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特許6997059干渉調整装置、干渉調整方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】干渉調整装置、干渉調整方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/029 20180101AFI20220107BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20220107BHJP
   H04W 16/10 20090101ALI20220107BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20220107BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20220107BHJP
【FI】
H04W4/029
H04W16/28
H04W16/10
H04W88/02 151
H04W16/18 110
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018185050
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020057848
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンビン
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/083238(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178340(WO,A1)
【文献】特開2008-288626(JP,A)
【文献】特開2013-065928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動通信装置の予定移動経路及び予定移動速度に基づく情報を含み、前記移動通信装置の無線通信によって生じる与干渉エリアを示す与干渉エリア情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得する前記与干渉エリア情報に基づいて、前記移動通信装置の移動に伴う干渉調整対象エリアを、複数の前記移動通信装置がそれぞれ存在する前記予定移動経路上の位置をいずれも含み、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた広さにして算出する干渉調整対象エリア算出部と、
前記干渉調整対象エリア算出部が算出する前記干渉調整対象エリアにおいて無線通信する通信装置と、前記移動通信装置との間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示を出力する干渉低減指示出力部と、
を備える干渉調整装置。
【請求項2】
前記干渉低減指示出力部は、複数の前記移動通信装置のうち、通信の優先度が高い前記移動通信装置が存在する前記干渉調整対象エリアについて、干渉の程度をより低減させた前記干渉低減指示を出力する
請求項1に記載の干渉調整装置。
【請求項3】
前記干渉調整対象エリア算出部は、
前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた数の複数のエリアをそれぞれ前記干渉調整対象エリアとして算出する
請求項1又は請求項2に記載の干渉調整装置。
【請求項4】
前記干渉調整対象エリア算出部は、
前記複数のエリアのうち、前記予定移動経路の出発点からより離れたエリアの広さをより広くして、前記干渉調整対象エリアを算出する
請求項3に記載の干渉調整装置。
【請求項5】
前記干渉低減指示出力部は、
前記複数のエリアのうち、前記予定移動経路の出発点からより離れたエリアについての干渉の程度をより低減させて、前記干渉低減指示を出力する
請求項3又は請求項4に記載の干渉調整装置。
【請求項6】
前記移動通信装置の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記取得部が取得する前記与干渉エリア情報が示す与干渉エリアの移動状況と、前記位置情報取得部が取得する前記位置情報に基づく与干渉エリアの移動状況とのずれを検出する検出部と、
をさらに備え、
前記干渉調整対象エリア算出部は、
前記検出部が検出する移動状況のずれに基づいて、前記干渉調整対象エリアを算出する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の干渉調整装置。
【請求項7】
前記干渉調整対象エリア算出部は、
前記検出部が検出する移動状況のずれに基づいて、前記干渉調整対象エリアにおける許容可能な干渉量の基準である干渉保護基準を変更する
請求項6に記載の干渉調整装置。
【請求項8】
コンピュータが、複数の移動通信装置の予定移動経路及び予定移動速度に基づく情報を含み、
前記移動通信装置の無線通信によって生じる与干渉エリアを示す与干渉エリア情報を取得する取得ステップと、
コンピュータが、前記取得ステップにおいて取得される前記与干渉エリア情報に基づいて、前記移動通信装置の移動に伴う干渉調整対象エリアを、複数の前記移動通信装置がそれぞれ存在する前記予定移動経路上の位置をいずれも含み、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた広さにして算出する干渉調整対象エリア算出ステップと、
コンピュータが、前記干渉調整対象エリア算出ステップにおいて算出される前記干渉調整対象エリアにおいて無線通信する通信装置と、前記移動通信装置との間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示を出力する干渉低減指示出力ステップと、
を有する干渉調整方法。
【請求項9】
干渉調整装置のコンピュータに
複数の移動通信装置の予定移動経路及び予定移動速度に基づく情報を含み、前記移動通信装置の無線通信によって生じる与干渉エリアを示す与干渉エリア情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得される前記与干渉エリア情報に基づいて、前記移動通信装置の移動に伴う干渉調整対象エリアを、複数の前記移動通信装置がそれぞれ存在する前記予定移動経路上の位置をいずれも含み、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた広さにして算出する干渉調整対象エリア算出ステップと、
前記干渉調整対象エリア算出ステップにおいて算出される前記干渉調整対象エリアにおいて無線通信する通信装置と、前記移動通信装置との間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示を出力する干渉低減指示出力ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、干渉調整装置、干渉調整方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数資源の有効利用を図るため、放送等(一次利用システム;既存システム)に割り当てられている周波数帯において、他の利用者(二次利用システム;与干渉システム)が一次利用者に影響を与えずに利用可能な空きチャネル、もしくは一次利用システムに与える影響が十分に小さい同一チャネルの周波数(例えば、ホワイトスペース)を共用する技術の実用化が検討されている。この周波数共用技術に関して与干渉を評価する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-207836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の周波数共用においては、与干渉の発生を低減するために、与干渉システムに対する周波数共用の制約が比較的大きく、周波数利用効率を向上させることができないといった問題があった。
【0005】
本発明は、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、複数の移動通信装置の予定移動経路及び予定移動速度に基づく情報を含み、前記移動通信装置の無線通信によって生じる与干渉エリアを示す与干渉エリア情報を取得する取得部と、前記取得部が取得する前記与干渉エリア情報に基づいて、前記移動通信装置の移動に伴う干渉調整対象エリアを、複数の前記移動通信装置がそれぞれ存在する前記予定移動経路上の位置をいずれも含み、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた広さにして算出する干渉調整対象エリア算出部と、前記干渉調整対象エリア算出部が算出する前記干渉調整対象エリアにおいて無線通信する通信装置と、前記移動通信装置との間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示を出力する干渉低減指示出力部と、を備える干渉調整装置である。
【0007】
本発明の一実施形態の干渉調整装置において、前記干渉低減指示出力部は、複数の前記移動通信装置のうち、通信の優先度が高い前記移動通信装置が存在する前記干渉調整対象エリアについて、干渉の程度をより低減させた前記干渉低減指示を出力する
【0008】
本発明の一実施形態の干渉調整装置において、前記干渉調整対象エリア算出部は、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた数の複数のエリアをそれぞれ前記干渉調整対象エリアとして算出する。
【0009】
本発明の一実施形態の干渉調整装置において、前記干渉調整対象エリア算出部は、前記複数のエリアのうち、前記予定移動経路の出発点からより離れたエリアの広さをより広くして、前記干渉調整対象エリアを算出する。
【0010】
本発明の一実施形態の干渉調整装置において、前記干渉低減指示出力部は、前記複数のエリアのうち、前記予定移動経路の出発点からより離れたエリアについての干渉の程度をより低減させて、前記干渉低減指示を出力する。
【0011】
本発明の一実施形態の干渉調整装置において、前記移動通信装置の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、前記取得部が取得する前記与干渉エリア情報が示す与干渉エリアの移動状況と、前記位置情報取得部が取得する前記位置情報に基づく与干渉エリアの移動状況とのずれを検出する検出部と、をさらに備え、前記干渉調整対象エリア算出部は、前記検出部が検出する移動状況のずれに基づいて、前記干渉調整対象エリアを算出する。
【0012】
本発明の一実施形態の干渉調整装置において、前記干渉調整対象エリア算出部は、前記検出部が検出する移動状況のずれに基づいて、前記干渉調整対象エリアにおける許容可能な干渉量の基準である干渉保護基準を変更する。
【0013】
本発明の一実施形態は、コンピュータが、複数の移動通信装置の予定移動経路及び予定移動速度に基づく情報を含み、前記移動通信装置の無線通信によって生じる与干渉エリアを示す与干渉エリア情報を取得する取得ステップと、コンピュータが、前記取得ステップにおいて取得される前記与干渉エリア情報に基づいて、前記移動通信装置の移動に伴う干渉調整対象エリアを、複数の前記移動通信装置がそれぞれ存在する前記予定移動経路上の位置をいずれも含み、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた広さにして算出する干渉調整対象エリア算出ステップと、コンピュータが、前記干渉調整対象エリア算出ステップにおいて算出される前記干渉調整対象エリアにおいて無線通信する通信装置と、前記移動通信装置との間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示を出力する干渉低減指示出力ステップと、を有する干渉調整方法である。
【0014】
本発明の一実施形態は、干渉調整装置のコンピュータに複数の移動通信装置の予定移動経路及び予定移動速度に基づく情報を含み、前記移動通信装置の無線通信によって生じる与干渉エリアを示す与干渉エリア情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得される前記与干渉エリア情報に基づいて、前記移動通信装置の移動に伴う干渉調整対象エリアを、複数の前記移動通信装置がそれぞれ存在する前記予定移動経路上の位置をいずれも含み、前記移動通信装置の移動開始からの経過時間に応じた広さにして算出する干渉調整対象エリア算出ステップと、前記干渉調整対象エリア算出ステップにおいて算出される前記干渉調整対象エリアにおいて無線通信する通信装置と、前記移動通信装置との間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示を出力する干渉低減指示出力ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる干渉調整装置、干渉調整方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態の干渉調整システムの機能構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の干渉調整装置の動作の一例を示す図である。
図3】本実施形態の与干渉エリアの一例を示す図である。
図4】本実施形態の干渉調整対象エリアの一例を示す図である。
図5】本実施形態の干渉調整対象エリア算出部が算出する干渉調整対象エリアの変形例を示す図である。
図6】第2の実施形態の干渉調整システムの機能構成の一例を示す図である。
図7】本実施形態の干渉調整システムの動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、図を参照して本実施形態の干渉調整システム1の概要について説明する。
【0018】
[干渉調整システム1の機能構成]
図1は、本実施形態の干渉調整システム1の機能構成の一例を示す図である。干渉調整システム1は、干渉調整装置10と、操作部20と、提示部30とを備える。
操作部20は、例えば、キーボードやタッチパネルなどの操作デバイスを備えており、干渉調整装置10の操作者の操作を受け付ける。操作部20は、受け付けた操作に応じた情報を干渉調整装置10に出力する。
本実施形態の一例において、操作部20が受け付ける操作には、与干渉エリア情報DIAを入力する操作が含まれる。与干渉エリア情報DIAとは、移動通信装置MCの無線通信によって生じる与干渉エリアIAを示す情報である。この与干渉エリア情報DIAには、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに基づく情報が含まれる。
この一例の場合、操作部20は、与干渉エリア情報DIAを干渉調整装置10に対して出力する。
【0019】
干渉調整装置10は、取得部110と、干渉調整対象エリア算出部120と、干渉低減指示出力部130とを備える。
取得部110は、与干渉エリア情報DIAを取得する。上述したように、与干渉エリア情報DIAとは、移動通信装置MCの無線通信によって生じる与干渉エリアIAを示す情報である。この与干渉エリア情報DIAには、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに基づく情報が含まれる。
取得部110は、取得した与干渉エリア情報DIAを干渉調整対象エリア算出部120に出力する。
【0020】
干渉調整対象エリア算出部120は、取得部110が取得する与干渉エリア情報DIAに基づいて、移動通信装置MCの移動に伴う干渉調整対象エリアTAを算出する。干渉調整対象エリア算出部120は、算出した干渉調整対象エリアTAを示す情報(干渉調整対象エリア情報DTA)を干渉低減指示出力部130に出力する。
【0021】
干渉低減指示出力部130は、干渉調整対象エリア算出部120が算出する干渉調整対象エリアTAにおいて無線通信する通信装置FCと、移動通信装置MCとの間の無線通信の干渉を低減する干渉低減指示IRを生成する。本実施形態の一例では、干渉低減指示出力部130は、生成した干渉低減指示IRを提示部30に対して出力する。
なお、干渉低減指示出力部130は、提示部30に加えて又は提示部30に変えて、通信装置FCに対して直接的に干渉低減指示IRを出力してもよい。
【0022】
提示部30は、例えば、ディスプレイやプリンタなどを備えており、干渉低減指示出力部130が出力する干渉低減指示IRを、操作者に対して提示する。
【0023】
[干渉調整装置10の動作]
次に、図2を参照して干渉調整装置10の動作の一例について説明する。
図2は、本実施形態の干渉調整装置10の動作の一例を示す図である。
(ステップS110)取得部110は、与干渉エリア情報DIAを取得する。ここで与干渉エリアIAの一例について図3を参照して説明する。
【0024】
図3は、本実施形態の与干渉エリアIAの一例を示す図である。この一例において、移動通信装置MCとは、テレビ放送の移動中継車(以下、単に中継車BVという。)に備えられるテレビ中継波の通信装置である。
この一例では、中継車BVには、マラソン競技中の先頭(又は先頭集団)の競技者の移動に合わせて移動する第1中継車BV1と、第2集団の競技者の移動に合わせて移動する第2中継車BV2とがある。なお、中継車BVには、第n集団(nは自然数。)の競技者の移動に合わせて移動する第n中継車BVnがあってもよい。以下、これら第1中継車BV1~第n中継車BVnを個別に区別しない場合には、単に、中継車BVと総称して説明する。
【0025】
この一例において、中継車BVは、マラソン競技の進行に合わせて、競技者を移動しながら撮像及び収音し、撮像した画像情報及び収音した音情報をテレビ中継波にのせてテレビ放送局に送信する。
また、中継車BVにおいてワイヤレスマイク(特定ラジオマイク)が使用されることがある。このワイヤレスマイク(特定ラジオマイク)は、収音した音情報を中継車BVが備える受信機に対して無線通信によって送信する。
【0026】
これら中継車BVにおいて使用される通信の周波数は、既存の周波数共用技術によって、他の通信装置FCの通信波の周波数と共用されている。中継車BVの使用周波数と周波数を共用する通信装置FCが存在する場合、中継車BV及び通信装置FCの通信波が互いに干渉することがある。この場合、通信装置FCは、中継車BVの移動経路に応じて、送信電力の抑制、周波数の変更、指向特性(ビーム形状)の変更などの、干渉低減のための処置が指示される。干渉調整装置10は、この干渉低減の処置を指示する干渉低減指示IRを出力する。
【0027】
ここで、上述したマラソン競技を一例にすると、このマラソン競技を中継する中継車BVは、予め定められたマラソンコース(予定移動経路CS)に沿って移動する。また、中継車BVが中継波を送信する時間は、競技開始の数十分~数分前から、先頭の競技者がゴールした後の数分後~数十後まで(例えば、3時間)である。
【0028】
この一例の場合、中継車BVの予定移動経路CSを含む所定のエリアAを与干渉エリアIAとし、中継車BVによる中継波の送信時間の全期間(例えば、3時間)において、この与干渉エリアIAの全体を干渉低減の処置の対象エリア(すなわち、干渉調整対象エリアTA)とすれば、中継車BVが送信する中継波への干渉を低減することができる。
しかしながら、例えば、マラソン競技において、中継車BVとの干渉が生じ得るのは、中継車BVが存在するエリアAのみ、つまり、与干渉エリアIAの全体のうちの一部のみである。例えば、マラソン競技の開始直後においては、中継車BVはスタート地点付近に存在するため、10km地点、20km地点などの中間地点においては、中継車BVとの干渉が生じない場合がある。すなわち、全競技時間(例えば、3時間)にわたって、与干渉エリアIAの全体を干渉調整対象エリアTAとすると、干渉低減の処置が本来は不要な通信装置FCにまで干渉低減の処置を求めることになる。この場合、移動通信装置MCと通信装置FCとの干渉が生じる程度は低減できるものの、周波数の共用効率が低下してしまう。
【0029】
そこで、本実施形態の干渉調整装置10は、移動通信装置MC(例えば、中継車BV)の移動経路や移動速度に応じて干渉調整対象エリアTAを設定することにより、周波数の共用効率を高めつつ干渉を低減する。以下、干渉調整装置10が、移動通信装置MCの移動経路や移動速度に応じて干渉調整対象エリアTAを設定する手順について、上述したマラソン競技を一例にして説明する。
【0030】
取得部110が取得する与干渉エリア情報DIAには、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに基づく情報が含まれている。この一例において、予定移動経路CSとは、マラソン競技のコースである。また、予定移動速度VSとは、マラソン競技の競技者(又は競技者の集団)の移動速度の予想値である。
【0031】
(ステップS120)干渉調整対象エリア算出部120は、取得部110が取得した与干渉エリア情報DIAに基づいて、干渉調整対象エリアTAを算出する。ここで、本実施形態の干渉調整対象エリア算出部120が算出する干渉調整対象エリアTAの一例について、図4を参照して説明する。
【0032】
図4は、本実施形態の干渉調整対象エリアTAの一例を示す図である。干渉調整対象エリア算出部120は、中継車BV(移動通信装置MC)の予定移動経路CSに沿って干渉調整対象エリアTAを算出する。ここで、干渉調整対象エリア算出部120は、干渉調整対象エリアTAどうしの間隔を、予定移動速度VSに基づいて算出する。
同図に示す一例では、干渉調整対象エリア算出部120は、マラソン競技のスタート位置からゴール位置までの予定移動経路CSに沿って、干渉調整対象エリアTA1~干渉調整対象エリアTAnを算出する。なお、同図では、干渉調整対象エリアTAk+1~干渉調整対象エリアTAnまでの図示を省略している。
【0033】
干渉調整対象エリア算出部120は、上述のようにして算出した干渉調整対象エリアTAについて、この干渉調整対象エリアTAを示す情報(干渉調整対象エリア情報DTA)を生成し、生成した干渉調整対象エリア情報DTAを干渉低減指示出力部130に対して出力する。
【0034】
[干渉調整対象エリア算出の変形例(1)]
図5は、本実施形態の干渉調整対象エリア算出部120が算出する干渉調整対象エリアTAの変形例を示す図である。図5(A)に示すように、マラソン競技の競技序盤(時刻t1)においては、先頭集団と第2集団とは比較的近接していることが想定され、第1中継車BV1と第2中継車BV2との間の距離d1は近距離である。一方、マラソン競技の競技終盤(時刻t2)においては、先頭集団と第2集団とは比較的離れていることが想定され、第1中継車BV1と第2中継車BV2との間の距離d2は距離d1に比べ遠距離である。
この一例のように、複数の移動通信装置MC(中継車BV)が存在する場合において、時刻tの経過に伴い、移動通信装置MCどうしの距離が変化する場合がある。この一例の場合、干渉調整対象エリア算出部120は、時刻t1における干渉調整対象エリアTA1の広さ(例えば、半径r1)と、時刻t2における干渉調整対象エリアTA2の広さ(例えば、半径r2)とを互いに異ならせて、干渉調整対象エリアTAを算出する。
すなわち、干渉調整対象エリア算出部120は、移動通信装置MCの移動開始からの経過時間ETに応じた広さのエリアAを干渉調整対象エリアTAとして算出する。
【0035】
また、干渉調整対象エリア算出部120は、複数のエリアAのうち、予定移動経路CSの出発点からより離れたエリアAの広さをより広くして、干渉調整対象エリアTAを算出する。
上述した一例の場合、干渉調整対象エリア算出部120は、時刻t2における干渉調整対象エリアTA2の広さ(例えば、半径r2)を、時刻t1における干渉調整対象エリアTA1の広さ(例えば、半径r1)よりも広く(大きく)して、干渉調整対象エリアTAを算出する。
【0036】
[干渉調整対象エリア算出の変形例(2)]
また、干渉調整対象エリア算出部120は、複数の移動通信装置MC(中継車BV)が存在する場合において、上述した干渉調整対象エリアTAの広さを変えることに加えて(又は干渉調整対象エリアTAの広さを変えることに代えて)、干渉調整対象エリアTAの数を移動通信装置MCの数に応じて変化させてもよい。
すなわち、干渉調整対象エリア算出部120は、移動通信装置MCの移動開始からの経過時間ETに応じた数の複数のエリアAをそれぞれ干渉調整対象エリアTAとして算出する。
【0037】
(ステップS130)図2に戻り、干渉低減指示出力部130は、干渉調整対象エリア算出部120が出力する干渉調整対象エリア情報DTAに基づいて、干渉低減指示IRを生成する。干渉低減指示出力部130は、生成した干渉低減指示IRを提示部30(又は他の装置)に出力する。
【0038】
[干渉低減指示の変形例]
なお、干渉低減指示出力部130は、複数のエリアAのうち、予定移動経路CSの出発点からより離れたエリアAについての干渉の程度をより低減させて、干渉低減指示IRを出力してもよい。
一例として、上述したマラソン競技において、第2集団に比べて先頭集団のほうがテレビ放送の対象(被写体)となる程度が高い場合がある。例えば、先頭集団に対応する第1中継車BV1(つまり、予定移動経路CSの出発点からより離れたエリアAに存在する移動通信装置MC)の方が、放送の優先度がより高い。つまり、複数の中継車BVがある場合に、中継車BVごとに放送の優先度が異なる場合がある。
干渉低減指示出力部130は、複数のエリアAのうち、優先度の高い移動通信装置MCが存在するエリアAを、干渉の程度をより低減させた干渉低減指示IRを生成する。
【0039】
また、干渉低減指示出力部130は、送信電力の低減指示を干渉低減指示IRとして生成する場合には、送信電力を段階的に低減(例えば、第1段階として1dBの低減、第2段階として2dBの低減)する干渉低減指示IRを生成してもよい。
また、干渉低減指示出力部130は、通信装置FCが複数ある場合において、送信電力を低減する通信装置FCの台数を段階的に低減(例えば、第1段階として通信装置FCの台数のうち10%の通信装置FCについて低減、第2段階として通信装置FCの台数のうち20%の通信装置FCについて低減)する干渉低減指示IRを生成してもよい。
また、干渉低減指示出力部130は、ビームの指向特性の変更指示を干渉低減指示IRとして生成する場合には、ビーム方向を段階的に変更(例えば、第1段階として(π/45)度の変更、第2段階として(2π/45)度の変更)する干渉低減指示IRを生成してもよい。
【0040】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の干渉調整装置10は、干渉調整対象エリア算出部120が、与干渉エリア情報DIAに基づいて、移動通信装置MCの移動に伴う干渉調整対象エリアTAを算出する。この与干渉エリア情報DIAには、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに基づく情報が含まれている。これにより、干渉調整装置10は、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに基づいて、干渉調整対象エリアTAを、範囲的及び時間的により詳細に算出することができる。
したがって、本実施形態の干渉調整装置10によれば、干渉調整対象エリアTAを範囲的及び時間的により限定することができるため、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる。
【0041】
また、上述したように、本実施形態の干渉調整対象エリア算出部120は、移動通信装置MCの移動開始からの経過時間ETに応じた広さのエリアAを干渉調整対象エリアTAとして算出する。このように構成された干渉調整対象エリア算出部120によれば、干渉調整対象エリアTAの範囲を、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに応じてより詳細に算出することができるため、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる。
【0042】
また、上述したように、本実施形態の干渉調整対象エリア算出部120は、移動通信装置MCの移動開始からの経過時間ETに応じた数の複数のエリアAをそれぞれ干渉調整対象エリアTAとして算出する。このように構成された干渉調整対象エリア算出部120によれば、干渉調整対象エリアTAの数を、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに応じてより詳細に算出することができるため、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる。
【0043】
また、上述したように、本実施形態の干渉調整対象エリア算出部120は、複数のエリアのうち、予定移動経路CSの出発点からより離れたエリアAの広さをより広くして、干渉調整対象エリアTAを算出する。このように構成された干渉調整対象エリア算出部120によれば、干渉調整対象エリアTAの範囲を、移動通信装置MCの予定移動経路CS及び予定移動速度VSに応じてより詳細に算出することができるため、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる。
【0044】
また、上述したように、本実施形態の干渉低減指示出力部130は、複数のエリアAのうち、予定移動経路CSの出発点からより離れたエリアAについての干渉の程度をより低減させて、干渉低減指示IRを出力する。このように構成された本実施形態の干渉低減指示出力部130によれば、干渉調整対象エリアTAにおける干渉調整の程度を、複数の移動通信装置MCの間の優先度に応じて決めることができる。したがって、本実施形態の干渉調整装置10によれば、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる。
【0045】
[第2の実施形態]
以下、図6及び図7を参照して第2の実施形態の干渉調整システム1aについて説明する。なお、第1の実施形態の干渉調整システム1と同一の構成及び動作については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図6は、第2の実施形態の干渉調整システム1aの機能構成の一例を示す図である。本実施形態の干渉調整システム1aは、干渉調整装置10aが位置情報取得部140及び検出部150を備える点において、上述した第1の実施形態の干渉調整システム1と異なる。
【0047】
干渉調整装置10aは、位置情報取得部140と、検出部150とを備える。
位置情報取得部140は、移動通信装置MCの位置を示す位置情報DLCを取得する。この位置情報DLCとは、移動通信装置MCの現在位置を示す情報である。位置情報DLCは、移動通信装置MCが備える測位機能(例えば、GPS機能)によって生成される。受信部40は、移動通信装置MCから位置情報DLCを取得し、取得した位置情報DLCを位置情報取得部140に出力する。位置情報取得部140は、受信部40から位置情報DLCを取得する。位置情報取得部140は取得した位置情報DLCを検出部150に出力する。
検出部150は、位置情報取得部140が出力する位置情報DLCを取得する。また、検出部150は、取得部110が出力する与干渉エリア情報DIAを取得する。検出部150は、与干渉エリア情報DIAが示す与干渉エリアIAの移動状況と、位置情報DLCに基づく与干渉エリアIAの移動状況とのずれを検出する。すなわち、検出部150は、マラソン競技開始前に予想される与干渉エリアIAの移動状況と、マラソン競技開始後に得られた移動通信装置MCの位置の実測値に基づく与干渉エリアIAの移動状況とのずれを検出する。検出部150は、検出したずれを示す情報を、移動状況検出結果DFとして干渉調整対象エリア算出部120aに出力する。
干渉調整対象エリア算出部120aは、検出部150が検出する移動状況のずれ(移動状況検出結果DF)に基づいて、干渉調整対象エリアTAを算出する。
【0048】
図7は、本実施形態の干渉調整システム1aの動作の一例を示す図である。
(ステップS210)取得部110は、提示部30から与干渉エリア情報DIAを取得する。位置情報取得部140は、受信部40から移動通信装置MCの位置情報DLCを取得する。
(ステップS220)検出部150は、ステップS210において取得された与干渉エリア情報DIAが示す干渉調整対象エリアTA(すなわち、予定移動経路CS及び予定移動速度VSに基づく干渉調整対象エリアTA)と、位置情報DLCが示す干渉調整対象エリアTA(すなわち、移動通信装置MCの現在位置に基づく干渉調整対象エリアTA)との差分を検出する。
【0049】
(ステップS230)検出部150は、ステップS220において検出された差分が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。検出部150は、検出された差分が所定のしきい値を超えると判定する場合(ステップS230;YES)には、処理をステップS240に進める。検出部150は、検出された差分が所定のしきい値を超えないと判定する場合(ステップS230;NO)には、処理をステップS120に進める。
【0050】
(ステップS240)干渉調整対象エリア算出部120aは、検出部150が検出する移動状況のずれを示す移動状況検出結果DFに基づいて、差分を加味した干渉調整対象エリアTAを算出する。
【0051】
なお、検出部150は、位置情報DLCに基づいた差分検知に加えて(又は位置情報DLCに基づいたずれ検知に代えて)、干渉調整対象エリアTAにおける想定干渉量と、実測された干渉量との差に基づいて、差分を検知してもよい。
この場合、検出部150は、移動通信装置MCの許容干渉量と、実測された干渉量との差に基づいて差分を検知する。又は、検出部150は、通信装置FCの想定被干渉量と、実測された干渉量との差に基づいて差分を検知する。
【0052】
また、干渉調整対象エリア算出部120aは、上述したステップS240において、検出部150が検出する移動状況のずれ(移動状況検出結果DF)に基づいて、干渉調整対象エリアTAを算出するとして説明したが、これに限られない。干渉調整対象エリア算出部120aは、移動状況のずれが検出された場合には、ステップS240の処理に代えて、移動通信装置MCの干渉保護基準の緩和幅を移動状況のずれの量に応じて増加させてもよい。ここで、干渉保護基準とは、干渉調整対象エリアTAにおける許容可能な干渉量の基準である。
この場合、移動通信装置MCの干渉保護基準の緩和幅は移動状況検出結果DFが示す移動状況のずれの量に応じて予め定められている。例えば、干渉保護基準の緩和幅は、移動状況検出結果DFが示す移動状況のずれの量が比較的小さい(例えば、レベル1)の場合には既定の干渉保護基準に対して1dB増加させ、移動状況のずれの量が比較的大きい(例えば、レベル2)の場合には既定の干渉保護基準に対してさらに1dB増加させる、などとして予め定められている。
このように構成された干渉調整装置10aによれば、ステップS240における、差分を加味した干渉調整対象エリアTAの算出処理を不要にすることができる。
【0053】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の干渉調整装置10aは、干渉調整対象エリア算出部120aが、予想される与干渉エリアIAの移動状況と、移動通信装置MCの位置の実測値に基づく与干渉エリアIAの移動状況とのずれに基づいて、干渉調整対象エリアTAを算出する。
第1の実施形態において説明したように、干渉調整装置10aは、干渉調整対象エリアTAを範囲的及び時間的により限定することができるため、干渉の発生を低減しつつ、周波数利用効率をより向上させることができる。
一方で、干渉調整対象エリアTAを範囲的及び時間的により限定する場合には、移動通信装置MCの移動状況の予測状況と実際の状況との間にずれが生じると、算出された干渉調整対象エリアTAの範囲外において移動通信装置MCと通信装置FCとの干渉が生じやすくなる場合がある。つまり、予測に基づく干渉調整対象エリアTAの粒度をより細かく設定すると、予測に基づく干渉調整対象エリアTAと、実際に干渉が生じるエリアとの乖離がより大きくなる傾向がある。
干渉調整装置10aは、移動通信装置MCの移動状況の予測状況と実際の状況との間にずれが生じた場合に、干渉調整対象エリアTAを実際の状況を加味して算出するため、干渉調整対象エリアTAの範囲外において移動通信装置MCと通信装置FCとの干渉が生じやすくなるという状況を低減することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態及びその変形を説明したが、これらの実施形態及びその変形は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態及びその変形は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0055】
なお、上述の各装置は内部にコンピュータを有している。そして、上述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0056】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1a…干渉調整システム、10、10a…干渉調整装置、110…取得部、120、120a…干渉調整対象エリア算出部、130…干渉低減指示出力部、140…位置情報取得部、150…検出部、20…操作部、30…提示部、40…受信部、MC…移動通信装置、FC…通信装置、CS…予定移動経路、VS…予定移動速度、A…エリア、IA…与干渉エリア、DIA…与干渉エリア情報、TA…干渉調整対象エリア、DTA…干渉調整対象エリア情報、IR…干渉低減指示、ET…経過時間、DLC…位置情報、DF…移動状況検出結果、BV…中継車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7