IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンスカイの特許一覧 ▶ ささのやドットコム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スライドパズル 図1
  • 特許-スライドパズル 図2
  • 特許-スライドパズル 図3
  • 特許-スライドパズル 図4
  • 特許-スライドパズル 図5
  • 特許-スライドパズル 図6
  • 特許-スライドパズル 図7
  • 特許-スライドパズル 図8
  • 特許-スライドパズル 図9
  • 特許-スライドパズル 図10
  • 特許-スライドパズル 図11
  • 特許-スライドパズル 図12
  • 特許-スライドパズル 図13
  • 特許-スライドパズル 図14
  • 特許-スライドパズル 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】スライドパズル
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/08 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A63F9/08 501A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019153688
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021029647
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305035886
【氏名又は名称】株式会社エンスカイ
(73)【特許権者】
【識別番号】500005457
【氏名又は名称】ささのやドットコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々野 雅哉
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-102688(JP,A)
【文献】実開平07-000470(JP,U)
【文献】実開昭58-009191(JP,U)
【文献】特開2008-000236(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123010(JP,U)
【文献】なっひーなっひー,“HUGっと!プリキュア できるんです パズル アニメ”,YouTube,日本,YouTube,LLC,2018年05月27日,https://www.youtube.com/watch?v=FjqBZFMtlqI,[2021年8月26日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/06-9/12
A63H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パズル領域を囲む枠体と、前記パズル領域内に縦横に並べた複数の直方体形状のパズル片と、を備え、前記パズル領域内に設けたパズル片一つ分の空所を利用して前記パズル片を縦横方向に順にスライド移動させて所定の配置に並び替えるスライドパズルにおいて、
前記パズル片は、他のパズル片又は前記枠体に対向する周面のうち、第1面と前記第1面に隣接する第2面にそれぞれ設けられた係止部と、
前記周面のうち、前記第1面の反対側に位置する第3面と前記第2面の反対側に位置する第4面にそれぞれ設けられ、隣接した他のパズル片の係止部が係止可能な被係止部と、を有し、
前記第1面に設けられた係止部と前記第3面に設けられた被係止部とは、隣り合うパズル片同士が所期の位置関係で並んだときに係止する位置に形成され、
前記第2面に設けられた係止部と前記第4面に設けられた被係止部とは、隣り合うパズル片同士が所期の位置関係で並んだときに係止する位置に形成されてい
ことを特徴とするスライドパズル。
【請求項2】
請求項1に記載されたスライドパズルにおいて、
前記枠体は、内側面のうち、第1内側面と前記第1内側面に隣接した第2内側面に突条が形成され、前記第1内側面に対向する第3内側面及び前記第2内側面に対向する第4内側面に溝部が形成され、
前記パズル片は、前記第1面に形成された第1挿入部と、前記第2面に形成された第2挿入部と、前記第3面に形成された第1干渉片と、前記第4面に形成された第2干渉片と、を有し、
前記第1挿入部は、内側に前記係止部が形成されると共に、前記突条又は隣接した他のパズル片の第1干渉片を挿入可能とし、
前記第2挿入部は、内側に前記係止部が形成されると共に、前記突条又は隣接した他のパズル片の第2干渉片が挿入可能とし、
前記第1干渉片は、前記被係止部が形成されると共に、前記溝部又は隣接した他のパズル片の第1挿入部に挿入可能とし、
前記第2干渉片は、前記被係止部が形成されると共に、前記溝部又は隣接した他のパズル片の第2挿入部に挿入可能とする
ことを特徴とするスライドパズル。
【請求項3】
請求項2に記載されたスライドパズルにおいて、
前記第1挿入部の内周面及び前記第2挿入部の内周面は、それぞれ前記パズル片の内部に向かって撓み変形が可能であって、前記係止部が形成された板バネ部によって構成されている
ことを特徴とするスライドパズル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたスライドパズルにおいて、
前記パズル領域に出没可能なストッパーを備え、
前記枠体と前記複数のパズル片と前記ストッパーとの表面には、前記複数のパズル片が第1配置で並んだときに成立する第1図柄が記載されている
ことを特徴とするスライドパズル。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたスライドパズルにおいて、
前記パズル領域に出没可能なストッパーを備え、
前記枠体と前記複数のパズル片と前記ストッパーとの表面には、前記複数のパズル片が第1配置で並んだときに成立する第1図柄が記載され、前記枠体と前記複数のパズル片と前記ストッパーとの裏面には、前記複数のパズル片が第2配置で並んだときに成立する第2図柄が記載されている
ことを特徴とするスライドパズル。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載されたスライドパズルにおいて、
前記枠体は、周面を貫通する溝状の開口部を有し、
前記ストッパーは、前記開口部から露出する操作部を有する
ことを特徴とするスライドパズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パズル片一個分の空所を利用して複数のパズル片を縦横方向に順に移動させ、所定の配置に並び替えるスライドパズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、縦横に並べた複数のパズル片を、パズル片一個分の空所を利用して縦方向又は横方向に順にスライド移動させ、所定の配置に並び替えるスライドパズルが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭63-169190号公報
【文献】特開2008-236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のスライドパズルでは、パズル片の周面が平坦であり、パズル片を移動したときにクリック感を感じることがない。そのため、パズル片を所期の位置まで移動させたか否かを把握できず、隣り合うパズル片がずれて並んでしまうことがある。そして、並びがずれたパズル片に、次に移動させたいパズル片が干渉して円滑に動かせないという問題が生じる。
【0005】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、パズル片を所期の位置まで移動させたことを使用者に認識させ、隣り合うパズル片のずれを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示のスライドパズルは、パズル領域を囲む枠体と、パズル領域内に縦横に並べた複数の直方体形状のパズル片と、を備え、パズル領域内に設けたパズル片一つ分の空所を利用して前記パズル片を縦横方向に順にスライド移動させて所定の配置に並び替えるスライドパズルである。ここで、パズル片は、他のパズル片又は枠体に対向する周面のうち、互いに直交する第1面及び第2面にそれぞれ設けられた係止部と、周面のうち、第1面の反対側に位置する第3面及び第2面の反対側に位置する第4面に設けられ、隣接した他のパズル片の係止部が係止可能な被係止部と、を有する。さらに、第1面に設けられた係止部と第3面に設けられた被係止部とは、隣り合うパズル片同士が所期の位置関係で並んだときに係止する位置に形成され、第2面に設けられた係止部と第4面に設けられた被係止部とは、隣り合うパズル片同士が所期の位置関係で並んだときに係止する位置に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
よって、本開示のスライドパズルでは、パズル片をスライド移動させた際、周面に形成された係止部が隣接した他のパズル片の周面に形成された被係止部に係止することで、移動抵抗を急変させて使用者にクリック感を与える。このため、パズル片を所期の位置まで移動させたことを使用者に認識させ、隣り合うパズル片のずれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のスライドパズルにおいてパズル片が第1配置で並んだときの表面を示す外観斜視図である。
図2】ストッパー収容時のスライドパズルの外観斜視図である。
図3】実施例1のスライドパズルにおいてパズル片が第2配置で並んだときの裏面を示す外観斜視図である。
図4】実施例1のスライドパズルにおいてパズル片が第1配置で並んだときの裏面を示す外観斜視図である。
図5】実施例1のスライドパズルにおいてパズル片が第2配置で並んだときの表面を示す外観斜視図である。
図6】実施例1のスライドパズルの分解斜視図である。
図7】実施例1の枠体を示す斜視図である。
図8図7のA-A断面図である。
図9】(a)は実施例1のパズル片を示す斜視図であり、(b)は実施例1のパズル片の平面図である。
図10図9(b)のB-B断面図である。
図11図9(b)のC-C断面図である。
図12】実施例1のスライドパズルの内部構造を平面で示す説明図である。
図13】実施例1のパズル片を縦方向にスライド移動させるときの形状変化を示す説明図であり、(a)は移動前状態を示し、(b)は移動初期状態を示し、(c)は移動後期状態を示し、(d)は移動完了状態を示す。
図14】実施例1のパズル片を横方向に移動させるときの形状変化を示す説明図であり、(a)は移動前状態を示し、(b)は移動初期状態を示し、(c)は移動後期状態を示し、(d)は移動完了状態を示す。
図15】(a)は実施例1のパズル片の変形例を示す分解斜視図であり、(b)は実施例1のパズル片の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によるスライドパズルを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
以下、実施例1におけるスライドパズル1の全体構成を、図1から図5に基づいて説明する。
【0011】
スライドパズル1は、図1に示すように、パズル領域Rを取り囲む枠体10と、パズル領域R内に縦横に配置される九個のパズル片30と、パズル領域Rに出没可能なストッパー50と、備えている。このスライドパズル1では、ストッパー50をパズル領域Rの外に移動させることで、図2に示すように、パズル領域Rの内部にパズル片一個分の空所Kを形成する。そして、この空所Kを利用して複数のパズル片30を縦方向又は横方向に順にスライド移動させ、九個のパズル片30を所定の配置に並び替えて遊ぶ。パズル領域Rは、この空所Kを形成するために、九個のパズル片30を縦横に三個ずつ並ぶ大きさにストッパー50を配置する大きさを合算した大きさとなっている。
【0012】
また、パズル領域Rは、枠体10を貫通しており、パズル領域R内に配置されたパズル片30は、スライドパズル1の表裏双方から目視することができる。そして、このスライドパズル1の表面1aには、九個のパズル片30が第1配置で並び、ストッパー50が出ているときに成立する第1図柄A1(図1参照)が描かれている。ここで、第1図柄A1は、枠体10と九個のパズル片30とストッパー50とに一体的に記載されている。また、スライドパズル1の裏面1bには、九個のパズル片30が第2配置で並び、ストッパー50が出ているときに成立する第2図柄A2(図3参照)が描かれている。この第2図柄A2は、枠体10と九個のパズル片30とストッパー50とに一体的に記載されている。
【0013】
さらに、このスライドパズル1では、表面1aに第1図柄A1が成立しているときには、裏面1bの第2図柄A2は、図4に示すようにバラバラになる。一方、裏面1bに第2図柄A2が成立しているときには、表面1aの第1図柄A1は、図5に示すようにバラバラになる。なお、第1図柄A1及び第2図柄A2は、いずれもUVインクを用いたインクジェット印刷によってスライドパズル1の表面1a及び裏面1bに印刷されている。
【0014】
以下、実施例1のスライドパズル1の枠体10の詳細構成を、図6から図8に基づいて説明する。
【0015】
枠体10は、図6に示すように、パズル領域Rを囲む環状の下フレーム11と、パズル領域Rを囲む環状の上フレーム12とを重ねて接合することで形成されている。そして、枠体10は、図7に示すように、下フレーム11と上フレーム12との間にストッパー50を収容可能なストッパー空間13を有している。ストッパー空間13はパズル領域Rに連通しており、ストッパー50は、この連通部分を介してストッパー空間13とパズル領域Rとの間を行き来する。また、この枠体10には、周面を貫通する溝状の開口部14が形成されている。開口部14は、ストッパー空間13とパズル領域Rとの双方に跨って形成されている。この枠体10は、ストラップ等を取り付け可能な貫通孔17が形成されている。
【0016】
さらに、枠体10は、パズル領域Rに臨む内側面のうち、第1内側面10aと、第1内側面10aに隣接した第2内側面10bには、突条15が形成されている。また、この内側面のうち、第1内側面10aに対向する第3内側面10cと、第3内側面10cに隣接し第2内側面10bに対向する第4内側面10dには、溝部16が形成されている。
【0017】
突条15は、図8に示すように、枠体10の厚み方向(上下方向)の中間から突出した板状部分であり、第1内側面10aの全長と、第2内側面10bのうちストッパー50が突出可能な部分に形成されている(図7参照)。ここで、「第2内側面10bのうちストッパー50が突出可能な部分」とは、第2内側面10bであって、第1内側面10aと第2内側面10bとでなす角隅部からストッパー空間13までの部分である。溝部16は、図8に示すように、枠体10の厚み方向(上下方向)の中間に設けられ、枠体10に沿って形成された凹みである。この溝部16は、第3内側面10c及び第4内側面10dの全長にわたって形成されている。
【0018】
以下、実施例1のスライドパズル1のパズル片30の詳細構成を、図6図9から図11に基づいて説明する。なお、実施例1のスライドパズル1に使用する九個のパズル片30は、全て同じ形状である。
【0019】
パズル片30は、図6に示すように、第1ピース31と、第2ピース32と、その間に挟まれる爪ピース33と、を有し、全体として直方体形状を呈している。第1ピース31は、矩形の板部材であり、後述する第1干渉片36及び第2干渉片37が周面の一部に形成され、内側面(第2ピース32に対向する面)に固定ピン31a(図10図11参照)及び凹部(不図示)が形成されている。第2ピース32は、第1ピース31と同じ大きさの矩形の板部材であり、内側面(第1ピース31に対向する面)に環状のボス部32aと位置決め用の突起部32bが形成されている。爪ピース33は、第1、第2ピース31、32の間に挟持される環状の固定部33aと、固定部33aの周面から突出した脚部33bに支持された二つの板バネ部33c、33dと、を有している。
【0020】
このパズル片30では、図10及び図11に示すように、爪ピース33の固定部33aが、第2ピース32のボス部32aに載置された状態で、第1ピース31の固定ピン31aが固定部33a及びボス部32aに挿入される。また、第2ピース32に形成された位置決め用の突起部32bが、第1ピース31に形成された凹部に挿入される。これにより、第1ピース31と第2ピース32と爪ピース33とが一体に構成されている。
【0021】
そして、このパズル片30は、図9(a)、(b)に示すように、パズル領域Rに配置されたとき(図6参照)に他のパズル片30又は枠体10に対向する周面のうち、第1面30aには、第1挿入部34が形成されている。また、第1面30aに隣接した第2面30bには、第2挿入部35が形成されている。また、パズル片30の周面のうち、第1面30aの反対側に位置する第3面30cには、第1干渉片36が形成されている。さらに、第3面30cに隣接し、第2面30bの反対側に位置する第4面30dには、第2干渉片37が形成されている。
【0022】
第1挿入部34は、枠体10の突条15又は隣接した他のパズル片30の第1干渉片36が挿入可能な凹みであり、図10に示すように、パズル片30の厚み方向(上下方向)の中間に設けられている。この第1挿入部34は、第1ピース31と第2ピース32と爪ピース33とで囲まれて形成されている。そして、内周面34bは、先端に突起部34a(係合部)が設けられると共に、パズル片30の内部に向かって撓み変形が可能な爪ピース33の板バネ部33cによって形成されている。突起部34aは、パズル片30の側方に向かって突出し、側面が周方向に沿って傾斜している。この突起部34aは、板バネ部33cに形成されたことで、パズル片30の第1面30aに設けられると共に、第1挿入部34の内側に形成されることになる。
【0023】
第2挿入部35は、枠体10の突条15又は隣接した他のパズル片30の第2干渉片37が挿入可能な凹みであり、図11に示すように、パズル片30の厚み方向(上下方向)の中間に設けられている。この第2挿入部35は、第1ピース31と第2ピース32と爪ピース33とで囲まれて形成されている。そして、内周面35bは、先端に突起部35a(係合部)が設けられると共に、パズル片30の内部に向かって撓み変形が可能な爪ピース33の板バネ部33dによって形成されている。突起部35aは、パズル片30の側方に向かって突出し、側面が周方向に沿って傾斜している。この突起部35aは、板バネ部33dに形成されたことで、パズル片30の第2面30bに設けられると共に、第2挿入部35の内側に形成されることになる。
【0024】
ここで、図9(b)に示すように、爪ピース33の脚部33bは、固定部33aからパズル片30の第1面30aと第2面30bとでなす角隅部30eに延びて突出している。これにより、二つの板バネ部33c、33dは、この角隅部30e側を基部として撓み変形する。
【0025】
第1干渉片36は、枠体10の溝部16又は隣接した他のパズル片30の第1挿入部34に挿入可能な板部材であり、図10に示すように、パズル片30の厚み方向(上下方向)の中間に設けられている。この第1干渉片36には、隣接した他のパズル片30の突起部34aが係止可能な係止凹部36a(被係止部)が形成されている。係止凹部36aは、第1干渉片36の周面に形成された凹みである。また、突起部34aと係止凹部36aとは、隣り合うパズル片30同士が所期の位置関係で並んだときに係止する位置に形成されている。
【0026】
第2干渉片37は、枠体10の溝部16又は隣接した他のパズル片30の第2挿入部35に挿入可能な板部材であり、図11に示すように、パズル片30の厚み方向(上下方向)の中間に設けられている。この第2干渉片37には、隣接した他のパズル片30の突起部35aが係止可能な係止凹部37a(被係止部)が形成されている。係止凹部37aは、第2干渉片37の周面に形成された凹みである。また、突起部35aと係止凹部37aとは、隣り合うパズル片30同士が所期の位置関係で並んだときに係止する位置に形成されている。第1、第2干渉片36、37は、パズル片30の第3面30cと第4面30dとでなす角隅部30fにおいて連続しており、図9(b)に示すように、平面視でL字状を成している。
【0027】
実施例1のスライドパズル1のストッパー50の詳細構成を、図6及び図12に基づいて説明する。
【0028】
ストッパー50は、図6に示すように、第1ストッパーピース51と、第2ストッパーピース52と、を有している。第1ストッパーピース51は、パズル片30の第1、第2ピース31、32と同じ大きさの矩形の板部材であり、内側面(第2ストッパーピース52に対向する面)に連結用の突起51a及び不図示のボスが形成されている。また、第2ストッパーピース52は、パズル片30の第1、第2ピース31、32と同じ大きさの矩形の板部材であり、周面に操作片54が形成され、内側面(第1ストッパーピース51に対向する面)に連結用のボス部52a及び突部52bが形成されている。そして、突起51aがボス部52aに挿入され、突部52bが不図示のボスに挿入されることで、第1ストッパーピース51と第2ストッパーピース52とが隙間をあけた状態で連結されてストッパー50が形成される。
【0029】
また、枠体10の下フレーム11と上フレーム12の間には、プレート部材53が挟持されている。このプレート部材53は、図12に示すように、ストッパー空間13及びパズル領域Rに一部が突出している。また、プレート部材53には、複数の貫通孔53aが形成され、枠体10の間に挟持された際、下フレーム11に形成されたピン11aや上フレーム12に形成されたピン12a等が貫通孔53aを貫通することで位置決めされる。また、このとき、プレート部材53は、下フレーム11に形成されたリブ11bと、上フレーム12に形成されたリブ12b(図8参照)に挟み込まれ、ストッパー空間13の上下面に対して隙間をあけた状態で保持される。さらに、プレート部材53には、ストッパー50をストッパー空間13に収容したときに、ボス部52aや突部52bが入り込む二つの溝部53bと、パズル片30が隣接したときに突起部35aが係止する二つの係止凹部53cとが形成されている。
【0030】
そして、第2ストッパーピース52に形成された操作片54は、ストッパー50の移動方向に沿って延びた板形状を呈し、下フレーム11及び上フレーム12に摺接可能となっている。この操作片54は、ストッパー50がパズル領域R内に出ているときに開口部14を閉鎖する(図1参照)。また、操作片54の外側面には、開口部14から露出する操作部54aが形成されている。操作部54aは、多数の細かい突起の集合によって形成されている。
【0031】
以下、実施例1のスライドパズル1の基本作用を、図12に基づいて説明する。
【0032】
実施例1のスライドパズル1では、九個のパズル片30を図12に示すように縦横に三個ずつ並べ、パズル領域R内に配置する。また、ストッパー50もパズル領域R内に引き出しておく。ここで、ストッパー50の下側に縦方向に沿って並んだ三つのパズル片30を、上から順に第1パズル片30A、第2パズル片30B、第3パズル片30Cとする。また、ストッパー空間13の下側に縦方向に沿って並んで三つのパズル片30を、上から順に第4パズル片30D、第5パズル片30E、第6パズル片30Fとする。さらに、残りの三つのパズル片30を、上から順に第7パズル片30G、第8パズル片30H、第9パズル片30Jとする。
【0033】
このとき、隣り合うパズル片30同士の間では、第1挿入部34に第1干渉片36が挿入され、第2挿入部35に第2干渉片37が挿入される。さらに、このとき、突起部34aが係止凹部36aに係止し、突起部35aが係止凹部37aに係止する。また、第1、第2、第3パズル片30A、30B、30Cの第1挿入部34には、枠体10の第1内側面10aに形成された突条15が挿入される。また、第4、第7パズル片30D、30Gの第2挿入部35には、プレート部材53の一部が挿入される。このとき、第4、第7パズル片30D、30Gの突起部35aは、プレート部材53の係止凹部53cに係止する。
【0034】
さらに、第7、第8、第9パズル片30G、30H、30Jの第1干渉片36は、枠体10の第3内側面10cに形成された溝部16に挿入される。また、第3、第6、第9パズル片30C、30F、30Jの第2干渉片37は、枠体10の第4内側面10dに形成された溝部16に挿入される。
【0035】
なお、パズル領域R内に突出したストッパー50は、第1ストッパーピース51と第2ストッパーピース52との間に隙間が空いており、枠体10の突条15がこの隙間に入り込む。
【0036】
そして、このように第1、第2挿入部34、35と、第1、第2干渉片36、37と、枠体10の突条15と、溝部16とが互いに噛み合うことで、パズル片30が枠体10から脱落することなく、空所Kを利用して縦横方向に順に移動可能とすることができる。これにより、スライドパズル1の表面1a及び裏面1bのそれぞれにおいて、図柄(第1図柄A1、第2図柄A2)を揃える遊びを行うことが可能となる。
【0037】
また、このスライドパズル1では、枠体10と九個のパズル片30とストッパー50と表面1aに、九個のパズル片30が第1配置で並んだときに成立する第1図柄A1が記載されている(図1参照)。また、枠体10と九個のパズル片30とストッパー50と裏面1bに、九個のパズル片30が第1配置で並んだときに成立する第2図柄A2が記載されている(図3参照)。
【0038】
このため、スライドパズル1では、第1図柄A1と第2図柄A2とが同時に成立することがなく、一方の図柄を成立させても、スライドパズル1をひっくり返すことでバラバラになった図柄を表示することができる(図4及び図5参照)。これにより、このスライドパズル1は、第1図柄A1又は第2図柄A2のいずれかの成立後に他方の図柄を揃える遊びを行う際、図柄をバラバラにする手間がかからず、簡単に遊び始めることができる。
【0039】
さらに、第1図柄A1及び第2図柄A2は、いずれも枠体10と九個のパズル片30とストッパー50とに対して一体的に記載されている。つまり、第1図柄A1及び第2図柄A2は、スライドパズル1のほぼ全面に描かれている。そのため、枠体10やストッパー50に記載された図柄をヒントにして九個のパズル片30の並べ替えを行うことが可能となる。さらに、スライドパズル1の表面1aや裏面1bのほぼ全面を利用して図柄を記載することで、例えば九個のパズル片30だけに図柄を記載する場合と比べて、より大きな図柄を記載することができる。
【0040】
以下、図13及び図14に基づいて、実施例1のスライドパズル1のスライド作用を説明する。
【0041】
実施例1のスライドパズル1において、九個のパズル片30を縦横にスライド移動させて図柄を揃えて遊ぶには、使用者は、まず、パズル領域R内に出ているストッパー50をストッパー空間13にスライド移動させて収容する。これにより、パズル片一個分の空所Kがパズル領域Rの内部に形成される(図2参照)。
【0042】
次に、使用者は、空所Kを利用して九個のパズル片30を縦方向、又は横方向に順にスライド移動させ、配置を並び替えて図柄を揃えていく。なお、使用者は、パズル片30のスライド移動は、移動させたいパズル片30の表面に指先を押し当てたまま指先を動かすことで行う。つまり、パズル片30と指先との間に生じる摩擦力を利用してパズル片30を移動する。
【0043】
ここで、図13(a)~(d)に示すように、パズル片30を縦方向(図13では下方向)にスライド移動させる場合を説明する。すなわち、移動対象のパズル片(以下、「移動パズル片30x」という)の右側に、二つのパズル片(以下「上側パズル片30y、下側パズル片30z」という)が縦に並び、下側パズル片30zの左側に形成された空所Kに移動パズル片30xを移動させる場合である。
【0044】
移動パズル片30xの移動前では、図13(a)に示すように、移動パズル片30xの第1干渉片36が上側パズル片30yの第1挿入部34に挿入されている。また、このとき、第1干渉片36に形成された係止凹部36aに突起部34aが係止している。これにより、移動パズル片30xの不用意な移動を規制することができる。
【0045】
そして、図13(b)に示すように、移動パズル片30xを空所Kに向かって移動させると、移動パズル片30xの係止凹部36aから上側パズル片30yの突起部34aが外れる。このとき、移動パズル片30xの移動に伴って係止凹部36aの内面が突起部34aに押しつけられることで、板バネ部33cが上側パズル片30yの内部に向かって撓み、突起部34aは容易に外れることができる。
【0046】
すなわち、上側パズル片30yの第1挿入部34の内周面が、上側パズル片30yの内部に向かって撓み変形が可能であって、突起部34aが形成された板バネ部33cによって形成されている。これにより、突起部34aは係止凹部36aから容易に外れることができ、移動パズル片30xの移動が阻害されることを防止できる。
【0047】
係止凹部36aから突起部34aが外れたら、そのまま下側パズル片30zに並ぶまで移動パズル片30xをスライド移動させる。このとき、移動パズル片30xの第1干渉片36が下側パズル片30zの第1挿入部34に次第に挿入されていく。ここで、突起部34aの先端が第1干渉片36に接している間は、板バネ部33cは撓む。すなわち、図13(c)に示すように、下側パズル片30zの突起部34aが移動パズル片30xの第1干渉片36に接触することで、下側パズル片30zの板バネ部33cは第1干渉片36に押され、下側パズル片30zの内部に向かって撓む。ここでも板バネ部33cが撓むことで、移動パズル片30xは円滑に移動することができる。
【0048】
そして、下側パズル片30zの突起部34aが移動パズル片30xの係止凹部36aに対向すると、図13(d)に示すように、下側パズル片30zの板バネ部33cが自身の弾性変形力で戻り、突起部34aが移動パズル片30xの係止凹部36aに入り込む。これにより、移動パズル片30xの移動抵抗が急増し、使用者にクリック感を与えることができる。この結果、使用者は、移動パズル片30xを所期の位置まで移動させたことを認識でき、横方向に隣り合う下側パズル片30zとのずれを防止することができる。
【0049】
また、図14(a)~(d)に示すように、パズル片30を横方向(図14では右方向)にスライド移動させる場合を説明する。すなわち、移動対象のパズル片(以下、「移動パズル片30x」という)の上側に、二つのパズル片(以下「右側パズル片30y´、左側パズル片30z´」という)が横に並び、左側パズル片30z´の下側に形成された空所Kに移動パズル片30xを移動させる場合である。
【0050】
移動パズル片30xの移動前では、図14(a)に示すように、右側パズル片30y´の第2干渉片37が移動パズル片30xの第2挿入部35に挿入されている。また、このとき、第2干渉片37に形成された係止凹部37aに突起部35aが係止している。これにより、移動パズル片30xの不用意な移動を規制することができる。
【0051】
そして、図14(b)に示すように、移動パズル片30xを空所Kに向かって移動させると、右側パズル片30y´の係止凹部37aから移動パズル片30xの突起部35aが外れる。このとき、移動パズル片30xの移動に伴って突起部35aが係止凹部37aの内面に押しつけられることで、板バネ部33dが移動パズル片30xの内部に向かって撓み、突起部35aは容易に外れることができる。
【0052】
すなわち、移動パズル片30xの第2挿入部35の内周面が、移動パズル片30xの内部に向かって撓み変形が可能であって、突起部35aが形成された板バネ部33dによって形成されている。これにより、突起部35aは係止凹部37aから容易に外れることができ、移動パズル片30xの移動が阻害されることを防止できる。
【0053】
係止凹部37aから突起部35aが外れたら、そのまま左側パズル片30z´に並ぶまで移動パズル片30xをスライド移動させる。このとき、移動パズル片30xの第2挿入部35には、左側パズル片30z´の第2干渉片37が次第に挿入されていく。ここで、突起部35aの先端が第2干渉片37に接している間は、板バネ部33dは撓み続ける。すなわち、図14(c)に示すように、移動パズル片30xの突起部35aが左側パズル片30z´の第2干渉片37に接触することで、移動パズル片30xの板バネ部33dは、第2干渉片37によって再び押され、移動パズル片30xの内部に向かって撓む。ここでも板バネ部33dが撓むことで、移動パズル片30xは円滑に移動することができる。
【0054】
そして、移動パズル片30xの突起部35aが左側パズル片30z´の係止凹部37aに対向すると、図14(d)に示すように、板バネ部33dが自身の弾性変形力で戻り、移動パズル片30xの突起部35aが係止凹部37aに入り込む。これにより、移動パズル片30xの移動抵抗が急増し、使用者にクリック感を与えることができる。この結果、使用者は、移動パズル片30xを所期の位置まで移動させたことを認識でき、上下方向に隣り合う左側パズル片30z´とのずれを防止することができる。
【0055】
さらに、ストッパー50は、パズル領域Rに出ているときにはパズル片30と干渉する。これにより、パズル片30の移動を規制することができる。また、ストッパー50の操作片54の表面には、開口部14から露出する操作部54aが形成されている。このため、使用者は、ストッパー50を動かす際に操作部54aに指先を押し当てることで、指先と操作片54との間に生じる摩擦力を高め、ストッパー50を容易にスライド移動させることができて操作性の向上を図ることができる。
【0056】
以上、本開示のスライドパズルを実施例1に基づいて説明したが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0057】
実施例1のスライドパズル1は、枠体が、縦方向寸法と横方向寸法とがほぼ同じ長さの平面視正方形とした例を示したが、これに限らない。例えば、枠体10の縦方向寸法と横方向寸法とを異ならせ、その比率を黄金比(≒1.618:1)等の任意の比率としてもよい。また、各パズル片30の縦方向寸法と横方向寸法との比率についても、黄金比等の任意の比率に設定してもよい。この場合、スライドパズル1やパズル片30の縦横寸法の比率を、表面又は裏面に表示する画像の縦横の比率に合致させる、画像を適切に表示することができる。
【0058】
また、実施例1のスライドパズル1では、パズル領域Rが枠体10を貫通し、パズル片30がスライドパズル1の表裏双方から目視可能な両面スライドパズルである例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、枠体10を構成する下フレーム11を板形状とし、パズル片30が表面1aからのみ目視可能な片面スライドパズルとしてもよい。この場合であっても、パズル片30の周面に突起部34a、35aや係止凹部36a、37aを形成することで、所期の位置までパズル片30を移動させたときにクリック感を感じさせ、パズル片30を適切な位置に配置することができる。
【0059】
また、片面スライドパズルであっても、枠体10と複数のパズル片30とストッパー50との表面に、複数のパズル片30が第1配置で並んだときに成立する第1図柄Aを記載することで、スライドパズルの全面に図柄を描くことができ、枠体10やストッパー50に記載された図柄をヒントにパズル片30の並べ替えができる。
【0060】
実施例1のスライドパズル1では、枠体10の突条15や溝部16に突起部や係止凹部を形成しない例を示したが、これに限らない。突条15に係止部である突起部を形成し、溝部の内側に被係止部である係止凹部を形成してもよい。
【0061】
実施例1のスライドパズル1では、係止部を板バネ部33c、33dから突出した突起部34a、35aとし、被係止部を第1、第2干渉片36、37の側面に形成された凹みである係止凹部36a、37aとする例を示した。しかしながら、係止部と被係止部とは、互いに係止可能であって、これらが係止することでパズル片をスライド移動させる際の移動抵抗を急変させられればよい。つまり、係止部と被係止部によって使用者にクリック感を与えればよい。そのため、実施例1に示す形状に限らず、例えば、板バネ部33c、33dに凹み形状の係止部を形成し、第1、第2干渉片36、37には、側面から突出した被係止部を形成してもよい。さらに、係止部と被係止部の何れも突出形状を呈していてもよい。
【0062】
実施例1のスライドパズル1では、パズル片30が、第1ピース31と、第2ピース32と、その間に挟まれる爪ピース33と、を有し、三つの部品によってパズル片30を構成する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、図15(a)、(b)に示すように、矩形の板部材からなる第1ピース51の周面51aに、板バネ形状の第1干渉片56及び第2干渉片57を形成し、爪ピースを廃止する。そして、第1ピース51と矩形の板部材からなる第2ピース52との二つの部品でパズル片50を構成するものであってもよい。この場合、第1干渉片56が他のパズル片50の第1挿入部54に挿入された際、第1干渉片56が撓んで、他のパズル片50の第1挿入部54の内側に形成された係止部(不図示)に第1干渉片56の先端に形成した被係止部56aが係止される。また、第2干渉片57が他のパズル片50の第2挿入部55に挿入された際、第2干渉片57が撓んで、他のパズル片50の第2挿入部55の内側に形成された係止部(不図示)に第2干渉片57の先端に形成した被係止部57aが係止される。
【0063】
また、実施例1に示す第1ピース31又は第2ピース32のいずれか一方に対して爪ピース33を一体化して一部品とし、二つの部品でパズル片30を構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 スライドパズル
10 枠体
10a 第1内側面
10b 第2内側面
10c 第3内側面
10d 第4内側面
13 ストッパー空間
14 開口部
15 突条
16 溝部
30 パズル片
30a 第1面(周面)
30b 第2面(周面)
30c 第3面(周面)
30d 第4面(周面)
33c 板バネ部
33d 板バネ部
34 第1挿入部
34a 突起部(係止部)
34b 内周面
35 第2挿入部
35a 突起部(係止部)
35b 内周面
36 第1干渉片
36a 係止凹部(被係止部)
37 第2干渉片
37a 係止凹部(被係止部)
50 ストッパー
54 操作片
54a 操作部
A1 第1図柄
A2 第2図柄
K 空所
R パズル領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15