(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20220107BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20220107BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20220107BHJP
H01L 21/283 20060101ALI20220107BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20220107BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20220107BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220107BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20220107BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 M
H01L21/283 B
H01L21/283 C
H01L29/44 S
H01L29/58 Z
H01L29/48 M
H01L29/48 D
H01L29/48 F
H01L21/28 L
(21)【出願番号】P 2018026770
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 健太
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 幸則
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0325987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/205
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体積層体を成長する工程と、
第1成膜温度、10Pa以上100Pa以下の条件にて、前記半導体積層体上に第1窒化ケイ素膜をLPCVD法によって形成する工程と、
前記第1成膜温度よりも低い第2成膜温度にて、前記第1窒化ケイ素膜上に第2窒化ケイ素膜をプラズマCVD法によって形成する工程と、
フッ素系エッチングガスを用いた反応性イオンエッチングによって、前記第2窒化ケイ素膜に第2開口部を形成し、前記第1窒化ケイ素膜に前記第2開口部に重なる第1開口部を形成する工程と、
前記第1開口部内に、前記半導体積層体に接触するNiを含み、前記第2開口部の開口幅よりも狭い幅を有し前記第2窒化ケイ素膜と離間する第1ゲート層を形成する工程と、
前記第1ゲート層及び前記第2開口部を覆う第2ゲート層を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1ゲート層の厚さは、前記第1窒化ケイ素膜と前記第2窒化ケイ素膜との合計厚さよりも小さい、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1成膜温度は、650℃以上であり、
前記第2成膜温度は、350℃以下である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素系エッチングガスに対する前記第1窒化ケイ素膜のエッチングレートは、前記第2窒化ケイ素膜のエッチングレートよりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板上に設けられた半導体積層体と、
前記半導体積層体上に設けられ、第1開口部を有する第1窒化ケイ素膜と、
前記第1窒化ケイ素膜上に設けられ、前記第1開口部に重なり前記第1開口部よりも幅広の第2開口部を有する第2窒化ケイ素膜と、
前記第1開口部内に設けられ前記半導体積層体に接触するNiを含む第1ゲート層と、
前記第1ゲート層及び前記第2開口部を覆い、Niを含まない第2ゲート層と、
を備え、
前記第1ゲート層は、前記第2窒化ケイ素膜と離間している、
半導体装置。
【請求項6】
前記第1ゲート層の厚さは、前記第1窒化ケイ素膜と前記第2窒化ケイ素膜との合計厚さよりも小さい、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1窒化ケイ素膜の屈折率は、2.2以上であって、
前記第2窒化ケイ素膜の屈折率は、2.1未満である、請求項5又は6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)が知られている。HEMT構造を有する電子デバイスは、高速性能及び高耐圧性能を備えるデバイスとして実用化されている。例えば下記特許文献1,2には、GaN層とAlGaN層とが互いに積層された高電子移動度トランジスタが開示されている。GaN層とAlGaN層との界面には、高濃度の二次元電子ガス(2DEG)が発生する。この二次元電子ガスを用いることにより、HEMTが優れた増幅(変調)特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-59621号公報
【文献】特開2004-22773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなHEMTにおいて良好なショットキー構造を形成するために、ゲート電極にニッケル(Ni)を含有することがある。しかしながら、Niがゲート電極に含有され、且つ、当該ゲート電極に接するHEMTの保護膜が窒化ケイ素膜である場合、Niは窒化ケイ素膜内に拡散する傾向にある。例えば、10GHz以上の周波数帯に利用されるゲート長が200nm以下であるHEMTにおいては、Niの拡散によってゲート電極の形状が変化する、もしくはゲート電極の一部が消失するおそれがある。
【0005】
ゲート電極のNiが窒化ケイ素膜内に拡散するにつれて、HEMTの電気的特性(例えば、ゲート電極の抵抗増加、ゲートリークの増加等)が劣化する傾向にある。したがって、ゲート電極にNiが含まれる場合であっても、Niの窒化ケイ素膜への拡散を抑制し、長期信頼性を実現可能な構造を有するHEMTが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、長期信頼性を実現可能な半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る半導体装置の製造方法は、基板上に半導体積層体を成長する工程と、第1成膜温度、10Pa以上100Pa以下の条件にて、半導体積層体上に第1窒化ケイ素膜をLPCVD法によって形成する工程と、第1成膜温度よりも低い第2成膜温度にて、第1窒化ケイ素膜上に第2窒化ケイ素膜をプラズマCVD法によって形成する工程と、フッ素系エッチングガスを用いた反応性イオンエッチングによって、第2窒化ケイ素膜に第2開口部を形成し、第1窒化ケイ素膜に第2開口部に重なる第1開口部を形成する工程と、第1開口部内に、半導体積層体に接触するNiを含み、第2開口部の開口幅よりも狭い幅を有し第2窒化ケイ素膜と離間する第1ゲート層を形成する工程と、第1ゲート層及び第2開口部を覆う第2ゲート層を形成する工程と、を備える。
【0008】
本発明の他の一側面に係る半導体装置は、基板上に設けられた半導体積層体と、半導体積層体上に設けられ、第1開口部を有する第1窒化ケイ素膜と、第1窒化ケイ素膜上に設けられ、第1開口部に重なり第1開口部よりも幅広の第2開口部を有する第2窒化ケイ素膜と、第1開口部内に設けられ、半導体積層体に接触するNiを含む第1ゲート層と、第1ゲート層及び第2開口部を覆い、Niを含まない第2ゲート層と、を備え、第1ゲート層は、前記第2窒化ケイ素膜と離間している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期信頼性を実現可能な半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体装置の一例である高電子移動度トランジスタを示す概略断面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図3】
図3(a),(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図4】
図4(a),(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する要部拡大図である。
【
図5】
図5(a),(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する要部拡大図である。
【
図6】
図6(a),(b)は、比較例に係るHEMTの概略断面図である。
【
図7】
図7(a)は、プラズマCVD法にて形成された窒化ケイ素膜に対してフーリエ変換赤外分光光度計を用いた測定、FT-IRのスペクトルを示す。
図7(b)は、LPCVD法にて形成された窒化ケイ素膜のFT-IRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例である高電子移動度トランジスタ(以下、「HEMT」とする)を示す概略断面図である。
図1に示すように、半導体装置であるHEMT1は、基板2、バッファ層3、チャネル層4、バリア層5、キャップ層6、ソース7、ドレイン8、保護膜9、及びゲート10を備えている。HEMT1においては、基板2上に窒化物半導体層であるバッファ層3、チャネル層4、バリア層5、及びキャップ層6が、この順に積層されている。このため、HEMT1は、バッファ層3、チャネル層4、バリア層5、及びキャップ層6から構成される半導体積層体Sを有している。
【0013】
基板2は、半絶縁性のSiC基板(炭化ケイ素基板)である。バッファ層3は、チャネル層4に対するバッファ及びシードとして機能し、基板2上にエピタキシャル成長したAlN層である。バッファ層3の厚さは、例えば10nm以上20nm以下である。バッファ層3の厚さは20nm以下に設定されているので、基板2上に設けるバッファ層3は、連続した層ではなく、複数の島状になる場合がある。ここで「連続した層」とはその表面方向に一様に分布した状態を言う。
【0014】
チャネル層4は、キャリア走行層として機能し、バッファ層3上にエピタキシャル成長したi型GaN層(GaNチャネル層)である。チャネル層4は、SiCに対する濡れ性に起因して、基板2上に直接成長できない。このため、チャネル層4は、バッファ層3を介して成長している。チャネル層4の厚さは、例えば400nm以上2000nm以下である。
【0015】
バリア層5は、キャリア生成層として機能し、チャネル層4上にエピタキシャル成長した窒化物半導体層である。バリア層5のバンドギャップは、チャネル層のバンドギャップよりも大きい。バリア層5は、例えばAlGaN層、InAlN層、InAlGaN層等である。本実施形態では、バリア層5はAlGaN層である。チャネル層4とバリア層5との間には、これらの格子定数の相違に起因した歪が生じる。この歪が、両者の界面にピエゾ電荷を誘起し、チャネル層4とバリア層5との界面であってチャネル層4側に2次元電子ガス(2DEG)が生じる。これによって、チャネル層4内にチャネル領域が形成される。バリア層5の厚さは、例えば5nm以上30nm以下である。バリア層5は、n型化していてもよい。この場合、バリア層5に含まれるドナーに起因する電子が、上記ピエゾ電荷に重畳されて両者の界面に生じ、チャネルが形成される。
【0016】
キャップ層6は、バリア層5上にエピタキシャル成長したGaN層である。キャップ層6の厚さは、例えば0nm以上5nm以下である。すなわち、キャップ層6は、必ずしも設けられなくてもよい。キャップ層6は、n型化していてもよい。
【0017】
ソース7は、半導体積層体Sに形成されたリセスR1にてバリア層5に接触し、ドレイン8は、半導体積層体Sに形成されたリセスR2にてバリア層5に接触している。ソース7及びドレイン8のそれぞれは、オーミック電極であり、例えばチタン(Ti)層とアルミニウム(Al)層との積層構造をアロイすることにより形成される。Ti層の厚さは例えば30nm、Al層の厚さは例えば300nmである。Ti層はタンタル(Ta)層でもよい。
【0018】
保護膜9は、キャップ層6を保護するパッシベーション膜であり、キャップ層6と、ソース7及びドレイン8の一部とを覆っている。保護膜9は、半導体積層体S上に設けられる第1窒化ケイ素膜11と、第1窒化ケイ素膜11上に設けられる第2窒化ケイ素膜12とを有する。
【0019】
第1窒化ケイ素膜11は、キャップ層6の表面を保護する絶縁膜であり、キャップ層6、ソース7及びドレイン8に接触する。第1窒化ケイ素膜11の厚さは、例えば10nm以上60nm以下である。第1窒化ケイ素膜11中の窒化ケイ素は、ストイキオメトリの組成(Si3N4)に限られない。本実施形態では、第1窒化ケイ素膜11の屈折率は、例えば2.2以上2.5以下である。第1窒化ケイ素膜11は、LPCVD法(減圧化学気相成長法)によって形成される。LPCVD法は、成膜圧力を下げる代わりに成膜温度を高くすることによって、緻密な膜を形成する方法である。
【0020】
第1窒化ケイ素膜11は、開口部11a~11cを有する。開口部11aはリセスR1を露出する貫通孔であり、開口部11bはリセスR2を露出する貫通孔である。開口部11c(第1開口部)は、キャップ層6を露出する貫通孔であり、例えば断面逆テーパ形状を呈している。開口部11cは、ソース7とドレイン8との間に位置するキャップ層6上に設けられる。開口部11cの開口幅W1は、例えば80nm以上200nm以下である。
【0021】
第2窒化ケイ素膜12は、第1窒化ケイ素膜11を補強する絶縁膜であり、第1窒化ケイ素膜11に重なっている。このため、第2窒化ケイ素膜12は、キャップ層6に接触していない。第2窒化ケイ素膜12の厚さは、例えば20nm以上80nm以下である。第2窒化ケイ素膜12中の窒化ケイ素は、ストイキオメトリの組成(Si3N4)に限られない。本実施形態では、第2窒化ケイ素膜12の屈折率は、第1窒化ケイ素膜11の屈折率よりも小さく、例えば1.85以上2.1未満もしくは2.0以下である。本実施形態では、第2窒化ケイ素膜12は、例えばプラズマCVD法(プラズマ化学気相成長法)によって形成される。
【0022】
第2窒化ケイ素膜12は、開口部12a~12cを有する。開口部12aはソース7上に設けられ、開口部12bはドレイン8上に設けられ、開口部12c(第2開口部)はソース7とドレイン8との間に位置するキャップ層6上に設けられる。開口部12cは、開口部11cに重なり、キャップ層6を露出する貫通孔であり、例えば断面逆テーパ形状を呈している。開口部12cは開口部11cよりも幅広であり、その開口幅W2は、例えば100nm以上220nm以下である。加えて、開口部12cの中心と、開口部11cの中心とは、互いに重なっているもしくは略重なっている。このため、開口部11cの全てが開口部12cによって露出される。開口部11c,12cにおいては、第1窒化ケイ素膜11及び第2窒化ケイ素膜12によって段差が形成される。
【0023】
上述したように本実施形態では、第1窒化ケイ素膜11はLPCVD法によって形成され、第2窒化ケイ素膜12はプラズマCVD法によって形成される。このため、第1窒化ケイ素膜11は、第2窒化ケイ素膜12よりも緻密に形成され、第1窒化ケイ素膜11中の水素濃度が、第2窒化ケイ素膜12の水素濃度よりも小さくなる。この場合、上述したように第1窒化ケイ素膜11の屈折率は、第2窒化ケイ素膜12の屈折率よりも大きくなる。加えて、例えば四フッ化メタン(CF4)、六フッ化硫黄(SF6)等のフッ素系エッチングガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を第1窒化ケイ素膜11及び第2窒化ケイ素膜12に対して実施する場合、第1窒化ケイ素膜11のエッチングレートは、第2窒化ケイ素膜12のエッチングレートよりも小さくなる。例えば、フッ素系エッチングガスとしてSF6を用いた場合、第1窒化ケイ素膜11のエッチングレートは、第2窒化ケイ素膜12のエッチングレートの約1/3である。また、フッ素系エッチングガスとしてCF4を用いた場合、第1窒化ケイ素膜11のエッチングレートは、第2窒化ケイ素膜12のエッチングレートの約2/3である。
【0024】
ゲート10は、第1窒化ケイ素膜11の開口部11c内と、第2窒化ケイ素膜12の開口部12c内とに設けられ、半導体積層体Sのキャップ層6に接触している。ゲート10は、断面略T字形状を呈している。ゲート10の厚さは、第1窒化ケイ素膜11と第2窒化ケイ素膜12との合計厚さよりも大きく、例えば300nm以上900nm以下である。ゲート10は、キャップ層6において開口部11c,12cによって露出する部分を少なくとも覆っている。ゲート10は、Niを含む第1ゲート層21と、Niを含まない第2ゲート層22とを有する。
【0025】
第1ゲート層21は、ゲート10においてキャップ層6に接触する部分であり、開口部11c内に設けられる。本実施形態では、第1ゲート層21は、開口部11c,12c内に設けられ、キャップ層6において開口部11c,12cにて露出した部分を覆っている。第1ゲート層21は、断面台形状を呈しており、ゲート10において半導体積層体Sに向かって突出する部分を構成する。第1ゲート層21は、例えばNi単層である。第1ゲート層21の厚さは、第1窒化ケイ素膜11と第2窒化ケイ素膜12との合計厚さよりも小さく、例えば30nm以上60nm以下である。第1ゲート層21の幅W3は、ゲート10のゲート長に相当する。第1ゲート層21の幅W3は、開口部12cの開口幅W2よりも小さく、例えば50nm以上200nm以下である。このため、第1ゲート層21は、第2窒化ケイ素膜12と離間している。幅W3は、開口部11cの開口幅W1より小さくてもよいし、開口幅W1と同一でもよい。本実施形態では、第1ゲート層21は、第1窒化ケイ素膜11の上面に接触していない。
【0026】
第2ゲート層22は、ゲート10において第1ゲート層21と、開口部12cとを覆う部分である。第2ゲート層22の一部は、開口部11c,12cに埋め込まれ、第2ゲート層22の他部は、開口部12c上及び第2窒化ケイ素膜12上に設けられる。このため、第2ゲート層22の一部は、第1ゲート層21と第1窒化ケイ素膜11との間、及び、第1ゲート層21と第2窒化ケイ素膜12との間に埋め込まれる。すなわち、第1ゲート層21と、第2窒化ケイ素膜12は、第2ゲート層22によって互いに分離されている。第2ゲート層22は、単層構造もしくは積層構造を有する。第2ゲート層22が単層構造を有する場合、第2ゲート層22は、例えばAu単層である。第2ゲート層22が積層構造を有する場合、第2ゲート層22は、例えば最外層であるAu層に加えて、Ti層、白金(Pt)層等を有する。第2ゲート層22は、2層以上のAu層を有してもよい。第2ゲート層22の厚さは、例えば200nm以上500nm以下である。第2ゲート層22の幅W4は、第2ゲート層22の幅W3よりも大きく、例えば300nm以上800nm以下である。ゲート10の幅方向において、第2ゲート層22の端と、第1ゲート層21の端との間隔は、200nm程度空けられてもよい。第2ゲート層22は、第2窒化ケイ素膜12に接触している。
【0027】
次に、
図2~
図5を用いながら、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図2(a)~(c)及び
図3(a),(b)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。また、
図4(a),(b)及び
図5(a),(b)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する要部拡大図であり、
図3(b)に示された破線部分で囲われた領域を示している。
【0028】
まず、
図2(a)に示されるように、基板2上に半導体積層体Sを成長する(第1工程)。第1工程では、有機金属気相成長法(以下、MOCVD法とする)によって基板2上にバッファ層3、チャネル層4、バリア層5、及びキャップ層6を順に成長する。これによって、基板2上に半導体積層体Sを成長する。本実施形態では、AlN層、GaN層、AlGaN層、及びGaN層を順に成長することによって、基板2上に半導体積層体Sを成長する。
【0029】
次に、
図2(b)に示されるように、半導体積層体S上に第1窒化ケイ素膜11を形成する(第2工程)。第2工程では、第1成膜温度及び第1圧力に設定された条件にて、半導体積層体S上に第1窒化ケイ素膜11をLPCVD法によって形成する。第1成膜温度は、例えば650℃以上900℃以下であり、第1圧力は、例えば10Pa以上100Pa以下である。第1窒化ケイ素膜11の原料ガスとして、例えばアンモニア(NH
3)ガス、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスあるいはモノシラン(SiH
4)ガス、窒素(N
2)ガスが用いられる。本実施形態では、第1成膜温度を850℃とし、第1圧力を50Paとした条件にて、SiH
2Cl
2ガス、NH
3ガスを用い、厚さ20nmの第1窒化ケイ素膜11を形成する。
【0030】
次に、
図2(c)に示されるように、半導体積層体S上にソース7及びドレイン8を形成する(第3工程)。第3工程では、まず、ソース7及びドレイン8が形成される領域の第1窒化ケイ素膜11、キャップ層6、及びバリア層5をエッチングする。本実施形態では、例えばリソグラフィー及びRIEを用いる。なお、必要に応じて、第1窒化ケイ素膜11のみエッチングし、キャップ層6及びバリア層5を残してもよい。次に、ソース7及びドレイン8を、EB蒸着法(EB:Electron Beam)、スパッタ法、抵抗加熱蒸着法などの物理蒸着法により形成する。その後、例えば550℃以上600℃未満の温度で5分間のアロイを施すことによって、ソース7及びドレイン8と、バリア層5とのコンタクト抵抗を低抵抗化する。このとき、第1窒化ケイ素膜11も加熱されることによって、第1窒化ケイ素膜11中の水素を除去できる。これにより、第1窒化ケイ素膜11の緻密性を向上できる。
【0031】
続いて、
図3(a)に示されるように、第1窒化ケイ素膜11上、ソース7上及びドレイン8上に、第2窒化ケイ素膜12を形成する(第4工程)。第4工程では、第2成膜温度及び第2圧力に設定された条件にて、第1窒化ケイ素膜11上に第2窒化ケイ素膜12をプラズマCVD法によって形成する。第2成膜温度は、第1成膜温度よりも低く、例えば350℃以下とすることが好ましい。本実施形態では、第2成膜温度を315℃とし、第2圧力を10Paとした条件にて、SiH
4ガス、NH
3ガス、N
2ガスを用い、厚さ40nmの第2窒化ケイ素膜12を形成する。
【0032】
次に、
図3(b)に示されるように、第2窒化ケイ素膜12上にフォトレジスト50を塗布する(第5工程)。第5工程では、フォトレジスト50を形成後、EBフォトリソグラフィによってフォトレジスト50に開口50aを形成する。開口50aは、第1窒化ケイ素膜11において開口部11cが形成される領域上に形成される。
【0033】
次に、
図4(a)に示されるように、第1窒化ケイ素膜11に開口部11cを形成し、第2窒化ケイ素膜12に開口部12cを形成する(第6工程)。第6工程では、CF
4、SF
6等のフッ素系エッチングガスを用いたRIEを実施し、開口50aを介して第1窒化ケイ素膜11及び第2窒化ケイ素膜12の一部をエッチングする。本実施形態では、各窒化ケイ素膜を等方性エッチングする観点から、エッチングガスとしてSF
6が用いられ、電力を100W、圧力を1Pa、室温の条件下にて、RIEを実施する。上述したように、第1窒化ケイ素膜11のエッチングレートは、第2窒化ケイ素膜12のエッチングレートよりも小さいので、第2窒化ケイ素膜12は、第1窒化ケイ素膜11よりもエッチングされやすい。また、第2窒化ケイ素膜12は、第1窒化ケイ素膜11よりもプラズマに曝される時間が長い。このため、開口部12cは、開口部11cよりも幅広になる。すなわち、第2窒化ケイ素膜12は、第1窒化ケイ素膜11よりもサイドエッチングされる。この第2窒化ケイ素膜12のサイドエッチングによって、開口部12cの開口幅W2は、フォトレジスト50の開口50aの幅W5よりも大きくなる。これにより、フォトレジスト50において開口50aを構成する部分が、第2窒化ケイ素膜12に対する庇となる。
【0034】
次に、
図4(b)に示されるように、半導体積層体S上に第1ゲート層21を形成する(第7工程)。第7工程では、フォトレジスト50を利用し、開口部11c,12cによって露出したキャップ層6上に第1ゲート層21を物理蒸着法によって形成する。続いて第7工程では、第1ゲート層21上にシード層23を形成する。シード層23は、第1ゲート層21の腐食を防止し、後に形成される第2ゲート層22と、第1ゲート層21との密着性を向上するための導電層である。シード層23は、例えばAu層、Ti層、Pt層、又はパラジウム(Pd)層である。また、後の工程にてフォトレジスト50のみを良好に除去する観点から、第1ゲート層21とシード層23との合計厚さは、第1窒化ケイ素膜11と第2窒化ケイ素膜12との合計厚さ以下である。本実施形態では、厚さ50nmの第1ゲート層21と、厚さ10nmのシード層23とを順に形成する。このとき、フォトレジスト50において開口50aを構成する部分が上記庇になることによって、第1ゲート層21及びシード層23と、フォトレジスト50とが互いに離間している。第7工程においては、第1ゲート層21及びシード層23は、露出した第1窒化ケイ素膜11上に設けられない。なお、第7工程後、フォトレジスト50上には金属51,52が堆積している。
【0035】
次に、
図5(a)に示されるように、フォトレジスト50を除去する(第8工程)。第8工程では、リフトオフによってフォトレジスト50を除去する。これにより、フォトレジスト50と、フォトレジスト50上の金属51,52とを同時に除去する。第1ゲート層21とシード層23とは、フォトレジスト50に対して離間しているので、上記リフトオフ後においても半導体積層体S上に良好に残存する。
【0036】
次に、
図5(b)に示されるように、第1ゲート層21と、開口部12cとを覆う第2ゲート層22を形成する(第9工程)。第9工程では、フォトレジスト50とは別のフォトレジストをマスクとして、物理蒸着法によって第2ゲート層22を形成する。第2ゲート層22は、シード層23と一体化する。そして、フォトレジストと、当該フォトレジスト上の金属とをリフトオフで除去することによって、
図1に示されるHEMT1が形成される。なお、HEMT1上には、ゲート10を保護するための保護膜が形成されてもよい。
【0037】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法によって製造された半導体装置の作用効果について、
図6(a),(b)に示される比較例を参照しながら説明する。
図6(a),(b)は、比較例に係るHEMTの概略断面図である。
【0038】
図6(a)に示されるように、比較例に係るHEMT100は、リセスR1,R2が設けられた半導体積層体Sと、ソース7と、ドレイン8と、窒化ケイ素膜109と、ゲート110とを有する。窒化ケイ素膜109は、単層構造を有している。窒化ケイ素膜109は、プラズマCVD法によって形成された非晶質膜である。ゲート110は、断面略T字型形状を呈しており、窒化ケイ素膜109に接するNi層121と、Ni層121上に設けられるAu層122とを有する。Ni層121は、キャップ層6に接触する第1部分121aと、窒化ケイ素膜109の端面109aに接触する第2部分121bと、窒化ケイ素膜109の上面109bに接触する第3部分121cとを有する。比較例においては、ソース7上に設けられるソース配線111と、ドレイン8上に設けられるドレイン配線112と、窒化ケイ素膜109及びゲート110を覆う保護膜113とが設けられている。保護膜113は、プラズマCVD法によって形成された非晶質窒化ケイ素膜である。
【0039】
図6(b)に示されるように、HEMT100においてNi層121の一部は、保護膜113の領域113a,113b等に拡散する傾向にある。これにより、例えばゲート110の一部(第3部分121c)が消失し、ゲート110の抵抗増加等が発生してしまう。ここで、Ni層121の第3部分121cが拡散しやすい一方で、Ni層121の第1部分121aは拡散しにくい傾向にある。これらの違いについて透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて検討したところ、第1部分121aのNiの結晶性は、第3部分121cのNiの結晶性よりも高いことが見出された。第1部分121aの結晶性の高さは、第1部分121aのNiの結晶性がキャップ層6の高い結晶性をある程度引き継ぐことがその原因の一つと推察される。一方、第3部分121cのNiは、非晶質窒化ケイ素膜109上に設けられるため、その結晶性が高くない。したがって、比較的結晶性が劣る第3部分121cのNiは、結晶性が比較的高い第1部分121aよりも窒化ケイ素膜に拡散しやすいと推察される。
【0040】
これに対して本実施形態に係る製造方法によって製造された半導体装置であるHEMT1は、開口部11cを有する第1窒化ケイ素膜11と、第1窒化ケイ素膜11上に設けられ、開口部11cに重なり開口部11cよりも幅広の開口部12cを有する第2窒化ケイ素膜12と、半導体積層体Sに接触するNiを含み、開口部12cの開口幅W2よりも狭い幅W3を有する第1ゲート層21と、第1ゲート層21及び開口部12cを覆い、Niを含まない第2ゲート層22とを有する。ここで、Niを含む第1ゲート層21は、第2窒化ケイ素膜12と離間している。また、第1ゲート層21が第2ゲート層22に覆われているので、HEMT1において第1ゲート層21に含まれるNiの窒化ケイ素膜への接触は防止されている。したがって、長期信頼性が実現可能なHEMT1を提供できる。
【0041】
第1ゲート層21の厚さは、第1窒化ケイ素膜11と第2窒化ケイ素膜12との合計厚さよりも小さい。このため、第2窒化ケイ素膜12上に設けられたフォトレジスト50をリフトオフにて除去する際に、第1ゲート層21がフォトレジスト50と同時に除去されることを抑制できる。
【0042】
本実施形態では、第1窒化ケイ素膜11を形成する際の上記第1成膜温度は、650℃以上であり、第2窒化ケイ素膜12を形成する際の上記第2成膜温度は、350℃以下である。また、フッ素系エッチングガスに対する第1窒化ケイ素膜11のエッチングレートは、第2窒化ケイ素膜12のエッチングレートよりも小さい。このため、第1窒化ケイ素膜11の膜質が、第2窒化ケイ素膜12の膜質よりも高いことがわかる。
【0043】
本実施形態では、第1窒化ケイ素膜11の屈折率は、2.2以上であって、第2窒化ケイ素膜12の屈折率は、2.1未満もしくは2.0以下である。このため、第1窒化ケイ素膜11は、第2窒化ケイ素膜12よりも緻密な膜になるので、エッチング耐性等が高い。
【0044】
図7(a)は、プラズマCVD法にて形成された窒化ケイ素膜に対してフーリエ変換赤外分光光度計を用いた測定、FT-IRのスペクトルを示す。
図7(b)は、LPCVD法にて形成された窒化ケイ素膜のFT-IRスペクトルを示す。
図7(a),(b)において、横軸は波数を示し、縦軸は吸光度を示す。
図7(a)に示される測定結果には、2200cm
-1付近にピークが確認される。一方、
図7(b)に示される測定結果には、2200cm
-1付近にはピークが確認されない。すなわち、
図7(b)における2200cm
-1付近のピーク吸光度の大きさは、
図7(a)における2200cm
-1付近のピーク吸光度の大きさよりも明らかに小さい。窒化ケイ素膜における2200cm
-1付近のピークは、Si-H伸縮振動に起因したものである。このため、プラズマCVD法によって形成された窒化ケイ素膜の水素濃度は、LPCVD法によって形成された窒化ケイ素膜の水素濃度よりも明らかに大きいと推察できる。このことからも、LPCVD法によって形成される第1窒化ケイ素膜11の膜質が、第2窒化ケイ素膜12の膜質よりも高い傾向であることがわかる。
【0045】
本発明による半導体装置及びその製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば上記実施形態における半導体積層体Sは、バッファ層3、チャネル層4、バリア層5、及びキャップ層6以外の層を含んでもよい。
【0046】
上記実施形態においては、第1ゲート層は、第1窒化ケイ素膜及び第2窒化ケイ素膜の両方に対して離間しているが、これに限られない。例えば、第1ゲート層は、第2窒化ケイ素膜のみに対して離間しており、第1窒化ケイ素膜において開口部を構成する面上に設けられてもよい。第1窒化ケイ素膜はLPCVD法によって形成されているので、第1窒化ケイ素膜の膜質は、第2窒化ケイ素膜の膜質よりも高い。このため、第1窒化ケイ素膜に接触した第1ゲート層内のNiの結晶性は、プラズマCVD法によって形成される窒化ケイ素膜に接触したNiの結晶性よりも高くなる。したがって、第1ゲート層の一部が第1窒化ケイ素膜に接触する場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏され得る。
【0047】
上記実施形態においては、第7工程にてシード層が第1ゲート層上に設けられているが、これに限られない。シード層は、設けられなくてもよい。この場合も、第1ゲート層の厚さは、第1窒化ケイ素膜と第2窒化ケイ素膜との合計厚さより小さいことが好ましい。
【0048】
上記実施形態においては、第9工程にて、フォトレジストをマスクとして、物理蒸着法によって第2ゲート層を形成するが、これに限られない。第2ゲート層は、メッキによって形成してもよい。この場合、上記第8工程跡、全面に金属薄膜を形成する。続いて、シードメタル上に、第1ゲート層上に設けられた開口を有するレジストマスクを形成する。続いて、当該レジストマスクから露出した金属薄膜をシードとしてメッキ処理を実施する。そして、レジストマスクを除去した後、イオンミリングによって不要な金属薄膜を除去する。このような手法によっても第1ゲート層を覆う第2ゲート層を形成できる。
【符号の説明】
【0049】
1…HEMT、2…基板、3…バッファ層、4…チャネル層、5…バリア層、6…キャップ層、7…ソース、8…ドレイン、9…保護膜、10…ゲート、11…第1窒化ケイ素膜、11c…開口部(第1開口部)、12…第2窒化ケイ素膜、12c…開口部(第2開口部)、21…第1ゲート層、22…第2ゲート層、R1,R2…リセス、S…半導体積層体、W1,W2…開口幅、W3,W4…幅。