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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】水素製造制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20220107BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20220107BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20220107BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20220107BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220107BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220107BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220107BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220107BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220107BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H02J3/00 180
C01B3/02 H
C01B3/00 A
C25B1/04
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/46
H02J3/14 160
H02J13/00 311T
H02J15/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018056924
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019170097
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 梓
(72)【発明者】
【氏名】西井 匠
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 信
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-180281(JP,A)
【文献】特開2017-107702(JP,A)
【文献】特開2014-028985(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
C01B 3/02
C01B 3/00
C25B 1/04
C25B 15/02
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 3/14
H02J 13/00
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解式により水素を製造して水素消費設備へ供給する水素製造装置と、
太陽光エネルギーに基づいて発電する太陽光発電器と、
蓄電池と、
前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、
電力価格及び前記太陽光発電器による発電量に基づいて、前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が閾値より高い場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給し、
前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が前記閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて、前記蓄電池を充電すると共に、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給し、
前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給し、
前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記蓄電池に充電がある場合には、前記蓄電池の放電電力を前記水素製造装置へ供給する電力管理装置と、
を含む水素製造制御システム。
【請求項2】
水電解式により水素を製造して水素消費設備へ供給する水素製造装置と、
水素を貯蔵しておくための水素貯蔵設備と、
太陽光エネルギーに基づいて発電する太陽光発電器と、
蓄電池と、
前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、
電力価格及び前記太陽光発電器による発電量に基づいて、前記太陽光発電器による発電がある場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給し、
前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給し、
前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記水素貯蔵設備に水素貯蔵がある場合には、前記水素貯蔵設備からの水素を、前記水素消費設備へ供給し、
前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて、前記蓄電池を充電し、
前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記蓄電池に充電がある場合には、前記蓄電池の放電電力を前記水素製造装置へ供給する電力管理装置と、
を含む水素製造制御システム。
【請求項3】
前記電力管理装置は、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記水素貯蔵設備に水素貯蔵がなく、かつ、前記蓄電池に充電がある場合には、前記蓄電池の放電電力を前記水素製造装置へ供給し、
前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記水素貯蔵設備に水素貯蔵がなく、かつ、前記蓄電池の充電電力がない場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給すると共に、将来の前記太陽光発電器による発電量又は将来の前記電力価格を予測し、予測結果に基づいて、現在の前記電力価格に関わらず、前記水素貯蔵設備へ貯蔵するか、又は前記電力系統の電力を用いて前記蓄電池を充電する請求項記載の水素製造制御システム。
【請求項4】
前記電力管理装置は、電力需要が逼迫していることによるデマンドレスポンスがあった場合に、前記水素製造装置の負荷を下げると共に、前記蓄電池の放電電力を、前記水素製造装置又は前記水素製造装置とは異なる負荷へ供給し、
電力供給が過多であることによるデマンドレスポンスがあった場合に、前記水素製造装置の負荷を上げて前記水素貯蔵設備へ貯蔵すると共に、電力系統の電力を用いて前記蓄電池を充電する請求項又は記載の水素製造制御システム。
【請求項5】
前記電力管理装置は、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間でない場合であって、かつ、電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて前記蓄電池を充電する請求項~請求項の何れか1項記載の水素製造制御システム。
【請求項6】
前記電力管理装置は、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間でない場合であって、かつ、前記太陽光発電器による発電がある場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給して前記水素貯蔵設備へ貯蔵するか、又は前記太陽光発電器により発電された電力を用いて前記蓄電池を充電する請求項~請求項の何れか1項記載の水素製造制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水素供給ステーションが知られている。例えば、太陽光エネルギーに基づいて発電する太陽光発電装置と、電気事業者の系統電源から供給される電力を受電する受電装置と、太陽光発電装置により発電された電力又は受電装置により受電された電力を用いて水素を製造する水素製造装置と、太陽光発電装置における発電量に基づいて、太陽光発電装置と水素製造装置とが電気的に接続される第1の接続態様と、受電装置と水素製造装置とが電気的に接続される第2の接続態様とを切り替え可能に構成された電力切替装置とを備える水素製造システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載の従来技術では、太陽光発電装置により発電された電力又は受電装置により受電された電力を用いて水素を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-34843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水素供給ステーションでは、太陽光発電がない場合には、蓄電池に充電電力がなければ、卸電力市場価格に関わらず、電力系統からの電力を用いることになり、コストが高くなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、最適な電力コストで水素を製造することができる水素製造制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る水素製造制御システムは、水電解式により水素を製造して水素消費設備へ供給する水素製造装置と、太陽光エネルギーに基づいて発電する太陽光発電器と、蓄電池と、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、電力価格及び前記太陽光発電器による発電量に基づいて、前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が閾値より高い場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給し、前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が前記閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて、前記蓄電池を充電すると共に、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給し、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給し、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記蓄電池に充電がある場合には、前記蓄電池の放電電力を前記水素製造装置へ供給する電力管理装置と、を含んで構成されている。
【0008】
第1の発明によれば、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、電力価格及び前記太陽光発電器による発電量に基づいて、前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が閾値より高い場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給する。また、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、前記太陽光発電器による発電があり、かつ、前記電力価格が前記閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて、前記蓄電池を充電すると共に、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給する。
【0009】
また、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給する。
【0010】
また、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記蓄電池に充電がある場合には、前記蓄電池の放電電力を前記水素製造装置へ供給する。
【0011】
このように、太陽光発電器により発電された電力を水素製造装置へ供給し、電力価格が閾値以下であれば、電力系統の電力を用いて、前記蓄電池を充電し、太陽光発電器による発電がない場合に、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給するか、又は前記蓄電池の放電電力を前記水素製造装置へ供給することにより、最適な電力コストで水素を製造することができる。
【0012】
第2の発明に係る水素製造制御システムは、水電解式により水素を製造して水素消費設備へ供給する水素製造装置と、水素を貯蔵しておくための水素貯蔵設備と、太陽光エネルギーに基づいて発電する太陽光発電器と、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、電力価格及び前記太陽光発電器による発電量に基づいて、前記太陽光発電器による発電がある場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給し、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給し、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記水素貯蔵設備に水素貯蔵がある場合には、前記水素貯蔵設備からの水素を、前記水素消費設備へ供給する電力管理装置と、を含んで構成されている。
【0013】
第2の発明によれば、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、電力価格及び前記太陽光発電器による発電量に基づいて、前記太陽光発電器による発電がある場合には、前記太陽光発電器により発電された電力を前記水素製造装置へ供給する。
【0014】
また、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給する。
【0015】
また、電力管理装置が、前記水素消費設備へ水素を供給すべき期間において、前記太陽光発電器による発電がなく、かつ、前記電力価格が閾値より高く、かつ、前記水素貯蔵設備に水素貯蔵がある場合には、前記水素貯蔵設備からの水素を、前記水素消費設備へ供給する。
【0016】
このように、太陽光発電器により発電された電力を水素製造装置へ供給し、電力価格が閾値以下であれば、電力系統の電力を用いて、前記蓄電池を充電し、太陽光発電器による発電がない場合に、電力系統の電力を前記水素製造装置へ供給するか、又は前記水素貯蔵設備からの水素を、前記水素消費設備へ供給することにより、最適な電力コストで水素を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の水素製造制御システムによれば、最適な電力コストで水素を製造することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る水素製造制御システムを示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る電力管理装置における水素製造制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る電力管理装置におけるデマンドレスポンス対応処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
<水素製造制御システムのシステム構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る水素製造制御システム100は、電力管理装置10と、蓄電池20と、太陽光発電器30と、水素製造装置40と、水素貯蔵設備50とを備えている。水素製造制御システム100は、水素消費設備を持つ事業所や工場などに設置される。
【0021】
水素製造装置40は、高分子膜型/アルカリ型の水電解式により水素を製造して、水素消費設備へ供給する。なお、水素消費設備へ水素を供給すべき期間が予め定められており、例えば、常時である。また、水素製造装置40が、高分子膜型/アルカリ型の水電解式により水素を製造するのは一例であって、他の方法により水素を製造してもよい。
【0022】
水素貯蔵設備50は、水素製造装置40により製造された水素を貯蔵しておくための設備である。太陽光発電量がある時間帯に、水素製造装置40により需要を上回る量の水素を製造するようにして、水素貯蔵設備50に水素を貯蔵する。これにより、太陽光発電量がない場合にも貯蔵していた再エネ由来の水素を供給することができる。なお、ボンベやカードルなどの水素貯蔵設備を用いてもよい。
【0023】
太陽光発電器30により発電された電力は、電力管理装置10を介して、水素製造装置40や他の負荷に供給される。また、太陽光発電器30により発電された電力は、蓄電池20にも供給され、蓄電池20が充電される。特に、需要を上回る電力が発電された場合に、蓄電池20に供給される。
【0024】
電力管理装置10は、電力価格や太陽光発電量を参照して、水素製造装置40へ供給する電力を切り替えたり、水素消費設備へ供給する水素を切り替えたりする。なお、参照する電力価格としては、予め定められた料金テーブル(電力供給約款の価格)や、卸電力市場価格が考えられる。
【0025】
具体的には、電力管理装置10は、太陽光発電がある場合には、太陽光発電の電力を水素製造装置40へ供給する。これにより、再エネ由来の水素を製造することができる。また、電力管理装置10は、太陽光発電があり、かつ、電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて、蓄電池20を充電する。
【0026】
太陽光発電がない場合には、電力管理装置10は、電力価格が閾値以下であるか否かを判断し、電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を水素製造装置40へ供給する。電力価格が閾値より高い場合には、電力管理装置10は、水素貯蔵があれば、水素貯蔵設備50からの水素を、水素消費設備へ供給し、蓄電池20の充電電力があれば、蓄電池20の放電電力を水素製造装置40へ供給する。
一方、水素貯蔵がなく、かつ、蓄電池20の充電電力がない場合には、電力管理装置10は、電力系統の電力を水素製造装置40へ供給する。
【0027】
また、水素供給期間でない場合に、電力管理装置10は、太陽光発電があれば、太陽光発電の電力で蓄電池20を充電するか、又は太陽光発電の電力を水素製造装置40へ供給して水素貯蔵設備50に貯蔵する。一方、太陽光発電がない場合には、電力価格が閾値以下であるか否かを判定し、電力価格が閾値以下である場合には、電力系統の電力を用いて蓄電池20を充電するか、又は電力系統の電力を水素製造装置40へ供給して水素貯蔵設備50に貯蔵する。
【0028】
<水素製造制御システム100の動作>
次に、本実施の形態に係る水素製造制御システム100の動作について説明する。
【0029】
電力管理装置10により、図2に示す水素製造制御処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0030】
まず、ステップS100において、水素消費設備へ水素を供給すべき期間であるか否かを判定する。水素消費設備へ水素を供給すべき期間である場合には、ステップS102へ移行し、一方、水素消費設備へ水素を供給すべき期間でない場合には、ステップS123へ移行する。
【0031】
ステップS102では、太陽光発電器30による太陽光発電があるか否かを判定する。太陽光発電器30による太陽光発電がある場合には、ステップS104において、太陽光発電器30による太陽光発電の電力を水素製造装置40へ供給する。
【0032】
ステップS106では、電力価格が閾値以下であるか否かを判定し、電力価格が閾値以下である場合には、ステップS108において、電力系統の電力を用いて、蓄電池20を充電し、水素製造制御処理ルーチンを終了する。
【0033】
太陽光発電器30による太陽光発電がない場合には、ステップS110では、電力価格が閾値以下であるか否かを判定する。
【0034】
電力価格が閾値以下である場合には、ステップS112において、電力系統の電力を、水素製造装置40へ供給し、水素製造制御処理ルーチンを終了する。
【0035】
一方、電力価格が閾値より高い場合には、ステップS114において、水素貯蔵設備50に水素の貯蔵があるか、又は蓄電池20に充電電力があるかを判定する。
【0036】
水素貯蔵設備50に水素の貯蔵がある場合、又は蓄電池20に充電電力がある場合には、ステップS116において、水素貯蔵設備50に貯蔵された水素を、水素消費設備へ供給するか、又は蓄電池20の充電電力を、水素製造装置40へ供給し、水素製造制御処理ルーチンを終了する。この場合には、水素製造装置40への電力供給は行わない。
【0037】
水素貯蔵設備50に水素の貯蔵がなく、かつ、蓄電池20に充電電力がない場合には、ステップS122において、電力系統の電力を、水素製造装置40へ供給し、水素製造制御処理ルーチンを終了する。このとき、将来の太陽光発電器30による発電量又は将来の電力価格を予測し、予測結果に基づいて、蓄電池20の充電電力や水素貯蔵設備50の水素貯蔵量を考慮し、現在の電力価格が閾値より高い場合であっても、電力系統の電力を、水素製造装置40へ供給して水素貯蔵設備50へ貯蔵するか、又は電力系統の電力を用いて蓄電池20を充電する。
【0038】
また、ステップS123では、太陽光発電器30による太陽光発電があるか否かを判定する。太陽光発電器30による太陽光発電がある場合には、ステップS128において、太陽光発電器30による太陽光発電の電力を用いて、蓄電池20を充電するか、又は太陽光発電器30による太陽光発電の電力を水素製造装置40へ供給し、水素製造制御処理ルーチンを終了する。
【0039】
上記ステップS123において太陽光発電器30による太陽光発電がない場合には、ステップS124で、電力価格が閾値以下であるか否かを判定し、電力価格が閾値以下である場合には、ステップS126において、電力系統の電力を用いて、蓄電池20を充電するか、又は電力系統の電力を、水素製造装置40へ供給して水素貯蔵設備50へ貯蔵し、水素製造制御処理ルーチンを終了する。
【0040】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る水素製造制御システムによれば、太陽光発電器により発電された電力を水素製造装置へ供給し、電力価格が閾値以下であれば、電力系統の電力を用いて、蓄電池を充電し、太陽光発電器による発電がない場合に、電力系統の電力を水素製造装置へ供給するか、又は水素貯蔵設備からの水素を水素消費設備へ供給するか、又は蓄電池の放電電力を水素製造装置へ供給することにより、最適な電力コストで水素を製造することができる。
【0041】
また、水素製造装置と、蓄電池及び水素貯蔵設備の最適運用により、再生可能エネルギーの出力変動に伴う需給バランスの変動を平準化することができる。
【0042】
また、再エネ由来の水素を活用することで、事業所・工場から排出するCO2排出量を削減できる。また、送電容量が限られた送電線に太陽光発電設備が設置される場合に、出力変動の平準化により送電網の増強が不要になる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る水素製造制御システムについて説明する。なお、第2の実施の形態に係る水素製造制御システムは、第1の実施の形態に係る水素製造制御システムと同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
第2の実施の形態では、デマンドレスポンスに対応している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0045】
第2の実施の形態に係る水素製造制御システム100の電力管理装置10は、電力需要を減らすデマンドレスポンスがあった場合に、水素製造装置40の負荷を下げると共に、蓄電池20の放電電力を、水素製造装置40又は他の負荷へ供給する。
【0046】
また、電力管理装置10は、電力需要を増やすデマンドレスポンスがあった場合に、水素製造装置40の負荷を上げて水素貯蔵設備50へ貯蔵すると共に、電力系統の電力を用いて蓄電池20を充電する。
【0047】
<水素製造制御システム100の動作>
次に、第2の実施の形態に係る水素製造制御システム100の動作について説明する。
【0048】
電力管理装置10により、上記図2に示す水素製造制御処理ルーチンが繰り返し実行される。また、並行して、電力管理装置10により、図3に示すデマンドレスポンス対応処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0049】
まず、ステップS200において、デマンドレスポンスがあったか否かを判定する。デマンドレスポンスがあった場合には、ステップS202へ進み、電力需要を増やすデマンドレスポンス(上げDR)であるか、電力需要を減らすデマンドレスポンス(下げDR)であるかを判定する。
【0050】
電力需要を減らすデマンドレスポンスである場合には、ステップS204において、水素消費設備へ水素を供給すべき期間であるか否かを判定する。水素消費設備へ水素を供給すべき期間である場合には、ステップS206において、水素製造装置40の負荷を低減する。これにより、水素製造装置40の電力需要を減少させる。一方、水素消費設備へ水素を供給すべき期間でない場合には、ステップS208へ移行する。
【0051】
ステップS208では、蓄電池20の放電電力を、水素製造装置40又は他の負荷へ供給し、デマンドレスポンス対応処理ルーチンを終了する。ここで、水素消費設備へ水素を供給すべき期間である場合には、蓄電池20の放電電力を、水素製造装置40及び他の負荷へ供給し、水素消費設備へ水素を供給すべき期間でない場合には、蓄電池20の放電電力を、他の負荷へ供給する。これにより、水素製造装置40や他の負荷の電力需要を減少させる。
【0052】
電力需要を増やすデマンドレスポンスである場合には、ステップS210において、水素消費設備へ水素を供給すべき期間であるか否かを判定する。水素消費設備へ水素を供給すべき期間である場合には、ステップS212において、水素製造装置40の負荷を上げる。これにより、水素製造装置40の電力需要を増加させる。一方、水素消費設備へ水素を供給すべき期間でない場合には、ステップS214へ移行する。
【0053】
ステップS214では、電力系統の電力で蓄電池20を充電するか、又は電力系統の電力を水素製造装置40へ供給して水素貯蔵設備50に貯蔵し、デマンドレスポンス対応処理ルーチンを終了する。
【0054】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る水素製造制御システムによれば、デマンドレスポンスがあった場合に、水素製造装置と、蓄電池・水素貯蔵設備の最適運用により、再生可能エネルギーの出力変動に伴う需給バランスの変動を平準化すると共に、電力系統への調整力を提供することができる。例えば夕方の太陽光発電電力の急激な低下と需要の増加に伴う、電力系統の調整力(瞬動予備力等)が不足する時間帯に、水素貯蔵設備または蓄電池の運用により、電力系統の電力を使わずに水素を供給することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0056】
例えば、事業所・工場等において停電が発生した場合に、上記の実施の形態で説明した方法を適用して、充電池や水素貯蔵設備を活用して、安定的に水素を供給できるようにしてもよい。
【0057】
また、水素製造制御システムが、蓄電池と水素貯蔵設備との双方を備えている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、水素製造制御システムが、蓄電池と水素貯蔵設備との少なくとも一方を備えていればよい。
【符号の説明】
【0058】
10 電力管理装置
20 蓄電池
30 太陽光発電器
40 水素製造装置
50 水素貯蔵設備
100 水素製造制御システム
図1
図2
図3