(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】プロペラファン、およびプロペラファンを備えた送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
F04D29/38 B
(21)【出願番号】P 2018196501
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 恒
(72)【発明者】
【氏名】石川 静
(72)【発明者】
【氏名】岩田 克也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朋生
(72)【発明者】
【氏名】久保 健一
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-083496(JP,U)
【文献】実開昭54-052345(JP,U)
【文献】登録実用新案第3165611(JP,U)
【文献】実開昭57-150299(JP,U)
【文献】実公昭32-002415(JP,Y1)
【文献】特開2003-113798(JP,A)
【文献】実開昭53-112803(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心にして、等角度間隔で配置される複数のファンブレードと、
該各ファンブレードの径方向外側周縁部に、ファンブレードの周方向に沿って円弧状に延在しつつ、断面略筒形状を有するウェイトホルダーと、
該ウェイトホルダーの筒形状内部に配置されるバランスウェイトと、
を備えた
ことを特徴とするプロペラファン。
【請求項2】
回転軸を中心にして、等角度間隔で配置される複数のファンブレードと、
該各ファンブレードの径方向外側周縁を径方向内側へ折り返すことで形成されたウェイトホルダーと、
該ウェイトホルダーに対して円周方向に移動可能、且つ径方向に係合可能な駒からなるバランスウェイトと、
を備えた
ことを特徴とするプロペラファン。
【請求項3】
回転軸を中心にして、等角度間隔で配置される複数のファンブレードと、
該各ファンブレードの径方向外側周縁を径方向内側へ折り返すことで形成されつつ、一部分を切除可能に構成されたメインウェイトと、
を備えた
ことを特徴とするプロペラファン。
【請求項4】
請求項3に記載のプロペラファンにおいて、
前記メインウェイトの翼面裏に位置する前記ファンブレードの径方向外側周縁に、一部分を切除可能に配置されたサブウェイト
を備えた
ことを特徴とするプロペラファン。
【請求項5】
回転軸を中心にして、等角度間隔で配置される複数のファンブレードと、
該各ファンブレードの径方向外側周縁に形成され、且つ該ファンブレードの排出側と吸い込み側とに交互に連続して折り曲げられた複数の切片からなるウェイトホルダーと、
該切片を内部に収容可能な断面略C字形状の溝形状を有しつつ、該ファンブレードの径方向外周縁に亘って配置され、且つ一部分を切除可能に構成され、該ファンブレードの径方向外周縁を円周方向に沿ってスライドさせることで、該ファンブレードに組付けられる
バランスウェイトと、
を備えた
ことを特徴とするプロペラファン。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のプロペラファンが、
前記回転軸を電動モータの出力軸に支持されつつ、回転駆動される
ことを特徴とするプロペラファンを備えた送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラファン、およびプロペラファンを備えた送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
扇風機、換気扇等の送風機を構成するプロペラファンのファンブレードが、アンバランスな場合には、プロペラファンが回転している最中に、共振現象によって大きく振動することが確認されている。
そこで、プロペラファンのバランスをとるために、さまざまな手法が提案、実施されている。たとえば、広く一般に用いられている手法として、ファンブレードの一部を削ったり、孔を開けたり、あるいはバランスウェイトを設置することが行われている。
特許文献1では、風車を構成する風車ブレードの内部に空洞部を形成し、この空洞部内にバランスウェイトを設置する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ファンブレードの一部を削ったり、孔を開けたりする手法は、場所によってはファンブレードの強度が不十分になるおそれがあるために、修正可能な部位が制限されてしまう。さらに、修正可能な部位が制限されることから、ウェイトを振り分けなければならず、アンバランス修正作業に時間が掛かるとともに、充分な修正が行えないおそれが生じる。
また、特許文献1に提案される手法は、ファンブレードの断面が翼型となるように形成されているため、内部に空洞部を形成することが可能になっている。
つまり、扇風機、換気扇等のように、ファンブレードがプレス加工された板材で構成される送風機の場合には、特許文献1の技術を採用することはできない。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みて創案されたものであり、プレス加工された板材で構成され、充分な機械的強度を維持しつつ、容易にバランスを整えることが可能なプロペラファン、およびプロペラファンを備えた送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明に係るプロペラファンは、回転軸を中心にして、等角度間隔で配置される複数のファンブレードと、該各ファンブレードの径方向外側周縁部に、ファンブレードの周方向に沿って円弧状に延在しつつ、断面略筒形状を有するウェイトホルダーと、該ウェイトホルダーの筒形状内部に配置されるバランスウェイトと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレス加工された板材で構成され、充分な機械的強度を維持しつつ、容易にバランスを整えることが可能なプロペラファン、およびプロペラファンを備えた送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の有圧換気扇を示す正面図(吸込み口側から見た図)である。
【
図2】第1実施形態のプロペラファンを示す背面図(排出口側から見た図)である。
【
図3】第1実施形態のプロペラファンを示し、
図2のIIIに示す方向から見た要部拡大図である。
【
図4】第1実施形態のプロペラファンを示し、
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5A】第1実施形態のバランスウェイトの一例を示し、通常の形態を示す斜視図である。
【
図5B】第1実施形態のバランスウェイトの一例を示し、軽量型の形態を示す斜視図である。
【
図6】バランスウェイトの別態様を示す斜視図である。
【
図7】ウェイトホルダーの第1の別態様を示し、
図2のIV-IV線に対応する部位における断面図である。
【
図8】ウェイトホルダーの第2の別態様を示し、
図2のIV-IV線に対応する部位における断面図である。
【
図9A】ウェイトホルダーの第2の別態様にバランスウェイトを組み付けた状態を示し、
図2のIV-IV線に対応する部位における断面図である。
【
図9B】バランスウェイトの別態様を示す斜視図である。
【
図10A】ウェイトホルダーの第2の別態様にバランスウェイトを組み付けた状態を示し、
図2のIV-IV線に対応する部位における断面図である。
【
図10B】バランスウェイトの別態様を示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態のプロペラファンを背面側から見た要部拡大図である。
【
図12】第2実施形態のプロペラファンを示し、
図11のXII-XII線に沿った断面図である。
【
図13A】第2実施形態のバランスウェイトの一例を示す斜視図である。
【
図13B】第2実施形態のバランスウェイトの一例を示す斜視図である。
【
図14】第3実施形態のプロペラファンを背面側から見た要部拡大図である。
【
図15】第3実施形態のプロペラファンを示し、
図14のXV-XV線に対応する部位における断面図である。
【
図16】第4実施形態のプロペラファンを背面側から見た要部拡大図である。
【
図17】第4実施形態のプロペラファンを示し、
図16のXVII-XVII線に対応する部位における断面図である。
【
図18】第5実施形態のプロペラファンを背面側から見た要部拡大図である。
【
図19】第5実施形態のプロペラファンを示し、
図18のXIX-XIX線に沿った断面図である。
【
図20】第5実施形態のバランスウェイトの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>(
図1~
図6参照)
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1、
図2に示すように、本実施形態のプロペラファンPFは、有圧換気扇FN(送風機)の羽根車を構成している。
有圧換気扇FNは、一般的な家庭用換気扇と比べて、より一層の大風量、および高静圧が求められる環境で主に採用される換気扇である。
【0010】
また、有圧換気扇FNは、室内の空気を室外へ排出する向きに設置される形式のものが広く採用されている。
本実施形態の有圧換気扇FNは、
図1において、プロペラファンPFが時計回りに回転し、紙面手前側から奥側へ送風する。
有圧換気扇FNは、本体フレーム10、電動モータMT、プロペラファンPFを備えている。
【0011】
本体フレーム10は、電動モータMT、プロペラファンPFを支持するとともに、有圧換気扇FNを壁面に設置するための部材である(
図1参照)。
本体フレーム10は、外形が矩形形状に形成され、中央部に円形の送風孔11が貫通している。
送風孔11は、その孔縁に、ベルマウスが形成されている。
【0012】
電動モータMTは、有圧換気扇FNの動力源として採用されている(
図1参照)。
電動モータMTは、本体フレーム10から延びる4本のアーム12によって支持されている。また、電動モータMTは、出力軸が、送風孔11の中心と一致するように支持されている。そして、電動モータMTの出力軸には、プロペラファンPFの回転軸AX(回転中心)が固定されている。
【0013】
つまり、プロペラファンPFは、電動モータMT、およびアーム12を介して本体フレーム10に、回動自在に支持されている。
プロペラファンPFは、1つのセンターボス21、3枚のファンブレード31を備えている(
図2参照)。
センターボス21は、板状の鋼材(鋼板)をプレス加工によって打ち抜き、成形したもので、ボス本体22、ボスアーム23を備えている(
図2~
図4参照)。
センターボス21は、板面が電動モータMTの出力軸と直交するように配置されている。
【0014】
ボス本体22は、センターボス21の中心部分を構成している(
図2、
図3参照)。
ボス本体22の回転中心(回転軸AX)が、電動モータMTの出力軸に対して、ガタ付きなく支持されている。
ボス本体22の外周には、径方向外側に向かって3つのボスアーム23が延在している。3つのボスアーム23は、同一形状に形成され、ボス本体22の外周に等角度間隔で配置されている。
これによって、センターボス21は、ボス本体22とボスアーム23とで略Y字形状を呈している。
【0015】
ボスアーム23は、本体結合部24、ブレード結合部25を備えている(
図2参照)。
本体結合部24は、略矩形形状を備えており、ボス本体22との結合部分に設定されている。
本体結合部24は、その板面が回転面に対して斜めになるように、径方向内側部分に対して径方向外側部分が捻られている。
つまり、ボスアーム23には、所定の迎角が設定されている。
【0016】
ブレード結合部25は、径方向内側縁部よりも径方向外側縁部が幅広な略台形形状を備えており、ファンブレード31との結合部分に設定されている。
また、ブレード結合部25とファンブレード31とは、リベット26を介して結合されている。
【0017】
なお、本実施形態のセンターボス21は、板状部材で構成されているが、このような形態に限定するものではない。
たとえば、ボス本体22が円錘形状を備え、ボスアーム23を介せずに、ファンブレード31をボス本体22の円錐側面に直接配置する構成とすることも可能である。
つまり、ファンブレード31を電動モータMTの出力軸にガタ付きなく支持できる構成であれば、センターボス21として採用が可能であり、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0018】
また、センターボス21とファンブレード31とを結合する手段として、本実施形態ではリベット止めを採用しているが、これに限定するものではない。遠心力に抗して、センターボス21とファンブレード31とを安定的に結合可能な手段であれば、溶接、嵌め込み、接着、溶着、ろう付け、かしめ等さまざまな結合手段を適宜採用することができる。
【0019】
次に、ファンブレード31について説明する(
図2、
図3参照)。
ファンブレード31は、板状の鋼材(鋼板)にプレス加工、曲げ加工等を施すことで成形されたもので、ブレード本体32、バランス調整手段40を備えている。
ブレード本体32は、吸込み側に面する翼面F32aが凸、排出側に面する翼面F32bが凹、となるように、湾曲している。
【0020】
また、ブレード本体32は、隣合うブレード本体32と互いに重ならないように形状が設定されている。
さらに、ブレード本体32は、径方向外側周縁部が、送風孔11に倣った円弧形状を備えている。
ブレード本体32は、回転方向の前方が径方向に先細、回転方向の後方が径方向に幅広となるように形成されている。
【0021】
バランス調整手段40は、プロペラファンPFの重心が回転軸AXから径方向、および軸方向に偏心していること(アンバランス)に起因する、回転時の共振現象を抑制する(静バランス、動バランスをとる)ための構成である(
図2~
図6参照)。
なお、静バランスは、回転軸AXによって、プロペラファンPFを回転自在に支持した際に、質量が不足する部位、または余分に存在する部位(余肉部と称す)が、回転軸AXを通る鉛直線上の位置で安定することで確認することができる。
【0022】
動バランスは、余肉部がプロペラファンPFに複数存在し、静バランスでは互いに打ち消し合い、回転軸AXを中心にして、プロペラファンPFを回転させた際に、振動することで確認することができる。
バランス調整手段40は、プロペラファンPFの静バランス、動バランスを調整し、アンバランスを解消することで、回転時の共振現象を抑制する。
バランス調整手段40は、ウェイトホルダー41、バランスウェイト42を備えている。
【0023】
ウェイトホルダー41は、ブレード本体32の径方向外側周縁部に、周方向に沿って延在する円筒形状を備えている。
バランスウェイト42は、ウェイトホルダー41の筒内直径よりも僅かに大きな直径の円柱形状を備えている(
図4、
図5A参照)。そして、バランスウェイト42は、想定される重量に応じて、直径が統一されつつ、軸方向寸法を変更したものが、あらかじめ数種類用意されている。
【0024】
また、重量が軽いバランスウェイト42は、軸方向寸法が小さくなるため、ウェイトホルダー41内で倒れてしまうおそれがある。そこで、このような場合には、比重のより小さな金属、樹脂等に素材を変更して軸方向寸法を確保する。さらに、素材を変更できない場合、および素材変更に加え、さらに軽いバランスウェイト42にしたい場合等には、中心に調整孔42bと称する貫通孔を開けて重量を軽くする(
図5B参照)。
【0025】
あるいは、倒れないようにバランスウェイト42の外周に支え42aを備える形態とすることも可能である(
図6参照)。
加えて、接着剤等の樹脂に金属粉が混在するものをウェイトホルダー41内に注入し、内部で硬化させることでバランスウェイト42とする形態をとることが可能である。
【0026】
ウェイトホルダー41内に樹脂を注入する構成の場合、バランスウェイト42をあらかじめ用意しておく必要がないため、管理すべき部品点数を削減することが可能になる。
前述のように構成されたバランス調整手段40は、ウェイトホルダー41に配置するバランスウェイト42の増減、およびウェイトホルダー41の一部削除を行うことで、回転軸AX周り(径方向)の偏心を解消する(静バランスをとる)。
【0027】
次に、バランス調整の手順について説明する。
まず、プロペラファンPFをアンバランス計測機(図示せず)に設置し、修正する位置、増減させるウェイト量を計測する。
次に、修正位置を増量してバランスを整える場合は、所定のバランスウェイト42を選択し、修正場所を含むファンブレード31のウェイトホルダー41の筒内にバランスウェイト42を挿入する。
そして、バランスウェイト42をウェイトホルダー41に挿入する際には、ウェイトホルダー41の筒を押広げつつ、所定の位置まで押込む。
【0028】
筒内に押込まれたバランスウェイト42は、押広げられたウェイトホルダー41の戻り反力で筒内に保持される。
プロペラファンPFをもう一度計測機に設置し、アンバランスが解消されたことを確認する。
最後に、必要に応じて、溶接、嵌め込み、接着、溶着、ろう付け、かしめ等さまざまな結合手段を用いて、バランスウェイト42を固定する。
【0029】
修正位置を減量してバランスを整える場合には、減量分に相当するバランスウェイト42を選択し、プロペラファンPFの中心を挟んで、修正位置と反対側に位置するウェイトホルダー41の筒内にバランスウェイト42を設置する。
また、別の減量方法としては、修正位置でウェイトホルダー41を減量分だけ切削等で削除する。
【0030】
次に、本実施形態のプロペラファンPFの作用効果について説明する。
本実施形態では、各ファンブレード31について、吸込み側に面する翼面F32aと、排出側に面する翼面F32bと、からなる一対の翼面F32における排出側に面する翼面F32b側にバランス調整手段40が配置されている。
また、バランス調整手段40は、ウェイトホルダー41と、バランスウェイト42とを備えている。
【0031】
ウェイトホルダー41は、回転軸AXを中心とする円周方向に沿って円弧状に延在する円筒状に形成され、バランスウェイト42は、ウェイトホルダー41内に固定可能な円柱状に構成されている。
このようにバランス調整手段40を構成することによって、プレス加工された板材で構成されたプロペラファンPFの機械的強度を損なうことなく、充分な機械的強度を維持しつつ、静バランスをとることができる。
【0032】
加えて、ウェイトホルダー41の筒内にバランスウェイト42を配置する構成であることから、外観からはバランスウェイト42が隠れるため、商品性をより高めることができる。
また、ウェイトホルダー41が円筒状に形成されていることで、ファンブレード31の機械的強度が向上する。
これによって、ファンブレード31の強度を損なうことなく、薄板化することができる。あるいは、重量の増大を抑制しつつ、プロペラファンPFを大型化することができる。
【0033】
本実施形態では、ウェイトホルダー41が、ファンブレード31の径方向外側周縁部(外周縁33)に配置されている。
これによって、増減させるウェイト量を小さくすることができるため、調整作業をより簡便化することができる。
【0034】
また、本実施形態では、ブレード本体32が、吸込み側に面する翼面F32aが凸、排出側に面する翼面F32bが凹、となるように湾曲し、ウェイトホルダー41が、排出側に面する翼面F32bに形成されている。
このような構成とすることで、平板状の板材からブレード本体32とウェイトホルダー41とを形成する際の加工をより容易に行うことができる。
【0035】
<第1の別態様>(
図7参照)
次に、ファンブレード31の第1の別態様について、図面を参照しながら説明する。前述のファンブレード31と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
前述の第1実施形態と大きく異なる構成は、ウェイトホルダー41の構成であり、バランスウェイト42の構成、およびバランスウェイト42の組付け手順は、第1実施形態と同様である。
【0036】
第1実施形態では、ウェイトホルダー41が円筒状に形成されていたが、本態様では溝状に形成されている。そして、このようなウェイトホルダー41の場合には、溝内に樹脂材を注入し、固定する形態のバランスウェイト42が好ましい。
このような構成とすることで、第1実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、ウェイトホルダー41を形成する作業を簡便化することができる。
【0037】
<第2の別態様>(
図8~
図10B参照)
次に、ファンブレード31の第2の別態様について、図面を参照しながら説明する。前述のファンブレード31と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
前述の第1実施形態と大きく異なる構成は、バランス調整手段40(ウェイトホルダー41、バランスウェイト42)の構成である。
【0038】
ウェイトホルダー41は、第1実施形態では、排出側に面する翼面F32b側に配置されていたが、本態様では、筒軸がブレード本体32の延長線上に位置しつつ、ブレード本体32の周縁上に位置している(
図8参照)。
バランスウェイト42は、第1実施形態と同様の形態、つまり、ウェイトの重心G42が、円柱形状の中心軸C42に重なる形態のものを使用する。
【0039】
そして、本態様のウェイトホルダー41と第1実施形態のバランスウェイト42との組み合わせで、第1実施形態と同様に、プロペラファンPFの静バランスをとることができる。
また、本態様では、ウェイトの重心G42が円柱形状の中心軸C42に重ならず、径方向に偏心した形態のバランスウェイト42を使用した場合に、第1実施形態とは異なる、特有の作用効果を発揮する。
【0040】
たとえば、このようなバランスウェイト42として、調整孔42bの中心が円柱形状の中心軸C42に対して径方向に偏心することで、重心G42が円柱形状の中心軸C42から偏心した形態のものが挙げられる(
図9A、
図9B参照)。
このような形態の場合、バランスウェイト42をウェイトホルダー41の筒内で円柱形状の中心軸周りに回転させることが可能である。
【0041】
そして、バランスウェイト42を回転させることで、ウェイトの重心G42の位置を、ブレード本体32の延長線上、吸込み側に面する翼面F32a上、排出側に面する翼面F32b上のいずれかに設定することが可能である。
このようにバランス調整手段40を構成することによって、プレス加工された板材で構成されたプロペラファンPFの機械的強度を損なうことなく、充分な機械的強度を維持しつつ、静バランスと動バランスとをとることができる。
【0042】
なお、バランスウェイト42の重心G42を偏心させるための構成は、調整孔42bに限定されるものではない。
たとえば、円柱形状における円周部分の一部を切り欠いた形状とすることも可能であり(
図10A、
図10B参照)、前述の調整孔42bを偏心させた場合と同様の作用効果が得られる。
【0043】
<第2実施形態>(
図11、
図12参照)
次に、ファンブレード31の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。前述のファンブレード31と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
前述の第1実施形態と大きく異なる構成は、バランス調整手段40の構成である。
本実施形態のバランス調整手段40を構成するウェイトホルダー41は、ファンブレード31外周縁の折り返しによって構成されている。
【0044】
また、バランスウェイト42は、断面略G字状に形成され、ウェイトホルダー41に対して、円周方向に移動可能、且つ径方向に係合可能な駒で構成されている。
そして、バランスウェイト42は、想定される修正重量に応じて選択が可能なように、重量の異なるものが、あらかじめ数種類用意されている。
【0045】
さらに、バランスウェイト42は、1つの修正重量について、吸込み側と排出側との重量割合を変更したものが、あらかじめ数種類用意されている(
図13A、
図13B参照)。
バランス調整の際には、まず、調整するファンブレード31の箇所(アンバランスな箇所)を特定する。
次に、複数のバランスウェイト42の中から該当する修正重量、重量割合のものを適宜選択する。
【0046】
次に、特定した箇所に、選択したバランスウェイト42を組み付け、固定する。
以上のことから、バランス調整手段40を本実施形態の構成とすることで、プロペラファンPFは、十分な機械的強度を維持しつつ、静バランスと動バランスとを容易に調整することができる。
【0047】
<第3実施形態>(
図14、
図15参照)
次に、ファンブレード31の第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。前述のファンブレード31と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
前述の第1実施形態と大きく異なる構成は、バランス調整手段40の構成である。
第1実施形態では、バランスウェイト42を付与することでバランス調整を行っているが、本実施形態では、バランスウェイト42Aの一部を切削などによって、切除することでバランス調整を行う。
【0048】
本実施形態のバランス調整手段40は、バランスウェイト42Aを備えており、バランスウェイト42Aは、メインウェイト43とサブウェイト44とで構成されている。
メインウェイト43は、ファンブレード31外周縁を排出側に面する翼面F32bに180度折り返すことによって形成されている。
【0049】
サブウェイト44は、メインウェイト43の翼面裏(吸込み側に面する翼面F32a)に、円弧状に延在する帯状の部材で構成されている。サブウェイト44は、溶接、嵌め込み、接着、溶着、ろう付け、かしめ等さまざまな結合手段から適宜選択された方法によって、メインウェイト43の翼面裏に固定されている。
なお、動バランスを考慮する必要がなく、静バランスだけを調整する場合には、サブウェイト44を設けなくても良い。
【0050】
バランス調整の際には、まず、切除するファンブレード31の箇所(アンバランスな箇所)を特定する。
次に、バランスウェイト42Aの一部を切除する。
そして、バランスウェイト42Aを切除する際に、メインウェイト43、サブウェイト44の両方を均等に切除した場合には、静バランスを調整することができる。
【0051】
また、メインウェイト43、サブウェイト44のどちらか一方を切除した場合、切除する量に差を付けつつ、両方を切除した場合には、プロペラファンPFの重心が他方側へ移動し、動バランスを調整することができる。
以上のことから、バランス調整手段40を本実施形態の構成とすることで、プロペラファンPFは、十分な機械的強度を維持しつつ、静バランスと動バランスとを容易に調整することができる。
【0052】
<第4実施形態>(
図16、
図17参照)
次に、ファンブレード31の第4実施形態について、図面を参照しながら説明する。前述のファンブレード31と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
前述の第1実施形態と大きく異なる構成は、バランス調整手段40の構成である。
本実施形態のバランス調整手段40では、第3実施形態と同様に、バランスウェイト42Aの一部を切削などによって、切除することでバランス調整を行う。
【0053】
本実施形態のバランス調整手段40は、バランスウェイト42Aのみで構成されている。
バランスウェイト42Aは、断面略コ字形状に形成され、ファンブレード31の外周縁を囲むように配置されている。
また、バランスウェイト42Aは、半田、樹脂等が溶融する液面に、ファンブレード31の外周縁33を浸しつつ、回転軸を中心にプロペラファンPFを円周方向に回転させて、外周縁33に付着、固化することで形成されている。
【0054】
なお、バランスウェイト42Aを、断面コ字形状を有する長尺の部材で構成し、溶接、嵌め込み、接着、溶着、ろう付け、かしめ等さまざまな結合手段から適宜選択された方法によって、ファンブレード31の外周縁に設置する形態をとることも可能である。
また、バランスを調整する手法は、第3実施形態と同様のため、説明を省略する。
以上のことから、バランス調整手段40を本実施形態の構成とすることで、プロペラファンPFは、十分な機械的強度を維持しつつ、静バランスと動バランスとを容易に調整することができる。
【0055】
<第5実施形態>(
図18~
図20参照)
次に、ファンブレード31の第5実施形態について、図面を参照しながら説明する。前述のファンブレード31と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
前述の第1実施形態と大きく異なる構成は、バランス調整手段40の構成である。
本実施形態のバランス調整手段40では、第3実施形態と同様に、バランスウェイト42Aの一部を切削などによって、切除することでバランス調整を行う。
【0056】
本実施形態のバランス調整手段40は、ウェイトホルダー41と、バランスウェイト42Aと、で構成されている。
ウェイトホルダー41は、ファンブレード31外周縁に形成され、排出側と吸込み側とに交互に90度に連続して折り曲げられた複数の切片45によって構成されている。
ファンブレード31の外周縁33に対して、径方向に沿った切り込みを、円周方向へ等間隔に連続して形成することで、ファンブレード31の外周縁33に複数の切片45が形成されている。
【0057】
バランスウェイト42Aは、断面略C字形状を有する溝状の長尺の部材で構成されている。
バランスウェイト42Aは、ウェイトホルダー41を構成する各切片45を溝内に収容しつつ、円周方向に沿ってファンブレード31の外周縁をスライドさせることで組付けられる。
なお、バランスを調整する手法は、第3実施形態と同様のため、説明を省略する。
以上のことから、バランス調整手段40を本実施形態の構成とすることで、プロペラファンPFは、十分な機械的強度を維持しつつ、静バランスと動バランスとを容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0058】
PF プロペラファン
AX 回転軸
31 ファンブレード
F32 一対の翼面
33 外周縁(ファンブレード31の径方向外側周縁部)
40 バランス調整手段
41 ウェイトホルダー
42 バランスウェイト
42A バランスウェイト
FN 有圧換気扇(送風機)
MT 電動モータ