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特許6997174眼球前部/後部撮像用の1060nm波長範囲ベースの光干渉断層撮影(OCT)システム
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  • 特許-眼球前部/後部撮像用の1060nm波長範囲ベースの光干渉断層撮影(OCT)システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】眼球前部/後部撮像用の1060nm波長範囲ベースの光干渉断層撮影(OCT)システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20220107BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20220107BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20220107BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 625
G01N21/3563
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019511748
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2017074706
(87)【国際公開番号】W WO2018060375
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】62/401,607
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503317201
【氏名又は名称】カール ツァイス メディテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュモル、ティルマン
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075640(JP,A)
【文献】特表2009-503519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0083667(US,A1)
【文献】特開2013-217700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0000320(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268038(US,A1)
【文献】特表2011-528801(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102670172(CN,A)
【文献】特開2011-027715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球前部及び後部の画像を生成する光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
光線を生成する光源であって、前記光源は、前記光源が1060nm~1070nmの波長を含み、かつ120nm未満の第1のスペクトル帯域幅を有する光を出力する後部撮像モード、及び前記光源が120nmよりも大きな第2のスペクトル帯域幅を有する光を出力する前部撮像モードを含む少なくとも2つの撮像モードで動作可能である、前記光源と、
前記後部撮像モードと前記前部撮像モードとを切り替えるコントローラと、
眼の前部又は後部にわたる一組の横断位置にわたり生成された光をスキャンする光学系と、
眼から戻ってきた光を測定し、その光に応答して出力信号を生成する検出器と、
前記出力信号に基づいて眼の前部又は後部の画像を生成するプロセッサと
を備える、OCTシステム。
【請求項2】
前記光源は掃引レーザ光源である、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項3】
前記光源は、共に結合されて、個々の各レーザのスペクトル帯域幅よりも広いスペクトル帯域幅を提供する複数のレーザを含む、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項4】
前記光源は、共に結合されて、個々の各レーザのスペクトル帯域幅よりも広いスペクトル帯域幅を提供する複数のレーザを含み、前記光源は、前記前部撮像モードでは個々のレーザを全て使用し、前記後部撮像モードでは1つ又は複数のレーザをディセーブルする、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項5】
前記光源は、前記光源のスペクトル帯域幅を調整するように変更される駆動関数により制御される調整可能フィルタを含む、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項6】
眼球前部及び後部の画像を生成する光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
光線を生成する光源と、
後部撮像モード用の1060nm~1070nmの波長を含み、かつ120nm未満の第1のスペクトル帯域幅、及び前部撮像モード用の120nmよりも大きな第2のスペクトル帯域幅を有する調整可能スペクトルフィルタと、
前記後部撮像モードと前記前部撮像モードとを切り替えるコントローラと、
眼の前部又は後部にわたる一組の横断位置にわたり生成された光をスキャンする光学系と、
眼から戻ってきた光を測定し、その光に応答して出力信号を生成する検出器と、
前記出力信号に基づいて眼の前部又は後部の画像を生成するプロセッサと
を備える、OCTシステム。
【請求項7】
眼球前部及び後部の画像を生成する光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
光線を生成する2つの光源であって、第1の光源は、眼の後部を撮像する、1060nm~1070nmの波長を含み、かつ120nm未満の第1のスペクトル帯域幅を有し、第2の光源は、眼の後部を撮像する120nmよりも大きな第2のスペクトル帯域幅を有し、前記2つの光源は共に結合される、前記2つの光源と、
後部撮像モードと前部撮像モードとを切り替えるコントローラと、
眼の前部又は後部にわたる一組の横断位置にわたり選択された撮像モードの生成された光線をスキャンする光学系と、
眼から戻ってきた光を測定し、その光に応答して出力信号を生成する検出器と、
前記出力信号に基づいて眼の前部又は後部の画像を生成するプロセッサと
を備える、OCTシステム。
【請求項8】
前記2つの光源は光ファイバスイッチにより結合される、請求項に記載にOCTシステム。
【請求項9】
前記2つの光源は溶融型ファイバカプラにより結合される、請求項に記載にOCTシステム。
【請求項10】
光源の切り替えは、一方の光源の光学出力をオンに切り替え、他方をオフに切り替えることにより行われる、請求項に記載にOCTシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光干渉断層撮影(OCT)は、マイクロメートル分解能で組織構造のin situリアルタイム断面撮像を実行する光学撮像技術である。OCTは、OCTビームに沿って試料の散乱プロファイルを測定する。各散乱プロファイルはアキシャルスキャン又はAスキャンと呼ばれる。Bスキャンと呼ばれる、エクステンシブ3Dボリュームによる断面撮像は、スキャニング又はフィールド照明のいずれかにより試料上の一組の横断位置を照明するOCTビームを用いて多くのAスキャンから構築される。
【0002】
OCTの顕著な利点の1つは、マイクロメートル範囲、さらにはサブマイクロメートル範囲の高アキシャル分解能である。アキシャル分解能は主に、使用される光源のスペクトル帯域幅に依存する。アキシャル分解能は、色分散及びプローブ光が透過する必要がある任意の媒体のスペクトル依存減衰により影響される(例えば、(非特許文献1)、(非特許文献2)、(非特許文献3)参照、参照により本明細書に援用される)。
【0003】
網膜撮像の場合、性能は、透光体の主体である水の特性によって大きく支配される(例えば、(非特許文献4)及び(非特許文献5)参照、参照により本明細書に援用される)。眼球前部及び硝子体を通しての複光路方式は、合計すると、波長依存分散及び吸収を示す約50mm経路長になる(例えば、図1参照)。
【0004】
網膜撮像の大半のOCTシステムは、主に水による僅かな吸収に起因して、800nm範囲の中心波長で動作する(例えば、(非特許文献6)参照、参照により本明細書に援用される)。さらに、超高アキシャル分解能を提供する、十分に発展した広帯域光源、例えば、チタン:サファイア短パルスレーザが利用可能である(例えば、(非特許文献7)参照、参照により本明細書に援用される)。大きなピクセル数を有するシリコン検出器アレイは、高速分光計ベースフーリエ領域OCT(FD-OCT)システムの実施を可能にする(例えば、(非特許文献8)参照、参照により本明細書に援用される)。
【0005】
過去数年、水吸収が極小を有する約1060nmの波長範囲(図1参照)は、網膜及び根底にある脈絡膜の撮像にますます興味深いものであることが分かってきた(例えば、(非特許文献9)、(非特許文献10)、(非特許文献11)参照、参照により本明細書に援用される)。
【0006】
約1060nmの波長範囲では、メラニンによる減衰は低く(例えば、(非特許文献12)参照、参照により本明細書に援用される)、したがって、網膜色素上皮(RPE)を透過する光は多くなる。より高波長での散乱の低減は一般に、組織内へのより深い侵入を可能にし、白内障に罹患した眼の撮像に有利である。さらに、水中への色分散は約1000nmで低く、高アキシャル分解能の維持に役立つ(例えば、(非特許文献13)参照、参照により本明細書に援用される)。
【0007】
1000nmを超える波長では、OCTシステムは通常、広帯域光源及び分光計ではなく波長掃引レーザ光源、いわゆる掃引光源を利用し、その理由は、インジウムガリウムヒ化物に基づく利用可能な検出器アレイがシリコン相対物よりもはるかに高価であるためである。掃引源OCTは、長い測距深度及び超高画像取得速度を提供することができ、モーションアーチファクトに対してよりロバストである。したがって、続く研究は1060nm範囲での高性能掃引源の開発にフォーカスしている(例えば、(非特許文献14)、(非特許文献15)、(非特許文献16)、(非特許文献17)、及び(非特許文献18)参照、それぞれ参照により本明細書に援用される)。
【0008】
1060nm掃引源は通常、110nm未満のスペクトル掃引幅に向けて設計される。この値は、水の吸収窓(water absorption window)の幅から導出されている。1000nm未満及び1100nm超での高吸収(図1に示されるように)に起因して、ヒト網膜を撮像する場合、帯域幅が広いほど、高アキシャル分解能に結びつかない。実際に、帯域幅が広いほど、信号損失に繋がり、その理由は、屈折力が眼の前で測定され、最大暴露限度が通常、そのレベルのスペクトル分解能までの吸水変動を含まないためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】B.L.ダニエルソン(B.L.Danielson)及びC.Y.ボワロベール(C.Y.Boisrobert)著、「低コヒーレンス干渉を使用した絶対光学測距(Absolute optical ranging using low coherence interferometry)」、応用光学(Appl.Opt.)、第30巻、p.2975~2979、1991年
【文献】T.ヒルマン(T.Hillman)及びD.サンプソン(D.Sampson)著、「超高分解能光干渉断層撮影のアキシャル分解能に対する水分散及び吸収の影響(The effect of water dispersion and absorption on axial resolution in ultrahigh resolution optical coherence tomography)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第13巻、p.1860~1874、2005年
【文献】S.ハリリ(S.Hariri)、A.A.モーイエ(A.A.Moayed)、A.ドラコポーロス(A.Dracopoulos)、C.ヒュン(C.Hyun)、S.ボイド(S.Boyd)、及びK.ビゼバ(K.Bizheva)著、「1060nm波長範囲におけるヒト及び齧歯類網膜のin-vivo撮像のOCTアキシャル分解能への制限ファクタ(Limiting factors to the OCT axial resolution for in-vivo imaging of human and rodent retina in the 1060nm wavelength range)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第17巻、p.24304~24316、2009年
【文献】T.J.ヴァンデンバーグ(T.J.van den Berg)及びH.スペクレイゼ(H.Spekreijse)著、「ヒト眼媒体における近赤外線光吸収(Near infrared light absorption in the human eye media)」、ビジョン・リサーチ(Vis.Res.)、第37巻、p.249~253、1997年
【文献】Y.コエリョ(Y.Coello)、B.シュ(B.Xu)、T.L.ミラー(T.L.Miller)、V.V.ロゾヴォイ(V.V.Lozovoy)、及びM.ドントス(M.Dantus)著、「多光子パルス内干渉位相スキャンを使用した水、海水、及び眼球成分の群速度分散測定(Group-velocity dispersion measurements of water,seawater,and ocular components using multiphoton intrapulse interference phase scan)」、応用光学(Appl.Opt.)、第46巻、p.8394~8401、2007年
【文献】W.ドレクサ(W.Drexler)及びJ.G.フジモト(J.G.Fujimoto)著、「現行技術の網膜光干渉断層撮影(State-of-the-art retinal optical coherence tomography)」、プログレス・イン・レチナル・アンド・アイ・リサーチ(Prog.Retin.Eye Res.)、第27巻、p.45~88、2008年
【文献】W.ドレクサ(W.Drexler)、U.モルグナー(U.Morgner)F.X.カートナー(F.X.Kartner)、C.ピトリス(C.Pitris)、S.A.ボパート(S.A.Boppart)、X.D.リ(X.D.Li)、E.P.イッペン(E.P.Ippen)、及びJ.G.フジモト(J.G.Fujimoto)著、「in-vivo超高分解能光干渉断層撮影(In vivo ultrahigh-resolution optical coherence tomography)」、オプティクス・レターズ(Opt.Lett.)、第24巻、p.1221~1223、1999年
【文献】B.ポットセド(B.Potsaid)、I.ゴルゼェンスカ(I.Gorczynska)、V.J.スリニバサン(V.J.Srinivasan)、Y.チェン(Y.Chen)、J.ジアン(J.Jiang)、A.ケーブル(A.Cable)、及びJ.G.フジモト(J.G.Fujimoto)著、「毎秒70,000~312,500アキシャルスキャンでの超高速スペクトル/フーリエ領域OCT眼科撮像(Ultrahigh speed spectral/Fourier domain OCT ophthalmic imaging at 70,000 to 312,500 axial scans per second)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第16巻、p.15149~15169、2008年
【文献】B.ポバザイ(B.Povazay)、K.ビゼバ(K.Bizheva)、B.ヘルマン(B.Hermann)、A.ウンターハーバー(A.Unterhuber)、H.サットマン(H.Sattmann)、A.F.フィーチャー(A.F.Fercher)、W.ドレクサ(W.Drexler)、C.シューベルト(C.Schubert)、P.K.アーネルト(P.K.Ahnelt)、M.メイ(M.Mei)、R.ホルツワース(R.Holzwarth)、W.J.ワズワース(W.J.Wadsworth)、J.C.ナイト(J.C.Knight)、及びP.S.J.ラッセル(P.S.J.Russel)著、「1050nmにおける超高分解能眼科OCTを使用した脈絡膜血管の改善された視覚化(Enhanced visualization of choroidal vessels using ultrahigh resolution ophthalmic OCT at 1050nm)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第11巻、p.1980~1986、2003年
【文献】A.ウンターハーバー(A.Unterhuber)、B.ポバザイ(B.Povazay)、B.ヘルマン(B.Hermann)、H.サットマン(H.Sattmann)、A.チャベス-ピルソン(A.Chavez-Pirson)、及びW.ドレクサ(W.Drexler)著、「1040nmにおけるin vivo網膜光干渉断層撮影-脈絡膜への侵入改善(In vivo retinal optical coherence tomography at 1040nm-enhanced penetration into the choroid)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第13巻、p.3252~3258、2005年
【文献】Y.ヤスノ(Y.Yasuno)、Y.ホン(Y.Hong)、S.マキタ(S.Makita)、M.ヤマナリ(M.Yamanari)、M.アキバ(M.Akiba)、M.ミウラ(M.Miura)、及びT.ヤタガイ(T.Yatagai)著、「1μm掃引源光干渉断層撮影及び散乱光コヒーレンス血管造影による眼球後部深部のin vivo高コントラスト撮像(In vivo high-contrast imaging of deep posterior eye by 1-μm swept source optical coherence tomography and scattering optical coherence angiography)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第15巻、p.6121~6139、2007年
【文献】M.L.ウォルバーシュト(M.L.Wolbarsht)、A.W.ウォルシュ(A.W.Walsh)、及びG.ジョージ(G.George)著、「メラニン、ユニークな生物学吸収体(Melanin,a unique biological absorber)」、応用光学(Appl.Opt.)、第20巻、p.2184~2186、1981年
【文献】Y.ワン(Y.Wang)、J.S.ネルソン(J.S.Nelson)、Z.チェン(Z.Chen)、B.J.ライザー(B.J.Reiser)、R.S.チャック(R.S.Chuck)、及びR.S.ウィンデラー(R.S.Windeler)著、「超高分解能光干渉断層撮影の最適波長(Optimal wavelength for ultrahighresolution optical coherence tomography)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第11巻、p.1411~1417、2003年
【文献】T.クレイン(T.Klein)、W.ウィーザー(W.Wieser)、C.M.アイゲンヴィリッヒ(C.M.Eigenwillig)、B.R.ビーダーマン(B.R.Biedermann)、及びR.ヒューバー(R.Huber)著、「1050nmフーリエ領域モードロックレーザを用いた超広視野網膜撮像のためのメガヘルツOCT(Megahertz OCT for ultrawide-field retinal imaging with a 1050nm Fourier domain mode-locked laser)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第19巻、p.3044~3062、2011年
【文献】R.ヒューバー(R.Huber)、D.C.アドラー(D.C.Adler)、V.J.スリニバサン(V.J.Srinivasan)、及びJ.G.フジモト(J.G.Fujimoto)著、「毎秒236,000アキシャルスキャンでのヒト網膜の超高速光干渉断層撮影の1050nmでのフーリエ領域モードロック(Fourier domain mode locking at 1050nm for ultrahigh-speed optical coherence tomography of the human retina at 236,000 axial scans per second)」、オプティクス・レターズ(Opt.Lett.)、第32巻、p.2049~2051、2007年
【文献】M.クズネツォフ(M.Kuznetsov)、W.アチア(W.Atia)、B.ジョンソン(B.Johnson)、及びD.フランダース(D.Flanders)著、「OCT撮像用途でのコンパクト超高速反射性ファブリペロー調整可能レーザ(Compact ultrafast reflective Fabry-Perot tunable lasers for oct imaging applications)」、SPIE紀要(Proc.SPIE)、第7554巻、75541F、2010年
【文献】S.マーシャル(S.Marschall)、T.クレイン(T.Klein)、W.ウィーザー(W.Wieser)、B.R.ビーダーマン(B.R.Biedermann)、K.シュー(K.Hsu)、K.P.ハンセン(K.P.Hansen)、B.サンフ(B.Sumpf)、K.-H.ハスラー(K.-H.Hasler)、G.アルベルト(G.Erbert)、O.B.ジェンセン(O.B.Jensen)、C.ピーダーセン(C.Pedersen)、R.ヒューバー(R.Huber)、及びP.E.アンダーセン(P.E.Andersen)著、「テーパ振幅に基づく1050nmにおけるフーリエ領域モードロック掃引源(Fourier domain mode-locked swept source at 1050nm based on a tapered amplifier)」、オプティクス・エクスプレス(Opt.Express)、第18巻、p.15820~15831、2010年
【文献】S.マーシャル(S.Marschall)、T.クレイン(T.Klein)、W.ウィーザー(W.Wieser)、T.トルズキー(T.Torzicky)、M.パーチャー(M.Pircher)、B.R.ビーダーマン(B.R.Biedermann)、C.ピーダーセン(C.Pedersen)、C.K.ヒッツェンバーガー(C.K.Hitzenberger)、R.ヒューバー(R.Huber)、及びP.E.アンダーセン(P.E.Andersen)著、「1060nmでの光干渉断層撮影のための広帯域フーリエ領域モードロックレーザ(Broadband Fourier domain mode-locked laser for optical coherence tomography at 1060nm)」、SPIE紀要(Proc.SPIE)、第8213巻、82130R、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記は、眼球後部を撮像する場合、該当する。しかしながら、眼球前部を撮像する場合、アキシャル分解能を上げるために、より広帯域幅の1060nm源を利用することができ、その理由は、光がそれほど多くの水に浸入する必要がないためである。したがって、網膜及び眼球前部を異なる掃引幅で撮像して、分解能の改善を達成することができるシステムが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に記載される趣旨の一態様によれば、眼球前部又は後部の画像を生成する光干渉断層撮影(OCT)システムは、光線を生成する光源であって、上記光源は、光源が第1のスペクトル帯域幅を有する光を出力する後部撮像モード、及び光源が、第1のスペクトル帯域幅よりも大きな第2のスペクトル帯域幅を有する光を出力する前部撮像モードを含む少なくとも2つの撮像モードで動作可能である光源と、後部撮像モードと前部撮像モードとを切り替えるコントローラと、眼球前部又は後部にわたる一組の横断位置にわたり生成された光をスキャンする光学系と、眼から戻ってきた光を測定し、それに応答して出力信号を生成する検出器と、出力信号に基づいて眼球前部又は後部の画像を生成するプロセッサとを含む。
【0012】
上記態様は任意選択的に1つ又は複数の特徴を含み得る。例えば、特徴は、第1のスペクトル帯域幅は、1060nmの水の吸収窓の幅以下であること、第2のスペクトル帯域幅は、1060nmの水の吸収窓の幅よりも広いこと、及び光源は掃引レーザ光源であることを含む。
【0013】
本発明は、幾つかの点で特に有利である。限定ではなく例として、本発明は、同じ眼科診断デバイスを使用して、最適化された感度での1060nm後部撮像及び眼の高分解能前部撮像を可能にする。
【0014】
本明細書に記載される特徴及び利点は、全てを含むものではなく、図及び説明に鑑みて多くの追加の特徴及び利点が当業者に明らかになる。さらに、本明細書で使用される用語が主に、読みやすさ及び教示を目的として選択されており、本発明の趣旨の範囲の限定を目的として選択されていないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヒト網膜のin vivo OCT撮像を可能にする約1060nm波長範囲の最小吸水を示す波長の関数としての光の減衰を示す。
図2】本発明の一態様による眼球前部/後部を撮像する一般化された光干渉断層撮影(OCT)システムである。
図3A】眼球前部/後部を撮像するためにOCTシステムと併用することができる光源の一実施形態例を示す。
図3B図3Aにおける光源の対応する光強度と波長との関係のプロットを示す。
図4A】眼球前部/後部を撮像するためにOCTシステムと併用することができる光源の別の実施形態例を示す。
図4B図4Aにおける光源の対応する光強度と波長との関係のプロットを示す。
図5A】眼球前部/後部を撮像するためにOCTシステムと併用することができる光源の別の実施形態例を示す。
図5B図5Aにおける光源の対応する光強度と波長との関係のプロットを示す。
図6】本発明の一態様による、本開示で考察される機能を実行し得る一般コンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書内で引用される全ての特許文献及び非特許文献は、引用される個々の特許文献及び非特許文献のそれぞれの開示が、参照により全体的に援用されるべく特にかつ個々に示されるのと同程度に、参照により全体的に本明細書に援用される。
【0017】
OCTシステム例
本発明との併用に適した、眼の3D画像データを収集するのに使用される一般化されたFD-OCTシステムを図2に示す。FD-OCTシステム200は光源201を含み、光源201は、例えば、SD-OCTの場合での短時間コヒーレンス長を有する広帯域光源又はSS-OCTの場合での波長調整可能レーザ源であることができる。光源201は、後述するように、眼球前部を撮像する前部モードと、眼球後部を撮像する後部モードとで切り替えることが可能である。前部モードと後部モードとのこの切り替えは、光源の一部として組み込まれるか、又はシステムの別個の要素(図示せず)として組み込まれるコントローラを使用して行われる。光源201からの光線は通常、光ファイバ205によりルーティングされて、試料210を照明し、典型的な試料はヒトの眼の組織である。光は、光線(破線208)が撮像すべき試料の領域にわたり横方向(x及びy)にスキャンされるように、通常、ファイバの出力と試料との間のスキャナ207を用いて試料210の領域に向けられる。試料から散乱した光は、通常、照明用の光のルーティングに使用されるものと同じファイバ205に集められる。同じ光源201から生じた基準光は、この場合、調整可能な光学遅延を伴って、ファイバ203及び再帰反射器204を含む別個の経路を辿る。透過基準経路を使用することもでき、調整可能な遅延を干渉計の試料アーム又は基準アームに配置することができることを当業者は認識する。集められた試料光は、通常、ファイバカプラ202内で基準光と結合されて、検出器220において光干渉を形成する。検出器に向かう1つのファイバポートが示されているが、干渉信号の平衡検出又は非平衡検出のために様々な設計の干渉計が使用可能であることを当業者は認識する。検出器220からの出力はプロセッサ221に供給され、プロセッサ221は、観測された干渉を試料の深度情報に変換する。結果は、プロセッサ221若しくは他の記憶媒体に記憶することができ、又はディスプレイ222に表示することができる。処理機能及び記憶機能は、OCT機器内に局在してもよく、又は機能は、集められたデータが転送される外部処理ユニット(例えば、図3に示されるようなコンピュータシステム300)で実行してもよい。このユニットは、データ処理専用でもよく、又はかなり一般的であり、かつOCTデバイスに専用ではない他のタスクを実行してもよい。プロセッサ221は、例えば、ホストプロセッサに渡す前に又は並行してデータ処理ステップの幾つか又は全体を実行するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、システムオンチップ(SoC)、又はそれらの組合せを含み得る。
【0018】
干渉は、干渉光の強度をスペクトルにわたり変動させる。干渉信号のフーリエ変換は、異なる経路長での散乱強度プロファイルを明らかにし、したがって、試料内の深度(z方向)の関数としての散乱プロファイルを明らかにする。深度の関数としての散乱プロファイルは、アキシャルスキャン(Aスキャン)と呼ばれる。試料内の近隣位置において測定された一組のAスキャンは、試料の断面画像(断層又はBスキャン)を生成する。試料の異なる横断位置において収集されたBスキャンの集まりは、データボリューム又はキューブを構成する。特定ボリュームのデータでは、高速軸という用語は、1つのBスキャンに沿ったスキャン方向を指し、一方、低速軸は、複数のBスキャンが集められる軸を指す。限定ではなく、水平若しくはx方向に沿って、垂直若しくはy方向に沿って、x及びyの対角線に沿って、又は円形若しくは螺旋系パターンを含め、Bスキャンを生成する様々な方法が当業者に既知である。
【0019】
干渉計の試料アーム及び基準アームは、バルク光学系、ファイバ光学系、又はハイブリッドバルク光学系からなることができ、当業者に既知であるように、マイケルソン、マッハ・ツェンダー、又は共通経路ベースの設計等の様々な構造を有することができる。本明細書で使用される場合、光線は、任意の入念に向けられた光路として解釈されるべきである。ビームを機械的にスキャンする代わりに、光照射野は網膜の一次元エリア又は二次元エリアを照明して、OCTデータを生成することができる(例えば、米国特許第9332902号明細書、D.ヒルマン(D.Hillmann)ら著、「ホロスコープ法-ホログラフィック光干渉断層撮影(Holoscopy-holographic optical coherence tomography)」、オプティクス・レターズ(Optics Letters)、第36(13)巻、p.2390~2011、Y.ナカムラ(Y.Nakamura)ら著、「線視野スペクトル領域光干渉断層撮影による高速三次元ヒト網膜撮像(High-Speed three dimensional human retinal imaging by line field spectral domain optical coherence tomography)」、オプティクス・エクスプレス(Optics Express)、第15(12)巻、p.7103、2007年、ブラッキビッチ(Blazkiewicz)ら著、「全視野フーリエ領域光干渉断層撮影の信号対雑音比の研究(Signal-to-noise ration study of full-field Fourier-domain optical coherence tomography)」、応用光学(Applied Optics)、第44(36)巻、p.7722、2005年参照)。時間領域システムでは、試料アーム又は基準アームのいずれかは、基準光と試料内の様々な深度で散乱する光との間で干渉を生み出すために、調整可能な光学遅延を有する必要がある。TD-OCT及びSS-OCTシステムでは通常、平衡検出システムが使用され、一方、SD-OCTシステムでは干渉計が検出ポートにおいて使用される。
【0020】
図2において、レンズ(223)は通常、対物レンズ又は接眼レンズと呼ばれる。レンズ(223)は、眼の所望の部分に集束ビームを生成するために存在する。前部(角膜、房水、及び水晶体)並びに後部(硝子体液及び強膜までの様々な網膜組織)に適応するために、レンズ(223)は、焦点距離を調整する必要がある。これを達成する様々な方法があるが、多くの場合、方法は、レンズの背面頂点(224)のすぐ下流の位置に負レンズを挿入又は追加することである。そのようなレンズは、ユーザにより手動で追加され、当業者に既知の磁石若しくは任意の他の取り付け機構を介してシステムに取り付けられてもよい。したがって、この特定の手法では、システムの光学構成へのこのレンズの追加により、機器を前部撮像と後部撮像とで切り替えることができる。加えて、眼の2つの領域間で切り替えるとき、基準アームと試料アームとの間の遅延は調整される。
【0021】
過去、眼球前部及び/又は後部を撮像する商用OCTデバイスが開発されている。これらの幾つかは、例えば、ツァイスシーラス(Zeiss Cirrus)(商標)HD-OCT、ビサンテ(Visante)(商標)オムニ(Omni)、及びストラタス(Stratus)(商標)(カールツァイスメディテック社(Carl Zeiss Meditec,Inc.)、ダブリン(Dublin)、カリフォルニア州))である。シーラス(Cirrus)(商標)HD-OCTシステムでは、米国特許出願公開第2007/0291277号明細書に記載のように、レンズをビーム経路に挿入して、システムの焦点特性を変更し、試料アームと基準アームとの間の遅延線を調整することにより、前部領域及び後部領域の両方を撮像することができる。シーラス(Cirrus)(商標)HD-OCTは、スペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)技術を使用して眼球前部の画像を生成する。
【0022】
前部/後部を撮像する1060nm波長範囲ベースのOCTシステム
本開示の背景技術のセクションで考察したように、1060nm波長帯では、約100nmのスペクトル帯域のみが、大きく減衰せずに硝子体を透過して戻るため、網膜において約6μmのアキシャル分解能しか達成することができない。1060nm掃引源は、主に後部撮像に使用されるため、通常、約1060nmを中心として100nm~110nmのスペクトル幅に向けて設計される。しかしながら、前部は、光があまり多くの水に侵入する必要がないため、はるかに高い分解能で撮像することができる。したがって、後部を撮像する場合、スペクトル幅を水の吸収窓に合うように切り替えることができるが、前部を撮像する場合、スペクトル帯域幅を増大させるOCTシステムを設計することが望ましい。
【0023】
本願の好ましい実施形態では、図2のOCTシステムは掃引レーザ光源201を含み、掃引レーザ光源201は、少なくとも2つのモード:1060nmの水の吸収窓に最適化されたスペクトルを有する後部撮像モード、及び1060nmの水の吸収窓よりも広いスペクトルを有する前部撮像モードで動作することが可能である。特に、この実施形態では、OCTシステム200の光源201は、後部撮像モードにおいて、光源201が1060nmの水の吸収窓の幅以下のスペクトル帯域幅を有する光を出力し、前部撮像モードにおいて、光源201が、1060nmの水の吸収窓の幅よりも大きなスペクトル帯域幅を有する光を出力するように構成される。前部撮像モードと後部撮像モードとの切り替えは、コントローラ、幾つかの場合、光学スイッチを使用して行い得る。
【0024】
そのようなOCTシステムの利点は、同じOCTシステムを使用して、最適な感度での1060nm後部撮像及び眼の高分解能前部撮像が可能なことである。
1060nmの水の吸収窓の幅は、様々なレベルの吸水がシステム設計者により許容可能であると見なされ得るため、いくらか任意の範囲である。マーシャル(Marschall)らは、1060nm~1070nmの最小吸水の近くを中心とした100nm~120nmのスペクトル帯域幅がヒト網膜の撮像に最大のスペクトル帯域幅であることを見出した(例えば、S.マーシャル(S.Marschall)、C.ピーダーセン(C.Pedersen)、P.E.アンダーセン(P.E.Andersen)著、「1060nm範囲での網膜OCT撮像での吸水の影響の調査(Investigation of the impact of water absorption on retinal OCT imaging in the 1060nm range)」、バイオメディカル・オプティクス・エクスプレス(Biomed.Opt.Express)、第3、7巻、P.1620~1631、2012年参照)。マーシャル(Marschall)らは、120nmスペクトル帯域幅が10%未満の分解能低下を生じさせ、これがスペクトル整形により解消可能なことを見出した。しかしながら、スペクトル整形は、分解能損失を吸水によって生じる追加の1dBの感度に変える。マーシャル(Marschall)らは主に、吸水がアキシャル分解能に対して有する影響量を調査したが、帯域幅の増大に伴う分解能と測定感度とのトレードオフは詳細に記述していなかった。帯域幅の増大に伴う感度低減を考慮した、1060nmの水の吸収窓の幅を定量化する代替の方法は、例えば、光が、1060nm~1070nmの最小吸水に近い波長を有する光の2倍の大きさで減衰する波長を特定することである。K.F.パルマー(K.F.Palmer)らにより公開された吸水データ(例えば、K.F.パルマー(K.F.Palmer)及びD.ウィリアムズ(D.Williams)著、「近赤外線における水の光学特性(Optical properties of water in the near infrared)」、米国光学会論文誌(J.Opt.Soc.Am.)、第64巻、p.1107~1110、1974年参照)を使用して、これは、1069.5nmを中心とした101nmのスペクトル幅をもたらす(これも図1参照)。
【0025】
異なるスペクトル帯域幅を有する光の切り替えは、本明細書の他の箇所で考察したように、コントローラを使用して行うことができる。コントローラは、光源自体の一部であってもよく、又は図2のOCTシステム等のOCTシステムの別個の要素であってもよい。異なるスペクトル帯域幅を有する光の切り替えは、様々な方法で実施することができる。一実施形態では、コントローラは単に、掃引源の波長調整要素の振幅を調整して、スペクトル帯域幅を増大又は低減し得る。別の実施形態では、調整要素は、両撮像モードで同じスペクトル帯域幅に広がり得るが、コントローラは、網膜撮像モードでの一部の掃引中のみ利得要素(例えば、半導体光学増幅器)をアクティブ化させるが、前部モードでのより長い部分の掃引中又は全掃引中、利得媒体をアクティブ化させる。
【0026】
図3Aの例に示されるように、更に別の実施形態では、内部が、複数のスペクトル相補的に結合された狭帯域光源(302a~c)からなる光源(301)を使用することができる。個々の狭帯域光源は、例示として光ファイバ(303)及び波長結合デバイス(304)を使用して結合され、これらは、例えば、波長分割マルチプレクサ、ダイクロイックミラー、溶融型ファイバカプラ(fused fiber couplers)、又はそれらの組合せからなることができる。図3Aに示されている光源(301)は、1つのファイバ出力(305)を有する。そのような光源を用いて、コントローラは、網膜撮像に向けて、利用可能な内部光源のサブセットのみをアクティブ化するが、高分解能前部モードでは、より多く又は全ての光源を使用し、ひいてはより大きなスペクトル帯域幅を使用することを選ぶ。光干渉断層撮影の分野の当業者は、個々の光源が1つのエンクロージャ(301)内に存在する必要はなく、上述したのと同様に結合され動作する、別個のパッケージの光源であってもよいことを認識する。図3Bは、図3Aにおいて考察した3つの光源の例示的な光強度と波長との関係のプロットを示す。
【0027】
図4Aの例に示されるように、更に別の実施形態では、OCTシステムは、2つの別個の光源(401及び402)を含み得、2つの光源は、例えば、部分的にスペクトル的に冗長であり、すなわち、一方の光源は眼球後部を撮像する1060nmの水の吸収窓に向けて最適化されたスペクトル範囲を有し、第2の光源は眼球前部をより高い分解能で撮像するためにより広いスペクトル範囲を有する。光源の切り替えは、例えば、光ファイバスイッチ(403)を用いて実施することができる。図4Bは、図4Aにおいて考察した2つの光源の例示的な光強度と波長との関係のプロットを示す。
【0028】
複数の光源を含む上記実施形態は、OCTに適するほぼあらゆる種類の光源を用いて実施し得る。幾つかの場合、VCSEL又はSG-DBRレーザは、低コストレーザキャビティに起因して、特によく適し得る。これにより、完全な光源のコストに大きく影響せずに、同じ制御電子回路を共有する、異なるスペクトルを有する複数のレーザキャビティを利用することが可能になる。
【0029】
図5Aの例に示されるように、更に別の実施形態では、OCTシステムは、少なくとも高分解能前部モードの所望のスペクトル帯をカバーするのに十分に広いスペクトル帯域幅を有する光源(501)を使用し得る。前部モードでは全帯域幅を使用し得るが、網膜撮像モードでは、スペクトルは、1060nmの水の吸収窓に合うようにフィルタリングする(例えば、スペクトルフィルタ(502)を使用して)ことができる。図5Bは、図5Aにおいて考察したスペクトルフィルタを有する光源(後部撮像用)及びスペクトルフィルタなしの光源(前部撮像用)の例示的な光強度と波長との関係のプロットを示す。
【0030】
本発明が上記実施形態に限定されず、様々な他の実施形態及び/又は構成も可能であり、本開示の範囲内にあることを理解されたい。また、図3A-3B、図4A-4B、及び図5A-5Bにおける実施形態に関して考察した光源が、検出レーザ光源又は掃引レーザ光源の分光計と併用される広帯域光源であってもよいことも理解されたい。本発明の好ましい実施形態ではこれらの光源は掃引レーザ光源である。
【0031】
コンピュータシステム例
別段のことが示される場合を除き、本明細書で考察した(例えば、図2を参照して)処理ユニット221は、このユニットについて本明細書に記載した機能を実行するように構成されたコンピュータシステムを用いて実施し得る。例えば、処理ユニット221は、図6に示されるように、コンピュータシステム600を用いて実施することができる。コンピュータシステム600は、1つ又は複数のプロセッサ602、1つ又は複数のメモリ604、通信ユニット608、任意選択的なディスプレイ610、1つ又は複数の入力デバイス612、及びデータ記憶装置614を含み得る。ディスプレイ610は点線で示されており、これは幾つかの場合、コンピュータシステム600の一部ではないことがある、任意選択的な構成要素であることを示している。幾つかの実施形態では、ディスプレイ610は、図2を参照して考察したディスプレイ222である。
【0032】
構成要素602、604、608、610、612、及び614は、通信バス又はシステムバス616を介して通信可能に結合される。バス616は、コンピューティングデバイスの構成要素間又はコンピューティングデバイス間でデータを転送するために、従来の通信バスを含むことができる。本明細書に記載されるコンピューティングシステム600が、これらの構成要素に限定されず、様々なオペレーティングシステム、センサ、ビデオ処理構成要素、入/出力ポート、ユーザインターフェースデバイス(例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ディスプレイ、マイクロホン、音声再生システム、及び/又はタッチスクリーン)、追加のプロセッサ、及び他の物理的構成を含み得ることを理解されたい。
【0033】
プロセッサ(複数可)602は、様々な入/出力、論理、及び/又は数学的演算を実行することにより、様々なハードウェア及び/又はソフトウェア命令等のソフトウェアを実行し得る。プロセッサ(複数可)602は、例えば、複数命令セットコンピュータ(CISC)アーキテクチャ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)アーキテクチャ、及び/又は命令セットの組合せを実施するアーキテクチャを含む様々なコンピューティングアーキテクチャを有して、データ信号を処理し得る。プロセッサ602は、物理的及び/又は仮想的であり得、シングルコア又は複数の処理ユニット及び/又はコアを含み得る。幾つかの実施形態では、プロセッサ(複数可)602は、電子表示信号を生成し、ディスプレイ610等の表示デバイスに提供し、画像の表示をサポートし、画像を捕捉して送信し、様々なタイプの特徴抽出及びサンプリング等を含む複雑なタスクを実行することが可能であり得る。幾つかの実施形態では、プロセッサ(複数可)602は、データ/通信バスを介してメモリ(複数可)604に結合され、データ及び命令をメモリ604からアクセスし、メモリ604にデータを記憶し得る。バス616は、プロセッサ(複数可)602をコンピュータシステム600の他の構成要素、例えば、メモリ(複数可)604、通信ユニット608、又はデータ記憶装置614に結合し得る。
【0034】
メモリ(複数可)604は、プロセッサ(複数可)602により実行し得る命令及び/又はデータを記憶し得る。幾つかの実施形態では、メモリ(複数可)604は、例えば、オペレーティングシステム、ハードウェアドライブ、他のソフトウェアアプリケーション、データベース等を含む他の命令及びデータを記憶することも可能であり得る。メモリ604は、バス616に結合されて、プロセッサ(複数可)602及びコンピュータシステム600の他の構成要素と通信する。メモリ(複数可)604は、プロセッサ602により又はプロセッサ(複数可)602と組み合わせて処理される命令、データ、コンピュータプログラム、ソフトウェア、コード、ルーチン等の包含、記憶、通信、伝搬、又は輸送を行うことができる任意の装置又はデバイスであることができる非一時的コンピュータ使用可能(例えば、可読、書き込み可能等)媒体を含み得る。非一時的コンピュータ使用可能記憶媒体は、任意の及び/又は全てのコンピュータ使用可能記憶媒体を含み得る。幾つかの実施形態では、メモリ(複数可)604は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、又は両方を含み得る。例えば、メモリ(複数可)604は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)デバイス、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)デバイス、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CD ROMデバイス、DVD ROMデバイス、DVD RAMデバイス、DVD RWデバイス、フラッシュメモリデバイス、又はより永続的に命令を記憶する既知の任意の他の大容量記憶装置を含み得る。
【0035】
処理ユニット221のコンピュータシステムは、同じ又は異なるロケーションに1つ又は複数のコンピュータ又は処理ユニットを含み得る。異なるロケーションにある場合、コンピュータは、通信ユニット608等の有線及び/又は無線ネットワーク通信システムを通して互いと通信するように構成し得る。通信ユニット608は、有線及び/又は無線接続用のネットワークインターフェースデバイス(I/F)を含み得る。例えば、通信ユニット608は、Wi-Fi(商標)、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、又は無線通信用の他のセルラ通信等を使用して、信号を送受信するためのCAT式インターフェース、USBインターフェース、又はSDインターフェース、送受信機を含み得る。通信ユニット608は、プロセッサ(複数可)602をコンピュータネットワークにリンクすることができ、コンピュータネットワークは他の処理システムに結合し得る。
【0036】
ディスプレイ610は、本明細書に記載されるように、電子画像及びデータを表示するように備えられる任意のデバイスを表す。ディスプレイ610は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)等の任意の従来の表示デバイス、モニタ、又は画面であり得る。幾つかの実施形態では、ディスプレイ610は、ユーザの1本又は複数本の指から入力を受信可能なタッチスクリーンディスプレイである。例えば、ディスプレイ610は、ディスプレイ表面との複数の接触点を検出し解釈することが可能な容量性タッチスクリーンディスプレイであり得る。
【0037】
入力デバイス(複数可)612は、コンピュータシステム600にデータを入力する任意のデバイスである。幾つかの実施形態では、入力デバイスは、ユーザの1本又は複数本から入力を受信することが可能なタッチスクリーンディスプレイである。入力デバイス612及びディスプレイ610の機能は、統合し得、コンピュータシステム600のユーザは、1本又は複数本の指を使用してディスプレイ610の表面に接触することによりシステムと対話し得る。他の実施形態では、入力デバイスは、別個の周辺デバイス又はデバイスの組合せである。例えば、入力デバイス(複数可)612は、キーボード(例えば、QWERTYキーボード)及びポインティングデバイス(例えば、マウス又はタッチパッド)を含み得る。入力デバイス(複数可)612は、マイクロホン、ウェブカメラ、又は他の同様のオーディオ若しくはビデオ捕捉デバイスを含むこともできる。
【0038】
データ記憶装置614は、データの記憶及びデータへのアクセスを提供することが可能な情報源であることができる。示された実施形態では、データ記憶装置614は、通信のためにバス616を介してコンピュータシステム600の構成要素602、604、608、610、及び612と結合される。
【0039】
上記説明では、説明を目的として、本明細書の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、これらの特定の詳細なしで本願の趣旨が実施可能なことが明かであるはずである。本明細書における「一実施形態」、「幾つかの実施形態」、又は「実施形態」への言及が、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が説明の1つ又は複数の実施形態に含まれることを意味することを理解されたい。本明細書の様々な場所における語句「一実施形態では」又は「幾つかの実施形態では」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。
【0040】
さらに、説明は、コンピュータ又は任意の命令実行システムにより又は組み合わせて使用されるプログラムコードを提供するコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。この説明では、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスにより又は組み合わせて使用されるプログラムの包含、記憶、通信、伝搬、又は輸送を行うことができる任意の装置であることができる。
【0041】
本趣旨の実施形態の上記説明は、例示及び説明を目的として提示されている。上記説明は、網羅的ではなく、すなわち、趣旨の本実施形態を開示された厳密な形態に限定するものではない。上記教示に鑑みて、多くの変更及び変形が可能である。趣旨の本実施形態の範囲は、この詳細な説明によって限定されず、本願の特許請求の範囲によって限定されるものである。当業者に理解されるように、本趣旨は、本趣旨及びその基本特性から逸脱せずに、他の特定の形態で実施することもできる。さらに、本趣旨のモジュール、ルーチン、特徴、属性、方法論、及び他の態様が、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれら3つの任意の組合せを使用して実施可能なことを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6