(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】重畳伝動装置を備えた駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/72 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
F16H3/72 A
(21)【出願番号】P 2019504118
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2017067828
(87)【国際公開番号】W WO2018019612
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】102016213639.9
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017103698.9
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス シュトルツ
【審査官】筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014210870(DE,A1)
【文献】米国特許第05558589(US,A)
【文献】特開2009-216188(JP,A)
【文献】特表2008-536739(JP,A)
【文献】特開2000-326739(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111549(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/059115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車伝動装置(6)を備えた重畳伝動装置(18)と、
前記重畳伝動装置(18)の入力軸(4)に結合された主駆動機(1)と、
それぞれ1つの駆動結合部を介して前記遊星歯車伝動装置(6)に結合された2つの補助駆動機(3.1,3.2)と、
作業機械(2)に結合可能な、前記重畳伝動装置(18)の出力軸(11)と、を含み、
前記遊星歯車伝動装置(6)は、リングギヤ(6.1)、サンギヤ(6.2)、遊星キャリヤ(7)および複数の遊星ギヤ(6.3)を有しており、
前記補助駆動機(3.1,3.2)の駆動結合は、それぞれギヤ連鎖(9.1,10.1,9.2,10.2)を介してそれぞれ1つの段付けされた中間ギヤ(10.1,10.2)により行われ、
前記入力軸(4)は前記リングギヤ(6.1)に結合されており、被動軸(5)は前記サンギヤ(6.2)に結合されており、前記補助駆動機(3.1,3.2)は、変速比が一定の駆動結合部(9.1,10.1,9.2,10.2)を介して前記遊星キャリヤ(7)に結合されている、駆動装置において、
前記入力軸(4)に設けられた平歯車(17)を介して駆動され得る潤滑油ポンプ(22)が設けられており、前記
入力軸(4)に設けられた平歯車(17)は、前記主駆動機(1)と前記遊星歯車伝動装置(6)との間に配置されて
おり、
前記補助駆動機(3.1,3.2)と前記入力軸(4)との間に、変速比が一定の追加的な駆動結合部が存在しており、該駆動結合部は、1つの既存の切換クラッチ(16.1,16.2)を介して切り離されるまたは接続されることができるように形成されており、
前記追加的な駆動結合部の各々は、前記補助駆動機(3.1,3.2)のそれぞれの補助駆動軸(13.1,13.2)に結合された補助駆動ギヤ(9.1,9.2)と、前記段付けされた中間ギヤ(10.1,10.2)の各々とを介して平歯車(15.1,15.2)に結合すると共に、該平歯車(15.1,15.2)を介して、1つの共通の、前記入力軸(4)に設けられた平歯車(17)に結合し、前記切換クラッチ(16.1,16.2)はそれぞれ、前記中間ギヤ(10.1,10.2)に配置されており、前記切換クラッチ(16.1,16.2)はそれぞれ、前記平歯車(15.1,15.2)を遮断または接続することができる、
ことを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
遊星歯車伝動装置(6)を備えた重畳伝動装置(18)と、
前記重畳伝動装置(18)の入力軸(4)に結合された主駆動機(1)と、
それぞれ1つの駆動結合部を介して前記遊星歯車伝動装置(6)に結合された2つの補助駆動機(3.1,3.2)と、
作業機械(2)に結合可能な、前記重畳伝動装置(18)の出力軸(11)と、を含み、
前記遊星歯車伝動装置(6)は、リングギヤ(6.1)、サンギヤ(6.2)、遊星キャリヤ(7)および複数の遊星ギヤ(6.3)を有しており、
前記補助駆動機(3.1,3.2)の駆動結合は、それぞれギヤ連鎖(9.1,10.1,9.2,10.2)を介してそれぞれ1つの段付けされた中間ギヤ(10.1,10.2)により行われ、
前記入力軸(4)は前記リングギヤ(6.1)に結合されており、被動軸(5)は前記サンギヤ(6.2)に結合されており、前記補助駆動機(3.1,3.2)は、変速比が一定の駆動結合部(9.1,10.1,9.2,10.2)を介して前記遊星キャリヤ(7)に結合されている、駆動装置において、
前記入力軸(4)に設けられた平歯車(17)を介して駆動され得る潤滑油ポンプ(22)が設けられており、前記入力軸(4)に設けられた平歯車(17)は、前記主駆動機(1)と前記遊星歯車伝動装置(6)との間に配置されており、
前記補助駆動機(3.1,3.2)と前記入力軸(4)との間に、変速比が一定の追加的な駆動結合部が存在しており、該駆動結合部は、1つの既存の切換クラッチ(16.1,16.2)を介して切り離されるまたは接続されることができるように形成されており、
前記追加的な駆動結合部の各々は、補助駆動軸に設けられたそれぞれ1つの補助ギヤ(14.1,14.2)と、それぞれ1つの平歯車(15.1,15.2)とを介して、1つの共通の、前記入力軸(4)に設けられた平歯車(17)に結合し、前記切換クラッチ(16.1,16.2)はそれぞれ、前記補助駆動軸に配置されており、前記切換クラッチ(16.1,16.2)はそれぞれ、前記補助ギヤ(14.1,14.2)を遮断または接続することができる、
ことを特徴とする、駆動装置。
【請求項3】
前記主駆動機(1)は一定の回転数でのみ運転可能であり、前記補助駆動機(3.1,3.2)は回転数を制御されて運転可能である、請求項1
または2記載の装置。
【請求項4】
前記遊星歯車伝動装置(6)の被動軸(5)が設けられており、該被動軸(5)は、前記入力軸(4)と前記出力軸(11)との間にオフセットが存在するように、平歯車段(12)を介して前記出力軸(11)に結合されている、請求項1
から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記2つの補助駆動機(3.1,3.2)は、前記主駆動機(1)の側に配置されている、請求項1から
4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記2つの補助駆動機(3.1,3.2)は、前記出力軸(11)の側に配置されている、請求項1から
4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記潤滑油ポンプ(22)は、ケーシング上部内で、z方向において前記入力軸(4)の上方に配置されている、請求項1から
6までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置であって、遊星歯車伝動装置を備えた重畳伝動装置、重畳伝動装置の入力軸に結合された主駆動機、それぞれ1つの駆動結合部を介して遊星歯車伝動装置に結合された2つの補助駆動機、作業機械に結合可能な、重畳伝動装置の出力軸を含み、遊星歯車伝動装置は、リングギヤ、サンギヤ、遊星キャリヤおよび複数の遊星ギヤを有している、駆動装置に関する。
【0002】
重畳伝動装置では一般に、遊星歯車伝動装置の少なくとも2つの軸が、互いに独立した駆動装置により駆動され、これにより別の軸、すなわち出力軸の回転数が増やされるか、または減らされるようになっている。各駆動装置のうちの1つが制御可能である場合には、出力軸の回転数無段制御が達成され得る。この場合は2つの軸が駆動され、一方の軸は主駆動機により駆動され、もう一方の軸は回転数制御可能な2つの補助駆動機により駆動される。出力軸の第3の軸には、作業機械が接続されている。
【0003】
従来技術から周知の、重畳伝動装置を備えた駆動装置では、主駆動機が入力軸を介して、遊星歯車伝動装置のリングギヤを駆動し、制御可能な補助駆動機は伝動装置段を介して遊星キャリヤを駆動する一方で、作業機械は、出力軸を介してサンギヤに結合されている。このような駆動装置により、一定回転する主駆動機において、出力軸の回転数を極めて大きな回転数範囲内で無段調整することができるようになっている。
【0004】
さらに、補助駆動機が高速回転時にそれぞれ主駆動機の回転数を記憶することにより、主駆動機を無負荷状態で牽引始動させることが可能である。主駆動機が定格回転数に近づきひいては高トルクをもたらすことができるようになって初めて、補助駆動機による回転数補整が減じられることで、負荷が次第に加速される。
【0005】
2つの補助駆動機を備えた具体的な構成は、例えば独国特許出願公開第102015107934号明細書に記載されている。ここでは、遊星歯車伝動装置を備えた前記のような装置において従来慣例のように、主駆動機の駆動軸は、出力軸と軸方向において整合するように形成されている。
【0006】
このような駆動装置は、特に例えば油・ガス工業または火力発電所で用いられるような、出力の大きなポンプ、圧縮機またはコンプレッサを駆動するために使用される。この場合は用途や個別のケースに応じて、所望の変速比および所要の制御範囲に関する極めて種々様々な要求が生じる。相応の設計のためには、各補助駆動機を結合する、重畳伝動装置の平歯車の直径が、個別のケースに適合される。この用途特化型の設計には極めて手間がかかり、高いコストを生ぜしめる。それというのも、伝動装置を相応に変更せねばならないからである。
【0007】
本発明の課題は、駆動装置に関する改良された解決手段を見つけ、個別のケースにおける回転数比および制御範囲に関する設計および要求に対する適合を、より簡単かつ廉価に行うことができるようにすることにある。特に既存の設備に後付けするためには、最小限のコストでもって効率改善型の回転数制御が可能になることが望ましい。
【0008】
この課題は、請求項1記載の駆動装置により解決される。当該装置をさらに追加的に改良する、本発明による構成の別の有利な特徴は、対応する各下位請求項に記載されている。本発明による駆動装置は、補助駆動機と遊星歯車伝動装置との間の駆動結合が、それぞれギヤ連鎖を介してそれぞれ1つの段付けされた中間ギヤにより行われるように、形成されている。
【0009】
これに関連して段付けされた中間ギヤとは、軸方向に相並んで配置された2つの歯列領域を備えた平歯車を意味し、2つの歯列領域は、それぞれ全周にわたって延在しており、かつそれぞれ異なる別の平歯車に係合している。択一的に、中間ギヤは、1つの共通の短軸に着座した2つの平歯車により形成されてもよい。2つの歯列領域または2つの平歯車は、同じ直径または好適には異なる直径を有していてもよい。
【0010】
ここでギヤ連鎖と呼ぶ駆動結合は、複数の、特に少なくとも2つの平歯車対、つまり少なくとも4つの平歯車を介して行われる。
【0011】
少なくとも1つの段付けされた平歯車を備えたギヤ連鎖の使用により、各平歯車が専用の軸に着座した、もっぱら直列にのみ配置されたギヤ連鎖構造とは異なる、平歯車対の並列配置構造が生じる。この並列構造により、軸間距離およびギヤ直径を十分一定に保つと共に、あらゆる増速比または減速比を生ぜしめるために、1つの平歯車対においてのみ適合を行うことが可能である。これにより特に、例えば補助駆動軸と入力軸との間の軸間距離を一定に保つことができ、このことは、所望の変速比に関係無く、重畳伝動装置用に常に同じケーシング構造を用いることを可能にする。このことは、駆動装置の構造設計および製造において、大幅な簡略化とコスト面での利点とをもたらす。相応する別の改良は、ギヤ直径も、1つの対を除いては、個別のケースの要求とは関係無く同じであってもよい、ということにより生じる。
【0012】
特に好適なのは、主駆動機が一定の回転数でのみ運転可能でありかつ補助駆動機は回転数を制御されて運転可能である場合である。このことは、特に大きな駆動出力の場合に、より廉価な組換えを可能にする。駆動出力の大部分は、一定に運転される主駆動機によりもたらされてもよい。主駆動機は周波数変換器を必要とせず、このことは投資コストを節約する。好適には、主駆動機は中電圧モータとして、つまり1kVよりも高い電圧を有して形成される。回転数制御は、より小さな出力を必要とし、好適には1kV未満の電圧を有する低電圧モータとして形成された補助駆動機を介して行われる。よって、このために必要とされる周波数変換器は、より小型であると共に、より廉価である。
【0013】
さらに有利なのは、入力軸をリングギヤに結合し、被動軸をサンギヤに結合し、かつ補助駆動機を変速比が一定のそれぞれ1つの駆動結合部を介して遊星キャリヤに結合することである。このように構成された装置は、例えば高速回転式のコンプレッサまたは大型のベンチレータにおいて必要とされているような、被動部における高回転数に、特に良好に適している。
【0014】
1つの好適な構成に関して、遊星歯車伝動装置の被動軸は、同時に重畳伝動装置の出力軸でもある。このことは特に、入力軸と出力軸とが同軸的に配置されているべき場合に有利である。
【0015】
1つの別の有利な構成では、遊星歯車伝動装置の被動軸に、平歯車段が接続されており、この平歯車段を介して重畳伝動装置は、入力軸と出力軸との間にオフセットが存在するように、出力軸に結合されている。オフセットにより、一方の補助駆動機がより低く配置され、ひいては第1および第2の補助駆動機がz方向において異なる高さに配置されていることが可能になる。追加的な伝動装置段が設けられているにもかかわらず、大幅に小さな構成空間で間に合わせることができると共に、既存の幾何学形状的な周辺条件に適合させるための大幅に高いフレキシビリティが生じる、ということが判った。
【0016】
追加的に、一方の補助駆動機がより低く配置されていると、装置の重心位置に関して有利である。さらに本発明による装置は、入力軸および出力軸の位置においてはるかに多くのフレキシビリティをもたらす。それというのも、手間のかかる周辺部の改造無しで、オフセットを有する伝動装置制御クラッチをも代替することができるからである。また、このようないわゆる後付け用途における別の幾何学形状的な周辺条件も、より簡単に維持され得る。
【0017】
好適には、2つの補助駆動機は、主駆動機側に位置している。被動側の作業機械の範囲では、駆動装置用のさらなるスペースが一切必要とされない、という点が有利である。
【0018】
択一的に、例えば主駆動機側に適当な構成空間が供与されていない場合には、2つの補助駆動機は出力軸側、つまり作業機械側に配置されていてもよい。
【0019】
取付け及び保守整備を簡単にするためには、ケーシングが分割接合部により分離可能に形成されていると共に、ケーシングカバーとケーシング下部とを有していると、有利である。さらに2つの補助駆動機は、ケーシングカバーに直接に配置されていてもよく、この場合、重畳伝動装置と分割接合部とは、ケーシングカバーが2つの補助駆動機と一緒に取外し可能である一方で、ケーシング下部は主駆動機、遊星歯車伝動装置および被動軸と一緒に取り付けられたままでいられるように、形成されている。このことは、着脱をさらに追加的に簡単にする。
【0020】
1つの有利な構成では、入力軸に設けられた平歯車を介して駆動され得る潤滑油ポンプが設けられており、この場合、前記平歯車は、好適には主駆動機と遊星歯車伝動装置との間に配置されている。これにより、確実な潤滑油供給が、伝動装置出力部の回転数に関係無く保証されている。さらに、伝動装置ケーシングに着脱用の適当な開口が設けられている場合には、潤滑油ポンプは、保守整備し易いように、駆動装置側からアプローチすることができるようになっている。
【0021】
主駆動機が故障した場合に非常運転または制御された減速運転を可能にするために、補助駆動機を駆動装置の入力軸に結合する、さらに少なくとも1つの別の駆動結合部が設けられてもよい。この追加的な駆動結合部には、駆動結合部を切り離すかまたは接続することのできる、少なくとも1つの切換クラッチが設けられている。この追加的な駆動結合部は、一定の変速比を有している。これにより、減速制動用のエネルギの大部分が、各補助駆動機における迂回加速(Umbeschleunigung)により消費され得る。このようにして、伝動装置の許容不能な過剰回転数が防がれる。
【0022】
特に好適には、各補助駆動機につきそれぞれ1つの、切換クラッチを備えた追加的な駆動結合部が設けられてもよい。2つの切換クラッチが存在することにより、切換クラッチをより小型かつ廉価に設計することができ、個別のケースにおいて切換クラッチに過剰負荷のリスクが生じることはない。
【0023】
さらに、このように形成された装置は、低出力回転数に関しては、補助駆動機のみにより始動または運転され得る。
【0024】
特に好適には、各追加的な駆動結合は、補助駆動ギヤから段付けされた中間ギヤを介して、中間軸に設けられた平歯車に対して行われると共に、中間軸に設けられた平歯車を介して、入力軸に設けられた平歯車に対して行われる。この態様では、切換クラッチは好適には中間軸に配置されており、中間軸に設けられた平歯車を遮断または接続することができるようになっている。
【0025】
1つの別の好適な構成では、追加的な駆動結合部はそれぞれ、補助駆動軸に配置された補助ギヤと、独立して支承された平歯車とを介して、入力軸に設けられた平歯車に作用してもよい。この場合、切換クラッチは補助駆動軸に配置されており、補助ギヤを遮断または接続することができるようになっている。
【0026】
これに対して択一的に、追加的な駆動結合は、遊星キャリヤを起点として、2つの連結ギヤを備えた別個の連結軸を介して、リングギヤに対して行われてもよい。このことは、配置を極めてコンパクトにひいては構成空間を節約するように形成することができる、という利点をもたらす。好適には、2つの連結ギヤのうちの一方は、既存の切換クラッチを介して連結軸に取り付けられている。
【0027】
本発明による1つの別の構成では、切換クラッチは、好適には自由な軸端部に配置されている。このことは、切換クラッチに対する制御油供給を極めて単純に、軸に形成された軸方向孔を介して行うことができる、という利点をもたらす。
【0028】
本発明の別の有利な態様を、各実施例に基づき図面を参照して説明する。挙げられる特徴は、図示の組合せにおいて有利に実現されるだけでなく、個別に互いに組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】2つの補助駆動機を備えた本発明による駆動装置を示す平面図である。
【
図2】補助駆動機と入力軸との間に切換可能な追加的なクラッチを備えた、本発明による駆動装置を示す図である。
【
図3】潤滑油ポンプを備えた、本発明による別の駆動装置を示す図である。
【
図4】補助駆動機と入力軸との間に別の駆動結合部を備えた、本発明によるさらに別の駆動装置を示す図である。
【
図5】補助駆動機と入力軸との間に別の駆動結合部を備えた、本発明によるさらに別の駆動装置を示す図である。
【0030】
以下に、図面をより詳しく説明する。同じ符号は、同じもしくは類似の構成部材またはコンポーネントを表すものである。
【0031】
図1に示す、本発明による駆動装置は、出力軸11を介して作業機械2に結合されている。作業機械2は、例えばポンプ、コンプレッサ、ベンチレータまたはファンであってもよい。また、ベルトコンベヤ駆動装置またはミルまたは類似の機械であってもよい。特に出力の大きな作業機械2の場合には、高効率の駆動装置を有することが、特に重要である。この場合、駆動装置のサイズに基づき、所要構成空間が極度に大きくならないことも重要である。
【0032】
駆動装置に設けられた重畳伝動装置18は、ケーシング8を有しておりかつ遊星歯車伝動装置6を含んでいる。図示のケースでは、出力軸11が遊星歯車伝動装置の被動軸5により、直接に形成される。
【0033】
ただし本発明によるこの構成では、2つの平歯車から形成され、遊星歯車伝動装置の被動軸5を駆動装置の出力軸11に結合する平歯車段(ここには図示せず)が設けられていてもよい。平歯車段により、入力軸4と出力軸11との間には、要求に応じて極めてフレキシブルに、オフセットを形成することができる。オフセットはx方向だけでなく、所定の範囲内でz方向にも存在していてもよい。このようにして、駆動装置は例えば既存の設備に後付けする場合に、既存の条件に良好に適合され得る。
【0034】
入力軸4は、主駆動機1を遊星歯車伝動装置のリングギヤ6.1に結合しており、被動軸5はサンギヤ6.2に接続されている。複数の遊星ギヤ6.3を備えた遊星キャリヤ7を介して、リングギヤ6.1とサンギヤ6.2との間の駆動結合が行われる。
【0035】
追加的に、2つの補助駆動機3.1,3.2が設けられており、これらの補助駆動機3.1,3.2は、それぞれ駆動結合部を介して遊星キャリヤ7に接続されている。補助駆動機3.1,3.2がそれぞれ別個の駆動結合部を介して結合されている、ということは、両補助駆動機3.1,3.2があたかも1つの共通の伝動装置段を介して結合されているように、所要の伝動装置段とコンポーネントとを、より小型に寸法決めすることができる、という利点を有している。この構成では、駆動結合はそれぞれギヤ連鎖を用いて、補助駆動軸13.1,13.2に着座するそれぞれ1つの補助駆動ギヤ9.1,9.2と、各2つの歯列領域を備えたそれぞれ1つの段付けされた中間ギヤ10.1,10.2とを介して行われ、前記2つの歯列領域のうちの一方は、大歯車として形成されたまたは大歯車に結合された遊星キャリヤ7の外側歯列に係合している。
【0036】
ここで説明する駆動結合部の形態の1つの特別な利点は、極めて可変の変速比が可能であるにも関わらず、多くのコンポーネント、特にケーシング構造部材を同様に保つことができる、という点にある。それというのも、様々な変速比を生ぜしめるために、軸間距離を変更する必要がないからである。
【0037】
図2に相当する実施例では、一定の変速比を有する追加的な駆動結合部が、補助駆動機3.1と入力軸4との間に存在しており、この場合、この駆動結合部は間接的に形成されている。駆動結合は、遊星キャリヤ7から第1の連結ギヤ20に対し行われ、かつ連結軸19を介して、遊星歯車伝動装置6のリングギヤ6.1のギヤリムに係合している第2の連結ギヤ21に対して行われる。またこれにより、補助駆動機3.1と入力軸4との間に駆動結合が生ぜしめられた状態になる。補助駆動機と遊星歯車伝動装置の間の駆動結合も‐ここでは遊星キャリヤ7に作用するように‐やはり補助駆動ギヤ9.1と、段付けされた中間ギヤ10.1とを介して行われる。切換クラッチ16.1が、有利には連結軸の自由な軸端部に位置しており、これにより、軸に形成された軸方向孔を介した簡単な制御油供給を行うことができるようになっている。
【0038】
補助駆動機3.1もやはり、補助駆動ギヤ9.1と段付けされた中間ギヤ10.1とを介して、遊星キャリヤ7に接続されている。第2の補助駆動系統は、この図面では明示されていない。
【0039】
図3には、本発明による駆動装置の別の実施形態が示されている。図に示した構成とは異なり、ここではさらに、平歯車を備えた潤滑油ポンプ22が存在しており、前記平歯車は、入力軸において主駆動機1と遊星歯車伝動装置のリングギヤ6.1との間に位置決めされた平歯車17を介して駆動される。潤滑油ポンプ22は、保守整備し易くかつ良好にアプローチすることができるように、伝動装置ケーシング8の開口内に配置されており、好適にはz方向に見て入力軸4の上方の、ケーシング上部に配置されている。
【0040】
図4および
図5に示す、本発明による別の実施例では、それぞれ各補助駆動機3.1,3.2と入力軸4との間に、さらに1つの追加的な駆動結合部が設けられている。オフセットを可能にする、被動軸5と出力軸11との間に任意に設けられる平歯車段は、簡略化の理由から、ここでもやはり明示はされていない。
【0041】
追加的な駆動結合部には、それぞれ1つの切換クラッチ16.1,16.2がそれぞれ設けられている。これらの駆動結合部も、各補助駆動機3.1,3.2毎に別個に存在していることにより、切換クラッチならびに別のコンポーネントも、やはりより小型にひいてはより有利にかつ構成空間をより節約するように設計することができる。補助駆動機3.1,3.2と入力軸4との間の追加的な駆動結合部は、例えば駆動装置を、主駆動機1の停止時に補助駆動機3.1,3.2を用いて始動させるかまたは低回転数で運転するため、または主駆動機1の故障時に制御された非常運転もしくは制御された減速運転を可能にするために用いられる。両ケースにおいて必要なのは、駆動結合部が接続・遮断され得る、という点であり、この場合、このことは駆動結合部内の様々な位置に配置され得る切換クラッチ16.1,16.2を介して行われる。接続状態において補助駆動機は、低回転数または非常運転における主駆動機を代替することができる。必要に応じて、ただ1つの補助駆動機のみが接続されてもよい。
【0042】
図4に示す1つの変化態様では、切換クラッチ16.1,16.2は、段付けされた中間ギヤ10.1,10.2の延長された中間軸と、平歯車15.1,15.2との間に着座している。平歯車15.1,15.2は両方共、入力軸4に設けられた平歯車17に係合している。補助駆動機3.1,3.2の結合は、延長された補助駆動軸13.1,13.2と補助駆動ギヤ9.1,9.2とを介して行われ、補助駆動ギヤ9.1,9.2は、各中間軸に設けられた、段付けされた中間ギヤ10.1,10.2に係合している。
【0043】
この構成において特に有利なのは、切換クラッチ16.1,16.2が自由な軸端部に配置されている点である。これにより、切換用の制御油供給を、前記自由な軸端部に形成された軸方向孔を介して行うことができるようになっている。y方向にずらされた適切な配置形式に基づき、当該駆動装置は、複数の追加的な機能性にもかかわらず、やはり特にコンパクトである。
【0044】
図5に示す変化態様では、切換クラッチ16.1,16.2は、各補助駆動軸13.1,13.2に直接に着座している。切換クラッチ16.1,16.2に接続された補助ギヤ14.1,14.2が、それぞれ中間ギヤ15.1,15.2に係合しており、中間ギヤ15.1,15.2は、入力軸4に設けられた共通の平歯車17に作用する。この構成の利点はとりわけ、延長された中間軸が不要であり、簡単な平歯車段を介して入力軸4に直接に作用させることができる、という点にある。
【0045】
異なる複数の平歯車段を介して、前記追加的な駆動結合部の変速比を所要回転数に良好に適合させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 主駆動機
2 作業機械
3.1,3.2 第1および第2の補助駆動機
4 入力軸
5 被動軸
6 遊星歯車伝動装置
6.1 リングギヤ
6.2 サンギヤ
6.3 遊星ギヤ
7 遊星キャリヤ
8 ケーシング
9.1,9.2 第1および第2の補助駆動ギヤ
10.1,10.2 第1および第2の段付けされた中間ギヤ
11 出力軸
12 平歯車段
13.1,13.2 第1および第2の補助駆動軸
14.1,14.2 第1および第2の補助ギヤ
15.1,15.2 第1および第2の平歯車
16.1,16.2 第1および第2の切換クラッチ
17 入力軸に設けられた平歯車
18 重畳伝動装置
19 連結軸
20 第1の連結ギヤ
21 第2の連結ギヤ
22 平歯車を備えた潤滑油ポンプ
x 幅
y 長さ
z 高さ方向