(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】グルコシル化テルペングリコシド
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20220127BHJP
C12C 5/00 20060101ALI20220127BHJP
C12C 7/04 20060101ALI20220127BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20220127BHJP
C12N 9/24 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
A23L27/20 G
C12C5/00
C12C7/04
C12N9/26 A
C12N9/24
(21)【出願番号】P 2018526791
(86)(22)【出願日】2016-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2016078637
(87)【国際公開番号】W WO2017089444
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/095367
(32)【優先日】2015-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/106882
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウェン-ジュエン シアン
(72)【発明者】
【氏名】ダン-ティン イン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ パスカル エフリジェ
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-206389(JP,A)
【文献】特開2004-344071(JP,A)
【文献】特開昭59-039268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0214751(US,A1)
【文献】特開2003-252895(JP,A)
【文献】特開平02-163056(JP,A)
【文献】特開2003-047453(JP,A)
【文献】秋山裕一、原昌道,ビールの造り方,酒類入門,改訂4版,日本,1987年,P170-P172
【文献】吉田郁也,シリーズ・醸造の基本技術 仕込(1),醸協,日本,2000年,第95巻、9号,P625-P634
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、C12C、C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシル化テルペングリコシド(GTG)の味覚プロファイルの改善方法であって、
a)麦芽穀物を水溶液中でGTGと混合して、GTG穀物混合物を形成すること、ここで前記麦芽穀物はグリコシダーゼを含む;
および
b)前記混合物の温度を、前記グリコシダーゼを活性化するのに十分な温度に、加水分解を進行させて平均グルコース単位数が減少したGTG(GTGRG)を含むGTG穀物混合物を形成するのに十分な時間にわたり調整すること
;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記グルコシダーゼがアミラーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記グリコシダーゼがβ-アミラーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記穀物が、小麦、大麦、ライ麦、ソルガム、そば、スペルト小麦、キビおよびオート麦からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記穀物が大麦である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記GTG穀物混合物を、ビール製造プロセスにおけるマッシュ工程に加える、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ビールの製造方法であって、
a)麦芽穀物を水溶液中でGTGと混合して、GTG穀物混合物を形成すること、ここで前記穀物はアミラーゼを含む;
b)前記混合物の温度を、前記アミラーゼを活性化するのに十分な温度に、前記麦芽穀物中に存在するデンプンをオリゴ糖に変換し、GTGRGを含む混合物を形成するのに十分な時間にわたり調整すること
;
d)GTGRGを含む混合物をろ過して麦汁を形成すること;
e)前記麦汁をホップの存在下で煮沸すること;
f)前記麦汁を冷却すること;
g)酵母を冷却された前記麦汁に添加し、これを発酵させてビールを生成するこ
と
を含む、前記方法。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法であって、活性CGTaseの実質的な不在下で実施する、前記方法。
【請求項9】
GTG対穀物の質量比
が1:10000
~1000:1の範囲にある、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を噴霧乾燥する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
テルペングリコシドを含有する植物抽出物の味の改善方法であって、
a)マルトデキストリンを、水溶液中でテルペングリコシドを含有する植物抽出物と混合して、グリコシドを含有する植物抽出物とマルトデキストリンとの混合物を形成すること;
b)前記混合物のpH
を4~8の範囲に維持すること;
c)トランスグルコシル化酵素を前記混合物に添加すること;
d)前記トランスグルコシル化酵素を活性化するのに十分に前記混合物の温度を調整すること;
e)前記混合物においてトランスグルコシル化反応を可能にして、増強された甘味、低減された苦味、低減された後味、または低減されたカンゾウ味などの改善された味の特性を有するGTG混合物を形成すること;
f)前記GTG混合物を、前記酵素を不活性化するのに十分な温度に加熱すること;
g)麦芽穀物を水溶液中で前記GTG混合物と混合してGTG穀物混合物を形成すること、ここで前記穀物はグリコシダーゼを含む;
および
h)前記混合物の温度を、前記グリコシダーゼを活性化するのに十分な温度に、加水分解を進行させてGTGRGを含む混合物を形成するのに十分な時間にわたり調整するこ
と
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記グリコシダーゼがアミラーゼを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記グリコシダーゼがβ-アミラーゼを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記穀物が小麦、大麦、ライ麦、ソルガム、そば、スペルト小麦、キビおよびオート麦からなる群から選択される、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記穀物が大麦である、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本明細書では、Stevia rebaudiana Bertoni、Rubus suavissimusまたはSiraitia grosvenoriiなどのテルペングリコシドを含む植物の抽出物から食品成分、フレーバーおよび甘味料を製造する方法が提供されている。さらに本明細書では、この方法から製造された組成物の配合物および使用が提供されている。
【0002】
背景
多くの人口による砂糖の摂取によって生じる健康への悪影響は一般的に保健当局や人々に懸念され続けており、天然の甘味化合物源が求められ続けている。肥満や肥満の傾向はこれを裏付けている。砂糖に代わり得る甘くて風味の良い化合物を見つけ、肥満、糖尿病および心臓血管疾患の原因を減らすために、人間の食生活に寄与するゼロカロリーに近い甘味植物抽出物が探し続けられている。中でもステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)抽出物由来のステビオールグリコシド、ブラックベリーの葉(Rubus suavissimus)抽出物由来のルブソシド、およびモンク果実(Siraitis grosvenorii)抽出物由来のモグロシドは、低カロリーの糖代替物として進歩し報告されている。しかしながら、これらの製品は、苦味、後味が残る、またはカンゾウ風味などの負の属性を有し続ける。砂糖を甘味抽出物に置き換えることに関するこれらの問題の一部は、酵素を用いるステビオールグリコシドのトランスグルコシル化によって部分的に対処されてきた。しかしながら、望ましくない味覚属性のない低カロリーの天然甘味料を得るためには依然として多くの課題がある。
【0003】
発明の概要
本明細書では、
a)麦芽穀物を水溶液中でGTGと混合して、GTG穀物混合物を形成すること、ここで前記穀物はアミラーゼなどのグリコシダーゼを含む;
b)前記混合物の温度を、グリコシダーゼを活性化するのに十分な温度に、加水分解を進行させてグリコシル化されたテルペングリコシドを含む混合物を形成するのに十分な時間にわたり調整すること、ここで前記GTG穀物混合物中のGTGの平均グルコース単位数が減少して、平均グルコース単位数が減少したGTG(GTGRG)を形成する
を含む、グルコシル化テルペングリコシド(GTG)の味覚プロファイルの改善方法が提供されている。
【0004】
また、本明細書では、
a)マルトデキストリンを水溶液中でテルペングリコシドと混合してテルペングリコシドマルトデキストリン混合物を形成すること;
b)前記テルペングリコシドマルトデキストリン混合物のpHを約4~約8の範囲に維持すること;
c)前記混合物にトランスグルコシル化酵素を添加すること;
d)前記酵素を活性化するのに十分に前記混合物の温度を調整すること;
e)前記マルトデキストリン混合物においてトランスグルコシル化反応を可能にして改善された味の特性を有するGTG混合物を形成すること、および
f)前記GTG混合物を、前記酵素を不活性化するのに十分な温度に加熱すること;
g)麦芽穀物を水溶液中で前記GTG混合物と混合し、GTG穀物混合物を形成すること、ここで前記穀物はアミラーゼなどのグリコシダーゼを含む;
h)前記混合物の温度を、前記アミラーゼを活性化するのに十分な温度に、加水分解を進行させてグルコシル化テルペングリコシドを含むGTG混合物を形成するのに十分な時間にわたり調整すること、ここで前記GTG穀物混合物中のGTGの平均グルコース単位数が減少する
を含む、ステビア抽出物の味を改善する方法が提供されている。
【0005】
詳細な説明
本明細書での説明および添付の特許請求の範囲について、「または」の使用は、他に記載がない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は交換可能であり、制限することを意図しない。
【0006】
様々な実施形態の説明が「含む(comprising)」という用語を使用する場合、当業者であれば、いくつかの特定の例において、ある実施形態が「本質的に~からなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」という用語を使用して代替的に説明され得ることを理解するであろうことはさらに理解されるべきである。
【0007】
「グリコシド」という用語は、1つ以上の糖単位が化学構造の1つ以上の部位で共有結合されている有機化合物を指す。
【0008】
一実施形態では、GTGは、ステビア植物(Stevia rebaudiana Bertoni)から抽出されたステビオールグリコシドのトランスグルコシル化によって調製されたグルコシル化ステビオールグリコシド(GSG)である。したがって得られた製品は、平均グルコース単位数が減少したGSG(GSGRG)である。
【0009】
一実施形態では、GTGは約1~約12の追加グルコース単位を含む。
【0010】
一実施形態では、GTGRGを含む混合物は、グリコシダーゼを失活させるのに十分な温度まで加熱される。
【0011】
さらなる実施形態では、固形分は、ろ過、遠心分離、または当業者に公知の他の技術などの手段を用いてGTGRGを含む混合物から除去される。
【0012】
別の実施形態では、炭水化物は、吸着樹脂、沈殿、または当業者に公知の他の技術を用いてGTGRGを含む混合物から除去される。
【0013】
一実施形態では、グリコシダーゼは、α-グルコシダーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルカン-1,4-α-グルコシダーゼ、グルカン-1,4-α-マルトヒドロラーゼ、グルカン-1,4-α-マルトトリオヒドロラーゼ、グルカン-1,4-マルトヘキサオシダーゼからなる群から選択され、特にグリコシダーゼはアミラーゼであり、より詳細にはβ-アミラーゼである。
【0014】
一実施形態では、本明細書で提供される穀物は、小麦、大麦、ライ麦、ソルガム、そば、スペルト小麦、キビおよびオート麦からなる群から選択され、特に穀物は大麦である。一実施形態では、穀物は粉砕される。
【0015】
本明細書で提供されるトランスグルコシル化酵素は、例えば、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTase、EC 2.4.1.19)を含むがこれに限定されない糖供与体としてマルトデキストリンと共に使用できるものである。
【0016】
さらに本明細書では、
a)麦芽穀物を水溶液中でGTGと混合して、GTG穀物混合物を形成すること、ここで前記穀物はグリコシダーゼを含む;
b)前記混合物の温度を、グリコシダーゼを活性化するのに十分な温度に、前記麦芽穀物中に存在するデンプンを少なくとも部分的にオリゴ糖に変換し、グリコシル化ステビオールグリコシドを含む混合物を形成するのに十分な時間にわたり調整すること、ここで前記GTG穀物混合物中のGTGの平均グルコース単位数が減少してGTGRGが得られる;特に、前記混合物は、例えば、以下によって減少する
c)任意で、GTGRGを含む混合物を、アミラーゼを失活させるのに十分な温度に加熱すること;
d)GTGRGを含む混合物をろ過して麦汁を形成すること;
e)前記麦汁をホップの存在下で煮沸すること;
f)前記麦汁を冷却すること;
g)酵母を冷却された前記麦汁に添加し、これを発酵させてビールを生成すること;
h)任意で、前記ビールを形成された固形物から分離すること
を含む、ビールの製造方法が提供される。
【0017】
一実施形態では、麦芽穀物が粉砕される。
【0018】
一実施形態では、GTG対穀物の質量比は、約1:10000~約1000:1の範囲である。
【0019】
一実施形態では、本明細書で提供される方法によって製造されたGTG混合物は噴霧乾燥される。
【0020】
一実施形態では、トランスグルコシル化酵素を活性化するための温度は、25℃~100℃、より詳細には50℃~90℃の範囲である。一実施形態では、トランスグルコシル化酵素を活性化するための温度は約70℃、より詳細には約65℃である。
【0021】
一実施形態では、トランスグルコシル化酵素を失活させるための温度は、100℃~150℃、より詳細には120℃~140℃の範囲である。一実施形態では、トランスグルコシル化酵素を失活させるための温度は約130℃、より詳細には約125℃である。
【0022】
GSGを超えて、本明細書に記載の方法で使用され得るさらなるGTGは、グルコシル化ルブソシドである。本明細書で提供されるルブソシドは、これに限定されるものではないが、ステビアでも少量見られるルブソシドと呼ばれる実質的に単一のテルペングリコシドを含むブラックベリーの葉(Rubus suavissimus)から得ることができる。
【0023】
さらなるGTGも、トリテルペングリコシドの混合物を含有するモンク果実(中国語名羅漢國(Luo Han Guo)、ラテン語名Siraitis grosvenorii)からの抽出物のトランスグルコシル化によって得られ得る。
【0024】
本明細書で得られるGTGRGまたはGTGRG混合物は、フレーバー製品のフレーバーを改変、強化、付与、または改善するために使用され得る。
【0025】
本明細書で得られるGTGRGまたはGTGRG混合物は、フレーバーの甘味を改変、強化、付与または改善するために使用され得る。
【0026】
フレーバー製品またはフレーバーのGTGRGまたはGTGRG混合物は、食料のフレーバーおよび/または甘味を強化、付与、改変または改善するために食料に使用され得る。
【0027】
特定の実施形態では、
i)上記で定義されたGTGRGまたはGTGRG混合物;
ii)フレーバーキャリアおよびフレーバーベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤
を含む、フレーバリング組成物が本明細書で提供される。
【0028】
「フレーバーキャリア」とは、本明細書では、フレーバリング成分の官能特性を大きく変えないような、フレーバーの観点から事実上中性の物質を意味する。前記キャリアは液体であっても固体であってもよい。
【0029】
液体キャリアとしては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、またはフレーバーによく用いられる溶媒が挙げられ得る。フレーバーによく用いられる溶媒の性質および種類の詳細な説明は網羅できない。しかしながら、非限定的な例として、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ベンジルアルコール、エタノール、植物油またはテルペンなどの溶媒が挙げられ得る。
【0030】
固体キャリアとしては、非限定的な例として、吸収ガムもしくはポリマー、またはさらにカプセル化材料が挙げられ得る。このような材料の非限定的な例は、単糖類、二糖類または三糖類、天然または化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチンなどの壁形成および可塑化材料を含み得る。カプセル化技術は、当該技術分野において公知であり、例えば、噴霧乾燥、アグロメレーションまたはさらに押出などの技術を用いて実施されていてよく、またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0031】
「フレーバーベース」とは、本明細書では少なくとも1種のフレーバリング補助成分を含む組成物を意味する。
【0032】
前記フレーバリング補助成分は、上記のGTGRGまたはGTGRG混合物である。さらに、「フレーバリング補助成分」とは、本明細書では快楽効果を付与するためのフレーバリング調製物または組成物に使用される化合物を意味する。換言すれば、フレーバリングするものと見なされるべきこのような補助成分は、単に味を有するものではなく、組成物の味を肯定的または快い方法で付与または改変することができると当業者によって認識されなければならない。
【0033】
ベース中に存在するフレーバリング補助成分の性質および種類は、本明細書ではより詳細な説明を保証せず、いかなる場合も網羅されないであろうが、当業者は彼らの一般的な知識に基づいて、意図される使用または用途および所望の感覚刺激効果に従ってそれらを選択することができる。一般的には、これらフレーバリング補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄複素環化合物および精油などの化学種に属し、前記付香補助成分は天然または合成由来であり得る。これらの補助成分の多くは、いずれの場合もS. Arctanderによる書籍、Perfume and Flavor Chemicals, 1969年, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版、または同様の性質の他の論文、ならびにフレーバー分野の豊富な特許文献などの参考テキストに列記されている。前記補助成分は、様々な種類のフレーバリング化合物を制御された方法で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解されている。
【0034】
「フレーバー補助剤」とは、本明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらに追加される利点を付与できる成分を意味する。フレーバーリングベースでよく用いられる補助剤の性質および種類の詳細な説明は網羅できないが、前記成分が当業者によく知られていることは言及されるべきである。
【0035】
さらに、本明細書で定義されるGTGRGまたはGTGRG混合物は、風味付けられる物品に有利に組み込まれ、前記物品の味を積極的に付与または変更することができる。一実施形態では、物品の味が変更されて、例えば苦味およびオフノートが低減される。別の実施形態では、風味付けられた物品または食料の口当たりの改善が本明細書でもたらされる。別の実施形態では、特にGTGRGまたはGTGRG混合物がスクロースなどの甘味化合物の甘味を調節する(例えば、増加させる)場合、風味付けられた物品または食料の味または甘味の改善が本明細書でもたらされる。その結果、
i)フレーバリング成分として、上記のGTGRGまたはGTGRG混合物;および
ii)食料ベース
を含む風味付けられた物品も本明細書で提供される。
【0036】
適切な食料、例えば、食品または飲料も本明細書で提供される。
【0037】
本発明の目的のために、「食料ベース」は、食用製品、例えば食品または飲料を意味する。したがって、本明細書で提供される風味付けられた物品は、機能性配合物、ならびに所望の食用製品に相当する任意のさらなる有用な薬剤、例えば、セイバリーキューブ、および風味に有効な量の少なくとも1種の本発明による化合物を含む。本明細書で提供される組成物および方法は、食品または飲料製品に使用される。食品が粒状または粉末状の食品である場合、乾燥粒子はドライミキシングで容易にそれに添加され得る。典型的な食品は、インスタントスープまたはソース、朝食用シリアル、粉ミルク、ベビーフード、粉末ドリンク、粉末チョコレートドリンク、スプレッド、粉末シリアル飲料、チューインガム、発泡錠、シリアルバー、およびチョコレートバーからなる群から選択される。粉末状の食品または飲料は、製品を水、ミルクおよび/またはジュース、または別の水性液体で再構成した後に消費されることが意図され得る。
【0038】
食品は調味料、焼商品、粉状食品、ベーカリーフィリングおよび液体乳製品からなる群から選択され得る。
【0039】
調味料としては、ケチャップ、マヨネーズ、サラダドレッシング、ウスターシャーシソース、フルーツフレーバーソース、チョコレートソース、トマトソース、チリソース、およびマスタードが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
焼き菓子としては、ケーキ、クッキー、ペストリー、パン、ドーナツなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
ベーカリーフィリングとしては、低pHまたは中性pHのフィリング、高固形分、中固形分または低固形分のフィリング、フルーツまたはミルクベース(プディングタイプまたはムースタイプ)フィリング、ホットまたはコールドメイクアップフィリングおよび無脂肪~全脂肪フィリングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
液体乳製品としては、例えば、ミルク、アイスクリーム、シャーベット、およびヨーグルトなどの凍結していない、部分的に凍結した、凍結した液体乳製品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
飲料製品としては、コーラ、レモンライム、ルートビア、柑橘風味飲料(heavy citrus)(「デュータイプ(dew type)」)、フルーツ風味ソーダおよびクリームソーダを含む炭酸清涼飲料;粉末清涼飲料水、ならびに噴水シロップおよび興奮性飲料などの液体濃縮物;コーヒーおよびコーヒーベースの飲料、コーヒー代用品および穀物ベースの飲料;ドライミックス製品ならびにすぐに飲める茶(ハーブおよび茶葉ベース)を含む茶類;フルーツおよび野菜ジュース、および風味付けジュース飲料、ならびにジュースドリンク、ネクター、濃縮物、パンチおよび「アデス」;炭酸および蒸留の両方の、甘く風味付けられた水;スポーツ/エネルギー/健康飲料;アルコール飲料に加えて、ビールおよび麦芽飲料を含むアルコールフリーおよび他の低アルコール製品、サイダー、およびワイン(蒸留、スパークリング、フォーティファイドワインおよびワインクーラー);加熱(温浸、低温殺菌、超高温、オーム加熱または工業用の無菌滅菌)処理された他の飲料および熱充填包装;およびろ過または他の保存技術によって作られた冷充填製品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
食料または飲料の成分の性質および種類は、本明細書ではさらに詳細な説明を保証するものではなく、いずれの場合も網羅されないであろう。当業者は彼らの一般的な知識に基づいて、そして前記製品の性質に従ってそれらを選択することができる。
【0045】
本発明による化合物が種々の前記物品または組成物に配合され得る割合は、広い値の範囲で変化する。これらの値は、風味付けられる物品の性質および所望の感覚刺激効果に依存し、さらには本発明による化合物がフレーバリング補助成分、溶媒または当該技術分野で一般的に使用されている添加剤と混合される際の所与のベース中の補助成分の性質に依存する。
【0046】
フレーバリング組成物の場合、典型的な濃度は、これらを導入する消費者製品の質量を基準として、0.0001質量%~1質量%またはそれ以上の本発明の化合物のオーダーである。これらの化合物を風味付けられる物品に導入する際に、これらのオーダーよりも低い濃度、例えば0.001質量%~0.5質量%のオーダーを使用することができ、パーセンテージは物品の質量に対するものである。
【0047】
以下の実施例は説明のためだけのものであり、本明細書に提供されかつ特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1はGSGのHPLCクロマトグラムを示す。トップ:新規なプロセスを受けていないレバウジオシドAを主に含有するステビア抽出物に由来するGSG。ボトム:新規なプロセスを受けた後の同じGSG。追加されるグルコース単位数が減少し、追加されるグルコース単位が6を超える類似体は実質的に存在しない。
【
図2】
図2はGSGのHPLCクロマトグラムを示す。トップ:新規なプロセスを受けていないステビオシドを主に含有するステビア抽出物に由来するGSG。ボトム:新規なプロセスを受けた後の同じGSG。追加されるグルコース単位数が減少し、追加されるグルコース単位が6を超える類似体は実質的に存在しない。
【0049】
実施例
実施例1
レバウジオシドAを主に含有するステビア抽出物に由来するGSGの平均グルコース単位数の減少
レバウジオシドA(RebA)を主に含有するステビア抽出物に由来するGSG 696gを水2775gに溶かした。粉砕した麦芽大麦48gを加えた。混合物を62℃で30分間反応させた。酵素を78℃で15分間失活処理した。主に残砕麦芽大麦から得られた固形分を、10μmフィルターを用いたデッドエンドろ過で除去した。得られた透明な水溶液(3400g)を噴霧乾燥して、GSGRG08と呼ばれる乾燥物632gを得た。GSG出発物質および反応後に得られたGSGRGを、
図1に示すように、UV検出を用いたHPLCにより分析した。
図1は、GSGRG08が出発物質として使用されるGSGと比較して低いグルコシル化度を有することを示す。
【0050】
実施例2
ステビオシドを主に含有するステビア抽出物に由来するGSGの平均数の減少
主にステビオシドを含有するSG抽出液に由来するGSG 720gを水2755gに溶かした。粉砕した麦芽大麦48gを加えた。混合物を62℃で30分間反応させた。酵素を78℃で15分間失活処理した。主に残砕麦芽大麦から得られた固形分を、10μmフィルターを用いたデッドエンドろ過で除去した。得られた透明な水溶液を噴霧乾燥して、GSGRG11と呼ばれる乾燥物664gを得た。GSG出発物質と反応後に得られた生成物を、
図2に示すように、UV検出を用いたHPLCによって分析した。
図2は、GSGRG11が、出発物質として使用されるGSGと比較して低いグルコシル化度を有することを示す。
【0051】
実施例3
バランスの取れた比率のRebAおよびステビオシドを他のステビオールグリコシドと一緒に含有するSG抽出物に由来するGSGの修飾
バランスの取れた比率のRebAおよびステビオシドを他のステビオールグリコシドと一緒に含有するステビア抽出物に由来するGSG 10gを、水30mlに溶かした。粉砕麦芽大麦0.625gを加えた。混合物を62℃で24時間反応させた。酵素を78℃で15分間失活処理した。主に残砕麦芽大麦から得られる固形分を、0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過により除去した。得られた透明な水溶液を凍結乾燥して、GSGRG01と呼ばれる乾燥物8.8gを得た。UV検出を用いたHPLCによる分析は、GSGRG01が出発物質として使用されるGSGと比較して低いグリコシル化度を有することを示した。
【0052】
実施例4
GSGRG対マッチングGSGについての消費者の好ましさ-消費者によるGSGRG対「ペア比較」試験によるマッチングGSGの評価
30人の訓練されたパネリストは、それぞれ、実施例2で使用したGSG出発物質の水溶液125ppmを含むカップと、実施例2に記載したように調製したGSGRG11の水溶液125ppmを含むもう1つのカップとを受け取った。2つのカップをランダムな順番で並べた。パネリストはどの試料が好ましいか答えるように求められた。25人のパネリストがGSGRGを好ましいと回答し、わずか5人のパネリストが出発物質として使用されるGSGを好ましいと回答した。差は0.0003で有意であり、両側分析では5.0%でアルファリスクがある。
【0053】
実施例5
GSGRGの甘味増強効果対マッチングGSGの比較-「対照とは異なる改変」試験による評価
29人の訓練されたパネリストに、甘味強度の基準として定義された4%のスクロース溶液を含む第1カップを任意に設定した値0で味見するよう求めた。パネリストは次いでランダムに並べられた2つの追加のカップを受け取った。1つのカップは、4%のスクロース水溶液に溶解した実施例3の出発物質として用いられるGSGを125ppm含有する水溶液を含み、もう1つのカップは、4%のスクロース水溶液に溶解したGSGRG01を100ppmしか含まず、このGSGRGは実施例3に記載されたように調製した。パネリストは、これらの2つの試料の甘味強度を、0に設定した基準に対して-5(甘味なし)~5(非常に強い甘味)のスケールで評価するよう求められた。パネリストは、両方の試料を同じ甘味強度1.4で評価した。この結果は、新規技術により調製したGSGRGが、甘味増強効果の大きさに悪影響を及ぼすことなく、標準的なGSGより低い用量で使用できることを示す。
【0054】
実施例6
ルブソシドを主に含有するRubus suavissimus抽出物に由来するGSGの平均グルコース単位数の減少
ルブソシドを主に含有するRubus suavissimus抽出物に由来するGSG 855gを水1200gに溶かした。粉砕した麦芽大麦51gを加えた。混合物を62℃で30分間反応させた。酵素を78℃で15分間失活処理した。主に残砕麦芽大麦から得られた固形分を、10μmフィルターを用いてデッドエンドろ過により除去した。得られた透明な水溶液1Lを噴霧乾燥して、GSGRG14と呼ばれる乾燥物250gを得た。UV検出を用いたHPLCによる分析は、GSGRG14が、出発物質として使用されるGSGと比較して、低いグリコシル化度を有することを示した。