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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ラック保護装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220107BHJP
   G08B 21/18 20060101ALI20220107BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220107BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G08B21/18
G01M99/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018561274
(86)(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 GB2017051442
(87)【国際公開番号】W WO2017203235
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2019-12-12
(31)【優先権主張番号】1609043.3
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513268058
【氏名又は名称】スリー スミス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】THREE SMITH GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Habergham Works, Ainley Industrial Estate, Elland, West Yorkshire, HX5 9JP United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ルーク
【審査官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0073431(US,A1)
【文献】特開2014-209086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361883(US,A1)
【文献】特開2014-064920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 - 17/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックの構成要素に取り付けるラック保護装置であって、
前記ラック保護装置は、ハウジングと振動モニタとを備え、
前記振動モニタは、ラックの構成要素から前記ハウジングを介して伝わる振動を記録するように構成され、
前記ラック保護装置は、衝撃によってラックに損傷がないか点検する必要がある場合にユーザに警報を出す警報装置を備え、
前記振動モニタは、ピーク周波数が所定時間、最小プリセットレベルと最大プリセットレベルとの間にある場合、軽度の衝撃であると判定し、前記警報装置は、軽度の衝撃が所定回数を超えた場合、ラックに損傷がないか点検するようユーザに警報を出すように構成され、
前記振動モニタは、前記周波数が所定時間、最大プリセットレベルを超えた場合、重度の衝撃が生じたと判定し、前記警報装置は、ラックに損傷がないか点検するようユーザに警報を出すように構成され、
前記振動モニタは、前記周波数が前記最小プリセットレベルを超えた後の最初の期間を無視するように構成される、ラック保護装置。
【請求項2】
分析用に振動記録を記憶し送信するためのメモリを含む、請求項1に記載のラック保護装置。
【請求項3】
前記警報装置は、前記ハウジング内に収容された光送信器を含む、請求項1又は2に記載のラック保護装置。
【請求項4】
前記光送信器は、異なる警報に違いを与えるために、一連の異なる警報信号を含む、請求項3に記載のラック保護装置。
【請求項5】
前記装置は、前記装置を前記ラックに取り付けるための取り付け手段を含み、前記取り付け手段は、少なくとも1つの磁石を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のラック保護装置。
【請求項6】
前記装置は、前記装置が傾けられたことを検出した場合、前記警報装置にタンパー信号を送信させるように構成された傾斜センサを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のラック保護装置。
【請求項7】
前記装置は、リセット手段を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のラック保護装置。
【請求項8】
前記リセット手段は、入射光に応答して電気信号を生成するように構成された光検出器を含む、請求項7に記載のラック保護装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のラック保護装置をラック脚部に取り付け、
前記ラック保護装置にラックの振動を監視させ、軽度の衝撃が検出された場合、又は重度の衝撃が検出された場合に警報を出させる
ステップを含み、
軽度の衝撃は、前記振動モニタによって検出された振動が所定時間、最小プリセットレベルと最大プリセットレベルの間にある事象に関連し、
重度の衝撃は、前記振動モニタによって検出された振動が所定時間、最大プリセットレベルを超える事象に関連する、ラックを保護する方法。
【請求項10】
前記ラック保護装置は、磁力によって前記ラックに取り付けられ、ラックから取り外すためには前記装置を傾ける必要があり、
前記装置は、装置がある角度傾けられるとタンパー警報を発するように構成された傾斜センサを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これに限定されるものではないが、例えば倉庫内での安全スキームの一部として、ラックに取り付けることが可能なラック保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫環境においてパレット及び他の製品の保管のための棚を提供するラックが、よく知られている。一般にラックは、スチールの支柱を含むフレームから形成されるが、複数の棚を有して数メートルの高さになることは珍しくない。フォークリフトトラック及び他の積み降ろしシステム及び車両が、棚に対してパレットを積み降ろしするために使用される。忙しい倉庫では、1日に100回に至るほど棚に対して積み降ろしが行なわれる。
【0003】
スチールの支柱からなるラック脚部は、フォークリフトや降ろしシステムと衝突して損傷しやすい。重度の衝撃によって、ラックの構造的一体性が著しく損なわれる可能性がある。より軽い程度の衝撃が複数回ある場合も同様である。従って倉庫では、ラックの損傷を検査する定期的な点検が行われる。構造的一体性が危険な状態になる前に、損傷したラックを検出し、修理し、又は交換する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし定期的な点検を行っても、重度の衝撃による損傷は常に視覚的に検出できるとは限らず、複数回のより軽い程度の衝撃による影響も、目視点検で評価することはできない。更にラック脚部は、損傷からの保護を目的とした保護具によって守られていることが多い。用途に応じて保護具は簡単に取り外すことができず、目視点検はより一層複雑なものになっている。
【0005】
衝突の報告を、目視点検の補助に用いることができる。これは、フォークリフトのオペレータによる、衝突の箇所と種類の報告に依存している。しかし、衝突を起こしたオペレータが、認知される影響(perceived repercussions)を避けるために、過小報告をすることや、誤った箇所を報告することも知られている。
【0006】
従って、上記又はその他の欠点の少なくとも1つを克服するために、ラックへの衝突の報告及び監視を支援するための補助を提供する必要がある。衝撃箇所を記録するラック保護装置をラックに設けることが、更なる目的である。オペレータの入力を必要とせずに衝撃箇所を記録するラック保護装置を提供することが、更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、添付の請求項に記載の装置及び方法が提供される。本発明の他の特徴は、従属請求項及びそれに続く説明から明らかになるであろう。
【0008】
ラック保護装置は、ハウジングと振動モニタとを備える。振動モニタは、ラックの構成要素を介して伝わる振動を記録するように構成される。ハウジングは、衝撃によってラックに損傷がないか点検する必要がある場合、ユーザに警報を出す警報装置を含む。振動モニタは、各衝撃の周波数と時間とを記録する。振動モニタは、軽度の衝撃の回数をカウントして記録するメモリを含む。振動モニタは、ピーク周波数が所定時間、最小プリセットレベルと最大プリセットレベルとの間にある場合、軽度の衝撃であると判定する。軽度の衝撃が所定回数を超えた場合、警報装置は、ラックに損傷がないか点検するようユーザに警報を出すように構成される。周波数が所定時間、最大プリセットレベルを超えた場合、振動モニタは、重度の衝撃が生じたと判定し、警報装置は、ラックに損傷がないか点検するようユーザに警報を出すように構成される。
【0009】
振動モニタは、周波数が最小プリセットレベルを超えた後の初期を無視するように構成される。衝撃振動の初期を無視することにより、誤った警報を減らすことが可能であることが判明した。例えば誤った警報は、棚への積み込みにより発生した振動によって生じうる。積み込み時の衝撃は垂直方向に、構造的損傷を引き起こす可能性のある車両からの衝撃は水平方向に作用する。また、棚への積み降ろしによる振動は、ラックの積み込みレベル及び棚の高さに依存しうる。初期振動を無視することにより、振動モニタは、潜在的な構造的損傷と通常の積み込みによる振動とをより容易に区別することができる。
【0010】
不要な警報は、無視される可能性が高く、ラック保護装置の有効性を低下させるため、誤った警報を最小限に抑えることが重要である。
【0011】
振動履歴が分析されて点検方式の生成に用いられるように、メモリは、中央制御コンピュータと通信可能であってもよい。更にラック保護装置は、フォークリフトトラック又は積み込み装置内の送信器又はセンサと協働する検知手段を含んでいてもよい。将来の識別のために、近くの装置の衝突時の位置を記録できるように、ラック保護装置は検知手段を含んでいてもよい。ある実施形態では、軽度及び重度の衝撃を判定する更なる基準として、近くの車両の位置を、記録された振動と相互参照する(crossed referenced)ことができる。
【0012】
警報は、視覚的警報、可聴的警報、又は二次装置に送信される警報信号であってもよい。例示的な実施形態では、警報は視覚的警報である。ここで警報装置は、ハウジング内に収容された光送信器を含む。光送信器は、異なる種類の警報に違いを与えるために、一連の異なる警報信号を有していてもよい。軽度の衝撃の警報や重度の衝撃の警報と同様に、警報装置は、装置の電力が低い場合又は装置が干渉を受けた(例えば装置がラック位置から取り外された)場合にも、警報を生成してもよい。光送信器は、異なるパルスパターンを送信することによって、又は異なる色を送信することによって、又はその2つの組み合わせを用いて、警報に違いを与えてもよい。例示的な実施形態では、光送信器は、光送信器の列を含む。これに加えて、又はこれに代えて、列内で作動される特定の光送信器の位置を用いて、信号に違いを与えてもよい。
【0013】
装置は、装置をラックに取り付けるための取り付け手段を備えていてもよい。例示的な実施形態では、取り付け装置は、磁石を含む。好ましくは磁石は、装置を傾けてラックから引き剥すべく傾斜するように、ラックに対して強い引力を有する。ここで、装置は傾斜センサを含む。傾斜センサは、装置が傾けられたことを検出すると、警報装置にタンパー信号を送信させるように構成されている。その結果、ユーザが装置を移動しようとすると、装置は警報を送信するように構成される。
【0014】
この装置は、リセット手段を含む。好適にはリセット手段は、関係者のみがアクセスできるように制限される。例示的な実施形態では、装置は、光検出器を含む。光検出器は、入射光に応答して電気信号を生成する。ここで光検出器は、所定の光入力信号に応答してリセット信号を生成するように構成される。所定の入力光信号は、好ましくは固有のパルスシーケンスである。各パルスは強度及びパルス周期を有する。好適には、光検出器は、携帯電話等の携帯機器のフラッシュ又は光機能によって生成された光周波数を検出するように構成される。このようにして、関係者にリセット信号を提供し、携帯機器を装置の近くに保持し起動してリセット信号を出すようにすることで、ラックに取り付けられている間に装置をリセットするようにしてもよい。
【0015】
本発明のより良い理解のために、そして本発明の実施形態がどのように実施されるかを示すために、添付の概略図を例としてここに参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ラック保護装置の斜視図である。
図2図1の正面図及び側面図を示す。
図3図1の後方斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照して説明すると、ラック保護装置10が提供される。ラック保護装置10は、ハウジング20を備えている。ハウジングは、後部22に接続可能な前部21を有しており、分離することで様々な構成要素を内部に設置できるようになっている。ハウジングは、全体として細長い。細長い形状は、装置に配向性を与える。ここでハウジングは、ハウジングの上部又は底部についての表示を含んでいてもよい。このようにハウジングは、ラックに取り付けた装置の向きに関する視覚的表示を提供し、ラック脚部において概ね整列した位置にラックを設置することが可能となる。例えば、装置の取り付け対象となるラック脚部の軸に沿って、細長い形状が延びるように配置される。
【0018】
ハウジング前部21は、窓部分23、24、25を備えている。窓部分は、光が窓部分を透過できるように、少なくともある特定の波長に対して光学的に透明である。窓部分は、光送信器又は光受信器が設置されるハウジング内の領域に対応することが理解されよう。
【0019】
ハウジング後部は、装置をラックに取り付けるための磁石を設置する箇所を含む。取り付け箇所は、当技術分野で知られているように、磁石をハウジングに機械的に固定するための凹部を含んでいてもよい。ハウジングは、複数の磁石を有するものとして示されている。ここで複数の磁石は、装置をラックから取り外す際に操作者が装置に対して行う引き剥し動作を促すように、離間されている。ここで引き剥し動作により装置が傾斜し、後に説明するように、これを用いてタンパー信号を生成することができる。
【0020】
ハウジング20内に振動モニタが設置される。振動モニタは振動センサを含む。振動センサは、ハウジング後部に適切に取り付けられ、ラックからハウジング後部に伝達される振動を記録するように構成される。振動センサは当技術分野において公知であり、例示的な実施形態では、単軸加速度計が使用されている。単軸加速度計は、ハウジング後部に沿って特定の方向に配向され、好ましくはハウジングの長手方向に配向される。振動モニタは、PCBによって一緒に接続されたメモリ及びコントローラを含む。メモリは、検出された各衝撃の周波数及び振動を記録する。衝撃は、最小周波数閾値を超えるピーク読取値に基づいて検出される。振動モニタは、軽度の衝撃と重度の衝撃とを識別する。軽度の衝撃とは、個々の衝撃では損傷が発生するには不十分かもしれないが、複数の衝撃で損傷が発生しうる、有意ではあるが比較的小さい力である。重度の衝撃とは、一度の衝撃で損傷が発生しうるのに十分な力による衝撃である。振動モニタは、重度の衝撃が検出された場合、又は軽度の衝撃がある時間にわたって所定回数を超えた場合に、警報を発する。
【0021】
例示的な実施形態では、衝撃モニタは、所定時間にわたって所定周波数を超えた振動周波数に基づいて、軽度の衝撃と重度の衝撃とを識別する。振動の周波数が所定時間、最小周波数と最大周波数との間にある場合、軽度の衝撃であると判定する。振動周波数が所定時間、最大の所定周波数を超える場合、重度の衝撃であると判定する。軽度の衝撃か重度の衝撃かを判定するにあたって、初期振動は無視する。すなわち、記録された周波数が所定の閾値を超える期間を、初期の振動ピーク後に開始する。これにより振動モニタは、ラックへの通常の荷積みによって生じた振動パターンを、概して無視することができる。
【0022】
例示的な実施形態では、装置は光送信器を含む。光送信器は、振動モニタの判定に基づいて光学的警報を発するように構成される。好適には光送信器は、光送信器列を含む。図に示すように、ハウジングの両側に複数列を設けてもよい。送信器の各列は、複数の送信器を離間して含んでいてもよい。各列の個々の送信器の1つ以上は、異なる色の送信器を含んでいてもよい。光送信器は、振動モニタの出力に応じて、前記又は各送信器を駆動して信号を発する駆動手段を備える。更に光送信器は、干渉(tamper)状態を示す又は装置が低電力であることを示す代替信号を出すように構成されてもよい。例えば装置は、ハウジング内に収容された電池手段を含み、光送信器は電力が低い場合に警報を発する。更に光送信器は、装置が正常な動作パラメータにあることを示す警報を発してもよい。
【0023】
この装置は、傾斜モニタを備えていてもよい。傾斜モニタは、当技術分野で知られており、装置が所定の角度を超えて傾けられるとそれを検出するように構成される。傾斜モニタは、装置が所定の程度を超えて傾けられた場合に、警報を発するように構成される。その結果、装置は、例えば装置をラックから取り外す際に装置が傾いた場合に、ユーザに対して警報を発することができる。
【0024】
警報が発せられ対処された後、装置をリセットすることができる。ここで装置は、リセット手段を含む。好適にはリセット手段は、関係者のみが装置をリセットできるように制限される。更に装置は、取り付け作業中にタンパー警報が起動しないように、ラックの所定位置にある間にリセットできることが理想的である。例示的な実施形態では、リセット手段は、ハウジング内に設置された光検出器を含む。光検出器は、図面中、ハウジングの上部領域の窓の後ろに設置される。光検出器は、特定の光パターンを検出し、特定の光信号を検出するとリセット信号を生成するように構成される。例えば、特定の光信号は、所定の一連の光パルスであってもよい。例示的な実施形態によれば、光検出器は、携帯電話等のモバイル装置によって提供される光によって生成可能な光周波数を検出するように構成される。
【0025】
幾つかの好ましい実施形態を示して説明したが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変がなされ得ることは、当業者には理解されるであろう。具体的には保護装置は、ラック以外の衝撃についてユーザに対して警報を発するように構成してもよい。
図1
図2
図3