071…天板、1311…システム制御機能、1313…画像生成機能、CC1…第1心周期、CC2…第2心周期、CC3…第3心周期、CC4…第4心周期、IR1…第1IRパルス、IR2…第2IRパルス、IR3…第3IRパルス、M1…第1収集シーケンス、M2…第2収集シーケンス、M3…第3収集シーケンス、R1…第1リファレンス収集シーケンス、R1-1…第1-1リファレンス収集シーケンス、R1-2…第1-2リファレンス収集シーケンス、R2…第2リファレンス収集シーケンス、R2-1…第2-1リファレンス収集シーケンス、R2-2…第2-2リファレンス収集シーケンス、R3…第3リファレンス収集シーケンス、Re1…第1領域、Re2…第2領域、S1…第1シーケンス、S2…第2シーケンス、S3…第3シーケンス、S4…第4シーケンス、SL1…第1スライス、SL2…第2スライス、SL1-1、SL1-2…第1スライスに包含されるスライス、SL2-1、SL2-2…第2スライスに包含されるスライス、Sp1…第1スポイラーパルス、Sp2…第2スポイラーパルス、Sp3…第3スポイラーパルス。