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  • 特許-積層シート及び成形容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】積層シート及び成形容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220107BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220107BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/30 102
B65D1/00 111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017546554
(86)(22)【出願日】2016-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2016080876
(87)【国際公開番号】W WO2017069127
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-08-21
(31)【優先権主張番号】201510677358.2
(32)【優先日】2015-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】徳永 久次
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 成一
(72)【発明者】
【氏名】村岡 喬梓
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212682(JP,A)
【文献】特開平06-071825(JP,A)
【文献】特開2008-155433(JP,A)
【文献】特開2008-155432(JP,A)
【文献】特開2008-221808(JP,A)
【文献】特開2008-221733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D 1/00- 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール共重合体により構成される酸素バリア性樹脂層と、当該酸素バリア性樹脂層の両面に接着層を介してそれぞれ積層される生分解性樹脂層とを備え、
前記生分解性樹脂層の質量パーセント合計がシート全体の90%以上であるとともに、個々の生分解性樹脂層の質量パーセントがシート全体の10%以上であり、且つシート全体の酸素透過率が10cc/m2・day以下であり、
シート全体の厚みが200~1300μmであり、酸素バリア性樹脂層の厚みが20~40μmであることを特徴とする深絞りの容器成形用積層シート。
【請求項2】
前記生分解性樹脂層を構成する生分解性樹脂がポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、澱粉から選ばれる少なくとも1種を用いたことを特徴とする請求項1に記載の深絞りの容器成形用積層シート。
【請求項3】
前記生分解性樹脂がポリ乳酸を用いたことを特徴とする請求項2に記載の深絞りの容器成形用積層シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の深絞りの容器成形用積層シートを熱成形してなる成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートに関わり、具体的には完全分解型の生分解性バリアシート及びそれを熱成形してなる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック廃棄物の増大が大きな社会問題になっている。従来、高分子材料の多くは、高性能と長期安定性を目的に開発され、生産されてきたので、自然環境の中では容易に分解されない。したがって、不要となった大量のプラスチック廃棄物をどのように処分し、管理するかが世界的規模で社会問題となっている。これらのプラスチック廃棄物の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の各種合成樹脂から形成された容器は、嵩高いために、特に問題となっている。
【0003】
こうした中、包装業界では再生可能資源から作られたプラスチックの需要が高まっている。プラスチックが環境に与える影響に関する消費者の意識が高まるにつれて、消費者は、製品を包装する容器が再生可能資源から作られたものであることを求めるようになっている。
【0004】
中でもポリ乳酸(PLA)に代表されるような生分解性プラスチックは、さまざまな包装材料として利用可能であるが、ポリオレフィンに比べてガス透過性が高く、そのため、酸素の存在中で劣化する製品の包装にはあまり適さない。そのため、酸素の透過を抑制するような機能性を付与した材料が求められる。
【0005】
例えば特許文献1には、ポリ乳酸と酸素捕捉剤から成る物品について記載されている。その酸素捕捉剤は、下記の群から選択されるとしている。
・酸化し得る化合物と遷移金属触媒
・エチレン系不飽和炭化水素と遷移金属触媒
・アスコルビン酸塩
・イソアスコルビン酸塩
・亜硫酸塩
・アスコルビン酸塩と遷移金属触媒(この触媒は単純金属または塩からなるもの)
・遷移金属の化合物、錯体またはキレート
・ポリカルボン酸、サリチル酸またはポリアミンの遷移金属錯体またはキレート
・タンニン
また、物品の形状は、フィルム、被覆、ライナー、その他の形態であってよいとしている。
しかし、特許文献1で提案されているPLAと酸素捕捉剤から成る物品について、酸素捕捉剤とは限られた空間を持つ密閉環境の中で脱酸素状態を作り出す目的で使用されるものが一般的であり、熱成形して外気からの酸素透過を抑制するような用途には限界がある。
【0006】
また、特許文献2には、生分解性基材と還元鉄粒子とを含み、この還元鉄粒子が適正な濃度で存在することで酸素を吸収し、鉄粒子が存在しない場合の変形温度よりも実質的に下げるのに十分な濃度を指定した生分解性酸素吸収性のプラスチックが提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載の構成としては、フォイル層(箔層)、接着剤層、鉄ベースの酸素吸収剤を有するPLA層、および封止材層から成る多層積層構造が提案されており、当該構造を有するものは完全分解型の分解度を有さないことが容易に予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6908652号
【文献】WO2011/142871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、優れた熱成形性、酸素バリア性をあわせ持ち、且つ、堆肥化での微生物分解(生分解)によって二酸化炭素や水へと変化し、自然へ戻す事が可能である積層シート、及びそれを熱成形してなる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決るための手段】
【0009】
本発明の積層シートは、酸素バリア性樹脂層と、当該酸素バリア性樹脂層の両面に接着層を介して積層される生分解性樹脂層とを備え、前記生分解性樹脂層の質量パーセント合計がシート全体の90%以上であるとともに、個々の生分解性樹脂層の質量パーセントがシート全体の10%以上であり、シート全体の酸素透過率が10cc/m・day以下である。
また、上記の積層シートでは、前記生分解性樹脂層を構成する生分解性樹脂がポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、澱粉から選ばれる少なくとも1種を用いた。
また、上記の積層シートでは、前記生分解性樹脂がポリ乳酸を用いることが好ましい。
さらに、上記の積層シートでは、 シート全体の厚みが200~1300μmであり、酸素バリア性樹脂層の厚みが10~50μmである。
一方、本発明の成形容器は、上記の各種積層シートを熱成形してなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層シートおよび成形容器によれば、優れた熱成形性、酸素バリア性をあわせ持ち、且つ、堆肥化での微生物分解(生分解)によって二酸化炭素や水へと変化し、自然へ戻すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る積層シートの積層構造の一例を示す概略縦側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態としては図1に示すように、本発明の積層シートは、酸素バリア性樹脂層(12)に接着層(11a)を介して最表面に表皮層となる生分解性樹脂層(10a)が積層され、また、その反対側に同じく接着層(11b)を介して下皮層となる生分解性樹脂層(10b)が積層されてなる。シート全体の厚みは200~1300μmであり、酸素バリア性樹脂層の厚みが10~50μmである。
【0013】
以下、詳細に説明する。
<積層シート>
本発明の一実施形態に係る積層シートの層構成は、前述の通り、生分解性樹脂層/接着層/酸素バリア性樹脂層/接着層/生分解性樹脂層であり、簡素的には表皮層/接着層/酸素バリア層/接着層/下皮層との表記とする。下皮層には、本発明の積層シートや成形容器を製造する工程で発生するスクラップを廃棄することなく、細かく粉砕、若しくは熱溶融後にリペレット化して再生品として戻す層を新たに設けた構成としてもよい。
【0014】
また、下皮層側には、特に限定されないが、例えばダイレクト印刷や印刷されたフィルムを積層するといった方法により印刷面を設けた構成としてもよい。
【0015】
本発明における積層シートのシート全体の厚みは200~1300μmが好ましい。200μm未満であると熱成形後の容器の厚みが薄い箇所が形成されてしまうことで、座屈強度と称される圧縮や圧力に対する耐性を表す容器強度の低下により、例えば、容器の内面に内容物が収納された状態で運搬、保管される際の振動や圧縮により容器の変形や破損が発生する可能性がある。一方、シート全体の厚みは1300μmを超えると、熱成形の際にシートの厚み方向に十分に熱が伝わりにくくなり、成形不良が発生する可能性がある。
【0016】
積層シートの押出成形の方法としては、特に限定されず、例えば、4台もしくはそれ以上の単軸または多軸押出機を用いて各々の原料樹脂を溶融押出し、フィードブロックとTダイを通して積層化する方法もしくはマルチマニホールドダイを使用して積層化する方法が挙げられる。
【0017】
<生分解性樹脂層(10a、10b)>
生分解性樹脂層の厚みとしては、シート全体に対して生分解性樹脂層の質量パーセント合計がシート全体の90%以上とするような構成であれば、表皮層と下皮層とを同じ厚みとした上下対称型としても異なる厚みとした上下非対称型としても、どちらでもよい。上下非対称型の場合、特に深絞りの容器成形を行う際の薄肉化による構成層の断裂や破断を防ぐために、個々の生分解性樹脂層の質量パーセントがシート全体の10%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の生分解性樹脂層を構成する生分解性樹脂としてはポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、澱粉から選ばれる1種を用いてもよいし、これら生分解性樹脂から選ばれる2種以上を混合したものを用いてもよく、2種以上混合する際の配合比率については特に限定されない。また、これら生分解性樹脂から選ばれる1種を用いる場合、特に汎用のポリ乳酸を用いることが好ましい。
【0019】
一般に生分解性樹脂は結晶化速度が遅いものが多いために耐熱性向上が必要とされる用途向けを想定した結晶化度を上げる、もしくは生分解性樹脂のみではシートの腰強度が出にくい傾向にあるために、特にこれに限定されないが、タルクやエチレンビスステアリン酸アマイド(EBS)等の改質剤を添加してもよい。なお、これらの改質剤の添加量としては、改質に大きな効果を発揮するために生分解性樹脂に対して0.1~30%とすることが好ましい。
【0020】
本発明に記載の生分解性樹脂のメルトフローレート(Melt Flow Rate。以下、単にMFRと言う)は一般的に行われる、一定の温度と荷重条件のもとで、ピストンによってシリンダ底部に設置された規定口径のダイから10分間あたり押し出される樹脂量を測定する方法が適用され、本発明での測定条件は温度設定190℃、荷重2.16kgfである。本発明に記載の生分解性樹脂のMFRは1.0~20g/10min.であることが好ましい。1.0g/10min.未満ではシート押出成形加工の際の加工性が低下する可能性がある。20g/10min.を超えると押出成形時や容器成形の際に加熱によりシートが垂れ下がる耐ドローダウン性が悪化するとともに耐衝撃性も低下する可能性がある。
【0021】
<酸素バリア性樹脂層(12)>
酸素バリア性樹脂層を構成する酸素バリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデンが代表的なものとして挙げられるがこれらに限定されるものではない。その中でも、押出成形性の面でエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂が好ましい。
【0022】
エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂は、通常、エチレン-酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものであり、酸素バリア性、押出成形性を具備させる為に、エチレン含有量が10~65モル%、好ましくは20~50モル%で、鹸化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好ましい。
【0023】
また、ポリアミド樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p-アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m-またはp-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、並びにこれらの共重合体等が挙げられる。
【0024】
ポリアミド樹脂として、具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、中でもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
【0025】
酸素バリア性樹脂層の厚みは、好ましくは10~50μmであり、より好ましくは20~40μmである。10μm未満であると、シートを熱成形した後の容器において酸素バリア性樹脂層の厚みが極端に薄肉化することで、容器内に収納された内容物の酸化劣化による品質低下を抑える程の酸素バリア性能が得られない可能性があり、また、50μmを超えると、熱成形の後に施される容器の打ち抜き加工時に所謂ヒゲバリと呼ばれる外観不良が発生する可能性がある。
【0026】
シート全体の酸素透過率は10cc/m・day以下であり、更に好ましくは5cc/m・day以下である。10cc/m・dayを超えると、熱成形容器の内容部が酸化劣化するものである場合、十分に酸化劣化を抑制する機能が発現しない可能性がある。
【0027】
<接着層(11a,11b)>
接着層を構成する樹脂としては、変性ポリオレフィン系重合体が好ましい。接着層を構成する変性ポリオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、3-メチルブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1等の炭素数2~20程度の他のポリオレフィンや酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリスチレン等のビニル化合物との共重合体等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等のポリオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものが代表的なものとして挙げられる。
【0028】
変性ポリオレフィン系重合体として、中でも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性したエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、またはエチレン-プロピレンまたはブテン-1共重合体ゴムが好適である。
【0029】
変性ポリオレフィン系重合体層の厚みは、いずれの層も、好ましくは5~50μmであり、より好ましくは10~30μmである。5μm未満であると、十分な層間の接着強度が得られなくなる可能性があり、また、50μmを超えると、熱成形の後に施される容器の打ち抜き加工時に所謂ヒゲバリと呼ばれる外観不良が発生する可能性がある。
【0030】
<成形容器>
本発明の成形容器は、本発明の積層シートを熱成形してなる。熱成形方法としては、一般的な真空成形、圧空成形や、これらの応用として、シートの片面にプラグを接触させて成形を行うプラグアシスト法、また、シートの両面に一対をなす雄雌型を接触させて成形を行う、いわゆるマッチモールド成形と称される方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、成形前にシートを加熱軟化させる方法として非接触加熱である赤外線ヒーター等による輻射加熱やシートを加熱された熱盤に直接触れさせて軟化させる熱盤加熱等、公知のシート加熱方法を適用することができる。
【0031】
熱成形の際の成形温度は、樹脂の融点等を考慮して適切に設定されるが、シート加熱温度が低すぎると加熱成形後の容器の賦型状態が不十分であり、逆にシート加熱温度が高すぎると熱盤への融着等の不具合を起こす等の不良が発生する恐れがあるため、適宜の温度に設定することが好ましい。
【0032】
<実施例>
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
【0033】
実施例で用いた樹脂原料は以下の通りである。
(1)生分解性樹脂
1.ポリ乳酸 「4032D」
(NatureWorks社製、密度:1.24g/cm3、
MFR:4.0g/10min.(190℃、2.16kgf))
2.ポリ乳酸 「GH501H」
(湖北合光社製、密度:1.24g/cm3、MFR:4.5g/10min.
(190℃、2.16kgf))
3.ポリ乳酸 「REVODE 190」
(海正生物社製、密度:1.24g/cm3、MFR:2.5g/10min.
(190℃、2.16kgf))
4.ポリブチレンサクシネート樹脂 「FD92」
(三菱化学社製、密度:1.24g/cm3、MFR:4.0g/10min.
(190℃、2.16kgf))
(2)酸素バリア性樹脂
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH) 「エバールJ171B」
(クラレ社製、密度:1.18g/cm3、MFR:1.7g/10min.
(190℃、2.16kgf)、エチレン含量32mol%)
(3)接着層用樹脂
1.変性ポリエステル系重合体 「プリマロイGK320」
(三菱化学社製、密度:1.03g/cm3、MFR:10g/10min.
(230℃、2.16kgf))
2.変性ポリオレフィン系重合体(変性PO) 「モディックF563」
(三菱化学社製、密度:1.03g/cm3、MFR:3.0g/10min.
(190℃、2.16kgf))
【0034】
<実施例1>
フィードブロックを用いた押出成形加工により、表皮層と下皮層に生分解性樹脂として1のポリ乳酸「4032D」を用い、接着層用樹脂として1の変性ポリエステル系重合体「プリマロイGK320」を用い、生分解性樹脂層(10a)140μm/接着層(11a)15μm/酸素バリア性樹脂層(12)30μm/接着層(11b)15μm/生分解性樹脂層(10b)700μmとなる層構成を有し、総厚が900μmであり、生分解性樹脂層の質量パーセントがシート全体の94%となる多層の積層シートを得た。
【0035】
<実施例2>
接着層用樹脂として2の変性ポリオレフィン系重合体「モディックF563」を用いた以外は実施例1と同様の多層の積層シートを得た。
【0036】
<実施例3>
表皮層と下皮層に生分解性樹脂として2のポリ乳酸「GH501H」を用いた以外は実施例1と同様の多層の積層シートを得た。
【0037】
<実施例4>
表皮層と下皮層に生分解性樹脂として3のポリ乳酸「REVODE 190」を用いた以外は実施例1と同様の多層シートを得た。
【0038】
<実施例5>
生分解性樹脂として、樹脂1のポリ乳酸「4032D」95質量パーセントと樹脂4のポリブチレンサクシネート樹脂「FD92」5質量パーセントをブレンドする以外は実施例1と同様の多層の積層シートを得た。
【0039】
<比較例1>
フィードブロックを用いた押出成形加工により、表皮層と下皮層に生分解性樹脂として1のポリ乳酸「4032D」を用い、生分解性樹脂層(10a)30μm/接着層(11a)15μm/酸素バリア性樹脂層(12)30μm/接着層(11b)15μm/生分解性樹脂層(10b)110μmとなる層構成を有し、総厚が200μmであり、生分解性樹脂層の質量パーセント合計がシート全体の72%となる多層の積層シートを得た。
【0040】
<比較例2>
1台の単軸押出機を用い生分解性樹脂として1のポリ乳酸「4032D」を用いて総厚が700μmの単層シートを得た。
【0041】
一方、本発明に記載の積層シートの酸素透過率の測定方法を以下に説明する。
シート全体の酸素透過率を、以下の方法にて測定した。酸素透過率測定は、以下の高温高湿環境下への投入前後で測定を行った。
[測定方法] GB/T 1038準拠
使用機器:LabThink社製 VAC-V1
測定条件:23℃×65%R.H.
サンプルセット:基本的に、容器成形後の実用性を鑑みて、シートサンプルの下皮層側から酸素が透過するような向きにサンプルをセットする。
【0042】
シートの生分解性を、以下の方法にて評価した。
[土壌埋設試験による積層シートの質量変化]
微生物活性な土壌にシートを180日間埋設し、外観観察、質量測定などにより分解度とした。
[生分解性の評価方法]
培養温度は58℃±2℃としたコンポスト条件下に180日間保管した後、ISO14855に準拠する方法にて生分解性を評価した。なお、分解度が90%以上であれば、完全分解として評価される。
各実施例及び比較例の積層シートに対する酸素透過率の測定および生分解性の評価結果を表1にまとめている。
なお、上記実施例1~4では、生分解性樹脂としてポリ乳酸を用い、実施例5では、生分解性樹脂としてポリ乳酸とポリブチレンサクシネートを混合したものを用いたが、特にこれらに限定されず、上記実施例1~4では、生分解性樹脂としてポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、澱粉から選択された1種を用いても良いし、又はポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、澱粉から選択された2種以上を混合したものを用いてもよい。この場合、上記各実施例と同じ効果を得ることができる。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1の結果によれば、実施例1から5では何れも、酸素透過率が低くおさえられており、また、生分解度が90%以上と完全分解するのに対し、比較例1では酸素透過率が低いものの分解度が70%と不十分であり、一方の比較例2では分解度が100%と生分解性については問題無いものの酸素透過率が350cc/m・dayと非常に高く、酸素成分の影響を受ける酸化劣化の抑制効果は低いものと考えられる。
【0045】
従って、本発明の実施例に記載の構成樹脂からなる多層シートとすることで、優れた熱成形性、酸素バリア性をあわせ持ち、且つ、堆肥化での微生物分解(生分解)によって二酸化炭素や水へと変化し、自然へ戻す事が可能である完全分解型生分解性バリアシート、及びそれを熱成形してなる容器を提供の可能となる。
【符号の説明】
【0046】
10a 生分解性樹脂層
10b 生分解性樹脂層
11a 接着層
11b 接着層
12 酸素バリア性樹脂層
図1