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特許6997040積層造形物の製造方法、及び積層造形物の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】積層造形物の製造方法、及び積層造形物の検査方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20220107BHJP
   B29C 64/141 20170101ALI20220107BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220107BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 3/20 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 3/30 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B29C64/141
B33Y30/00
B23K31/00 K
G01N3/08
G01N3/20
G01N3/30 N
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018115234
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019217517
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄幹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-002472(JP,A)
【文献】特開2011-121364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B29C 64/141
B33Y 30/00
B23K 31/00
G01N 3/08
G01N 3/20
G01N 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材を溶融、凝固させた層状体を積層して、所望の形状の積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記積層造形物は、製品となる製品部分と、試験片を内包する大きさの試験片部分とを有し、
前記層状体を、前記製品部分から前記試験片部分まで連続して形成する工程を含み、
前記工程により形成された前記試験片部分は、前記試験片を含む、
積層造形物の製造方法。
【請求項2】
前記造形材を予め定めた軌道に沿って肉盛りして前記層状体を形成する層状体形成工程を有し、
前記層状体形成工程は、前記層状体の層毎に、前記製品部分を形成する前記軌道を延長して、前記試験片部分を形成する請求項1に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項3】
前記層状体形成工程は、前記軌道を、前記製品部分の外縁から前記試験片のサイズに1~15mmを加えた長さに延長して、前記試験片部分を形成する請求項2に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項4】
前記試験片部分を、前記製品部分よりも前記層状体の積層方向に関して厚く積層する請求項1~3のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項5】
前記造形材は溶加材であり、
前記層状体は、前記溶加材を溶融及び凝固させたビードにより形成する請求項1~4のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項6】
前記層状体の初層をベース材に形成し、前記初層以降の層状体を前記ベース材から離れる方向に順次に積層する請求項1~5のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項7】
前記ベース材は、前記製品部分に必要な前記層状体の層面よりも広い余剰領域を有し、
前記余剰領域に前記試験片部分を形成する請求項6に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項8】
前記試験片部分を前記製品部分から分離させる切り出し工程を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項9】
前記試験片部分を前記製品部分から分離させる切り出し工程を有する請求項6又は7に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項10】
前記切り出し工程は、前記試験片部分を、前記ベース材と前記層状体の前記初層との融合部を除いて分離させる請求項9に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項11】
前記切り出し工程は、前記試験片部分を、前記ベース材と前記層状体の前記初層との融合部を含めて分離させる請求項9に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の積層造形物の製造方法により切り出された前記試験片部分から前記試験片を作製し、
作製された前記試験片を用いて、前記積層造形物の機械特性試験を行う積層造形物の検査方法。
【請求項13】
前記試験片は、シャルピー衝撃試験、引張試験、曲げ試験のいずれかに用いるものである請求項12に記載の積層造形物の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の製造方法、及び積層造形物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、溶接加工では、その加工品質を製品から直接確認することができず、非破壊検査や製造プロセスの妥当性から確認することになる。しかし、非破壊検査においては破壊靱性等の強度特性の測定ができないため、製造プロセスの妥当性を判断して、加工品質を保証することとなる。
溶接により大型の積層造形物を製造する場合には、数百パス以上の溶接が行われる。溶接された各パスでは、前層の形状(位置関係)等の施工状況によってそれぞれ異なるビード形態の溶接パターンになる。つまり、初層と2層目以降とはでは溶接パターンが異なり、例えば、歯車の歯を造形する場合、歯の中央部と端部とでは溶接パターンが異なる場合がある。
そのため、製造プロセスの妥当性を正確に評価するためには、全パスの評価、又は全パスに含まれる施工状況等の詳細な評価が必要になる。溶接パターンを、その施工状況が異なるパス毎に評価する場合、評価に必要とされるパスの抽出と、各々の施工状況を再現する溶接軌道の設計が必要になる。したがって、これら評価を行う場合、多大な労力と時間を要することになる。このことは、溶接加工による積層造形に限らず、他の方式による積層造形法であっても同様に生じ得る。
【0003】
このような事情から、積層造形物の製造時に、製品と共に試験片を造形して、この試験片を、完成した製品の品質評価用に使用する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-121364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、試験片を製品に直接接続せず、製品とは別体となる基部に試験片を形成する。これにより、製品を試験片から容易に分離可能としている。しかしながら、特許文献1の技術では、完成した製品全体の機械的特性を試験片で代用して評価できても、製品の局所的な部位の機械的特性までを詳細に評価することはできない。そのため、依然として製品の製造時における製造プロセスの妥当性を評価できなかった。
【0006】
本発明は、積層造形される製品の各部における製造プロセスの妥当性を詳細に評価できる試験片を、製品と共に造形する積層造形物の製造方法、及びこの試験片を用いて機械的特性を検査する積層造形物の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 造形材を溶融、凝固させた層状体を積層して、所望の形状の積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記積層造形物は、製品となる製品部分と、試験片を内包する大きさの試験片部分とを有し、
前記層状体を、前記製品部分から前記試験片部分まで連続して形成する工程を含み、
前記工程により形成された前記試験片部分は、前記試験片を含む、
積層造形物の製造方法。
(2) 前記積層造形物の製造方法により切り出された前記試験片部分から前記試験片を作製し、
作製された前記試験片を用いて、前記積層造形物の機械特性試験を行う積層造形物の検査方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層造形される製品の各部における製造プロセスの妥当性を詳細に評価できる試験片を、製品と共に造形できる。また、この試験片を用いて積層造形物の製品の機械的特性を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】積層造形物の製造装置の概略構成図である。
図2】本発明に係る積層造形物の製造方法によって、ベース板上に積層造形物を造形する様子を模式的に示す断面図である。
図3】(A)はシャルピー衝撃試験用の試験片の正面図、(B)は(A)のIII-III線断面図である。
図4図2に示す積層造形物と共に造形される試験片部分から試験片を切り出す様子を模式的に示す断面図である。
図5】(A)、(B)は積層方向に複数の試験片を切り出す様子を示す説明図である。
図6】積層造形物の積層方向の厚さよりも長い試験片を作製する様子を模式的に示す断面図である。
図7図6に示す試験片を切り出す様子を示す説明図である。
図8】試験片部分とベース板との融合部が試験片中央に配置される試験片を作製する様子を模式的に示す断面図である。
図9】積層造形物であるスクリューの斜視図である。
図10図1に示す積層造形装置の造形コントローラの詳細を示すブロック図である。
図11】積層造形物を積層造形する積層計画を作成し、この積層計画に従って造形部に積層造形物を造形させるプログラムを生成する工程を示すフローチャートである。
図12】積層造形物の軸方向に直交する一断面において粗形材領域を決定する様子を示す説明図である。
図13】積層造形物の外形を、粗形材領域と積層造形領域とに区分けした結果を示す説明図である。
図14】積層造形物の一部正面図である。
図15図14に示すXV-XV線のA1部における断面図である。
図16】ビードを形成する様子を模式的に示す工程説明図である。
図17】試験片を内包する試験片部分が形成されたスクリュー形状の積層造形物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<積層造形物の製造装置>
図1は積層造形物の製造装置の概略構成図である。
本構成の積層造形物の製造装置100は、造形部11と、造形部11を統括制御する造形コントローラ13と、電源装置15と、を備える。
【0011】
造形部11は、先端軸にアーク溶接用のトーチ17が設けられたトーチ移動機構である溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Fmを供給する溶加材供給部21とを有する。
【0012】
溶接ロボット19は、例えば6軸の自由度を有する多関節ロボットであり、ロボットアームの先端軸に取り付けたトーチ17には、溶加材Fmが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0013】
トーチ17は、溶加材Fmを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Fmの先端からアークを発生させる。トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからトーチ先端にシールドガスが供給される。アーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Fmがコンタクトチップに保持される。
【0014】
溶加材Fmは、あらゆる市販の溶接ワイヤが使用可能である。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0015】
溶加材Fmは、溶接ロボット19のロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17は、造形コントローラ13からの指令によりロボットアームが駆動されることで、所望の溶接ラインに沿って移動する。また、連続送給される溶加材Fmは、トーチ17の先端で発生するアークによってシールドガス雰囲気で溶融され、凝固する。これにより、溶加材Fmの溶融凝固体であるビード25が形成される。このように、造形部11は、溶加材Fmの溶融金属を積層する積層造形装置であって、ベース板23上に多層状にビード25を積層することで、積層造形物26を造形する。
【0016】
溶加材Fmを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。アークを用いる場合は、シールド性を確保しつつ、素材、構造によらずに簡単にビードを形成できる。電子ビームやレーザにより加熱する場合は、加熱量を更に細かく制御でき、ビードの状態をより適正に維持して、積層造形物の更なる品質向上に寄与できる。
【0017】
本構成の積層造形物の製造装置100における造形コントローラ13は、入力された3次元形状データを用いて、積層造形物26のビード形成用のモデルを生成し、トーチの移動軌跡や溶接条件等の積層計画を作成する。そして、積層計画に応じて造形部11や電源装置15等の各部を駆動させるプログラムを作成する。
【0018】
造形コントローラ13がプログラムを実行すると、造形部11や電源装置15等の各部が、プログラムされた所定の手順に従って駆動される。溶接ロボット19は、造形コントローラ13からの指令により、プログラムされた軌道軌跡に沿ってトーチ17を移動させるとともに、溶加材Fmを所定のタイミングでアークにより溶融させて、所望の位置にビード25を形成する。これにより、所望の形状の積層造形物26が積層造形される。
【0019】
<積層造形方法>
図2は本発明に係る積層造形物の製造方法によって、ベース板23上に積層造形物26を造形する様子を模式的に示す断面図である。
本構成の積層造形物26は、製品となる製品部分27と、詳細を後述する試験片を内包する大きさの試験片部分37と、製品部分27と試験片部分37との間に配置される余盛り部分35とを有する。
【0020】
試験片部分37は、製品部分27及び余盛り部分35と共に連続して造形される。そして、積層造形物26の造形後に、試験片部分37を切り出して試験片を作製する。作製した試験片は、機械特性試験の試験片として、積層造形物26の製品部分27(製品)の機械特性を評価するために供される。
【0021】
図1に示すトーチ17は、溶接ロボット19の駆動によって、ベース板23上で移動する。このトーチ17が移動する軌道に沿って、ベース板23にビード25が形成される。ビード25は、溶加材Fmをアークにより溶融させた溶加材Fmがベース板23上で凝固した肉盛りとして形成される。
【0022】
図示例では、所望の形状の製品部分27における形成開始端31から矢印D1に沿って、初層のビード25による層状体H1を形成する。層状体H1は、製品部分27の形成終端33を超えて、余盛り部分35、及び試験片を作製するための試験片部分37の終端39まで連続して形成される。
【0023】
初層の層状体H1の上に形成する2層目以降の層状体H2~層状体Hnについても同様に、矢印D2~Dnに沿って、製品部分27の形成開始端31から形成終端33を超えて、余盛り部分35、及び試験片部分37の終端39まで連続して形成する。つまり、層状体H1~Hnの層毎に、製品部分27を形成するビード25の軌道を延長して、試験片部分37を形成する。
【0024】
これにより、製品部分27の形成終端33に、余盛り部分35を介して試験片部分37が一体となって形成される。
【0025】
余盛り部分35は、試験片や製品部分27のニアネットシェイプ加工のため、また、NC加工の削り代のため、ビード形成方向(D1,D2,・・・,Dn方向)に沿った長さLを、1~5mm、好ましくは1.5~3mm、更に好ましくは2mm±0.5mmとする。上記範囲にすることで、試験片を製品部分27の近接部から切り出すことができ、製品部分27のプロセスの妥当性を高い精度で確認できる。
【0026】
また、ビードの形成方向に関して、製品部分27の外縁となる形成終端33から試験片部分37の終端39までの長さLを15mm以上にする。つまり、ビードを製品部分27から15mm以上延長して、余盛り部分35と試験片部分37を形成するのが好ましい。その場合、試験片部分37が必要とする試験片サイズよりも十分に大きくなり、シャルピー衝撃試験等の機械的特性試験に用いる規格形状の試験片を不足なく作製できる。具体的には、作製する試験片サイズに1~15mmを加えたサイズまでビードを延長することが好ましい。上記した試験片サイズとは、試験片のビード形成方向に沿った長さであり、複数の試験片を作製する場合は、複数の試験片の合計の長さを意味する。
【0027】
ここで用いる試験片及びその試験方法は、製品部分27の機械的性質を検査するためのもので、例えば、JIS Z2201(金属材料引張試験方法),Z2202(金属材料のシャルピー衝撃試験方法),Z2204(金属材料曲げ試験片)に準拠する試験片及びその試験方法を採用できる。
【0028】
図3の(A)はシャルピー衝撃試験用の試験片41の正面図、(B)は(A)のIII-III線断面図である。
図示例のシャルピー衝撃試験用の試験片41は、長手方向の長さLaが55mm、長手方向に直交する断面の一辺の長さLbが10mmの角棒であり、長手方向中央部にV字溝41aが形成される。
【0029】
この他にも、例えば引張試験を行う場合は、上記JIS規格で規定される4号試験片(平行部の径:φ14mm、平行部の長さ:60mm)、10号試験片(平行部の径:φ12.5mm、平行部の長さ:60mm)、8号試験片(8Aの場合で平行部の径:φ8mm、平行部の長さ:8mm)等を用いることができる。
【0030】
<試験片の第1構成例>
図4図2に示す製品部分27と共に造形される試験片部分37から試験片41を切り出す様子を模式的に示す断面図である。
図3に示す試験片41は、図4に示す試験片部分37から切り出される。図示例では、試験片41の長手方向長さLaよりも、製品部分27、余盛り部分35、試験片部分37が高く積層造形される。
【0031】
この場合、ベース板23に積層された製品部分27と試験片部分37との間の余盛り部分35を、層状体H1,H2,・・・,Hn(図2参照)の層面に対して垂直(積層方向に平行)な平面Paで切断する。また、ベース板23と試験片部分37との間における層状体の層面に沿った平面Pbで切断する。
【0032】
この切断は、例えばフライス加工、マシニングセンターを用いた加工、ワイヤーカット放電加工、レーザ切断、ダイシング等の加工法により行える。そして、切断後の試験片部分37の部材は、上記のいずれかの加工方法、又はこれらを組み合わせた加工によって、規定の試験片形状に加工される。こうして、製品部分27、余盛り部分35及びベース板23から試験片41が分離して切り出される。
【0033】
切り出された試験片41は、製品部分27の機械的特性試験に用いられる。例えば、試験片41を、引張試験、衝撃試験、曲げ試験に供することで、製品部分27を破壊、変形させることなく、機械的特性を評価できる。
【0034】
この機械的特性試験によれば、試験片41が製品部分27と共に造形され、しかも、製品部分27の近接部から試験片41が切り出されるため、製品部分27の機械的特性を試験片41によって正確に評価できる。
【0035】
また、試験片41のV字溝41aの位置を、特に機械的特性を評価したい層状体の位置(ビード高さ位置)に一致させることで、製品部分27の評価位置を選択的に決定できる。これにより、製品部分27の特に強度評価を行いたい部位がある場合に、その部位から連続してビード形成された試験片部分37の部位を検査位置とする試験片41を作製する。この試験片41を用いて機械的特性試験を行うことで、目的とする部位の評価が行える。
【0036】
<試験片の第2構成例>
図4では試験片部分37から一つの試験片41を切り出していたが、これに限らない。例えば、図5の(A)に示すように、ビード(層状体)の積層方向に複数(図示例では2つの例を示す)の試験片41A,41Bを切り出すことができる。また、図5の(B)に示すように、長手方向をビード(層状体)の層面と平行にして複数(図示例では4つの例を示す)の試験片41C,41D,41E、41Fを切り出すことができる。
【0037】
図5の(A)や(B)に示す場合には、試験片の個数に応じて製品部分27のビード(層状体)毎に強度評価が行え、製品部分27の積層方向の強度分布を評価することが可能となる。
【0038】
<試験片の第3構成例>
図6は製品部分27の積層方向の厚さよりも長い試験片を作製する様子を模式的に示す断面図である。
製品部分27の積層方向の厚さよりも長い試験片を作製する場合、試験片部分37Aにおける層状体の積層を更に追加する。
【0039】
具体的には、製品部分27のビード(層状体)の形成を終了した後、製品部分27と余盛り部分35はそのままにして、試験片部分37Aにのみ、ビード形成を更に行う。これにより、試験片部分37Aに追加積層分43が加わり、試験片41Gを作製するために必要な積層方向の長さが得られる。また、余盛り部分35と試験片部分37Aにのみビード形成を行うことでもよい。
【0040】
図7に示すように、試験片41Gの切り出し時には、ビード(層状体)の層面に対して垂直(積層方向に平行)な平面Paと、ベース板23と試験片部分37Aとの間における層状体の層面に沿った平面Pbで切断する。これにより、製品部分27、余盛り部分35及びベース板23から試験片部分37が分離して切り出される。
【0041】
<試験片の第4構成例>
図8は試験片部分37とベース板23との融合部45が試験片中央に配置される試験片41Hを作製する様子を模式的に示す断面図である。
試験片41Hは、試験片中央部に形成されたV字溝41aの溝底部47が、試験片部分37とベース板23との融合部45と同じ高さ位置に配置される。
【0042】
融合部45は、製品部分27とベース板23との融合部49と同じ積層方向の高さ位置であり、同一のビードで形成されるため、融合部45と融合部49の機械的特性は等価になる。よって、試験片41Hは、製品部分27のベース板23との融合部49の評価用として使用できる。
【0043】
この場合の試験片41Hを切り出すには、まず、ベース板23に積層された製品部分27と試験片41Hとの間の余盛り部分35を、ビード(層状体)の層面に対して垂直(積層方向に平行)な平面Paで切断する。この切断された試験片部分37に適宜な機械加工を施して、試験片41Hの形状に仕上げる。
【0044】
得られた試験片41Hは、切り欠き41aの溝底部47の部分に融合部45が配置されるため、ベース板23を含めた製品部分27の評価が可能となる。よって、製品部分27が、ベース板23を含んで製品になる場合に、試験片41Hによってベース板23との融合部49に対応する機械的性質を評価できる。
【0045】
<試験片の第5構成例>
次に、上記した積層造形物の製造方法を、スクリューの積層造形に適用した一例を説明する。
図9は積層造形物51であるスクリューの斜視図である。
積層造形物51は、円柱状の軸体53と、軸体53の外周に径方向外側へ突出する複数条(図示例では6条)の螺旋状のブレード55とを備える。複数のブレード55は、軸体53の軸方向中間部で、周方向に沿って等間隔に設けられたスクリュー形状となっている。
【0046】
図1に示す積層造形物の製造装置100は、積層造形物51を造形する際、全形状を積層造形法により形成するのではなく、軸体53を棒材等の粗形材を用いて形成し、ブレード55を積層造形法により形成してもよい。その場合、積層造形物51の軸体53を粗形材で形成し、軸体53の外周に形成されるブレード55をビードの積層によって造形する。これにより、積層造形物51の造形工数を大きく削減できる。
【0047】
図10図1に示す積層造形装置の造形コントローラ13の詳細を示すブロック図である。
造形コントローラ13は、溶接方向決定部61と、プログラム生成部63と、記憶部65と、これらが接続される制御部67と、を有する。制御部67には、製造しようとする積層造形物の形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)や、各種の指示情報が入力部69から入力される。
【0048】
溶接方向決定部61は、入力された積層造形物の3次元形状データを用いて、ビードを形成する軌道情報(位置情報)を含むビードマップを生成する。生成されたビードマップは、記憶部65に記憶される。
【0049】
プログラム生成部63は、前述した造形部11の各部を駆動して積層造形物を造形する各手順をコンピュータに実行させるためのプログラムを、上記のビードマップを用いて生成する。生成されたプログラムは、記憶部65に記憶される。
【0050】
記憶部65には、造形部11が有する各種の駆動部や可動範囲等の仕様情報も記憶され、プログラム生成部63でプログラム生成する際や、プログラムを実行する際に適宜情報が参照される。この記憶部65は、メモリやハードディスク等の記憶媒体からなり、各種情報の入出力が可能となっている。
【0051】
制御部67を含む造形コントローラ13は、CPU、メモリ、I/Oインターフェース等を備えるコンピュータ装置であって、記憶部65に記憶されたデータやプログラムを読み込み、データの処理やプログラムを実行する機能、及び造形部11の各部を駆動制御する機能を有する。制御部67は、入力部69からの操作や通信等による指示によって、記憶部65からプログラムを読み込み、実行する。
【0052】
制御部67がプログラムを実行すると、図1に示す溶接ロボット19や電源装置15等がプログラムされた所定の手順に従って駆動される。溶接ロボット19は、造形コントローラ13からの指令により、プログラムされた軌道軌跡に沿ってトーチ17を移動させるとともに、溶加材Fmを所定のタイミングでアークにより溶融させて、所望の位置にビードを形成する。
【0053】
次に、上記の積層造形物の製造装置100を用いて、積層造形物51の積層造形手順を説明する。
図11は積層造形物51を積層造形する積層計画を作成し、この積層計画に従って造形部11に積層造形物51を造形させるプログラムを生成する工程を示すフローチャートである。
【0054】
まず、図10に示す入力部69から制御部67に積層造形物51の形状を表す3次元形状データ(以降、形状データと称する。)を入力する(S11)。形状データには、積層造形物51の外表面の座標、軸体53の径や軸長等の寸法情報の他、必要に応じて参照される材料の種類や最終仕上げ等の情報も含まれる。
【0055】
図12は積層造形物51の軸方向に直交する一断面において粗形材領域を決定する様子を示す説明図である。
積層造形物51は、円柱状又は円筒状の軸体53を有し、複数のブレード55が軸体53の外周面から立設される。そこで、入力された形状データを用いて、積層造形物51の外形を、積層造形物51の基体となる粗形材領域と、基体上に形成される積層造形物51の外形となる積層造形領域とに区分けする。
【0056】
粗形材領域と積層造形領域は、積層造形物51の形状データと、用意可能な粗形材の種類に応じて決定される。図示例の積層造形物51の場合、一例として示される粗形材(丸棒)71A,71B,71Cから、積層造形物51の形状に合わせるための切削量が最小となる径の粗形材71Cが選択される。
【0057】
図13は積層造形物51の外形を、粗形材領域73と積層造形領域75とに区分けした結果を示す説明図である。
本構成例の場合、概略的には、粗形材71Cが粗形材領域73となり、粗形材71Cの外周に配置される複数のブレード55がそれぞれ積層造形領域75となる(S12)。
【0058】
次に、上記S12で決定された積層造形領域75に、ビードを形成する手順を決定する。
積層造形領域75では、複数のビードを順次に積層することでブレード55の粗形状を造形する。積層造形領域75を構成する個々のビードのビード幅、ビード高さ等のビードサイズは、トーチ17(図1参照)の移動速度、つまり、ビードの連続形成速度や、電源装置15からの溶接電流、溶接電圧、印加パルス等の溶加材や溶接部への入熱量、等の溶接条件の変更によって制御される。このビードサイズは、ビードを形成するトーチの移動方向に直交する断面で管理することが好ましい。
【0059】
図14は積層造形物51の一部正面図である。
本構成の積層造形物51においては、螺旋状のブレード55の延設方向をビード形成方向Vbに一致させれば、一つのビードの連続形成長さを長くできる。そのため、ビード形成方向Vbをブレード55の延設方向と同じにして、これを基準方向とする(S13)。その際、ビードサイズは、基準方向(ビード形成方向Vb)に直交するXV-XV線断面で示すビード断面の形状を基準に制御する。
【0060】
例えば、特定方向に連続した少なくとも一つの突起部を有する積層造形物においては、この連続する特定方向に沿ってビードを形成すれば、効率よく造形が行え、積層造形工程の煩雑化が軽減される。そこで、製造しようとする積層造形物の形状データから、まず、積層造形物の連続する特定方向を求める。この特定方向は、コンピュータによる演算によって、形状データを適宜なアルゴリズムで解析して決定してもよく、作業者が判断する等、人為的に決定してもよい。
【0061】
図15図14に示すXV-XV線のA1部における断面図である。図中の横軸は、ブレード55の延設方向(基準方向)に直交する方向で、縦軸は軸体53の径方向となるビード積層方向である。
【0062】
ここで、ブレード55の積層造形領域75を、複数の仮想ビード層に層分解する(S14)。複数層の仮想ビード層のビード(仮想ビード77として示す)は、仮想ビード層の1層分のビード高さHに応じて、ブレード55の最終形状が内包されるように配置される。図示例では、点線で示す仮想ビード77を、軸体53(粗形材71C)の表面から順次積層(層状体H1,H2,・・・)して、7層目(層状体H7)においてブレード55の径方向最外縁部55aが覆われる場合を示す。つまり、ここでは合計7層の仮想ビード層を有する積層モデルとなる。
【0063】
この積層モデルは、図13に示す複数の積層造形領域75の全てに対して生成される。そして、各積層モデルにおいては、共通の断面でビードサイズが設計される。つまり、積層造形領域75の各仮想ビード層における仮想ビード77の配置位置(ビード積層高さH等)、ビードサイズ(ビード幅W等)、溶接条件、等の諸条件を設定する(S15)。なお、図15においては仮想ビード層を7つに分割しているが、ビードサイズ、積層造形物の大きさや形状、等に応じて分割層数は任意に設定できる。
【0064】
次に、上記のように設計された積層モデルに従ってビードを粗形材71C上に形成する手順を示すプログラムを生成する(S16)。このプログラムの生成は、図10に示すプログラム生成部63が行う。
【0065】
ここでいうプログラムとは、入力された積層造形物の形状データから、所定の演算により設計されたビードの形成手順を、造形部11により実施させるための命令コードである。
【0066】
図16はビードを形成する様子を模式的に示す工程説明図である。
造形コントローラ13(図1図10参照)は、造形部11を、生成されたプログラムに従って駆動して、積層造形物の粗形材71Cにビード79A,79B,79C,・・・を順次に並設し、第1層目のビード層(層状体H1)を形成する。そして、第1層目のビード層(層状体H1)の上に第2層目のビード(層状体H2)79D,79E,・・・を順次に並設する。
【0067】
造形コントローラ13は、各ビード79A~79E,・・・の形成時に、上記したプログラムに従ってトーチ17を図中奥側(紙面垂直方向)に向けて移動させ、シールドガスG雰囲気中で発生させたアークによりビード形成の目標位置付近を加熱する。そして、加熱により溶融した溶加材Fmが目標位置で凝固することで、新たなビードが形成される。これにより、図7に示す粗形状のビード層が形成される。ビード層が形成された積層造形領域75は、その後の適宜な加工によって所望のブレード55の形状に仕上げられる。
【0068】
ここで、本構成においては、積層造形領域75をビードで形成する際に、積層造形領域75を超えた領域までビードを連続して形成し、この連続して形成されたビードから試験片を作製する。
【0069】
図17は試験片を内包する試験片部分81が形成されたスクリュー形状の積層造形物51の斜視図である。
積層造形物51には、ブレード55の軸方向端部に試験片部分81が、ビード形成方向Vbに沿って配置される。つまり、前述した図2に示すように、ブレード55となる製品部分27に、余盛り部分35と、余盛り部分35を介して接続される試験片部分81とを、製品部分27(ブレード55)となるビードを延ばして連続して形成する。
【0070】
この場合、図2に示すベース板23は、図17に示す軸体53に相当するベース材に相当する。
【0071】
ここで例示する積層造形物51は、ブレード55の半径方向の高さが60mm以上のスクリューロータである。試験片部分81は、ビードの形成方向に沿った積層造形物51の必要領域の外側で、余分に、試験片サイズに1~15mmを加えた長さを連続して形成する。そして、造形後に積層造形物51から試験片部分81を切削加工等の適宜な機械加工によって切り出す。切り出された試験片部分81は、例えば、シャルピー衝撃試験の試験片サイズ(55mm×10mm×10mm)に仕上げられる。一方、製品部分となるブレード55は、切削加工等により最終形状に仕上げられる。
【0072】
試験片部分81の切り出しは、積層造形物51の形状データを用いて、NC加工機により切断することでも行える。その場合、試験片部分81の3次元座標や切断面を求めて切断位置を指定すればよい。具体的には、試験片部分81を切り出す加工手順のプログラムを、積層造形物の積層モデルの設計と共に作成しておけばよい。そして、積層造形物の造型後に切り出しのプログラムを実行すれば、所望の試験片部分81が切り出される。更に、最終的な試験片形状まで仕上げるプログラムを作成し、これを実行して試験片を作製すれば、効率よく試験片が得られる。
【0073】
上記手順で試験片部分81の切り出しを実施し、切り出した試験片部分81の断面を観察することで、巣の有無等の溶接欠陥を確認できる。また、試験片部分81から作製した試験片を用いた機械特性試験により、積層造形物51を破壊、変形させることなく強度を評価できる。
【0074】
そして、試験片の切り出し位置をビード単位で調整することで、積層造形物51における所望の部位の強度を選択的に調べることができる。すなわち、試験片部分81は、ブレード55の軸方向端部に設けることに限らず、他の部位に設けてもよい。例えば、ブレード55の軸方向の中間部分に試験片部分を設けて、ブレード面評価用の試験片を作製することもできる。
【0075】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0076】
以上の実施態様においては、積層造形物を溶接のビードにより形成する場合で説明しているが、溶接ビードに限らず、他の方式によって積層造形物を造形する場合にも本発明を好適に適用できる。例えば、粉体からなる造形材を、レーザビームで照射して所望の目的形状の層状体を形成し、層状体を順次積層することで積層造形物を製造する方式であってもよい。
【0077】
また、上記例ではベース板23等のベース材にビードを形成して積層造形物を造形する例を示しているが、ベース材を設けずにビードを積層して、積層造形物を造形してもよい。
【0078】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 造形材を溶融、凝固させた層状体を積層して、所望の形状の積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記積層造形物は、製品となる製品部分と、試験片を内包する大きさの試験片部分とを有し、
前記層状体を、前記製品部分から前記試験片部分まで連続して形成する積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、積層造形物を造形する際に、試験片部分を連続して形成することで、試験片部分を積層造形物と同じ条件で形成できる。このため、試験片部分から作製する試験片により、積層造形物を層状体の層毎に機械的特性の評価ができ、製品の信頼性を向上できる。
【0079】
(2) 前記造形材を予め定めた軌道に沿って肉盛りして前記層状体を形成する層状体形成工程を有し、
前記層状体形成工程は、前記層状体の層毎に、前記製品部分を形成する前記軌道を延長して、前記試験片部分を形成する(1)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、製品部分を形成する軌道を延長して試験片部分を形成するため、製品部分の各層に対応する試験片部分の位置を明確にできる。
【0080】
(3) 前記層状体形成工程は、前記軌道を、前記製品部分の外縁から前記試験片のサイズに1~15mmを加えた長さに延長して、前記試験片部分を形成する(2)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、試験片部分として、試験片のサイズ(複数の場合はその合計)に1~15mmを加えた長さに形成されることで、シャルピー衝撃試験等、特定の機械的特性試験に用いる規格形状の試験片を不足なく作製できる。
【0081】
(4) 前記試験片部分を、前記製品部分よりも前記層状体の積層方向に関して厚く積層する(1)~(3)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、製品部分の積層方向の厚さが、作製しようとする試験片の長さよりも短い場合でも、試験片部分を、試験片が作製可能な厚さにできる。
【0082】
(5) 前記造形材は溶加材であり、
前記層状体は、前記溶加材を溶融及び凝固させたビードにより形成する(1)~(4)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、溶加材により形成されるビードを積層して積層造形物を造形するため、延性やクリープ特性等の機械的性質、及びシールド性に優れた構成にできる。
【0083】
(6) 前記層状体の初層をベース材に形成し、前記初層以降の層状体を前記ベース材から離れる方向に順次に積層する(1)~(5)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、ベース材に層状体を積層して積層造形物を製造するため、積層造形物の形状の設計自由度が向上する。
【0084】
(7) 前記ベース材は、前記製品部分に必要な前記層状体の層面よりも広い余剰領域を有し、
前記余剰領域に前記試験片部分を形成する(6)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、層状体の余剰領域に試験片部分を形成することで、試験片部分を製品部分と同じ条件で形成できる。そのため、試験片部分を、製品部分と等価な機械的特性にできる。
【0085】
(8) 前記試験片部分を前記製品部分から分離させる切り出し工程を有する(1)~(5)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、試験片部分が分離された製品部分からなる積層造形物が得られる。
【0086】
(9) 前記試験片部分を前記製品部分から分離させる切り出し工程を有する(6)又は(7)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、試験片部分が分離された製品部分を含む積層造形物が得られる。
【0087】
(10) 前記切り出し工程は、前記試験片部分を、前記ベース材と前記層状体の前記初層との融合部を除いて分離させる(9)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、試験片部分を、ベース材及びベース材との融合部から分離させて切り出せる。これにより、ベース材に積層された製品部分と等価な試験片を作製できる。
【0088】
(11) 前記切り出し工程は、前記試験片部分を、前記ベース材と前記層状体の前記初層との融合部を含めて分離させる(9)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、試験片部分を、ベース材及びベース材との融合部を含めて切り出せる。これにより、ベース材を含む試験片を作製できる。その場合、例えば、ベース材との融合部を試験片中心部に配置させた試験片を作製して、融合部の機械的特性を評価できる。
【0089】
(12) (8)~(11)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法により切り出された前記試験片部分から前記試験片を作製し、
作製された前記試験片を用いて、前記積層造形物の機械特性試験を行う積層造形物の検査方法。
この積層造形物の検査方法によれば、積層造形物と共に造形され、等価な機械的特性を有する試験片を用いることで、積層造形物を破壊、変形させることなく検査できる。
【0090】
(13) 前記試験片は、シャルピー衝撃試験、引張試験、曲げ試験のいずれかに用いるものである(12)に記載の積層造形物の検査方法。
この積層造形物の検査方法によれば、シャルピー衝撃試験、引張試験、曲げ試験による強度評価を行える。
【符号の説明】
【0091】
11 造形部
13 造形コントローラ
15 電源装置
17 トーチ
19 溶接ロボット
21 溶加材供給部
23 ベース板(ベース材)
25,79A,79B,79C,79D,79E,79F ビード
26,51 積層造形物
35 余盛り部分
37,81 試験片部分
41 試験片
53 軸体(ベース材)
100 積層造形物の製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17