(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】体温測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20220107BHJP
G01K 13/20 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
A61B5/01 100
G01K13/20 341G
(21)【出願番号】P 2018077875
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 久美
(72)【発明者】
【氏名】小俣 景子
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153978(JP,A)
【文献】特開2014-176599(JP,A)
【文献】特表2007-501664(JP,A)
【文献】特開2004-163391(JP,A)
【文献】登録実用新案第3070856(JP,U)
【文献】特表2010-517657(JP,A)
【文献】特開2008-128781(JP,A)
【文献】特開2016-026547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0100042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01K 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定者の皮膚上に着用している衣類に装着させて少なくとも皮膚温度を測定する体温測定装置であって、
装置本体と、
測定者の皮膚側となる前記装置本体の筐体面の所定位置に配置されて皮膚温度を測定するための皮膚温度センサと、
前記皮膚温度センサが配置されている筐体面より低い段差面に開閉自在に設けられて当該段差面と前記衣類の一端を挟持するものであり、当該挟持の際に当該皮膚温度センサの配置されている筐体面と略平面状態となるクリップ部と、
を有することを特徴とする体温測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着させて少なくとも皮膚温度を測定する体温測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康管理を目的として、就寝中や運動中、作業中等の長時間にわたり体温を測定するニーズが高まっている。体温を測定するためには口内や腋下で測定するのが一般的だが、これらの位置では長時間の体温を測定することは困難である。長時間の体温を測定する方法として、機器を身体に装着し体表温度(皮膚温度)を測定する方法が知られており、測定者に装置装着の違和感を与えず、皮膚に温度検出のセンサを確実に接触状態とさせることが望まれる。
【0003】
従来、少なくとも皮膚温度を測定するための体温測定装置は、例えば特許文献1~3等により知られている。特許文献1には、身体温度情報端末装置として、ケーシングの体表面側となる面に体表温度検出部が当該ケーシングより突出されて設けられ、反対面に外気温度検出部が当該ケーシングより突出されて設けられた構成とし、ケーシングを衣類の中に装着させる装置として記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ウエアラブルセンサ装置として、ケーシング内部の体表面側となる面に体表温度検出部が設けられ、反対面に外気温度検出部が設けられて当該ケーシングを衣類の中に装着させるもので、体表温度がケーシングを通じて体表温度検出部の測温素子に熱伝導させることによって測温されることが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、装着式温度測定装置として、ケーシングの体表面側となる面に体表温度検出部が当該ケーシングと同一面に表出されて設けられ、体表面と反対側であって、ケーシング内部の表示部の裏面側に設けられた構成とし、ケーシングを衣類の中に装着させる装置として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3909301号公報
【文献】特許第6163637号公報
【文献】特開2008-128781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1~3の何れもケーシングを衣類の中に装着させるもので、特許文献1の
図6に示されるように衣類の中で厚みのあるケーシングの周辺で空間がある状態では測定者に対して皮膚に接触している装置(ケーシング)を意識させ易く、睡眠中や日常の行動で違和感や不快感を生じさせるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、皮膚に対する温度センサの接触を確保し、装置装着による違和感や不快感を軽減させて装着性を向上させる体温測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、測定者の皮膚上に着用している衣類に装着させて少なくとも皮膚温度を測定する体温測定装置であって、装置本体と、測定者の皮膚側となる前記装置本体の筐体面の所定位置に配置されて皮膚温度を測定するための皮膚温度センサと、前記皮膚温度センサが配置されている筐体面より低い段差面に開閉自在に設けられて当該段差面と前記衣類の一端を挟持するものであり、当該挟持の際に当該皮膚温度センサの配置されている筐体面と略平面状態となるクリップ部と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、皮膚温度センサを測定者の皮膚側となる装置本体の筐体面の所定位置に配置させ、クリップ部を皮膚温度センサが配置されている筐体面より低い段差面に開閉自在に設け、当該クリップ部と段差面とにより衣類の一端を挟持させた際に、当該クリップ部が皮膚温度センサの配置されている筐体面と略平面状態とさせる構成とすることにより、測定者の皮膚側にはクリップ部が位置されることで衣類とクリップ部との周辺の空間を少なくさせて衣類との一体感を与え、装置装着による違和感や不快感を軽減させて装着性を向上させることができるものである。また、装着時のクリップ部と皮膚温度センサの配置されている筐体面とを略平面状態とさせることから、皮膚に温度センサをむやみに押し付けることなく接触状態を確保することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の体温測定装置におけるクリップ部の動作説明図である。
【
図3】
図1の体温測定装置の使用状態の説明図である。
【
図4】本発明に係る体温測定装置のクリップ部の他の形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に本発明に係る体温測定装置の構成図を示すと共に、
図2に
図1の体温測定装置におけるクリップ部の動作説明図を示す。
図1(A)~(C)において、体温測定装置11は、測定者の皮膚上に着用している衣類に装着させて少なくとも皮膚温度を測定するもので、装置本体12にクリップ部17が設けられた構成である。
【0013】
装置本体12は、筐体の一方面を測定者の皮膚側となる筐体面(皮膚側筐体面13)とし、当該皮膚側筐体面13の所定位置(一端部分)に皮膚温度を測定するための皮膚温度センサ15が当該皮膚側筐体面13より測定者に違和感を与えない程度の所定高さで突出した状態で配置される。なお、皮膚温度センサ15は、その先端部分を突出させることが好ましいが、皮膚側筺体面13と同一面であってもよい
【0014】
この実施形態では、本発明における体温測定装置11を、皮膚温度と外部温度とにより体温を特定するための装置に適用させる場合として、筐体の他方面(筐体反対面14)の所定位置に、例えばその先端部分が筐体の内部側に位置される外部温度センサ19が設けられた構成として示している。なお、外部温度センサ19は上記筐体反対面14に限らず、皮膚温度センサ15が設けられる筐体面以外の筐体面に設けることとしてもよい。また、体温測定装置11は、体温測定機能以外にも、心電波形や心拍を測定するための心電センサや、人の体勢や呼吸等の体の動きを検知するための加速度センサを搭載するものであってもよい。
【0015】
装置本体12の筐体は、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、シリコン、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PE)等の樹脂で形成され、皮膚温度センサ15及び外部温度センサ19が実装されて少なくとも皮膚温度センサ15により測定される皮膚温度の処理に関する電子回路部20を内包する所定の厚さのものである。
【0016】
また、装置本体12の筐体には、皮膚温度センサ15が配置されている皮膚側筐体面13より低い段差面13Aが形成され、当該段差部分に設けられたクリップ開閉基部16と一体的にクリップ部17が設けられるもので、
図2に示すように、クリップ開閉基部16を軸として開閉自在とされる。
【0017】
上記クリップ部17は、装置本体12の筐体と同じ材質でもよく、異なる材質のものであってもよいが、装置本体12の厚さに比べて薄厚のものである。当該クリップ開閉基部16には、図示しないが、クリップ部17を閉状態とさせるときに付勢力が働く機構のものであって、従前より知られている機構を適用するものとして詳細を省略する。
【0018】
また、装置本体12の段差面13Aに設けられたクリップ部17は、皮膚温度センサ15が設けられた皮膚側筐体面13より所定距離Dで低くなるように設けられる。当該距離Dは、クリップ部17の衣類装着面17A(
図2参照)と段差面13Aとにより衣類の一端を挟持した際に当該クリップ部17と皮膚側筐体面13とが略平面状態となるように、例えば装着する衣類を想定して設定される。
【0019】
さらに、クリップ部17の衣類装着面17Aには、例えばゴム材のような滑り止め部18が設けられる(
図2参照)。当該滑り止め部18は、衣類に装着したときに当該衣類に対してずれないようにするためのもので、設けられる位置は、衣類装着面17A側に限らず、段差面13A側に設けてもよく、また、両方に設けてもよい。すなわち、滑り止め部18は、その目的からして、上記のような部材であってもよく、例えば衣類装着面17Aや段差面13Aの何れか一方又は両方を凹凸に加工することとしてもよい。上記両方に凹凸を形成する場合には互いに嵌合するようにすることで固定性を向上させることができる。
【0020】
そこで、
図3に、
図1の体温測定装置の使用状態の説明図を示す。
図3(A)に示すように、体温測定装置11のクリップ部17が開状態とされ、
図3(B)、(C)に示すように、測定者の皮膚21上に着用している衣類22の一端から当該クリップ部17を皮膚21側になるように差し込み、閉状態とさせることよりクリップ部17の衣類装着面17Aと装置本体12の段差面13Aとにより衣類22の一端を挟持することとなって装着状態となる。
【0021】
この装着により、皮膚温度センサ15が設けられた皮膚側筐体面13がクリップ部17と同一側に設けられており、当該皮膚側筐体面13に設けられた皮膚温度センサ15が皮膚21と接触状態となる。また、このときには皮膚側筐体面13とクリップ部17とは、
図3(B)に示すように、略平面状態となる。
【0022】
このような装着状態を上方より見たときに、
図3(C)に示すように、皮膚21と衣類22との間にはクリップ部17が介在されることとなり、当該クリップ部17の厚さ分により生じる空間はきわめて少ないものとなる。
【0023】
すなわち、体温測定装置11を装着したときに、測定者にとっては衣類22と一体感を与え、装置装着による違和感や不快感を軽減させて装着性を向上させることができるものである。また、装着時のクリップ部17と皮膚温度センサ15の配置されている皮膚側筐体面13とを略平面状態とさせることから、皮膚21に皮膚温度センサ15をむやみに押し付けることなく接触状態を確保することができるものである。
【0024】
なお、上記クリップ部17は、皮膚21に直接触れることとなることから、装着時に冷感を感じさせないようにすることが好ましい。例えば、クリップ部17上に薄手の布等を貼り付けることとしてもよい。
【0025】
次に、
図4に、本発明に係る体温測定装置のクリップ部の他の形状の説明図を示す。上述の
図1~
図3では、クリップ部17を板状として示したが、これに限定されるものではなく、衣類22の一端を挟持できる形状であればよい。例えば、
図4(A)に示すように、内側をくり抜いて外側周縁で構成した形状としてもよく、また、
図4(B)に示すように、装置本体12の段差面13Aより小サイズとした形状としてもよいものであり、クリップ状態を確保しつつ装置全体の軽量化を図ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の体温測定装置は、身体に装着させて少なくとも皮膚温度を測定する装置の製造、販売、使用等の産業分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
11 体温測定装置
12 装置本体
13 皮膚側筐体面
13A 段差面
14 筐体反対面
15 皮膚温度センサ
16 クリップ開閉基部
17 クリップ部
17A 衣類装着面
18 滑り止め部
19 外部温度センサ
20 電子回路部
21 皮膚
22 衣類