(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ケーソン曳航方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/02 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
E02D23/02 B
(21)【出願番号】P 2018135247
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】宮本 卓次郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 豊
(72)【発明者】
【氏名】正木 洋二
(72)【発明者】
【氏名】新里 英幸
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-237875(JP,A)
【文献】実開昭58-098292(JP,U)
【文献】特開平05-311627(JP,A)
【文献】特開平09-143954(JP,A)
【文献】実開昭57-153098(JP,U)
【文献】特開平11-222868(JP,A)
【文献】特開2017-100728(JP,A)
【文献】特開2014-184877(JP,A)
【文献】特開平04-049323(JP,A)
【文献】特開2011-184923(JP,A)
【文献】特開2001-003332(JP,A)
【文献】実開昭48-001489(JP,U)
【文献】特開2016-180248(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103669380(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00-25/00
E02B 3/04-3/14
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
B63C 1/00-15/00
B63G 1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンを曳航するケーソン曳航方法であって、
a)略矩形函状の複数のケーソンを着脱自在に連結してケーソン連結体を形成する工程と、
b)前記ケーソン連結体と曳航船とを所定の曳航方向に沿って延びる曳航索により連結し、前記曳航船により前記ケーソン連結体を曳航する工程と、
c)前記b)工程よりも後に、前記複数のケーソンの連結を解除した後、各ケーソンを所定の位置に設置する工程と、
を備え、
前記ケーソン連結体は、前記曳航方向に平行な方向に延びる側面同士、または、前記曳航方向に垂直な方向に対して傾斜する方向に延びる側面同士で連結される2つのケーソンを含
み、
前記ケーソン連結体は、平面視において重心が中心からずれている少なくとも1つのケーソンを含み、
前記少なくとも1つのケーソンは、平面視における前記ケーソン連結体の重心と前記ケーソン連結体の中心との距離が小さくなる向きにて他のケーソンに連結されることを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項2】
請求項1に記載のケーソン曳航方法であって、
前記2つのケーソンはそれぞれ、平面視において一対の長辺および一対の短辺を有する略長方形であり、
前記2つのケーソンのそれぞれの前記側面は、平面視における前記一対の長辺のうち一方に対応することを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項3】
請求項1に記載のケーソン曳航方法であって、
前記ケーソン連結体は、前記曳航方向に平行な方向、または、前記曳航方向に垂直な方向に対して傾斜する方向に延びる側面同士で連結される他の2つのケーソンをさらに含み、
前記2つのケーソンおよび前記他の2つのケーソンはそれぞれ、平面視において略正方形であり、
前記2つのケーソンおよび前記他の2つのケーソンは
、前記2つのケーソンおよび前記他の2つのケーソンの連結される側面が平面視において全体的に格子状になるように配置されることを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項4】
請求項1に記載のケーソン曳航方法であって、
前記2つのケーソンはそれぞれ、平面視において一対の長辺および一対の短辺を有する略長方形であり、
前記2つのケーソンのそれぞれの前記側面は、平面視における前記一対の長辺のうち一方に対応し、
前記2つのケーソンのうち一方のケーソンの重心は、前記一対の長辺に平行な長手方向の中央から一方側にずれており、
前記2つのケーソンのうち他方のケーソンの重心は、前記長手方向の中央から他方側にずれていることを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか1つに記載のケーソン曳航方法であって、
前記2つのケーソンは、前記曳航方向に平行な方向に延びる側面同士で連結され、
前記ケーソン連結体は、前記複数のケーソンの前記曳航方向前側に連結されるとともに前記曳航方向前側から後方に向かうに従って水線幅が増加する前付加部をさらに含むことを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項6】
請求項
5に記載のケーソン曳航方法であって、
前記ケーソン連結体は、前記複数のケーソンの前記曳航方向後側に連結されるとともに前記曳航方向前側から後方に向かうに従って水線幅が減少する後付加部をさらに含むことを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項7】
請求項
6に記載のケーソン曳航方法であって、
前記ケーソン連結体は、前記前付加
部に接続される補助推進部をさらに含み、
前記補助推進部は、
前記曳航方向前側に前縁を向けて配置される水中翼と、
前記水中翼を前記前付加部に接続する翼接続部と、
を備えることを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項8】
請求項
6または
7に記載のケーソン曳航方法であって、
d)前記b)工程よりも後に、目的地まで曳航された前記複数のケーソンから前記前付加部および前記後付加部を取り外す工程と、
e)前記前付加部の前記曳航方向後側に前記後付加部を連結する工程と、
f)前記前付加部および前記後付加部を曳航船により曳航して前記目的地から退避させる工程と、
をさらに備えることを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項9】
請求項1ないし
8のいずれか1つに記載のケーソン曳航方法であって、
前記複数のケーソンは、前記ケーソン連結体の外側面に位置する消波部を有する消波ケーソンを含むことを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項10】
請求項9に記載のケーソン曳航方法であって、
前記2つのケーソンはそれぞれ、側面に消波部を有する消波ケーソンであり、
前記2つのケーソンは、前記消波部とは反対側の側面同士で連結されることを特徴とするケーソン曳航方法。
【請求項11】
請求項1ないし
10のいずれか1つに記載のケーソン曳航方法であって、
前記b)工程において、前記ケーソン連結体の外表面に沿って微細気泡を供給することを特徴とするケーソン曳航方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンを曳航するケーソン曳航方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進器を有さない船舶であるバージ(艀)に砂利等の積載物を積み、推進器を有する押船または引船に当該バージを連結して航行することにより、積載物を搬送する技術が知られている。また、特許文献1では、長手方向に連結された複数のバージを、引船に連結して搬送する技術が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2では、複数函のケーソンを曳航方向に連結させた長大ケーソンを曳航して据え付け、その後、連結を解除する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-312364号公報
【文献】特開平10-237875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、連結された複数のケーソンを曳航する場合、特許文献2の曳航方法では、各ケーソンの横揺れ等により曳航時の安定性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ケーソン連結体の曳航時の安定性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ケーソンを曳航するケーソン曳航方法であって、a)略矩形函状の複数のケーソンを着脱自在に連結してケーソン連結体を形成する工程と、b)前記ケーソン連結体と曳航船とを所定の曳航方向に沿って延びる曳航索により連結し、前記曳航船により前記ケーソン連結体を曳航する工程と、c)前記b)工程よりも後に、前記複数のケーソンの連結を解除した後、各ケーソンを所定の位置に設置する工程と、を備え、前記ケーソン連結体は、前記曳航方向に平行な方向に延びる側面同士、または、前記曳航方向に垂直な方向に対して傾斜する方向に延びる側面同士で連結される2つのケーソンを含み、前記ケーソン連結体は、平面視において重心が中心からずれている少なくとも1つのケーソンを含み、前記少なくとも1つのケーソンは、平面視における前記ケーソン連結体の重心と前記ケーソン連結体の中心との距離が小さくなる向きにて他のケーソンに連結される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーソン曳航方法であって、前記2つのケーソンはそれぞれ、平面視において一対の長辺および一対の短辺を有する略長方形であり、前記2つのケーソンのそれぞれの前記側面は、平面視における前記一対の長辺のうち一方に対応する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のケーソン曳航方法であって、前記ケーソン連結体は、前記曳航方向に平行な方向、または、前記曳航方向に垂直な方向に対して傾斜する方向に延びる側面同士で連結される他の2つのケーソンをさらに含み、前記2つのケーソンおよび前記他の2つのケーソンはそれぞれ、平面視において略正方形であり、前記2つのケーソンおよび前記他の2つのケーソンは、前記2つのケーソンおよび前記他の2つのケーソンの連結される側面が平面視において全体的に格子状になるように配置される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のケーソン曳航方法であって、前記2つのケーソンはそれぞれ、平面視において一対の長辺および一対の短辺を有する略長方形であり、前記2つのケーソンのそれぞれの前記側面は、平面視における前記一対の長辺のうち一方に対応し、前記2つのケーソンのうち一方のケーソンの重心は、前記一対の長辺に平行な長手方向の中央から一方側にずれており、前記2つのケーソンのうち他方のケーソンの重心は、前記長手方向の中央から他方側にずれている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のケーソン曳航方法であって、前記2つのケーソンは、前記曳航方向に平行な方向に延びる側面同士で連結され、前記ケーソン連結体は、前記複数のケーソンの前記曳航方向前側に連結されるとともに前記曳航方向前側から後方に向かうに従って水線幅が増加する前付加部をさらに含む。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のケーソン曳航方法であって、前記ケーソン連結体は、前記複数のケーソンの前記曳航方向後側に連結されるとともに前記曳航方向前側から後方に向かうに従って水線幅が減少する後付加部をさらに含む。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のケーソン曳航方法であって、前記ケーソン連結体は、前記前付加部に接続される補助推進部をさらに含み、前記補助推進部は、前記曳航方向前側に前縁を向けて配置される水中翼と、前記水中翼を前記前付加部に接続する翼接続部とを備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載のケーソン曳航方法であって、d)前記b)工程よりも後に、目的地まで曳航された前記複数のケーソンから前記前付加部および前記後付加部を取り外す工程と、e)前記前付加部の前記曳航方向後側に前記後付加部を連結する工程と、f)前記前付加部および前記後付加部を曳航船により曳航して前記目的地から退避させる工程とをさらに備える。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のケーソン曳航方法であって、前記複数のケーソンは、前記ケーソン連結体の外側面に位置する消波部を有する消波ケーソンを含む。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のケーソン曳航方法であって、前記2つのケーソンはそれぞれ、側面に消波部を有する消波ケーソンであり、前記2つのケーソンは、前記消波部とは反対側の側面同士で連結される。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれか1つに記載のケーソン曳航方法であって、前記b)工程において、前記ケーソン連結体の外表面に沿って微細気泡を供給する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ケーソン連結体の曳航時の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図2】ケーソン連結体の曳航の流れを示す図である。
【
図3】第2の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図4】第3の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図6】ケーソン連結体の曳航の流れを示す図である。
【
図7】第4の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図8】他のケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図9】他のケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図11】他のケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図13】他のケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図14】他のケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【
図15】他のケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
図1に示す例では、複数のケーソン1が連結されたケーソン連結体10は、曳航船2に曳航索21を介して連結され、図中の左側から右側に向かう方向(図中にて白抜き矢印にて示す方向であり、以下、「曳航方向D1」と呼ぶ。)に曳航される。曳航船2は、ケーソン連結体10を曳航方向D1へと引っ張る引船(いわゆる、タグボート)である。曳航船2は、原動機または発電機等の動力源に接続された推進器(例えば、アジマススラスターまたはシュナイダープロペラ等)を備える。ケーソン連結体10には、当該推進器は設けられていない。
【0022】
ケーソン連結体10は、略矩形函状の被曳航体である。ケーソン連結体10は、水面(例えば、海面)に浮いている。換言すれば、ケーソン連結体10の下部は水底(例えば、海底)から上方に離間した状態で水面下に位置し、ケーソン連結体10の上部は水面から上方へと突出している。
【0023】
平面視におけるケーソン連結体10の形状は、略矩形状である。なお、矩形とは、長方形および正方形を含む概念である。ケーソン連結体10は、平面視において、1つの頂点P1を曳航船2の船尾におよそ向けて斜めに配置される。換言すれば、平面視において、ケーソン連結体10の1つの頂点P1は曳航方向D1の前側(すなわち、
図1中の右側)に配置され、頂点P1と対角線上に位置する頂点P3は、曳航方向D1の後側(すなわち、
図1中の左側)に位置する。以下の説明では、曳航方向D1の前側および後側を、単に「前側」および「後側」とも呼ぶ。
【0024】
曳航方向D1に関して、平面視におけるケーソン連結体10の他の2つの頂点P2,P4は、前後に並ぶ上記2つの頂点P1,P3の間に位置する。
図1に示す例では、2本の曳航索21の後側の端部はそれぞれ、2つの頂点P2,P4近傍にてケーソン連結体10に接続される。好ましくは、2本の曳航索21の後側の端部はそれぞれ、2つの頂点P2,P4よりも少し内側(すなわち、平面視におけるケーソン連結体10の中心に近い側)にてケーソン連結体10に接続される。当該2本の曳航索21は、曳航方向D1におよそ沿って延びる。各曳航索21は、曳航方向D1に略平行に延びてもよく、
図1に例示するように、曳航方向D1に対して傾斜しつつ曳航方向D1に沿って延びてもよい。2本の曳航索21の前側の端部は、曳航船2に接続される。
【0025】
ケーソン連結体10は、略矩形函状の複数のケーソン1を着脱自在に連結して形成される。換言すれば、ケーソン連結体10は、互いに連結された2つ以上のケーソン1を含む。複数のケーソン1は、例えば略同形状であり、略同じ構造および略同じ重量を有する。各ケーソン1は、上部が開口した略直方体の函状である。各ケーソン1は、例えば、鉄筋コンクリートにより形成されている。各ケーソン1は、他の材料(例えば、鉄等の金属)により形成されてもよい。複数のケーソン1は、例えば、海底に設けられた土台上に設置されて防波堤として利用される。各ケーソン1は、例えば、スリット式の消波部を側面に有する消波ケーソン(いわゆる、スリットケーソン)である。
【0026】
複数のケーソン1はそれぞれ、曳航方向D1に対して斜めに配置される。換言すれば、各ケーソン1の4つの側面はそれぞれ、曳航方向D1に垂直な方向に対して傾斜する方向(すなわち、曳航方向D1に垂直な方向に対して、平面視において斜めに傾斜する方向)に延びる。複数のケーソン1は、それぞれの1つの側面同士を対向させて配置され、当該側面同士で連結される。
図1に例示するケーソン連結体10は、2つのケーソン1が、それぞれの1つの側面(以下、「連結側面11」と呼ぶ。)同士で連結されることにより形成されている。
【0027】
図1に示す例では、2つのケーソン1はそれぞれ、平面視において一対の長辺15と一対の短辺16とを有する略長方形である。以下の説明では、各ケーソン1について、平面視において一対の長辺15に平行な方向を「長手方向」と呼び、一対の短辺16に平行な方向(すなわち、当該長手方向に垂直な方向)を「幅方向」と呼ぶ。各長辺15の長手方向の長さは、例えば、短辺16の幅方向の長さの約2.5倍である。ケーソン連結体10では、2つのケーソン1のそれぞれの連結側面11は、平面視における上記一対の長辺15のうち一方の長辺15に対応する。
【0028】
図1中において符号Gを付す各点は、平面視における各ケーソン1の重心の位置を示す。曳航方向D1の前側のケーソン1(すなわち、上述の頂点P1,P2を含むケーソン1)の重心Gは、平面視において当該ケーソン1の中心からずれている。曳航方向D1の後側のケーソン1(すなわち、上述の頂点P3,P4を含むケーソン1)の重心Gも、平面視において当該ケーソン1の中心からずれている。
【0029】
具体的には、曳航方向D1の前側のケーソン1では、重心Gは、ケーソン1の長手方向の中央から曳航方向D1の前側(すなわち、頂点P2よりも頂点P1に近い側)に、所定距離ずれている。曳航方向D1の後側のケーソン1では、重心Gは、ケーソン1の長手方向の中央から曳航方向D1の後側(すなわち、頂点P4よりも頂点P3に近い側)に上記所定距離ずれている。換言すれば、2つのケーソン1のうち一方のケーソン1の重心Gは、長手方向の中央から一方側にずれており、他方のケーソン1の重心Gは、長手方向の中央から他方側にずれている。
【0030】
また、曳航方向D1の前側のケーソン1では、重心Gは、ケーソン1の幅方向の中央から曳航方向D1の前側(すなわち、連結側面11から離れる側)に、所定距離ずれている。曳航方向D1の後側のケーソン1では、重心Gは、ケーソン1の幅方向の中央から曳航方向D1の後側(すなわち、連結側面11から離れる側)に、当該所定距離ずれている。換言すれば、2つのケーソン1のうち一方のケーソン1の重心Gは、幅方向の中央から一方側にずれており、他方のケーソン1の重心Gは、幅方向の中央から他方側にずれている。平面視におけるケーソン連結体10の中心と一方のケーソン1の重心Gとの距離は、当該中心と他方のケーソン1の重心Gとの距離と、長手方向および幅方向において略同じである。
【0031】
図1中において符号G0を付す点は、平面視におけるケーソン連結体10の重心の位置を示す。ケーソン連結体10の重心G0は、平面視において、2つのケーソン1の重心Gを結ぶ直線の中心に位置する。ケーソン連結体10の重心G0は、ケーソン連結体10の平面視における中心とおよそ重なる。2つのケーソン1の重心Gは、ケーソン連結体10の平面視における中心を通る1本の直線上において、当該中心を挟んで当該中心の両側に配置される。当該中心と各ケーソン1の重心Gとの間の距離は、略同じである。また、ケーソン連結体10の重心G0は、曳航船2のセンターラインCLの延長線上に位置する。当該センターラインCLは、平面視において、曳航船2の船幅中央にて船首から船尾へと曳航方向D1に平行に延びる直線である。
【0032】
ケーソン連結体10において、仮に、曳航方向D1の後側のケーソン1が、重心Gが長手方向の中央から曳航方向D1の前側にずれる向きに連結されたとすると、ケーソン連結体10の重心G0は、ケーソン連結体10の平面視における中心から離れ、当該中心から曳航方向D1の前側にずれる。これに対し、曳航方向D1の後側のケーソン1を、
図1に示す向きにて曳航方向D1の前側のケーソン1に連結すると、平面視におけるケーソン連結体10の重心G0と中心との間の距離を、上記仮定の連結方法の場合と比べて小さくすることができる。
【0033】
各ケーソン1は、
図1中にて破線にて示す消波部17を、連結側面11とは反対側の側面(以下、「消波側面12」と呼ぶ。)に有する。消波側面12は、連結側面11と略平行に(すなわち、長手方向に)延びる側面である。曳航方向D1の前側のケーソン1では、消波側面12は、頂点P1と頂点P2との間の長辺15に対応する。曳航方向D1の後側のケーソン1では、消波側面12は、頂点P3と頂点P4との間の長辺15に対応する。すなわち、2つの消波側面12は、ケーソン連結体10の外側面に位置する。
【0034】
消波部17は、例えば、複数のスリットが配列されたスリット式(すなわち、透過式)の消波部である。消波部17では、例えば、それぞれが上下方向に延びる略長方形の複数のスリットが、水平方向に配列される。消波部17では、それぞれが水平方向に延びる略長方形の複数のスリットが、上下方向に配列されてもよい。複数のスリットの形状および配列方向等は様々に変更されてよい。また、消波部17は、スリット式以外の様々な構造を有していてもよい。
【0035】
ケーソン連結体10では、ケーソン1同士の連結は、様々な連結部材を用いて様々な方法により行われてよい。例えば、ケーソン1の連結側面11に緩衝材および剪断キーを設け、PC(Prestressed Concrete)ケーブルにより、2つのケーソン1の連結側面11を互いに向けて押圧することにより、ケーソン1同士が連結される。PCケーブルは、例えば、ケーソン1の長手方向および幅方向にそれぞれ設けられる。緩衝材は、例えば、ケーソン1の連結側面11に固定された矩形枠状のスポンジ部材の内側にモルタルを流し込むことにより形成される。剪断キーは、例えば、一方の連結側面11に設けられた略直方体の凸部と、他方の連結側面11に設けられた略直方体の凹部とにより構成される。当該凸部は、当該凹部よりも小さく、上下方向および幅方向に所定距離だけ移動可能な状態で当該凹部に挿入される。
【0036】
次に、ケーソン連結体10の曳航の流れについて、
図2を参照しつつ説明する。ケーソン連結体10の曳航の際には、まず、複数のケーソン1が着脱自在に連結されて、ケーソン連結体10が形成される(ステップS11)。複数のケーソン1の連結は、例えば、ケーソン1の製造工場に設けられたドック(船渠とも呼ぶ。)、または、静穏な海域において海底に設けられたマウンド上にて行われる。
【0037】
続いて、2本の曳航索21の後端部が、ケーソン連結体10の接続部(
図1に示す例では、2つの頂点P2,P4)に接続される。また、2本の曳航索21の前端部は、曳航船2の船尾部に接続される。これにより、ケーソン連結体10と曳航船2とが、曳航方向D1に沿って延びる2本の曳航索21により連結される。そして、曳航船2が曳航方向D1に向かって移動することにより、ケーソン連結体10も曳航方向D1へと曳航される(ステップS12)。
【0038】
以上に説明したように、上記ケーソン曳航方法は、略矩形函状の複数のケーソン1を着脱自在に連結してケーソン連結体10を形成する工程(ステップS11)と、ケーソン連結体10と曳航船2とを所定の曳航方向D1に沿って延びる曳航索21により連結し、曳航船2によりケーソン連結体10を曳航する工程(ステップS12)とを備える。また、ケーソン連結体10は、曳航方向D1に垂直な方向に対して傾斜する方向に延びる側面(すなわち、連結側面11)同士で連結される2つのケーソン1を含む。
【0039】
これにより、ケーソン連結体10の水線幅(すなわち、ケーソン連結体10の喫水線における曳航方向D1に垂直な左右方向の幅)を大きくしてケーソン連結体10の復原性を増大させることができる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の安定性を向上することができる。また、ケーソン連結体10において、曳航方向D1の前側を向く側面が、曳航方向D1に対して非垂直に配置されるため、当該側面が曳航方向D1に垂直である場合に比べて、ケーソン連結体10の抗力係数CDは小さくなる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10の曳航速度の増大を実現することができる。
【0040】
上述のように、上記2つのケーソン1はそれぞれ、平面視において一対の長辺15および一対の短辺16を有する略長方形であることが好ましい。また、当該2つのケーソン1のそれぞれの連結側面11は、平面視における一対の長辺15のうち一方に対応することが好ましい。これにより、ケーソン連結体10の曳航方向D1に垂直な投影面積の増大を抑制することができる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10の曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0041】
上述のように、上記2つのケーソン1のうち一方のケーソン1の重心Gは、一対の長辺15の長辺に平行な長手方向の中央から一方側にずれており、当該2つのケーソン1のうち他方のケーソン1の重心Gは、当該長手方向の中央から他方側にずれていることが好ましい。これにより、当該2つのケーソン1の見かけ上の重心位置を、長手方向の中央に近づけることができる。換言すれば、ケーソン連結体10の重心G0を、ケーソン連結体10の平面視における中心に近づけることができる。その結果、波浪等によるケーソン連結体10の動揺を低減することができる。
【0042】
上述のように、ケーソン連結体10が、平面視において重心Gが中心からずれている2つのケーソン1を含む場合、当該2つのケーソン1は、平面視におけるケーソン連結体10の重心G0と当該ケーソン連結体10の中心との距離が小さくなる向きにて互いに連結されることが好ましい。これにより、波浪等によるケーソン連結体10の動揺を低減することができる。
【0043】
上述のように、上記複数のケーソン1は、好ましくは、ケーソン連結体10の外側面に位置する消波部17を有する消波ケーソンを含む。これにより、ケーソン連結体10の曳航時における造波抵抗(すなわち、ケーソン連結体10の移動に伴う波の形成に起因する抵抗)を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10の曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
図3に示す例では、曳航方向D1に対するケーソン連結体10の向き(すなわち、曳航船2に対するケーソン連結体10の相対的な向き)が、
図1に示す例とは異なる。ケーソン連結体10の構造および形状等、並びに、曳航船2によるケーソン連結体10の曳航の流れは、上記と同様であり、対応する構成には同符号を付す。
【0045】
図3に示す例では、2本の曳航索21の後側の端部はそれぞれ、平面視におけるケーソン連結体10の2つの頂点P1,P4近傍に接続される。好ましくは、2本の曳航索21の後側の端部はそれぞれ、2つの頂点P1,P4よりも少し内側(すなわち、平面視におけるケーソン連結体10の中心に近い側)にてケーソン連結体10に接続される。2つのケーソン1は、一対の長辺15のうち一方の長辺15に対応する連結側面11同士で連結される。各ケーソン1の連結側面11とは反対側の側面(すなわち、他方の長辺15に対応する側面)は、消波部17を有する消波側面12である。2つの消波側面12は、ケーソン連結体10の左右方向(すなわち、曳航方向D1に垂直な方向)の外側面に位置する。各ケーソン1の連結側面11および消波側面12は、曳航方向D1に平行な方向に延びる。また、各ケーソン1の一対の短辺16に対応する一対の側面は、ケーソン連結体10の前側および後側において左右方向に延びる。
【0046】
第2の実施の形態に係るケーソン曳航方法は、第1の実施の形態と同様に、略矩形函状の複数のケーソン1を着脱自在に連結してケーソン連結体10を形成する工程(
図2:ステップS11)と、ケーソン連結体10と曳航船2とを所定の曳航方向D1に沿って延びる曳航索21により連結し、曳航船2によりケーソン連結体10を曳航する工程(ステップS12)とを備える。また、ケーソン連結体10は、上述のように、曳航方向D1に平行な方向に延びる側面(すなわち、連結側面11)同士で連結される2つのケーソン1を含む。これにより、ケーソン連結体10の水線幅を大きくしてケーソン連結体10の復原性を増大させることができる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の安定性を向上することができる。
【0047】
第2の実施の形態に係るケーソン曳航方法においても、第1の実施の形態と同様に、2つのケーソン1はそれぞれ、平面視において一対の長辺15および一対の短辺16を有する略長方形であることが好ましい。また、2つのケーソン1のそれぞれの連結側面11は、平面視における一対の長辺15のうち一方に対応することが好ましい。これにより、ケーソン連結体10の曳航方向D1に垂直な投影面積の増大を抑制することができる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10の曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0048】
また、2つのケーソン1のうち一方のケーソン1の重心Gは、一対の長辺15の長辺に平行な長手方向の中央から一方側(すなわち、曳航方向D1の前側)にずれており、2つのケーソン1のうち他方のケーソン1の重心Gは、当該長手方向の中央から他方側(すなわち、曳航方向D1の後側)にずれていることが好ましい。これにより、当該2つのケーソン1の見かけ上の重心位置を、長手方向の中央に近づけることができる。換言すれば、ケーソン連結体10の重心G0を、ケーソン連結体10の平面視における中心に近づけることができる。その結果、波浪等によるケーソン連結体10の動揺を低減することができる。
【0049】
ケーソン連結体10が、平面視において重心Gが中心からずれている2つのケーソン1を含む場合、当該2つのケーソン1は、平面視におけるケーソン連結体10の重心G0と当該ケーソン連結体10の中心との距離が小さくなる向きにて互いに連結されることが好ましい。これにより、波浪等によるケーソン連結体10の動揺を低減することができる。
【0050】
上記複数のケーソン1は、好ましくは、ケーソン連結体10の外側面に位置する消波部17を有する消波ケーソンを含む。これにより、ケーソン連結体10の曳航時における造波抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10の曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10の曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0051】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
図4に示す例では、
図3に示すケーソン連結体10とは構造および形状が異なるケーソン連結体10aが、曳航船2に連結されて曳航される。ケーソン連結体10aは、
図3に示す2つのケーソン1を含む。当該2つのケーソン1は、
図3に示す向きと同じ向きで曳航船2に連結される。当該2つのケーソン1の各構成には、既述の符号と同符号を付す。
【0052】
図5は、ケーソン連結体10aを示す側面図である。
図4および
図5に示すケーソン連結体10aは、
図3と同様の2つのケーソン1に加えて、前付加部31と、後付加部32と、補助推進部33と、微細気泡供給部34とを備える。前付加部31、後付加部32および補助推進部33は、例えば、鉄等の金属により形成される。
【0053】
前付加部31は、ケーソン連結体10aに含まれる複数のケーソン1の曳航方向D1の前側に連結される。前付加部31の後端面の正面視における形状(すなわち、曳航方向D1の前側から見た形状)は、例えば、上述の2つのケーソン1の前端面の正面視における形状と略同じである。前付加部31の形状は、例えば、ばら積み貨物船やタンカー等の通常の船舶の船首部形状と類似した形状とされる。前付加部31には、例えば、バルバス・バウ(船首バルブとも呼ぶ。)が設けられてもよい。
図4に示す例では、前付加部31の水線幅(すなわち、水線311の左右方向の幅)は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って漸次増加する。前付加部31の水線311は、センターラインCLから左右方向の外側に向かって凸である滑らかな曲線である。換言すれば、前付加部31の水線形状はおよそ流線型である。また、曳航船2から曳航方向D1に沿って延びる曳航索21の後端部は、前付加部31の左右両側に接続される。
【0054】
後付加部32は、ケーソン連結体10aに含まれる複数のケーソン1の曳航方向D1の後側に連結される。後付加部32の前端面の正面視における形状は、例えば、上述の2つのケーソン1の後端面の正面視における形状と略同じである。後付加部32の形状は、例えば、ばら積み貨物船やタンカー等の通常の船舶の船尾部形状と類似した形状とされる。なお、後付加部32にはプロペラ等の推進器は設けられていない。
図4および
図5に示す例では、後付加部32の水線幅(すなわち、水線321の左右方向の幅)は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って漸次減少する。後付加部32の水線321は、センターラインCLから左右方向の外側に向かって凸である滑らかな曲線である。換言すれば、後付加部32の水線形状はおよそ流線型である。また、後付加部32の下端部の高さ(すなわち、ケーソン1の下端面からの上下方向の高さ)は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って漸次高くなる。換言すれば、後付加部32の下端部は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って水面に漸次近づく。
【0055】
前付加部31および後付加部32と、ケーソン1との連結は、様々な連結部材を用いて様々な方法により行われてよい。例えば、ケーソン1同士の連結に用いられる上述の緩衝材および剪断キーを、前付加部31および後付加部32とケーソン1との連結面に設け、PCケーブル等により、前付加部31および後付加部32とケーソン1とが連結されてもよい。
【0056】
補助推進部33は、前付加部31の底面に接続され、前付加部31から下方に突出する。補助推進部33は、水中翼331と、翼接続部332とを備える。補助推進部33は、波から受けるエネルギーを推進力に変換する波浪推進機構である。
【0057】
水中翼331は、曳航方向D1に垂直な左右方向に長い略板状の部材である。水中翼331の左右方向に垂直な断面形状(すなわち、翼型)は、例えば、前縁から後方に向かうに従って厚さが漸次増大し、前後方向の中央部よりも前側にて最大厚さとなった後に、後縁に向かって漸次減少する形状(いわゆる、翼形状)である。水中翼331は、前縁を曳航方向D1の前側に向けて配置される。翼接続部332は、略上下方向に延びる略板状の部位である。翼接続部332は、前付加部31のうち曳航方向D1の前側の部位に水中翼331を接続する。水中翼331の翼角(例えば、ケーソン1の底面を基準とした場合の翼角)は、所定の角度範囲内において、水から受ける力に従って変動可能である。
【0058】
補助推進部33では、波によるケーソン連結体10aの上下動に伴って水中翼331の周囲を水が流れ、当該水の流れにより水中翼331の翼角が所定の角度範囲内にて変更され、曳航方向D1の前側を向く揚力(すなわち、推進力)が発生する。
【0059】
微細気泡供給部34は、ケーソン連結体10aの曳航時に、ケーソン連結体10aの外表面に沿って微細気泡を供給する。微細気泡供給部34は、気泡生成装置341と、複数の気泡噴出口342とを備える。気泡生成装置341は、例えば、前付加部31の内部に設けられ、複数の気泡噴出口342に接続される。
図5では、図示の都合上、気泡噴出口342を実際よりも大きく、気泡噴出口342の数を実際よりも少なく描いている。
【0060】
複数の気泡噴出口342は、水面下において前付加部31の表面に配置される。複数の気泡噴出口342は、例えば、前付加部31の後端部において、前付加部31の底面および左右の両側面に配置される。
図5に示す例では、複数の気泡噴出口342は、前付加部31の後端縁に沿って(すなわち、曳航方向D1に略垂直に)1列に配列される。ケーソン連結体10aでは、気泡噴出口342の複数の列が、曳航方向D1に沿って配列されてもよい。
【0061】
気泡生成装置341は、複数の気泡噴出口342へと圧縮空気等のガスを送出する。当該ガスは、複数の気泡噴出口342から微細気泡として噴出される。複数の気泡噴出口342から噴出された微細気泡は、ケーソン連結体10aの外表面に沿って曳航方向D1の後側へと流れる。これにより、ケーソン連結体10aの外表面と水との粘性摩擦抵抗が低減される。微細気泡は、例えば、直径が1μm以上かつ1mm未満のファインバブル(いわゆる、マイクロバブル)を含む。微細気泡は、例えば、直径が1nm以上かつ1μm未満のウルトラファインバブル(いわゆる、ナノバブル)を含む。なお、気泡生成装置341は、多数の微細気泡を含有する気泡含有水を生成し、当該気泡含有水を複数の気泡噴出口342へと送出してもよい。
【0062】
次に、ケーソン連結体10aの曳航の流れについて、
図6を参照しつつ説明する。ケーソン連結体10aの曳航の際には、まず、上述のステップS11~S12と同様に、複数のケーソン1が着脱自在に連結されてケーソン連結体10aが形成され(ステップS21)、ケーソン連結体10aと曳航船2とが、曳航方向D1に沿って延びる2本の曳航索21により連結されて曳航される(ステップS22)。ステップS21では、複数のケーソン1に上述の前付加部31および後付加部32も連結される。また、ステップS22では、微細気泡供給部34から、ケーソン連結体10aの外表面に沿って微細気泡が供給される。
【0063】
ケーソン連結体10aが目的地に到着すると、ケーソン連結体10aの複数のケーソン1から前付加部31および後付加部32が取り外される(ステップS23)。そして、複数のケーソン1の連結が解除され、各ケーソン1が所定の位置に設置される(ステップS24)。なお、複数のケーソン1は、連結した状態で所定の位置に設置されてもよい。
【0064】
また、前付加部31の曳航方向D1の後側に、後付加部32が着脱自在に連結される(ステップS25)。前付加部31と後付加部32との連結は、様々な連結部材を用いて様々な方法により行われてよい。例えば、前付加部31と後付加部32との連結は、前付加部31とケーソン1との連結と同様の方法により行われる。なお、ステップS25は、ステップS24と並行して行われてもよく、ステップS23とステップS24との間、または、ステップS24と後述するステップS26との間に行われてもよい。
【0065】
その後、連結された前付加部31および後付加部32を曳航船2により曳航して、上述の目的地から退避させる(ステップS26)。前付加部31および後付加部32は、例えば、出発地まで戻され、次に目的地へと曳航される予定の複数のケーソン1の前部および後部に連結されて再利用される。
【0066】
以上に説明したように、第3の実施の形態に係るケーソン曳航方法は、略矩形函状の複数のケーソン1を着脱自在に連結してケーソン連結体10aを形成する工程(ステップS21)と、ケーソン連結体10aと曳航船2とを所定の曳航方向D1に沿って延びる曳航索21により連結し、曳航船2によりケーソン連結体10aを曳航する工程(ステップS22)とを備える。ケーソン連結体10aは、第2の実施の形態に係るケーソン連結体10と同様に、曳航方向D1に平行な方向に延びる側面(すなわち、連結側面11)同士で連結される2つのケーソン1を含む。これにより、ケーソン連結体10aの水線幅を大きくしてケーソン連結体10aの復原性を増大させることができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の安定性を向上することができる。
【0067】
上述のように、ケーソン連結体10aは、複数のケーソン1の曳航方向D1の前側に連結される前付加部31をさらに含むことが好ましい。また、前付加部31の水線幅は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って増加することが好ましい。これにより、ケーソン連結体10aの曳航時に、ケーソン連結体10aの前部に入射する波浪が、ケーソン1の前側の側面に直接的に衝突する場合に比べて、ケーソン連結体10aの造波抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の増大を実現することができる。また、曳航方向D1の前側から流れてきた流木等の漂流物がケーソン1に直接的に衝突してケーソン1が破損することを抑制することができる。
【0068】
上述のように、ケーソン連結体10aは、前付加部31に接続される補助推進部33をさらに含むことが好ましい。また、補助推進部33は、曳航方向D1の前側に前縁を向けて配置される水中翼331と、水中翼331を前付加部31に接続する翼接続部332とを備えることが好ましい。これにより、ケーソン連結体10aに入射する波浪を利用して推進力を得ることができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0069】
ケーソン連結体10aでは、上述の補助推進部33は、前付加部31に代えて後付加部32に接続されてもよい。あるいは、補助推進部33は、前付加部31および後付加部32の双方に接続されてもよい。換言すれば、補助推進部33は、前付加部31および/または後付加部32に接続される。この場合も、上記と同様に、ケーソン連結体10aに入射する波浪を利用して推進力を得ることができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0070】
上述のように、ケーソン連結体10aは、複数のケーソン1の曳航方向D1の後側に連結される後付加部32をさらに含むことが好ましい。また、後付加部32の水線幅は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って減少することが好ましい。これにより、ケーソン連結体10aの曳航時に、ケーソン1の側方を通過した水が、ケーソン1の側面後端で剥離することなく、または、当該剥離が抑制された状態で、後付加部32の表面に沿ってケーソン連結体10aの後方へと流れる。したがって、ケーソン連結体10aの粘性圧力抵抗(すなわち、ケーソン連結体10aの後方に生じる渦による圧力低下によってケーソン連結体10aが後方へと引っ張られることにより失われるエネルギー)を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0071】
上述のように、第3の実施の形態に係るケーソン曳航方法では、ステップS22において、ケーソン連結体10aの外表面に沿って微細気泡が供給されることが好ましい。これにより、ケーソン連結体10aの外表面と水との粘性摩擦抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の更なる増大を実現することができる。当該微細気泡による粘性摩擦抵抗の低減は、外表面の粗度が比較的大きく摩擦も大きくなりやすい鉄筋コンクリート製のケーソン1を曳航する場合に特に適している。
【0072】
上述のように、当該ケーソン曳航方法は、ステップS22よりも後に、目的地まで曳航された複数のケーソン1から前付加部31および後付加部32を取り外す工程(ステップS23)と、前付加部31の曳航方向D1の後側に後付加部32を連結する工程(ステップS25)と、前付加部31および後付加部32を曳航船2により曳航して目的地から退避させる工程(ステップS26)と、をさらに備えることが好ましい。これにより、前付加部31および後付加部32を当該目的地から容易に退避させることができる。また、前付加部31および後付加部32の再利用を容易とすることができる。
【0073】
第3の実施の形態に係るケーソン曳航方法においても、第2の実施の形態と同様に、2つのケーソン1はそれぞれ、平面視において一対の長辺15および一対の短辺16を有する略長方形であることが好ましい。また、2つのケーソン1のそれぞれの連結側面11は、平面視における一対の長辺15のうち一方に対応することが好ましい。これにより、ケーソン連結体10aの曳航方向D1に垂直な投影面積の増大を抑制することができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0074】
また、2つのケーソン1のうち一方のケーソン1の重心Gは、一対の長辺15の長辺に平行な長手方向の中央から一方側にずれており、2つのケーソン1のうち他方のケーソン1の重心Gは、当該長手方向の中央から他方側にずれていることが好ましい。これにより、当該2つのケーソン1の見かけ上の重心位置を、長手方向の中央に近づけることができる。換言すれば、ケーソン連結体10aの重心G0を、ケーソン連結体10aの平面視における中心に近づけることができる。その結果、波浪等によるケーソン連結体10aの動揺を低減することができる。
【0075】
ケーソン連結体10aが、平面視において重心Gが中心からずれている2つのケーソン1を含む場合、当該2つのケーソン1は、平面視におけるケーソン連結体10aの重心G0と当該ケーソン連結体10aの中心との距離が小さくなる向きにて互いに連結されることが好ましい。これにより、波浪等によるケーソン連結体10aの動揺を低減することができる。
【0076】
上記複数のケーソン1は、好ましくは、ケーソン連結体10aの外側面に位置する消波部17を有する消波ケーソンを含む。これにより、ケーソン連結体10aの曳航時における造波抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10aの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10aの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0077】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係るケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
図7に示す例では、上述のケーソン連結体10,10aとは構造および形状が異なるケーソン連結体10bが、曳航船2に連結されて曳航される。曳航船2によるケーソン連結体10bの曳航の流れは、
図2に示すケーソン連結体10の曳航の流れと略同様である。
【0078】
ケーソン連結体10bは、略矩形函状の複数のケーソン1bを着脱自在に連結して形成される。換言すれば、ケーソン連結体10bは、互いに連結された2つ以上のケーソン1bを含む。
図7に示す例では、4つのケーソン1bが格子状に連結されることにより、ケーソン連結体10bが形成される。各ケーソン1bは、上部が開口した略立方体の函状である。換言すれば、各ケーソン1bは、平面視において略正方形である。
【0079】
複数のケーソン1bは、例えば略同形状であり、略同じ構造および略同じ重量を有する。各ケーソン1bは、例えば、鉄筋コンクリートにより形成されている。各ケーソン1bは、他の材料(例えば、鉄等の金属)により形成されてもよい。複数のケーソン1bは、例えば、海底に設けられた土台上に設置されて防波堤として利用される。各ケーソン1bは、例えば、スリット式の消波部を側面に有する消波ケーソン(いわゆる、スリットケーソン)である。
【0080】
複数のケーソン1bはそれぞれ、曳航方向D1に対して斜めに配置される。換言すれば、各ケーソン1bの4つの側面はそれぞれ、曳航方向D1に垂直な方向に対して傾斜する方向(すなわち、曳航方向D1に垂直な方向に対して、平面視において斜めに傾斜する方向)に延びる。複数のケーソン1bはそれぞれ、隣接するケーソン1bと連結側面11b同士で連結される。
【0081】
平面視におけるケーソン連結体10bの形状は、略正方形状である。ケーソン連結体10bは、平面視において、1つの頂点P1を曳航船2の船尾におよそ向けて斜めに配置される。換言すれば、平面視において、ケーソン連結体10bの頂点P1は曳航方向D1の前側(すなわち、
図7中の右側)に配置され、頂点P1と対角線上に位置する頂点P3は、曳航方向D1の後側(すなわち、
図7中の左側)に位置する。
【0082】
曳航方向D1に関して、平面視におけるケーソン連結体10bの他の2つの頂点P2,P4は、前後に並ぶ上記2つの頂点P1,P3の間に位置する。
図7に示す例では、2本の曳航索21の後側の端部はそれぞれ、2つの頂点P2,P4近傍にてケーソン連結体10bに接続される。好ましくは、2本の曳航索21の後側の端部はそれぞれ、2つの頂点P2,P4よりも少し内側(すなわち、平面視におけるケーソン連結体10bの中心に近い側)にてケーソン連結体10bに接続される。当該2本の曳航索21は、曳航方向D1におよそ沿って延びる。各曳航索21は、曳航方向D1に略平行に延びてもよく、
図7に例示するように、曳航方向D1に対して傾斜しつつ曳航方向D1に沿って延びてもよい。2本の曳航索21の前側の端部は、曳航船2に接続される。
【0083】
第4の実施の形態に係るケーソン曳航方法は、略矩形函状の複数のケーソン1bを着脱自在に連結してケーソン連結体10bを形成する工程(
図2:ステップS11)と、ケーソン連結体10bと曳航船2とを所定の曳航方向D1に沿って延びる曳航索21により連結し、曳航船2によりケーソン連結体10bを曳航する工程(ステップS12)とを備える。また、ケーソン連結体10bは、上述のように、曳航方向D1に垂直な方向に対して傾斜する方向延びる側面(すなわち、連結側面11b)同士で連結される2つのケーソン1bを含む。これにより、ケーソン連結体10bの水線幅を大きくしてケーソン連結体10bの復原性を増大させることができる。その結果、ケーソン連結体10bの曳航時の安定性を向上することができる。
【0084】
上述のように、ケーソン連結体10bは、曳航方向D1に垂直な方向に対して傾斜する方向に延びる側面(すなわち、連結側面11b)同士で連結される他の2つのケーソン1bをさらに含むことが好ましい。また、上記2つのケーソン1bおよび当該他の2つのケーソン1bはそれぞれ、平面視において略正方形であり、上記2つのケーソン1bおよび当該他の2つのケーソン1bは格子状に配置されることが好ましい。これにより、ケーソン連結体10bの曳航方向D1に垂直な投影面積の増大を抑制することができる。その結果、ケーソン連結体10bの曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10bの曳航速度の増大を実現することができる。
【0085】
ケーソン連結体10bでは、各ケーソン1bの重心は、各ケーソン1bの平面視における中心とおよそ重なっていてもよく、ずれていてもよい。ケーソン連結体10bが、平面視において重心Gが中心からずれている4つのケーソン1bを含む場合、当該4つのケーソン1bは、平面視におけるケーソン連結体10bの重心と当該ケーソン連結体10bの中心との距離が小さくなる向きにて互いに連結されることが好ましい。これにより、波浪等によるケーソン連結体10bの動揺を低減することができる。
【0086】
ケーソン連結体10bでは、上記複数のケーソン1bは、ケーソン連結体10bの外側面に位置する消波部17bを有する消波ケーソンを含むことが好ましい。これにより、ケーソン連結体10bの曳航時における造波抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10bの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10bの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0087】
ケーソン連結体10bは、
図8に示すように、4つのケーソン1bが曳航方向D1および左右方向に格子状に配置された状態で曳航されてもよい。曳航方向D1の前側の2つのケーソン1bは、曳航方向D1に平行な方向に延びる連結側面11b同士で連結される。曳航方向D1の後側の2つのケーソン1bも同様に、曳航方向D1に平行な方向に延びる連結側面11b同士で連結される。この場合であっても、
図7に例示するケーソン曳航方法と略同様に、ケーソン連結体10bの水線幅を大きくしてケーソン連結体10bの復原性を増大させることができる。その結果、ケーソン連結体10bの曳航時の安定性を向上することができる。なお、
図8に示す例では、消波部17bは、ケーソン連結体10bにおける曳航方向D1に略平行な外側面に位置しているが、曳航方向D1に略垂直な外側面に位置していてもよい。
【0088】
また、
図9および
図10に示すように、4つのケーソン1bの曳航方向D1の前側および後側に、
図4および
図5に示す前付加部31および後付加部32が連結されることにより、ケーソン連結体10cが形成されてもよい。前付加部31が設けられることにより、ケーソン連結体10cの曳航時における造波抵抗を低減することができる。また、後付加部32が設けられることにより、ケーソン連結体10cの曳航時における粘性圧力抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10cの曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10cの曳航速度の増大を実現することができる。
【0089】
ケーソン連結体に前付加部31が設けられる場合、4つのケーソン1bは、
図11に示すように曳航方向D1に配列されてもよい。
図11は、ケーソン連結体10dを用いるケーソン曳航方法の様子を示す平面図である。
図12は、ケーソン連結体10dを示す側面図である。
【0090】
当該ケーソン曳航方法は、略矩形函状の複数のケーソン1bを着脱自在に連結してケーソン連結体10dを形成する工程(
図6:ステップS21)と、ケーソン連結体10dと曳航船2とを所定の曳航方向D1に沿って延びる曳航索21により連結し、曳航船2によりケーソン連結体10dを曳航する工程(ステップS22)とを備える。また、ケーソン連結体10dは、複数のケーソン1bの曳航方向D1の前側に連結される前付加部31を含む。前付加部31の水線幅(すなわち、水線311の左右方向の幅)は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って増加する。
【0091】
これにより、ケーソン連結体10dの曳航時における造波抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10dの曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10dの曳航速度の増大を実現することができる。また、曳航方向D1の前側から流れてきた流木等の漂流物がケーソン1bに直接的に衝突してケーソン1bが破損することを抑制することができる。
【0092】
ケーソン連結体10dは、ケーソン連結体10aと同様に、前付加部31および/または後付加部32に接続される補助推進部33をさらに含むことが好ましい。また、補助推進部33は、曳航方向D1の前側に前縁を向けて配置される水中翼331と、水中翼331を前付加部31に接続する翼接続部332とを備えることが好ましい。これにより、ケーソン連結体10dに入射する波浪を利用して推進力を得ることができる。その結果、ケーソン連結体10dの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10dの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0093】
ケーソン連結体10dは、複数のケーソン1bの曳航方向D1の後側に連結される後付加部32をさらに含むことが好ましい。また、後付加部32の水線幅(すなわち、水線321の左右方向の幅)は、曳航方向D1の前側から後方に向かうに従って減少することが好ましい。これにより、ケーソン連結体10dの曳航時における粘性圧力抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10dの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10dの曳航速度の更なる増大を実現することができる。
【0094】
当該ケーソン曳航方法では、ステップS22において、ケーソン連結体10dの外表面に沿って微細気泡が供給される。これにより、ケーソン連結体10dの曳航時における粘性摩擦抵抗を低減することができる。その結果、ケーソン連結体10dの曳航時の更なる抵抗低減、および/または、ケーソン連結体10dの曳航速度の更なる増大を実現することができる。当該微細気泡による粘性摩擦抵抗の低減は、外表面の粗度が比較的大きく摩擦も大きくなりやすい鉄筋コンクリート製のケーソン1bを曳航する場合に特に適している。
【0095】
当該ケーソン曳航方法は、ステップS22よりも後に、目的地まで曳航された複数のケーソン1bから前付加部31および後付加部32を取り外す工程(ステップS23)と、前付加部31の曳航方向D1の後側に後付加部32を連結する工程(ステップS25)と、前付加部31および後付加部32を曳航船2により曳航して目的地から退避させる工程(ステップS26)と、をさらに備えることが好ましい。これにより、前付加部31および後付加部32を当該目的地から容易に退避させることができる。また、前付加部31および後付加部32の再利用を容易とすることができる。
【0096】
なお、ケーソン連結体10dでは、曳航方向D1に配列されるケーソン1bの数は、2以上の範囲で適宜変更されてよい。また、ケーソン1bに代えて、
図2に示すケーソン1や他の形状のケーソンが曳航方向D1に連結されてもよい。
【0097】
上述のケーソン曳航方法では、様々な変更が可能である。
【0098】
例えば、前付加部31および後付加部32はそれぞれ、
図1に例示する複数のケーソン1(すなわち、曳航方向D1に対して斜めに配置された複数のケーソン1)の前側および後側に連結されてもよい。この場合も、ケーソン連結体の曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体の曳航速度の増大を実現することができる。
【0099】
前付加部31および後付加部32はそれぞれ、
図7に例示する複数のケーソン1b(すなわち、曳航方向D1に対して斜めに配置された複数のケーソン1b)の前側および後側に連結されてもよい。この場合も、ケーソン連結体の曳航時の抵抗低減、および/または、ケーソン連結体の曳航速度の増大を実現することができる。
【0100】
図1および
図3に示すケーソン連結体10では、各ケーソン1の重心Gは、長手方向の略中央に位置していてもよい。ケーソン連結体10aにおいても同様である。
【0101】
図4に示すケーソン連結体10aでは、隣接する2つのケーソン1は、ケーソン1から独立した連結補助部材を連結側面11の間に挟んで連結されてもよい。当該連結補助部材は、例えば、連結側面11と略同形状の板状の部材である。ケーソン連結体10,10b~10dにおいても同様である。
【0102】
ケーソン連結体10aでは、ケーソン1の連結に上述の連結補助部材が利用される場合、ステップS25において、前付加部31と後付加部32との間に当該連結補助部材が挟まれて連結されてもよい。この場合、当該連結補助部材は、ステップS26において、前付加部31および後付加部32と共に曳航船2により曳航されて目的地から退避する。ケーソン連結体10c,10dにおいても同様である。
【0103】
ケーソン連結体10aでは、水中翼331および翼接続部332を備える補助推進部33に加えて、または、補助推進部33に代えて、他の様々な補助推進部が設けられてもよい。他の補助推進部は、前付加部31および/または後付加部32に接続されてもよく、あるいは、ケーソン1に接続されてもよい。他の補助推進部は、原動機または発電機等の動力源により駆動されるスラスター等であってもよい。あるいは、ケーソン連結体10aでは、補助推進部は省略されてもよい。ケーソン連結体10c,10dにおいても同様である。
【0104】
ケーソン連結体10aでは、微細気泡供給部34は省略されてもよい。ケーソン連結体10c,10dにおいても同様である。
【0105】
微細気泡供給部34は、ケーソン連結体10に設けられてもよい。例えば、気泡噴出口342が多数設けられた柱状部材がケーソン連結体10の前端部に設けられ、当該柱状部材から噴出された微細気泡が、ケーソン連結体10の外側面に沿って供給されてもよい。当該柱状部材に圧縮空気等のガスを供給する装置は、例えば、曳航船2に設けられ、フレキシブル配管等を介して当該柱状部材に連結される。ケーソン連結体10bにおいても同様である。
【0106】
ケーソン連結体10aでは、後付加部32は省略されてもよい。ケーソン連結体10c,10dにおいても同様である。
【0107】
ケーソン連結体10,10a~10dの複数のケーソンは、必ずしも同形状である必要はなく、異なる形状のケーソンを含んでいてもよい。また、当該複数のケーソンの重量および重心高さは同じであっても、異なっていてもよい。なお、当該複数のケーソンは、必ずしも消波ケーソンを含む必要はない。ケーソン連結体10,10a~10dに含まれるケーソンの形状、数および配置等は、様々に変更されてよい。
【0108】
図13に示す例では、ケーソン連結体10eは、2つの上記ケーソン1bと、略直方体状のケーソン1eとを含む。ケーソン連結体10eの平面視における形状は、略正方形である。各ケーソン1bは、上述のように、平面視において略正方形である。ケーソン1eは、平面視において略長方形である。平面視におけるケーソン1eの長辺15eの長さは、短辺16eの長さの約2倍である。ケーソン1eの短辺16eの長さは、平面視におけるケーソン1bの1辺の長さと略同じである。ケーソン連結体10eでは、ケーソン1eの1つの長辺15eに対応する側面(すなわち、連結側面11e)と、2つのケーソン1bのそれぞれ1つの側面(すなわち、連結側面11b)とが連結される。また、2つのケーソン1bは、連結側面11e,11bに垂直な側面同士で連結される。ケーソン連結体10eは、対角線上に位置する2つの頂点P2,P4近傍にて、曳航索21により曳航船2に連結される。ケーソン連結体10eは、1つの側面上に位置する2つの頂点P1,P4近傍にて、曳航索21により曳航船2に連結されてもよい。また、ケーソン連結体10eは、
図4に示す前付加部31および後付加部32等を含んでいてもよい。
【0109】
図14に示す例では、ケーソン連結体10fは、環状に連結された4つの上記ケーソン1を含む。各ケーソン1は、上述のように、平面視において略長方形である。ケーソン連結体10fは、中央に略直方体状の空間を有する略矩形筒状である。平面視において、ケーソン連結体10fの外縁および内縁は、略正方形である。ケーソン連結体10fでは、各ケーソン1の短辺16に対応する1つの側面が、隣接するケーソン1の長辺15に対応する1つの側面の長手方向端部に連結される。換言すれば、各ケーソン1の長辺15に対応する1つの側面の長手方向端部には、隣接するケーソン1の短辺16に対応する1つの側面が連結される。ケーソン連結体10fは、対角線上に位置する2つの頂点P2,P4近傍にて、曳航索21により曳航船2に連結される。ケーソン連結体10fは、1つの側面上に位置する2つの頂点P1,P4近傍にて、曳航索21により曳航船2に連結されてもよい。また、ケーソン連結体10fは、
図4に示す前付加部31および後付加部32等を含んでいてもよい。
【0110】
図15に示す例では、ケーソン連結体10gは、形状がそれぞれ異なる略直方体状の4つのケーソン1g,1h,1i,1jを含む。ケーソン連結体10gの平面視における形状は、略正方形である。ケーソン1g~1jは、平面視において形状が互いに異なる略長方形である。ケーソン連結体10gは、対角線上に位置する2つの頂点P2,P4近傍にて、曳航索21により曳航船2に連結される。ケーソン連結体10gは、1つの側面上に位置する2つの頂点P1,P4近傍にて、曳航索21により曳航船2に連結されてもよい。また、ケーソン連結体10gは、
図4に示す前付加部31および後付加部32等を含んでいてもよい。
【0111】
図1に示すケーソン連結体10では、平面視におけるケーソン連結体10の中心と一方のケーソン1の重心Gとの距離は、当該中心と他方のケーソン1の重心Gとの距離と、長手方向および幅方向の一方または双方において異なっていてもよい。この場合であっても、一方のケーソン1の重心Gが長手方向の中央から一方側にずれており、他方のケーソン1の重心Gが当該中央から他方側にずれていることにより、ケーソン連結体10の重心G0を、ケーソン連結体10の平面視における中心に近づけることができる。その結果、波浪等によるケーソン連結体10の動揺を低減することができる。
【0112】
図1に示すケーソン連結体10では、各ケーソン1の重心Gが平面視における中心からずれているが、
本願発明の関連技術では、各ケーソン1の重心は、平面視における中心とおよそ重なっていてもよい。
一方、本願発明では、一部のケーソン1の重心が、平面視における中心からずれていてもよい。ケーソン連結体10が、平面視において重心Gが中心からずれている少なくとも1つのケーソン1を含む場合、当該少なくとも1つのケーソン1は、平面視におけるケーソン連結体10の重心G0とケーソン連結体10の中心との距離が小さくなる向きにて他のケーソン1に連結されることが好ましい。これにより、波浪等によるケーソン連結体10の動揺を低減することができる。ケーソン連結体10a~10gにおいても同様である。
【0113】
ケーソン連結体10,10a~10gと曳航船2とを連結する曳航索21の数は、必ずしも2本である必要はなく、1本であっても、3本以上であってもよい。
【0114】
ケーソン1,1b,1e~1jは、防波堤以外の様々な水中構造物に使用されてよい。
【0115】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1b,1e~1j ケーソン
2 曳航船
10,10a~10g ケーソン連結体
11,11b,11e 連結側面
15,15e 長辺
16,16e 短辺
17,17b 消波部
21 曳航索
31 前付加部
32 後付加部
33 補助推進部
34 微細気泡供給部
311 (前付加部の)水線
321 (後付加部の)水線
331 水中翼
332 翼接続部
341 気泡生成装置
342 気泡噴出口
D1 曳航方向
G (ケーソンの)重心
G0 (ケーソン連結体の)重心
S11~S12,S21~S26 ステップ