(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】乾癬性関節炎の診断及び治療
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20220127BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20220127BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220127BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220127BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220127BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220127BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220127BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220127BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6876 Z
A61P17/06 ZNA
A61P19/02
A61P29/00
A61K31/7105
G01N33/50 P
C12N15/113 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019136489
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2019-11-19
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516070553
【氏名又は名称】チャン グァン メモリアル ホスピタル,カオシュン
【住所又は居所原語表記】No.123,Dapi Rd.Niaosng Dist,Kaohsiung City 83301,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リン,シャン-フン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チン-フン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,チャン-チュン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0202973(US,A1)
【文献】国際公開第2010/003420(WO,A2)
【文献】特表2009-532392(JP,A)
【文献】特表2010-529847(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104278030(CN,A)
【文献】WADE S., et al.,MIR-125A DECREASED IN PSA SYNOVIUM AND PERIPHERAL BLOOD CD14+ MONOCYTES AND CORRELATES TO JOINT ANGIOGENESIS ,Annals of the Rheumatic Diseases (2016) Vol.75, Suppl.2, p.86 (OP0083)
【文献】IUBMB Life (2015) Vol.67, No.12, pp.923-927
【文献】PLoS ONE (2007) Vol.2, No.7, e610, pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/686
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 29/00
A61K 45/00
A61K 31/7105
G01N 33/50
C12N 15/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者のサンプル中のmiR-146a-5p及びmiR-941からなる群から選択される少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定するステップを含み、
前記サンプル中の前記少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが、乾癬性関節炎のないサンプル中の対応するmiRNAの発現レベルより高い場合、前記被験者が乾癬性関節炎を罹患または発症リスクが存在することの指標となることを特徴とする、被験者の乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)を検出または発症リスクを予測するためのインビトロ方法。
【請求項2】
前記miRNAの発現レベルは、リアルタイムPCR(real-time PCR)によって検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記miRNAの発現レベルは、配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも90%
相補的なヌクレオチド配列
からなるオリゴヌクレオチドプローブによって検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルはCD14+単球(monocyte)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルはCD14+単球に由来する破骨細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
治療上有効量の配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%
相補的なヌクレオチド配列
からなるmiR-146a-5p阻害剤、または治療上有効量の配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも90%
相補的なヌクレオチド配列
からなるmiR-941阻害剤を含む、被験者の乾癬性関節炎の治療剤。
【請求項7】
前記miR-146a-5p阻害剤は配列番号5のヌクレオチド配列と100%同一のヌクレオチド配列
からなる、請求項6に記載の治療剤。
【請求項8】
前記miR-941阻害剤は配列番号4のヌクレオチド配列と100%同一のヌクレオチド配列
からなる、請求項6に記載の治療剤。
【請求項9】
被験者中の乾癬性関節炎の治療の有効性を判定するためのキットであって、
前記キットは、miR-146a-5p及びmiR-941からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定するための剤を含み、
乾癬性関節炎の治療の有効性を判定することは、前記治療の少なくとも一部を前記被験者に提供する前に、前記被験者から得られた第1サンプル中と、前記治療の少なくとも一部を前記被験者に提供した後に、前記被験者から得られた第2サンプル中と、におけるmiR-146a-5p及びmiR-941からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを比較することにより実施され、
前記第2サンプル中の少なくとも1つのmRNAの発現レベルが前記第1サンプル中の対応するmRNAの発現レベルと比較して低いことは、前記治療が乾癬性関節炎に有効であることの指標である、キット。
【請求項10】
前記サンプルはCD14+単球である、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記サンプルはCD14+単球に由来する破骨細胞である、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
前記剤はリアルタイムPCRである、請求項9に記載のキット。
【請求項13】
前記剤は配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも90%
相補的なヌクレオチド配列
からなるオリゴヌクレオチドプローブである、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月24日に出願された米国出願第62/702,551号の利益を主張するものであり、この内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
乾癬性関節炎(psoriatic arthritis, PsA)は、乾癬に関連した進行性関節症(progressive arthropathy)を伴う慢性炎症性疾患です。乾癬患者の約30%が乾癬性関節炎を患っていると推定された。通常、皮膚症状(manifestations)はPsAの発症前に平均10年先行している。Haroonら(Annals of the rheumatic diseases 2015;74(6):1045-50)は、6か月以上の診断遅延が、PsA患者の放射線検査結果および機能検査結果の不良の一因であると報告した。よって、永続的な関節の変形と破壊を防ぐには、早期診断と迅速な介入が不可欠となる。現在、PsAの診断は主に臨床的表現型に基づいている。しかし、現在ではまだ、PsAの早期発見に利用できる標準化された信頼できる評価方法はありません。その結果、PsAを罹患した多くの乾癬患者が正確的に診断されず、治療結果が不十分となる(Veale DJ ら、Lancet 2018;391 (10136):2273-84を参照)。
【0003】
マイクロRNA(MicroRNAs,miRNAs)は進化的に保存された、通常21~25ヌクレオチド長の非コードRNA分子であり、mRNAの3’-非翻訳領域(3’-UTR)に結合することにより、タンパク質の翻訳を抑制またはmRNAの分解を促進するように機能する(Griffiths-Jones S (2004). The microRNA Registry. Nucleic acids research 32: D109-111を参照)。現在miRNAに関するほとんどの研究は基本レベルのものであり、乾癬性関節炎での臨床応用を確立するにはさらなる研究が必要となる。
【0004】
よって、乾癬性関節炎の診断および発症リスクを予測するための非侵襲的且つ便利な方法および/または乾癬性関節炎の治療が必要であり、本発明はこれらのニーズおよび他のニーズを満たす。
【発明の概要】
【0005】
一実施例では、本発明は被験者の乾癬性関節炎を検出または発症リスクを予測するための方法を提供し、その方法は、被験者のサンプル中にmiR-146a-5p(配列番号1)及びmiR-941(配列番号2)からなる群から選択される少なくとも一つのmiRNAの発現レベル(expression level)を測定するステップとを含み、そのうち、miRNAはサンプルから抽出(extracted)されたCD14+単球(monocyte)または破骨細胞(osteoclast)で表し、且つサンプル中の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが、乾癬性関節炎のないサンプル中の少なくとも一つの対応のmiRNAの発現レベルより高い場合、被験者が乾癬性関節炎を罹患または発症リスクが存在することを表す。
【0006】
別の実施例では、本発明は被験者の乾癬性関節炎を検出及び乾癬性関節炎を治療する方法を提供し、その方法は以下のステップを含む:(a)被験者のサンプル中にmiR-146a-5p(配列番号1)及びmiR-941(配列番号2)からなる群から選択される少なくとも一つのmiRNAの発現レベル(expression level)を測定し、そのうち、miRNAはサンプルから抽出(extracted)されたCD14+単球または破骨細胞で表し、且つサンプル中の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが、乾癬性関節炎のないサンプル中の少なくとも一つの対応のmiRNAの発現レベルより高い場合、被験者が乾癬性関節炎を罹患または発症リスクが存在することの指標となる;及び(b)被験者に乾癬性関節炎を治療するための治療剤を投与する。
【0007】
本発明は更に被験者の乾癬性関節炎を検出または発症リスクを予測するためのキットを提供し、そのキットは、(a)被験者のサンプルからCD14+単球を抽出するための少なくとも1つのマイクロビーズ;及び(b)miR-146a-5p及びmiR-941からなるグループから選択される少なくとも1つのmiRNAの配列決定または発現レベルを測定するための薬剤、を含む。
【0008】
例示的な一実施例では、前記キットは更に培地を含み、前記培地はM-CSF、RANKL及びTNF-αを含む。
【0009】
本発明はまた、乾癬性関節炎を治療する方法を提供し、その方法は、配列番号1と少なくとも90%同一のmiR-146a-5p阻害剤、または配列番号2と少なくとも90%同一のmiR-941阻害剤を、必要とする被験者に有効量を投与するステップを含む。
【0010】
本発明はまた、被験者中の乾癬性関節炎の治療の有効性を判断する方法を提供し、その方法は、(a)前記治療の少なくとも一部を前記被験者に提供する前に、前記被験者から得られた第1サンプルから抽出されたCD14+単球のmiR-146a-5p及びmiR-941からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定するステップ;及び(b)前記治療の少なくとも一部を前記被験者に提供した後に、前記被験者から得られた第2サンプルから抽出されたCD14+単球の前記ステップ(a)の少なくとも一つの対応のmiRNAの発現レベルを測定するステップ、を含み、前記第1サンプルから抽出されたCD14+単球の対応のmiRNAの発現レベルと比較した、前記第2サンプルから抽出されたCD14+単球の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルの低下は、前記治療が乾癬性関節炎に有効であることの指標となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の例示的な実施例は、以下の図を参照して以下で詳細に説明される。
【
図1-1】
図1(A)は、正常対照(normal control、NC)および乾癬性関節炎(PsA)患者から抽出されたCD14+単球におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す棒グラフである。
図1(B)は、miR-146A-5P及びmiR-941のΔCt(delta Ct)値を示す棒グラフである。
図1(C)及び
図1(D)は、正常対照(CD14+ NC)及び乾癬性関節炎患者(PsA CD14+)から抽出されたCD14+単球、及び正常対照(CD14- NC)及び乾癬性関節炎(PsA CD14-)患者の末梢単核細胞(peripheral mononuclear cells)におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す棒グラフである。
【
図1-2】
図1(A)は、正常対照(normal control、NC)および乾癬性関節炎(PsA)患者から抽出されたCD14+単球におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す棒グラフである。
図1(B)は、miR-146A-5P及びmiR-941のΔCt(delta Ct)値を示す棒グラフである。
図1(C)及び
図1(D)は、正常対照(CD14+ NC)及び乾癬性関節炎患者(PsA CD14+)から抽出されたCD14+単球、及び正常対照(CD14- NC)及び乾癬性関節炎(PsA CD14-)患者の末梢単核細胞(peripheral mononuclear cells)におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す棒グラフである。
【
図1-3】
図1(A)は、正常対照(normal control、NC)および乾癬性関節炎(PsA)患者から抽出されたCD14+単球におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す棒グラフである。
図1(B)は、miR-146A-5P及びmiR-941のΔCt(delta Ct)値を示す棒グラフである。
図1(C)及び
図1(D)は、正常対照(CD14+ NC)及び乾癬性関節炎患者(PsA CD14+)から抽出されたCD14+単球、及び正常対照(CD14- NC)及び乾癬性関節炎(PsA CD14-)患者の末梢単核細胞(peripheral mononuclear cells)におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す棒グラフである。
【
図2】
図2のAとBは、治療前及び治療6か月後の11人のPsA患者の圧痛関節と腫脹した関節の数を示す。
図2のCとDは、正常対照(NC)、11人のPsA患者の治療前(PsA(0))、及び治療6か月後(PsA(28週間))のサンプルから抽出されたCD14+単球におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルを示す。
【
図3】
図3(A)及び
図3(B)は、正常対照(NC)、11人のPsA患者の治療前(PsA(0))、及び治療6か月後(PsA(28週間))のCD14+単球由来の破骨細胞におけるmiR-941およびmiR-146A-5Pの発現レベルを示す棒グラフである。
【
図4】
図4(A)ないし
図4(B)は、miRトランスフェクション(transfection)なし(
図4(A))、陰性対照miRNAによるトランスフェクション(
図4(B))、miR-941阻害剤(
図4(C))またはmiR-146a-5p阻害剤(
図4(D))がCD14+単球由来の破骨細胞の量に対する影響を示す顕微鏡画像である。
図4(E)はmiRトランスフェクション(transfection)なし(
図4(A))、陰性対照miRNAによるトランスフェクション(
図4(B))、miR-941阻害剤(
図4(C))またはmiR-146a-5p阻害剤(
図4(D))がCD14+単球由来の破骨細胞の量に対する影響を示す棒グラフである。
【
図5】
図5(A)及び
図5(B)は、正常対照(NC)、関節炎のない乾癬患者(PsO)及び乾癬性関節炎患者から抽出されたCD14+単球におけるmiR-146a-5p及びmiR-941の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語「a」および「an」は、一つまたは複数(即ち、少なくとも一つ)という意味で使用される。
【0013】
特許請求の範囲において、「または(or)」という用語は一般に、その内容が別途明らかに示されていない限り、本開示には「および/または(and/or)」を含む意味において用いられる。
【0014】
本明細書及び請求項で使用される用語「含む」、「有する」または「含有」は、包括的(inclusive)またはオープンエンド(open-ended)の用語であり、且つ追加、列挙されていない要素または方法ステップを排除するものではありません。
【0015】
本明細書で使用される「患者(patient)」または「被験者(subject)」は、乾癬性関節炎を罹患と診断され、疑われ、または乾癬性関節炎の発症リスクを有する哺乳類被験者を指す。例示的な被験者は、乾癬性関節炎を発症する可能性のあるヒト、類人猿、犬、豚、牛、猫、馬、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類及び他の哺乳類であり得る。
【0016】
本明細書で互換的に使用されるように、「マイクロRNA(microRNA)」、「miR」、または「miRNA」は、miR遺伝子からの未処理(例えば、前駆体)または処理済み(例えば、成熟)のRNA転写物(transcript)を指す。マイクロRNAは、真核生物の遺伝子発現を負に調節し、遺伝子調節因子(regulators)の新しいクラスを構成する内因性の非コーディング一本鎖RNA(Chuaら、(2009) Curr. Opin. Mol. Ther. 11:189-199を参照)である。個々のmiRNAはさまざまな生物で同定および配列決定されており、名前が付けられている。本明細書では、miRNAの名前とその配列を提供する。
【0017】
本明細書のすべての数字は、「約」によって修飾されたものとして理解され得る。本明細書で使用される「約」という用語は、測定可能な値、持続時間など、または範囲を指す場合、そのような変動はmiRNAレベルの発現に適しているため、特に指定しない限り、指定値から±10%の変動を包含することを意味する。
【0018】
「より高い(higher)」miRNA発現は相対的な用語であり、サンプル中のmiRNA発現レベルと、乾癬性関節炎がないことが知られている健常者の参照プール(すなわち、正常対照)からのmiRNA発現レベルとの比較により判断できる。
【0019】
本明細書で使用される「サンプル(sample)」はmiRNAを含むサンプルを指す。サンプルは目標miRNAの存在及び/または発現レベルの検出に利用できる。正常対照と比較してmiRNAの差次的発現を含む生体液および器官が最適と予測されるが、本発明が請求されている主題の方法で使用されるものは抽出されたCD14+単球である。一部の実施例では、サンプルは例えば、血液またはその成分など、比較的簡単に入手できるものである。サンプルの非限定的な例には、体液(例えば、末梢血)、細胞(例えば、CD14+単球または破骨細胞)または組織(例えば、生検標本または関節液)が含まれる。
【0020】
miRNAの発現レベルの測定とは、サンプルに存在するmiRNAの量を定量化すること。特定のmiRNAまたは任意のmiRNAの発現レベルの測定は、リアルタイムPCR(real-time PCR)、ノーザンブロット(Northern blot)分析など、当業者に知られているまたは本明細書に記載されている任意の方法を使用して達成することができる。miRNAの発現レベルの測定には、miRNAの成熟型またはmiRNA発現と関連する前駆体型の発現の測定が含まれる。
【0021】
特定の実施例において、少なくとも一つのmiRNAの発現レベルは、ノーザンブロット分析を使用して定量される。例えば、核酸抽出バッファーの存在下でのホモジナイゼーションとそれに続く遠心分離により、細胞から全細胞RNAを精製できる。核酸が沈殿し、DNase処理および沈殿によりDNAが除去される。次に、RNA分子は、標準的な技術に従ってアガロースゲルでのゲル電気泳動(gel electrophoresis)によって分離され、ニトロセルロースフィルターに移される。次に、RNAは加熱によりフィルターに固定(immobilized)されます。特定のRNAの検出と定量は、問題のRNAに相補的な適切に標識されたDNAまたはRNAプローブを使用して行われる。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al., eds., 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, Chapter 7を参照。
【0022】
いくつかの実施例では、マイクロアレイの使用が望ましい。マイクロアレイは、複雑な生化学サンプルの並行分析を可能にする核酸、タンパク質、小分子、細胞またはその他の物質の微視的、規則的な配列です。この技術は、サンプル中の相補鎖(complementary strands)を見つけてハイブリダイズするように、既知の配列情報を持つ多くのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをプローブとして提供し、それによって選択的結合により相補鎖を捕捉する。プローブは、標的miRNA配列の少なくとも一部に対して相補的または本質的に相補的であるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を含む。ここの「相補的」とは、2つの核酸鎖の領域間の配列相補性の広い概念を指す。第1核酸領域のアデニン残基は、残基がチミンまたはウラシルである場合、第1領域と逆平行である第2核酸領域の残基と特異的な水素結合(「塩基対合(base pairing)」)を形成できることが知られている。同様に、第1核酸鎖のシトシン残基は、残基がグアニンである場合、第1鎖と逆平行である第2核酸鎖の残基と塩基対合することができることが知られている。2つの領域が逆平行に配置され、且つ第1領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2領域の残基と塩基対合することができる場合、核酸の第1領域は、同じまたは異なる核酸の第2領域に相補的である。好ましくは、第1領域は第1部分を含み、第2領域は第2部分を含み、それにより、第1および第2部分が逆平行に配置される場合、第1部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%は、第2部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。より好ましくは、第1部分のすべてのヌクレオチド残基は、第2部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
【0023】
例えば、miRNAのマイクロアレイ分析は、当該分野で公知の任意方法に従って達成され得る。一実施例では、RNAはサンプルのCD14+単球などの細胞から抽出され、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して全RNAから低分子RNA(18~26ヌクレオチド)をサイズ選択される。オリゴヌクレオチドリンカーはsmall RNAの5’および3’末端に結合し、得られたライゲーション生成物は、10サイクルの増幅を伴うRT-PCR反応のテンプレートとして使用される。センス鎖PCRプライマーには、その5’末端にフルオロフォアが付いているため、PCR産物のセンス鎖が蛍光標識されます。そのPCR産物は変性してから、マイクロアレイにハイブリダイズされる。アレイ上の対応するmiRNAキャプチャープローブシーケンスに相補的なターゲット核酸と呼ばれるPCR産物は、キャプチャープローブが貼付されているスポットに塩基対を介してハイブリダイズされる。そしてそのスポットは、マイクロアレイレーザースキャナーを使用して励起すると蛍光を発する。各スポットの蛍光強度は、特定のmiRNAの発現レベルの評価に使用する多くの陽性及び陰性対照及びアレイデータ正規化方法を使用して、特定のmiRNAのコピー数に関して評価されます。本明細書に開示されるmiRNAに関して、プローブは、標的miRNAまたはポリヌクレオチド配列と100%相補的であり得る。しかしながら、プローブは、特異的に標的ポリヌクレオチドに結合してサンプルからそれを捕捉できる限り、標的ポリヌクレオチドの全長に沿って標的ポリヌクレオチドに必ずしも完全に相補的である必要はない。いくつかの実施例において、プローブは、配列番号1または配列番号2と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一のポリヌクレオチドに相補的である。
【0024】
いくつかの実施例では、定量的RT-PCRの使用が望ましい。定量的RT-PCR(qRT-PCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応の産物の量を迅速に測定するために使用されるポリメラーゼ連鎖反応の修正である。qRT-PCRは一般、miRNAなどの遺伝子配列がサンプル内に存在するかどうか、及び存在する場合のサンプル内のコピー数を判断する目的で使用されている。miRNAを含む核酸分子の発現を判断できるPCRの任意の方法は、本開示の範囲内に含まれる。当該分野で知られているqRT-PCR法にはいくつかのバリエーションがあり、アガロースゲル電気泳動によるSYBRグリーン(二本鎖DNA色素)の使用、及び蛍光レポータープローブ(fluorescent reporter probe)の使用が含まれますが、これらに限定されない。
【0025】
乾癬性関節炎及び乾癬性関節炎のない被験者で差次的に発現されるmiRNAの同定により、この情報をさまざまな方法で使用できる。例えば、特定の治療計画を評価することができる(例えば、治療が乾癬性関節炎の被験者に有効かどうかを判断するように)。乾癬性関節炎の診断は、サンプルから抽出されたCD14+単球または破骨細胞のmiRNAの発現レベルを、非乾癬性関節炎サンプルの抽出されたCD14+単球または破骨細胞の既知のmiRNA発現プロファイルと比較することにより、実施または確認できます。さらに、一つまたは複数の診断または予測miRNAレベルの複数の測定を行うことができ、発現レベルの一時的な変化を使用して、診断、予後(prognosis)または再発(relapse)を判断することができる。例えば、特定のmiRNAレベルを最初の時間に測定し、そして第2時間に再び測定することができる。いくつかの実施例では、初回から2回目までのmiRNAレベルの増加は、乾癬性関節炎、または所定の予後の診断となり得る。同様に、初回から2回目までのmiRNAレベルの低下は、乾癬性関節炎の寛解(remission)、または所定の予後を示す可能性がある。さらに、一つまたは複数のmiRNAレベル変化の程度は、乾癬性関節炎の重症度に関連する可能性がある。
【0026】
別の実施例では、被験者中の乾癬性関節炎の治療の有効性を判断する方法を提供し、その方法は、(a)治療の少なくとも一部を被験者に提供する前に、被験者から得られた第1サンプルから抽出されたCD14+単球のmiR-146a-5p及びmiR-941からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定するステップ;及び(b)治療の少なくとも一部を被験者に提供した後に、被験者から得られた第2サンプルから抽出されたCD14+単球の前記ステップ(a)の少なくとも一つの対応のmiRNAの発現レベルを測定するステップを含み、そのうち、第1サンプルから抽出されたCD14+単球の対応のmiRNAの発現レベルと比較した、第2サンプルから抽出されたCD14+単球の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルの低下は、その治療が乾癬性関節炎に有効であることの指標となる。例示的な一実施例では、前記サンプルは抽出されたCD14単球であり、miRNAはmiR-146a-5p、miR-941またはその組み合わせである。
【0027】
図1(C)および
図1(D)を参照して、特定の理論に拘束されることなく、miR-146a-5p及びmiR-941の発現レベルは、抽出されたCD14+単球またはPsA患者の破骨細胞でのみ上昇し、PsA患者の末梢単核細胞では上昇しないことがわかる。故に、CD14+単球以外の末梢単核細胞でのmiR-146a-5p、miR-941またはその組み合わせの発現レベルの測定は、PsAの診断に寄与しない。一つまたは複数の破骨細胞は、一つまたは複数のCD14+単球またはPsA患者の関節液から分化(differentiated)した破骨細胞であり得る。
【0028】
一実施例において、前記キットは、乾癬性関節炎の発症リスクの診断または予測を必要とする被験者のサンプル中のmiR-146a-5p及びmiR-941からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの配列決定または発現レベルを測定するための少なくとも1つの薬剤を含む。
【0029】
また一実施例において、前記キットは更に培地を含み、前記培地はM-CSF、RANKL及びTNF-αを含む。培地は、抽出されたCD14+単球を破骨細胞に分化させるために使用される。
【0030】
例示的な一実施例では、前記薬剤はRT-PCRである。また一つの例示的な実施例では、前記キットは、配列番号1または配列番号2と少なくとも90%、95%、または100%同一のオリゴヌクレオチドに相補的な少なくとも1つのmiRNA特異的オリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0031】
本明細書で使用される「同一(identical)」は、同じ核酸鎖の2つの領域間、または2つの異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列類似性を指す。その両方の領域のヌクレオチド残基の位置が同じヌクレオチド残基で占められている場合、その領域は当該位置で相同(homologous)である。各領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同じ残基によって占められている場合、第1領域は第2領域と相同である。2つの領域間の相同性は、同じヌクレオチド残基が占める2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合で表される。例として、ヌクレオチド配列5’-ATTGCC-3’を有する領域及びヌクレオチド配列5’-TATGGC-3’を有する領域は、50%の相同性を共有する。好ましくは、第1領域は第1部分を含み、第2領域は第2部分を含み、それにより各部分の位置のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、同じヌクレオチド残基で占められている。また、各部分のすべてのヌクレオチド残基位置が同じヌクレオチド残基によって占められていることが好ましい。
【0032】
被験者の乾癬性関節炎を検出する方法を提供し、その方法は、被験者のサンプル中に以下の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルをを測定する:miR-146a-5p及びmiR-941、そのうち、サンプル中の前記少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが、乾癬性関節炎のないサンプル中の少なくとも一つの対応のmiRNAの発現レベルより高い場合、サンプル中に前記少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが高い前記被験者が、乾癬性関節炎を罹患または発症リスクが存在することの指標となる。
【0033】
本発明はまた、被験者の乾癬性関節炎を検出及び乾癬性関節炎を治療する方法を提供し、その方法は以下のステップを含む:(a)被験者のサンプル中に以下の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルをを測定する:miR-146a-5p及びmiR-941、そのうち、サンプル中の前記少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが、乾癬性関節炎のないサンプル中の少なくとも一つの対応のmiRNAの発現レベルより高い場合、サンプル中に前記少なくとも一つのmiRNAの発現レベルが高い前記被験者が、乾癬性関節炎を罹患または発症リスクが存在することの指標となる;及び(b)被験者に乾癬性関節炎を治療するための治療剤を投与する。治療剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、免疫抑制剤、TNF-α阻害剤、アプレミラスト(Otezla)、ウステキヌマブ(Stelara)、セクキヌマブ(Cosentyx)、本明細書に開示されるmiR-146a-5p阻害剤もしくはmiR-941阻害剤、またはそれらの組み合わせである。
【0034】
いくつかの実施例では、必要とする被験者の乾癬性関節炎を治療する方法を提供し、その方法は、配列番号1と少なくとも90%、少なくとも95、または100%同一のポリヌクレオチドに相補的なmiR-146a-5p阻害剤を被験者に投与するステップ、及び/または配列番号2と少なくとも90%、少なくとも95、または100%同一のポリヌクレオチドに相補的なmiR-941阻害剤を被験者に投与するステップとを含む。
【0035】
本発明の実施形態を以下の実施例により説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。それどころか、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な他の実施形態、修正、及びその同等物を想到することができることを明確に理解されたい。以下の実施例で説明する研究においては、特に明記しない限り、従来の手順に従った。いくつかの手順は、説明のために以下に記載する。
【実施例】
【0036】
実施例1
研究参加者:乾癬性関節炎の患者(症例)及びPsAのない正常対照(NC)における各miRNAの発現を調べるために、症例対照研究を実施した。
【0037】
16人の健康な正常対照(NC)及び31人のPsA患者(乾癬性関節炎の分類基準は、CASPAR、Taylor Wら、Arthritis and Rheumatism 2006; 54(8):2665-73に基づく)が研究に登録された。
【0038】
次世代シーケンシング(NGS)とその後の検証で使用した定量的PCR(qPCR)アッセイによって、潜在的なPsAバイオマーカーを探索した。2人のNC及び4人のPsAのRNAサンプルを、NGS研究の候補miRNAの初期検証として使用した。
【0039】
登録した被験者の末梢血中のCD14+単球は、CD14+マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、台湾)によって抽出及び分離した。分離したCD14+単球からRNAサンプルを抽出し、Agilent Bioanalyzer 2100(Agilent、USA)で品質検査を行って、RNA整合性値が8.0以上のRNAサンプルを選択した。選択したRNAサンプルは、TruSeq Small RNA Preparationプロトコル(Illumina、USA)で調製した。
【0040】
プールされた(pooled)2人の男性NC、プールされた2人の女性NC、プールされた2人のPsA男性患者とプールされた2人のPsA女性患者からのRNAライブラリーをイルミナNGSプラットフォームでシーケンスし、その後、miRSeq8分析によりマイクロ(mi)-RNA発現をプロファイリングした。調製したアンプリコンは、MiSeq施設(Illumina)でV3 150サイクルシーケンス試薬を使用してシーケンスし、51-ntのシングルエンドリード(single-end reads)を生成しました。PsA及びNCサンプルのmiRNA発現プロファイルを調べるためにクラスター分析(Clusterd analysis)を実施しました。
【0041】
NGSで検査されたRNAサンプルのうち、合計で約2770万の未処理リード(raw reads)があり、各サンプルは平均690万リードを占めました。生成されたNGSデータは、miRNAの定量とシーケンスの品質評価のために、miRSeq(Pan CT.ら, Biomed Res Int 2014:462135を参照)で分析されました。miRSeqは、100万あたりの転写量(TPM)でmiRNAの発現レベルを示した。表1に示すように、少なくとも一つのサンプルにおける13個のmiRNAは1000を超えるTPM値を持ち、且つ平均発現比(疾病対(versus)正常または正常対疾病)は少なくとも1.5でした。
【0042】
【0043】
13個のmiRNAにおいて、PsA患者のmiR-941の発現は増加した。
【0044】
NGSデータをさらに検証するように2つのNCサンプルと4つのPsAサンプルでqPCRを実行した。qPCR分析によると、NCの発現と比較して、PsAを有する患者においてmiR-941及びmiR-146a-5pの発現が増加したことを示した(
図1(A)を参照)。
【0045】
SVMは、治療対(versus)対照または疾病対正常などのバイナリ分類問題を処理するための機械学習アルゴリズムである。
図1(B)に示すNC及びPsA患者のmiR-941およびmiR-146a-5pのDCt値を使用して、SVM分類を5倍の交差検証で訓練し、過剰適合(overfitting)と不足適合(underfitting)を排除した。
【0046】
図1(C)及び
図1(D)に示すように、miR146a-5p及びmiR-941の発現が、乾癬性関節炎(PsA CD14+)の患者から抽出されたCD14+単球において増加するが、乾癬性関節炎(PsA CD14-)の患者からの末梢単核細胞では増加しないことを示している。
【0047】
表2は、miR-146a-5pとmiR-941の組み合わせがPsA診断での敏感度、特異性、および受信者操作特性(receiver operating characteristic)の曲線下の領域(auROC)に予期しない相乗効果をもたらすことを示している。
【0048】
【0049】
16人のNCおよび11人のPsA患者から抽出したCD14+単球のmiR-941およびmiR-146a-5pの発現を、PsA治療(アダリムマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、ウステキヌマブまたはセクキヌマブを含む)前及び6か月の治療後に測定した。
【0050】
治療開始の28週間後の11人のPsA患者は、有意な症状の軽減(関節の圧痛および腫脹の軽減)を示した(
図2のA及びBを参照)。6か月の治療後の11人のPsA患者から抽出されたCD14+単球におけるmiR-941およびmiR-146a-5pの発現は有意的に減少した(
図2のC及びD)。抽出されたCD14+単球におけるmiR-941及びmiR-146a-5pの発現の減少は、PsA患者の症状の軽減と相関している。
【0051】
破骨細胞におけるmiR-941およびmiR-146a-5pの発現レベルは、抽出されたCD14+単球から区別された。
【0052】
CD14+単球は、6か月のPsA治療の前後に、2人のNCと2人のPsA患者の末梢血から抽出された。抽出したCD14+単球をM-CSF 50ng/mlで3日間培養した後、破骨細胞分化のために100ng/mlのRANKL及び100 ng/mlのTNF-αで9日間培養した。破骨細胞はPsAにおいて関節破壊を引き起こすことが知られている。
図3(A)及び
図3(B)に示すように、治療の成功前後のPsA患者のCD14+単球由来の破骨細胞におけるmiR-941及びmiR-146a-5pの発現は、NCの発現よりも高かった(p<0.05及びp<0.05)。結果を見ると、CD14+単球由来の破骨細胞におけるmiR-941およびmiR-146a-5pの発現は、疾患活動性(disease activity)に関係なく高いことを示している。
【0053】
実施例2
PsA患者のCD14+単球由来の破骨細胞に対するmiR-941阻害剤及びmiR-146a-5p阻害剤の効果のインビトロ評価を実施した。
【0054】
CD14+単球をPsA患者の末梢血から抽出し、M-CSFで72時間培養した。培養されたCD14の+単球は、以下のプロトコルで処理しました:
(1)miRNAトランスフェクションなし:破骨細胞に分化するために、CD14+単球を9日間、3日ごとにTNF-α及びRANKLとともに培養した。
(2)陰性対照mRNAトランスフェクション:CD14+単球に陰性対照miRNA(配列番号3)を6時間トランスフェクトし、その後9日間3日ごとにTNF-α及びRANKLとともに培養して破骨細胞に分化させた。
(3)miR-941阻害剤トランスフェクション:CD14+単球にmiR-941阻害剤(配列番号4)を6時間トランスフェクトし、次いで破骨細胞に分化させるために9日間、3日ごとにTNF-αおよびRANKLとともに培養した。
(4)miR-146a-5p阻害剤トランスフェクション:CD14+単球にmiR-146a-5p阻害剤(配列番号5)を6時間トランスフェクトし、次いで破骨細胞に分化するために9日間、3日ごとにTNF-αおよびRANKLとともに培養した。
【0055】
図4(A)ないし
図4(E)に示すように、miR-941阻害剤(
図4(C))またはmiR-146a-5p阻害剤(
図4(D))は、陰性対照miRトランスフェクション(
図4(B))及びmiRトランスフェクションなしのグループ(
図4(A))と比較して、CD14+単球由来破骨細胞の数を有意に減少させた。したがって、miR-146a-5pまたはmiR-941の阻害剤は、PsA患者の破骨細胞形成を減少させ、PsAの治療に使用できる。
【0056】
実施例3
さらに、40人の健康な正常対照(NC)、40人の関節炎のない乾癬患者(PsO)、及び40人の乾癬性関節炎患者(PsA)におけるmiR146a-5pとmiR941の発現を調べるために含まれるケースコントロール研究を行われた。
【0057】
PsAの診断とmiRNAの発現は、実施例1の基準と手順に従って測定された。
図5(A)及び
図5(B)は、miR146a-5p及びmiR941の発現がNC及びPsOの発現よりも有意に高いことを示している。結果を見ると、miR146a-5pとmiR941の発現の増加が、乾癬患者の関節炎を発症するリスクを予測できることを示している。
【配列表】