(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】眼内レンズ保管カートおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220107BHJP
A61B 50/13 20160101ALI20220107BHJP
【FI】
A61F2/16
A61B50/13
(21)【出願番号】P 2018514819
(86)(22)【出願日】2016-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2016053573
(87)【国際公開番号】W WO2017064575
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-04-17
(32)【優先日】2015-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ミカイル ボークニー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ソー
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-005246(JP,A)
【文献】特開2017-012419(JP,A)
【文献】国際公開第2006/090554(WO,A1)
【文献】特開2003-212317(JP,A)
【文献】特開2003-267527(JP,A)
【文献】特開2006-068358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0267772(US,A1)
【文献】国際公開第2014/145048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61B 50/00-50/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズ(IOL)カートであって、
複数のIOLパッケージを載せるように構成された引出し式の棚と、
前記引出し式の棚を収容するように構成されたベースハウジングであって、
前記引出し式の棚に載置された個々のIOLパッケージの存在を検出するように構成されるベースハウジングと、
各IOLに結び付いた屈折度数と各IOLの位置情報とを検出するように構成された1つまたは複数のセンサと、
前記ベースハウジングに関連付けられ、および前記ベースハウジング内
の前記引出し式の棚に配置された個々のIOLパッケージの前記屈折度数と前記存在の位置とを示す前記ベースハウジングからの情報を前記1つまたは複数のセンサから受け取りかつ記憶するように構成されたコンピュータユニットであって、前記個々のIOLパッケージの1つまたは複数に関する情報を使用者に提供するように構成されるコンピュータユニットと、
前記コンピュータユニットによって作動可能な複数の視覚インジケータと
、
を含む眼内レンズ(IOL)カートであって、
前記1つ又は複数のセンサは、個々のIOLパッケージに関するIOL度数情報を検出するように構成されており、
前記コンピュータユニットは、前記IOL度数情報と前記ベースハウジング内の各個別のIOLパッケージの前記位置情報とを記憶するように構成された在庫データベースを含んでおり、
前記コンピュータユニットは、所望のIOLに関する使用者からの要求を受け取り、記憶された前記IOL度数情報を、所望のIOLに関する受け取られた前記要求と比較し、所望のIOL度数に最も近い屈折度数に結び付いたIOL度数情報を有するIOLパッケージを選択し、前記所望のIOL度数に最も近い前記屈折度数を有する前記IOLパッケージの前記位置に隣接する前記複数の視覚インジケータの1つまたは複数を作動させる、ように構成されており、
前記1つまたは複数のセンサは、前記棚が閉められつつある間に前記IOLパッケージを検出するように前記棚の上方に配置されている、
眼内レンズ(IOL)カート。
【請求項2】
前記1つまたは複数のセンサが、視覚的検出方法、バーコードスキャナおよびRFIDスキャナの1つを含む、請求項1に記載のIOLカート。
【請求項3】
前記棚は、個々のIOLパッケージを収容するように寸法決めされかつ構成された列に分割されている、請求項1に記載のIOLカート。
【請求項4】
前記棚が、前記棚を前記列に分割する複数のセパレータを含み、各セパレータが、それに配置されたIOLパッケージを識別するために有用な1つまたは複数の視覚インジケータを有する、請求項
3に記載のIOLカート。
【請求項5】
前記視覚インジケータがLED照明である、請求項
4に記載のIOLカート。
【請求項6】
眼内レンズ(IOL)カートであって、
複数のIOLパッケージを載せるように構成された引出し式の棚と、
前記引出し式の棚を
収容するように構成されているベースハウジングであって、
前記引出し式の棚に載置された各IOLパッケージは結び付いた屈折度数を有するIOLを有する、ベースハウジングと、
前記複数のIOLパッケージの在庫を追跡するコンピュータユニットと
、を含んでおり、
前記コンピュータユニットは、
前記棚が閉められつつある間に
センサによって感知された、前記棚に存在する
個別のIOLパッケージに関するIOL度数情報を前記センサから受け取り、
各IOLに結び付いた前記屈折度数とIOLカート内の各IOLのための前記IOLパッケージの位置とを記憶し、
所望のIOLに関する使用者からの要求を受け取り、
前記所望のIOLに最もよく一致する在庫内のIOLを識別するために、記憶された前記屈折度数の情報と受け取られた前記要求とを比較し、
識別された前記IOLに隣接する視覚インジケータを作動させる、
ように構成されている、
眼内レンズ(IOL)カート。
【請求項7】
前記コンピュータユニットは、前記感知されたIOLパッケージに関する情報で在庫データベースを更新するようにさらに構成されている、請求項
6に記載の眼内レンズ(IOL)カート。
【請求項8】
前記コンピュータユニットは、前記選択されたIOLパッケージに関連付けられた前記視覚インジケータを作動させるようにさらに構成されている、請求項
4に記載のIOLカート。
【請求項9】
前記コンピュータユニットは、前記ベース
ハウジングがアクセスされるたびに、前記在庫データベースを更新する、請求項1に記載のIOLカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科手術用の保管委託カートに関する。より具体的には、本開示は、外科手術用の眼内レンズ委託カートに関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術は、眼の天然の水晶体を除去し、それを一般に眼内レンズ(IOL)と呼ばれる人工のレンズで置き換えることを必要とする。IOLには様々な種類があり、それぞれが特定の矯正力を使用者に提供するように設計されている。手術計画を作成する一環として、医療提供者は、術前評価に基づいて患者の特定のIOLを識別し得る。しかしながら、白内障手術の過程で行われる術中評価により、手術計画が作成されたときに分からなかった違いに対処するために手術計画が変更される場合がある。手術計画を変更する例は、外科医が術中評価を行い、術前計画中に選択したIOLと異なるIOLが患者にとってより適し得ると判断する場合に生じる。このような術中評価は、より良好な患者の結果を含む恩恵を提供するが、このような術中の計画変更は、手術室に混乱および非効率性をもたらす可能性がある。例えば、外科処置を完了するために新しいIOLが必要な場合、このスタッフは、移植のために新たに要求されたIOLを見つけ、取得し、準備しなければならない。さらに、新たに指示されたIOLが委託において使用できない場合、指示されたIOLに最も近いレンズまたは競合製品を識別する必要がある。
【0003】
IOL手術中の非効率性および混乱を軽減するために、手術スタッフは、術前計画に基づいて大量の様々な潜在レンズを提供することがある。手術スタッフは、レンズ在庫を管理し、新たに識別されたレンズを移植のために手術室に運ぶために時間および資金を割り当てなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、術中評価中のIOLへのアクセスを単純化するためのシステムおよび方法に関する。
【0005】
いくつかの例示的な態様において、本開示は、複数のIOLパッケージを収容するように構成されたベースハウジングを含むことができる眼内レンズ(IOL)カートに向けられる。個々のIOLパッケージの存在を検出するように構成されるベースハウジングである。IOLカートはまた、ベースハウジングに関連付けられ、およびベースハウジング内に配置された個々のIOLパッケージの存在を示す情報をベースハウジングから受け取りかつ記憶するように構成されたコンピュータユニットを含むことができる。コンピュータユニットは、個々のIOLパッケージの1つまたは複数に関する情報を使用者に提供するように構成されてもよい。
【0006】
いくつかの態様において、IOLカートは、個々のIOLパッケージに関する情報を検出するように構成された1つまたは複数のセンサを含むことができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のセンサは、視覚的検出方法、バーコードスキャナおよびRFIDスキャナの1つを含むことができる。1つまたは複数のセンサは、IOLパッケージがベースハウジングに導入されるときにIOLパッケージをスキャンする位置に配置されてもよい。一態様において、IOLカートは、複数のIOLパッケージを載せるように構成された可動棚を含んでもよく、1つまたは複数のセンサは、棚が閉められている間にIOLパッケージを検出するように棚の上方に配置される。いくつかの態様において、IOLカートは、ベースハウジング内の選択されたIOLパッケージを識別するためにコンピュータユニットによって作動可能な複数の視覚インジケータを含むことができる。一態様において、ベースハウジングは、個々のIOLパッケージを収容するように寸法決めされかつ構成された列に分割された棚を含むことができる。棚は、棚を列に分割する複数のセパレータを含んでもよく、各セパレータは、それに配置されたIOLパッケージを識別するために有用な1つまたは複数の視覚インジケータを有する。視覚インジケータはLED照明であってもよい。いくつかの態様において、コンピュータユニットは、個々のIOLパッケージごとにIOL度数情報およびベースハウジング内の位置情報を記憶するように構成された在庫データベースを含む。
【0007】
例示的な態様において、本開示は、複数のセンサおよびコンピュータユニットを含むIOLパッケージ在庫システムに向けられる。複数のセンサは、製品パッケージ内の製品に関する情報を読み取り、かつその保管位置を検出するように構成されてもよい。コンピュータユニットは、複数のセンサと通信することができ、かつ各製品およびその位置に関する情報をデータベースに記憶するように構成されてもよい。コンピュータユニットは、製品の所望のパラメータを識別する入力に応答して、特定の製品パッケージを識別するように構成されてもよい。
【0008】
一態様において、製品は眼内レンズであり、製品パッケージは眼内レンズパッケージである。一態様において、在庫システムは、個々のIOL製品パッケージのための複数の保管位置を有するIOLカートを含むことができる。複数のセンサは、IOLカート内のIOL製品パッケージの保管位置を検出するためにIOLカート上に配置されてもよい。コンピュータユニットは、特定の製品パッケージを確保するために使用者から入力を受け取るように構成されてもよい。複数のセンサは、視覚スキャナ、RFIDセンサおよび/またはバーコードスキャナを含むことができる。コンピュータユニットは、所望の製品パッケージの保管位置に隣接するインジケータに作動信号を送信するように構成されてもよい。
【0009】
例示的な態様において、本開示は、IOLおよびIOLカート内のIOLパッケージの位置に関する情報を記憶するステップを含む、在庫を追跡する方法に向けられる。所望のIOLに関する要求が使用者から受け取られ得る。この方法は、記憶された情報を、受け取られた要求と比較して、所望のIOLに最もよく一致する在庫内のIOLを識別するステップを含むことができる。この方法はまた、識別されたIOLに隣接する視覚インジケータを作動させるステップを含むことができる。
【0010】
一態様において、在庫を追跡する方法は、IOLカート内の特定のIOLパッケージを識別するセンサから信号を受信するステップを含むことができる。一態様において、在庫を追跡する方法は、棚が閉められている間に棚に存在するIOLパッケージを感知するステップを含むことができる。一態様において、在庫を追跡する方法は、感知されたIOLパッケージに関する情報で在庫データベースを更新するステップを含むことができる。
【0011】
前述の概要ならびに以下の図面および詳細な説明の両方は、本質的に例示的および説明的であり、本開示の範囲を限定することなく、本開示の理解を提供することが意図されることを理解されたい。それに関して、本開示の追加の態様、特徴、および利点は、以下から当業者に明らかであろう。
【0012】
添付の図面は、本明細書中におよび説明と共に開示されるシステム、装置および方法の実践を示し、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】例示的な態様による例示的な外科手術の器具一式の図である。
【
図2】例示的な態様による外科手術の器具一式の例示的なカートの図である。
【
図3】例示的な態様による外科手術の器具一式の一部の例示的なブロック図の図である。
【
図4】例示的な態様による外科手術一式のカートを用いて在庫を追跡する例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これらの図は、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0015】
本開示の原理の理解を促す目的で、図面に示されている実践例をここで参照し、それらを説明するために特定の言語を使用する。それにもかかわらず、本開示の範囲を限定することは意図されないことが理解されるであろう。記述された装置、器具、方法、および本開示の原理のさらなる適用に対するあらゆる変更形態およびさらなる修正形態は、本開示が関係する技術分野の当業者が通常想到するであろうように十分に考えられる。加えて、本開示は、いくつかの要素または特徴が高いレベルの詳細なしに後続の図に現れる場合、1つまたは複数の実践例または図に関して、それらの同じ要素または特徴を詳細に記載する。1つまたは複数の実践例または図に関して説明された特徴、構成要素および/またはステップは、本開示の他の実践例または図に関して説明された特徴、構成要素、および/またはステップと組み合わせてもよいことが十分に考えられる。簡略化のために、いくつかの例では、同一または同様の部分に言及するために図面全体にわたって同一または類似の参照番号が使用される。
【0016】
本開示は、概して、外科処置中に使用するための複数の異なるタイプおよびサイズのIOLを含み得るIOLカートを含む外科手術システムに関する。IOLカートは、IOL識別および在庫管理のためのインテリジェンスと結合されて、様々なIOLの中央保管場所を提供する。IOLカートのインテリジェンスは、IOLカートがアクセスされるときには常に更新されるデータに基づく最新の在庫情報を提供する。そのため、IOLカートの在庫は常に完全で正確である。さらに、IOLカートは手術室に存在することがあるため、使用者は、術前外科手術計画で識別されたIOLと異なるIOLを必要に応じて迅速に代わりに使用するために、大規模なIOLの集合体に迅速にアクセスし得る。
【0017】
最新の在庫の恩恵を提供することに加えて、IOLカートは、白内障手術中に医療提供者などの使用者に在庫情報を提供し、使用者の迅速なアクセスのためにIOLカート内のIOLの特定の位置を識別することもできる。例えば、術中評価の結果、計画されたレンズの度数が変わる場合、IOLカートは、変更の確認を受け取り、IOLカート内の特定のIOLを識別するインジケータを用いて代替レンズの可用性を使用者に示すことができる。IOLカートはまた、要求されたまたは代替のレンズが使用できない場合、最も近い適合レンズを推奨および/または識別することができる。いくつかの実践では、この情報は、レンズ選択の可用性、レンズカタログの度数包括値、またはレンズパッケージに示されたその実際の度数を含むこともできる。いくつかの実践では、この識別情報は、IOLパッケージ上またはその中にある2次元バーコードまたはRFIDタグのいずれかによって提供されてもよい。
【0018】
レンズ在庫管理のために、IOLカートは、外科手術システムの一部を構成する他のシステムと通信することができる。いくつかの実施形態では、IOLカートは、委託レンズの在庫の概要を使用者に提供することができ、かつ術前評価中、計画されたレンズ(すなわち術前計画段階中に識別されたレンズ)および最も近い隣接レンズが在庫に存在するか、または注文する必要があるかを使用者に示すことができる。
【0019】
本明細書に開示される外科手術システムのIOLカートを使用して多くの恩恵を得ることができる。例えば、IOLカートは、IOL在庫を計画および術中評価プロセスに関連付けることにより、使用者が白内障手術をより効率的に計画および実行することを可能にし得る。いくつかの実践では、医療専門家などの使用者は、計画されたレンズと代替レンズとの両方が委託物中に存在するか、または処置日を支援するために注文されるという認識および信頼から恩恵を受け得る。さらに、追加の実践は、術前計画段階および術中評価の両方において、包括的な表示度数のみの代わりに実際のレンズ度数を示すことにより、患者の手術結果を最適化し得る。
【0020】
図1は、外科手術システムの外科手術一式100を集合的に構成するシステムを示す。外科手術一式100は、例えば、限定ではないが、白内障処置などの外科処置を行うように構成することができる。この例示的な実践では、外科手術一式100は、水晶体超音波乳化吸引システム102およびIOLカート104を含む。他の実践は、外科手術一式100の一部を構成し得る追加の外科手術システムを含んでもよい。例えば、いくつかの実践は、眼用顕微鏡、画像案内システム、レーザ治療システム、または外科手術一式100の能力に有用性および機能性を追加し得る他のシステムを含むことができる。さらに他の外科手術システムが考えられ、外科手術一式100の1つまたは複数のシステムを構成することができる。
【0021】
水晶体超音波乳化吸引システム102は、眼科手術医などの使用者が、白内障外科処置またはIOL交換処置の一環として、水晶体超音波乳化吸引処置を実施することを可能にするように配置および構成されてもよい。この実践では、水晶体超音波乳化吸引システム102は、コンピュータユニット108を備えたベースハウジング106と、使用中のシステム動作および性能に関するデータを示すように構成された連動ディスプレイスクリーン110とを含む。水晶体超音波乳化吸引システム102はまた、外科処置を行うために一緒に使用されてもよい多数のサブシステムを含む。例えば、水晶体超音波乳化吸引システム102のいくつかのサブシステムは、限定しないが、例えばフットペダル114を含むフットペダルサブシステム112、可撓性チューブを介して眼を洗浄し吸引する洗浄源および流れ制御減圧ポンプを含む流体サブシステム116、切断針を備えた超音波発振ハンドピース120を含む超音波発生器サブシステム118を含んでもよい。これらのサブシステムは、外科処置の様々な局面を実施するために、重なり合ってもよくかつ協働してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、可撓性チューブの吸引ラインの端部は、外科処置中に洗浄および冷却を実行するためにハンドピース120の切断針と接続されてもよい。水晶体超音波乳化吸引システム102は、交換IOLの準備時に天然の水晶体を乳化および除去するために外科処置中に使用されてもよく、または以前に移植されたIOLを交換または取り替える修正手術中に使用されてもよい。
【0022】
IOLカート104は、白内障外科処置中にIOL在庫への簡単なアクセスを提供するように構成されてもよい。IOLカート104は、IOLの中央保管場所を提供することができ、またIOLの在庫および可用性を能動的に追跡することができる。いくつかの例では、在庫がその中に含まれたIOLカート104は、手術室に運ばれてもよく、または手術室内に配置されてもよい。これは、術中評価が術前評価中に識別したものと異なるIOLを要求する場合に在庫への容易なアクセスを提供し得る。
【0023】
従来、IOLは包装され、包括的な屈折度数を表す度数を表示される。本明細書で使用される際、包括的な度数とは、IOLレンズの伝統的な指定内に含まれるある範囲の度数を指す。例えば、1つの包括的な度数は19.5ディオプターである。異なる包括的な度数は20ディオプターである。従来、包括的な度数は、半分の数字の0.5ディオプター範囲内の増分で追跡される。したがって、0.5の広い範囲内に含まれるあらゆるIOLレンズを特定の包括内に指定することができる。広い範囲のために、特定の包括内のIOLレンズは、包括範囲内で互いにわずかに変化する屈折度数を有し得る。IOLカート104は、各IOLの屈折度数を追跡可能であり得、これまで行われてきた追跡よりも高い精度で各IOLパッケージを追跡可能であり得る。例えば、IOLカート104は、屈折度数によってレンズのファミリーを追跡することに加えてまたはその代わりに、個々のレンズを追跡し得る。したがって、IOLカート104は、それに保管された各IOLの実際のレンズ度数を追跡するように構成されてもよい。これは、以下の考察でより明白になるであろう。
【0024】
IOLカート104は、ベースハウジング132と、ディスプレイスクリーン136を備えたコンピュータユニット134とを含む。ベースハウジング132は、ロッカーとして形成されてもよく、それに含まれる在庫にアクセスするために開閉するドア138を含んでもよい。この実践では、ドア138は、使用者がベースハウジング132の内側の棚142を見ることを可能にする窓を有する。他の実践は、中実ドアまたは他のタイプのドアを有してもよい。この実践では、ベースハウジング132は、IOLカート104を手術室の内外に、または必要に応じて他の場所へおよび他の場所から移動させることができるキャスター140を含む。
【0025】
コンピュータユニット134は、IOLカート104内の在庫を追跡するために使用することができる。いくつかの実践では、コンピュータユニット134は、IOLカート104が使用者によってアクセスされるたびにIOL在庫を動的に追跡する。在庫を追跡することに加えて、コンピュータユニット134は、外科手術一式100の他の構成要素と通信することができる。例えば、コンピュータユニット134は、水晶体超音波乳化吸引システム102上のコンピュータユニット108と通信することができる。例えば、コンピュータユニット134は、使用者が外科手術一式100の他の構成要素を使用している間に在庫に関連する情報を有することができるように、水晶体超音波乳化吸引システムのディスプレイスクリーン110に在庫情報を表示することができる。それは、同じまたは異なる情報をそれ自体のディスプレイスクリーン136に示すことができる。他の実践では、コンピュータユニット134は、データまたは他の情報を例えば外科手術用顕微鏡に伝達することができる。そのような実践では、使用者が顕微鏡から視線を外すことなく在庫を視覚化できるように、在庫情報が顕微鏡内の見えている画像上に投影されてもよい。それは、外科手術一式100のいずれの手術システムと通信してもよく、または外科手術一式100のいずれの手術システムに情報を伝達してもよい。
【0026】
IOLカート104のさらなる詳細は、
図2を参照して説明される。
図2は、その内容物を示すためにドア138が開かれ、棚142が引き出されたIOLカート104を示す。いくつかの実践では、棚142は、アクセスを保護し、棚の内容物を部分的に囲む側面を有する引き出しとして形成することができる。棚142は、引き出しを開閉するのと同じ方法でベースハウジング132内外に摺動させることができる。理解されるように、棚142には、複数のIOLパッケージ151を含むことができる一連の列150が形成されている。この実践では、棚142は、1つの列150を別の列から分離する複数の壁またはセパレータ152を含む。セパレータ152は、標準的なIOLパッケージサイズに適合するように任意の距離だけ離間されていてもよい。
【0027】
図示の例示的な実践では、セパレータ152は、列150の個々のIOLパッケージ151と整列するように構成された視覚インジケータ154を含む。いくつかの実践は、IOLパッケージ151を受け入れることができるそれぞれの個々の位置に隣接する視覚インジケータ154を含む。視覚インジケータ154は、特定のIOLパッケージを使用者に指示することができ、または識別することができる。これは、使用者がすべてのIOLパッケージ内から外科処置中に使用される特定の所望のIOLパッケージを見つけることを補助し得る。所望のIOLパッケージ151が視覚インジケータ154によって識別され得るため、使用者は所望のIOLパッケージを迅速かつ高い効率で識別し得る。
【0028】
図示の例では、セパレータ152は視覚インジケータ154を含む。
図2に示すように、視覚インジケータ154は、セパレータ152の上面に沿って配置されている。ここで、視覚インジケータ154は、棚142内のすべてのIOLパッケージ内から所望のIOLパッケージを識別するために点灯する一連のLEDライトである。したがって、棚142を開くのみで、使用者は、IOLパッケージ上の印刷を識別して読み取る必要なく、所望のIOLパッケージを識別し得る。視覚インジケータ154は、コンピュータユニット134の指示の下で動作することができる。実践に応じて、視覚インジケータ154は、所望のIOLパッケージを識別するために照らされてもよく、または所望のIOLパッケージを識別するために着色LEDライトまたは他のタイプのインジケータを使用することができる。
【0029】
従来、手術スタッフは、特定の所望のIOLパッケージを識別するために、複数のIOLパッケージを場合によりめくるかまたは手動で見る必要があり得る。そうすることで、IOLパッケージは、順番が乱れる場合があり、または雑然とする場合がある。さらに、従来の方法は、手術スタッフが複数のIOLパッケージを場合により取り扱うことを必要とするため、在庫追跡がより困難になり得、また置き間違いの可能性が比較的高くなる可能性がある。
【0030】
IOLカート104は、その中に含まれるIOLパッケージの現在の最新の在庫リストを保つように構成されている。この実践では、棚142が開けられるかまたは閉められるたびに在庫を更新する。これは、フレーム支持構造158に沿って配置された一連のセンサ156によって促進される。支持構造158は、ベースハウジング132の一部であってもよく、または別個の支持体であってもよい。センサ156は、使用者の視界内で支持構造158の外側に配置されてもよく、または使用者から隠されるように配置されてもよい。センサ156は、IOLパッケージがセンサ156を通過する際、IOLパッケージ151を読み取るように配置および構成されている。いくつかの実践では、センサ156は、光およびフォトセンサから形成され得る視覚スキャナまたはバーコードリーダである。これらの実践のいくつかでは、各IOLパッケージ151は、棚142が開けられるかまたは閉められるときにセンサ156によって読み取られ得るバーコードを縁部または側部に含む。他の実践では、視覚スキャナは、IOLパッケージ151上の他の情報を識別または認識することができる。これは、実際の数字、文字、またはIOLパッケージ151の内容物を表す他の情報を検出するシステムを含むことができる。さらに他の実践では、センサ156はRFIDセンサである。そのような実践では、各IOLパッケージ151は、棚142が開けられるかまたは閉められるときにRFIDセンサによって検出され得るRFIDチップを含む。バーコードまたはRFIDチップは、各IOLパッケージ151内のIOLに関するまたはそれに固有の特定の情報を含むことができる。例えば、とりわけ、それは実際のIOL度数情報を含むことができる。検出されたIOLパッケージ151に基づいて、コンピュータユニット134は現在の在庫を更新し、IOLカート104内の内容物だけでなく、各棚142内のすべての個々のIOLパッケージ151の正確な位置を識別することができる。したがって、IOLカート104が使用者によってアクセスされるたびに在庫が追跡され更新される。いくつかの実践では、在庫は棚142が閉められるたびに追跡される。
【0031】
図示された実践では、1つまたは複数のセンサ156は、各列150の上方に配置される。他の実践では、1つまたは複数のセンサ156は、IOLパッケージ151を観察およびスキャンすることを可能にする他の位置に配置されてもよい。いくつかの実践は、棚142がベースハウジング132からどの程度引き出されているか、および追加のIOLパッケージ151が列150内にあるが、棚が完全に引き出されなかったためにセンサ156を物理的に通過しなかったかどうかを検出するソフトウェア機能を含む。いくつかの実践は、棚142の前縁と整列可能な支持構造158の前縁に沿って配置されたセンサ156を含み、および棚142が完全に引き出されず、かつベースハウジング132に完全に押し戻されないときでさえ、IOLパッケージを検出するようにベースハウジング132のさらに内側に配置された追加センサ156を含んでもよい。他の実践は、IOLカート104内でIOLパッケージ151に対してスキャナを移動させる可動機構上のスキャナを含む。
【0032】
図2は、列150のいずれかの中に配置されてもよい例示的なIOLパッケージ151を示す。図示のように、IOLパッケージ151は、バーコード160を含む。バーコード160は、IOLパッケージ151内の特定のIOLに関するデータまたは代表的な情報を含む。これは、レンズ度数包括値などの情報およびIOLパッケージ151内のIOLの実際のレンズ度数に関する特定の情報を含むことができる。したがって、IOLパッケージ151は、IOLに関する特定の情報を、IOLレンズ度数包括値よりさらに詳細に表示されてもよい。例えば、IOLカート104が、19.5のレンズ度数包括値内にすべて含まれる20包のIOLパッケージ151を含む場合、バーコード160は、20包のIOLレンズのそれぞれを互いに区別する追加の情報を含むことができる。したがって、バーコード160は、それぞれの特定のレンズをその実際のレンズ度数によって個別に追跡することを可能にすることができる。これは、特定の患者にとって最も有益であり得るレンズ度数に最も近い度数を有するIOLレンズを使用者が識別することを可能にすることにより、患者に利益をもたらし得る。代替の実践では、バーコード160の代わりに、IOLパッケージ151は、RFIDチップを含む。チップは、上で考察したバーコードセンサによって伝達され得る任意の情報を含むことができる。さらに他の実践では、視覚スキャナは、IOLパッケージ上の実際の印刷された数字または文字を検出することを含む、IOLパッケージ上の他の識別情報を感知、スキャンまたは検出することができる。他の感知および検出方法およびシステムも考えられる。
【0033】
図3は、外科手術一式100の一部を示すブロック図である。これは、IOLカート104のベースハウジング132およびコンピュータユニット134の周りに配置された電気構成要素を含む。見ることができるように、コンピュータユニット134はまた、入力機構305と通信し、水晶体超音波乳化吸引システム102などの他の手術システムと通信し、インターネット302などのネットワークと通信する。コンピュータユニット134はまた、ディスプレイスクリーン136と通信する。ベースハウジング132、コンピュータユニット134、またはIOLカート104内に含まれる在庫のいずれかに関する情報が、ディスプレイスクリーン136上で使用者に表示されてもよい。ベースハウジング132は、センサ156および視覚インジケータ154を含む。これらは、コンピュータユニット134の制御および指示の下で動作する。このように、センサ156によってスキャンされるIOLパッケージングに関連する情報は、処理のためにセンサからコンピュータユニット134へ伝えることができる。センサ156によって検出された情報は、IOLパッケージ151内のIOLに関する特定の情報を含むことができるが、ベースハウジング132内のIOLパッケージの位置を含むこともできる。より具体的には、センサ156は、特定の棚上、および特定の列150内、および列150内の特定の位置におけるIOLパッケージ151の位置を検出することができる。同様に、使用者による要求に応答して、コンピュータユニット134は、視覚インジケータ154を制御することにより、使用する特定のIOLパッケージを識別することができる。すなわち、所望のIOLパッケージが識別されると、コンピュータユニット134は、その所望のIOLパッケージに隣接するインジケータ154を起動することができる。いくつかの実践は、IOLカート104内の棚ごとに視覚インジケータを含む。したがって、使用者は、特定の棚の視覚インジケータを観察し、その後、特定のIOLパッケージの視覚インジケータを見るために棚を開けることができる。
【0034】
入力機構305は、臨床医、外科医、または他の医療提供者などの使用者からの入力指示を受けるように構成され、IOLカートを操作するか、レンズを要求するか、または必要に応じて他の機能を実行するために使用することができる。入力機構305は、コンピュータユニット134に組み込まれてもよく、例えば、画面上で直接行われる選択に応答するタッチスクリーンデバイス、標準的なコンピュータキーボード、マウスまたはトラックボールなどの標準的なポインティングデバイス、ボタン、ノブ、または他の入力装置を含むことができる。臨床医、外科医、または他の使用者は、入力装置を使用して特定のIOLを選択するか、または他の機能を実行することができる。
【0035】
コンピュータユニット134は、センサ156からの情報に基づいて各IOLパッケージを識別し追跡するように構成および配置される。それは、IOLパッケージが特定の患者に所望されるときにアクセスされ得る在庫データベース内に、各IOLパッケージに関する情報を記憶することができる。
図3を参照すると、コンピュータユニット134は、1つまたは複数のプロセッサ304、メモリ306、および通信モジュール308を含む。
【0036】
1つまたは複数のプロセッサ304は、例えば、限定ではなく、論理機能を実行することができる電力ピン、入力ピン、および出力ピンを有する1つまたは複数の集積回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ304は、センサ156および視覚インジケータ154と通信する。プロセッサ304は、センサ156からデータまたは情報を受信し、受信したデータまたは情報を処理し、特定のIOLパッケージを使用者に識別し推奨するためにそれに依存することができる。様々な実践において、プロセッサ304は、ターゲットデバイスコントローラである。そのような実践では、プロセッサ304は、センサ156および視覚インジケータ154と通信し、センサ156および視覚インジケータ154を対象とする特定の制御機能を実行する。いくつかの実践では、プロセッサ304はマイクロプロセッサである。いくつかのそのような場合、プロセッサ304は、IOLカート104の2つ以上の構成要素を制御するために機能できるようにプログラム可能である。他の場合、プロセッサ304はプログラム可能なマイクロプロセッサではなく、代わりに、異なる機能を実行する異なる構成要素を制御するように構成された特殊目的の制御器である。
【0037】
メモリ306は、揮発性メモリ(ランダムアクセスメモリ(RAM)、FRAM、またはNANDフラッシュメモリなど)および不揮発性メモリ(ソリッドステートストレージなど)を含む様々な種類のメモリを含むことができる。メモリ306は、プロセッサ304とインターフェースをとる。このように、プロセッサ304は、メモリ306に書き込み、メモリ306から読み出すことができる。メモリ306は、プロセッサ304によって実行されると、本明細書に記載するようなセンサ156の制御および特定の視覚インジケータ154の作動を含む様々な機能をコンピュータユニット134に実行させる1つまたは複数の実行可能プログラムを含むコンピュータ可読命令を格納することができる。メモリ306はまた、特定のレンズタイプの在庫が少ないときを自動的に認識し、特定のレンズタイプの販売業者または製造業者に自動的に注文して在庫を補充するための実行可能プログラムを含むことができる。
【0038】
この実践では、メモリ306は在庫データベース310を含む。在庫データベース310は、センサ156から得られる情報を含むことができる。いくつかの例では、在庫データベース310は、IOLカート104に含まれる各特定のIOLに関する情報を含むことができる。メモリ306は、IOLカート104内の在庫が変化するたびに更新されてもよい。いくつかの実践では、在庫データベース310は、棚142(
図2)が開けられるかまたは閉められるたびにIOL情報を更新される。いくつかの実践は、棚が閉じられた後にのみ在庫データベース310を更新する。このように、在庫データベース310は、センサ156によって得られた情報をプロセッサ304から受け取ることができる。
【0039】
いくつかの実践では、IOL在庫データベース310は、手術計画段階中に使用者によってアクセスされてもよい。したがって、術前計画に基づいて、使用者は特定の患者に使用するための特定のIOLを識別することができる。コンピュータユニット134は、特定の患者のための特定のIOLを取っておくように構成することができる。したがって、特定のIOLを、他の手術のために他の使用者に利用できないものとして列記することができる。
【0040】
いくつかの実践では、コンピュータユニット134は、IOL在庫の概要を提供することにより、術前計画に関して使用者を支援することができる。術前計画中、コンピュータユニット134は、使用者の要求を満たす所望のIOLがIOLカート104内に存在するかどうかを使用者に示すことができる。IOLカート104内に所望のIOLが存在する場合、IOLカート104は、使用者が特定の患者のためにIOLを確保することを許容することができる。しかしながら、所望のIOLがIOLカート104内に存在しない場合、IOLカート104は、使用者が多数の行動を取ることを支援することができる。例えば、コンピュータユニット134は、使用者が所望のIOLを注文するのを支援することができる。別の例では、コンピュータユニット134は、在庫内のIOLを調べ、所望のIOLのパラメータに最も近いパラメータを有するIOLを識別することができる。次いで、使用者は、IOLを注文するかどうか、または特定の患者のために次に近いIOLを確保するかどうかを決定することができる。したがって、IOLカート104は、術前計画においてかつ外科的治療処置の実行中に使用者を支援することができる。
【0041】
いくつかの実践では、在庫データベース310はIOLカート104の一部である。しかしながら、他の実践では、在庫データベース310は、IOLカート104と別に離れて格納される。例えば、在庫データベースは、IOLカート104から遠隔に位置する中央データベースであってもよい。それはいくつかの例では、複数のIOLカートのIOL在庫を含んでもよい。
【0042】
通信モジュール308は、コンピュータユニット134が他のシステムと直接またはネットワークを介して通信することを可能にしてもよい。これらのシステムは、外科手術一式100(
図1)を構成する外科手術システムを含むことができ、水晶体超音波乳化吸引システム102を含むことができる。システムはまた、必要に応じて追加のIOLの購入または確保を簡略化し得る在庫追跡システムまたは自動購買システムを含むことができる。いくつかの実践では、通信モジュール308は、在庫情報または特定のIOL情報を、使用者のために水晶体超音波乳化吸引システム102のディスプレイに送信することができる。そうすることで、水晶体超音波乳化吸引システム102を用いて処置を行う使用者は、IOLカート104に関連する水晶体超音波乳化吸引システム102に表示される情報を見ることができ得る。この情報は、利用可能なレンズに関する情報、および術中評価に基づいて特定の患者にとって望ましい正しいレンズに最も近いレンズに関する情報を含む特定のレンズ情報を含んでもよい。水晶体超音波乳化吸引システム102に特定のレンズ情報および/またはIOLカート情報を提供することにより、使用者はより効率的かつ効果的に外科的処置を行うことができ得る。
【0043】
同様に、上述したように、通信モジュール308は、使用者が製造業者から追加の在庫を注文することを可能にしてもよい。いくつかの実践では、通信モジュールは、コンピュータユニット134を、IOLカート104とインターフェースするように特別に設定された注文システムに直接接続することができる。いくつかの実践では、IOLカート104は、在庫が事前に設定されたしきい値を下回るときには常に特定のレンズタイプを製造業者に自動的に注文することができ、または注文を送ることができる。通信モジュール308は、任意の数のシステムと通信し、インターネット302または他のネットワークを介して任意の数の機能を実行することができる。いくつかの実践では、コンピュータユニット134の通信モジュール308は無線で通信するように構成されるが、他の実践では、通信モジュール308は有線接続を介してのみ通信するように構成される。
【0044】
図4は、IOLカート104などのIOLカート内のIOL在庫を追跡または維持するための例示的な方法400を示す。方法400は、特定のIOLパッケージおよびIOLカート内のその位置を識別するセンサから信号を受信するステップ402で始まる。センサから受信された信号は、識別された各IOLの度数に関する情報を含むことができる。それは、例えば、IOLの包括度数を含むことができ、また、各IOLレンズの特定のまたは実際の度数を含むこともできる。それはまた、棚、列および列内の位置など、識別されたIOLの位置情報を含むこともできる。
【0045】
信号は、IOLパッケージの存在の識別に応答してセンサによって生成されてもよい。本明細書のいくつかの実践では、センサは、棚がIOLカート上で開けられるかまたは閉められるときには常に作動することができる。センサはIOLカート上に固定することができる一方、棚は固定されたセンサを通過して出入りする。棚が閉まると、センサはそれを通過するすべてのIOLパッケージを識別することができる。いくつかの実践では、各IOLパッケージは、固定センサを通過する際にバーコードリーダによってスキャンされるバーコードを含む。センサから受信された信号はまた、IOLに関する情報と、IOLの棚内の位置情報とを含む。これは、各IOLパッケージの特定の棚、列、および列内の位置に関する情報を含むことができる。他の実践では、各IOLパッケージは、固定センサを通過する際にRFIDリーダによってスキャンされるRFIDチップを含む。他の実践では、センサは、IOLパッケージ上の他の記号または識別情報を自動的に認識するように構成される。
【0046】
404において、特定のIOLおよびIOLの位置に関する受信された情報がメモリに記憶される。いくつかの実践では、情報は在庫データベースに記憶される。記憶された情報は、センサによって識別されるような特定のIOLに関する情報を含むことができ、IOLおよびIOL在庫に関する一般的な情報を一般に含むこともできる。例えば、在庫データベースは、各IOLの実際の度数に関する情報を含むことができるが、IOLのグループの包括度数を含むこともできる。いくつかの実践では、IOL在庫は、特定の包括度数範囲内に含まれる在庫内のIOLの数に関する情報を含むことができる。例えば、いくつかの実践では、IOL在庫は、専ら例として、19.5の度数範囲内に5つのIOLが存在することを使用者に示すことができる。他の実践では、IOL在庫は、包括度数よりもはるかに高い特異性を有する各IOLレンズの特定の実際の度数を使用者に示すことができる。
【0047】
408において、コンピュータユニットは、所望のIOLに関する情報を含む使用者からの要求を受け取ることができる。いくつかの例では、情報は、患者の術前評価の結果として得ることができる。手術計画段階において、使用者は現在在庫にあるIOLの度数を知ることを望み得る。本明細書に示すように、いくつかの実践では、これらは、特定の患者に使用するために確保されてもよい。これは、IOL在庫から特定のIOLを選択して確保する入力機構を使用して行うことができる。
【0048】
他の例では、コンピュータユニットは、術中評価を行う使用者からの要求を受け取ることができる。これは、術中測定中、手術を受けている患者の最良のIOLが計画されたIOLと異なることを使用者が認識したときに起こり得る。そのような状況では、使用者は、特定の度数を有するIOLについてIOLカートに要求を入力することができる。
【0049】
使用者からの要求に応答して、410において、コンピュータシステムは、在庫データベース内の記憶された情報を分析して、要求に一致する度数または他のパラメータを有するIOLを識別する。コンピュータシステムは、要求されたIOLをIOLカート内の各IOLと比較することができる。いくつかの実践では、コンピュータシステムは、要求されたIOLを同じ施設内の他のIOLカート内のIOLと比較することができる。一致するIOLがIOLカート内に見つかると、コンピュータシステムは、ディスプレイスクリーンを使用して使用者に知らせることができる。
【0050】
要求されたパラメータと一致するパラメータを有するIOLが在庫内にない場合、コンピュータシステムは、要求されたパラメータに最も近いパラメータを有するIOLを識別する。IOLの包括度数および実際の度数を含むパラメータが選択のために使用者に表示されてもよい。いくつかの実践では、複数のIOLが識別され、1つのIOLが他のIOLよりも推奨された状態で使用者に表示されてもよい。次いで、使用者は、使用者の好みに応じて推奨IOLまたは異なるIOLを選択することができる。コンピュータシステムによって自動的であろうと、コンピュータシステムでの使用者入力によってであろうと、IOLが在庫から選択された状態で、システムは、IOLにアクセスし、IOLカートから取り出せることを使用者に示すことができる。いくつかの実践では、コンピュータシステムは、棚、列、および列内の位置によってIOLの位置を示すことができる。
【0051】
414において、コンピュータシステムは、IOL在庫が使用者によってアクセスされるときを検出する。コンピュータシステムは、センサ156およびまたはIOLカートの周りに配置された他のセンサを使用してこれを行うことができる。いくつかの実践では、コンピュータシステムは、棚が移動されているかどうかを監視することにより、使用者によるアクセスを検出する。例えば、棚がセンサに対して移動されると、センサからの信号は、IOL在庫がアクセスされていることをコンピュータシステムに示すことができる。
【0052】
416において、コンピュータシステムは、IOLカート内の選択されたIOLに隣接する視覚インジケータを作動させることができる。これは、所望のIOLを含むIOLパッケージに隣接するLED照明を作動させることを含むことができる。したがって、使用者は、棚を開けて視覚インジケータを見るのみで、患者の正しいIOLを容易に識別することができる。照明として記載されているが、他の視覚的インジケータを使用することもできる。例えば、機械システムを使用して、選択されたIOLを使用者に提示することができる。これは、IOLパッケージを分配すること、またはIOLカート内の他のIOLパッケージからパッケージを物理的に移動させることを含んでもよい。いくつかの実践には、棚ならびに列および列内の位置を識別する視覚インジケータが含まれる。
【0053】
418において、コンピュータシステムは、棚がアクセスされたときにIOL在庫が変化した可能性があるため、IOL在庫を検出するセンサを作動させることができる。センサの作動は、棚が移動されるごとに自動的に行われてもよい。いくつかの実践では、センサの作動は、棚が完全に押し込まれた位置であり得る保管位置に戻されている場合に限り生じる。このように、棚の動きを監視してもよく、動きが検出されるとセンサを起動させることができる。他の実践では、センサは常にオンである。在庫の自動スキャンを起動するための他のトリガも考えられる。センサが作動されると、IOLカートは、IOLカートの棚内に収容された各IOLパッケージを検出するための状態にある。このように、棚がカート内に押し込まれるとき、棚内のIOLパッケージはセンサを通過する。センサは、IOLパッケージが通り過ぎるときにIOLパッケージを検出し、IOLパッケージからの情報を表す信号をプロセッサおよび在庫データベースに送ることができる。いくつかの実践では、センサはバーコードスキャナであり、各IOLパッケージは、IOLに関連する情報を表すバーコードを含む。他の実践では、センサはRFIDセンサであり、各IOLパッケージは、IOLに関する情報を含むRFIDチップを含む。さらに他の実践では、センサは、IOLパッケージ上の他の記号または識別情報を自動的に認識するように構成されている。例えば、情報はIOLの包括度数を含むことができ、IOLの実際の度数を含むこともできる。製造日、ブランド、タイプ、寸法情報、および他のIOLパラメータ情報など、他の情報が含まれてもよい。
【0054】
420において、コンピュータシステムのプロセッサは、スキャナから得られた情報を含むように在庫データベースを更新する。したがって、在庫データベースは、IOL在庫に関する正確な情報を含む。記載された例示的な実践では、在庫が使用者によってアクセスされるたびに在庫データベースが更新される。いくつかの例では、使用者は、IOLカートから複数のIOLパッケージを取り出してもよい。棚が押し込まれると、IOL在庫データベースはカート内のIOLパッケージを正確に反映するように更新される。このように、在庫データベースは、IOLカート内のIOLパッケージの比較的動的で正確な評価を維持する。さらに、使用者が間違ったIOLパッケージを誤って取り出した場合、在庫データベースは、IOLカート内に残っているIOLのみを反映するように正確に更新される。しかしながら、いくつかの実践では、コンピュータシステムは、使用者によって選択されなかったIOLがIOLカートから取り出された場合、コンピュータシステムのディスプレイスクリーン上に視覚インジケータを表示するように構成される。これは、使用者が正しいIOLをカートから取り出したことを保証し、使用者が望ましくないIOLを移植する危険性を低減することを促進し得る。
【0055】
IOLカートを、水晶体超音波乳化吸引システムなど、外科手術一式システムの他の外科手術システムと協働するものとして記載してきたが、さらに他の装置がIOLカートと協働することができる。例えば、いくつかの実践では、IOLカートは、レンズ設計またはレンズ製造の術中修正のためのシステムと協働することができる。例えば、いくつかの実践は、IOLカートが、患者に移植するために術中にレンズを所望の度数に変更することができるレーザシステムと直接通信することを可能にし得る。そのような例では、レンズは、IOLカートシステムに入力されるパラメータおよび値に基づいて、ブランクまたは固体レンズ材料から形成されてもよい。さらに他の実践では、IOLカートは、純粋にIOLカートに入力され所望されるレンズパラメータに基づいて移植可能なレンズを形成するように配置および構成された3Dプリンタと協働することができる。したがって、IOLカートは、カスタムIOLの作製に必要な術前計画からの手術前データおよび術中評価結果からの直接的なデータを有するため、レンズの選択および修正において不可欠の構成要素となり得る。
【0056】
したがって、IOLカートは、手術計画および実行をIOLアクセスと関連付けることにより、IOL度数選択を取りまとめ、計画室および手術室での効率をもたらすことができる。
【0057】
当業者であれば、本開示に包含される実践は、上述の特定の例示的な実践に限定されないことを理解するであろう。これに関して、例示的な実践を示し、記載してきたが、広範な修正形態、変更形態、組み合わせ、および置換形態が前述の本開示において考えられる。そのような変更形態は、本開示の範囲から逸脱することなく上記に対しなされ得ることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、広範にかつ本開示と一致する方法で解釈されることが妥当である。