(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】自動注射デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20220107BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/315 550V
(21)【出願番号】P 2018527162
(86)(22)【出願日】2016-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2016078243
(87)【国際公開番号】W WO2017089255
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-15
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヴェントラント
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ハルムス
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/126653(WO,A1)
【文献】特開昭62-121877(JP,A)
【文献】特開平04-200565(JP,A)
【文献】米国特許第04899910(US,A)
【文献】特開平04-105660(JP,A)
【文献】特開平05-168680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20-28
A61M 5/315
A61M 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動注射デバイス(100)であって:
薬剤リザーバ(18)と;
該薬剤リザーバから薬剤を排出するストッパ(23)と;
形状記憶合金から形成され、第1の構成および第2の構成を有し、形状変化温度を上回るまで温度が上昇すると第1の構成から第2の構成へ形状が変化して、薬剤リザーバを通してシリンジ機構のストッパを駆動するように構成された駆動要素(130)と;
該駆動要素を能動的に加熱するように構成された加熱機構(140)であって、当該加熱機構は、第1の化学物質と第2の化学物質との間の発熱化学反応を通して熱を発生させるように構成された化学加熱要素であって、第1の化学物質は第1の近位チャンバに収容され、第2の化学物質は第2の遠位チャンバに収容され、そして、起動によって第1の化学物質が第2のチャンバ内へ変位され、そして、第2のチャンバは、駆動要素の中央領域を通って延びるように配置される突出部分を有する加熱機構と
を含む、前記自動注射デバイス。
【請求項2】
駆動要素の第1の構成は圧縮コイル形状であり、駆動要素の第2の構成は拡張コイル形状である、請求項1に記載の自動注射デバイス。
【請求項3】
化学加熱要素は:
第1の化学物質を収容する第1のチャンバ(141)と、
第2の化学物質を収容する第2のチャンバ(142)と、
第1の化学物質を第2の化学物質から分離するように配置された脆い膜(143)とを含む、請求項
1または2に記載の自動注射デバイス。
【請求項4】
形状記憶合金はニッケルチタン合金である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の自動注射デバイス。
【請求項5】
薬剤リザーバ内に保持され、ストッパによって薬剤リザーバから排出されるように配置された薬剤(16)をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の自動注射デバイ
ス。
【請求項6】
注射デバイスの作動制御方法であって:
形状記憶合金から形成された駆動要素を加熱する化学発熱要素を含み;
ここで、化学発熱要素は第1の化学物質と第2の化学物質との間の発熱化学反応を通して熱を発生させるように構成され、第1の化学物質は第1の近位チャンバに収容され、第2の化学物質は第2の遠位チャンバに収容され、そして、起動によって第1の化学物質が第2のチャンバ内へ変位され、そして、第2のチャンバは、駆動要素の中央領域を通って延びるように配置される突出部分を有していて、
ここで、駆動要素は、第1の構成および第2の構成を有し、形状変化温度を上回るまで駆動要素の温度が上昇すると第1の構成から第2の構成へ形状が変化して、薬剤リザーバを通してストッパを駆動し、駆動されたストッパが薬剤リザーバから薬剤を排出するように構成された、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤をユーザの注射部位へ投薬する、自動注射器などの注射デバイスが、当該技術分野において知られている。かかる注射デバイスは、一般的に、本体およびキャップを含む。ニードルシリンジは本体に位置する。キャップは、本体に取外し可能に取り付けられて、ニードルシリンジの針を遮蔽する。薬剤を投薬するには、最初にキャップを本体から取り外して針を露出させる。次に、針を注射部位でユーザの身体に挿入して、薬剤を投薬する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態によれば、薬剤リザーバと、薬剤リザーバから薬剤を排出するストッパと、形状記憶合金から形成され、第1の構成および第2の構成を有し、形状変化温度を上回るまで温度が上昇すると第1の構成から第2の構成へ形状が変化して、薬剤リザーバを通してシリンジ機構のストッパを駆動するように構成された駆動要素と、駆動要素を能動的に加熱するように構成された加熱機構であって、発熱過程を通して熱を発生させるように構成された化学加熱要素である加熱機構とを含む、自動注射デバイスが提供される。
【0004】
駆動要素の第1の構成は圧縮コイル形状であってもよい。駆動要素の第2の構成は拡張コイル形状であってもよい。
【0005】
発熱過程は過飽和溶液の発熱結晶化であってもよい。
【0006】
発熱過程は脱水塩の発熱再水和であってもよい。
【0007】
発熱過程は、第1の化学物質と第2の化学物質との発熱化学反応であってもよい。
【0008】
化学加熱要素は、第1の化学物質を収容する第1のチャンバと、第2の化学物質を収容する第2のチャンバと、第1の化学物質を第2の化学物質から分離するように配置された脆い膜(143)とを含むことができる。
【0009】
形状記憶合金はニッケルチタン合金であってもよい。
【0010】
自動注射デバイスは、薬剤リザーバ内に保持され、ストッパによって薬剤リザーバから排出されるように配置された薬剤を含むことができる。
【0011】
別の態様によれば、薬剤リザーバと、薬剤リザーバから薬剤を排出するストッパと、形状記憶合金から形成され、第1の構成および第2の構成を有し、形状変化温度を上回るまで温度が上昇すると第1の構成から第2の構成へ形状が変化して、薬剤リザーバを通してシリンジ機構のストッパを駆動するように構成された駆動要素と、駆動要素を能動的に加熱するように構成された加熱機構とを含み、加熱機構が、流体を保持する流体リザーバと、流体リザーバ内の流体を加熱するように構成されたヒータと、流体を流体リザーバから排出するように構成されたポンプと、流体を流体リザーバから駆動要素まで運ぶように配置された連結導管とを含む、自動注射デバイスが提供される。
【0012】
駆動要素の第1の構成は圧縮コイル形状であってもよい。駆動要素の第2の構成は拡張コイル形状であってもよい。
【0013】
駆動要素は薬剤リザーバの近位端に配設することができる。連結チューブは、薬剤リザーバの近位端に流体を充填するように構成することができる。
【0014】
形状記憶合金はニッケルチタン合金であってもよい。
【0015】
自動注射デバイスは、薬剤リザーバ内に保持され、ストッパによって薬剤リザーバから排出されるように配置された薬剤を含むことができる。
【0016】
別の態様によれば、発熱過程を通して熱を発生させるように構成された化学加熱要素を使用して、形状記憶合金から形成された駆動要素を加熱することを含む、注射デバイスを操作する方法が提供される。駆動要素は、第1の構成および第2の構成を有し、形状変化温度を上回るまで駆動要素の温度が上昇すると第1の構成から第2の構成へ形状が変化して、薬剤リザーバを通してストッパを駆動し、薬剤リザーバから薬剤を排出するように構成される。
【0017】
別の態様によれば、流体リザーバ内に保持された流体を加熱し、連結導管を通して流体を流体リザーバから駆動要素へ給送することによって、形状記憶合金から形成された駆動要素を加熱することを含む、注射デバイスを操作する方法が提供される。駆動要素は、第1の構成および第2の構成を有し、形状変化温度を上回るまで駆動要素の温度が上昇すると第1の構成から第2の構成へ形状が変化して、薬剤リザーバを通してストッパを駆動し、薬剤リザーバから薬剤を排出するように構成される。
【0018】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載する実施形態から明白となり、それらを参照して解明されるであろう。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、単なる例として、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】キャップが注射デバイスの本体に取り付けられている、例示的な一実施形態による自動注射デバイスを示す概略側面図である。
【
図1B】キャップが本体から取り外されている、
図1Aの自動注射デバイスを示す概略側面図である。
【
図2】例示的な一実施形態による
図1Aおよび
図1Bの自動注射デバイスを示す概略断面図である。
【
図3】
図2の自動注射デバイスを示す概略断面図である。
【
図4】
図2の自動注射デバイスを示す概略断面図である。
【
図5】例示的な一実施形態による
図1Aおよび
図1Bの自動注射デバイスを示す概略断面図である。
【
図6】
図5の自動注射デバイスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態は、投薬機構が形状記憶合金から形成された駆動要素を含む、自動注射デバイスの改善された投薬機構を提供する。形状記憶合金は、投薬機構に合わせて拡張する駆動要素を提供するために使用される、能動的加熱によって閾値を上回るまで温度を上昇させると構成が変化する。それに加えて、加熱装置を使用して駆動要素の温度を上昇させることは、注射前に薬剤を温める助けとすることができる。
【0022】
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内であり得る。かかるデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者が操作することができ、様々なタイプの安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔することを必要とする、カートリッジ式システムを含むことができる。これらの様々なデバイスを用いて送達される薬剤の量は、約0.5ml~約2mlの範囲であることができる。さらに別のデバイスは、ある期間(たとえば、約5分、15分、30分、60分、もしくは120分)にわたって患者の皮膚に付着させて、「大」量の薬剤(一般的に、約2ml~約5ml)を送達するように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0023】
特定の薬剤との組み合わせで、本発明に記載するデバイスはまた、要求される仕様内で動作するためにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、特定の期間(たとえば、自動注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)内で薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様としては、低レベルまたは最低限のレベルの不快感、または人的要因、貯蔵寿命、期間満了、生体適合性、環境的考慮点などに関連する特定の条件を挙げることができる。かかるばらつきは、たとえば、約3cP~約50cPの粘度範囲の薬物など、様々な要因によって生じる可能性がある。結果的に、薬物送達デバイスは、サイズ約25~約31ゲージの範囲の中空針を含む場合が多くなる。共通のサイズは27および29ゲージである。
【0024】
本明細書に記載する送達デバイスは、1つまたはそれ以上の自動化機能も含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤注射、および針の引き込みのうち1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動ステップのためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給することができる。エネルギー源としては、たとえば、機械エネルギー、空気圧エネルギー、化学エネルギー、または電気エネルギーを挙げることができる。たとえば、機械エネルギー源としては、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを格納もしくは解放する他の機械的機構を挙げることができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を単一のデバイスに組み込むことができる。デバイスとしてはさらに、ギア、バルブ、またはエネルギーをデバイスの1つもしくはそれ以上の構成要素の動きに変換する他の機構を挙げることができる。
【0025】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化機能はそれぞれ、起動機構を介して起動される。かかる起動機構としては、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうち1つもしくはそれ以上を挙げることができる。自動化機能の起動は、1ステップまたは多重ステップの工程であってもよい。つまり、ユーザは、自動化機能をもたらすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動させることが必要なことがある。たとえば、1ステップ工程では、ユーザは、薬剤を注射するために、ニードルスリーブをそれらの本体に対して押し下げてもよい。他のデバイスは、自動化機能の多重ステップ起動を必要とすることがある。たとえば、ユーザは、注射をもたらすために、ボタンを押し下げ、ニードルシールドを後退させることが必要とされることがある。
【0026】
それに加えて、1つの自動化機能の起動によって、1つまたはそれ以上の後に続く自動化機能を起動させ、それによって起動シーケンスを形成してもよい。たとえば、第1の自動化機能の起動によって、針の挿入、薬剤注射、および針の引き込みのうち少なくとも2つを起動してもよい。一部のデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能をもたらすのに、特定のステップシーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立したステップのシーケンスで動作してもよい。
【0027】
一部の送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、(自動注射器で一般的に見られるような)薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源と、(ペン型注射器で一般的に見られるような)用量設定機構とを含むことができる。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示の薬物送達デバイス10が
図1Aおよび
図1Bに示されている。デバイス10は、上述したように、薬剤を患者の体内に注射するように構成される。デバイス10は、一般的に、注射される薬剤を収容するリザーバ(たとえば、シリンジ)と、送達工程の1つまたはそれ以上のステップを容易にするために必要とされる構成要素とを収容する、ハウジング11を含む。デバイス10はまた、ハウジング11に分離可能に装着することができるキャップアセンブリ12を含むことができる。一般的に、ユーザは、デバイス10が操作される前に、キャップ12をハウジング11から取り外さなければならない。
【0029】
図示されるように、ハウジング11は、ほぼ円筒状であり、長手方向軸Xに沿ってほぼ一定の直径を有する。ハウジング11は遠位領域20および近位領域21を有する。用語「遠位」は、注射部位に比較的近い場所を指し、用語「近位」は、注射部位から比較的離れた場所を指す。
【0030】
デバイス10はまた、スリーブ13がハウジング11に対して動くことができるように、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ13を含むことができる。たとえば、スリーブ13は、長手方向軸Xに平行な長手方向で動くことができる。具体的には、スリーブ13が近位方向に動くことによって、針17がハウジング11の遠位領域20から延びることができる。
【0031】
針17の挿入はいくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定的に位置してもよく、最初は、延びたニードルスリーブ13内に位置してもよい。スリーブ13の遠位端を患者の身体に接して位置させることによって、スリーブ13が近位方向に動き、ハウジング11を遠位方向に動かすことによって、針17の遠位端が現れる。かかる相対的な動きによって、針17の遠位端が患者の体内へ延びることができる。かかる挿入は、患者がハウジング11をスリーブ13に対して手で動かすことによって、針17が手動で挿入されるので、「手動」挿入と呼ばれる。
【0032】
別の挿入形態は、「自動化された」ものであり、針17がハウジング11に対して動く。かかる挿入は、スリーブ13の動きによって、またはたとえばボタン22などの別の起動形態によって、トリガすることができる。
図1Aおよび
図1Bに示されるように、ボタン22はハウジング11の近位端に位置する。しかしながら、他の実施形態では、ボタン22はハウジング11の側面に位置することができる。
【0033】
他の手動または自動機構は、薬物注射もしくは針の引き込み、または両方を含むことができる。注射は、針17を通してシリンジから薬剤を押し出すために、栓またはピストン23が、シリンジ(図示せず)内の近位位置からシリンジ内のより遠位の位置へ動かされる工程である。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前は、駆動ばね(図示せず)は圧縮下にある。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域21内で固定することができ、駆動ばねの遠位端は、圧縮力をピストン23の近位面に加えるように構成することができる。起動に続いて、駆動ばねに蓄えられたエネルギーの少なくとも一部を、ピストン23の近位面に加えることができる。この圧縮力はピストン23に作用して、ピストンを遠位方向に動かす。かかる遠位方向の動きは、シリンジ内の液体薬剤を圧縮して針17から押し出すように作用する。
【0034】
注射に続いて、針17をスリーブ13またはハウジング11内に引き込むことができる。引き込みは、ユーザがデバイス10を患者の身体から取り除く際に、スリーブ13が遠位方向に動いたときに行われる。これは、針17がハウジング11に対して固定的に位置したままのときに行われる。スリーブ13の遠位端が針17の遠位端を越えて動き、針17が覆われると、スリーブ13をロックすることができる。かかるロックは、ハウジング11に対するスリーブ13の近位方向の動きをロックすることを含み得る。
【0035】
針引き込みの別の形態は、針17をハウジング11に対して動かした場合に行われる。かかる動きは、ハウジング11内のシリンジをハウジング11に対して近位方向に動かした場合に行われる。この近位方向の動きは、遠位領域20に位置する引き込みばね(図示せず)を使用することによって達成できる。圧縮された引き込みばねを起動すると、シリンジを近位方向に動かすのに十分な力を供給することができる。十分な引き込みに続いて、針17とハウジング11との間の任意の相対的な動きを、ロッキング機構を用いてロックすることができる。それに加えて、ボタン22、またはデバイス10の他の構成要素を必要に応じてロックすることができる。
【0036】
図2を参照すると、第1の実施形態による注射デバイス100が示されている。注射デバイス100は、
図1Aおよび
図1Bに関して記載したのと実質的に同様の、液体薬剤16を収容するシリンジ18と、シリンジ18のゴムストッパ23を薬剤チャンバの近位端に向かって変位させるように構成された投薬機構110とを含む。
【0037】
投薬機構110は、ピストン120と、駆動要素130と、加熱機構140と、投薬ボタン150とを含む。ピストン120は、シリンジ18のゴムストッパ14に連結され、駆動要素130は、注射器ハウジングの近位端でピストン120と加熱機構140との間に配設される。駆動要素130は、駆動要素130の遠位端でピストン120の肩部に機械的に連結され、駆動要素130の近位端で反応面に固定される。
【0038】
駆動要素130は、たとえば、ニッケルチタンまたは銅アルミニウムニッケルなどの形状記憶合金(SMA)から形成される。形状記憶合金はまた、形状記憶金属またはスマートメタルと呼ばれることもある。SMAは、圧縮コイル形状である第1の構成と、拡張コイル形状である第2の構成とを有する駆動要素130を形成する。SMAの性質により、駆動要素130は、温度が閾値温度未満のときは第1の構成のままである。駆動要素130の温度が閾値を上回って上昇すると、駆動要素130が第1の構成から第2の構成へ変化する。
【0039】
駆動要素130の第2の構成は、第2の構成における駆動要素130の求められる形状を形成するように、非常に高い温度でSMAを働かせることによって設定される。SMAは迅速に冷却されて、駆動要素130の形成された形状を第2の構成として設定する。SMAは、第1の構成の駆動要素130の形状を設定するために、閾値温度を下回るとさらに働かせることができる。SMAは、駆動要素130の温度が閾値を上回って上昇するまで、第1の構成のままである。
【0040】
第2の構成の拡張コイル形状は、第1の構成の圧縮コイル形状よりも長い長さを有する。駆動要素130の温度が閾値を上回って上昇すると、駆動要素130の形状は圧縮コイル形状から拡張コイル形状へ変化し、したがって駆動要素130の長さが増加する。駆動要素130が拡張することによって、ピストン120に軸方向力が及ぼされて、シリンジ18のゴムストッパ23が薬剤チャンバの遠位端に向かって変位する。したがって、駆動要素130の構成が変化することによって、薬剤16がシリンジ18の針を通して投薬される。
【0041】
投薬機構110の加熱機構140は、投薬機構110を起動すると、駆動要素130の温度を上昇させるように構成される。加熱機構140は、注射器本体11の近位端に配置され、脆い膜143によって分離された第1の近位チャンバ141および第2の遠位チャンバ142を含む。第1のチャンバ141および第2のチャンバ142は、狭いアパーチャによって連結され、その上に膜143が位置する。
【0042】
第1の近位チャンバ141は第1の化学物質を収容し、第2の遠位チャンバ142は第2の化学物質を収容する。第1の化学物質および第2の化学物質は流体の形態であり、混合されると、化学物質が発熱反応して熱を発生させる。加熱機構140の膜143が破断されると、第1の化学物質が第2の化学物質と混合されて熱を発生させ、駆動要素130の温度を上昇させる。第2の遠位チャンバ142は、加熱機構140と駆動要素130との間の熱結合を改善するため、コイル状の駆動要素130の中央領域を通って延びるように配置された突出部分を含む。
【0043】
投薬ボタン150は、注射器本体11の近位端から突出するように配置され、投薬機構110を起動するために、注射器本体11に向かって軸方向に押すことができる。投薬ボタン150は注射器本体11の近位端を通ってその内部へ延び、投薬ボタン150の遠位端は、加熱機構140の第1のチャンバ141内に配設される。投薬ボタン150の遠位端は、加熱機構140の第1のチャンバ141の遠位端に向かって軸方向に延びる穿孔要素と、加熱機構140の第1のチャンバ141の内部断面と実質的に一致する案面を有するストッパ要素152とを含む。
【0044】
図3は、投薬ボタン150が注射器本体11に向かって軸方向に押されている、中間状態にある第1の実施形態の注射デバイス100を示している。穿孔要素151は、投薬ボタン150が押されるとデバイス100の遠位端に向かって変位され、加熱機構140の第1のチャンバ141と第2のチャンバ142との間の膜143を穿孔するように配置される。それに加えて、ストッパ要素152が、第1のチャンバ141の近位端から第1のチャンバ141の遠位端へ変位され、それによって実質的に全ての第1の化学物質が膜143を通して第2のチャンバ142内へ変位される。
【0045】
第1の化学物質が、加熱機構140の第2のチャンバ142内へ変位され、第2の化学物質と混合されることによって、発熱化学反応が起こり、熱が発生する。駆動要素130の、少なくとも加熱機構140の第2のチャンバ142の突出部分を取り囲むその一部分の温度は、閾値温度を上回って上昇する。
【0046】
第2のチャンバ142の突出部分は、駆動要素130を通って延びるように配置される。突出部分は、加熱機構140から駆動要素130への伝熱を改善する。突出部分は、駆動要素130の一部、またはその全長に沿って延びてもよい。あるいは、またはそれに加えて、第2のチャンバ142の突出部分は、駆動要素130の外側の周りに延びてもよい。第2のチャンバ142、特にその突出部分は、加熱機構140から駆動要素130への伝熱を改善するため、金属またはセラミック材料から形成することができる。
【0047】
図4は、最終状態にある第1の実施形態の注射デバイス100を示している。駆動要素130の温度は閾値を上回って上昇し、それによって駆動要素130が第1の構成から第2の構成へ変化する。第2の構成の拡張コイル形状は第1の構成の圧縮コイル構成よりも長い長さを有するので、駆動要素130は拡張する際にピストン120に軸方向力を及ぼす。シリンジ18のゴムストッパ23は、薬剤チャンバの遠位端に向かってピストン120によって変位され、それによって薬剤がシリンジ18の針を通して投薬される。
【0048】
第1の実施形態は、自動注射デバイスのための改善された駆動要素を提供し、それに加えて、投薬機構の機構は、注射前に薬剤を温める助けとすることができる。注射前に薬剤を温めてユーザの体温に近付けることによって、ユーザの快適さを改善することができる。発熱化学反応は、酸と塩基の、たとえばクエン酸と水酸化ナトリウムの発熱中和反応であってもよい。
【0049】
代替実施形態では、加熱機構は、チャンバに収容された単一の化学流体を含む。チャンバの位置および形態は、実質的に上述の第2のチャンバに関して記載したようなものである。穿孔要素は、化学流体が起動面と接触したときに化学流体の発熱過程をトリガする起動面を含む。投薬ボタンは、穿孔要素を、起動面を用いて脆い膜を通して第2のチャンバ内へ押し込むように構成され、それによって発熱過程から熱が発生する。
【0050】
チャンバに収容された化学物質は、たとえば、酢酸ナトリウム三水和物の過飽和溶液である。起動面は、過飽和溶液の発熱結晶化工程をトリガする。この加熱機構は、過飽和溶液が熱とそれに続く緩やかな冷却の影響下で改質される、複数の相変化を通して熱を発生させることができる、再充電可能なエネルギー源を提供する。したがって、実施形態による投薬機構は、再使用可能なデバイスの一部として実現することができる。
【0051】
図5を参照すると、第2の実施形態による注射デバイス200が記載されている。記載されない実施形態の要素は、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0052】
投薬機構210は、ピストン220と、駆動要素230と、加熱機構240とを含む。ピストン220は、シリンジ18のゴムストッパ23に連結され、駆動要素230は、シリンジ18内でピストン220と薬剤チャンバの近位端との間に配設される。
【0053】
駆動要素230は、実質的に第1の実施形態に関して記載したように、SMAから形成される。SMAは、圧縮コイル形状である第1の構成と、拡張コイル形状である第2の構成とを有する駆動要素230を形成する。第2の構成の拡張コイル形状は、第1の構成の圧縮コイル形状よりも長い長さを有する。
【0054】
駆動要素230の温度が閾値を上回って上昇すると、駆動要素230の形状は圧縮コイル形状から拡張コイル形状へ変化し、したがって駆動要素230の長さが増加する。駆動要素230が拡張することによって、ピストン220に軸方向力が及ぼされて、シリンジ18のゴムストッパ23が薬剤チャンバの遠位端に向かって変位する。したがって、駆動要素230の構成が変化することによって、薬剤16がシリンジ18の針17を通して投薬される。
【0055】
投薬機構220の加熱機構240は、投薬機構220を起動すると、駆動要素230の温度を上昇させるように構成される。加熱機構240は、外部デバイス(図示せず)内に配設された流体リザーバ、ヒータ、およびポンプと、流体リザーバを薬剤チャンバの近位端と連結するように配置された連結チューブ241とを含む。加熱した流体243またはガスが連結チューブ241を通って薬剤チャンバの近位端に入ると、駆動要素230の温度が上昇する。駆動要素230は加熱した流体243に浸漬され、それによって駆動要素230の温度を上昇させる速度が改善される。
【0056】
駆動要素230を加熱する流体243、あるいはガスは、流体リザーバに格納され、外部デバイス内のヒータによって加熱される。投薬機構を起動させると、ポンプが加熱した流体243を、連結チューブ241を通して薬剤チャンバの近位端へ押し込む。戻りチューブ242によって、加熱した流体243が外部デバイスへ流れて戻ることが可能になり、それにより、加熱した流体243の循環によって駆動要素230の温度を上昇させる速度が改善される。
【0057】
図6は、起動状態にある第2の実施形態の注射デバイス200を示している。駆動要素230は加熱した流体243に浸漬され、駆動要素230の温度は閾値を上回って上昇し、それによって駆動要素230が第1の構成から第2の構成へ変化する。第2の構成の拡張コイル形状は第1の構成の圧縮コイル構成よりも長い長さを有するので、駆動要素230は拡張する際にピストン220に軸方向力を及ぼす。シリンジ18のゴムストッパ23は、薬剤チャンバの近位端に向かってピストン220によって変位され、それによって薬剤がシリンジ18の針17を通して投薬される。
【0058】
図5および
図6は、シリンジ18および投薬機構210のみを含む注射デバイス200を示しているが、第2の実施形態の投薬機構210は、ハウジングと
図1~4に関して記載した他の任意の部品とを有する、注射デバイスの一部として実現することができる。
【0059】
したがって、第2の実施形態は、自動注射デバイスのための改善された駆動要素を提供することができ、それに加えて、投薬機構の機構は、注射前に薬剤を温める助けとすることができる。注射前に薬剤を温めてユーザの体温に近付けることによって、ユーザの快適さを改善することができる。
【0060】
いくつかの実施形態について図示し記載してきたが、その範囲が添付の特許請求の範囲によって定義される本発明から逸脱することなく、これらの実施形態において変更を加えることができることが、当業者には認識されるであろう。異なる実施形態の様々な構成要素は、実施形態の基礎を成す原理が適合可能であれば組み合わることができる。たとえば、第1の実施形態の化学物質は、発熱過程で熱を生成するために組み合わせることができる、任意の適切な化学物質であってもよく、固体状、液状、またはガス状であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1の化学物質は粉末状の酸化カルシウムまたは生石灰であってもよく、第2の化学物質は水であり、第1および第2の化学物質の組み合わせは、発熱化学反応によって熱を発生させて水酸化カルシウム溶液を形成する。あるいは、第1の化学物質は、塩化カルシウムまたは硫酸銅(II)などの脱水塩であってもよく、第2の化学物質は水であり、加熱機構は発熱再水和工程である。
【0062】
任意の実施形態の駆動要素は、記載したように、コイル状ばねとして形成することができ、または、駆動要素の温度が閾値を上回って上昇すると拡張する、たとえば蛇腹形状の、平坦な折畳みばねとして形成することができる。
【0063】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0064】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0065】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0066】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0067】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0068】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0069】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0070】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0071】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0072】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0073】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0074】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0075】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0076】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0077】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0078】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0079】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0080】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0081】
本明細書に記載するAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または除去)は、本発明の全範囲および精神から逸脱することなく行うことができ、本発明は、かかる修正ならびにそれらのあらゆる均等物を包含することを、当業者であれば理解するであろう。