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特許6996937囲い式フード装置及びその排気風量制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】囲い式フード装置及びその排気風量制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20220107BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220107BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 C
B01L1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017207089
(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公開番号】P2019078503
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 聡
(72)【発明者】
【氏名】新村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中岡 将士
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 佑紀
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104469(JP,A)
【文献】特開平08-285358(JP,A)
【文献】特開平05-165529(JP,A)
【文献】特開平07-055212(JP,A)
【文献】特開2009-036426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
B01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁と扉とにより囲まれた空間と、該空間からの排気が流通する排気管と、該排気管を通じて前記空間から排気を行うファンとを備えた囲い式フード装置の排気風量制御方法であって、
前記排気管の途中にモータにより開度を操作可能なダンパを備え、
前記排気管内の前記ダンパの上流側における実測圧力値が、前記扉の開度に基づき算出される設定圧力値に近づくよう、前記ダンパの開度を前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号により調整するフィードバック制御を実行すると共に、
前記扉の開度変化が0.5秒以上3秒以下の値である所定の時間以内に開度20%以上の所定値以上あった場合に、前記扉の開閉動作が加えられたと検出し、前記ダンパに対し所定の操作量の開度操作を前記モータへ開度に応じ固定された開度信号により行うフィードフォワード制御を実行することを特徴とする囲い式フード装置の排気風量制御方法。
【請求項2】
前記フィードフォワード制御において前記ダンパに対して行う開度操作の単位時間当たりの操作量は、前記囲い式フード装置において前記フィードバック制御だけを実行しつつ前記扉の開閉動作が加えられた場合におけ前記ダンパの開度の前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号での変化量に基づき別途決定されることを特徴とする請求項1に記載の囲い式フード装置の排気風量制御方法。
【請求項3】
前記フィードフォワード制御において前記ダンパに対して行う開度操作の単位時間当たりの操作量は、前記ダンパの開度の前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号での変化量に基づき仮に決定されたあと、さらに前記囲い式フード装置において前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行しつつ前記扉の開閉動作が加えられた場合における、前記ダンパの開度の変化量に基づき別途決定されることを特徴とする請求項2に記載の囲い式フード装置の排気風量制御方法
【請求項4】
複数の前記囲い式フード装置の排気管を合流させ、
各囲い式フード装置において、前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行すると共に、
一の囲い式フード装置のダンパに対し、他の囲い式フード装置の扉に開閉動作が加えられた際に所定の操作量の開度操作を行うフィードフォワード制御を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の囲い式フード装置の排気風量制御方法
【請求項5】
壁と扉とにより囲まれた空間と、
該空間からの排気が流通する排気管と、
該排気管を通じて前記空間から排気を行うファンと、
該排気管の途中にモータにより開度を操作可能に設置されるダンパと、
前記扉の開度を検出する開度センサと、
前記ダンパの上流側における前記排気管内の圧力を検出する圧力センサとを備え、
前記排気管内の前記ダンパの上流側における実測圧力値が、前記扉の開度に基づき算出される設定圧力値に近づくよう、前記ダンパの開度を前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号により調整するフィードバック制御を実行すると共に、
前記扉の開度変化が0.5秒以上3秒以下の値である所定の時間以内に開度20%以上の所定値以上あった場合に、前記扉に開閉動作が加えられたと検出した際に、前記ダンパに対し所定の操作量の開度操作を前記モータへ開度に応じ固定された開度信号により行うフィードフォワード制御を実行するよう構成されていることを特徴とする囲い式フード装置。
【請求項6】
複数の前記囲い式フード装置の排気管が合流し、
各囲い式フード装置において、前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行すると共に、
一の囲い式フード装置のダンパに対し、他の囲い式フード装置の扉に開閉動作が加えられた際に所定の操作量の開度操作を行うフィードフォワード制御を実行するよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の囲い式フード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品の取り扱い等に用いられる囲い式フード装置の排気風量を制御するための方法、及びこれを適用した囲い式フード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶媒や化学薬品等を取り扱う際には、作業者の安全のために囲い式フード装置が用いられる場合がある。囲い式フード装置は、作業台の上など所定の空間を囲うと共に該空間からの排気を行う装置であり、局所排気装置やドラフトチャンバ、ヒュームフード等とも呼称される。囲いの一部は上下に開閉する扉になっており、作業者は、前記扉の下方の開口部から前記作業台の上に腕を差し入れて作業を行う。囲いの内側の前記空間からは排気が行われるので、前記空間内に置かれた化学薬品等から有害なガス等が生じても、前記空間から排出することができる。また、排気に伴い、前記扉の開口部には外部から前記空間に向かう気流が生じるので、空間内のガス等が前記開口部から外部に漏れてしまうような事態は防止される。
【0003】
ここで、開口部において前記空間に向けて通過する風に関しては、取り扱う物質によって必要な風速が規定されており、前記扉の開度にかかわらず一定以上の通過風速を保たなくてはならない。
【0004】
前記開口部における通過風速は、前記空間からの排気風量と、前記開口部の面積すなわち前記扉の開度によって決まる。したがって、所定の通過風速を保つためには、扉の開度に応じて排気風量を変化させる必要がある。
【0005】
一方、扉の開閉は、作業者によって1秒未満からせいぜい数秒程度の短時間で行われ、扉の開度は急激に変化することが通常である。このため、扉の開度が急に変化しても所定の通過風速を保つことができるよう、排気風量を速やかに変化する機構が必要となる。
【0006】
こうした風量制御に関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-223540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如き囲い式フード装置における風量制御には、例えば、可変開度式の羽根を備えた変風量装置が用いられる。しかしながら、この種の変風量装置はそれ自体が複雑な機構を有する高額な機器である上、風量制御の機能を十分に発揮させるためには前記変風量装置の前後の差圧を高く保つ必要があり、圧力損失のためにランニングコストが嵩んでしまう。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、扉の開閉への排気風量の好適な追従性をシンプル且つ低コストで実現し得る囲い式フード装置及びその排気風量制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、壁と扉とにより囲まれた空間と、該空間からの排気が流通する排気管と、該排気管を通じて前記空間から排気を行うファンとを備えた囲い式フード装置の排気風量制御方法であって、前記排気管の途中にモータにより開度を操作可能なダンパを備え、前記排気管内の前記ダンパの上流側における実測圧力値が、前記扉の開度に基づき算出される設定圧力値に近づくよう、前記ダンパの開度を前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号により調整するフィードバック制御を実行すると共に、前記扉の開度変化が0.5秒以上3秒以下の値である所定の時間以内に開度20%以上の所定値以上あった場合に、前記扉の開閉動作が加えられたと検出し、前記ダンパに対し所定の操作量の開度操作を前記モータへ開度に応じ固定された開度信号により行うフィードフォワード制御を実行することを特徴とする囲い式フード装置の排気風量制御方法にかかるものである。
【0011】
本発明の囲い式フード装置の排気風量制御方法において、前記フィードフォワード制御において前記ダンパに対して行う開度操作の単位時間当たりの操作量は、前記囲い式フード装置において前記フィードバック制御だけを実行しつつ前記扉の開閉動作が加えられた場合におけ前記ダンパの開度の前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号での変化量に基づき別途決定することができる。
【0012】
本発明の囲い式フード装置の排気風量制御方法において、前記フィードフォワード制御において前記ダンパに対して行う開度操作の単位時間当たりの操作量は、前記ダンパの開度の前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号での変化量に基づき仮に決定されたあと、さらに前記囲い式フード装置において前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行しつつ前記扉の開閉動作が加えられた場合における、前記ダンパの開度の変化量に基づき別途決定することができる。
【0013】
本発明の囲い式フード装置の排気風量制御方法においては、複数の前記囲い式フード装置の排気管を合流させ、各囲い式フード装置において、前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行すると共に、一の囲い式フード装置のダンパに対し、他の囲い式フード装置の扉に開閉動作が加えられた際に所定の操作量の開度操作を行うフィードフォワード制御を実行することができる。
【0014】
また、本発明は、壁と扉とにより囲まれた空間と、該空間からの排気が流通する排気管と、該排気管を通じて前記空間から排気を行うファンと、該排気管の途中にモータにより開度を操作可能に設置されるダンパと、前記扉の開度を検出する開度センサと、前記ダンパの上流側における前記排気管内の圧力を検出する圧力センサとを備え、前記排気管内の前記ダンパの上流側における実測圧力値が、前記扉の開度に基づき算出される設定圧力値に近づくよう、前記ダンパの開度を前記モータへ実測圧力値と設定圧力値との差に応じた開度信号により調整するフィードバック制御を実行すると共に、前記扉の開度変化が0.5秒以上3秒以下の値である所定の時間以内に開度20%以上の所定値以上あった場合に、前記扉に開閉動作が加えられたと検出した際に、前記ダンパに対し所定の操作量の開度操作を前記モータへ開度に応じ固定された開度信号により行うフィードフォワード制御を実行するよう構成されていることを特徴とする囲い式フード装置にかかるものである。
【0015】
本発明の囲い式フード装置は、複数の前記囲い式フード装置の排気管が合流し、各囲い式フード装置は、前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行すると共に、一の囲い式フード装置のダンパに対し、他の囲い式フード装置の扉に開閉動作が加えられた際に所定の操作量の開度操作を行うフィードフォワード制御を実行するよう構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の囲い式フード装置及びその排気風量制御方法によれば、扉の開閉への排気風量の好適な追従性をシンプル且つ低コストで実現し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施例による囲い式フード装置の形態を示す概要図である。
図2】囲い式フード装置を通過する空気の抵抗係数と、扉の開度やダンパ開度との関係の一例を説明するグラフである。
図3】ダンパ開度のフィードバック制御に関し、設定圧力値と実測圧力値の差と、ダンパに対して加える開度操作の操作量の関係の一例を説明するグラフである。
図4】ダンパ開度に対するフィードバック制御の手順の一例を説明するフローチャートである。
図5】ダンパ開度のフィードフォワード制御において、ダンパに対して加えられる開度操作の一例を説明するグラフである。
図6】ダンパ開度に対するフィードフォワード制御の手順の一例を説明するフローチャートである。
図7】本発明の第一実施例において、扉の開動作に伴う差圧の変動の一例を説明するグラフである。
図8】フィードフォワード制御におけるダンパ開度の操作量を決定するための試験の一工程において、フィードバック制御のみを実行した場合の扉の開動作に伴う差圧及びダンパ開度の変動の一例を説明するグラフである。
図9】フィードフォワード制御におけるダンパ開度の操作量を決定するための試験の別の一工程における差圧の変動の一例を説明するグラフである。
図10】フィードフォワード制御におけるダンパ開度の操作量を決定するための試験の手順の一例を説明するフローチャートである。
図11】本発明の第二実施例による囲い式フード装置の形態を示す概要図である。
図12】本発明の第二実施例における差圧の変動の一例を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の実施による囲い式フード装置の形態の一例を示している。本第一実施例の囲い式フード装置1は、作業台2の上方に壁3と扉4とに囲まれた空間Sを形成している。空間Sの上方には排気管6が接続され、該排気管6の下流側に設けたファン5により空間S内のガスを排気するようになっている。排気管6のファン5より上流側の位置にはモータ7aを備えたダンパ7が配置されており、モータ7aの動作によりダンパ7の開度を変更することで、排気管6における排気風量を調節できるようになっている。ダンパ7の開度は、制御装置8からモータ7aに対し入力される操作信号7bに従って制御される。
【0020】
囲い式フード装置1の前面にあたる扉4の開度は、開度センサ9により検出され、開度信号9aとして制御装置8に入力される。また、排気管6におけるダンパ7の上流側の位置には圧力センサ10が設置されており、排気管6内の圧力を外部との差圧として検出するようになっている。圧力センサ10の検出値は、圧力信号10aとして制御装置8に入力されるようになっている。
【0021】
次に、上記した本第一実施例の作動を説明する。
【0022】
囲い式フード装置1の稼働時、排気風量はダンパ7の開度を調整することで制御される。空間Sから排気管6を通して排気される実際の排気風量(実風量)は、以下の式により求められる。
[式1]
ΔP=ξ×ρu/2
[式2]
Q=3600×Av
[式3]
Q=3600×Bu
[式4]
ξ=a×ebA
【0023】
Aは扉4の開口部の面積[m]であり、開度センサ9の検出値から得られる。Bは排気管6の断面積[m]であり、定数である。ΔPは圧力センサ10の検出値として得られる圧力値であり、排気管6内と外部との差圧[Pa]である。ρは空気の密度[kg/m]であり、定数である。Qは排気管6内を流れる排気の風量[m/h]、uは排気管6を流通する風の風速[m/s]、vは扉4の開口部を通過する風の風速[m/s]である。ξは空気が囲い式フード装置1を通過する際の抵抗係数であり、扉4の開度やダンパ7の開度(ダンパ開度θとする)の関数である。抵抗係数ξは、扉4の開度やダンパ開度θに対し、例えば図2に示す如き関係を示す。そして、このような関係を予め囲い式フード装置1の実機にて測定して各条件における上記式4の係数aや指数bを決定し、関数やテーブルとして制御装置8に入力しておくことで、扉4の開度やダンパ開度θから算出できる。
【0024】
ファン5が一定の出力により作動し、扉4の開度及びダンパ開度θが一定である場合、u、vの値、及びQ、ΔP、ξの値は一定である。ここで、扉4に対し作業者によって開閉動作が加えられると、扉4における開口面積が変わるため、囲い式フード装置1に要求される排気風量(設定風量)が変動し、実風量が設定風量と乖離する。同時に、差圧ΔPの実測値や、実際の風速u、vや風量Qも影響を受けて変動する。そこで、実風量と設定風量との乖離を解消するために、ダンパ開度θを操作して風量Qを調整する必要がある。
【0025】
本第一実施例では、設定風量から算出される必要な差圧ΔPの値(設定圧力値SPとする)と、圧力センサ10において検出される差圧ΔPの値(実測圧力値PVとする)とに基づき、ダンパ7の開度に対してフィードバック制御を行うようにしている。具体的には、制御装置8において、まず設定圧力値SPを求める。設定圧力値SPは、開度センサ9から得られる扉4の開度と、設定風量とを用い、上記式1~式4により算出できる。そして、例えば図3に示す如く、設定圧力値SPと実測圧力値PVとの差に応じてダンパ開度θを調整する。SP-PVの値が正であれば(すなわち、設定圧力値SPに対して実測圧力値PVが小さければ)ダンパ開度θを大きくし、SP-PVの値が負であれば(すなわち、設定圧力値SPより実測圧力値PVの方が大きければ)ダンパ開度θを小さくするようダンパ7を操作する。ダンパ7の操作量は、SP-PVの絶対値が大きいほど大きくする。こうして、実測圧力値PVが設定圧力値SPに近づくよう、ダンパ開度θを調整する。この調整操作は実測圧力値PVが設定圧力値SPの近傍に収束するまで行い、実測圧力値PVが設定圧力値SPに対して所定の範囲に入ったら(例えば、実測圧力値PVが設定圧力値SPの0.9倍以上1.1倍以下となったら、あるいは、実測圧力値PVが設定圧力値SPと一致したら)、モータ7aの動作を停止する。これにより、ダンパ開度θや差圧ΔP及び実風量が整定される。尚、ここではダンパ開度θの操作量がSP-PVの値に比例するような制御を例示したが、これは一例であって、ダンパ7の開度制御には、フィードバック制御として用いられる通常の方法を適宜用いることができる。
【0026】
こうしたフィードバック制御に係る手順は、図4に示す如きフローチャートにて表される。まずステップS1として、開度センサ9の検出値と設定風量から設定圧力値SPを算出する。ステップS2として、圧力センサ10の検出値として実測圧力値PVを取得し、ステップS3として設定圧力値SPと実測圧力値PVとを比較する。実測圧力値PVが設定圧力値SPに対して所定の範囲内にあれば、ステップS4としてモータ7aの動作を停止し、ステップS1に戻る。ステップS3において、実測圧力値PVが設定圧力値SPに対して所定の範囲外にあった場合は、ステップS5に進み、SP-PVの値に応じてモータ7aを動作させ、ダンパ7の開度を調整したうえで再度ステップS1へ戻る。こうして、整定に至るまでダンパ7の開度調整を繰り返す。
【0027】
上述の如きフィードバック制御に加え、本第一実施例では、開度センサ9の検出値に応じ、ダンパ7に対してフィードフォワード制御を行う。このフィードフォワード制御は、扉4に対し一定以上の大きさの開閉動作が行われた場合に、ダンパ開度θを所定の量だけ速やかに変更するものである。
【0028】
フィードフォワード制御は、所定の時間以内における扉4の開度変化が所定値以上であった場合に実行される。ここで、「所定の時間」とは例えば0.5秒以上3秒以下の適当な値であり、扉4の開度変化に関する「所定値」とは例えば20%以上100%以下の適当な値である。そして、扉4の開度を制御装置8において開度センサ9からの開度信号9aとして時々刻々把握しておき、例えば1秒以内の間に開度が例えば50%以上大きくなった場合、扉4の開動作を検出したと判定し、ダンパ7に対し所定の角度の開操作を行って風量を増大させる(図5参照)。反対に、扉4の閉動作が検出された場合、すなわち、1秒以内の間に開度が50%以上小さくなった場合には、ダンパ7を所定の角度だけ閉じる操作を行って風量を減少させる。尚、フィードフォワード制御は、扉4が開動作された場合にのみ実行し、閉動作の場合には行わないようにしても良い。
【0029】
フィードフォワード制御に係る手順は、図6に示す如きフローチャートにて表される。ステップS11として、開度センサ9の検出値から扉4の開度を取得する。ステップS12として、所定時間前から現在までの間に扉4の開度が所定値以上変化したか否かを判断する。所定時間前から現在までの間における開度センサ9の検出値の変化量が所定値未満であった場合にはステップS11へ戻る。変化量が所定値以上であった場合にはステップS13へ進み、図5に示す如きダンパ7の開度操作を行う。ダンパ7の開度を操作した後はステップS11に戻り、以下のステップを繰り返す。
【0030】
囲い式フード装置1の稼働時、制御装置8では、上述の如きフィードバック制御(図3図4参照)とフィードフォワード制御(図5図6参照)とが平行して実行される。こうすることにより、風量の素早い操作を行い、整定までの時間を大幅に短縮することができる。
【0031】
フィードバック制御のみを実行することを仮定した場合における差圧ΔPの変化を図7に破線で示す。扉4をある開度としておくと、フィードバック制御により、実風量や差圧ΔP、ダンパ開度θは所定の値に整定される。この状態から、例えば扉4を引き上げる開操作を行うと、設定風量が上がると共に該設定風量から算出される設定圧力値SPが上がり、フィードバック制御によって実測圧力値PVが設定圧力値SP付近に達するまでダンパ7が操作される。差圧ΔPは、破線で示す如く時間をかけて上昇し、実測圧力値PVが要求圧力値SP付近まで上昇したところで整定される。また、図示は省略するが、扉4を引き下げる閉動作を行った場合には、これとは逆に実測圧力値PVが設定圧力値SP付近まで低下し、差圧ΔPが整定されるという変化を示す。尚、ここでは説明の都合上、差圧ΔPの変動を滑らかな線として図示しているが、実際には差圧ΔPの値は微視的に見て細かく上下する(後の図8図9図12に図示される差圧ΔPや、ダンパ開度θに関しても同様である)。
【0032】
このように、実測値を監視しながら微調整を繰り返すフィードバック制御では、差圧ΔPや実風量の整定までに時間を要する。すなわち、扉4の開閉動作の後、しばらくの間は実風量が設定風量と乖離してしまうことになる。そこで、本第一実施例では、フィードバック制御に加えてフィードフォワード制御を行うことで(図5図6参照)、整定までの時間を大幅に短縮するようにしている。上述の如く、フィードフォワード制御では、扉4の開閉動作を検知すると即ダンパ開度θを操作する。これにより、開閉動作を検知した直後に、ダンパ7が最終的に整定された状態における開度(以下、「目標開度」とする)付近まで操作されることになる。つまり、フィードバック制御のみであればダンパ7は微調整により時間をかけて整定状態のダンパ開度θまで操作されるところ、フィードフォワード制御により即時的に開度操作を加えることで、ダンパ開度θを目標開度付近まで素早く操作するようにしているのである。
【0033】
こうして、フィードバック制御にフィードフォワード制御を併用することで、図7に実線で示す如き速やかな整定が可能になる。ダンパ7を駆動するモータ7aとして高速モータを用いれば、整定までの時間を1秒以内に抑えることができる。
【0034】
この際、開度センサ9が、フィードバック制御において扉4の開度を検出する開度検出機構として機能するほか、フィードフォワード制御において扉4の開閉動作を検知する開閉動作検知機構としても機能することになる。このように、開度センサ9を兼用化することで、特別な構成を追加することなく、シンプルな構成によりフィードバック制御にフィードフォワード制御を併用することができる。
【0035】
ここで、フィードフォワード制御の場合、扉4の開度に基づき、その都度設定風量に即したダンパ開度θを算出してダンパ7を操作するわけではないため、フィードフォワード制御により、ダンパ開度θが必ずしも正確に目標開度付近に達するとは限らない。例えば、扉4を小さめに(つまり、フィードフォワード制御を行う閾値である前記「所定値」よりも少し大きい程度に)開動作した場合、該開動作の大きさに対して必要なダンパ開度θの操作量よりも大きい操作がフィードフォワード制御によりダンパ7に加わることで、ダンパ7の開度が目標開度より大きくなり、設定風量を実風量が超過するオーバーシュートが起こり得る。逆に、フィードフォワード制御によるダンパ開度θの操作量が、扉4の動作量に対して必要な操作量を下回った場合には、ダンパ7の開度が目標開度より小さくなり、設定風量を実風量が下回るアンダーシュートとなる。
【0036】
オーバーシュートやアンダーシュートが発生した場合、フィードバック制御によってダンパ開度θが微調整され、いずれ目標開度付近に整定されることになる。そして、オーバーシュートやアンダーシュートの量が過大でなければ、フィードフォワード制御直後のダンパ開度θは、フィードフォワード制御を行わない場合と比較すれば目標開度に近づくことになるため、やはり整定までの時間は短縮される。
【0037】
ただし、フィードフォワード制御時におけるオーバーシュートやアンダーシュートの量が大きすぎると、そこからフィードバック制御によりダンパ7を目標開度まで操作するのに結局、時間がかかってしまう。そこで、オーバーシュートやアンダーシュートの量が過大にならないよう、フィードフォワード制御におけるダンパ開度θの操作量は、予め適当な量に調整しておく必要がある。
【0038】
フィードフォワード制御におけるダンパ開度θの操作量(操作量Xとする)は、例えば以下の如き手順による試験を行うことで決定することができる。囲い式フード装置1の実機(図1参照)を稼働させ、制御装置8においてはダンパ7に対し上述のフィードバック制御(図3図4参照)を実行させる。この状態で扉4を最小開度としておくと、フィードバック制御により、実風量や実測圧力値PV、ダンパ開度θは所定の値に整定される。そこから扉4を最大開度まで引き上げると、設定風量が増大し、図8に示す如く、フィードバック制御によりダンパ開度θは徐々に大きく調整され(破線参照)、差圧ΔPは徐々に上昇し(実線参照)、実測圧力値PVが設定圧力値SP付近に達したところで差圧ΔPが整定される。
【0039】
そして、扉4を開動作してからフィードバック制御により差圧ΔPが整定されるまでの間におけるダンパ開度θの変化量(Xとする)に基づき、フィードフォワード制御におけるダンパ開度θの操作量Xを決定する。
【0040】
ただし、変化量Xを必ずしもそのまま操作量Xとして採用できるわけではない。上述の如くフィードバック制御において取得した変化量Xを、フィードフォワード制御のステップS13(図6参照)における操作量Xとしてそのまま用いると、大きなオーバーシュートやアンダーシュートが生じる可能性があるため、以下の手順にてさらに微調整を行う。
【0041】
囲い式フード装置1の実機を稼働させ、制御装置8においては上述のフィードバック制御(図3図4参照)に加え、フィードフォワード制御(図5図6参照)を実行する。扉4を最小開度とした状態で、実風量や差圧ΔP、ダンパ開度θを整定させる。この状態から、扉4を最大開度まで引き上げると、フィードフォワード制御が実行される。この際、フィードフォワード制御によるダンパ7の操作量Xとして、上で得た変化量Xを用いる。ここで、変化量Xの分だけ操作を加えたダンパ開度θが、結果的に整定時におけるダンパ開度θの値と近ければ、図9に実線で示す如く、差圧ΔPは速やかに整定される。一方、変化量Xが、扉4の開動作に対するダンパ開度θの操作量Xとして大きすぎれば破線で示す如く実風量のオーバーシュートが起こり、小さすぎれば一点鎖線で示す如くアンダーシュートが生じて、整定までに時間がかかる動作遅れが生じてしまう。
【0042】
オーバーシュートやアンダーシュートは、ある程度の範囲内であればその後、あまり時間をおかずにフィードバック制御により整定されるため問題ないが、もしオーバーシュートやアンダーシュートの量が大きければ、フィードフォワード制御に用いるダンパ7の操作量Xの値を、変化量Xからオーバーシュートやアンダーシュートが小さくなる(整定までの時間が短くなる)方向に適宜増減させ、再度囲い式フード装置1にて扉4を開動作してフィードバック制御とフィードフォワード制御を実行させる試験を行う。こうした工程を繰り返し、最終的に採用する操作量Xを決定すれば良い。
【0043】
このとき、繰り返しの過程においてちょうど最適な操作量Xが偶々得られればその値を採用すれば良いが、最適な操作量Xが得られるまで試験を何度も繰り返すには手間がかかる。そこで、オーバーシュートが生じた時の操作量Xを、オーバーシュートの度合に応じて適宜加減した量を最終的な操作量Xとして採用しても良い。すなわち、一旦、若干オーバーシュート気味になるように操作量Xを設定して試験を行ってから、当該試験の結果に応じて加減した操作量を最終的な操作量Xとするのである。このようにすれば、試験を何度も繰り返す手間を省きつつ、操作量Xの調整を行うことが可能である。
【0044】
あるいは、実風量の整定までのダンパ開度θの変化量Xに所定量(αとする)を加えた量を最終的な操作量Xとしても良い。つまり、X=X+αとするのである。この際、所定量αの値は、例えば変化量Xの10分の1以上且つ変化量X未満とする。この場合、扉4の開動作の度にダンパ7の動作が若干オーバーシュート気味にはなるものの、操作量Xの調整に係る手順が大幅に簡略化され、あるいは不要になる。
【0045】
尚、ここでは扉4を最小から最大まで開く場合を例として試験の手順を説明したが、扉4の閉動作時にフィードフォワード制御を実行する場合も、同様の手順にて操作量Xを決定することができる(このとき、図8図9に示す如き変化は上下が逆になる)。
【0046】
また、操作量Xとして最適な値は、厳密には扉4に対して加えられる開閉動作の大きさによって異なる。このため、例えば上述の試験において、扉4の開閉動作に関し複数の条件にてそれぞれ変化量Xを取得し、フィードフォワード制御においては、検出された扉4の開閉量に応じて異なる操作量Xを設定するようにしても良い。ただし、このように複数の条件下で上述の試験を何度も繰り返すことは非常に煩雑である。また、囲い式フード装置1の使用時において、扉4が細かく開閉されることはあまりない。仮にあったとしても、細かい開閉であればフィードバック制御のみによる調整で十分対応し得る。このため、通常は、上述の試験は扉4の開度を最小から最大、あるいは最大から最小へ変更する条件でのみ変化量Xを取得し、且つその後の調整により変化量Xを適宜増減させた量を操作量Xに設定するという手順で十分であると思われる。しかしながら、実際に囲い式フード装置1を運用するにあたり、扉4の開閉時、開閉動作の大きさによってオーバーシュートやアンダーシュートが頻繁にあるいは過度に発生するようであれば、例えば扉4の動作量に応じ、操作量Xとして複数の値を使い分けるようにしても良いことは勿論である。
【0047】
上述の如き操作量Xの決定に係る試験の手順は、例えば図10に示す如きフローチャートで表される。ステップS21として、囲い式フード装置1にてフィードバック制御のみを実行させつつ、扉4の開閉動作(例えば、最小開度から最大開度までの開動作)を行う。次に、ステップS22として、実風量の整定までのダンパ開度θの変化量Xを算出する。ステップS23として、囲い式フード装置1にてフィードバック制御とフィードフォワード制御とを実行させつつ、扉4の開閉動作を行う。フィードフォワード制御の際の操作量Xとしては、ステップS22で取得した変化量Xを用いる。ステップS24として、ステップS23におけるオーバーシュートやアンダーシュートの有無及び大きさを判定する。オーバーシュートやアンダーシュートが生じていないか、生じたとしても所定の範囲内であった場合(つまり、ステップS23において、扉の開閉動作から整定までの時間が許容し得る範囲内であった場合)には、直前のステップS23で用いた操作量Xを、フィードフォワード制御時の操作量として採用し(ステップS25)、試験を終了する。オーバーシュート又はアンダーシュートが生じ、且つその値が所定の範囲を超えていた場合には、先のステップS23で用いた操作量Xを適宜増減したうえで(ステップS26)、再度ステップS23の工程と、ステップS24の判定を実行する。こうして、フィードフォワード制御時に最終的に採用する操作量Xが決定される。
【0048】
尚、ステップS23~S24においては、上述の如く、若干オーバーシュート気味になるように操作量Xを設定して試験を行ってから、当該試験の結果に応じて加減した操作量を最終的な操作量Xとして採用しても良いし、また、実風量の整定までのダンパ開度θの変化量Xに所定量αを加えた量を最終的な操作量Xとしても良い。
【0049】
こうして、本第一実施例の囲い式フード装置1では、扉4の開閉に伴う風量の操作に関し、フィードバック制御にフィードフォワード制御を併用することで、ダンパ開度θないし差圧ΔPや実風量を短い時間で整定することができる。そして、フィードフォワード制御の際、ダンパ7に対して加えられる操作量Xは、フィードバック制御におけるダンパ開度θの変化量Xに基づき、過大なオーバーシュートやアンダーシュートが生じないよう、適宜設定することができる。
【0050】
この際、フィードバック制御やフィードフォワード制御は、排気管6内の圧力及び扉4の開度に基づき、ダンパ7を操作することで実行されるため、変風量装置は不要である。高価な変風量装置を設置することなく、モータ7aを備えたダンパ7により風量を好適に制御することができ、設備投資を抑えることができる。しかも、変風量装置により風量操作を行う場合、前記変風量装置の前後には大きな差圧が要求されるが、本第一実施例の如くダンパ7により風量操作を行う場合には、前後差圧はさほど大きくなくて良く、ランニングコストも抑えられることになる。
【0051】
また、扉4の開度に基づいてダンパ7の開度に対しフィードバック制御を行う方式は、例えば排気管に備えた変風量装置の前後における差圧に基づいて風量制御を行う方式等と比較して必要な演算が簡単であるというメリットもある。
【0052】
以上のように、上記本第一実施例においては、壁3と扉4とにより囲まれた空間Sと、該空間Sからの排気が流通する排気管6と、該排気管6を通じて空間Sから排気を行うファン5とを備えた囲い式フード装置の排気風量制御方法に関し、排気管6の途中に開度を操作可能なダンパ7を備え、排気管6内のダンパ7の上流側における実測圧力値が、扉4の開度に基づき算出される設定圧力値に近づくよう、ダンパ7の開度を調整するフィードバック制御を実行すると共に、扉4に開閉動作が加えられた際に、ダンパ7に対し所定の操作量の開度操作を行うフィードフォワード制御を実行するようにしている。フィードバック制御に加え、フィードフォワード制御により即時的に開度操作を行うことで、ダンパ7の開度を目標開度付近まで素早く操作し、風量を速やかに整定することができる。
【0053】
また、本第一実施例において、フィードフォワード制御において前記ダンパ7に対して行う開度操作の操作量は、囲い式フード装置1において前記フィードバック制御を実行しつつ扉4の開閉動作を行った場合におけるダンパ7の開度の変化量に基づき決定することができる。
【0054】
したがって、第一実施例によれば、扉の開閉への排気風量の好適な追従性をシンプル且つ低コストで実現し得る。
【0055】
図11は本発明の実施による囲い式フード装置の形態の別の一例を示している。本第二実施例においては、複数(ここでは3台)の囲い式フード装置101,201,301を備えた構成を取っており、これら3台の囲い式フード装置101,201,301の各排気管106,206,306は、下流で一本に合流して外部に連通している。排気管106,206,306の合流点より下流の位置には、ファン5が設置されている。
【0056】
各囲い式フード装置101,201,301の構成は、上記第一実施例の囲い式フード装置1(図1参照)と同様であり、それぞれ作業台102,202,302の上方に壁103,203,303と扉104,204,304に囲まれた空間A,B,Cを形成している。空間A,B,Cの上方には排気管106,206,306がそれぞれ接続され、各空間A,B,Cからファン5により排気を行うようになっている。
【0057】
排気管106,206,306の途中にはそれぞれモータ107a,207a,307aを備えたダンパ107,207,307が配置され、各制御装置108,208,308からモータ107a,207a,307aに対してそれぞれ入力される操作信号107b,207b,307bに従って開度が制御される。
【0058】
各扉104,204,304の開度は、それぞれ開度センサ109,209,309により検出され、開度信号109a,209a,309aとして各制御装置108,208,308に入力される。また、各排気管106,206,306におけるダンパ107,207,307より上流の位置にはそれぞれ圧力センサ110,210,310が設置されている。各圧力センサ110,210,310の検出値は、それぞれ圧力信号110a,210a,310aとして各制御装置108,208,308に入力される。
【0059】
ここで、開度センサ109,209,309の開度信号109a,209a,309aは、それぞれが制御装置108,208,308のいずれもに入力されるようになっている。後述するように、他の囲い式フード装置の扉の開度情報に基づき、一の囲い式フード装置のダンパの開度を操作するための構成である。
【0060】
操作信号107b,207b,307bに関しては、制御装置108からモータ107aへ、制御装置208からモータ207aへ、制御装置308からモータ307aへ、それぞれ個別に入力される。また、圧力信号110a,210a,310aに関しても、圧力センサ110から制御装置108へ、圧力センサ210から制御装置208へ、圧力センサ310から制御装置308へ、それぞれ入力されるようになっていれば十分である。
【0061】
各囲い式フード装置においては、上記第一実施例(図1参照)と同様のフィードバック制御やフィードフォワード制御が実行されるようになっている。
【0062】
ここで、本第二実施例の如く、複数の囲い式フード装置101,201,301間で排気管106,206,306同士が連結されている場合、ある囲い式フード装置における排気管内の圧力や排気風量が、別の囲い式フード装置における扉の開閉動作の影響を受ける。例えば、囲い式フード装置101の扉104を開動作すると、排気管106内の圧力の絶対値が上がるのに連動して他の囲い式フード装置201,301の排気管206,306内の圧力も影響を受け、囲い式フード装置101の風量のみならず囲い式フード装置201,301の風量も変動する。こうした囲い式フード装置間における扉の開閉動作の影響は、各囲い式フード装置においてそれぞれフィードバック制御(図3図4参照)を実行していれば自動的に是正されるものではあるが、フィードバック制御のみに頼ると整定までに時間がかかってしまう。
【0063】
そこで、本第二実施例では、一の囲い式フード装置において、該一の囲い式フード装置における扉の開閉に応じてダンパ開度に対しフィードバック制御やフィードフォワード制御を実行することに加え、他の囲い式フード装置における扉の開閉をも検知し、一の囲い式フード装置のダンパ開度に対しフィードバック制御やフィードフォワード制御を実行するようにしている。
【0064】
例えば、各囲い式フード装置において、他の囲い式フード装置における扉の開閉動作に対し、フィードバック制御のみによりダンパの開閉操作を行う場合を仮定する。この場合、例えば囲い式フード装置201の扉204が開動作されると、排気管206内における差圧ΔPが増加する一方、その他の囲い式フード装置101の排気管106内では差圧ΔPは一旦低下する(図12中の破線参照)。その後、囲い式フード装置101において実行されるフィードバック制御により、排気管106内の差圧ΔPは時間をかけて回復することになる。尚、ここでは囲い式フード装置101の排気管106における圧力変動を説明しているが、囲い式フード装置301の排気管306内の圧力にも同様の変動が生じる。
【0065】
ここで、囲い式フード装置101において、囲い式フード装置201の扉204の開閉動作を検知してフィードフォワード制御(図5図6参照)を実行させるようにする。囲い式フード装置201における扉204の開閉は、開度センサ209から制御装置108に入力される開度信号209aにより検知することができる。フィードフォワード制御におけるダンパ107の操作量が適切であれば、例えば図12中に実線で示す如く、扉204の開動作が行われた際の囲い式フード装置201における差圧ΔPの変動は最小限に抑えられる。こうして、一の囲い式フード装置において、他の囲い式フード装置における扉の開閉により差圧ΔPや実風量が受ける影響を抑え、速やかに実風量を整定することができる。
【0066】
扉204の開閉動作に伴う囲い式フード装置101でのフィードフォワード制御において要求されるダンパ107の操作量は、扉104の開閉動作に伴うフィードフォワード制御において要求される操作量とは異なる。ダンパ107の操作量が適切でない場合、図12中に一点鎖線や二点鎖線で示す如く、オーバーシュートやアンダーシュートが生じ、この量が過大であれば実風量と設定風量とが乖離する時間が長く生じてしまうことになる。そこで、他の囲い式フード装置の扉の開閉動作に伴う一の囲い式フード装置のフィードフォワード制御におけるダンパの操作量を決定するにあたっては、各囲い式フード装置同士の組み合わせ毎に個別に決定すべきである。
【0067】
ダンパの操作量を決定するための試験の手順は、基本的に図10に示す手順と同様で良い。具体的には、本第二実施例の場合、まず囲い式フード装置101に関し、フィードバック制御を実行しながら囲い式フード装置201の扉204の開閉を行い(ステップS21)、整定までのダンパ107の開度の変化量Xを算出する(ステップS22)。次に、フィードバック制御のほか、フィードフォワード制御を囲い式フード装置101で実行しながら、囲い式フード装置201の扉204の開閉動作を行う(ステップS23)。この際、ダンパ107の操作量Xとしては、ステップS22で得た変化量Xを用いる。ステップS24における判定に応じ、ステップS25に進むか、ステップS26に進んで操作量Xを増減しながら再度ステップS23やステップS24を繰り返し、最終的なダンパ107の操作量Xを決定する。
【0068】
続いて同様に、囲い式フード装置101の制御を実行しながら囲い式フード装置301の扉304を開閉し、操作量Xを決定する。さらに、その他の囲い式フード装置についても同様の試験を行う。囲い式フード装置201の制御を実行しながら囲い式フード装置101の扉104を開閉し、同様の手順で操作量Xを決定する。さらに、囲い式フード装置201の制御を実行しながら囲い式フード装置301の扉304を開閉し、同様の手順で操作量Xを決定する。囲い式フード装置301に関しても、囲い式フード装置101,201の扉104,204を開閉する試験を行い、同様の手順で操作量Xを決定すれば良い。
【0069】
以上のように、上記本第二実施例においては、複数の囲い式フード装置101,201,301の排気管106,206,306を合流させ、各囲い式フード装置101,201,301において、前記フィードバック制御及び前記フィードフォワード制御を実行すると共に、一の囲い式フード装置のダンパに対し、他の囲い式フード装置の扉に開閉動作が加えられた際に所定の操作量の開度操作を行うフィードフォワード制御を実行するようにしている。一の囲い式フード装置において、他の囲い式フード装置における扉の開閉を検知してフィードフォワード制御を実行することで、他の囲い式フード装置における扉の開閉により一の囲い式フード装置の実風量が受ける影響を抑え、速やかに実風量を整定することができる。
【0070】
本発明の囲い式フード装置の排気風量制御方法において、前記他の囲い式フード装置の扉の開閉動作に伴い前記一の囲い式フード装置で実行される前記フィードフォワード制御における前記ダンパの開度に対する操作量は、前記一の囲い式フード装置において前記フィードバック制御を実行しつつ前記他の囲い式フード装置の扉の開閉動作を行った場合における前記一の囲い式フード装置の前記ダンパの開度の変化量に基づき決定することができる。
【0071】
その他の構成や作用効果については上記第一実施例と同様であるため説明を省略するが、本第二実施例によっても、扉の開閉への排気風量の好適な追従性をシンプル且つ低コストで実現し得る。
【0072】
尚、本発明の囲い式フード装置及びその排気風量制御方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1 囲い式フード装置
3 壁
4 扉
5 ファン
6 排気管
7 ダンパ
9 開度センサ
10 圧力センサ
101 囲い式フード装置
103 壁
104 扉
106 排気管
107 ダンパ
109 開度センサ
110 圧力センサ
201 囲い式フード装置
203 壁
204 扉
206 排気管
207 ダンパ
209 開度センサ
210 圧力センサ
301 囲い式フード装置
303 壁
304 扉
306 排気管
307 ダンパ
309 開度センサ
310 圧力センサ
S 空間
A 空間
B 空間
C 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12